おっさんは悩んでいた。
 しかも、シリアスが似合わんのにシリアスな顔をして悩んでたりする。

「開発に夢中になっとたせいで、パイロットの事をすっかり忘れておった……そうじゃ忘れとったわい」

 何かを思い出し、電話を取る。

「……儂じゃ、去年の話はどうなっておる? ん、昨日送った? おお! やはり、顔は似ていても中身は違うの……それはこっちでやっておく…………」

 会話を終え受話器を置いた。
 彼は、直ぐに端末を操作し送ってきた情報に目を通した。

「ほう、こやつらか……」

 画面には若い男女の顔とプロフィールが写し出されていた。
 そして、これを何処かに送った後、おっさんは内線のボタンを押した。

「今、メールで送った奴等を連れてこい。後、手続きもやっておいてくれ」








 

 「語られざる歴史と報告書」超外伝その1

 〜こうして二人は出会った〜

 第一話








 

 Side 謎の生物


 サーリットンから程遠くない地域にあるヴァリム軍の基地に本来ならいるべきではない生物がいた。

「テケリ・リ(ターゲット発見)」

 体長が大人くらいある兎らしき生物が、何かを発見した。

「テケリ、テケリ・リ! テケリ・リ!(隊長、ターゲットを発見したであります! ご指示をお願いであります!)」

 発見したのとは別の兎が報告する。

「テケリ、テケリ・リ! テケリ・リ(よし、よくやった! 俺が行くまで監視を続けろ)」

「テケリ・リ(了解であります)」


 10分後


「テケリ・リ?(ターゲットの様子はどうだ?)」

 隊長らしき兎が到着し、発見した兎に聞く。
 彼(?)の後ろには直属部隊なのか10羽の下っ端兎がいる。

「テケリ、テケリ・リ!(ハッ、あちらの様になっているであります!)」

 敬礼っぽい仕草をし視線をターゲットにやる下っ端兎

「……テケリ・リ?(……何故、片方はあんなにボロボロなんだ?)」

「テケリ、テケリ・リ、テケリ・リリリ(ハッ、通信を終えた直後に喧嘩が始まりまして、片方がとてつもない蹴りで打ち上げられ、その後に何度も何度も蹴られたのであります)」

「……テケリ・リ(……雌が強いのは、どこの種族も同じと言う事か)」

 何かを思い出したのか背筋がゾゾッとし、そう呟いた……そして、未だ回復しそうにない片方のターゲットを見て決断する。

「テケリ、テケリ・リ、テケリ・リ!(よし、片方が回復しない内に作戦を開始するぞ!)」

「テケリ・リ!!(了解!!)」

 隊長兎が通信機を取り出し各部隊に告げた。

「テケリ・リ!(作戦開始!)」

 その前に、片方のターゲットが何故ボロボロになったのかを見ておこう




 

 Side ターゲット


「はぁ〜」

 青みがかった紫髪の若い女が、溜息をつきながらトボトボ歩いていた。

「何をそんなに落ち込んでるんだ?」

 彼女の隣にいる若い男が、彼女の心情が解らないのか、暢気に聞いてくる。

「あんたのせいでしょうが!!」

 彼女がそう言うと同時に、彼の後頭部に目がけてハイキックをお見舞いした。

「ッテ……何すんだよルキア!」

 男は、蹴られた箇所をさすりながら紫髪の女――ルキアに怒鳴る

「五月蝿! あんたのせいで、私まで巻き添えになったのよ!」

「お前だって途中からノリ、グフッ」

 言い返されカッとなったのかは不明だが、彼を蹴りで彼女の身長の倍の高さまで打ち上げた。

「大体、この前のだって……」

 打ち上げられた男が落ちてくるのを待ち

「あんたのせいじゃないの!」

 その一言を合図に、蹴りの嵐が始まった。
 この嵐を例えるなら、三節棍を使ったウルティメットアクションである。

「はぁ〜スッキリした」

 ボロ雑巾になった男の横で、晴れやかな顔をしたルキアがそこにいた……とまあ、こういう経緯である。




 

 Side 兎


「テケリ・リ!!(前衛部隊突撃!!)」

「「「テケリ・リ!(うぉぉぉ!)」」」

 隊長兎の命令で男女の下へ突撃していく下っ端兎ども

「テケリ・リ(後衛部隊は、合図があるまで待機)」

 隊長兎が、後衛部隊に通信をした。
 前線があの様子では、投入するのは早いと思う隊長兎であった。




 

 Side ルキア&ボロ雑巾


「……中々回復しないわね」

 先程、アルサレアの某ロケットガール並の八つ当たりを披露したルキアが、やっちゃったという顔で未だ回復しない男を見ていた。

「取り敢えず医務室に運ばないと……ん?」

 ドドドと大きな音が、こちらに近づいてくる。
 その方向へ振り向くと……

「……何で、人喰い兎がいるのよ!!」

「テケリ・リ!」

 人喰い兎が突撃してくる。その数、100羽は下らない。

「って、囲まれてしまう! ダン、早く起きてよ!」

 未だ意識が戻らない男---ダンを蹴るルキアだが、起きる事はなかった。

「……一人でやるしかないのね……せめてジータ君がいたら助かるのに」

 語られざる本編では、一個師団を相手に獅子奮迅の活躍をした彼女でも、やはり生身でこの数を相手にするのは不安なのか、未だ行方不明の幼なじみの名前を出した。
 その瞬間


「あんな奴に頼るんじゃねえぇぇぇ!!」


 ジータの名を聞き、半ば死んでいたダンが咆哮を上げ復活した。
 死んだ人間を生き返らせるとは、ジータ恐るべし!

「あんたが起きないから頼りたくもなるわよ!!」

 すかさず言い返すルキア……この場合、喜ぶべきなのではなかろうか?

「それはお前が悪いんだろうが!!」

「それもあんたが悪いのでしょうが!!」

 目前に迫る危険生物を無視し、また口論もとい漫才が始まろうとする。

「「「テケリ・リ!」」」

 無視すんじゃね―と叫ぶ数羽の人喰い兎が、二人に襲いかかった。

「「うるさい!!」」

「「「テケリーーーー」」」

 二人は、最初に突っ込んで来た兎と、その後続の兎をまとめて吹き飛ばし、これを皮切りに戦闘が始まった。

「続きは、こいつらを片付けてからだ!」

「分かってるわよ!」

 ルキアは兎を蹴りつつ、背後にいるダンに応えた。




 

 Side 兎


「テケリ・リ(後衛部隊、突撃開始だ)」
「テケリ・リ(イエッサー)」

 前衛が崩れ始めた頃、隊長兎は後衛部隊を戦場へ送り込んだ。

「テケリ・リ!(スナイパー部隊の準備はまだか!)」
「テケリ・リ(只今、準備を終えたとの報告が入りました)」

 通信機器を抱えた兎が言った。

「テケリ、テケリ・リ(よし、撃つタイミングは任せると伝えよ)」
「テケリ・リ(了解)」

「テテテ、テケリ・リ(ククク、これで奴等も終わるな)」
「テケリ・リ(終わるのは、こちらになりそうですがね)」

 笑う隊長兎をよそに部下の人喰い兎が、戦場を指差す。
 そう、既に突撃した後衛部隊の6割方の兎が、片足を空に向けてピクピクと痙攣していたのである。

「テケリ・リ!(至急、スナイパー部隊に始めろと伝えよ!)」

 これに焦った隊長兎は直ぐ様、指示を出した。




 

 Side スナイパー隊


「テケリ・リ(了解しました)」
「テケリ・リ?(もう、待てないのですか?)」

 狙撃銃を構え待機している、ちょっとクールな下っ端兎が聞いてきた。

「テケリ・リ(そういう事だ)」
「テケリ・リ……(もう少し疲れさせてからにしたかったのですが……)」

 こちらに任せると通達があったから相手が疲れるのを待っていたが、そうも出来なくなった。
 狙撃兎は、まず大暴れしているダンに狙いをつけた。だが、ダンの動きが早く照準が中々合わない。
 そこに一羽の兎がダンの腰にタックルし、動きを止めた。

「テケリ・リ(主よ、憐れなターゲットに慈悲を)」

 そっと引き金を引く。

「テケリ・リ(命中)」

 すぐさま次弾を装填し二発目を撃つ

「テケリ・リ(命中)」


「……テケリ・リ、テケリ・リ(……目標沈黙、ミッションコンプリート)」

 スコープを覗きながら相棒にそう伝えた。
 この兎、カッコイイ気がするのは気のせいであろうか?

「テケリ・リ(ターゲット沈黙しました)」

「テケリ・リ(こちらでも確認した)」

 隊長兎の部隊へ連絡する。

「テケリ・リ(しかし)」

 一仕事を終えたスナイパー兎がタバコに火を点ける。

「テケリ・リ(あのターゲット、何に使うんでしょうね?)」

「テケリ・リ。テケリ・リ(俺達には関係ない事だ。撤収始めるぞ)」

「テケリ・リ(了解)」




 

 Side 兎


「テケリ・リ(怪我は、軽いのから手当しろ)」
「テケリ・リ!(傷は浅いぞ頑張れ!)」
「テケ……リ・リ(かあ……さん)」

 先の戦闘で負傷した下っ端兎の手当をする衛生兎達。
 しかし、ただの人喰い兎が何故ここまで出来るのだろうか?

「テケリ・リ(予想以上の損害だな)」
「テケリ・リ(まさか、ここまでとは思いませんでした。)」
「テケリ・リ……テケリ・リ(人間相手にここまで苦戦するなんて……誰も予想してなかっただろうな)」

 予想以上の被害に戸惑う隊長兎。

「テケリ、テケリ・リリ(出すとしましたら、我等の不倶戴天の敵である猫族かハンター協会の化物連中ぐらいでしょうね。)」

 そんな所へ下っ端が駆け付けて来た。

「テケリ、テケリ・リ(隊長、副官殿から掃討完了と食糧の確保を完了したとの報告であります)」

「テケリ・リ(先に喰うなと伝えろ)」

「テケリ・リ(了解)」



 通信部隊へ駆けて行く下っ端兎と入れ替わりで、何やら慌てた感じの兎がやって来た。

「テ、テケリ・リ!(た、隊長!!)」

「テケリ・リ?(どうした?)」

「テケリ、テケリ・リ(偵察部隊から、ハンター協会が此処に向かっているとの報告が)」

「テケリ!?(なに!?)」

 隊長兎が驚く。

「テケリ・リ!(撤退準備を完了した部隊は、速やかに撤退しろと伝えろ!)」

 直ぐさま冷静になり、指示を出す隊長兎

「テケリ・リ(了解であります)」

「テケリ・リ……(時間との勝負か……)」

 空を見つめ、そう呟く隊長兎であった。




 

 Side ハンター協会


「……遅かったか」

 兎達の言うハンター協会の人間の一人が、基地に着いた。
 その基地には、人喰い兎どころか人の気配もない。
 彼は、状況確認と生き残りを探しに兵舎へと入る。

「こいつは酷い……」

 兵舎に入ると大量の血液以外は何も無かった。








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 設定

【人喰い兎】
 惑星Jに移民する以前から棲息する謎の肉食兎。
 何故、肉食なのかは様々な説があるが、まだ判明はしていない。
 人喰い兎と言う呼称がついたのは、名の通りで人を喰ったからである。
 移民当初は大陸全土に棲息しており又、その種類も確認されただけで数種類いたが、管理者の活躍により現在は一種類となり、その固体数も絶滅寸前にまで減り、更に生活圏は限られた場所のみとなった。
 しかし、未開の地域で目撃されたとの情報もある。
 特徴は、獲物は頭から丸呑みで食べる事と、テケリ・リという独特の鳴き方。
 そして、身長が人間並にあり、中には2mを超えるのもいる。
 噂では、体長がGF並の大きさを誇る兎がいるらしい。
 


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