男は、最悪の光景を見ていた・・・。聞こえてくるのは部下の断末魔と女の笑い声。
 自分の手足のはずのPF・・・パンツァーフレームは、正体不明のトラブルで動けない・・・。
 仲間達に至っては、そのトラブルで互いに傷つけ合っていた。

 男は機体を動かそうと必死に原因を探し続ける。そうしている内にも、行動不能になっていく部下のPF・・・。
 敵は動けなくなったPFのコクピットを容赦なく撃ち抜く。

「アイギス!レーテ!トゥール!・・・くうぅっ!!」

「ふふふ・・・部下が死んでいくのに何も出来ないのは、辛いでしょう・・・?」

「貴様・・・貴様ァ!!」

 男は、そう怒号を上げながらも、トラブルの原因がOSに混入されたウィルスであることを突き止めた。

 男はそれを知ると、OS自体のプログラムを改変し始めた。

 そして、動きが戻ったPFで敵に向き直り、言い放つ。

「許さぬ・・・貴様だけは・・・絶対に俺が・・・俺が殺す!!」

 男がそう叫んだ瞬間、足場が崩れ、男は闇の底に落下した。

 そして、ドタッという音と共に男の首に痛みが走る。その瞬間、男の視界は戦場からベッドの横の床へと移行する。
 どうやら、さっきまでのは夢だったようだ。見事に頭から落ちている。

「っつー・・・またこの夢か・・・あの時以来この夢しか見れない・・・
しかも夢だけならいざ知らず、目が覚めてから必ずベッドから落ちるんだよな・・・まったく・・・困ったもんだ・・・。」
と、着替えを済ませて外に出た。

 彼の名はキルディ=アーバレスタ。破滅の断罪者という二つ名で呼ばれる、アルサレア所属の凄腕PFパイロットである。
 行動に問題があり、昇進からは遠く離れているが、その実力により現在は少尉である。

 現在はキルディ突撃小隊隊長として最前線で戦っているのだが・・・。

「とある戦闘で俺の仲間は壊滅・・・部隊再編が必要になったのだ。
まったくあの馬鹿共が・・・俺より先に死んでしまうとは、情けないわい・・・。
あの馬鹿共め・・・馬鹿で忌々しいと思ってはいたが、
居なくなると居なくなったで・・・確かに少し悲しい・・・。
・・・何故だ・・・何故俺を置いて皆くたばっちまうのだ!!この・・・超大馬鹿部下共めがぁ!!!」

 自分の定位置であるブリーフィングルームの自分の席に座って独り言をつぶやいている。
 大抵の人間は暇なとき、個室で過ごしているか食堂で食べているかだったが、彼の小隊だけはここで語り合っていた。

 まぁ、語り合っていたとは言っても、どちらかと言うと横暴な男とその悪友達の喧嘩のようだったが。
 喧嘩するほど仲が良いとはよく言ったもので、上官と部下と言う関係はそこには基本的に存在していなかった。

 その大切な”仲間”達も、もういない・・・。

 たとえ馬鹿部下と呼んでいても、大切に思う気持ちに変わりは無かった。

「そろそろ時間だな・・・では、俺はもう行くぞ、俺の大切な馬鹿部下共・・・。
いつか、俺がそっちに逝った時は、また会おう・・・。」

 補充要員の確認のために、ブリーフィングルームを出て、輸送機が格納された格納庫へ歩いていった。
 格納庫で旧知の仲である老整備士にいつも通り釘をさす。

「俺の機体の整備は俺がやる!触るなよ?」
「はいはい・・・もう諦めてますよ・・・。」

 そして、着いた輸送機に向かって歩いていく彼の背中は、何処と無くさびしそうだった。
 後姿を見送った老整備士も、キルディとは付き合いが長いが、こういう後姿は見た事は無かった。

「辛いのだろうな・・・あやつも・・・。」

 そして、キルディが向かった輸送機から降りてきたのは16、7くらいの青年と少女だった。
 外で待っていたキルディを見て、それが自分達の隊長だと確認すると、近寄ってきて敬礼した。

「本日よりキルディ突撃小隊に配属になりました、イクゼル=レイナス伍長です!」
「同じく、リヴィア=アスティール伍長です!」
「「よろしくお願いします、少尉!!」」

 それを一瞥し、キルディは口を開いた。

「・・・もう知っていると思うが、キルディ=アーバレスタだ。まだ新兵に近いようだが・・・やる気だけは確かなようだな。
いいだろう、まずは戦場に出る前に特訓だ!!」
「「え、ええ!?」」
「いいから、お前達が持ってきたPFに乗って外に出ろ!!」
「「は、はい!」」

 二人とも驚きを隠せないようだ。

「・・・一体、どういう隊長なんでしょうかね?」
「さぁ・・・。」

 取り敢えず二人とも、持ってきたJファーカスタム剣撃戦闘仕様「Jフェンサー」に搭乗した。


 一方、キルディは基地指令に直談判していた。

「・・・指令!演習場を借りるぞ!」
「な、何じゃいきなり。」
「なに、配属された連中の覚悟を試してやろうと思ってな。」
「なるほど、お主の考えそうなことじゃ。いいじゃろ、許可する。」

 基地指令は、彼が一度言い出すと聞かないことを知っていた。そのため、あっさりOKを出したのだった。

 格納庫に戻ったキルディは、己の愛機Jカタストロフに搭乗した。破局の名を冠する真紅の魔王が、演習所に降りた。

「さて、お前達が俺の新たな部下になるなら、突撃小隊と言うものの意味を知ってもらいたい。
階級など気にするな。気にするべきは如何にして突撃した先から帰還するかだ!!
さぁ、遠慮せずに斬りかかって来るがいい!!」
「し、しかし・・・!」
「お前達にやられるようでは俺が隊長ではいられぬだろうが!!
心配するな!全力で来い!!」
「・・・分かりました・・・ならば!!」

 最初に突っ込んできたのは白いJフェンサー、イグゼルの方だった。

「踏み込みの速度はなかなか!!だがただ速いだけでは、このように見切られる!!
覚えておけ、イグゼル!!」

 イグゼルの踏み込みは確かに速かった。しかし、単調すぎた。そのため、すぐさま見切ったキルディに回避されてしまった。
 そして、キルディは剣の柄の部分でイグゼル機を殴った。

「これでまずお前は実戦なら一度撃墜もしくは死だ!!さぁ、次はお前だ、リヴィア!!」
「は、はい!!・・・リヴィア=アスティール、参る!!」


リヴィアのエメラルド色のJフェンサーは、空中から斬り下ろしていった。

「ほう・・・そう来るか!!なかなか考えたな!!だが、方向の転換に隙が大きすぎる!!」

下から空中へ正面からぶつかっていった。そして、また剣の柄の部分で一撃。

「実戦ならこれで撃墜されるか死んでいる!さぁ、どんどん来い!!実戦で死なないために、今の内に何度も死んでおけ!!」
俺について来れるには、まだまだ修行が必要だぞ!!」
「・・・は、はい!!」
「わ、分かりました!!」

 特訓は昼まで続いた。


「・・・一時休止だ。昼食ぐらいはおごってやろう。一応、お前達だって俺の部下だ。」
「「・・・・・・。」」

 二人は、何も言えなくなっていた。
 格納庫に戻ったキルディは、出かけるときに話していた老整備士に再び話しかけた。

「俺の機体の整備は良い。だが、その分こいつらの機体の整備を頼む。
・・・まだ、あいつらは若いからな。」
「お前だって、俺と比べれば十分若い。」
「・・・違いないかもしれないな。さぁ、イグゼル、リヴィア、ついてくるが良い。」
「「はい・・・。」」

 やはり二人は意気消沈していた。

「・・・おい、何だその気の抜けた返事は!!・・・怒らないから、正直に言ってくれ。」

 キルディは、気付いた。いつの間にか、自分の元々の部下と同じ扱いをしてしまっていた事に・・・。

 こうやって突き放しても、いつも元々の部下は、何もフォローを入れなくても勝手に這い上がってきた。
 しかし、いきなりそのような事を初対面の相手にしてしまったのだ、
 もしかしたら自信を失わせることになってしまったかもしれないと考えたのだった。

 そして、案の定だった。

「・・・正直、自信をなくしてしまいました・・・。
僕達は今まで、実戦に出たことが無くて、シュミレータによる練習だけでした。
シュミレータの判断で、僕達は突撃戦法に向いているとされ、この部隊に配属されたんです。」
「今まで、私たち、シュミレータでは無敗でした。
でも、実際戦場に出ていた人と戦って、分かったんです。
実戦はシュミレーションとは違うことに・・・そう考えた途端に、怖くなってしまって・・・。」
「やはり、ただのシュミレータ上がりだったか・・・。
だが、お前達がまだ戦う気があるのなら、実戦でも大暴れできるように特訓してやる。
それに、お前達は筋は良い。今のまま実戦に出ても、
普通の敵達との戦いなら、十分戦える程度だ。」
「「・・・・・!!」」

 二人の表情が、驚きに変わる。

「戦場に出た経験も、エース級の人間と交戦した事も無いのにあそこまで戦う・・・。
自信を失うにはちょっと早いぞ。むしろ、泣いて逃げ出さなかっただけで、上出来だ。
・・・まだ、俺の昔の仲間達と同じ扱いと言うわけには行かないが、
見直しても良いかも知れんな・・・改めて名乗っておこう。
俺はキルディ=アーバレスタ。階級はどうでも良いから、キルディと呼んでくれ。
それと、堅苦しい喋り方も俺の前では必要無しだ。
それが、お前達が来る前の、俺の部隊の流儀だ。」

 キルディは、笑顔でそう言った。

「こんな、足を引っ張るだけの僕達を、部下と認めてくれるんですか?」
「部下というのは元々隊長の足を引っ張るものさ。
引っ張らない部下がいたら、それは余程の精鋭揃いか、部下が昇進して部下じゃなくなるか、だ。」
「では、私達がまた足を引っ張ってしまっても、良いんですか?」
「ああ。もっとも、俺の部隊はさっき言った前者の方で、皆で突っ込んで皆で暴れていた。だから、この調子で特訓してやるさ。」

 イグゼルとリヴィアの表情が明るくなった。

「僕達はこの部隊に配属されて、良かったです!!改めてよろしくお願いします!!」

 イグゼルが深々と礼をする。

「おいおい、その堅苦しいしゃべり方はやめてくれと言ったはずだぞ。」

 リヴィアが更に話を続ける。

「イグゼルはこれが素なの。まぁ、私はこんな感じね。改めてよろしくね、キルディ隊長。」
「成る程、イグゼルはアレで素だったか。よし、お前達の着任祝いだ、さっきも言ったようにおごるぞ!!」
「「はい!」」

 彼らは、再び食堂に歩き始めた。


 暫く行くと、何か思い立ったのか、キルディは不意に立ち止まって、二人に向き直った。

「それと、もう一つ言っておこう。俺はまださっきも言ったように、お前達を俺の”部下”としてしか見ていない。
もっと強くなって、俺が”仲間”と言える程の馬鹿部下になれ!!」
「ば、馬鹿部下・・・ですか?」

 二人は怪訝そうな顔をした。
 それを尻目に、キルディは話を続ける。

「ああ。命令無視独断専行、単機突撃・・・・・・とにかく!俺がやることに腰を抜かさないと言うことは、余程の馬鹿だろう。
だが、俺達の部隊の心は一つ!そう、これを言い忘れていた。俺の部隊の”馬鹿”たる所以・・・。
そう、味方の命を守るためには命令違反をも辞さない!!もっとも、そういうせいで俺の部隊は全滅したんだが・・・な。
まぁ、追々その事は話してやるさ・・・さて、行こうか!」
「「はい!隊長!!」」

 これは、戦場を飲み込む果て無き狂気と、
 それに己の誇りと戦意と闘争心で抗い続ける一人の隊長の、壮絶な戦いの物語である・・・。



 

機甲兵団J−フェニックス
―――狂気の仮面に隠した真の心―――



 

 破局を呼ぶ断罪者が、狂気の戦場を駆け抜ける―――



 

 第二話へ続く・・・。

 



キャラクター設定ネタバレ無しバージョン
注:一話進むごとに内容が追加されます。

キルディ=アーバレスタ
アルサレア少尉、キルディ突撃小隊隊長にして、旧同小隊の唯一の生き残り。
破滅の断罪者という二つ名を持つ、尋常ではない腕前の男。
本来は、大隊長とか師団長とかになってもいいような能力の持ち主。
ただ、味方のピンチに命令を無視して単機特攻を決行したり、
命令を無視して正面から突撃していったりする行動により、出世は遠い。
実は仲間を守るという固い意思のためのようだが・・・?
さらに、天才的な腕のプログラマーでもある。
これは、単機で突撃して基地まで帰還するために、
自分の機体の整備を特訓した際に会得した能力らしい。
ちなみに、現在22歳。
パーソナルカラーは赤。

イグゼル=レイナス
16歳、アルサレア伍長。「とある」兵士養成学校出身。
落ちこぼれらしいが、それはパイロットの腕ではなく、
ただ単にその実直すぎる性格が、後ろで指示を出す事に向いていないだけらしい。
パーソナルカラーは白と銀。

リヴィア=アスティール
17歳、アルサレア伍長。イグゼルと同じく「とある」兵士養成学校出身。
彼女も落ちこぼれらしいが、それはあまりに感情的になりすぎるのが、
指揮官や参謀など、上層部に向いていないだけらしい。
パーソナルカラーはエメラルドグリーン。

老整備士
名前をつける予定ですが現在は名無しです。
旧キルディ小隊の時から、小隊の機体を整備していた。
その頃からキルディは機体の整備を自分でやっていた。
その理由も理解していたため、彼は敢えて何も言わない。
小隊の”馬鹿部下”が居ない今、彼を一番理解しているのはこの人かもしれない。


PF設定
オリジナル機体の設定なのですが、
キルディの愛機Jカタストロフはまだ書きません。
今回は部下の二人のPFの設定を書きます。

Jファーカスタム剣撃戦闘仕様 ”Jフェンサー”

一言で言おう。
Jファーカスタムをちょっと改造して斬馬刀を取り付けたもの。

細かく言うと、こうだ。
手持ち、肩に射撃武装は一切無しで、
移動時のエネルギー消費効率を上げるためウィングを装備している。
BURMは左腕の剣豪。
一刀侍魂は使い辛過ぎる(作者がヘボいだけ)のでこちらにした。
まぁ、中身はそれに合うように適当につけてみれば良いと思う。
胸部だけJファーバルカン。


後書き

どうもはじめまして、天竜です。
気合で書き上げました、”狂気の仮面”第一話です。

自信を持って宣言します、これからもこのまま微妙です。

キルディの部隊全滅の真相は、話が進むごとに明らかになります。
・・・ですが、分かると思いますが、犯人はあの「ババァ」です。俺も奴は嫌いです。

次回予告します。
ひよっ子の部下とはいえ、実戦を経験させなければ一向に強くはなれない・・・。
それ故に、キルディは戦場に二人を連れ立って出て行った・・・。

第二話 戦場を駆ける紅の魔王


というわけです。では、また。




 


 管理人より

 天竜さんよりご投稿頂きました!

 フォルセアやパーツ類からすると22年以降と言った所でしょうか。

 どういう理由でフォルセアが関わってきたのかなど、これからが楽しみです。
 


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