〜2〜


 

 ――砂嵐

 視界はゼロに等しい。
 レーダーは辛うじて感を示すが、映る光点は寂しそうにもじもじとしている。
 今にも消えそうでこちらまで寂しくなる。

 一方で無線通信からはイライラするようなノイズばかり聞こえてくる。
 いっその事切ってしまいたかったが、そうもいかない。
 レーダーがマトモに使えない以上、密な連絡を欠いてははぐれてしまうのがオチだ。
 全く以って精神衛生上良くないと吐き捨てたくなるような状況である。



 

 砂嵐の中を行軍する6機のPF。
 少し密集気味な三角形の編隊を組んで、それぞれを確認し合う。

 1−2−3の編隊、小隊の先頭を務めるのはオニ、全身に砂漠用迷彩を施したものだ。

 その中に彼はいた、デイン=クライヴ。
 嵐の中を行軍する小隊――陽動強襲を主任務とする傭兵部隊『Feint Operators』の隊長だ。

 少し憂鬱そうな表情は、今回の任務の本性を、その困難さを想像させる。


「凄い嵐だな。各機、レーダーに気を配れ。ここで遭難しようものなら、敵陣のド真ん中で孤立する事になるぞ」

 その口は渋っている。
 これは年齢のせいではない。
 黒髪を掻き上げて気を紛らわす。

 僅かな視界にはPFの残骸が転がっているのが見えた。
 これだけの大戦争になれば、破損したとて回収は困難を極める。
 大破と破棄は同義だ。明日の我が身と思えばゾッとする。


「こんな砂嵐の日に動くのは、PFの残骸目当てのジャンク屋くらいのものですからね」


 デインの左後方のキシン。
 殺伐とした風景に映える穏やかな口調は、さしずめ砂漠のオアシスのようだ。
 Feint Operatorsの最年少、ステア=コルチカム。
 色白の肌に長い赤褐色の髪は彼女の性格を表している。
 知性的で美しい、小隊の精神安定剤だ。


「――だろうな。強襲部隊でも嫌がる過酷な任務、命令がなければ絶対にしたがる奴などいないだろう。こう言われてるのと同じだ、死んで下さいってな」


 続けて、淡々と悪態をつくのは厳つい顔をしたエイク=ラマ=ミッテス。
 小隊の副長、隊長の足りない頭を補う参謀を自認している。
 最後列真中のタルカスはそれぞれ弾速の違う光学、実弾、誘導弾を組み合わせた機体であり、彼の計算された冷静さはここでも表れている。


「言うなよエーク、そんな任務を押し付けられた俺達は本物の馬鹿みたいじゃねぇか」


 デインの笑い声が聞こえる。
 少し自嘲気味に。

 こんな状況で行軍するのは自殺行為。
 そこまでは行かないかも知れないが、少なくとも正気の沙汰ではない。
 砂嵐だからといって相手が油断している訳ではない。
 むしろ余計に警戒していて当然だ。


「それだけ重要なものが来るってこったろ? とっとと片付けて、見てみてぇな」


 デインの右後方のアシュラ。
 一見軽薄そうな顔をしたシグレ=カンナツキは少し嬉しそうな口調だ。
 根は真面目なのだが、会話からはあまりそれを匂わせない。


 そうだ、それでも俺達はここにいる。
 嵐を抜けて、敵基地へと強襲を仕掛ける任務を帯びて。
 ――今回来る新型は、そのくらい重要なものらしい。
 これが共通認識だ。


「あまりはしゃぎ過ぎるのもどうかと思うぞカンナ」


 最後列右のヤシャ改に乗っているのは獅子のような金髪のグラーブ=レイモンド。
 彼は愛機を個人的にフルスペックヤシャと呼んでいる。
 石橋を叩いてから渡るような慎重な性格だが、叩いて壊れないとなると、一気に渡ってしまう豪快さも兼ね備える。
 その性格は機体にも表れており、戦闘の際はデインと共に攻撃の核を成すオールラウンドな機体だが、相手の一瞬の隙を突いて持ち込む接近戦が彼の持ち味となっている。


「レイは心配性だなぁ。解ってるって。まぁ、まだ俺は若いからな。若さ故の過ちって奴だよ」

「若いねぇ〜・・・少しは大人になりなよ。これだけヤバそうなシチュエーションなんか滅多にないんだ、気ぃ引き締めないと、今ここでオシオキしちゃおうかなぁ? はははははっ」


 豪快な笑い声が響くのは最後列左のヴェタール改、何故かゼブラカラーだ。
 手に持つバトルハンマーを構えてカンナを威嚇する。
 搭乗しているハート=ロイディーナの表情は半笑いだ、本気かどうかは判別出来ない。
 髪はステアと同じ赤褐色だが、性格は正反対のようだ。
 カンナからは少し冷や汗が流れる。


「マジ?そぉ〜ぉだよなぁ〜。ここらでちょっと気ぃ引き締めないとなぁ〜」

「解ればよろしい少年」


 ――この2人は小隊のムードメーカーだ。
 一見緊張感がないようにも見えるが、これは無理とやっているような節がある。
 幾らはしゃいで見せても、実戦を前にしては、それも虚勢張ったものにしかならなくなる。
 それはカンナにも、ハートにも解っていたが、一方でその必要性を認めるからこそ、隊長であるデインもそれを助長する役割を担っていた。

 他方、ステア、エーク、レイの3人は少し緊張気味だ。
 虚勢を張るだけの余裕さえないように見える。
 頭の中でのシミュレーションは何度となく繰り返し、ひたすらその安定を求める。
 冷静だからこそ、危険な任務には余裕が持てないのだ。








第3話へ続く

 



 今週のネタバレ(笑)

 いかがでしたか? キャラの提供者の皆さんはさぞお怒りになった事でしょう(汗)
 さて、まだ引き伸ばします。実際の話、次の話でも引き伸ばされますが、あきらめずに続きもどうぞ。きっとおいしいですよ。

 


 管理人より

 レビさんより第2話をご投稿頂きました!

 ようやく全員登場しましたね(笑)

 確かにジャンク屋はこの天候でも動いていそうですw
 


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