※この小説には、PS2ゲーム「機甲兵団J−PHOENIX」および「BT」および「コバルト小隊編」および
「J−2」にはありえない、科学的にも無茶苦茶なオリジナルの設定が数多く用いられています。
詳しくは、後述の用語(誤)集をお読みください
先にそっちを読んでもOKですが、できればこのまま読み進めて、用語(誤)集を読んだ上で、
もう一度読み返していただければ、筆者としては非常に嬉しいです
しかも、上記に加えてこの辺りから筆者の空想(妄想)の部分が多くなってきます
ぶっちゃけた話、嘘っぱち設定の嵐です。オフィシャル糞喰らえの展開を間違いなく突き進みます
その点に関しては、間違いなく物言いがつくとは思いますが、ゴールの見え始めた話です
せめて、終点に辿り着くまでは、できれば批判は無しで、お付き合いください
ご理解をよろしくお願いします
以上を踏まえた上で、どうぞ、お楽しみください
『なぁ、隊長』
「・・・」
『隊長、ってばよ!!聞いてんのか!!?』
「―――そう怒鳴らずとも聞こえている。どうした」
『何なんだよアイツのあの偉ッそうな態度はよ!!ちょっと階級が上だからってイバってんじゃねぇよったく!!!』
「またか?マイ、それを何度も言うな。ちょっとどころか、四階級も違う上官だぞ」
『いーや言うね言わせてもらうね!態度もそうだけどあの二つ名は何だよ“ヴァリムの猛牛”ってダッッッッッッッセぇよなぁ!?
牛だぜ牛。牛は長閑に牧場にでも引っ込んでろっての!!』
『そう言えば、マイは隊長に初めてお会いした時に何と言ったかしらね・・・・・そう、“黒牛”だったかしら?』
「ふむ、そんな事もあったな。私も長閑な牧場に引っ込むか」
『そんな古ぃ話引っ張り出すなよって言うか何で憶えてるんだよ』
『ですが隊長。私も此度の命令には承伏しかねます。これでは、私達“暁闇”小隊がまるで・・・・・』
「捨て石の様に使われている。か?」
『判っていながら、何故ですか!?サーリットンでは確かに“暁闇”小隊が受けた損害は軽微でした。
だからと言って・・・・・ッ!!』
「・・・・・」
『・・・・・何か、別の思惑でもあんのか?隊長』
「・・・・・腑に、落ちんのだ」
『『何が?』ですか?』
「Gエリアで採掘された資源だが、ほとんどが未だにリベル本島にある。
輸送計画の発動前にアルサレアがGエリアに乗り込んできたとはいえ、それが原因で輸送を遅らせるのは道理に合わん。
むしろ早める方が自然だろう。しかし、現実に本土へ輸送された資源は、初期の段階で発掘された物だけだった。
それに、リベル本島の工場設備は、とても資源精製の為とは思えぬ大規模な物を備えている」
『ベリウム・ヴァレリアスが資源を独占し、何か企んでいる?』
「あぁ、恐らく何か裏があるだろう。だが、それに至る根拠はそれだけでは無い。何だと思う?」
『ベリウムと、軍の掌握を狙う上層部の一派が手を組んでいる。というのはどうでしょう』
「惜しいぞユイ、考えの方向性は悪くない。だがもっと悪い。考えられる限りで最悪の組み合わせだ」
『ベリウムと神佐が密会してたとか?』
「近くなったがそれも違う。先程、ベルモットが裏をとった。キサラギ研究所の連中が動いている」
『キサラギの研究者が・・・・・!?』
「あぁ・・・・・済まない、お前達の前で言うべきではなかった」
『いいえ、お気になさらず』
『遠慮無く見捨てられる、ってもんだよなぁ?』
「・・・・・ともかく。膨大な資源と充実した工廠。それにキサラギ研の研究者だ。必ず何かがある。
ベリウム・ヴァレリアスの企てがヴァリムにとっての利となるならば良し。そうで無かった場合は是正せねばならん」
『その為には、動向を見守る必要がある・・・・・だからこんな命令を受けたのですか?』
「まぁ、アルサレアのエースとの戦いを楽しむのも目的の一つではあるのだがな」
『結局ソコかよ。ったく、いつまで経っても飽きねぇのな』
「日頃、私をしつこく訓練に付き合わせているのは誰だ?マイ。同じ言葉を返すぞ」
『マイ、あなたの負けよ。これに懲りたら少し控えるのね』
『い、良いだろ別に!そ、その・・・・・飽きねぇんだから・・・・・
だ、第一!いっつも「隊長にも参加して貰うべきだ」って言ってんのはそっちだろ!?
何だかんだ言ってユイが行かねぇからあたしがいっつも行ってるんじゃないかよ!!』
『そ、それは!!』
「なんだ。二人揃って私を振り回していたのか?全く・・・・・」
『・・・・・申し訳ありませんでした。以後、自粛します』
『・・・・・悪かったよ・・・・・この通りっ!』
「いや、私も書類仕事ばかりでは気が滅入るしな。それに稽古不足を気遣ってくれるのは助かる。
少し加減してくれると嬉しいが・・・・・まぁ、そう深刻に考えるな。暇な時は遠慮しなくても構わんぞ」
『あ、そうなのか?じゃぁこの作戦が終わったら早速一勝負『マイ、隊長の言った言葉を本当に聞いていたの?』
えっと、遠慮しなくて良いんだろ?『違うわよ』え、違うのか?『違うわ』どして?いーじゃん来て貰えば『だからそうじゃなくて』
「・・・・・そのくらいにしておけ二人とも・・・・・」
育て方を間違ったか・・・・・?
まるで父親の様な台詞を、彼、グリュウ・アインソード中尉は口の中で噛み殺した
<Side:グレン小隊、輸送機内・格納庫>
轟くエンジン音と整備機械の作業音に負けないくらいの、半ば以上怒鳴り声の様な指示が飛び交っている
アルサレアには、オーガル・ディラムの様な超弩級の機動空母が無い為に、大所帯での空輸はかなり難儀な事情がある
大型の輸送機をありったけ手配し、各小隊のパイロットと機体を運ぶのだが、その格納スペースでは最終点検に余念がなかった
作戦開始時刻までもう幾らも無い為に、整備工達は全知を振り絞って整備に臨み、
パイロット達も己の愛機の為に油で顔を汚しながら整備の手に加わっている
そんな光景とは無縁。とでも言わんばかりに、キース・エルヴィン中尉は暢気にコーヒーなんぞ啜っていた
「ふぃ〜」
あまつさえ、その褐色の液体がもたらす香味とぬくもりに酔いしれるような溜息さえついている
・・・・・その様に書くと格好良く思えるかも知れないが、実際はコーヒーをずるずる啜っておっさん臭い所作で表情を弛ませている
そうした部分が、“見た目二枚目、中身三枚目”と呼ばれる理由になっている事に、彼は気付いているのだろうか
「くぉら、きーすっ!!!!!」
エンジン音にも負けぬ程の、一際大きく響いたその怒声は、思わず手を止めてしまった工員がいた程の音量である
直後彼等の脳天に古参の工員の拳骨が降り注いだことはとても気の毒に思うのだが、彼女は生憎そんなこたぁ知ったこっちゃ無い
同僚のだらけた姿を視界に捉えるやいなや、汚れたボルトを片手にキースをロックオン
そして、躊躇いもせずぶん投げる
ごんっ!
ボルト、とは言っても手首の半分くらいの太さがある図太い奴である
決して高くは響かぬ重い音にこめかみに冷や汗を伝わせながら、キースは引きつった笑みを歩み寄ってくる少女に向けた
油に汚れた頬を僅かに膨らませてずかずかと歩み寄ってくるのは、小隊の斬り込み役にして“ロケット”と渾名される名物娘
今更言うのも阿呆らしいが、アイリ・ミカムラ中尉である
「・・・・・死ぬかと思ったぞ俺は」
「整備不良で二階級特進の方がマシ?」
「縁起でも無ぇこと言うなよ。これでもちゃんと面倒みたんだぜ」
「それにしちゃ終わるのが早いじゃない。手、抜いたんじゃないでしょうね」
「・・・・・モンキーレンチ片手に詰め寄るのはやめようぜアイリ。それは絶対死ねる。
言われなくたって、ちゃーんと整備もしたしパラメータも打ち直したって。アイツはいつでも絶好調さ」
「なら、良いけど・・・・・」
不審げな顔でアイリはストラングルの整備に戻ってゆき、その後ろ姿を見送るキース
紙コップを唇に戻そうとした彼に、不意に横から声が掛かった
「もう終わったのか?キース」
「えぇ、まぁ。そっちこそ作戦会議はどうなったんすか?隊長」
「予定通り、という事になったよ。俺達は南方面から侵入し、西からコバルト小隊率いる混成部隊が侵攻する」
機内備え付けのコーヒーメーカーから自分のコーヒーを注ぎながら、グレンリーダーはそう言った
平素からあまり表情を崩さない彼だが、ストラングルの整備に悪戦苦闘しているアイリの姿に、つい苦笑を拵えた
「アイリは、相変わらずだな」
「ははっ、確かに」
「少し、手伝ってやったら良いんじゃないか?」
「自分の機体を、他のパイロットにいじらせちゃ駄目でしょ」
そう言いながら、キースは紙コップを持っている右手に視線を落とした
爪の間に染み込み、黒ずませているオイルは、多分もう落ちそうにない
彼の整備が早いのは決して手を抜いているからではない。自分の機体のことくらいなら、彼は殆ど知り尽くしているからだ
「隊長こそ、チェックは?」
「あぁ、俺は駄目だよ。今までのPFなら何とか手を出せたけど、クレスニクは駄目だ。まるで勝手が違う」
全てのPFの共通点
各フレームの結合部分の統一規格を廃し、剛性や出力系を根本的に見直した機体。それがクレスニクの正体である
それが為に、内部機構は通常のPFとは大きく異なっており、
その違いようを例えるなら、自動車のエンジンとジェットエンジンくらいの開きがある
決してPFの整備は簡単ではないが、自動車のエンジンを直せない自動車整備工は居ない
だが、ジェットエンジンの修理ができる自動車整備工というのは、まず居ないだろう
今も、クレスニクには専属のメカニック達が細心の注意を払いながら作業を進めている
そんな様子を眺めて、ふと、グレンリーダーがキースに問うた
「そう言えば、皆新しい兵装を貰ったんだよな。どんなのなんだ?」
そうした辺りが気になる所を見ると、彼も存外に子供っぽいのかも知れない
その問いかけにキースはコーヒーを一口啜る間に内容を思い出し、
「あぁ、アイリの奴は何とかガントレットだったか、新しい格闘兵器を。俺は、ショットガンとライフル一丁ずつ」
「ショットガンよりも、マシンガンの方が好きなんじゃなかったのか?」
「新型の弾が回ってきたんで、それの実戦テストも兼ねて。レポート出すと臨時収入があるんすよ」
「そ、そうか・・・・・サリアとセイバーは、あれ、スライプニルか?」
視線を巡らせ、見つけた部下の機体には、アイリの乗機:ストラングルの背にマウントされている物と同じ、
高出力有骨格多連装推進機構:スライプニルが取り付けられていた
ゴスティール山脈戦でデビューを飾ったサチコ主任お手製の化け物ブースターが、サリア機とセイバー機にまで取り付けられていた
こうなってしまうと、ストラングルとゾールシカとクラージュの揃い踏みは、まるで特攻小隊の趣である
「あぁ、サリアちゃんは、『アイリ先輩とお揃いでっ!』ってな具合で即決。
セイバーはなかなか決められなかったから、サリアちゃんが勝手に決めたんだっけ。『セイも同じのでっ!!』つってね。
セイバーのはスピアも変わってたっけか?まぁ、そんなとこでしたよ」
「あの二人・・・・・大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫。サリアもセイバーも、あれでなかなか肝が据わってるんだから」
とは言うものの、サリアとセイバーの二人はと言うと、二人ともサリアの乗機:ゾールシカの整備に参加している
だが、髪の毛まで油まみれになって作業に参加しているのはセイバーで、サリアは何故か外装を磨いている
時々、サリアがセイバーに何か声を掛けると、彼は下から新しい雑巾を放り投げていた
それを受け取り損ねたサリアが頬を膨らませて、何故かセイバーの方が平謝りの態である
グレンリーダーとキースには、二人の間で交わされている会話の内容まで想像できるようだった
「ま、俺達は大丈夫ですよ。隊長は“お姫様”のご機嫌、伺わなくても良いんすか?」
にへっ、と表情を弛ませて、キースが問う
そのあまりに緩んだ表情にグレンリーダーは少しだけ眉を顰め、
「とてもじゃないが声を掛けられる雰囲気じゃなかったよ。
・・・・・何と言うか、こう、久しぶりに見るあの娘のオペレーター姿に・・・・・」
「見惚れて、ですかぃ?」
「いや、気圧されて・・・・・」
苦笑するグレンリーダーに、キースは同じような笑みを浮かべて見せた、ただし数倍の苦みを滲ませて、である
こっそり溜息をつきながら、心の中で、お気の毒、と告げておく
久しぶりのオペレーター業務に、ただならぬ気合を入れて臨んでしまったのが、
フェンナ、いや、フェンリエッタ事務准尉にとって一生の不覚だったというところだろう
「考えてみれば、声明発表や書類の決裁ばかりフェンナに押しつけていたんだよな・・・・・」
「神経磨り減らす仕事ばっかだったし。久しぶりのオペレーターが楽しくて仕方ない。ってところでしょぉよ」
「・・・・・だが、しかし・・・・・」
「だぁ、またそれかよ!」
沈んだ口調になる“将軍”相手に、キースはやおら立ち上がって、鼻先に指先を突き付けて唾を散らせながら言い放った
「良いか隊長。あの娘はフェンナじゃねぇ。フェンリエッタ・クローヴィス事務准尉殿だ。
だったら別に、そんなに気を遣うことも心配することもねぇ。だろ?そりゃ危険はあるけど、それは全部俺達次第なんだぜ。
輸送機には弾の一発も撃ち込ませねぇ。それっくらいの自信も無ぇのか?隊長!」
「・・・・・」
「ここまで来て連れてくるんじゃなかったとか言うんじゃねぇぞ。泣き言なんか聞いてやらねえからな」
「・・・・・あぁ」
神妙な顔で頷くグレンリーダーの隣に、キースは癖っ毛の金髪をがしがし掻きながら腰掛けた
ぬるくなったコーヒーを一息に流し込んで、ぼやくように言う
「“らしく”行こうぜ将軍閣下。今は、それが必要なんだから」
「・・・・・簡単に言うなよ。将軍らしくって、それが一番苦手なんだ」
「ま、そのカッコ見りゃそうだろうなぁ」
へらっと笑ってキースは言うが、そこまで言われると流石にムッとするグレンリーダーである
しかし、事実なだけに返す言葉も無い
ゴテゴテした階級章や勲章、装飾の類で絢爛豪華に飾り立てられた礼服でも着て毅然としていれば、少しは貫禄が漂うかも知れない
だが、今のグレンリーダーの着衣はと言うと、前戦役の頃と同じく、キース達も着ているパイロットスーツと同じ物なのだから
しかも、少々着古してきていて、襟の辺りは垢じみているし、所々に繕った跡が見られる始末である
ちなみに、この針仕事を請け負ったのはフェンナ。アイリも挑戦したのだが針穴に糸を通す時点で挫折した
「べ、別に良いだろう。着慣れているんだから」
「でもよぉ、いつまでもソレっていうのは、なぁ・・・・・」
「うるさいな。とにかく俺は、PFに乗る時まで礼服を着るつもりなんて無いからな!」
声を荒げてそう言うグレンリーダーである
式典用の大礼服や、会見用の略式礼服など、色々“正装”が求められる将軍職だが、
やはり、と言うべきか、彼はそういう堅くて重くて苦しい類の装いは嫌いな様だ
ちなみに、フェンナも彼と同じで正装嫌いである。執務室では未だにオペレーターの制服を着用しているくらいだ
もっとも、彼がパイロットスーツを換えようとしないしない理由はそれだけでは無い
キースの視線が逸れているのを横目で確認して、彼は襟章の裏にそっと指を滑らせた
そこには、親指の先くらいの大きさだが、白い翼の刺繍がある
サーリットンでの前線指揮を執る為に出撃するとフェンナに告げてから、彼女がこっそり縫ったらしい
どうして?と問う彼に、フェンナは真っ赤になりながらこう言った
『え、えと、その、おまもりみたいなものです!
だから、その、何て言うか・・・・・無事に、帰ってきて欲しいですから・・・・・』
ぁぅぁぅ、と口ごもるフェンナであった
翼のマークは、アルサレアでは伝統的に成功の印と言われている
幸運を運んでくる翼だとか、未来へ羽ばたく翼だとか、諸説は色々語られているが、とにかく、縁起物として扱われているようだ
改めて見直してみると、白い刺繍糸で縫われた翼は少し形が歪んでいるが、実にしっかりと縫い止められている
決して、この翼が彼の元を離れないように、と
しばらくの間、もじもじしていた彼女だが、意を決したように表情を引き締めると、
両手を胸の上で組み合わせ、祈りを捧げるように両目を閉じて、
『翼の勇気が、貴方と共にありますように』
静かに、加護を願う言葉を口にしたのだった
「・・・・・少しで良い、勇気を貸してくれ・・・・・もう、二度と迷わぬように」
何一つ護れなかった、その癖ずっとヒビの入った“将軍”の仮面を被り、一人の少女を欺き続けてきた自分とは、
いい加減、訣別しなくてはならない
仲間達と、そして小さな翼に向かって、彼は小さく助力を願った
そして、リベル諸島の西方面からコバルト小隊が侵攻を始める180分前、
グレン小隊の誰の頭上にも、暁闇小隊の誰の頭上にも等しく、その作戦開始の時はやってきた
<Side:グレン小隊、リベル諸島・南方面>
極端な自然環境に支配されているGエリアだが、ここリベル諸島域も例外ではない
コバルト小隊が進軍する予定の西方面は、氷に閉ざされた氷原だというのに、
今、彼等の眼前にある光景は、緑に満ちた、背の高い草が絨毯のように広がる草原の長閑な光景である
天候次第では、気温などにかなりの差が出るという報告がされていたが、とても今の様子を見るにそうは思えない
日向ぼっこには絶好の日和である
『・・・・・何か、さ。踏み荒らすのが勿体無ぇよな』
キースのぼやきに小さく苦笑を見せてしまう
不謹慎な呟きだが無理も無い。彼の昼寝好きはグレンリーダーも良く承知している
草原を、まるで海原の様に波打たせている風は穏やかで、この場を戦場にするのは、この大地に申し訳ないように思えてくる
それ程までに、だだっ広くて何も無い、そしてそれ故に美しい自然がそこにあった
だが、
「俺達はこれ以上、ここを踏み荒らさない、踏み荒らさせない為に来たんだぞ」
『そーよ!しゃきっとしなさいっ!!』
アイリの一喝に、キースはおっかなそうに肩を竦めた
こうしたノリも、グレンリーダーにとっては何だか随分久しぶりのような気がする
とても、これからドンパチを繰り広げるようには思えないような緊張感の無さ
だがそれは弛緩ではなく、逆に張りつめているからこそ出てくる無駄口であることも彼は知っている
サリアやセイバーはまだそこまでの境地には至っていないらしい。強ばった顔付きだ
「二人ともそこまでだ。仮にも兵団でトップクラスの特務小隊の隊長だろう。
きりっとしておかないと後で子分達に笑われるぞ」
『了解』『了〜解』
「フェン・・・リエッタ。ヴァリム側の状況は?」
言い淀む辺り、彼はやはり嘘が下手だと思われる
『こちらオペレータールーム。ヴァリム前線基地に動きは無いようです』
「気付いていない。なんて事は無いよな?」
『それは間違い無いでしょう』
モニターの向こうにいるフェンナ、現在はフェンリエッタ・クローヴィス事務准尉を名乗っている彼女も苦笑した様子だ
ここリベル諸島南方面には、あまりにも大胆に、堂々と侵攻してきたのだから
まさか気付いていない筈が無い。“気付いているけど気付いていないふり”をして、罠に誘い込む算段なのかも知れないが
「事、ここに至って、小細工は無しだな」
その呟きを聞きつけた全員が、頷いた
覚悟を決めた、兵(つわもの)の眼差しで
「予定通り、作戦を開始する。グレン小隊とグラップラー隊で先陣を切る。中衛はブラスター隊。キャノン隊は後詰めとして侵攻せよ。
各隊隊長は管制との連絡を密に取り合い、独断での行動は控えるように」
いくつもの「了解」が返ってきた
それは絶対的な信頼の証
そして同時に、双肩にかかる命の重さの証明でもある
重い荷物だ。だが決して投げ出してはならない大切な荷物だ
「・・・・・よし」
静かに吸って、吐く
躊躇いも後悔も、邪魔なのでまとめて吐き出しておく
これが、コバルト小隊の隊長:シオン・マクドガル中尉であったなら、さらに力の抜ける一幕があったかも知れないが、
彼はグレン小隊の隊長である。“伝説”とまで言われる特務小隊の、隊長なのだ
(らしく行こうぜ、将軍閣下)
キースの言った言葉が、ありがたく思えた
その通りだ。らしく行こう
今は、ソレが必要なのだから
クレスニクはエクスカリヴァを抜き放ち、Arガスプラズマの光刃を敵拠点目掛けて突き付けると、
声の限りに叫んだ
「行くぞぉぉっ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
大地を割るような鬨の声が炸裂し、手に手に得物を構えた機甲の兵士達が怒濤の勢いで駆け出した
<Side:暁闇小隊、黒夜叉:コクピット内>
『・・・・・と、言うわけでこちらの前哨部隊は5分ともたずに全滅しました』
『早ッ!!』
焦りもなく悔しさもない、ただ無表情に淡々と事実を報告するのはユイである
マイは呆れた様子で、実に短い感想を口にしていたが
「まぁ、標準機は言うに及ばず、森林戦仕様とはいえ、ヌエではそんなものだろう。救護は?」
『今のところ戦死者の報告はありません。救護班は既に分かれています』
『で、隊長。あたし達の出番は?そろそろだろ?』
「いや、まだだ」
『何でだよ!?もうアルサレアは来てんだぜ!?』
『マイ、あなたも聞いていたでしょう。アームドの量産モデルの、実戦での試験運用の話は』
前戦役の最中で、フィアッツァ大陸に“双子の悪魔”の名を鮮烈に刻みつけた、「J−アームド強奪事件」
グレン小隊を直衛とする厳重警備の輸送車両隊を奇襲し、当時の最新鋭機:J−アームドをまんまと奪って見せた事件の後に、
ヴァリムで複製、量産された機体は「ダークアームド」という、あまりにも安直なコードネームを与えられている
J−アームドは、“コア・バスター”という大出力レーザーキャノンを胴体に内蔵しており、その破壊力は折り紙付きだが、
アルサレアでは、その絶大すぎる攻撃力に何か抱くものでもあるのだろうか、どちらかというと拠点防衛機として機能させている
が、ヴァリムでは本家とは対極の、重武装の中距離戦仕様機として運用を決定した
そんな機体の量産体制が整ったのが前戦役の終結間際
結局、ダークアームドは前戦役ではプロトモデルが数機出撃しただけで終わってしまったが、今回はその量産型が届いているらしい
その話は、暁闇小隊の幹部であるグリュウと双子には通達が入っていたのだが、
マイはそれを完全に忘れていたようだ
『でぇぇっ!?聞いてねぇよそんなの!!』
『「言ったぞ」わよ』
『・・・・・無視しちゃ、駄目か?』
『駄目』
膨れっ面でぶつぶつと抗議するマイだが、ユイは鉄面皮で受け流す
耳元に聞こえる口喧嘩がうるさくならない間に調停する必要がある
グリュウはそう判断して、ゆっくりと口を開いた
「マイ、そう言うな」
『でもよぉ〜。折角、改造して貰ったってのにさぁ』
ぶん、と修羅姫が手にしている大鎌を一閃させる
湾曲する刃は内蔵されたブースターの推進力を借りて、強烈な斬撃を叩き込むことを可能にしているが、
よく見れば、微妙にフォルムが異なっている
今までよりも鎌の刃が一回り大きくなり、その刃の反対側・・・・・ブースターが埋設されている方にまで、刃が生えている
更に長柄の逆端にはレーザーナイフの赤光が輝いていた
歪な形の錨を引き延ばしたような、もしくはツルハシじみたシルエットのソレは、“鎌”と言うには少々不格好な代物だが、
そのお陰で修羅姫の姿は今まで以上の禍々しさとなった
「・・・・・まぁ、気持ちは解るが」
グリュウは思わず苦笑を漏らした
件の大鎌を手にしたマイとの模擬戦は、かのグリュウ・アインソードをして「手を焼いた」とぼやいた程だったからだ
大振りの斬撃を回避して尚襲い来る逆刃の追撃。長尺兵器を封じるインファイトでは掻き毟るようなレーザーナイフの猛攻
それらの複合的な要素に振り回されることなく、逆に振り回すマイには、正直、手を焼いた
『でも、隊長には勝てねぇんだよなぁ』
不思議そうに呟くマイだが、それが聞こえたグリュウは心の中で『そうでもないぞ』と反論しておく
一見すれば、演舞の様に大鎌を振り回す修羅姫だが、グリュウの目にはまだ、それが真っ直ぐに振り回しているようにしか見えない
実戦となれば、マイは恐ろしいほどの勘の良さで戦陣を展開するのだが、彼女は理に弱く、洗練に欠ける
速く、強いのだが、どの斬撃も基本的に“素直”なのだ。とグリュウは見ていた
彼女の攻勢は読みやすく、また守勢に転じれば変則的な手に弱い。能力が高いだけに気付けなかったのかも知れない
今回与えられた複合式戦鎌、通称:死人鎌は、そうした彼女のオフェンスの欠点を補う良い得物だった
攻勢に今までの様な素直さが失せ、悪魔じみた悪知恵から繰り出される変則的な連続攻撃には、グリュウでさえ肝を冷やしたのである
(これは・・・・・じきに、追い越されるかもな)
若き副官を頼もしく思うと同時に、戦々恐々とするグリュウである
『ユイにも勝てねぇんだよなぁ。もう、手の出しようが無いって感じで』
拗ねた口調で賞賛されて、ユイは複雑な表情を浮かべた
ユイは、マイとは真逆に、彼女は常にカウンターパンチャー的なスタイルで戦陣を展開する
全ての挙動に対し計算尽くで作戦を組み立てていくスタイルは、確かに強い。彼女は百手先まで思考できる頭の持ち主なのだから
だが、それが為に、計算通りに誘った動きで圧倒されると、ユイは予想外に脆い
グリュウ救出の為にマイとたった二人でアルサレア要塞に殴り込みを掛けた時、J−アームド相手に思わぬ痛手を被っていたように
誤解を招きそうな表現だが、マイは勘で動いており、ユイは考えて動いている
どちらが正しく、強いのかは状況次第で変わってゆくが、“思考の速さ”こそが彼女の最大の武器である事は間違いない
十文字大手裏剣は思考制御型の誘導兵器だ。思考の速さ、正確さ、その計算の深さでユイの右に出る者は居ない
だからこそ、凡人では二つと同時に操れぬ誘導兵器を、彼女は六枚も同時に操ることができている
そして今回、鬼百合は見た目こそ何も変わっていないが、背中に背負っているその大手裏剣が大きく改造されていた
一枚の大手裏剣に取り付けられている四本の刃。その結合部分にカイザーナックルと同じ類の電磁誘導機構が取り付けられたのだ
大手裏剣の枚数は六枚、二四本。刃は更に縦に二つ分かれるために、電磁投射可能な刃の本数は総じて四八本
四十八連飛苦無:雀蜂、それが今回鬼百合に追加された兵装形態の名称である
ユイの高速思考展開が操る十文字大手裏剣と、そこに加わった四十八連装の飛刀への分解連携は、最早手の出しようが無い
元々、全方位への攻撃力・防衛力を備えていた機体だったが、これにより指向的な攻撃力が増強された感じだ
『正面切って突っ込んじゃ勝てねぇし、だからって他の手なんてなぁ・・・・・』
飛び道具を使う。という考えはマイの中には存在しないようだ
模擬戦で、マイはこの雀蜂の結界に無策で(それこそが彼女の本領なのだが)突入し、背後からヘッドフレームを一撃されていた
結果が敗北だったために気付いていないようだが、それが正解だったのだ
ユイだって、まさかマイが何の躊躇いも無く突撃してくるとは、予想はしていたが本当にやられた瞬間は一瞬だけ思考が凍った
その“一瞬”が“数瞬”であったなら、結果はまた違った物になっていたかも知れない。マイの踏み込みはそれ程に鋭かった
下手にあれこれ考えている間に、ユイはそれを打ち破る方策を考えてしまう。だから、一気に勝負を決めに行く正面突撃こそが、
ユイの張り巡らせる雀蜂の結界を潜り抜ける、唯一の方法だった・・・・・今回はユイの方に軍配は上がってしまったが
『なぁ、隊長だったらどうにかできるか?アレ』
『隊長には通用しなかったわ』
『はぁっ!!?』
マイの問い掛けに、グリュウ本人が口を開くよりも早くユイが結果を言ってしまった
モニターの向こうから、マイが何だか新種の珍獣を見るような、まん丸に見開いた目でこっちを見ている
『ど、ど、ど、どうやって!!?』
「お前と同じだ。正面から斬り込んだ。
・・・・・もっとも、先に二人の模擬戦を見ていたからそれに踏み切れたのだがな」
順番が逆だったなら、結果も逆だっただろうよ。と苦笑と共に付け加えておく
『う〜、何か悔しいなぁ。畜生』
唇を尖らせて、上目遣いに剣呑な視線をぶつけてくるマイに、嫌な予感を感じたグリュウは機先を制してこう言った
「腹いせなら私ではなくアルサレアの連中にぶつけてやってくれ」
『・・・りょーかい。覚悟してろよアルサレア!今に目に物くれてやるかんな!!』
死人鎌をぶんぶか振り回すマイの姿に、グリュウは小さく溜息をついた
どうやら今度の訓練で八つ当たりの的にされることは回避できたようだ
そんなグリュウに、ユイが小さく訊ねてくる
『隊長、こういうのを“一挙両得”というのですか?』
「どうだかな、当たらずとも遠からず。というところだろう。・・・しかし、マイはどこでああ言う言葉遣いを憶えてくるのだ?」
『恐らく、ベルモット曹長、いえ、軍曹あたりでは無いでしょうか』
「あれが、年頃の娘の言葉遣いとは・・・・・」
『?』
グリュウの呟きに、ユイはきょとんとした顔を返すばかりだった
今もマイは、未だに姿を見せないアルサレアに向かって、馬鹿阿呆間抜けから始まる罵詈雑言を外部スピーカーから垂れ流している
それが聞こえた(聞こえない筈が無いか)、暁闇小隊の面々の意気が上がっているのは良いことなのだが―――
「ユイ、双子の姉として、何か思うところは無いのか?」
『隊の戦意高揚の為に、私も加わるべきでしょうか?』
「・・・・・それだけはやめてくれ」
妙なテンションで盛り上がる暁闇小隊の中で、その隊の隊長殿は疲れたような溜息をつき、
得物を振りかざして雄叫びを上げる子分共の姿を見て、どこか自棄っぱち気味な笑みを、その口元に宿して見せた
<Side:グレン小隊>
「だあああぁぁぁぁッ、しゃぁぁッ!!!!!!!!!」
アイリ・ミカムラ中尉(17歳、性別:女性、現在思春期真っ盛り、大絶賛片思い中)の掛け声であるということを明記しておきたい
ノーマルサックに代わり、彼女の愛機:ストラングルの両の拳を鎧うのは、カイザーガントレットと呼ばれる新兵器である
だが、これを新兵器と言ってしまって良い物かどうか。目新しさなど一切無いのだから
言ってみれば、カイザーナックルの不良品である。電磁誘導射出機構を廃し、マニピュレーターとしての機能をも廃し、
残ったのは、ただの頑丈な籠手
それだけである
それだけの、兵器である
「ふぅっ!どっせぇぇぃっ!!!!!」
低く沈めた姿勢から、目の前に立ち尽くすダークアームドの脇腹目掛けてフック気味のボディブローを痛烈に叩き込み、
その衝撃で“く”の字に屈み込んだそいつに向かって、スライプニルの推進力を乗せたトドメの一撃を顔面にぶち込んだ
恐るべき事にPFの巨体が後ろに一回転し、後頭部を地面で強打して、その拍子にヘッドフレームは千切れ飛び、
そのまま五回転ほどして、ようやく地面に倒れ伏して動かなくなった
ラリアットでも叩き込んだのかと思うような一撃だが、れっきとした拳撃であったことを強く述べておきたい
アイリくらいの格闘戦技術があると、結局はそれで十分なのだ
拳の前面しか使えなかったノーマルサックと違い、ガントレットは正に籠手そのものなのである
拳は勿論、手首から肘にかけてを防護するそれは、本来は防具として存在するはずの物なのだが、
「どぁりゃあああぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!!!!!」
ガントレットは全面返り血の如く、撃破済み敵PFのオイルでべったりと汚れている。立派に、得物として機能していた
そんな、アイリとストラングルの姿を見た、彼女の同僚のキース・エルヴィン中尉の第一声である
「こ、怖ぇっ!!」
非常に同感である
キースは今、そんな突出しがちな同僚達を、三歩離れたところから援護している
基本はサブマシンガンでの制圧射撃、今回はある程度の機動性を考えて両肩のラッチにマウントしていたガトリングは除装しており、
代わりに予備の弾倉をしこたまとショットガン、あとは実弾使用のライフルを一丁背負っていた
フルブレットの銃撃で撃破はできなくとも、周りには味方が大勢居るのだ
足を止めて狼狽えてる奴を見つければ、後はその辺の味方が勝手にぶちのめしてくれる
ヤバイ相手には、右手に構えるショットガンの砲口が向いた
吐き出す弾は当然散弾だが、今回はちょっと訳が違う
九粒散弾の一粒一粒が形状記憶合金製で、発射からコンマ1秒足らずでその身を短針弾に換える自己鍛造弾
人呼んで、“フレシェット・マグナム”
鋭く尖った先端は、装甲の薄い部分ならば容易く貫き、確実に機体内部を破壊するマッドな代物
ちなみに開発元は、技術開発部の悪魔と渾名される、悪名高きサチコ・ロックナード主任
その性質の都合上、(当たり前だが)いつまで経っても試用許可が降りなかったと言う代物だが、
この度試用許可が下り、サチコゾーンの一角から発掘されてようやく日の目を見た曰く付きの一品である
短“針”弾とは言っても、人間サイズで言えば“釘”どころではなく“杭”というべき大きさのぶっとい奴である
破壊力は折り紙付きだった
「でも・・・・・できれば、これでコクピットは狙いたくねぇな」
必要ならば、躊躇い無く“パイロットを殺す”という選択を採るキースだが、流石にそう呟いた
人間の身体にこんな物が撃ち込まれればどうなるか・・・・・考えたくなかった
「ちょ、サリア、サリア!出すぎだよ危ない!!」
「あに言ってんのよアイリ先輩なんか先陣斬ってるじゃない!行くわよセイっ!!先輩に続くんだからぁっ!!」
「う、うん・・・だぁっ、だからっ!サリアっ!!危ないってば!!」
若年コンビは相変わらずの暴走(?)ぶりである。あ、年齢で言えばアイリも十分若年か。それはさておくとして、
ゾールシカもクラージュも、それぞれスライプニルを装備したために直線機動力の数値は馬鹿みたいに跳ね上がっている
アイリのストラングルも、スライプニルの機動力を格闘戦では存分に活かし、敵機をぶん殴っているのだが、
サリアのゾールシカは、そんな技術的な部分など感じさせない。単純にフルブーストの勢いを借りてハンマーを叩き付けていた
それだけで、星になるほどぶっ飛ばされているのだけれど
時には蹴打も繰り出していたようだが、スライプニルの加速とハンマーの重量を合わせた一撃の破壊力に比べれば、見劣り、どころか
装甲の破片をぶちまけながら、文字通り吹っ飛ばされる敵PF達は、哀れとさえ思える程だった
そんなサリアにあたふたと慌てながらついて行くセイバーだが、どうしてなかなか、槍の先端は一度敵の方を向けば揺るぎもしない
真っ直ぐに、躊躇い無く、目を逸らさずに突き進むその根性は賞賛に値する
クラージュが両腕で抱えているのは、インパルススピアに代わって支給された突撃騎槍で、ターヴュランスと呼ばれている
姿形は、中世の馬上槍そのもので、円錐を引き延ばしたような長い穂先に、全長の割にあまりに短いグリップが取り付けられている
が、勿論それだけでは無い
ランスのそこかしこに内蔵されたサブブースターが、更に突撃を加速させるという逸品である
ここまでくると馬鹿馬鹿しいとさえ思えてくるが、このサブブースターの推進角度を操れば錐揉み機動での突撃までできると言う
“乱気流”の名を冠するこいつの由来であるが、そこまで凄絶な突撃をセイバー・シドニスが見せるかどうか
疾風怒濤のターヴュランス・ハイマニューバ。彼の腕前と度胸に期待したい
「第一から第三分隊は正面攻撃、第四、第五は両翼に展開してこれを援護せよ!
グレン小隊!遅れるなよ!!!」
先陣に立ってエクスカリヴァを縦横に振るう白鳳:クレスニクの中でグレンリーダーが全軍を鼓舞する
PFの身長よりも長大な刃渡りを持つ光刃を振るい、敵機を次々と撃破してゆくその様は、後に続く者の戦意に高揚を与えてくれる
負けるものか、と
退くものか、と
土煙が視界を奪う。銃声や破砕音で聴覚は埋め尽くされる
そんな世界の中で、白い翼が進むべきを示してくれる。光の剣を振りかざし、我に続けと呼び声を上げる
例え、自分にとっては罪の証の様な肩書きでも、いつかシオンが言ったように、“将軍”の名は多くの人々にとっての希望なのだ
この、戦場に於いてもまた
『グレン小隊各機へ、敵拠点方面より新手が接近中です!』
耳に懐かしいナビの声
レシーバーから届くフェンナ、いや、フェンリエッタの声に、グレンリーダーはつい唇を綻ばせた
何故か、嬉しかったのだ
心から信頼してくれる相手が、側にいてくれると言うことが
「機種は?」
『・・・・・照合でました。シンザンタイプです!』
「双子か!?」
“シンザン”
その名の持つ不吉な意味に、キースが即座に口を挟む
本気の目でレーダーサイトを睨むが、生憎PFのレーダーレンジでは未だにその姿を捕捉するには至っていない
『・・・・・いえ、機数30、いえ、35機確認しました。全て同じ規格機体の様です。
カテゴリーB、Cは未確認』
「そりゃ良かった・・・・・目つき替えちまった分損したな」
「はいはい、ちゃちゃっと行くわよ!!」
ダークアームドが乱射したコアバスターに、見る影もなく焼き払われた林を踏み越えてPFが走る
グレン小隊の各機が先行、その後に格闘戦仕様機:グラップラーが続いてゆく
ブラスター隊やキャノン隊は丘陵地の頂上などで援護射撃の構えだ
ダークアームドはまだ全滅してはいないが、グラップラー隊でも何とかなるだろう
元であるJ−アームドと同じく、装甲の分厚い重量級だ。つまりは機動力で劣る
格闘戦仕様機のグラップラーの機動力なら、十分に翻弄できる程度の相手で、2、3機で取り囲むように不意を突けば、
決して倒すことが難しい相手ではなかった。受けた被害は0では無かったけれど
「しっかし、こいつらは・・・・・厄介だよな」
キースが表情を引き締めて言うのだから相当なものだ
シンザンは、先程まで相手にしていたダークアームドとはほぼ対極に位置する高機動型である
クロスブーメランと、アサシンファングの二刀流で武装したそいつらは、猿じみた動きの軽快さでこちらを翻弄してくる
直線的な機動では捉えにくい、厄介な相手だ
「アイリ。突っ込み過ぎんなよ。こういう相手は苦手だろ?」
「ふん、だ」
キースの忠告をアイリは鼻息で吹き飛ばし、ブーストペダルを踏み込んだ
スライプニルのフルブースト。制止の声は完全に無視。抗加速仕様のコクピットの中で、彼女は獰猛に笑う
敵の先導機がクロスブーメランを投げつけてきた
うねる様な軌道で迫ってくる十字の刃だが、それはストラングルの身を切り裂くよりも早く中空で弾け飛んだ
フルブレットからの援護射撃。ショットガンに代わって背中に提げていたライフルを右腕で構えている
対装甲用の徹甲弾は見事にクロスブーメランに命中し、木っ端微塵に打ち砕いていた
そして、ストラングルが接敵する
相手のシンザンは両手にアサシンファングを構え、両の拳が地面を擦りそうなほど低い姿勢のまま接近してくる
アイリは躊躇うことなく突撃
「こーゆー相手は、ね!」
不敵に無敵な笑みを浮かべ、アイリは操縦桿からコマンドを叩き込んだ
接敵に合わせて減速し、両腕をやや高めに構える
初撃はローキック。だがこれは避けられた
シンザンは嘲笑うように空中に膝を揃えた格好で浮かんでいた。両腕にアサシンファングを逆手に構え、
独楽の様なスピンでストラングルの頭を斬り裂こうとしている
転瞬、
ボクサーが相手のフックをかいくぐるような動きで、ストラングルの上体が沈み込んだ
必殺の刃が頭上を通過するやいなや、空振った体勢のまま空中で背中を向けているシンザンに猛然と掴みかかり、
「掴めばこっちのもんなのよ!!!!」
背中から腰目掛けて膝蹴りを叩き込み、仰け反ったそいつの首に槌を振り下ろすような肘の一撃。駄目押しとばかりに頭を踏み抜く
一瞬の攻防で、シンザンは哀れな姿に為り果てた
(こ、怖ぇ・・・)
アルサレア属の誰もが同じ感想を脳裏に浮かべたのは言うまでもない
そんな屍を足下に、アイリは不敵な表情を拵えて眼前に佇むシンザン共を睥睨する
思う、こいつらは夜襲・奇襲をさせてこそ実力を発揮するタイプのPFだ
正面切ってのぶつかり合いでも苦戦するだろうが、こちらの機動が上回っていれば五分以上の展開に持ち込める
得物が重いサリアやセイバーは苦戦するかも知れないが、そうそう簡単にやられはすまい
後続がようやく追い付いてきて、グレンリーダーのクレスニクがストラングルを庇うような格好でエクスカリヴァを構えた
何故か苦笑しているグレンリーダーから、アイリに通信が入る
「アイリ、あまり無茶をするなよ」
「あら、これくらい無茶でもなんでもないですよ?」
「馬鹿、そういう問題じゃねーっての!」
「なによキース馬鹿って言うこと無いじゃない!!」
「そーですよ、キース先輩のばかー!」
「ちょ、ちょっと待てサリアちゃん!何で俺が!?」
「アイリ先輩をばかって言った人がばかなんです!」
「え、えっと、サリア。サリアってば!今はそんなこと言ってる場合じゃ
その通りだった
馬鹿なやりとりを繰り広げるグレン小隊目掛けて、30を越えるシンザン達は一斉にクロスブーメランを投げつけてきた
誰もが咄嗟に身構える
キース機:フルブレットのWCSは即座にそれらを捕捉し、彼は迎撃しようとしたが、
それよりも数段早く、グレンリーダーが反応していた
跳躍、同時にフルブーストでの空中機動を展開。推進炎が複雑な軌跡を描き、エクスカリヴァの残光が陽炎に揺らぐ大気に滲む
斬った、
斬った、
斬った
60を越えるクロスブーメランを、一つ一つ、的確に斬り落としてゆく
エクスカリヴァを縦横に振るい、こちらを斬り裂こうと高速回転しながら迫る十字の刃を返す刀で逆に斬り裂く
一瞬でシンザンをスクラップにして見せたアイリだが、流石にこんな真似はできない
(やっぱ、適わないなぁ)
胸中でそんな台詞を呟きながら、ちょっと悔しいお年頃だった
シンザン達が一斉に、両の手にそれぞれ、アサシンファングを逆手に構え、黒い機体が疾駆する
そしてグレン小隊も負けじと得物を構えて突撃した
ストラングルが殴り、フルブレットが撃ち抜き、ゾールシカがぶっ飛ばし、クラージュが貫き、
蒼天より、クレスニクがパワーダイヴで降下強襲を見舞う
「一気に敵拠点を落とすぞ!!遅れるな!!」
グレンリーダーの言葉に、鬨の声がそこら中で沸き上がる
その勢いはまるで津波のように、“ヴァリム”を飲み込んで行った
<Side:暁闇小隊、黒夜叉:コクピット内>
『ダークアームド隊、突破されました。後詰めのシンザン隊が出撃していますが、時間の問題でしょう』
ユイの口調は、まるで自軍の劣勢を伝えているとは思えない程に淡々とした口調だが、グリュウの表情に別段変化はない
ダークアームドは優秀な機体だが、かのグレン小隊がそう簡単に負けるはずが無いと思っているからだ
『それと、悪いニュースです。西方面からアルサレアの別働隊が諸島本拠地に奇襲を掛けてきました』
「ほぅ?」
『これにより、出撃していた援軍が立ち往生。バール・アックス大佐よりの言葉を要約して伝えれば、
『何とかしろ』だそうです。現在、援軍のおよそ半数以上が本拠に帰還中。こちらに来るのはおよそ5個小隊程度でしょう。
援軍としての機能は、期待できません』
『なぁなぁ、あたし達って嫌われてんのか?』
『・・・・・さぁ?』
マイの案外素朴な疑問に、流石のユイも首を傾げるばかりだ
ヴァリム軍では野郎共の隠れファン急増中の双子だが、二人ともそんな奇特な連中は子分達だけだろうと思っているし、
むしろ自分達の生い立ちを思えば、忌避されるものと考えられる。実際はそうでもないのだが
その会話を聞きつけたベルモット軍曹と暁闇小隊の愉快な子分共は、心の中でバールへの抗議と双子へのエールを全力で送っていた
そんな、どこか擦れ違いなやりとりに表情を歪めながら、グリュウは小さく首を横に振る
「嫌われているのは、むしろ私だな」
『バール・アックス大佐とは、何か因縁が?』
「因縁、というほど根が深いものではないが、まぁ、いざこざがあったことは確かだ」
隻眼を細めて、グリュウは小さく苦笑した
『我こそがエースだ』と息巻いていたバールを訓練試合で負かしたことはグリュウも憶えている(というかそれくらいしか接点が無い)
だが、まさか、それが原因で援軍まで渋られているとは考えにくかった
結局の所、グリュウが思っている以上に、バールは矮小な人物だっただけなのだけれど
「こちら暁闇小隊隊長、グリュウアインソード。管制室、応答を求む」
『こちら管制室』
「ダークアームド隊のデータは採れたか?」
『・・・・・採る間も無かった。というのが正直な所です』
「まぁ、無理もあるまいな・・・・・あぁ、それと、援軍としてこちらに向かっている小隊に連絡を頼む。
“暁闇”小隊に直接支援は無用。他の小隊の救援に向かうように、と」
『よろしいのですか?』
「構わんさ」
獰猛な笑みを大きく浮かべ、黒夜叉は白菊之太刀を握り締め、鞘を払う
抜き放たれた白刃は陽光を受けて輝いている。今日も、良く斬れるだろう
こいつは誰よりも長く己に寄り添ってくれている本妻だ。今日の機嫌は輝きで判る
そしてそれを見た暁闇小隊に、さっと緊張が走った
付き合いの長い連中だ。グリュウの思考はわかっている
太刀の切っ先はまずは天へ向けられ、そして地平を指す
アルサレアの軍勢が、その切っ先の先端には居る筈だ
「総員、覚悟は・・・・・できているな?」
グリュウが全員にそう尋ねる
わざわざ聞くまでもないその言葉に、言葉を返した者は居なかった
ただ、修羅姫は死人鎌を肩に担ぎ、鬼百合はヤミフブキを握り直した
そして暁闇小隊の子分共:主にキシンやロキを乗機とする一同は一斉にカタナの鯉口を切った
無言のままのやりとりは、彼等の覚悟の深さをありありと語る
並の部隊には存在しない、異質な気迫と緊張感
誰もが、滅多に表情を崩さないユイでさえ、獰猛な笑みを浮かべ、グリュウの号令を待っている
(好きだな、こういう空気。わくわくしてくる)
(そう?・・・・・そうかも、ね)
共感覚で交わされた双子の意識を読みとれた者はいないが、子分共の殆どは同じ事を考えていただろう
先頭に立つ彼等の“隊長”は、絶対的な安心感と信頼感を与えてくれる強さを持っており、
その後ろに控える“副隊長”は、彼女らにはみっともない姿は絶対に見せられないと言う、少々不純だが、彼らの奮闘の原動力である
決して揺るがぬ連帯感、一体感、心の強さが、彼ら暁闇小隊を最強たらしめている真の理由なのかも知れない
そして、黒夜叉は地平に向けていた白刃を一閃させ、腹の底から気を吐いた
「総員抜刀!!我らが前に立ち塞がる者は全て斬り払え!!暁闇小隊、出陣する!!!」
グリュウの大音声に、一斉にカタナが抜き放たれ、剣林は眩く陽光を照り返す
大地と、天まで揺るがせるような鬨の声を上げながら、黒の戦鬼率いる侍達は、一散に駆け出していった
<リベル本島:ヴァリム軍本拠地>
「で、何でこんな時に俺達は留守番なんだよ!!!!」
がぁっ!と吼えたのは、ヴァリム秘蔵の特務小隊の二番隊:“煉獄”小隊の副隊長であるダン・ロンシュタットである
態度もでかいが声もでかい
格納庫の隅々まで響き渡るような大音声に直撃された煉獄小隊の隊長殿は耳を押さえて言い返した
「うるさいわね!!何回も言わなくても、いい加減聞き分けなさいよ!!」
「るせぇっ!!!納得できるかぁっ!!!」
言うまでもなく、リベル本島のこの基地はGエリアで最も規模の大きな物で、ヴァリムの司令部である
ここを陥とされてはヴァリムの敗北は間違いない
だから、特務小隊と残存戦力を集中させて交戦の構えを見せている。至極、真っ当な考えだ
だが、ダンはそれが納得できないようだ
「・・・・・あいつが出てきてるなら、相手をするのは俺だ。他の奴なんかに手ぇ出させやしねぇ」
押し殺した、唸る様な口調に彼女:ルキア・サーカムは息を呑む
彼との付き合いは他の誰よりも長い彼女である。未だかつて、こんな風に昏く燃えるような表情は見たことがなかった
恐れを抱くと同時に、寂しい気持ちになる
「ねぇ、ダン。やっぱり・・・・・駄目なの?」
「考え直せ、ってか?それこそ何回も言わせるな。あいつは、ジータは俺が潰す。絶対にだ!」
「・・・・・どうして・・・・・?」
「あぁ?」
俯けた表情は、前髪に隠れて見ることはできない
だが、瘧のように震える体と、握り締められた拳と、掠んだ声から簡単に伺い知れた
「どうして、そんなことばっかり言うのよ!兄弟みたいに過ごしてきたじゃない!
ジータは、誓いまで忘れていないって言ってたでしょう!それなのに何で信じられないの!!」
「・・・・・」
「ヴァリムを逃げた理由はわからない。
でも、言ってたじゃない。“巻き込みたくなかったからだ”って。私達には言えない事情があったのよ」
涙声のルキアに背を向ける
全ての言葉を跳ね返すように、背を向けてしまう
彼女が何か怒鳴っているようだが、ダンには聞こえない
ダンも、それがわからないわけではないのだ
ジータがどんな性格だったのかは知っている。あいつくらい馬鹿正直で糞真面目な奴はいなかった
そんなあいつだから、自分達の事は多分真っ先に考えたのだろう
だが、彼が巻き込まれたのが何らかの事件であったならば、ジータは自分達を守るために何も言わなかった。そこまでは考えられる
冷静になってみれば、敵味方として相対しはしたが、あいつは何一つ変わっていなかった
だけど、あいつは死んだと聞かされていた。彼の父:ベリウムから
どういうことなのか
どういう経緯があって、ジータがアルサレアに付いているのか
帰還後、ベリウムに問い直したが、やはり結果は彼の知る事実と変わらなかった。“息子は何年も前に死んでいる”
もしかしたら、アルサレアが自分とルキアを攪乱するために用意した“良く似た別人”なのではないかという可能性まで考えたが、
これは即座に棄却した。拳を交えた自分ならば確信を持てる。アイツは間違いなくジータ・ヴァレリアス本人だった
ルキアの言うように、確かめるべきだろう
本人の口から事情を聞けば、納得できる答えが返ってくるのかも知れない
だけど・・・・・
「“ロンシュタット”の誇りに懸けて、アルサレアは、絶ッ対にぶッ潰す・・・・・!!相手が、誰だろうと、絶対にだ!!!」
<Side:グレン小隊>
『レーダーエリア内に、敵の新手を捕捉しました!・・・・・は、速い!!?』
ただならぬ口調に、慌ててレーダーに目を向ける
新たな光点が・・・・・3つ。たった3つだ
そいつらが素晴らしいスピードでレーダーエリア内を横切ってくる
接敵まで、いくらも掛かりはしないだろう
「たった3機!?後続は居ないのか!?」
『はい・・・・・敵後続、30機余りを確認しました!こちらの前衛を迂回するルートで砲撃隊を狙っています!!』
「どういうこと?まさか、たった3機で足止めするつもりじゃないわよね?」
アイリが口を挟んでくる
何となく、嫌な感じがしたのだろう。それは、グレンリーダーも同じだった
機種を問うよりも速く、レーダーエリアの中で赤く光る3つの光点が、友軍機を示す緑の光点の群に接触し、
『ゆ、友軍機、8機が大破!!』
フェンナの声に、予感を確信へと換える。緑の光点がそうしている間にも次々と消えてゆく
エクスカリヴァを片手に、クレスニクをフルブースト
今更な台詞を、グレンリーダーは紡ぎだした
「フェン、フェンリエッタ!機種は!!?」
叫んでいる間に、既に赤の光点は目前の筈だった。操縦桿にコマンドを突っ込み、エクスカリヴァを叩き込む
当然の様に、その一撃は紫電の衝撃波に迎え撃たれ、土煙の向こうから突き出される白刃の一撃を身を捻って避ける
『・・・・・腐れ縁も、ここまでくると滑稽に思えてくるな。アルサレアのエース』
黒の戦鬼が、そこに居た
『照合でました!!黒夜叉と・・・・・双子の悪魔です!!!』
確認した。そいつはもう目の前にいる
緋色の死神と、蒼銀の忍の姿もそこにあった
アイリのぼやいた通りだった
どうやら、こいつ等は“たった3機でこちらの前衛の動きを止める”つもりらしい。その間に別働隊が中衛の隊を叩く
腹立たしいことに、それが全く不可能では無い、実に効率の良い作戦であることはグレンリーダーにも分かる
実際、止められるからだ
ヴァリムのエースと、双子の実力ならば
今更、転進もできない。今こいつ等に背を向ければ、間違いなくその瞬間に膾斬りに斬り刻まれる
「サリア、セイバー。別働隊を迎撃せよ。キースとアイリは、悪いが付き合ってくれ」
向こうがその気なら、それに付き合わなくてはならないだろう
たった三機で小隊の動きを押さえ込むつもりだったというのなら、こちらも最精鋭の三機で迎え撃とう
それは、決して不可能なことではないのだから
「はぁ、やっぱそうなるか・・・・・」
器用にもフルブレットの肩を、がくっ、と落としてキースがぼやいた
その姿からは、これから強敵を相手に戦うという緊張感は微塵も感じさせないが、それが彼のスタイルだ
そのあんまりな姿にグレンリーダーもつい口元に苦笑を浮かべて、同じ様な調子で返してしまう
「おぃおぃ、頼りにしてるんだからな。頼むぞ」
「了〜解。ま、死なない程度で頑張りまっす」
お気楽な口調ながら、両手にマシンガンを捧げ持ち、WCSの潜む眼光で鬼百合を射抜く
視線の先にいる蒼銀の忍は、常の自然体のまま、既に臨戦態勢にあるようだ
不意に、レーザー接続が繋がれた
フルブレットに、なんと鬼百合から
『いつぞやの、セストニア氷原以来ね。また貴方が相手になるとは思わなかったわ』
「とと、褒めてくれんのかい?そいつぁありがたくて涙がちょちょ切れるね」
『ちょちょ・・・?何ですって?』
未だに、そうした言葉遣いには疎いユイである
氷の仮面のような鉄面皮を、不思議そうに歪めている彼女の姿に、キースはのほほんと笑う
「ま、それは良いや。それより、今日は途中で帰ってくれんのかい?お前さんの相手は疲れるんだよね。骨がありすぎるから」
『いいえ・・・・・今日は決着が着くまで、踊ってもらうわ』
「へっ、どんな別嬪でも、悪魔とダンスってのは・・・・・笑えねぇ、なっ!!!!」
フルブレットが左回りに疾った
両手に握り締めたサブマシンガンがけたたましく吼え、機関砲弾を鬼百合目掛けてばらまく
対する鬼百合も動いていた。十文字大手裏剣六枚を展開
三枚はフルブレットを照準し攻撃指示。残りは風車のように盾に構えて機関砲弾を弾く
ヤミフブキをトリガー。しかしそれはサブマシンガンから持ち替えられたショットガンの片手撃ちに迎撃される
キースがお気楽な調子で口笛を吹き、ユイはつられるように獰猛に嗤う
攻撃指示を与えている大手裏剣三枚に、飛苦無の投射をコマンド。二十四の飛苦無がフルブレットを射抜こうと迸る
だがキースは、みっともないくらいに転けつまろびつ、地面を転げ回るようにして避けた
そう、避けた。二十四の刃を全て
『貴方、本当に人間?』
“同族”では無いの?という言葉は噛み殺しておく
ユイの脳味噌が避けられた事実を受け止め、ディフェンスに展開させている残りの大手裏剣に追撃のコマンドを跳ばしている間には、
膝立ちに身を起こしたフルブレットがライフルでこっちを狙っていた
狙撃仕様、と言うほどの長竿ではない。人間サイズならカービンライフルという程度の、何の変哲も無い手動式の汎用ライフルだが、
吐き出される弾はフレシェット・マグナムと同じく新型の、サチコ主任が悪知恵の絞って作り上げたマッドな代物である
今回登場するのは、ライフルグレネードの様に銃口に銜え込まされた一発
ライフルグレネード、という物がピンとこない読者諸氏は、
“ちっちゃいミサイルを銃口にねじ込んで、それを弾丸をでぶッ飛ばして発射する”様な物とでも思っていただければ幸いである
ただ、サチコ主任が馬鹿正直に、何の変哲も無いライフルグレネードなんぞ造るはずがない
その、小さなミサイルにも似たグレネードの中に装填されているのは、
慣性で飛散しない程度に堅いゲル状の“液体”である
我々にとって身近なレベルで言うならば、餅とか豊胸手術に用いられるシリコンとか、そういう類の物を連想していただきたい
スーパーボールの様なゴムの塊とは異なり、壁に当たって跳ね返るのではなく、壁に当たればべちゃっと潰れるくらいの柔らかさ
“スライム弾頭”とは正に名は体を表すネーミングであるが、一応開発コードもそのまんま“スライム・マグナム”と言う
そんな粘塊が、鬼百合目掛けて放たれた
銃弾ほどの速さを持たないそれは、ユイの目にははっきりと捉えられ、
その危険性を直感した彼女は、全ての行動を放り捨てて地面に身を伏せていた
そして伏せた鬼百合の背中の上を通過していったスライムはそのまま飛翔し、その先に立っていたPFよりも背の高い巨木を直撃し、
恐るべき事に、直径が3m程もある幹を軋ませてその役目を終えた。倒れたわけではないが、明らかに折れそうになっている
小さな弾丸は、主に“貫通”でダメージを与える物だ。だが、中には非貫徹弾の様な“衝撃”でダメージを与える物もある
言ってみればこのスライム弾頭は、超巨大な非貫徹弾なのだ。対象を貫くのではなく、膨大な運動エネルギーで対象を吹っ飛ばす為の
「・・・・・えーっと」
微妙に傾いだ巨木を、困った顔で眺めるキースであった
この破壊力に一番驚いているのは、間違いなく射手であった彼自身だろう
元々は、暴動鎮圧用・非殺傷性という謳い文句でサチコ主任が人間向けからPF向けまで開発した物だと聞いていたが、
こんなもんの直撃を受けて死なない人間は、世界で五指に入る強運の持ち主に違いない。PF搭乗者でも然り、だ
『当たらなければ、どうという事は無いわ』
ユイは冷静にそう呟くが、頭の中では計算を書き換えつつあった
“一撃喰らう覚悟で〜”という条件の作戦定石を全て棄却
徹底して、回避しながら戦うことを決めて、彼女はフルブレットを目標に十文字大手裏剣にコマンドを飛ばした
フルブレットと鬼百合が仕合始めた頃には、アイリとマイも既におっ始めていた
アイリは、修羅姫の緋色の姿を確認し、相対するやいなやこのように述べたのだ
「またあんた!!?今度こそ決着付けてやるんだから!覚悟なさいよ双子の紅いの!!」
一瞬で沸点に達したマイの脳味噌は、売り言葉に買い言葉で言い返す
『そりゃこっちの台詞だグレン小隊の突撃娘!!でっかい声で助けてって言えるように今から喉飴でも嘗めてろ!!!』
「んですってぇ!!!!」
何というか、血気盛んにも程があると思われるかも知れないが、そんなこんなでストラングルと修羅姫は正面からぶち当たった
セストニア氷原戦では、互いに素手の勝負だったが今回は違う
修羅姫の繰り出す死人鎌の斬閃をかいくぐりながら、何とか懐に入り込もうとするアイリだが、それがなかなか適わない
振り切った後の逆刃の追撃を捌ききれず、いくつもの傷が装甲に刻まれる。だが、アイリ・ミカムラは甘くない
水平に薙ぎ払う斬撃を、回避するでもなくガントレットで受け止めるでもなく、左“足”の裏で柄を蹴り付けるように受け止める
そしてそのまま、踏みつけた死人鎌の長柄を足場にする格好で身を起こし、右の回し蹴りで修羅姫の頬げたを張り飛ばす
心の中で快哉を叫ぶよりも速く、死人鎌の逆端から赤光が伸び、ストラングルの左足を払った
修羅姫のヘッドフレームは蹴打の一撃に凹まされたが、ストラングルは左足首の辺りを薙ぎ払われた
どちらも動きに障害が出るほどの、深刻な深さのダメージでは無い
次の瞬間には、仕切直しとばかりに両機はぶつかる。修羅姫がストラングルの御株を奪うような見事な横蹴りを放つ
射抜くような一撃だがアイリは器用にそれを捌き、逆に掴んで軸足を刈ろうとする
見事に刈れた。呆気無い程簡単に、修羅姫は背中から地面に倒れ込む
「え?」
技、という程の物でもない。“双子の悪魔”がこうも簡単にすっ転ぶ筈がない
アイリが思わず驚きの言葉を漏らすが、それは勿論罠だった
仰向けに倒れた姿勢のままマイは死人鎌のブースターを起動する
緋色の機体がブレイクダンスの様な格好で猛然と回転し、繰り出す刃はストラングルの脚部を狙っている
退いていれば間違いなく膝下当たりから切断されていただろう。だがアイリは逆に踏み込んだ
修羅姫の得物は“鎌”だ。長尺兵器は長い竿の先端に刃等を仕込んでいる
左膝の横を、死人鎌の剛竿でしたたかにぶっ叩かれたが、刃で以て斬り落とされるよりは遙かにマシだ
倒れたままの修羅姫の頭を狙ってアイリは右足を振り上げさせるが、踏み下ろすよりも速く、修羅姫は転がり避けている
『どうでぇっ!?』
「ッ!!アンタにしちゃ随分弱気なやり方じゃないのよ、わざと倒れて騙し討ちなんてさ!」
得意満面のマイ目掛けてアイリが吼える。悔しさが滲んでいるためにそこはかとなく挑発口調だ
別にアイリは、先程のマイの立ち回りが卑怯だ。などと言うつもりは無い
卑怯な敵なんぞ上にはフォルセアが居るし、ただ、これまで何度も拳を交えてきた相手にしては、らしくない。そう思っただけだ
対するマイは、思いがけずきょとんとした表情を拵えて、
『当たり前だろ?あたしが一番弱ぇんだから』
間違いでは無い
暁闇小隊を率いる隊長格、この場にいる三人の中で、マイ・キサラギが一番“弱い”。と本人はそう思っている
新兵器を受け取ってすぐにグリュウとユイに模擬戦を挑んだが、マイは一勝も上げることができなかった
そこには、ぎりぎりの均衡があったのだが、結果として、マイは二人共に負けた
だから自分が一番弱い。そう結論したようだ
『隊長やユイには、負けられねぇんだ。おらぁ行くぜっ!!!』
膝立ちから修羅姫目がフルブースト
死人鎌を振りかぶり、大振りな斬撃を繰り出す。しかし本命は振り切った直後に跳ね上げる逆刃の急襲かもしれないし、
零距離まで間合いを詰めてから、長柄の端に輝くレーザーナイフで抉るつもりなのかもしれない
だが、アイリは何も考えなかった、考えられなかった
先程のマイの言葉に、怒りのあまり思考が漂白されていたからだ
軋むような声で、彼女は言う
「・・・・・何が、弱い、よ。それだけの実力がある癖に・・・・・」
振り下ろされる死人鎌を、キレた反応速度で弾き返す
受け止めたガントレットの甲が僅かに凹んだようだが気にしない
たたらを踏む修羅姫に向かって鋭く踏み込む、拳を振るうこともできない程の、鼻先がくっつく程の至近距離まで
「そんなにも“強い”癖に!!嫌味にしか聞こえないのよ馬鹿ぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!」
世にも恐ろしい破砕音が響き渡った
一方、暁闇小隊の別働隊を叩けと言う支持を受けたサリアとセイバーはと言うと、
「このっ!!このこのこのこのこのぉっ!!!」
「あっ、危ない!!」
身軽な動きでこちらを翻弄してくるロキを相手に手間取っていたサリアの背後、
忍び寄るように滑り込んできたキシンがカタナを振りかぶっていた
セイバー機:クラージュが慌てて割って入り事なきを得たものの、流石に二人も認識を改める
“あの”グリュウ・アインソードが率いる小隊だけのことはある。と
「サ、サリア!もっと冷静にならなきゃ駄目だよ!!」
「でももう砲撃隊まで届いてるのに!!早くしなきゃやられちゃう!!」
ゾールシカがハンマーを振るう
重量兵器であるハンマーの一撃はカタナ程度で受け流せるものでは無いが、かと言って直撃を簡単に許すほど暁闇小隊の連中は甘くない
仕留め損じた敵機が返す刀でゾールシカを襲うが、それはクラージュが食い止める
ターヴュランスのサブブースターと機体装着のスライプニルを併用した、ショートレンジの突撃機動
セイバーにしては大奮戦を見せており、撃墜数を着実に重ねているが・・・・・
「く、うわっ!!」
ターヴュランスの姿形は、いわゆる“馬上槍”そのままに、長く、でっかく、そして重い
スピアの様に、振り回して使うことができないために、乱戦時、特に取り囲まれるような格好になると存分に力を発揮できない
下手をすれば穂先を掴まれ、押さえ込まれてしまいそうな場面さえある
レーザースピアのような放熱機構や、スタン・エッジが内蔵されていれば話は違っただろうが、生憎そんな装備は無い
近距離よりも踏み込まれると動きが鈍いクラージュはたちまち取り囲まれて、カタナが無防備な背後から振り下ろされる
セイバーの顔が驚愕に引きつり(怯えた表情は毎度だが)、ランスを手放して逃げるべきかどうするかの逡巡の間に、
「どぉっかぁぁぁんっ!!!!!!」
サリアが割り込んできた。クラージュの頭上を飛び越えながら、フルスイングでハンマーを振るう
字面としては“殴打”だが、人間のスケールとしては交通事故レベルの衝撃を与える打撃を単に“殴打”扱いしても良い物かどうか
サリア的獲物を狙う鷹の目つきで狙われた不幸なキシンは、右半身に鉄槌の直撃を受け、装甲の破片をばらまきながら錐揉みにぶっ飛ぶ
誰もが、その冗談の様に思える光景に意識を奪われ、その瞬間にはセイバーはフルブーストで包囲を突破した
そこへ、砲撃隊からの支援射撃が見舞われる
どうやらグラップラー隊のカバーが間に合ったようだ
「よぉし!どんどん行くわよ!!」
「ゆ、油断大敵だよサリア!」
「もーまんたい!!!」
旧い国の言葉で、“オール・グリーン”の意を笑いながら言い放ち、サリアはブーストペダルを踏みしめる
吹っ飛ぶように加速するゾールシカだが、それを真っ正面からぶつかって食い止めるキシンが居た
ハンマーの長柄にカタナの刃を浅く食い込ませながら、肩のキャノンが零距離で火を噴く
サリアはそれを身を捻って避け、膝を突き上げて突き放そうとするが、それは相手の脚にブロックされ、
逆に頭突きを決められてヘッドフレームを仰け反らせる羽目になった。メインカメラはまだ無事だが、危ないところだった
『なかなかやるようだが、暁闇小隊が隊長と副隊長だけだと思うな!』
ベルモット・ケイ軍曹だった
双子の配属前は、グリュウの副官役を務めていた彼である。腕が悪かろう筈が無い
「こっちだって、グレン小隊は三機だけじゃないんだからぁっ!!」
サリアが顔中を口にしてカウンターを決める
通信の瞬間、ゾールシカのコクピットにはベルモットの顔が映り、キシンのコクピットにはサリアの顔が映った
サリアの顔を見た瞬間、ベルモット軍曹は厳つい顔立ちにある小さな目を瞠り、それと同じ物を見た子分共にこう言う
『・・・・・なかなか・・・・・だが、副隊長には及ばん!!!!!!!!!』
彼の言葉に、子分共も大きく頷く。どういう意味だ
セイバーが、どこか場違いな空気に戸惑いながら、
「ね、ねぇ、サリア・・・・・この人達の副隊長って、あの、双子の悪魔だよね」
「た、多分」
「あの、その・・・・・サリアは、何で負けたのかな?何か雰囲気おかしいけど・・・・・」
『それはな、小僧・・・・・』
それを聞きつけた暁闇小隊の、ベルモット軍曹と愉快な仲間達、又の名を“親衛隊”と渾名される彼らはぎらりと眼光を輝かせて、
ゴリラじみた厳つい表情に若干の照れを混ぜて、声を揃え、以下のように言い放った
『美しさだ!!!!!!!!!!!!!!!!!』
「。」
あっちの方で、双子の膝からかくっと力が抜けるのが見えた。マイが小さく「強さじゃ無ぇのかよ」と呟いた
前戦役の〆に行われた双子による脱走スレスレのグリュウ救出劇。その最中に部下共とは告白じみたやりとりがあったが、
何だかあれ以来、こいつらはどうも開き直ったというか遠慮をしなくなったというか、当人としては恥ずかしい場面が多々ある
そして、響く余韻が収まってから、サリア・バートン少尉が呟いた一言は短い物だった
「・・・・・コロス」
ひぃ、とセイバーが息を呑む
彼の目前でゾールシカは猛然と地を蹴り、スライプニルのフルブーストに推進炎が噴き上がり、草原が焼かれる
その姿はまるで、全身から炎を噴き上げているようにも見えた
「わぁっ!!サリアサリアサリア!!!挑発に乗っちゃ駄目だよ!!!」
「るっさいわね黙ってられるわけないでしょぉっ!!!!コロスッ!!コロシマクルッ!!!!」
怖ぇ。マジ、怖ぇ
「大体なによセイも!フォローとか弁護とか助け船とか色々できるのにぃ!!!」
「え、いや、あの、それは」
サリアが怖かったから、とはセイバーの口からは言いにくい
「ばかばかセイのばかっ!!そんなだからセイはいつまでたってもあたしの家来なのよっ!!!」
「い、意味わかんないよっ!?それに家来って、小学生の時の話じゃなかったっけっ!!!?」
嗚呼、もう何が何だか
予想外の速度で突っ込んでくるゾールシカの姿に暁闇小隊は慌てて身構え、そこにサリアが「ばか―――――!!!!!!」
可憐な唇から迸る可愛らしい雄叫びと共にハンマーが繰り出され、ガードの上から敵機をぶっ飛ばした
豪快なキレっぷりにセイバーは言うまでもなく言葉を失い、ベルモットは「失策だったかもしれん」と胸中で唸りを漏らす
策士、策に溺れる・・・・・は、ちょっと違うか・・・・・?
そんな、乱痴気騒ぎが展開される中、まるでそこだけが周囲から隔絶されているような錯覚を見る者には与えただろう
白鳳と、黒の戦鬼。互いの相対距離は20m
どちらも剣状の近接戦用兵器を用いる高機動型。一足一刀の間合いと言うには少々“近”過ぎるくらいの距離
双方とも、特に身構えもしない。クレスニクは電源の落としたエクスカリヴァを、黒夜叉は抜き身の白菊之太刀をぶら下げている
グリュウは一度周囲を見回して、小さく溜息をつき、どこか遠い目をしながらグレンリーダーに語りかける
『こうして貴様と立ち会うのも、これで何度目になるだろうな・・・・・?』
旧友と話すような調子で、グレンリーダーは思うところの返答を返す
「さぁ・・・・・数え切れないほどの回数、刃を交えてきたからな」
『違いない』
グリュウが笑う。心の底から、楽しそうに
グレンリーダーも笑う。強敵と相見える喜びに
挑発は無い、罵倒も無い、敵同士だと言うのに侮蔑さえ無い
互いの眼差しには、ただ純粋に、相手への尊敬と賞賛と、感謝の念さえある
『では、手合わせを願おうか。アルサレアのエース』
「・・・・・お手柔らかにな。ヴァリムのエース」
そして、両陣営のエースパイロット二人は、まるで御前試合かなにかのように、軽く刃の先端を打ち合わせる
ガツン、と小さく特殊合金同士が触れ合う音が小さく響き、
その瞬間には両機とも弾かれたように後方に飛びすさっている
先程までの静けさはどこへやら。どちらの機体も弓弦を引き絞るように機体に力を溜めている
腰に吊した妖邪の一刀を逆手に抜き、そこに紫電が絡み付くのを確認し鞘に戻す。これを構えるのは始まってからで良い
白菊之太刀の曇り無き白刃をひたりと正眼に据え、黒夜叉の中でグリュウが吼える
『いざ!!!』
ウィングを最大展開。エクスカリヴァの刀身にArガスプラズマの光刃を最大出力でチャージ
パイロットスーツの襟章の裏に一度だけ指を滑らせ、フェンナのくれた祈りの言葉を思い出す。一瞬の瞑目の後グレンリーダーも吼えた
「尋常に!!」
勝負
その言葉の余韻が消える間には、クレスニクと黒夜叉は既に三合、刃を打ち合わせていた
サーリットンでの一騎打ちはお互いに対等の条件・・・・・黒夜叉は白菊之太刀のみ。クレスニクはフォースソードという状況だった
だが今回は違う
黒夜叉は妖邪の一刀を二刀流で操り、クレスニクが握るのは全長13mの、Arガスプラズマが迸るエクスカリヴァだ
互いの機体の持ち得る能力を全開に発揮した戦いである
グリュウの剣術は一見すると直線的な動きだけの、ただ速いだけの攻撃に見えるが、そこには当然練達した技が秘められている
鋭かった斬撃に不意に緩急が混じり、素直な斬撃は悪魔じみた悪知恵に取り憑かれ死角に滑り込んでくる
水平に薙いでくる斬撃はこちらが身構えた瞬間には柄頭で殴り飛ばす動作に切り替わっている
唐竹から乱打乱撃のコンビネーションの中に、紫電の電磁衝撃波:妖邪刀から繰り出される妖の牙が迫り来る
押せば引かれ、引けば押されるやりにくさがあるのだが、グレンリーダーとて負けてはいない
エクスカリヴァの渾身の一撃は言うまでもなく必殺であり、綺麗な一撃が決まれば間違いなくそれで終わる
グリュウ・アインソードともあろう男がそれを簡単に許す筈が無いが、だからと言って怯んではいられない
変幻自在の太刀筋諸共に、黒夜叉の機体までぶった斬る程の刀勢でグレンリーダーはエクスカリヴァを振るう
死角から滑り込んでくる刃が、防御が間に合わず回避さえ敵わぬ白刃の一撃が容赦なくクレスニクに傷を増やしてゆく
だが、それだけだ
傷は傷。小さい傷でも累積すれば致命傷になる。逆に言えば、累積しなければ小さい傷でしかない
言葉遊びな上、このままではダメージを受け続ければ間違いなく致命となるだろうが、“今はまだ”小さな傷なのだ
紫電の衝撃波を真っ向受けて立ち、クレスニクは黒夜叉目掛けてフルブースト
寝かせたエクスカリヴァの刺突撃は身を捻って避けられる。だがそこから横薙ぎへスイッチ、これは逆手の妖邪刀に食い止められた
喉元に迫る白菊之太刀。ヘッドフレームを振って避けようとするが僅かに掠めて通り過ぎた
密着状態のまま強引にブーストし、クレスニクは肩口から黒夜叉にぶち当たる
これはグリュウも予想していなかったらしい。タックルをもろに受けて黒夜叉は体勢を崩した
クレスニクはフルブーストの勢いをそのままにエクスカリヴァを押し当てるように繰り出そうとするが、
妖の牙が先程まで右腕があった空間を食い破りながら駆け抜けた
冷や汗を感じながら、確かに見た。体勢を崩しながらも妖邪刀を左手に抜いている黒夜叉の姿
きっとグリュウも同じ様な顔をしているだろう。彼だって自分がこんな風に仕掛けるとは思っていなかっただろうし、
どちらにとっても、万に一つの僥倖が重なっただけのこと。張られたロープの上で踊るような緊張感
怖い、滅茶苦茶に怖い。だが、どこかでそれを楽しいと感じるキレた自分が居る
黒夜叉のメインフレームに、僅かだが、エクスカリヴァが灼いた傷が斜めに走っていた
対するクレスニクは、全身既に傷だらけだが、機能障害が発生するほどの傷は無い
グレンリーダーの顔に獰猛な笑みが浮かぶ
「存分に楽しもうじゃないか。ヴァリムのエース」
サーリットンでも交わした言葉を今一度繰り返す
一瞬、グリュウの瞳に驚きの色が混じり、次の瞬間には彼特有の、飢えた人食い虎が浮かべる様な獰猛な笑みを見せている
言葉は無かった
黒夜叉が左腕に構えた妖邪刀が空を掻きむしり、幾つもの紫電の牙がクレスニク目掛けて疾っている
その時には、クレスニクは既に跳んでいた。機甲の翼を打ち振るい、巨大な光刃を大上段に構えてパワーダイヴ
如何に白菊之太刀が門外不出の秘伝を駆使して鍛えられた銘刀とは言え、その斬撃には耐えられぬと見たのだろう
黒夜叉は後ろに転倒する寸前の様な格好で後ずさり、今度はこちらも宙に舞う
蒼天を呪うような、黒の戦鬼が白鳳ともつれ合う。足場の無い中空は、完全に機体の運動能力が物を言うフィールドだ
その点では黒夜叉が一歩優っているのだが、ウィングを装備したクレスニクの方が空中機動力は安定している
それ程、優劣の差は無い
フルブーストで一合一合を叩き付け合うような展開もあれば、もつれ合ったまま乱斬乱撃を繰り出す場面もある
それは戦いの筈なのに、
それは殺し合いの筈なのに、
何故だろうか。それがまるで、刃を以て互いの魂を研磨しているように見えるのは
<リベル本島:ヴァリム軍本拠地>
「グリュウ達、押されてるのか!?」
「そうみたいね・・・・・援軍も直接支援に回さなかったみたいだし、いくらアインソード中尉でも無茶よ」
「どういうこった?」
「自分達は良いから、他の危ない部隊の救援に行かせたらしいわ。
お陰で壊滅した部隊の救助はできたけど、南方面でアルサレアと交戦してるのは実質暁闇小隊だけなのよ」
「んだって!?」
奥歯を噛みしめて、今にも火を噴きそうな眼差しのダンが怒鳴り返す
怒鳴られたって、出撃命令が無い以上、ルキアにはどうすることもできないのだけれど
「西方面も、別働隊・・・コバルト小隊に大分押し込まれてきてるらしいし・・・・・」
「おぃっ!それってかなりやべぇ状況なんじゃねぇかっ!!」
「言っとくけどね!討って出るよりも本拠地の守りを固める方が優先だからね!!」
ちっ、と舌打ちを一つして、ダンはまるで熊のようにうろうろと歩き回り始めた
落ち着かないのはダンだけではない。小隊の子分共も似たような顔色になっている
煉獄小隊の役割は強襲部隊だ。その性質故に隊員は須く勇猛果敢だが、それが為に待ちに弱い
じりじりと神経を磨り減らすような睨み合いや、敵を目前にしての待機などを強いられると、いとも容易く士気が萎える
出撃すれば、溜まりに溜まった鬱憤を晴らすべく、獅子奮迅の大活躍を見せるのだが、
作戦も隊列も糞喰らえのスタンドプレーに走りがちで、結局弱体化させられている
だが、妙だ。とルキアも考えていた
隊長として、ダンにはああ言ったが、本拠地の守りを固めるにしても、自分達が出撃して友軍の撤退の時間を稼ぐべきではないかと思う
交戦ではなく、あくまでも離脱支援。少しでも多く残存戦力を掻き集めて、強固な防衛設備のあるリベル本島本拠地で籠城戦に持ち込む
それがベストなのではないかと、彼女はそう思う
だが、彼女の思惑など知らぬげに、上層部:ベリウム・ヴァレリアス総司令は煉獄小隊に現状維持を命令した
それ以降は、名も知らぬ上官が馬鹿の一つ覚えのように「命令に変更はない」と繰り返すばかりで、ベリウムの声は聞いていない
どういうつもりなのか?
勝つつもりなど無いのではないか、とさえ思えてくる
自分の知らぬ所で、何か別の思惑が、はっきり言えば陰謀が動いているのではないか
彼女の中の“隊長”は、考え過ぎだ、もっとましな考えに脳味噌を使え。と説教を垂れているが、
彼女の中の“ルキア”は、今すぐ戦況とこの本拠地に何があるかの調査をするべきだと叫んでいる
思考の檻の中で足掻いていると、不意にダンの怒鳴り声が響き彼女の意識は現実に引き戻された
「何だと・・・・・確かなのか!?」
「ダン?どうしたの?」
振り返ると、帰還したばかりなのだろうパイロットスーツを汗と煤に汚したパイロットが、荒い息をつきながら床にへたりこんでいた
震える唇が、何かを呟くがそれははっきりとは聞こえない
ダンが襟首を掴んで耳元に口を寄せさせる
数秒の後、ダンは彼の襟から手を離し、脇に手を入れて丁寧に壁際まで引きずってやる
壁にもたれかかったそいつは、その途端死んだように沈黙した。過度の疲労に一瞬で眠り込んだのだろう
「ダン、その人は・・・・・何て?」
「バールの奴がやられた。西方面の拠点が落ちたってよ」
「な」
驚きのあまり言葉も無かった
バール・アックス大佐と言えば、ヴァリムでも有名な、グリュウ・アインソードに次ぐ実力者と言われているというのに、
それが、アルサレアの精鋭部隊:グレン小隊ではなく、“ただの”Gエリア制圧部隊:コバルト小隊に敗れたというのか?
相手の実力を、どこかで過小評価していたのだろうか?と考えるが、ダンは鼻で笑ってこのように斬り捨てた
「ま、バールの間抜けじゃそんなもんだろうさ」
「ちょ、ダン!?」
ルキアは慌てて窘めようとする。当たり前だ、ダンの階級は少尉、バールの階級は大佐なのである
5階級も上の上官を扱き下ろす台詞を誰かに聞かれたらまずい・・・・・部下共はみんな聞いていたが
「ともかく、ここまできたら笑えるくらい最悪だぜ。ホントに勝てんのか?」
「ダン!!!」
今度こそ、ルキアはダンを怒鳴りつけた
仮にも小隊を率いる人間が、あっさりと「勝てんのか?」などと口にしてはいけない
だが、怒鳴るだけでそれ以上のことが何も言えなかったのは、彼女もまったく同感だったからだ
このままでは負ける
最早、確信に近い
勝てる見込みが、無いのだ
とっておきの切り札でもあるなら話は別だが、今本拠地にいるPFと防衛施設だけで、勢いに乗るアルサレアを跳ね返せるとは思えない
ベリウム子飼いの私兵団は高級な機体を揃えているものの、その質は軍人と言うよりも傭兵であり、統率のある行動ができていない
功を焦るあまり突出しがちで、連携も何も無く突っ込んでは撃破される・・・・・これでは新兵以下だ
使えん味方は敵よりも厄介だと本気で思う
「ルキア、出撃しようぜ。このまま黙ってても何にもならないぞ」
「・・・・・でも」
「それによ、おかしくねぇか?」
「何が?」
「周り見てみろよ」
促されて、ルキアは今いる場所・・・・・格納庫をぐるりと見回した
居るのは、煉獄小隊の子分共と、自分達のPF。そして命からがら帰還してきたぼろぼろの友軍機と、手当を受けるパイロット達
気付いた
確かにおかしい
「・・・・・整備班が、一人も居ない・・・・・?」
「あぁ、何時間か前によ。何か連行されるみてぇに引っ張られていったんだ」
「連行って、保安部?」
「いや、もっと胡散臭ぇ連中だ・・・・・何か企んでる感じの連中だったぜ」
ダンがそう言った直後だった
突如として格納庫の照明が落ち、赤色灯の薄暗い明かりだけが微かに点った
突然の事に小さく悲鳴を上げてしまうルキアである。咄嗟にダンにしがみつき、直後に突き飛ばしたのは・・・・・まぁ、お約束だ
続いて襲ってきたのは、小規模な地震のような揺れである。爆撃のような揺れではないが、地震のようでも無い
まるで、巨大な何かが動き出そうとしている様な
ルキアはそれ以上時間を無駄にはしなかった
「煉獄小隊総員は直ちに搭乗!救護班は負傷者を安全な場所まで運んで!破損機体は今は放っておきなさい!!」
少女ながら、なかなかの威厳である
待ってましたとばかりに、ダンを筆頭に煉獄小隊の子分共は一斉に愛機に駆け寄って行く
『第一隔壁、第二隔壁、順次解放。最下層作業員は直ちにシェルターへ避難。
他作業員は避難マニュアル15ページに従い直ちに避難を―――』
突如として、スピーカーから合成音が口をきいた
ルキアは思わず振り返る。最下層作業員は直ちにシェルターへ避難?“最下層”って何だ?
『第一から第八まで、ジェネレーター回路を変更。誘導灯に従い、作業員は―――』
ジェネレーター回路を変更?それで、格納庫の照明が落ちたのだろうか?
いや待て、格納庫の照明“まで”落とすというのはどういうことだ?
これでは修理も何もできないだろうに
「ルキア!急げよ!!」
「わ、わかったわ!!」
『搬送エレベーター、ルート上の隔壁を順次解放』
搬送エレベーター?
紅兎に乗り込みながらルキアは首を捻った
何かを出そうとしているのは確かだが・・・・・一体何なのだろう?
「副隊長!隔壁が開きません!ここの電源まで落ちてやがる!!!」
「んだって!?・・・・・ょし、どいてろ!!!」
閉じたまま動かなくなった隔壁目掛けて、ダンの拳が唸りを上げる
それを見た子分共が一瞬顔を見合わせ、ダンに続いてそれぞれの得物を振るい始めた
連続して響く轟音を聞きながら、ルキアはスピーカーから垂れ流しの合成音声に聞き入っていた
『起動プロセス、0001〜3872まで―――オールグリーン』
「よっしゃ!開いたぞ!!」
恐るべき事に、耐爆隔壁をぶち破ったダンとその子分共の快哉が響き、薄暗かった格納庫に陽光が差す
赤色灯一つっきりの格納庫と違って、外は明るい
天候そのものは曇りがちだが、長い間格納庫に閉じこもっていた一同の目には眩しいくらいだった
『天蓋、最終隔壁解放。エネルギーライン直結』
「ルキア!急げって!!」
「う、うん」
心のどこかに、命令違反を咎める自分が居るのだが、ここまで来て躊躇ってはいられない
紅夜叉と紅兎は、煉獄小隊の子分達と共に、フルブーストで外へ飛び出した
轟音の残響が、空っぽになった格納庫に響く
そんな空っぽの内臓のような空間の中で、スピーカーだけが淡々と言葉を紡いだ
『最終安全装置解除―――――“
モニターの照り返しと、イルミネーションのように輝く発光ダイオードのグリーンの中で、そいつは嗤った
『思い知れ・・・・・愚かなる者共よ』
リベル諸島南方面では、グレンリーダーとグリュウが百数十合目の斬撃を交わした時だった
突如として、サブモニターにフェンリエッタの顔が大写しになり、一言、短く叫ぶ
『リベル本島方面に強力な光と熱を観測!!気を付
そこでノイズの炸裂に飲み込まれた
誰もが、何らかの形で異変を察したのだろう
動きを止めて、北の空を見上げている
その視線の先で、何かが光った
<宇宙:シードラボ>
外見は、ほぼJ−フェニックスにそっくりだった
ただ、本家は白を基調としたカラーリングの筈なのだが、こいつは真逆に黒を基調にペイントされている
キースが見たら“時代遅れのカラス塗装”と笑うだろうか
ただ、背中に必ず装備されているはずの、シンボリックな機甲の翼、ウイングパーツは除装されており、
代わりに、ラグーンブーストと呼ばれる宇宙用大出力ブースターがマウントされていた
話によると、こいつはスライプニルの作成過程で設計された物で、推進力はスライプニルよりも数段劣るのだが、
その分、素直で扱いやすいらしい
「本当は稼働テストの一つもするべきなのですが・・・・・時間がありませんから」
リーネが不安そうに呟く
こんな風な機体の運用など、常の彼女なら許す筈が無いだろうが、今は状況が状況である
バックスやカグヤ、多くの作業員から、報告が入る
「関節周りの動きやシールドには問題ありませんでした」
「出力系も調整完了です」
「誰かバリュートパック一式の整備終わったからチェック手伝ってー!!」
クリオの言葉に、反射的に背を預けていた壁から離れる202特務小隊の隊長、ブレッド・アローズ(療養中)だが、
途端にリーネとカグヤから物凄い目つきで睨み付けられた
バックスが苦笑いを浮かべながら小走りに格納庫の隅へ向かう
「中尉さん、搭乗してコクピットまわりの調整をお願いします」
「了解」
シオンは、ヘルメットを片手に床を蹴り、コクピットまで漂って行った
最初こそ、慣れない0Gに不安を感じていたが、慣れれば結構面白い。とシオンは本気で思う
いちいち梯子を掛けて登らなくても良いと言うのは便利だが、これに慣れすぎると地上に戻ったときが大変そうだ
ムラキにしごかれるかもしれない
「よ、っと」
ハッチに掴まり、まずはヘルメットを放り込んだ
続いて彼自身がコクピット内に滑り込む。新品の抗加速仕様のシートからビニールカバーをひっ剥がす
この瞬間が、何故、こんなにも嬉しく思えるのだろうか
改めて見回すコクピットは、スライプニルを使ったときと同じスタイルの、レーシングバイクのシートに似ていた
柔らかいウレタンフォームのシートに伏せ、フットペダルの位置を確認する
感圧スティックの操縦桿の位置、モニターの位置・角度。何気無くモニターの裏に手をやると、
そこにはやはりパネルがあり、中にはガス式の無針注射器と正体不明なアンプルが
「リーネ主任。良いですか?」
『あ、はい、どうかしましたか?』
モニターに映るリーネの顔
カメラの真正面に、探り出した注射器とアンプルを持ってきて
「これは、何ですか?」
『あぁ、それは鎮痛剤と睡眠薬です』
「・・・・・睡眠薬?」
『はい。即効性で効果は抜群ですよ。時限作動式の気付けアンプルも入っていますから、
大体一時間くらいで眠気もなくすっきり目覚める筈です』
「でも何の為に、ですか?睡眠薬なんて」
鎮痛剤と間違えて使ったりしたら大変なことになるのに、とシオンは思う
だが、彼の考えに反して、リーネの返答は単純明快な物だった
『眠ってれば、怖くないですよ』
でっかい疑問符を頭上に浮かべるシオンである
その顔にピンときたのか、リーネは慌てて捕捉した
『説明不足でしたね。軌道降下は降下開始から地表到達まで大体1時間以上掛かるんです。
原則ブースターの制御やバリュートやパラシュートの展開、スラスターによる姿勢制御なんかは全部プログラムしてありますから。
要するに、軌道降下の最中、パイロットがすることは何も無いんですよ』
「・・・・・何も、ですか?」
『はい、だからとても暇でしょうし、それに眠っていればPF酔いも防げますよ。
無重力下で“もどす”のは、本当に危険ですから』
いや、0Gでのゲロは本当に危ない。気道に詰まって窒息する可能性もある
ひとまず納得するシオンだが、これにはもう一つの意図があった
軌道降下の最中は退屈だろうし、やることもないから眠っておいた方が良い。これも回答の一つである
軌道降下の最中にビビッて勝手に突入軌道から外れて大気圏で消し炭になりたくなかったら寝とけ。これも回答の一つである
宇宙からの大気圏降下は、とてもデリケートな姿勢制御が必要なのである
突入軌道の細さたるや、地球の大きさを人間に例えるならば、髪の毛一本分ほどの細さしかないのだ
その軌道から外れば、大気摩擦で燃え尽きてしまう。流れ星の一丁あがりである
だから、余計な手を“出させない”為に眠らせておけ。というのが、この睡眠薬が置かれている本音なのだろう
『使用の判断はお任せします』
「了解しました」
とはいえ、
軌道降下の最中に何かがあったら、と考えてしまうのが人情である
実際には、“何か”なんて起こってはならないし、それに対処するのはシオンではない
眠りこむ事への不安は大きいが、起きておくのも何だか心配である。「怖いから寝ておけ」とまで言われては
悩んでいると、不意にリーネの声が呼び掛けてきた
『中尉さん良いですか?』
「あ、はい。何か?」
『今の内に、02の兵装について簡単に説明しておきますね。
バックパックのラグーンブーストは、スライプニル経験者の中尉さんなら大体わかりますよね?』
その言葉に、苦笑いを浮かべるシオンだった
ゴスティール山脈攻略戦で、アイリ、リンナと共にスライプニルを用いて敵拠点を急襲し、
スティールレイン砲撃隊と共に荷電粒子砲台:ハデスズ・ボイスを破壊したことは記憶に新しい
その作戦の直後に、重度のPF酔いでリンナ共々医務室に担ぎ込まれたところまで
『あと、両脇に吊ってあるガトリングですが、武器はこれだけです』
「はいっ!?」
衝撃の事実に目を丸くするシオンである
『仕方がないんです。軌道降下の際に脱落や破損などの事故に見舞われる可能性を少しでも減らしたかったので、
02の両腕と背中のサブアームにほとんど固定しちゃってますから』
「近接装備も、無しですか?」
『無しです。指先の露出だってほとんど無いくらいですし』
マニピュレーターは繊細な稼働部分である
ヒートストレスで故障を招かない為に、手の甲には拳をすっぽり覆うほどの丸い籠手が取り付けられていた
一応指を伸ばせば籠手から関節一つ分くらいははみ出るのだが、これでは物を握るのは難儀そうである
『あ、ガトリングのトリガーはちゃんと引けますから安心してくださいね』
「・・・・・了解」
『そんな顔しないでください中尉さん。そのガトリングだって、01のエクスカリヴァと同じく秘蔵の最新兵器なんですよ』
「え?そう・・・・・なんですか?」
どう見ても、彼の愛機:インペリアルが撃破される瞬間まで使っていたガトリングと大差無い
強いて言えばバレルが少々長く、背中から伸びるサブアームによってメインフレームと固定されている為に、
片手で持っても安定感はある。これならペアで構えても問題なく使えそうだ
だけど、それだけでは無いのか?
『そのガトリングのバレル、実はリニアバレルなんです』
さらり、とリーネは述べたが、シオンは絶句した
つまり、このガトリングの八連装バレルは、一つ一つがディンゴの装備しているレールキャノンと同じ仕組みを持っていることになる
内部機構の複雑さよりも、どれほどの電力を食うのか想像もつかない
弾丸の一発一発を電磁滑走で撃ち出すなど
『ジェネレーターのことなら心配要りませんよ。
そっちも新型ですから、1000発以上連射してもジェネレーターが音を上げることはありません』
「永久機関でも開発したんですか?」
胸を張って断言するリーネに、もはやシオンは呆れた調子で返すしかない。馬鹿馬鹿しささえ感じてくる
『そのリニアガトリングのメリットは、何よりも装弾数です。
発射に炸薬が要らない分、弾丸を従来よりも小さくできましたから、従来型のガトリングの3倍以上の装弾数が売りですね。
弾は、色々試作型があったので一番凶悪そうなのを詰め込んでおきました』
「・・・・・お心遣い感謝します」
『それと、言いましたよね?02は最大の防御力を求めて造られた機体ですって』
「えぇ」
『その秘密が、胸と両腕に装備されている3枚のパネルです』
確かに、02の胸と上腕部あたりには、装甲版とは明らかに趣の異なる3枚のパネルが取り付けられている
黒を基調としてカラーリングされている02だが、その3枚のパネルだけは暗い金色にペイントされているために非常に目立っていた
『その三枚のパネルが、超電磁場展開バリアシステム“アイギス”です。
実験では、至近距離で撃ち込まれた銃弾だろうがビームだろうが弾き返したらしいですよ。
データ上では、Gエリアに建造されていたヴァリムの大型家電粒子砲台、ええと、確か名前が・・・・・』
「ハデスズ・ボイス」
『そうそう、それです。よくご存じですね』
「そのハデスズ・ボイスの破壊任務に当たったのが、コバルト小隊だったんですよ。
報告を上げたのも、私達でした」
あの時のことを思い出すと、今でも胸が痛む
ただ一途に、家族の為だけに戦い、そして死んだ敵軍の将のことは、シオンは決して忘れられないだろう
彼の家族が残した悲痛な叫びのことも
『そのハデスズ・ボイスの荷電粒子砲の直撃にも何とか耐えられるらしいですよ。防御力は“絶対”級ですね』
「・・・・・嘘でしょう?」
『嘘なんか言いませんよ』
「でも、だって、あのハデスズ・ボイスは、バルメッタ島を丸ごと消し飛ばしたような砲台ですよ!?」
『えぇ、計算上はあのくらいならまだ大丈夫らしいです。でも、“アイギス”展開中は他の行動は一切できませんし。
なによりエネルギーの消費量がとんでもないですから、連続使用は15秒程度だと思っていてください。
02のジェネレーターはリミッターを外してありますから、無理をさせると爆発しちゃいますよ』
「。」
何でそんな機体を、とはシオンの口からは言いにくい
『計算上では18秒が限界です。良いですか、絶対に、約束ですよ!』
「わかりました・・・・・しかし、とんでもない機体ですね」
『クレスニクプロジェクトでも、異端視されていましたからね。装甲に頼らず、エネルギーフィールドを盾にするなんて』
エネルギーフィールド展開型の盾、というのは、今となっては別段珍しくもない
アームドシールドやVシールドなども、装甲表面にエネルギーフィールドを展開することで、
荷電粒子兵器のダメージを軽減することに成功している
だが、あくまでもフィールドの展開は補助的な物であり、盾の本質はその“物理性”にあるのだ
形無き光の盾。02のバリアシステム“アイギス”は、確かに異端だろう
「それもそれですが・・・・・むしろ驚異なのはこの機体のジェネレーターですよ。一体どんな代物なんですか?」
別段、深い意図があったわけではない
ただ、疑問に思ったことをシオンは口にしただけだったのだが、リーネは目に見えて顔色を変えた
呆気に取られるシオンだが、モニターの向こうのリーネは執拗に周囲を見回し、この会話を誰も聞いていないことを確認して、
『・・・・・中尉さん。これだけは約束してください』
「は、はい」
『その機体、絶対に撃墜されないようにしてください。何があっても、絶対に』
ただならぬ口調だが泣きそうな顔である
立場から言えば、教えない方が良いのでしょうけど。と彼女は小さく前置きをして、シオンに語り始めた
『中尉さんは、不思議には思いませんでしたか?何故、その機体がここで製造されていたのか』
「えぇ、地上の工廠の方が人員も設備も整っている筈ですよね。機密保持の為、とか考えていましたけど・・・・・」
『表向きの答え、としては正解です。シードラボに、スパイが潜り込むのはなかなか大変でしょうからね』
間違ってはいないらしい
だが、表向きの、とはどういう事だろう。もっと、何か隠して置かなくてはならないとんでもない秘密があるのだろうか
「その機体のジェネレーターは、最近、ミラムーンからの技術供与で受け取った物なんです。大統領からの直接交渉で、極秘裏に。
そのジェネレーターの正体を知っているのは、首相閣下と将軍閣下、あとは作戦本部長と参謀長、他の高官が数名程度です」
ミラムーンから。大統領から直接。極秘裏に
その一言で、何となく話が読めた
クレスト大統領就任以後、内部のごたごたは一掃されつつあるらしいが、未だにミラムーンは水面下で不安定な情勢にある
恐らく、このジェネレーターがヴァリムの手に渡ることを恐れた大統領が、自国での量産を諦めアルサレアに手渡した
理由としてはそんなところだろう
では、このジェネレーターの正体は何なのか?
常識外れの高性能、ミラムーンの大統領自らが直接託したその真意、絶対に撃墜されてはならないその理由
ここ、シードラボで開発されたのは何故なのか、情報漏洩の予防線と同時に張られたもう一つの線
それと、もう一つ・・・・・
「・・・・・ミラムーンで、新型動力源の開発実験中に事故が起こった。という話を聞いたことがあります」
『・・・・・流石に、中尉さんは察しが良いですね』
そうです。とリーネは頷いた
その事実に、シオンは体中の骨が凍り付いたような、魂の底まで凍り付くような恐怖を感じる
そんな馬鹿な、と思いながらも、凍てついた脳味噌は冷静に事実を受け止めている
全ての線が繋がるのだ
常識外れの高性能、ミラムーンの大統領自らが直接託したその真意、絶対に撃墜されてはならないその理由
ここ、シードラボで開発されたのは何故なのか、情報漏洩の予防線と同時に張られたもう一つの線
そして、ミラムーンで起こった、新型動力源の開発実験中の事故。その事故を経て産まれた兵器は、ヘルファイアと呼ばれている
リーネは恐怖の名を、震える声音で紡ぎだした
『“ゲヘナ・ドライブ”。それが、そのジェネレーターの名前です』
シオンは黙って、胸中でその名を反芻する
『当初は、リミッターを取り付けるはずだったのですが、ブラックボックス化された部分が多すぎた為に、
結局・・・・・手出しができなかったんです』
言い訳の言葉を、リーネはこれ以上無いくらいの悔しさを込めて呟いた
「もし、“アイギス”を限界以上に使ってジェネレーターがオーバーロードしたり、機体そのものが破壊されたときには・・・・・」
『爆発します』
何の容赦も無い一言だった
『ただの爆発ではありません。およそ、ヘルファイアの40倍の規模の大爆発が起こると推測されます』
サーリットンでヘルファイアをぶっ放したのは、他ならぬシオン・マクドガル本人だったが、
あの時は、直径およそ20kmの広範囲を焼き払ったのだという
勿論そんな実感は無かったが、今回は更に桁が違う。単純計算で直径800kmが大爆発に巻き込まれるというのか
直径800kmという範囲を我々にとって身近なレベルで想像するならば、
大阪〜鹿児島までが収まるくらいの規模の台風と日本列島を重ね合わせた様な図を想像していただきたい。つまり日本の半分が消える
リベル諸島域ならば、完全に消し飛ぶだろう。そこにいる全ての存在諸共に
どちらがマシだろう?
ヘルファイアは、本来はこの、“ゲヘナ・ドライブ”の作成過程でできた副産物である
直径20kmを吹き飛ばす爆弾と、不安定で、暴走すればその40倍の規模を消し飛ばす超高出力ジェネレーター
20kmで済む“兵器”と、800kmを巻き込む“部品”
フォルセア・エヴァがこのジェネレーターの所在を突き止めたならば、
彼女は嬉々としてデススコーピオンにゲヘナ・ドライブを組み込むに違いあるまい
そうなれば・・・・・
『中尉さん。これが最後のチャンスです』
「・・・・・はい」
『降りるなら、今ですよ。ドラグーンタイプならすぐに動かせる機体があります。
Gエリアでの戦闘をこなせるかどうかはわかりませんが、少なくとも02程の制約はありません』
至って普通の機体です。とリーネは付け加えた
ドラグーンタイプのことはシオンも知っている。シードラボが開発した、無重量空間専用PFの銘で、
今では有重力操機も問題無くこなせるように調整された、言うなればフェニックスタイプの発展型とも言える良い機体だ
だが、極所環境下で、額面通りの動作が保証できるかどうかは、限りなく怪しい
『私の個人的な意見を言わせてもらえれば、02はまだ世間の目の前に出すべきではないと思います。
・・・・・ですが、Gエリアでのヴァリムの動きが不穏であることなど、不確定要素が多い為に断言はできません』
「えぇ、その辺りは少しは聞いています」
シオンも、神妙に頷いた
Gエリアにおけるヴァリム勢力の方針の転換
広い領域を占領していたヴァリムだが、シオンがサーリットンに渡った頃から一変して戦力を集中させ始めていた
それはつまり何なのか
“広く薄く”では対応しきれないと悟ったからなのか
それとも、別の思惑があるからなのだろうか。未だにその答えは出ていない
「・・・・・この機体で、02で行きます」
はっきりと、覚悟を決めた“漢”の顔でシオンは言い切った
その様子に、リーネは呆れたような溜息を一つつき、シオンに訊ねた
『では、コールサインを決めていただけますか?“クレスニク−02”だけじゃ、
将軍閣下の“クレスニク”と同じだから駄目ですよ』
「うーん・・・・・」
一応、頭を捻るシオンだが、やはり、誰よりも長く自分と共に歩いてきてくれた相棒の名前を、捨てたくはなかった
「やっぱり、“インペリアル”で、“クレスニク−02:インペリアル”をコールサインとして登録します」
『了解。02(ゼロツー)インペリアル。ですね』
どうやら、リーネなりのアレンジが加わってしまったようだが彼として何の異存も無い。シオンは改めてコクピットの中を見回す
見慣れた部分など何一つ無く、ビニールカバーを剥ぎ取ったばかりのシートは新車の様な匂いが鼻につく
血も、汗も、涙も、自分の顔も知らない、他人行儀なコクピット
「・・・・・長いか短いかはわかんないけど、よろしくな」
返事の言葉など返ってくる筈も無かったけれど、彼は己の“相棒”に小さく呼びかけた
「そう言えば主任、どうして中尉の降下をわざわざ直接降下にしたのですか?」
緊急時用のバリュートパックを取り付けられた02を、難しい顔で睨めっこしているリーネにバックスが声を掛けた
壁により掛かって作業を眺めていたブレッドも「そう言えば」という顔になる
「軌道エレベーターまでの足を手配すれば、それでも良かった筈だよね。どうしてなんだ?リーネ」
「一つは、僅かでもGエリアへの帰還を早める為。もう一つは、軌道降下強襲ポッドの有効性のテストです」
軌道降下強襲ポッドとは、読んで字の如く。敵陣を軌道上から強襲するための降下ポッドである
遺憾ながら、PFは単体で軌道降下を行うことができない
02に装備されたバリュートパックだって、あくまで緊急時用の物であって、これ一つで簡単に軌道降下ができるわけではない
現在の所、惑星J〜宇宙までの行き来は、主に軌道エレベーター。もしくは軌道往還シャトルである
理由は簡単。面倒が少ないからだ
ただ、シャトルの類は大規模な輸送には向かず、軌道エレベーターで兵器を輸送するのは世論がうるさい
しかしそれ以上に、単体での軌道降下はとかく面倒が多い。突入軌道の算出、減速のタイミング、軌道補正の出力、姿勢制御の維持
降下の最中、どれか一つでも計算が狂えば大気圏で消し炭になる運命を辿らなくてはならない
降下した後は、現在位置と進行方向・速度を確認し、外殻を排除して巡航に入る
ポッドが完全に使い捨てになるために、高くつく手段ではあるが、最も速く、シードラボで制御の全てを受け持てば安全性も高い
「でもさ」
思案顔のクリオが、運ばれてきたポッドを眺めながら呟いた
砲弾型のポッドは、平面の方に馬鹿でかい減速ブースターが取り付けられている
「あのポッド、どうやって軌道に入れるの?まさか、あたし達で運ぶ?」
「まさか」
ちゃんと考えてありますよ。という顔でリーネは胸を張った
「カグヤさん、RCTのセットをお願いしますね」
「RCT・・・・・ですか?」
顔を見合わせて小首を傾げるカグヤとクリオだが、ブレッドとバックスには判ったらしい
引きつった表情で、こめかみに冷や汗を浮かべていた
引っ張るのはこれくらいにして、RCTとは何か
設計当初、これでヴァリムに直接攻撃を仕掛けるためとか、シードラボの攻撃要塞計画の名残とか、宇宙人が攻めてきた時の為とか、
色々言われていたがどれも違う
シードラボに埋設されている大型電磁滑走輸送路。ラボから惑星上へ、貨物を“投下”する為の大規模搬出機構
RCT=“レールキャノン・トランスポーター”の略である
念の為に申し添えておけば、“断じて人間の輸送を目的とする物では『無い』”
「本気で、使うのですか?」
「これが最も無駄が無いですよ」
リーネは笑顔で頷いた。恐ろしいほどにっこりと
たしかにそうだ。ポッドそのものを砲弾のように、リニアバレルに乗せて射出すれば運動エネルギーはそれだけで十分に事足りる
RCTの射出出力を調整すれば、シオンが圧殺されることもないだろうし
『機体側の調整、完了です・・・・・どうしたんですか?』
何も知らないシオンが、暢気な口調でモニタに現れる
そんな彼に向かって、リーネを除く202小隊の面々は厳かな面持ちで十字を切っていた
レーダー圏内に迫りつつある敵影の所在を、今はまだ、彼らは知らない
Gエリア、リベル本島から放たれた悪鬼の眼光に、Gエリアの一部がまた焼き尽くされたことも
○用語(誤)集、順不同
・この用語集とゲーム本編は、ほとんど関係有りません
加えて、想像で書いている部分がほとんどです。あんまり深く考えちゃダメです
フレシェット・マグナム、オリジナル兵器
・ショットガン用の新型弾薬
形状は九粒散弾だが、一粒一粒が形状記憶合金でできており、飛翔しながらその身を短針弾(フレシェット)に換える自己鍛造弾
殺傷性があまりに高いために今まで実用化はされていなかった。“技術開発部の悪魔”サチコ主任のお手製
スライム・マグナム、オリジナル兵器
・ライフルグレネード状の新型砲弾
汎用ライフルのバレルにねじ込んで使う。小さなミサイルのような外見をしている
中に装填されているのはゲル状の液体。貫通力では無く、その運動エネルギーで対象を張り飛ばす。巨大な非貫徹弾
“技術開発部の悪魔”サチコ主任のお手製
カイザー・ガントレット、オリジナル兵器
・J−2で言うところのゴッドアームと同じ様な物だと思ってください
名前を変えてあるのは、単に“ゴッド”とか大袈裟な単語を使いたくないから・・・・・
特殊合金製の頑丈な籠手。ただそれだけのもの。それだけに非常に堅牢で、アイリの拳で放たれれば正に必殺拳
ターヴュランス、オリジナル兵器
・セイバーに支給された(!)新兵器
サブブースター内蔵の長大なランス。同時に支給されたスライプニルと合わせて突貫能力はピカ一である
サブブースターの推力方向を操れば錐揉み機動での突撃まで可能にするとんでもない新兵器
ちなみに、ターヴュランス=乱気流の意味
死人鎌、兵器
・BTで初登場した鎌系カテゴリの中でも最後に登場した兵器破壊系の一品
文中ではえらくゴテゴテしていますが、ゲーム中ではそんな事実はありません
マイの弱点をカバーするために改良された大鎌で、これにより修羅姫は見た目の禍々しさも5割増し
四十八連飛苦無、オリジナル兵器
・アイデアの元は、J−2で搭乗した八連苦無ですが・・・・・四十ほど余計です
手裏剣の刃を分解して、電磁加速投射で対象を射抜く飛刀
ユイの弱点をカバーするために改良された十文字大手裏剣
・・・・・考えていて、無茶が過ぎるかと思いましたが・・・・・あえて採用!
ダークアームド、PF
・BTのシナリオパート、セミファイナルを飾る強(?)敵
J−アームドよりも武装の構成が攻撃的で、敵に回せばミサイルにグレネード、コアバスターとかなり厄介
しかもシールドまで装備しているために射撃戦では撃破するに非常に時間が掛かる
文中ではグレン小隊に一蹴されていた
クレスニク−02、オリジナルPF
・無茶は承知です(待て)
クレスニクプロジェクトが生み出した“最高の防御力”を持つ機体
その実体は、超電磁場展開バリアシステム:アイギスと、
ミラムーンが極秘裏に開発した新型ジェネレーター:ゲヘナ・ドライブを搭載した反則機体
撃破の瞬間、ヘルファイアの40倍規模の大爆発が起こるという・・・・・正に禁断の機体
アイギス、オリジナル兵器
・クレスニク−02に装備されているバリアシステム。詳しい原理とか理屈とかは聞かないでください。まぢで
理論上は、超弩級荷電粒子砲:ハデスズ・ボイスの直撃にも耐えられる防御力があるらしい
その防御力はリーネ曰く「絶対」
余談ながら、「アイギス」=「イージス」。つまりは良く言う「イージスの盾」
リニアガトリング、オリジナル兵器
・クレスニク−02に装備されている唯一の兵装
八連装のリニアバレルで弾丸を電磁加速投射する新式の機関銃
弾丸の射出に火薬を用いる必要がないために、その装弾数は従来のガトリングの三倍強
ゲヘナ・ドライブ、オリジナル兵器
・クレスニク−02の中核を為す新型・超高出力ジェネレーター
大規模破壊兵器:ヘルファイアは、このジェネレーターを作成する過程で起こった事故から生み出された副産物
リミッターが無い為に、オーバーロードで爆発、撃破されても爆発
しかもその規模はヘルファイアの40倍、直径800km・・・・・ホントに良いんですか?主任
軌道降下強襲ポッド
・読んで字の如く、軌道上から降下して敵陣を強襲するためのポッド
砲弾型をしており、バリュートとパラシュート、スラスターや大型ブースター等々を装備
単価が高いが、性質上使い捨てるしかない為に、なかなか実用化には至っていなかった
有人の軌道降下はシオンが初となる
RCT
・レールキャノン・トランスポーターの略
シードラボの秘密兵器、ではない。輸送目的で建設された巨大なレールキャノン
シオンの乗るポッドは、これで射出される予定
幸運が彼と共にありますように
後書き
こん○○わ、人によってはあけましておめでとうございます(12/31現在)
2004年の間に一本投稿!と意気込んでおりました、ギリギリ男ことT.Kです
間に合いました!
間に合ったのか!?
コバルト小隊編の第九話。リベル諸島戦の後半を書かせていただきました
次回はいよいよリベル本島へ移り、最終決戦へ・・・・・行けば良いのですが、一度インターミッションを挟みます
今回は、いえ、今回“も”嘘っぱち満載の頭の悪い新兵器が登場してしまいました
あまりオリジナル要素ばかりは使いたくないのですが・・・・・皆様、できるだけ無茶な方向で想像を膨らませてくださいませ
ゲームのマップで言えば、前回の話が「vsバール」のステージでしたが、今回の舞台はその一つ前の、
「vsユイ、マイ、ダン、ルキア」のマップをイメージして書いています。ダンとルキアは留守番でグリュウが出張っていましたが
ようやく、結末の舞台へと駒を進めることができました
全ての物語は、その終結の姿の為にあるのだと、私は思っています
ゲームでは何の捻りも感動も無かったコバルト小隊編でしたが、私はどんな結末を描くのでしょう
グレンリーダーの率いるグレン小隊、グリュウの率いる暁闇小隊
ジータとダン、それにルキアの確執。それぞれの抱く復讐の行方。出番はあるのかシオン・マクドガル(主人公!?)
最終決戦の舞台:リベル本島編はほぼオールキャストでお送りすることになりそうです
・・・・・書き分けれるかな(待て)
それでは、終わりの時までもう少し。ゴールがいよいよ近づいて参りました
今後とも、皆々様よろしくお願いいたします
では、来年一年が皆様にとって良き一年でありますように
もしくは、今年もよろしくお願いいたします(しつこいようですが12/31現在)
管理人より
T.KさんよりArea:09をご投稿頂きました!
因縁の対決再び、でしたね(笑)
遂にベリウムの切り札登場のようですが、一体どのようなものなのか……