機甲兵団J−PHOENIX オリジナルストーリー

「語られざる歴史と報告書」
(The history and at The report which can't be told)


第6話前編 アルサレア編









 

〜サーリットン・グレンリーダー〜


アルサレア要塞を飛び出したアスタールはすでにサーリットン中央戦線・・・
戦場の最前線の様子を目視で確認できる距離まで進んで来ていた。

「・・・なるほどな、だがこの程度で我がアルサレアが押されるとは思えないのだがな」

サーリットンを視察しに来たアスタールは、自分の目で確かめてみたが
重役達が焦るほどヴァリムに動きがあったとは感じられなかったようだ。

「まあ、全てを見た訳では無いからな、もう少し様子を見るか」

この機体の活動限界まではまだまだ余裕がある。
そう考えたアスタールはもうしばらくこの近くで様子見をしようと思っていた。
が、戦場の真っ只中で様子見だけをして帰れるはずが無かったのだ。

「おい、あそこに見えるのってなんだ?」

「なんでしょうね?PFだとは思うのですが」

アスタールのすぐ近くでヴァリムの通信と思われる会話を傍受する。
そしてその会話の内容は決して好ましい内容ではなかった。
こちらの機体を発見されたらしい。

「ま、隠れようと思って隠れていないしな、しょうがないか」

彼の機体は既に臨戦態勢に入っている。
後はあちらが仕掛けてくるか否かだけだ。

「とりあえず接近しましょうか」

「うむ、まずは様子から見ないとな」

悠長な事を言いながら彼へと向かってくるヴァリム兵達。
レーダーを確認して敵機数をチェックする。

「ザッと30機か・・・機種は・・・」

機種はロキ・デザート。
砂漠戦用に若干の改良をされたロキのバリエーションの一つだ。
両手にスパークフックを持ち近接の攻撃力は侮ってはいけない。

「腕慣らしには丁度いいか?いや、侮っちゃいけないよな」

そしてロキ・デザートたちの次の動きで彼、グレンリーダーが動いた。

「よし、とりあえず捕獲せよ!全軍突撃!!」

「了解!!」

「・・・了解」

ロキ・デザート達はある一定の距離まで近づいたかと思うと、
一斉にアスタールに向かって飛び掛ってきた。

「ふう、やはりこうなる・・・か」

分かっていてもやるせない事もある。
アスタールは溜息をつきつつ、自分の視線を戦士のそれへと変えた。

「いいだろう、この【ブレイスタッド・アスタール】が相手をしてやる!」

ロキ・デザートに囲みきられる前に自ら飛び出すアスタール。

「何だあの機体は!!」

「駄目です、データベースに存在しません!」

「新型か・・・だが、あの威圧感・・・ただの新型じゃあない」

いきなり飛び出してきた謎の機体に驚きを隠せないロキ・デザート部隊。
データに無いのは当然であり、そしてその能力を測ることなど、
このような哨戒部隊には無理な話である。

「行くぞ【ハイペリオン】・・・お前の力を俺に示せ!!」

アスタールが叫ぶ。
ハイペリオンは腰にマウントされたサブマシンガンと思しき銃を両手に装備し高く跳躍した。
跳躍したハイペリオンが一瞬太陽を遮る。
逆光で一瞬その姿を隠すハイペリオン。
さらにその一瞬の内に両手のマシンガンが火を噴いた。

「【メビウス】途切れる事無き銃弾は確実にお前達に傷を与える!!」

赤い閃光がロキ・デザート数機に突き刺さる。
そして爆散するロキ・デザートが数機。

「・・・何が起こった!?」

「分かりません・・・しかし攻撃をされた事は紛れも無い事実かと」

いきなり複数の味方を失い騒然とするヴァリム兵達。

「まだ終わりじゃないんだ!この程度で油断をするな!!
・・・確かに気持ちは分からないでもないがな

地面に着地して間髪要れずまたマシンガンを撃つ。
今度は自身の姿も見えているので半ば混乱しつつ、ロキ・デザート達も攻撃を開始した。

「まだだ!我々はまだ負けたわけではない!!」

「攻撃を当てるんだ!とにかく一度でも当てて流れをこっちに引き戻せ!!」

ある程度は戦の知識がある指揮官のようだ。
だが歴戦、と言うほどではない事がかえって多くの悲劇を生み出す事となる。

「そういう台詞は一度でも優位に立ってから言うものだ!!」

Sフックを当てるために我武者羅にハイペリオンへと迫るロキ・デザート。

「そんな無茶苦茶な振りで当てられると思うなよ?」

眼前へと迫るSフックを軽快なフットワークで捌くアスタール。
そして大きな隙が出来たロキ・デザートへ数発ずつ赤き閃光を撃ち込む。
そんな攻防で数機のロキ・デザートを葬られたヴァリム側は、
近接での特攻から射撃での長距離戦に戦法を変える。

「クソッ、撃て!撃ちまくるんだ!!」

短絡的な思考。
押して駄目なら引いてみろ、と言う考えが伺える。
既に冷静な対処を失った彼らには撤退する、と言う考えは浮ばなかったようだ。
対PFミサイルを乱射すると言う事のみを繰り返している。

「馬鹿な、こちらの装備を考えて動いているのか?
・・・いや、既に考える力をなくしたようだな」

アスタールは戦法が変わった事で完全に彼らに見切りを付けた。
既にこちらが延々と耐えた所で、彼らの考えは変わらないのだ、と。

「一発当てさえすれば・・・一発さえ!!」

弾数の事などお構い無しに対PFミサイルを撃つロキ・デザート達。
既に弾切れになりかけている者までいる。

「ええい!壊れた思考で俺に勝てると思うなよ!!」

一層烈しさを増す弾幕の中に突っ込み短期決戦を仕掛けるアスタール。
当然ヴァリム兵達はここぞとばかりにミサイルを叩き込んでくる。
だが・・・

「うああっ!!」

「・・・がっ!?」

「く、くそ・・・」

一機、また一機と爆煙の中で倒れてゆくロキ・デザート。

「ミサイルは誘爆させればいい、そしてマシンガンはその目的を達成するのに
おあつらえ向きな兵器だ、それすらも分からなくなっているようではな・・・」

そう言いながら対PFミサイルを次々と誘爆させてゆく。
しかし冷静さを欠いたヴァリム兵達には、敵が無傷なのだとは分からなかった。
いや、分かりたくもなかったのだろう。

「くっ・・・」

「隊長、このままでは作戦遂行は不可能です!!撤退を!!」

「!!・・・そうだな、それがよさそうだ」

部下の一部にはこの戦況をまだ冷静に見ている者がいたようだ。
その一部の兵士がなんとか部隊長のスズメの涙ほど残っていた冷静さを取り戻させた。

「む、動きが変わったか?」

アスタールはロキ・デザート達の動きが少しずつ変わっているのを感じていた。

「全機、撤退を開始せよ!!」

「了解」

残った破壊を免れた数機のロキ・デザート達がアスタールから遠ざかり始める。

「どうやらやっと分かってくれたようだな」

遠ざかってゆくヴァリム兵達を眺めながら安堵するアスタールであった。

「さて、そろそろ視察を再開するか」

マシンガンを腰へマウントし、ハイペリオンの向きを変える。

「ん?何だこの機体は」

「データにありませんね」

「大方アルサレアの試作機か?」

移動を開始しようとしたアスタールのすぐ側に、
黒い色のゼグルヴタイプが三機出現する。

「・・・またか、だがさっきと違い今度はこちらのデータにも無いな、新型か?」

アスタールはまだ仕掛けてこない三機のゼグルヴタイプを注意深く見つめた。

「たかが一機、この【漆黒のゼノン】の敵では無いな」

「ああ、仕掛けるぞ」

「お〜け〜」

黒きゼグルヴ・・・ゼグルヴ・ゼノン三機が行動を開始した。
そして三機から放たれる幾やもの蒼い光条。

「何だこの数、そして速さは・・・だが以前どこかで・・・」

アスタールも驚きが隠せないようだ。
だが、彼は一度この攻撃を見た事があるはずなのだ。

「この包囲網から抜けられるか?新型よ!!」

突然全周波通信が開かれる。

「クッ・・・だが、この程度なら切り抜けてみせる!!」

「ハーッハッハッハ、その攻撃はどこまでも追いついて行くぞ?」

ゼノンに乗っているパイロットが言ったとおり、どこまでも
ハイペリオンを追尾する蒼い光条、速度も並ではない。

「ならば奥の手を出すまでだ、【シャイン&シャドウ】
美しさ、醜さ・・・全てを超えた力を見せてやる!
【アルバトロス】何者にも屈せぬ栄光の翼よ、我が盾となり給え!!」

目にも止まらぬ速さで翼から抜き出される何か。
さらにハイペリオンの翼が大きく展開してゆく。

「変形だと?笑わせてくれる!!」

「そんなもので『レーザーネット』をかわせると思うなよ!」

身構えるゼグルヴ・ゼノン。

「ええい、うっとおしい、弾けろ!!」

未だに追尾を続ける『レーザーネット』。
このままではいつまでたっても敵の本体を相手に出来ない。
そう思ったアスタールは束になり襲い掛かってくるレーザーネットへ
機体をターンさせ、ウイングの内側を叩きつけた。

「これでどうだっ?」

結果、レーザーネットは遠くへ弾かれ、狙う的を認識出来なくなった。
適当なところを行ったり来たりしている内に寿命が尽き消滅してゆく。

「なっ・・・」

「んなアホな!」

「・・・やるねぇ」

仕掛けはいたって単純なものだった。
ウイングの内側が一面にわたって鏡面装甲になっていたのだ。
鏡面装甲は光学兵器を弾く性質を持ち、
特にハイペリオンに使われたものは強度もかなりあるモノを使っている。
アスタールはソレをあたかもハエタタキのように使ったのだ。

「今度はこちらの番だ!!」

いまさらだがハイペリオンの両手には剣が握られている。
先ほどの『目にも止まらぬ速さで翼から抜き出される何か』
とは、おたがいに対となる二本の剣だったのだ。

「新型一機に新型三機が倒されちゃ、面目がたたねぇんだよ!」

「新型だろうが古かろうが、そんなものは関係ない!!」

ゼノンの一機とハイペリオンが激突する。

「うあああああああ!!」

機動力で劣るゼノンが猛然と迫るハイペリオンに向かって、
上空に打ち上げ弧を描くように落ちるミサイルを放つ。

「そんな大味な攻撃が効くか!!」

一瞬でゼノンの視界から消えるハイペリオン。
次にヴァリムパイロットがアスタールを見つけたのは自機の真横であった。

「まずは・・・一機!!」

両の手を交差させ一息で×の字に切り裂くハイペリオン。
一撃の元にゼノンが沈む。

「速い!?ならば・・・」

夥しい数のレーザーネットを放つ2機目のゼノン。
無言で三機目のゼノンが突っ込んでくる。

「・・・少し厄介だな、まずは・・・」

突っ込んでくるゼグルヴを斬り伏せようと突っ込むアスタール。
ところが先行してきたゼグルヴは急に瞬間転移をし、
ハイペリオンの背後にぴったりと出現した。
突っ込むアスタールの眼前にはレーザーネットの束・束・束!

「・・・っ!ギリギリだな!!」

先ほどよりも近い距離に見える倍以上のレーザーネット。
だがハイペリオンは急ブレーキをかけ同じようにレーザーネットを弾こうとする。
しかし止まれば背後からゼノンのケリをまともに喰らってしまう。

「今ここでやられるわけにはいかない!」

ハイペリオンはそこから更に爆発的な加速をした。
ゼノンのパイロットは我が目を疑っただろう。

「・・・・・・・・・!!」

そうして一気にレーザーネットの塊を突き抜けたアスタールは
眼前に迫るゼノンを二刀で斬った。

「くっ、読みが甘かったと言うのか!?」

これでタイマンとなったゼノンとハイペリオン。

「スラスターが無ければまともに喰らっていたかもしれないな・・・」

ハイペリオンに備わっていた機能に心から感謝するアスタール。
もっともハイペリオンとアスタールならば使わずとも大丈夫だったかもしれないが。

「素晴らしいコンボだったが相手が悪かったようだな!」

「ぐっ・・・だがこのままオメオメとやられるわけにはいかん!!」

ゼノンの背部から直上へ向かって何かが撃ち出された。

「ミサイルか?」

撃ち上げられるミサイルを目で追うアスタール。
その一瞬の隙を突いて残った一機のゼノンが瞬間転移で強襲をかけた。

「その隙、致命的だな!!」

だが・・・

「こんな子供だましが通用するかぁ!!」

突如背後に現れたゼノンに予想していたようにバックブーストで体当たりを当てる。
アスタールは一瞬ミサイルに目を奪われたものの、即座にレーダーに目を向け、
次にゼノンが出現する場所を見ていたのだ。
ミサイルはアルバトロスによって全て防がれていた。

「また、読みが甘かった・・・か」

一瞬の後に大地に突っ伏す最後のゼノン。
アスタールは体当たりを当てたかと思うと剣を逆手に持ち後ろに突き出したのだ。
結果その一撃はゼノンの腹部に突き刺さり、ゼノンは行動不能となった。

「ふうう、偵察にしちゃ随分とでかい獲物がかかったもんだ」

アスタールは倒れた三機の機人を一瞥した。

「一旦戻ろう、それにそろそろ彼らが来る頃だ」













 

〜コバルト隊・カンドランド到着〜


サーリットンに近いカンドランド基地に到着したラグナ達は、
突然何者かによって全員緊急収集された。
そして部屋に入った途端、キースとアイリが絶叫する。


「・・・っ!なんだって隊長がこんなトコにいんだよ!?」

「コラ、キース!今は元帥閣下でしょ!!・・・ってそんな事より
ホントにどうしてこんなところにいるんですか!?」


コバルト隊の前に現れたのは紛れも無くグレンリーダー。
・・・現在のアルサレア元帥その人であった。

「やあ久しぶり、キースとアイリも変わり無い様で何よりだ」

スッと手を上げてやんわりと挨拶をするアスタール。
そこにはアルサレア元帥としての威厳など微塵も感じられなかった。

「ははは、相変わらずみたいだな、そっちもよ」

「アンタねぇ、口の利き方考えなさいよ!
・・・お久しぶりです、隊長、じゃなかった、アスタール元帥」

「そんな堅苦しい呼び方は止めて欲しいな、アイリ」

わざと表情を曇らせるアスタール。

「ええと・・・話を進めてもよろしいでしょうか?アスタール元帥閣下」

このままでは一向に話が進まないと悟ったクラン。
久しぶりの同僚との再会を邪魔する事に多少罪悪感を感じたが、
それでも話しを進める事を優先する。

「あ、ああすまない私が自ら呼び付けておいてこれではな、申し訳なかった」

「いえ、こちらこそ無粋な真似をしてしまい申し訳ありませんでした」

「それじゃあ話を始めようか、そちらのリーダーは誰かな?」

視線をアイリとキースから外して周りを見渡すアスタール。

「俺だ、ラグナ・グレイスってんだ」

「ああ、君が・・・噂は聞いている、よくやってくれているようだな」

「俺の評判なんてどうでもいいぜ、それより俺達を呼んだ理由を聞かせて欲しい」

「隊長、口は災いの元、ですよ?」

現状にあったことわざかはともかくとして、ヒュウガはラグナをやんわりと叱った。

「ははは、こういうタイプの人間は慣れていてね、
心配せずとも大丈夫だよヒュウガ・カミカワ君」

「そう、ですか・・・」

「君の事も噂には聞いているよ、これからも頑張って欲しい」

「はい」

ヒュウガの台詞を最後にして、コバルト隊とグレンリーダーの合同会議が始まった。

「率直に言う、今回のサーリットンの件、アルサレア本土でもかなり問題になっている」

「今まで均衡を保っていたサーリットンが突如・・・ですからねぇ」

アスタールの言葉にオスコットが反応する。
皆今回のサーリットンの動きがただの偶然でない事は薄々感づいている。
そして彼は先ほどあった事を語り始めた。

「・・・私はその知らせを受けた後すぐにサーリットンへ先行し偵察をしてきたのが、
そこでヴァリム軍の新型GFと戦闘を行った、その時は三機だった」

「GF・・・ゼグルヴタイプですか?」

「あんな物の新型が、既に量産されている?」

アスタールの言葉に頭を傾けるジータ。
GFの話を聞き最悪のパターンを頭に思い浮かべるムラキ。

「私が戦ったのは黒い・・・漆黒のゼグルヴだった」

彼は事細かにゼノンの武装、性能などをラグナ達に伝えた。

「レーザーネット・・・厄介だな」

「ああ、資料で見ただけだがそこまでのものとはゾイ」

ランブルが顔をしかめている。
隣ではギブソンがしきりに唸っていた。

「データによると、最初に搭載された機体は【ZCX−HO15TV:ヘリオス】
・・・となっていますね」

クランが手元の資料を読み上げた。
シュキはクランが持っている資料を横から覗き見ている。

「ああ、私が昔ヴァリムに捕まった時に戦った相手だな」

と、遠い目をするアスタール。

「あー、あの時はおれっちがいなかったら駄目だったろうな〜」

「もー、すぐ調子に乗るんだから・・・あたしもいたじゃないのよ!」

「あの時は二人がいなければもう助からなかったさ」

もめる二人の間に入るグレンリーダー。

「敵の戦力の一部が判明しましたね、全員の機体にデータを入れておきましょう」

サーリットン突撃前に多少なりとも敵のデータが手に入った。
これはこれからの戦局で少なからず役に立つだろう。

「とりあえずわたしが知っているデータはこれだけだ、あとは・・・」

「まだ何かあるんですの?総帥さん」

少し含みを持つ言い回しをするアスタール。
その場にいる全員を見回してから意を決したように口を開く。

「実は、一時的にグレン小隊を復活させようと思っている」

「マジか!?」

「それ、本当ですか?」

キースとアイリが驚く、もちろんコバルト隊メンバーも驚いてはいるが、
二人の比ではない。

「ああ、本当だ・・・今の状況を細かく説明してもらおう、ネルモア少尉、頼めるか?」

「了解しました」

それからクランは今サーリットンがおかれている状況を説明した。

「サーリットンは大きく分けて三つの戦場へ分けることが出来ます」

一つ目は中央戦線、一番多くの敵と味方が入り混じる戦場だ。
二つ目は右翼戦線、こちらは今ヴァリムのGFによって最終防衛ラインまで
押されていて、現在はなんとか持ちこたえている程度だ。
三つ目は左翼戦線、こちらはアルサレアとヴァリム両者の実力・戦力が
拮抗しているため、完全に膠着している状況である。

「・・・と言うわけらしいのだが、なにか質問はあるか?」

「あ、ソレとは関係ないんだけど、サリアは?」

「ああ、おれっちもなんか引っかかって出てこないものがあったんだよ、ソレだ!」

「ああ、サリアは今・・・」







 

〜サーリットン・右翼戦線某所〜


「でぇりゃああああああああ!!!!!」


快声一発、一機のヴァリム軍所属機が空の彼方へとその姿を消した。

「ふう、これで18機目・・・サーリットン敵多過ぎですぅ!!」

元グレン小隊見習い、サリア・バートンは今日も絶好調だった。
彼女の駆るPFの両手には常にハンマーが握られている。
本日の得物もハンマーだ・・・と言いたいところだが何か様子が違う。
いつもの彼女には無い禍々しさと言うか、毒々しさと言うか。
原因はPFの手に握られているハンマー、と思しき物から発されている。

「しかしこのハンマーは凄いですね、使いやすいし破壊力は抜群だし」

だがサリアが装備しているハンマーは既にハンマーと呼べるものではなかったのだ。

「お、おのれぇ!!」

仲間を次々と撃破されたヴァリム兵が咆える。

「もぉ〜!来ないでくださぁい!!」

迫る敵へ向かい高々とハンマー・・・と思しき物を振り上げるサリア。
その光景を見て今までの憤りが瞬時にマイナスへと変わるヴァリム兵。


「あっちへいってええええええええええ!!!」


「うわあああああああああ・・・・・・」

さっきまでの威勢はすっかりと消え、情けない悲鳴をあげながら
吹っ飛ぶのみのヴァリム兵だった。

「これで19機・・・はぁ、大変ですぅ」

19機目の敵をふっとばし辺りを伺うサリア。
ふと見た先には一機のJファーD型がオニに迫られていた。

「そこの人!危な〜い!」

ブースターをふかし一気にオニに迫るサリア。
もちろんハンマー・・・と思しき物を振り上げるのを忘れない。

「クソッ、ちょこまかと逃げやがって!!」

「ヤバイ、追いつかれる!!」

「いい加減にしろや・・・ん?」

後ろを振り向くオニ。

「消えちゃえええ〜!!」

「なんだと、俺はグ・・・」

背後から不意をつかれ見事に吹っ飛ばされるオニ。

「・・・え?」

JファーD型に乗っていたパイロットは2重に驚いていた。
一つは目の前でお星様になったオニ。
そしてもう一つは・・・

「もしかして、サリア・・・なの?」

「大丈夫でしたか・・・ってその声もしかして、セイバー?」

密かに想いを寄せていた少女との突然の再会だった。

「セイバー、もうあの後遺症は治ったの?」

「あ、うん、まだ完全じゃないんだけどね、なんとか動かせてるよ」

「へぇ、リハビリ上手くいったんだぁ・・・よかったね」

セイバーはとある事件が元でコックピット恐怖症になっていた。
だが、今現在より約一週間前に、なんとかPFに乗り哨戒任務及び、
軽い戦闘行動なら行えるまでに回復していた。

「約一週間前になんとか、ね」

「えぇ!?やっと回復したと思ったらいきなりこんな戦場に送られたの?」

サーリットンと言えば激戦中の激戦。
例え哨戒任務だといえど、このような貧弱な機体では、
それすらもままならないような場所だ。

「生まれ付いての不幸なのかなんなのか分からないけど、
でもサリアにあえて助かったよ」

「しかもD型装備のJファー量産型・・・他の人たちは?」

まさにその激戦中の激戦に『貧弱な機体』で立っているセイバー。

「わからない、哨戒任務中に突然オニの大群に襲われてさ」

「そうだったんだ・・・しょうがないね、一緒に行こう」

「そういえばサリアは一人?」

「うん、他の味方が近くにいると危ないらしいからね」

セイバーの額を冷や汗が伝ってゆく。

「とりあえず一旦補給がしたいなぁ」

「じゃあ、僕が所属してる基地に行こうよ、安全とは言えないけど
サーリットンならどこに行っても同じようなもんだろうしさ」

「うん、じゃあセイバー案内してね」

「ああ、任せといて」

こうして20機の敵機を撃墜しエネルギーをそこそこ使い果たしたサリアと、
哨戒中に逃げに逃げなんとか生き残っていたセイバーは偶然の再開を果たした。
二人はセイバーが所属する基地へと、一旦補給をしに行く事となった。











END・中編へ

 


 管理人より

 第6話前編ヴァリム編の方でまとめて書きます。
 


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