〜アルサレア・ラグナの夢・????〜


 コツコツコツコツ


 俺は今どこを歩いてるんだ? こんな場所は見覚えがねぇな・・・
 それに何故俺は勝手に歩いてるんだ?
 どうやら体の自由がきかねぇらしいな・・・
 ・・・ってそんな事を冷静に考えてる場合かよ、とりあえず抵抗してみるか
 ・・・・・・やっぱり俺にはどうしようもないみたいだな、俺の身体なのに・・・


 ・・・カツカツカツ・・・カッ


 どうやら目的の場所に着いたようだな?
 一体何をやらかす気だ俺の身体は?


 バタァン!!


 なんだ!? イキナリドアを蹴破ったぞ!?
 ・・・っと、中に誰かいるみたいだな・・・・・・人数は4人か
 今度は俺の手が勝手に動いてるみたいだな・・・腰か?


 チャキ・・・


 おいおい、まさか銃を取り出そうってんじゃねぇだろうな・・・


「あんた何やってんの? そんな冗談笑えないわよ」

 見覚えのない女が二人・・・どうやらそのうちの一人をねら・・・


 バァン!


 ちっ! 本当に撃っちまっただと?
 ・・・お、側にいた男が庇ってくれたみてぇだな、
 人が死ぬ場面は避けられたようだぜ


「オイオイ、本気だったてーのか?」


 それはこっちのセリフだってーの・・・って、
 悠長につっこんでる場合でもねーよな、今度は俺がピンチだぜ


 バァン!


 ・・・・・・・・・どうやら命は奪われなかったようだな?
 何狙ったんだ? ・・・・・・俺の持ってる銃を撃ち落としたのか、やるじゃねぇか


「あんた、今何やったかわかってんの!?」


 今度は女が俺に向かってきたか・・・今の俺は丸腰だからな・・・

 ・・・バキィ!!


 うわっ! 痛そうだな俺、顔面に良い一発くらっちまったぜ
 その所為か後ろに倒れ込んでるみたいだな、今の俺は・・・っと
 どうやら後ろにも人がいたみたいだな、取り押さえられちまったか・・・











 

 〜アルサレア本拠地・救護室〜


「・・・さん? ・・・・・・た・・・う・・・・さん?」

「・・・・・・ん・・・なんだ?」

「大丈夫ですか? 随分うなされていましたわ」

 心配そうな表情でラグナをのぞき込むリンナ。

「リンナか? ・・・そんなにうなされてたのか?」

「はい」

「あ、サンキュ・・・・・・変な夢見た所為だろうよ」

「どんな夢ですの?」

「ん? ・・・ああいや・・・・・・リンナには関係ねぇよ、気にすんな」

 暗い表情を浮かべるラグナ。

「・・・そう言えば隊長さん?」

「あ?」

「明日退院ですわね、おめでとうございます」

「やっと次の戦場か・・・」







機甲兵団J−PHOENIX オリジナルストーリー

「語られざる歴史と報告書」
(The history and at The report which can't be told)


第三話






 

 〜翌日〜


「「「隊長、退院おめでとうございます!!」」」

「おう、ありがとよ!」

 珍しくラグナが笑顔を浮かべている、余程外に出るのが楽しみだったのだろう。

「コレで次の戦地へ向かえますね」

「結構長かったねぇ」

「クラン、次の戦地はどんなところなの?」

「ちょっと待って・・・セストニア氷原、随分と寒そうな所・・・ですね」

「寒いんですか・・・ちょっと嫌ですねぇ・・・」

「そんなこと言ってる場合じゃねぇだろうが」











 

 〜アルサレア・輸送機〜


「隊長にお知らせしておきたい話があります」

「やけに深刻な顔しやがって、なんだよ一体?」


 ラグナが言ったようにクランの表情はとても暗い。


「先日・・・隊長が撃墜された敵の情報が少しばかり入りました」


 ラグナの表情にも緊張が走る。


「どんな情報だ?」

「はい、リュウハと名乗ったあのパイロットが乗っていたPFですが
 機体名をディアボロス・・・と言うそうです」

「ディアボロス・・・」

「リュウハというパイロットの方はかなりの凄腕・・・
 と言うことしか・・・残念ですが」

「・・・・・・」


「あまり深く考えるのはよそうや、隊長?」

「ああ・・・そうだな、すまねぇ」

「とりあえずあちらに着くまでに防寒具の用意をしないと危険ですよ」

「人数分の防寒具を輸送機の倉庫に積んでありますので
 各自用意してください」















 

 〜アルサレア・セストニア氷原本拠地〜


 ここはセストニア氷原、ほとんど止むことがない猛吹雪と
 様々な地形が合わさって出来ている危険な地域である。


「こりゃ・・・防寒具がなかったら一瞬で死ぬな」

「防寒具があっても死にそうだよぉ・・・・」


 半泣きになるシュキ、そして溢れた涙がみるみる凍結する。


「これは・・・思ってたよりも辛そうですわ」

「さっさと中に入った方が良さそうだな・・・」


「「「・・・賛成」」」


 満場一致の可決であった。











 

 〜セストニア氷原本拠地・ブリーフィングルーム〜


 あまりの寒さに耐えきれず速攻で基地の中に駆け込んだラグナ達は
 急いで暖房の入っているブリーフィングルームへ向かった。


「遅いぞ貴様ら!!」

 そこには先客が待ちかまえていた。

「先に着いていたんですか、クリスティーン中尉」

「貴方が今回合流の方ですか?」

 ヒュウガがおそるおそる訊ねる。

「ランブル・クリスティーンだ・・・で、隊長はどいつだ?」

「俺だよ・・・なんか文句でも?」

「いや・・・ただ俺の邪魔だけはするなよ? 隊長であろうともな」

 ランブルはそう言ってブリーフィングルームから出ていってしまった。


(まさか・・・合流するパイロットがアイツとはな・・・)

 ラグナは心の中でそう言った













 

 〜翌日・セストニア氷原・ブリーフィングルーム〜


 相変わらず寒いセストニア氷原での2日目が始まった。

「全員揃いましたね?」

「ああ、全員揃ってるぜ? それで何を始めようっていうんだ?」


 作戦まであと2日ほど余裕があったのだがクランがメンバー全員を
 突然招集したのだった。


「昨日私が最後の仕事をしているときにある連絡が入りまして」

「クラン・・・もしかして 私達が寝たあとにまだ仕事してたの?」

「すぐ終わる仕事だったのよ、気にしなくていいわ」

 すまなそうにするシュキを見てクランがフォローする。


「どんな連絡だったんだい?」

 先を促すオスコット。

「はい、実は他の特務小隊にも入っている連絡なのですが、
 戦力向上のための特殊兵器適性検査を受けませんか? と言う連絡です」

「適性・・・ですか?」

「はい、その兵器・・・厳密に言えば装置なのですが
 使用するにあたって強烈な制約を受けるのです、ですが適性が合えば・・・」

「間違いなく戦力が増強できるってことですね?」

「その通りです・・・この検査はコバルト小隊メンバー全員に
 受けて貰おうと思ってるのですが異存はありませんか?」

「「「・・・・・・」」」

 皆戦力増強には異存がないようだった。











 

 〜セストニア氷原・検査室〜


「早速検査を始めたいと思います、検査方法は事前に
 聞いておきましたので安心してください」

「じゃあみんな、検査を始めるよ〜」

 因みに検査を受けるのはPFパイロットのみであり
 シュキは検査の手伝いをしていた。


「コレってどういう検査ですの?」

「頭に変なモノ被されてますねぇ」

「まあ文句を言ってないでさぁ〜、早く終わらせてよ〜」

「・・・・・・・・・フン」

「さて、どんな結果になるかな」

「ちょっと怖い気もしますけどね」

「俺がこれ以上強くなったら敵なんていねーだろーな〜」

 皆口々に変な装置を頭に付けられた感想を述べる。

「では始めます、少しでも気持ち悪くなったら手を挙げてください
 絶対我慢なんかしてはダメですよ?」


 ・・・ポチッ

 サッサッサッ


 早くも3人が離脱した。


「なんですの? この気持ち悪さは・・・」

「コレは・・・耐えられませんね」

「・・・・・・・・・クッ」

 リンナ・ヒュウガ・ランブルが脱落。


「ではもう少し難易度を上げます」


 ・・・ポチッ

 クランがもう一つボタンを押す。

 サッ・・・・・・・サッ・・・

 その途端もう二つ手が上がった。


「いきなり・・・頭が・・・」

「無理しても仕方がないし・・・ホント言うと結構きつかったや〜」

 ムラキとオスコットも脱落した。


「ジータが残ってるなんて以外〜」

 シュキが素直な感想を漏らす。

「シュキ、あんまりパイロットの精神を乱すようなこと言ってはダメよ」

 ジータの表情が微妙に引きつっていた。


「隊長、ランバート少尉・・・まだ大丈夫ですか?」

「まだ平気ですよ」

「なんともねぇな」

 二人とも本当に平気そうである。


「ではもう一段階上げます・・・これに耐えられたら最低ランクの
 適正値クリアです」

「了解!」

「OK!」


 ・・・ポチッ

 クランが3個目のボタンをONにする。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


 二人とも平気なようだ・・・が、しかし。


「クラン、ジータの反応がないみたいなんだけど」

「隊長!! すぐにジータに付いてる装置を外してください!!!」

「わかった・・・ジータ!! おい! ジータ!!!」

 ラグナはジータから急いで検査用の器具を外した。


「ジータ! 返事しろ!!」

 ジータは3つ目のボタンを押された瞬間に気を失ったらしい、
 検査を終えたメンバーが全員ジータに近寄る。


「ジータ、しっかりしろよ!」

「そのくらいで、情けないぞ!!」

「ジータ〜目、覚ましなさいよぉ!」

「ジータさん、冗談は止めてください」

「ちょっとまずいかもねぇ・・・」

「病院に連絡入れましょうか?」

「縁起でもねぇ事言うなよ、ヒュウガ」

 みんなが心配そうにジータを見つめている、
 息をしているのが救いと言えば救いだろう。


「クラン、どんな状態なのかわからねぇのか?」

「・・・・・・詳しいことはわかりません、ですが一つだけ」

「わかることがあるんだな?」

「はい・・・」









 

 〜セストニア氷原・救護室〜


「じゃあクラン、説明してくれや」

「はい・・・結論から言いますとランバート少尉は
 脳のある部分に衝撃を受けてこのような状態になったと考えられます」

「脳だって!? それは・・・大丈夫なのか、ジータは?」

 ムラキは激しく動揺している。

「はい、あの程度なら何も問題はないはずです・・・
 私はそう聞いています」

「誰から聞いたんです?」

「このシステムを開発した責任者ヒョウドウさん・・・です」

「そいつとは連絡とれねぇのか?」

「一応連絡先は・・・」









 

 〜アルサレア・研究都市ファーレン〜


 ココは研究都市ファーレン、兵器開発から最先端の医療技術まで、
 アルサレアの中核と言っても差し支えない都市である。


「ヒョウドウ主任、緊急通信が入っています」

 ヒョウドウと呼ばれた男が振り返る、彼こそが
 先程コバルト小隊が受けていた検査の装置を開発した男である。


「何の通信だ?」

「・・・主任が開発された新しい装置についてです」

「少し待てと伝えてくれ」

「・・・どうやら急いでいるようですが」

「仕方がないな、こっちに回してくれ」









 

 〜セストニア氷原・通信室〜


「私がヒョウドウだが・・・忙しいのだがな」

 ヒョウドウの高慢な態度にキレかけたラグナを
 ヒュウガが抑えていた。

「実は・・・」

 クランが現状を細かくヒョウドウに説明した。

「ああ・・・それなら直に目も覚めるはずだ、念の為
 額に濡れタオルでも乗せとけば大丈夫だろう」

「でも今まで全然気が付かないんですよ?
 そんな対応で良いのですか?」

「私が開発した物で実験中に死者を出したことはないが?」

その言葉でラグナが完全にキレた。

「てめぇには責任ってものはねぇのか!?
 ちったぁ真摯的な態度とれや!!」

「私が真摯的な態度をとったところで病状が変わるとでも言うのか!?」

 ヒョウドウも負けじと大声を張り上げる。

「うっ・・・それは」

「隊長の負けですね」

「・・・ともかく、私は死者を出すような物など開発はしない
 それだけはこの命だって懸けられる」

「・・・すまなかった、俺が悪かったよ」

 どこかばつが悪そうなラグナ。

「分かってくれればそれでいい・・・・・・また何かあったら通信を入れてくれ」

 その言葉を最後にヒョウドウは通信を切った。

「とりあえず・・・タオル乗せにいこっか?」

「そうね・・・そうしましょうか」

 しばらくの後、ジータは何の問題もなく復帰した。
















 

 〜翌日・ブリーフィングルーム〜


「クランクラン、変な通信が入ってるよ〜?」

「変な通信? どこからなの」

「んとね・・・4研ってトコからの通信だよ」

「何かしら・・・」

 クランは新しい兵器でも? と考えていた。


「はい、通信変わりました・・・どのようなご用件でしょうか?」

「コバルト小隊さん、でしたよね?」

「はいそうですが」

「やっと通信入れられましたよ〜」

 心底嬉しそうに通信の相手が答えた。

「どうかされましたか?」

「いえ、以前にも通信を入れたのですが・・・」

「4研からの通信なんてありませんでしたが」

「えーと、以前通信を入れたときにはもう次の戦地へ
 向かわれてしまってたんですよ〜」

「・・・・・・そ、そうだったんですか、ご苦労様です」

 クランはついドモってしまった。


「それでどんな用件だったの? 4研の人」

 それとは対照的に次の質問をぶつけてくるシュキ。

「あのう4研の人って・・・私にだって名前があるんですよ?」

「だって名乗ってないんだもん、悪気があったわけじゃないよ?」

「あ・・・そうでしたね、私の名前はティア・ノヴァルティスです
 ティアと呼んで下さいね」

「私はクラン・ネルモアです」

「私はシュキ・オールティーだよ」

「分かりましたティアさん、それで一体どのような用件で通信を?」

「あ! そうでした、そちらにまだ専用機を持ってない方が
 2人いるはずだと思うのですが・・・」

 クランは聞いても良さそうな情報が自分の耳に
 入ってこないことに疑問を持った。

「ラグナ隊長とヒュウガさんのことかな? ティア」

「そうですそうです、その方達の専用機をそちらにに送っておきました」

「ティアさん、その話は誰から?」

「私の上司が言ってました、なんでもあの機体を送るぞって
 それ以上詳しいことは分からないんですけどね〜」

「了解しました、ありがとうティアさん・・・他に何かありますか?」

「他には・・・ありませんね、時間取らせてすいませんでした〜」

「またね、ティア〜!」

「うん、今度はいつ通信するか分からないけどね・・・
 それでは、コバルト小隊の健闘を祈ってます!」

 そうしてティアとの通信が切れた。


「それじゃ、隊長達に知らせにいきましょうか」

「そうしましょ〜!」











 

 〜セストニア氷原・PF格納庫〜


 クラン達に呼ばれコバルト小隊メンバーはPF格納庫に集められた。

「いったい何のようだ?」

「全員を集めるんですからそれなりに大事な用事だとは思いますけど」

「そろそろ教えてくれても良いんじゃないの?」

「まだ隊長とヒュウガさんが来てないよ〜、だからもう少し待ってね」

「仕方がないな、待つしかないようだ」

「ですね、そんなに遅れることもないでしょうし」


 ジータの言葉のすぐ後にラグナ達が現れた。


「わりぃわりぃ、ついうたたねしちまってよ〜」

「私は隊長を起こすのに一苦労しましたよ・・・疲れた〜」

「まあ、いいじゃねぇか・・・で、なんの用だクラン?」

「全員揃ったようですね、実は今まで専用機がなかった
 隊長とカミカワ大尉の新しい機体が届きました」

「そんなの一度も聞いたこと無かったな、知ってたかヒュウガ?」

「いいえ、私も初耳ですね」

 そんな二人を見ながらクランはやっぱり・・・と考えていた。


「実は私の方にも何の連絡もなかったんです」

「そんな大事な連絡が無かったなんて・・・おかしいですわね」

「ちょっと怪しいかもしれねぇな」

「ですから、隊長とカミカワ大尉に確認して貰えれば
 と思ったのですが・・・いかがですか?」

「他のみんなは何かあったときに対応できるために集めさせて貰ったんだよ」

「そういうことでしたら、お手伝いさせていただきますわ」

「俺も良いですよ」

「自分もOKです」

「おじさんはヒマ持て余してるからね、任せてちょうだい!」

「・・・貴様らだけでは心配だからな、いいだろう」

 こうしてコバルト小隊メンバー全員でラグナとヒュウガの新機体
 を見ることになった。











 

 〜セストニア氷原・PF格納庫入り口付近〜


 クランは全員を引き連れてPF格納庫の入り口までやってきた。

 理由は万が一危険なモノが入っていても本拠地に被害が及ばないようにするためである。


「昨日こっちに2機のPFが届いてるんだよ!」

「どれどれ・・・えっ!?」

「さて、どっちが俺のだ・・・ってこりゃ・・・!!」


 ラグナとヒュウガの表情が驚きと困惑の色に染まる。


「隊長・・・カミカワ大尉まで・・・何か知ってるんですか? この機体のこと」

「ああ・・・知ってるも何も・・・なぁ?」

「はい、これは元々僕たちの機体ですからね」


 いまだに表情が晴れないラグナとヒュウガ、
 何かまずいことでもあったのだろうか?


「元々って・・・」

「かなり前の話だけどな」

「まさかもう一度この目で見ることが出来るなんて・・・・・・フュージレイド」

「しかもかなり元気みたいだな・・・アブソリュート」

「隊長、そちらの機体名はハイ・アブソリュートとなってますが」

「そっか・・・新しくなって帰ってきやがったか」


 どうやら二人にとっては余程思い入れのある機体なのだろう、
 嬉しさ半分、苦しさ半分といった雰囲気だ。


「4研から送られてきた仕様書には『これからの戦闘はJ−カイザー
 程度では到底勝ち抜けないだろう、だからこの機体をそちらに返す事にした、
 整備は万全にしてあるし新しい専用装備も付けておいた、
 大事に使ってくれ』とのことです。」

「4研だって? 俺達そんなとこにコイツらを預けてなんていないんだが」

「それは『PS・この機体は極秘裏に回収しておいた』とあります」

 シュキとクランとランブル以外のメンバーが全員ズッコケた。


「でもそんな簡単に発見されるような場所には隠しませんでしたよね隊長?」

「そのはずなんだけどな・・・まあ今となっちゃどうでもいいことだろ」

 こうしてコバルト小隊に新しい戦力が加わった。
















 

 〜セストニア氷原・ヴァリム本拠地〜


 ヴァリム本拠地の一室で数人のパイロットが話をしている。

「予測範囲内ね、あれがこの間の小隊ね・・・そうでしょ? リュウハ」

「間違いない、あの小隊のハズだ・・・」

「最近噂になってる奴らだね! 姉貴、
 この前の話だと結構手強いみたいだしね!」

「ユイ、マイ! 今回の任務はあの特務小隊の情報を集める事だぞ
 極地戦闘は我々がかなり優位だがどうやらアルサレアは新型の
 極地戦PFを開発しているらしい、それに・・・」

「なんで貴様がここにいるんだよ! リュウハもだけど今回の任務、
 アタシと姉貴で十分だろうが! まだ“アームド”の件根に持ってんのか?」

「いちいちうるさい奴だ! 貴様らの監視と敵部隊の情報収集が私の任務
 少しは置かれている立場をわきまえろ!
 お前たちが試作機を壊さなければ“アルサレア戦役”は、
 我がヴァリムの勝利だったものを・・・この、役立たずめが!!
 リュウハ、お前も神佐だからといって好きに出来ると思うな!」

「そんな事貴様に言われなくても分かっている
 貴様こそ身の程をわきまえたらどうなんだ?」

「貴様が私より階級が上などでなかったら即刻クビにしてやるものを!!」

「ちッ! クズやろうが! 一年以上も前のことをいつまでもうじうじと!」

「お前がいても予定に支障はない・・・私達はやるべきことをするだけ、
 好きにするといいわ行くわよマイ、リュウハ・・・貴方はどうするのかしら?」

「とりあえずは見学させてもらおうか」

「よかったなぁブライス! 姉貴の許可がでたぜ! せいぜい励むんだな?
 ベリウムの為によ! キャハハハハッ! じゃーな、リュウハ!」

「フン、生意気なガキどもが! せいぜい俺を失望させるなよ」

「流石双子の悪魔よ、ハハハハハハ!!」

「ブライス様! 我が軍、敵アルサレア軍を補足しました」

「よし、予定通りデータの収集を始めろ!
 さぁせいぜい活躍してもらおうか? 俺様のためにな! クククククク!」
















 

 〜セストニア氷原・ブリーフィングルーム〜


 ラグナとヒュウガの専用機が加わって初の作戦の説明が行われようとしていた。

「作戦の説明を始める前に・・・オニキス中尉」

「はい、自分に何か?」

「昨日隊長とカミカワ大尉の新しい機体が届きましたが、
 それに遅れてオニキス中尉の新しい機体も届きました」

「自分の新しい機体ですか?」

「はい、仕様書によると『ムラキ・オニキス中尉、君の機体は
 武装が貧弱すぎる、これからの戦闘をその専用機で乗り越えるのは無理だと
 こちらで判断させて貰った、勝手な判断すまない。』」

「・・・・・・・・・」

 ムラキは押し黙っている。

「『勝手な判断の変わりと言っては何だが新しい専用機を用意させて貰った。
 気に入らないかもしれないがこれも戦争だと思って諦めて欲しい、
 我々は君の腕を非常に買っているからこその考えだと思ってくれ。
 それと操縦の方法は以前と変わりがないようにセッティングしておいた、
 存分に力を発揮してくれ・・・以上参謀本部より』・・・となっていますが?」

「・・・・・・・・・」


 ムラキはまだ押し黙っている。
 今まで一緒に戦場を巡ってきた機体である、色々思い入れもあるだろう。


「オニキス中尉、どうしてもというなら新しい機体は
 送り返しますが・・・どうしますか?」

 その辺はクランも察しているようだ、何しろ自分を長い間守ってきてくれたのだ。


「・・・・・・いえ、戦力が上がるなら願ってもないことですから
 新しい機体使わせて貰いますよ」

「ムラキさん・・・」

 ジータが悲しそうな顔でムラキを見ている。

「そんな顔するなジータ! 自分は大丈夫だよ」

「でも・・・・・・・・・はい、わかりました!!!」

「・・・・・・今まで、ありがとうな」

 こうしてムラキに新しいPFが配備され益々戦力を増すコバルト小隊だった。


「ムラキ、よかったじゃねぇか・・・な?」

 ムラキの肩を優しく叩くラグナ。

「はい・・・ありがとうございます!!」

 ムラキは何かを吹っ切るように大きく返事をした。


「じゃ、作戦を説明してくれねぇかクラン」

 ラグナは作戦の説明を急がせた。

「あ、はい・・・では説明を始めます・・・シュキ、書類を皆に配って」

 シュキが待ってましたとばかりに皆に薄い書類を配っていく。

「皆さん書類は行き届きましたね?」

 皆がうなずくのを確認するとクランは説明を始めた。


「皆さん、まずはこちらをご覧下さい」

 ブリーフィングルームの巨大なスクリーンにこの島の全体図が映し出された。

「この島にあるアルサレアとヴァリムの基地が全て分かるようになっています」

「確かに・・・スゴイですね、これ」

「今我々がいるのがここです」


 そう言ってクランが指し示したのは縦長の島の左下の赤い点だった。
 他の点よりやや大きめの点で示されてるので、ここがアルサレアの本拠地だというのがよく分かる。


「なるほど、それで?」

「ここから真っ直ぐ右に4つの道が通っている基地があるのが分かりますね?」

 次にクランが指し示したのはアルサレア軍本拠地から
 右へ進んだところにある4方向に分かれている基地のことだ。


「この2つの基地の中間地点を隊長とヒュウガさん以外の持ち場とします」

「どういうことですか?」

 ジータが分からないという表情をしている。

「ですから基地と基地の真ん中で敵を食い止めます、
 本拠地のすぐ手前ですから狙われやすいので・・・
 そして隊長とヒュウガさんは先行して敵基地に奇襲をかけてもらいます
 奇襲作戦は攻撃力が高く素早い機体でないと都合が悪いので、
 今回は新機体という事もあり隊長とヒュウガさんに行ってもらうことにしました」

 そこでクランが一呼吸おく。


「「「・・・・・・・・・・・・」」」

 いつもはあまり喋らないクランの長いセリフを聞いて
 その場にいるクラン以外の人間が全員驚いていた。

「・・・何か質問はありますか?」

「「「何もありません!!」」」

 いつぞやの何者をも寄せ付けぬ雰囲気を纏ったクランには
 誰も反論することが出来なかった。


「では皆さん、出撃してください!」

「みんな〜! がんばってね〜!!!」

「「「了解!!」」」

 もはや今のクランに反論することが出来る者はここにはいなかった。
















 

 〜セストニア氷原・PF格納庫・ラグナチーム〜


 久々の専用機に乗り何処か落ち着かないラグナとヒュウガは
 PFの出撃用意をしてる間にプライベート通信をしていた。

「隊長、何年ぶりぐらいでしょうね?」

「あ?・・・もう忘れちまったよ・・・」

「【あの時】より強くなってるみたいですね」

「・・・たしかに・・・強くなってるな・・・コイツらは」

「今度は【あの時】以上に強い敵が出てくるのでしょうか?」

「【あの時】以上ねぇ・・・さぁな、今はやることやらないとダメだろーさ」

「ですね」











 

 〜セストニア氷原・PF格納庫・オスコットチーム〜


 一方待ち伏せチーム、隊長はオスコットに決まったようだが
 何やら騒がしい、原因はムラキのようだ。

「隊長はオスコットさんでしょう? なのになぜ
 自分が指揮を執らなくちゃいけない場合なんてあるんですか?」

「今回の作戦はアルサレア軍の本拠地前で
 攻めてくる敵を抑えなくてはならない任務なんだからな?」

「そうですね」

「じゃあ本拠地を攻めてくる敵が凄く多かったらどうする?」

「「「・・・・・・」」」

 皆の表情が暗くなってゆく、どうやら悪い想像をしてしまったようだ。


「それと自分が指揮を執ることになるのと何の関係があるんですか?」

「ムラキ、自分の機体の武装確認してないのかい?」

 オスコットが薄いプリントを一枚渡す。

「なんですか? これは・・・・・・・・・っ!!」

 プリントに目を通すうちにムラキの表情が険しいモノになっていく。

「それで分かっただろ〜?」

「どういうことですの?」

 横からリンナ達がそのプリントを覗き込む。


「「「・・・・・・」」」


 誰一人として驚きを隠せずにいた。


「敵が予想以上に大群で来た場合・・・
 ムラキ以外のチームで敵を誘い込み一網打尽にする・・・というわけだよ」

 淡々と説明を続けるオスコットの様子はいつもとは180度変わっていた。

「その装備がなかったら危なかったかもねぇ〜」

 そう、ムラキの新機体には【ヘルファイヤー】が積まれていたのである。


「それじゃあ、出撃しようかねぇ!!」

「「「了解!」」」

 一足早くオスコットチームが出撃していった。











 

 〜進行中・ラグナチーム〜


 オスコットより遅く出撃したラグナチーム。
 あくまで奇襲が目的なのでなるべく目立たないように侵攻していた。
 コレなら安全でしょうという理由から今回はシュキがオペレーターを務めていた。

「あ〜〜遠いな、もう!!」

「仕方ないよ〜、目立っちゃいけないんだから」

「そうは言われてもな・・・ああヒマだーーーーー!!」

 ラグナは静かに歩くだけの侵攻に飽き飽きしていた。

「隊長、オスコットさん達のことを考えないと」

「・・・・・・う、それを言われるとな・・・しょうがねえなぁ」


 ラグナ達は攻めの作戦、オスコット達は守りの作戦、
 しかも本拠地のすぐ手前を守っているのである。
 どちらが大変かは一目瞭然だろう。


「先に出たハズならそろそろ見えてもいいはずじゃねぇか?」

「そうですね、通信も傍受されちゃまずいですが肉眼で
 確認できるなら確認しておきたいですね」

「だよなー」

「ん・・・あれじゃないですか隊長?」

「どれどれ・・・何か見慣れない機体も混じってるぜ?
 しかも・・・・・・5機ぐらい同じ機体だ」

「・・・アレは[コルドハンター]ですね」

「なんだそりゃ?」

「アルサレアが開発した極地戦用PFですよ
 ・・・隊長、もしかしてまた資料を読みませんでしたね?」

「・・・・・・あ・・・・・・忘れてたわ」

「隊長・・・僕があれだけ言ってるのにまだ・・・」

「まあまあ・・・今は作戦中だぞ?」

 苦笑いをして誤魔化そうとするラグナ、しかしヒュウガには通じなかった。

「そんなのでは誤魔化されませんよ? さあ隊長・・・」

「いい加減にしてよ〜!! そんなにうるさかったら敵に見つかっちゃうよ!!」

 意外にもそれを止めたのはシュキだった。

「あちゃあ・・・シュキに言われちゃ終しまいじゃねぇか?」

「う、言われてみれば確かに・・・」

「そんな言い方ないよ〜!!」

「冗談だからそんなに怒るなよ・・・ククククッ・・・」

「冗談が過ぎましたね・・・すいません」

「隊長まだ笑ってるし・・・酷いよ〜」

 作戦中なのにのんきな3人だった。











 

 〜進行中・オスコットチーム〜


 オスコットチームは先に出撃しただけあり目標地点までもうすぐだった。

「オスコットさん、後ろから付いてくる五機の見慣れないPFは何ですの?」

「ああ〜、言っとくの忘れたけどそいつらは味方だ」

「しかし、見たことのない機体ですよ?」

「見たこと無いのは仕方ないさ、そいつは最近開発した
 極地戦用PF[コルドハンター]だからな」

「俺達だけでは不服だというのか?」

「そうじゃないさ、ただ例の作戦をやることになったら
 誘い込む機体は一機でも多い方が良いと思ったからさ〜」

「しかし、最新型のPFを5機も借りて来てよかったんですか?」

「ジータ君、そこのところは心配無用! 本拠地には後15機あるからさぁ」

「皆さんもうすぐ目標地点です、余計なお喋りは控えてください」

 目標地点がもう目の前まで来たときクランから通信が入った。
















 

 〜目標地点到着・ラグナチーム〜


 一悶着あった後は順調に歩を進めてきたラグナチーム、
 奇襲をかける敵基地までもうちょっとといったところだ。

「やっと到着か・・・長かったぜ」

「だめですよ隊長、最後が肝心なんですから」

「そうだよ、ここで見つかったら水の泡だよ?」

「んなもん分かってるって、俺だってそこまで馬鹿じゃねぇよ
 一応隊長やってるんだしよ?」


 ラグナがそう言ったときである、突然レーダーに敵機反応が現れた。

「言ってるそばから敵機反応がありましたよ?」

 ヒュウガが嫌味をたっぷり込めてラグナに問う。

「俺の所為じゃねぇだろ!」

「敵数2! ・・・このスピード、ザコじゃない・・・指揮官機だと思われます!」

 シュキが真面目に報告する。


「コイツらの馴らしには丁度良いかもな?」

「ですね、久々に暴れましょうか!!」


 ラグナとヒュウガの目が獲物を狩る獣の目に変わる。
 敵機から通信が入る、若い女性・・・いや少女のような声だ。


「貴方が噂のアルサレアのエースね?」

「お前とは戦いたくてウズウズしてたんだ! 派手にいくぜぇ!!」

「敵機確認! シンザン・・・違う! シンザンタイプのカスタム機です!!」

 シュキがさらに報告を続ける。

「シンザンを使う二人組?」

「もしかして・・・双子の悪魔さんですか?」

 ヒュウガが敵に「さん」付けで尋ねる。

「ご名答、私はユイ・キサラギ・・・貴方達の力試させてもらうわ」

「あたいはマイ・キサラギ! 双子の悪魔は伊達じゃねーぞ!!」

「来る!? ヒュウガ、いくぜ!!」

「了解! 私もいきます!!」

 マイが先に仕掛けてくるようだ。


「姉貴、先に行かせてもらうよ!」

 緑に光る鎌を構えてマイが迫撃する。

「近接戦闘は俺に任せな!!」

 マイに負けない勢いで向かっていくラグナ。


「あなたの相手は僕のようですね?」

「どちらでも構わないわ、強い敵のデータさえ取れれば・・・いくわよ」


 ラグナVSマイ、ヒュウガVSユイの激しい戦いの火蓋が切っておとされた。











 

 〜目標地点到着・オスコットチーム〜


 ほぼ同時刻にオスコット達も目標地点に到着していた。

「クランさん、敵機の反応はありませんの?」

「・・・今のところは」

 そこへオスコットが口を挟む。

「今日は絶対敵が来るさ、おじさんの勘がそう告げているからねぇ」

「そんな事に自信を持たないでくださいよ」

 ジータが軽くオスコットを攻める口調になる。

「俺はそれでも構わんがな」

 ランブルは自分には関係ないとでも言わんばかりの返事をする。

「自分もあまり来て欲しくはありませんね、そうすればコレを使うことなんか・・・」

 ムラキが自分の機体に装備されているアレを見ながらつぶやく。

「ある物は有効に使うべきだ、それがどんなに危険な物であろうともな」

「俺達は負けるわけにはいかないんです! ムラキさん」

「そうです、いくらイヤだからって逃げててはダメですわ」

「いくら危険な物積んでたってそれを使うのはムラキ、おまえさんだよ」

 それぞれがそれぞれの方法でムラキを励まし、
 オスコットがムラキの肩をポンと叩いた。

「わかってますよ、それぐらいは・・・・・・」


 ムラキがセリフを言い終わらぬうちにクランから通信が入った。

「敵機確認しました! 前方3200の地点に先頭を確認!!」

「やっぱりおじさんの勘はよく当たるねぇ!!!」

 咆哮一発、オスコットがバスターランチャーを敵集団に向けて発射した。

「敵機集団に命中・・・そんな!!」

「クランさん、どうしたんですか?」

「敵機の数・・・・・・・・・60・・・」

 アルサレアの本拠地を潰そうとヴァリムが大群を送り込んできた、
 その数ざっと60機、こちらの戦力は10機・・・
 実に6倍以上の敵を相手にしなくてはならない状況だった。

「こんな場面まで当たっちゃうなんてねぇ・・・ムラキ、覚悟を決めなよ!?」

「・・・・・・はい!!!!!」

「オスコットより全メンバーへ!! 今より指揮権をムラキに変更する
 くり返す・・・指揮権をムラキへ変更する!! 全機散開!!!」

 オスコットがそう言うと皆散り散りに敵機を誘導する。

「ムラキ、おまえさんは遠くへ離れてタイミングを計ってちょうだい!
 みんなで上手く誘導してみせる、それまで待っててくれよ!?」

 オスコットはムラキにそう通信を入れて敵集団に向かっていった。

「・・・自分の肩にアルサレアの運命が乗っているのか・・・
 まさかこんな状況に本当になるなんてな」

 ムラキは深呼吸をしてから自分のPFを後ろの方に下げていった。




 そのころムラキ以外のパイロットはというと・・・


「思ったより・・・きついですね・・・クソッ!!」

 斬馬刀を構えながら息を荒げて複数の敵機の攻撃を受け流す。

「ムラキさんが覚悟を決めたんだ、俺だって・・・!!」

 ジータが・・・




 

「負けてられませんわ、こんな弱い相手に・・・負けてられませんわ!!」

 少しずつ自機の耐久度を減らされながらも敵機を誘導するリンナ。

「私はまだ、強くなるんです!」

 リンナが・・・




 

「フンッ・・・俺をなめるなっ!!!」

 敵機に囲まれながらも気丈な態度を崩さない。

「まだまだぁーーーー!!」

 ランブルが・・・




 

「俺達だってアルサレアのために戦えるんだ!」

「そうだ、負けたら俺達の家族や仲間が・・・」

「やらせない、絶対やらせないもん!!」

「俺達の一挙手一投足がアルサレアの勝利に繋がるんだ」

「何のために今まで戦ってきたんだ、ここで終わるわけにはいかない!!」


 絶妙のコンビネーションを見せる5人組。


「「「「「うああああ!!!」」」」」

 コルドハンターチームが・・・




 

「オニキス中尉そろそろ準備をした方が良いかと、
 タイミングはこちらでも計ります」

 目の前の計器が忙しなく点滅、明滅をくり返す。

「・・・・・・・・・5・・・・4・・・・」

 クランが・・・




 

「よおし、みんな良くやってくれたねぇ!! 最後の一撃加えて
 後はムラキに任せるよ〜!!!」

 全員に指示を飛ばす。

「それ〜! これでラスト!」

 そしてオスコットが・・・





 

「ムラキ! そっちの準備はどうだい?
 こっちはそろそろ限界だから何とかタイミング良く決めてよ!?」

 この場にいる全員がこの時のために動いていた。

「このタイミングを逃すと次はありません、皆さん待避してください!」

「やってやる! やってやるさ・・・セーフティー解除・・・
 目標2800地点敵集団・・・ロックオン完了」

 そして今まさに全ての流れがこの刹那の時に集中しようとしていた。


「これで終わりにする!」


 ムラキがヘルファイアのトリガーに手をかけた。
















 

 〜戦闘中・ラグナチーム〜


 オスコット達が60機の敵と激戦を繰り広げている頃、
 ラグナ達もかなりの激闘を繰り広げていた。

「ちっ・・・・・・瞬間転移とは・・・」

「ちょっと厄介ですね・・・」

 致命傷はもらってないが機体の表面の傷がかなり増えている。

「・・・そろそろ観念したらどう?」

「お前ら・・・しつこいなぁ!」

 いくら瞬間転移と実力を持ってるとはいえ余裕がないのは事実なユイとマイ、
 こちらも同じような状況下にあった。

 双子に傷を付けている大半の攻撃はヒュウガのモノであった。


「それに・・・お前のミサイルの弾どう考えても威力がおかしいぞ!?」

「ええ・・・あれは今までのミサイルのどれでもないわね、
 貴方・・・何を使ってるの?」

「そういえばよ、戦闘で訊けなかったけど俺もそれには驚いたぜ?
 ヒュウガいったい何なんだそれは?」

「僕も初めて使ったんですけどね・・・驚きましたよ〜」

 使っていた本人も驚いているようである。


「私の機体の仕様書には【コロナブリッド】と書かれてましたが・・・」

「名前からしてやべぇな・・・そりゃ」

「どうやらあまり時間をかけてると万が一がありそうね、マイあれをやるわよ」

「姉貴が本気になったか、わりーがここで死んでもらうぜ!」


 ユイとマイはヒュウガに攻撃を集中することに決めたようだ。

「これで終わりよ、受けなさい」

 ユイは6枚刃の大手裏剣を3枚投げた。

「そんなモノでこの私は倒れませんよ!」

 ミサイルで狙いを付けて迎撃をしようとするヒュウガ、が・・・

「甘いわね・・・」

 ユイが自機のコクピットで何か操作すると投げた3枚の手裏剣が
 ヒュウガの攻撃をかわしてゆく。

「なっ・・・!? プログラムで組まれただけの簡単な
 動きなら当たるはずなのに!」

「私のは特別製、そんな遅い攻撃など当たらない」

 さらに操作を続けるユイ、手裏剣の動きが複雑になりながら
 ヒュウガの方に迫る。


「あたいを忘れちゃ困るぜ!?」

 手裏剣に気を引かれたヒュウガの背後に瞬間転移をしてきたマイが鎌を構えて突撃してくる。
 その動揺を見越してか手裏剣が左右と前から襲いかかる。

「くっ!!! ・・・・・・・・・・・これならどうです!?」

 敢えて背後のマイを無視し前方から迫る手裏剣に向かって
 全砲門からミサイルを発射した。

「この距離では・・・避けられないわね」

 避けられないと判断したユイは手裏剣をそのまま突撃させた。

「コイツ、馬鹿か? 背中向けてどうしようってんだよ!?」

 マイは自分がなめられたのだと思いさらにスピードを上げ突撃する。
 ヒュウガは前の手裏剣の対応に追われて背後のマイを
 気にかけている余裕はない、ユイとマイは絶対の勝利を確信した。


「俺を忘れて話を進めてんじゃねぇよ!!」

 今まですっかり忘れられていたラグナがついにキレた。
 そして今まですっかりラグナのことを忘れていたマイを背後から
 思いっきりタックルをかました。

「うわっ!!!」

 マイ機が思いっきり吹っ飛び体勢を崩しそうになる。

「マイ、こちらも無効化されたわ」

「姉貴もかよ!?」

「まだ破られたわけじゃないわ・・・マイ、行くわよ」

「今度こそ・・・決めてやるぜ!」


CB:天断乃輪〜虚無華葬・隔離世乃檻〜
(コンビネーションバースト:あまだちのわ〜きょむかそう・かくりよのおり〜)


 さっきと同じようにユイが3枚の大手裏剣を投げる。

「同じ攻撃なら効きませんよ?」

「それはかわしきってから言うのね」

「今度は先にお前を抑えさせてもらうぜ!?」

 今度は無視されないようにラグナがマイに向かっていく。

「そんなの計算済みなんだよ!!!」

 マイはそれを狙っていたのかカウンターの要領でラグナを思いっきり吹っ飛ばした。

「借りは返したぜ〜」

「隊長〜、大丈夫ですか?」

「俺は良いから自分の心配してろ!!」

「大丈夫ですよ、さっきので分かりましたから」

 ヒュウガはさっきの攻撃を退けたことでかなり油断しているようだ。


「未熟ね」

 さっきと同じ操作をくり返しているユイ。

「全くだぜ!」

「ヒュウガ、気を付けろ・・・鎌持ってる方、さっきと動きが違うぞ!!」

「遅いんだよ、食らいな!」

 マイが叫び鎌を投げる。

「完全にこちらの油断でした、すいません隊長」

「あやまるのは後にして今は生き残ることだけ考えやがれ、馬鹿野郎!!」

 投げた鎌が徐々に形を変えてゆく。

「そう簡単に私たちの技から逃げられるとは思わないことね」

「確かにこれは・・・今まで喰らった技の中でもトップクラスの難易度ですね」

 絶体絶命と思われるような技をかけられながらもどこか余裕のあるヒュウガ。


「これでも余裕を崩さないの? 流石と言うより、ただの馬鹿ね」

 マイの投げた鎌が変形を終了した、その形は手裏剣の形をしている。

「ちっ・・・ヒュウガをやらせるかよっ!」

「おっと! アンタの相手はあたいだよ?」

 ラグナの前を遮るマイ、だが背後から迫まる手裏剣は止まらない。

「ヒュウガ、お前大丈夫だろうな!?」

 マイの相手をしながら何とかあちら側にいけないだろうかと思案するラグナ。

「【あの時】隊長も見てたじゃありませんか、死にはしないですよ」

「・・・全く、無茶しやがるぜ!!」

 ヒュウガの意図を読みとったラグナはマイを撃退する方に集中することにした。

「この技を回避しきると言うの? どんな手があるというのかしら」

「まあ、こういう類の技はこうするしかないですよね・・・」

 ヒュウガは何を思ったのか自機を前方から迫まる3枚の大手裏剣に突撃させた。


「おいおい、自殺する気か!?」

 さらにヒュウガは自分から向かって右側の手裏剣にハンドMLRS
(コロナブリッド版)を撃った。

「無駄よ」

 ユイは手裏剣を巧みなコントロールで避けさせる。
 だがそれがヒュウガの狙いだった。
 手裏剣の軌道をずらす事によりわずかに出来る手裏剣と手裏剣の
 間の隙間にヒュウガは自機を無理矢理滑り込ませる。

「ぐうう! ・・・ふう、これで僕に向かってくる全ての兵器を
 僕の前方に捉える事が出来るようになりましたよ?」

「毎度ながら冷や冷やさせるんじゃねえよ、ヒュウガ」

 肩兵器を一つ犠牲にしながらかわしたヒュウガは
 自分の前方にある全ての兵器を撃ち落としながらこういった。


「隊長・・・いつものことでしょ?」

「わかったよ、とにかく無事でよかったなヒュウガ」

「・・・予測範囲外の事態だわ」

「うそだろ!?」

 ユイとマイにとってはあんな行動を日常茶飯事にやってるのかというツッコミよりも、
 自分達の自慢の必殺技をかわされた事の方が気になっているようだ。


「さて、今度はこちらからのば・・・・・・」

 ラグナがその先を言おうとしたその時・・・
















 

 〜戦闘終了間際・オスコットチーム〜


「いっけええええええええええええ!!!」

 ついにヘルファイアが発射され敵集団の真ん中へと吸い込まれてゆく。
 そして着弾と同時に辺り一面が光に包まれた。


「やったのか・・・?」

 誰もが同じようなことを考えながら敵集団がいたであろう方向を眺めている。


「確認可能敵機数・・・40・・・28・・・21・・・成功です!!
 敵残存戦力13機!!」

 クランが驚きを隠せずになんとか結果を報告した。


「ぐずぐずしてるヒマはないよ〜!! さっさと残りを片付けなきゃさぁ!」

 光が収まった後一番に動いたのはオスコットだった。

「ムラキ、良くやってくれたねぇ!」

 オスコットが親指を立てながらウインクをする。

「すごかったですわ!」

 クランと同じくリンナも驚きを隠せないようだ。

「やりましたね、ムラキさん!」

 自分のことのように喜んでいるジータ。

「ふん、今回は褒めておいてやろう」

 珍しい反応のランブル。


「あれがエースパイロットか・・・」

「凄い正確な狙いだったな〜」

「もう言葉に出来ねぇな」

「もう私感動しちゃいましたよー」

「この戦いはアルサレアの勝利だな!」

 コルドハンターチームがそれぞれ言葉を漏らす。


「油断しないでください、敵機はまだ残っているのですから」

 もういつもの調子を取り戻しているクラン。

「はい、今度は自分もそちらの戦いを手伝いますよ!」

 ムラキもみんながいる戦場へ向かっていった。


 そのあとすぐクランからシュキに「こちらの作戦は終了した」
 と言った内容の通信が入れられた。











 

 〜戦闘終了・ラグナチーム〜


 ヒュウガがユイとマイの必殺技を破ってすぐ、シュキから通信が入った。

「隊長、ヒュウガさん・・・聞こえてる?」

「なんだ!? いま油断できないんだからよ!!」

「・・・なんですか〜? 今はちょっと・・・」

「ゴメ〜ン、すぐ終わるから聞いててね!!
 クランがこちらの戦闘は終了したって! 以上!!」


 そしてそれを聞いたラグナが・・・

「さて、今度はこちらからのば・・・・・・」

 と言おうとしたその時・・・


「ユイ、マイ、作戦は失敗だ・・・引き上げるぞ」

 以前ラグナを無傷で倒した男・・・リュウハが現れた。


「・・・了解、マイ・・・退くわよ」

「ええ〜!? もうかよー・・・仕方ねぇな・・・姉貴、分かったよ」


 ラグナはそんなやり取りを聞きながらも別のことを考えていた、
 あいつは前に俺のことを瞬殺したヤツ・・・許せねぇ!!!・・・と。


「おい!! 降りてきて俺と勝負しろ!!」

「今は貴様の遊びに付き合ってる暇などない・・・じゃあな」

 リュウハと双子はあっという間にレーダーの範囲外へ消えていった。


「ちくしょう・・・今度こそ、ぶっ潰してやる!!」

 空しく響くラグナの声であった。











 

 〜セストニア氷原・ヴァリム本拠地〜


 作戦が失敗したヴァリムだがそれ程焦ってはいないようだ。

「ブライス様、作戦は失敗したようですが・・・?」

「かまわん、所詮この程度の連中よ。だがそんな連中もデータ集めのいい材料にはなったさ・・・クククククククククク!!!!!」













第3話前編・END

第3話中編へ続く

 




 

作者共のお遊び〜第3話(前編)完成記念インタビュー・・・じゃなくて苦労話〜

桃音:ええと・・・今回インタビューは後編でやりますのでちょっとした
   苦労話なんぞしたいと思います。

ナイトメア:今回の最大の苦労はラグナとランブルの設定です。

桃音:アレは・・・チャットで数人の方に手伝っていただいてようやく
    解決するような大きな穴でしたね(核爆)

ナイトメア:その時にならないと気づかないなんて・・・

桃音:マジでアホでしたよ・・・

ナイトメア:たしかに・・・

ナイトメア:他には機体設定にも苦労しました。

桃音:いっぱい纏めて設定作りましたからねー。

ナイトメア:当初の予定では作る気は全くなかったからね。

桃音:最初に考えてない設定がドンドン出てくる・・・創作活動の醍醐味、
   と言ったところでしょうか?

ナイトメア:後編からはコバルト小隊オリジナル兵器も
      一部出そうかと思ってます。

桃音:それに始めは考えてなかった新オリジナルキャラも増えましたよね。

ナイトメア:相方の暴走で生まれた人ね。

桃音:一部の人の評価が気になるところです。

ナイトメア:物語には全く関りのない人なので無視してくれても構いません。

桃音:また出番があるかもしれないのにそれは酷いですよ。

ナイトメア:後書きのインタビュアーにでもしようか?

桃音:それもいいかもしれないですね♪

ナイトメア:その件は後で考えるとするかの。

ナイトメア:そういえば今回のCB名はかなり時間かけましたねえ。

桃音:何時間ぐらいかけましたっけ?

ナイトメア:確か4時間以上はかけてたはず。

桃音:双首蒼竜さんの虚空の鳳凰の設定に感化された私がわがままを
   言いだしたトコから始まりましたね。

ナイトメア:漢字だらけにしようなんて言った時はノリでやろうなんて
      言わなければよかった。

桃音:おかげで満足のいくモノが出来ましたけどね。

ナイトメア:まあね。

桃音:では次回予告です。

ナイトメア:次回は笑わせます。それとリュウハがあの2人と戦います。

桃音:笑える話・・・ですか、今までも充分笑わせたような気もしますけどね
   ・・・シリアスのハズなのに。

ナイトメア:ラストはシリアスで締めるからいいの。

桃音:では、後編でまたお会いしましょう〜♪

ナイトメア:では、また。



 


 管理人より

 桃色の悪夢さんより第3話前編をご投稿頂きました!

 フム・・・・まるで操られているかのように(爆)<きっとそうでしょうが

 しかし、ムラキも・・・・(苦笑)
 


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