〜1〜
砂嵐の中、視界全てが茶色に染まる。
夜でもないのに夜に近い、それはまるで砂の壁だ。
だが、それはただの壁ではない。
壁のくせに、その先には何もない。
触れる事も、押さえる事も、ましてや壊す事も出来ずに存在し、越えたときの爽快感を与えてくれるでもなく纏わり付き、行く手を遮る。
もはやここまでくれば、目の前が壁なのか、そうでないのかが解らない。
物理的にも壁に近いが、これが任務の際の、それも越えるべき「障壁」というのだからウンザリする。
どうしろというのではなく、どうにかなるしかない。
そんな受動的な解決をただ待つしかないのがまた歯痒い。
解ったからこの息苦しさを何とかしろ、まだ暗闇の方がマシだ。
ここはサーリットン。
周囲は全て地平の彼方まで見渡せる灼けた大地――今は違うがな。
時折こうやって馬鹿みたいな砂嵐が吹き荒れる。
暑く乾燥した――洗濯物を干すくらいにも満足に使えないこんな土地の何が魅力で戦っているのか興味はないが、上官殿曰く、「ここは現在両国の軍事境界線にして・・・(以下略)」
――兎にも角にも、ここがヴァリムとアルサレア両国にとって最大の天王山とされている重要な場所との事である。
だから飛び交う銃弾は雨あられ、両軍とも本気だ。
ヴァリムは世界征服のためにアルサレアを潰すのに躍起になり、アルサレアはそんなヴァリムに一矢報いるために躍起になっている。
両軍が激しくぶつかるのは嵐の晴れた日。
ここの地上戦の規模は他の戦場とは訳が違う。
実際には小隊対小隊には違いないのだが、それらを纏めて大きな視点から見れば、むしろ師団対師団といった方が正しい。
乱戦になれば、生き残るのすら神頼みさ。
それで、今日みたいな嵐の日は安息日――つっても、両軍共に戦力を立て直したりしている。
ウチに関しては、戦力の逐次投入という訳だ。
全く大陸国家らしいと言うか、何と言うか・・・。
もうひとつ、ここは新兵器実験場の側面も持っている。
だからたまにゼクルヴとかいうでっかい奴のいろんなヴァリエーションが出たりする。
戦力の増強の一環にして、実戦テスト。
その結果使い物にならなくても、万一捕獲されるような事があっても、その場で自爆させれば良いし、その際も研究所内とは違って、少なくとも敵か少々の味方しか犠牲にしなくて済む。
正に完璧だろうと、拍手したくなってくる。
皮肉を込めてな。
しかし、一方でアルサレアにとってはヴァリムの技術を検証する良い機会になる。
新兵器捕獲用の特務部隊すら存在するくらいだからな。
だから、こっちの輸送部隊は最低でも中隊レベル。
特に重要なものなら3個中隊が護衛に就いていたなんて事もあった。
大名行列を彷彿させるような大行列はコスト面から見ても馬鹿にはならないだろうが、少なくともこちらの意図しない状況での捕獲はされる訳にはいかないからな。
それでも危険が多い。
万一というものがある。
そこで、どこかの偉いさんから「だったら、相手が出てこられないようにすれば良い」というアイディアが閃いた訳だ。
それは良いアイディアだが、危険なアイディアだ。
少なくとも、それに従事する者にとってはだがな。
だが、誰かがやらなくてはならない。
――違うな、お偉いさんの理屈ならば「誰かに押し付けなくてはならない」といったところか。
新兵器を守る輸送部隊を守るために戦う、本当の第一線。
最も死に近い戦場。
輸送部隊が襲撃されないように、先に敵部隊を強襲し、陽動に乗らざるを得ない状況を作り出して釘付けにする最重要任務。
そして、今日も新型がやって来る予定だ。
中身は見てのお楽しみだが、陽動だけでアルサレア軍基地のひとつを強襲しなければならない程だから、相当のものが積み込まれているのだろう。
絶対に無傷で輸送しなければ担当者の首が飛ぶだろう事は明白だ。
――そして、そんな新兵器の輸送を陰で支える陽動部隊、俺達「Feint Operators」に出撃命令が下ったという訳だ。
今週のネタバレ(笑)
遂に本編が始まりました。前作の『虚空からの使者」とは少し違った軽いタッチ(?)短編らしく短い。しかし、確信にはまだ触れてもいないという歯痒さ・・・・・・・・・申し訳ない。
さて、次回からはようやくマトモな小説っぽいものになります・・・かどうかは解りませんが、皆さんから戴いたキャラが動き出します。最初の設定とちょっと違う部分がありますが、それはそれでご容赦を。
でわでわ続きをどうぞ
管理人より
レビさんより第1章第1話をご投稿頂きました!
今回はプロローグ的な話ですね。
これから起こる事件とは……