――聖暦0025年1月、今はアルサレア戦役と呼ばれている未曾有の大戦争が、アルサレアの勝利で終わってから2年が経とうとしていた。

 

 アルサレア戦役は惑星J入植以来最大の大戦争であり、戦勝国であるアルサレアも手痛い傷を負った。
 しかし、敗戦国であるヴァリムにとっては戦争の傷だけの問題ではなかった。
 常勝国としてのプライドは崩れ、それは一時期、国民性・民族性の瓦解にまで発展しつつあったのである。

 しかし、それも過去の話。当時ヴァリム軍戦略機動大隊東方司令官であったベリウム=ヴァレリウスによるGエリア侵攻と、その結果本国にもたらされた莫大な鉱物資源によってその傷を急速に癒していった。

 一方、戦争慎重論を唱える穏健派が、旗印である戦略機動軍大尉グリュウ=アインソードの戦死によって勢力を失う中、それを契機に戦争強硬派の開戦論が発言力を増し、再び始まった国家総動員と対外拡大政策は、皮肉にも消沈していたヴァリムの国民性・民族性を再び起ち上がらせる結果となった。

 生じた不安・憎悪・嫉妬などの負の意識は、その人々の関係する諸関係と、それらを構成する諸社会によって段階的に、全般的に吸収され、強大な世論と化したその意識はいよいよ物理的強制力――即ち軍事力と結合する事で国家の外観を体現し、変質し、排他的な国民性を一層強化した。

 

 ――今度こそあのアルサレアを叩き潰す。国辱はその血を以って洗われるべきである――

 今や開戦論は以前とは別の形で、結果としては再びヴァリム国民の主要思想にまで上り詰めた。

 「戦争の機運高まる」――こういった報道も現実味を帯び、いつ本格的な戦争が始まるか解らない一触即発の事態にまで発展するに至った。

 

 今度戦争が起これば、それは互いの憎しみがぶつかる悲惨なものとなるだろう。
 そういった当たり前の意見も両国内では少数に過ぎず、誰もそれを止める事は出来なかった。
 それを望む者があまりにも少な過ぎたのだ。


 ――そして、歴史は繰り返されようとしていた。以前よりも、最悪の形で――




 

 ――これは、そのような激動の時代に飲み込まれ、翻弄された戦士達の、悲しい戦いの歴史である。










 

機甲兵団Jフェニックス外伝 「Feint Operators」

序章 陽動強襲部隊Feint Operators










 

 俺の名は「デイン=クライヴ」、ヴァリム軍で傭兵をやっている。PFの操縦なら、自信があるぜ。

 階級は特務中尉。可笑しな事に給料は中尉だが、戦場に出ればヴァリム軍少尉の方が指揮権を持つ事になる。
 つまり特務ってのは、傭兵だけに使われている臨時と言うか・・・差別的階級と言うか・・・まぁ、そんなものだ。
 こればっかりは俺もヴァリムで生まれた訳ではないから仕方がないがな。

 出身?
 ――そうだな、今はなくなった辺境の王国とでも言っておこうか。
 因みに今そこはこう呼ばれている、「ヴァリム共和国」ってな。
 俺の住んでいる所は変わらないが、名前だけ変わりやがった。
 いや、環境もずいぶんと変わったが・・・だからよく裏切り者って言われる事がある。
 気にしてない事はないが、そうでもしないと生きてはいけない。

 人が去り、国の名前は変わっても、ここは俺の故郷だ。
 家族なんかは最初からいやしないが、ここから離れる気はなくてね。

 俺がいなくなったら、ここは本当の意味で「俺達」の故郷ではなくなってしまいそうな・・・そんな気がするからだ。

 ――わりぃ、シケた話になっちまったぜ。

 

 話は変わるが、俺達は重要な任務を与えられている。
 『陽動強襲』――その名の通り、陽動のために強襲する。
 こんな大層な役目を引き受けているのは、ヴァリムの特殊部隊か俺達くらいのものだ。

 陽動任務で一番必要な事は何か解るか?
 それはとにかく目立つ事だよ。
 当たり前だ、敵を引き付けてナンボなんだからな。

 新兵器を守る輸送部隊を守るために敵部隊を強襲し、その陽動に乗らざるを得ない状況を作り出す最重要任務。
 輸送作戦が上手くいくかどうかはこの結果如何に懸かっているといっても過言ではないし、上もそう思っている。

 だから装備は正規軍のよりマトモなものが揃っている。
 でなけりゃ陽動なんか出来やしねぇからな。

 任務が同じだからかどうかは知らないが、ヴァリムではその特殊部隊の通称である「Diversionary Raiders」と区別して、俺達を「Diversionist」と呼んでいる。
 仕事の内容は変わらないが、少なくとも向こうはエリートらしいからな。

 尤も、この「Diversionist」という言葉にはもうひとつ違う意味が含まれている。
 政治的偏向者・反政府活動家・反体制的破壊活動家など、物々しい限りだ。
 「本国」の連中が俺達をどう見ているかが一目で解りそうな・・・全く素晴らしいネーミングセンスだよ。

 他にも誹謗に中傷、陰口はいつもの通り。
 そのくせ仕事量は半端じゃない。
 一番危険な戦場へと次々に送られる。
 給料は一見そこそこだが、割に合わん。
 まったくやってらんねぇぜ。

 だから俺達は、自分達の事を「Feint Operators」と呼んでいる。
 話せば長くなるが、あくまで傭兵として、その地位を確立するための第一歩として、そして自分達が自分たちであるための拠り所として。

 ――本当はこの方が正しいような気がするんだが、まだ通称扱いだ。

 

 ――おっと、愚痴ばっかりになってしまったな。あまり最初に飛ばし過ぎても仕方ないからな。とにかく―――


 装備は一流、待遇は三流以下。
 それでいて任務の重要度は超一流という特異な者達の戦記―――これは、そんな俺達「Feint Operators」の物語だ。








第1章へ続く

 



 今週のネタバレ(笑)

 第二次アルサレア戦役の火種は燻り、遂に炎を上げた。今はまだ小さな炎だが、その炎は人々の負の感情を吸収し、一気に燃え上がろうとしていた。

 ・・・遂に始まった待望の(誰が待っているのやら・・・汗)新連載「Feint Operators」・・・実は結構出来上がっています。

 せっかくここまで見たんですから、旅は道連れさぁさぁ続きをどうぞ!!

 


 管理人より

 レビさんより新作「Feint Operators」をご投稿頂きました!

 Jフェニでの戦争の火種は、非常に問題がありますからね〜(汗)

 さて、彼等「Feint Operators」はこれからどうなっていくのか……
 


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