「ケイオウの側近を名乗るからどれほどのモノかと思えば、なかなかに面白い・・・・・」
ヒルツが戦闘の直後、油断なく気配を回した時その声はやってきた。
声をかけたのは剣狼こと、ジーク・フェルナンデスだった。
いつの間にか現れたジークは、ヒルツをよく知っている・・・・・、はずだった。
ケイオウの取り巻きとして、うろちょろしているのだからイヤでも目に入る。
だが、ジークはいままで敵として意識したことはなかった。
瞬間転移に関しては一目置いていたが、それでも好戦的というよりか、逃げがヒルツの型だった。
まあ、ヒルツは戦力ではなく、ただケイオウの追っかけであり、ヘルファイヤーに巻き込まれないようにするのがヒルツの戦い方だったから仕方がないのだ。
そして、極光戦で神速に目覚めたヒルツだったが、その後あった時の機体は神速対応機体はなかった。
だから、ジークは思ったのだ。
ヒルツという男は裏方に徹し、自分の可能性に興味がない男だと
ジークから見れば、考えられないタイプの人間だった。
少なくとも、誰かを利用するタイプでないケイオウがヒルツを身近に置くことが不思議でならなかった。
だが、今の闘いを見て考えが変わった。
理由はわからないが、ヒルツという男は今までワザと自分を押し殺していたのだと思った。
だから、ケイオウとの前座に戦ってみようと思った。
「なんで剣狼がこんなところにいるんですか?」
ヒルツはあまりにももの凄い人物の登場に、自分の声が上ずっている事に気づかない程だった。
「お前がサイトを更新したんだろう?
ケイオウがシャインフェニックスでここに来ると
この前は面白いモノを見せてもらったが、どうせなら第3世代というレベルも知っておきたくなったのでな
まず、前座にお前の相手をしてやる
どうやら、お前も何か隠しているようだしな・・・・」
うっわ〜〜〜〜バレバレですか・・・・
ヒルツはそう思いながら、ゆっくりと崩剣を取りに行った。
「さて、どうしたものか・・・」
ジーク出現にケイオウはどうするか考えた。
予定では、ダンとルキアをどこぞに捨てた後、生身での潜入戦に入り欲しいモノを頂いて、研究所諸共消し飛ばそうと思っていた。
ケイオウはルキアの考えを余所に、研究所を消し飛ばそうと思っていた。
なぜなら、ケイオウは命を弄ぶ行為そのモノを嫌っていたからだ。
そして、事実はともかく、そんなモノの存在を許そうとは端から考えては居なかった。
施設を残せば、アルサレアやミラムーンも同じ事を考えるとケイオウは考えていたからだ。
それが例え国の意志でなく、個人の意志であろうともそれは関係ないことだった。
そして、ケイオウには予定を変更するつもりが全くなかったが、どうしようかと思っていた。
なにせ、ジーククラス相手では、機体性能はあまり意味がない。
神速が使える以上、ジークには射撃兵器は意味を成さない。
不可視のクリューアルファングも例外ではない。
なぜなら、神域に入っていれば発射音と、圧縮空気が大気を伝わる時にできる波を知覚できるのだから
故に、ジーク相手では接近戦しか意味を成さないが、一刀侍魂のジークの間合いにはいるのは容易ではない。
お互いサドンデスを覚悟しなければならない上に、なによりもジークは自分の戦い方に慣れている。
戦闘経験が、勝敗の全てを掛けると言っても言い過ぎではない。
「このまま傍観しましょう、成長を促すためには良い経験よ。それに、彼の性格からしてむやみに命の奪い合いをしたりはしないでしょう」
「でも、一撃必殺の闘いですしリスクが大きいのでは?」
「大丈夫よソナタ、彼はそんなに弱くないわ」
・・・・・・いざとなれば、・・・・・・
ゴールドの言葉に、ケイオウはうなずくと傍観を決め込むことにした。
「全員、ヒルツの闘いに集中せよ!!とんでもないモノが拝めるぞ」
さて、煽るだけ煽っておいて何もしないのは無責任だな
・・・・・・いざ、参るか
ケイオウはそう思うと、生身で単身一気に研究所まで掛けだした。
ヒルツVSジーク
くそ、吐き気がする〜〜〜・・・・・・・
殺意なき覇気、そんな気配をヒルツは初めて感じていた。
ケイオウの場合は、いつも容赦なく殺気剥き出しで襲われるか、殺気どころか気配も音もなく襲ってくるかなのだ。
まあ、並の相手ならその強弱があっても、その特訓だけでどうにでもなるのだが、今のジークは別次元の存在だった。
猛烈なプレッシャーの中、ヒルツは冷や汗混じりで考えていた。
どう戦うかを・・・
ただ自分の実力がわかっていないヒルツは、愚かにも手の内を見せるのも面白いとまで考えていた。
恐ろしい程愚かな考えだが、警戒させるには良い伏線だと思ったからだ。
もっとも、ジークにはそんな思案すら煩わしかったのか言った。
「どうした?俺はただ一振りのみ、それ以外何もないぞ?」
ジークは挑発するために言ったわけではない。
ただ、色々考えたところで結果は代わりはしない。
そう言いたかっただけだった。
だが、ヒルツはこう受け止めた。
出来ることに幅がない以上、戦術は意味を持たないと
「それもそうだ、どうせ一撃で勝負は着くんだ・・・・いざ!!」
迷いはない!!
命がけの勝負も(たぶん)初めてではない!!・・・・(気がする)
覚悟の決め方も知っている!!(はず?)
めっちゃめちゃ、挙動不審な覚悟の決め方だった
まあ、ある意味ヒルツらしいといえなくもないけど・・・・(汗)
そして、覚悟を決めたのなら迷わず即座に動く!!
少なくとも、それだけはケイオウの行動をずっと見てきたヒルツにある確信だった。
そして、ヒルツは上半身を捻りながらジークに突撃すると、天神速を発動した。
天神速
それは、偽神速、神速、激神速、絶神速に続く5番目の神速だった。
ただ、この神速は従来の神速とは毛色が全く違う。
なぜなら、パワーアップや瞬時の移動を目的に作られた神速ではなく、偶然の産物であるとともに、一種のバグなのだから
ケイオウが特尉に就任して7日目
ヒルツはミラムーンにある演習場に来ていた。
そこには、後にイクシオンと名付けられる量産士官用第3世代PFが置いてあった。
ケイオウはワザと、アルサレアで第3世代PFを作らなかった。
アルサレア戦役後、軍事力を失ったヴァリムはアルサレアとの小規模な戦闘と、激しすぎる情報戦を繰り広げていたからだった。
惑星J規格とは言え、そうそう第3世代の情報を渡してしまうわけにも行かず、ミラムーンとヴァリムの国境線のど真ん中に地下工場を作り、そこでケイオウ達は第3世代を秘密裏に作っていた。
どうしてそんな場所に作ったのかと思われるかも知れないが、証拠隠滅にはおあつらえ向きの場所なのだ。
例え爆発が起ろうとも、戦闘による何かだと誰もが思う取って置きの場所である。
ちなみに、地下基地自体はワールドの連中が作ったものであり、そこで製造されたPFはシャインフェニックス、ヌート・アノン、ゴット・ポリタンV、ライトニングセイバーの4機種だった。
そのうち、ヌート・アノンの弱体機ヴァルキリーと、シャインフェニックスの弱体機ライトニングセイバーをミラムーンとアルサレアにリークするつもりだった。
もちろん、ただでやるつもりはなかった。
その2機種には、致命的な欠点があった。
確かに強いのだが、エネルギー消耗が激しく長時間戦えないと言うオチがあった。
実可動は30分、戦闘行動は10分が今のJのジェネレーターでは限界だった。
なぜそんなオチを付けたのか?
正確には、オチを付けたのではない。
第3世代型にはコロナシステムの導入が想定されていた。
それが完成すれば、問題は解決されるという設計で組まれた機体だった。
そう、Jに本来の第3世代が出来る頃には、欠点はなくなる。
では、ケイオウ達が一体何を考えているのかわからないだろう。
・・・・・・・隠してもいいが、それは無体だろうからネタを明かそう。
その答えは、戦略バランスだ。
生産力が少ないアルサレアと、生産力はそれなりでも技術がないミラムーンでは、一度動き出したヴァリムに完成した直後の第3世代を作っても、対抗する前に数で押し切られてしまうのは見え見えだった。
第2世代と比べ、第3世代は火力が違う。
扱いにくいという条件が一緒ならば、同じ火力の兵器が多い方が強いのは道理である。
だからこそ、不完全でもコロナシステムさえ開発すれば戦力になる未完成の第3世代を両国にリークしたのだ。
もっとも、今の段階では両機体はアポロンと同様ブラックボックスの塊以外の何ものでもなかった。
それでもってヒルツには、リークする機体のテストパイロット兼、完成後の第3世代機体の性能テストをさせようとケイオウは考えて、ヒルツをここに招待していた。
ちなみに、ヒルツ専用機イクシオンには完成したコロナシステムが搭載されている。
でもって、ケイオウと友の誓いを果たしたヒルツはPFのテストと同時に神速の指南を受けていた。
「いいか、まずは見ること
そして、相手の動きを見極めた上でどう動くか
そして、一番大切なことは神域、もしくは神速が解けた時自分がどう動くかだ
神速は入った直後は、時が停止して感じるがそれも馴れねば無駄に時間を費やしてしまう
まあ、それは馴れだがな
そして、神速が解けた時、逆に時間の流れに置いて行かれることになる
1番気を付けることは、神速が解けた時
己自身に隙が出来ること
たいていの場合、神速を使えば敵を倒せてしまう
倒せたのならいい
だが、倒しきれなかった時は命取りになる
まあ、どう倒し、その後どうするか・・・・・それが神速使いに求められる
とはいえ、色々言っても始まらないだろうから、早速実戦と行こう」
ケイオウはそう言うと、神速を使わずヒルツに襲いかかった。
ヒルツは神域に入るのみで、その攻撃を避け、神速に入らなかった。
相手の動きを見極めさえすれば、神速に入らなくてもイクシオンの性能なら十二分に回避出来る。
惑星Jの神速使いは、HM神速中にしか神域に入らない。
理由は多々あるが、神域にはいったままでIFSに命令を伝えると機体が暴走すると言うのが原因
故に、戦闘で神域にはいるのは神速発動中が常であったが、ケイオウはワザとそう言う神速使いにならないようにヒルツを指導した。
ヒルツは短時間でケイオウの言ったこと、そしてこのイクシオンを乗りこなしてみせた。
正確には乗りこなしてはいたが、性能は引き出し切れていなかった、がそれでも十分な動きをして見せた。
これも某所、某シミュレーターで絶叫と気絶を繰り返した結果だった。<妙に強く成れた理由!!
そして、神速を使用しての特訓を開始した時のことだった。
ヒルツは始めて神速を発動させるため、震えた手でインドルガンツイアをセットした。
そのうえ、意気込んでいたせいか力一杯HMの発動ボタンを押した。
そして、ヒルツは念願の神速を発動させた途端・・・・・・・・・・
消滅した!!
「消えただと!!」
これにはケイオウはおろか、ゴールドすらも驚いた。
激神速の使い手が、ヒルツの機体を見失ったからだ。
ケイオウは一瞬何が起きたのかわからなかった。
間違いなく、神速は発動したはずだった。
ケイオウもイクシオンの挙動から、それを確認していた。
だからこそ驚いたのだ。
絶神速でも発動させない限り、動いてケイオウの知覚を超えることは不可能なのだ。
だが、ヒルツにはそもそも絶神速など発動出来ないように、インドルガンツイアに仕掛けをしておいたのだ。
そしてケイオウは混乱しながらも、今までの経験から瞬時にPXフィールドを展開していた。
その直後、ケイオウはヒルツを捕えた。
訓練所の最奥にヒルツが現れた。
「どっわ〜〜〜〜〜!!!」
ヒルツは叫び声を上げて驚いた。
なにせ、時間が止まると思っていたのに、気づいた途端壁が目の前にあるのだから
何が起きたのは、本当に誰にもわからなかった。
その後、訓練を中止し、何が起きたのか、ヒルツ自身に異常がないかを調査した。
そして、出た答えはバグだった。
ヒルツのPFは元々瞬間転移をHMに持つ機体だった。
それをインドルガンツイアによって、強制的にHM神速が発動するように設定していたのだ。
そして、今回の件の答えはこうだった。
ヒルツはインドルガンツイアの接続が甘く、その上力一杯HM発動ボタンを押したため、神速が発動した瞬間インドルガンツイアが外れ、HMの設定が神速から瞬間転移に書き換えられたのだ。
もっとも、それだけならばバグでも何でもない。
一番の問題は、神速発動中にHMの属性が変化したことだった。
つまり、何が言いたいのかというと、ヒルツは偶然にも神速で瞬間転移したのだった。
そう、まさに目にもとまらない速さで瞬間転移して見せたことにより、ケイオウ達はヒルツを見失っていた。
そして、これが第5の神速となったのには、まだ理由があった。
それは、本来の瞬間転移程の移動距離が出せなくなるというオチがあるモノの、この天神速は転移発動直前と直後の隙が全くないのだ。
なぜなら、瞬間転移の全プロセスが神速発動中に行なわれてしまうからだ。
神速発動時間が短いから転移距離は稼げないが、その分全く隙がないのだ。
その上、発動回数には制限がない。
なぜなら、基本的に神速を発動しているとBRUMシステムが勘違いしているからだった。
まさに、恐怖の新必殺技の誕生だった。
それを聞いたヒルツは素直に大はしゃぎした。
「まったく、素人とは時に恐ろしいモンだな」
「ええ、わたしも偶然とはいえそんなことが出来るとは思っても見なかったわ」
ケイオウもゴールドもインドルガンツイアが外れれば、神速が解除されるとずっと思っていた。
イヤ、それ以前にそんなこと試そうとも考えもしなかった。
ヒルツもそうなのだが、この現象はたぶん根底に「へっぽこ」を隠し?持つヒルツ以外には起きないだろう現象だった。
そして、現在のイクシオンにはHM天神速専用のボタンが増設されており、押すことにより神速発動直後にインドルガンツイアが外れる仕組みになっていた。
ちなみに、外れたと誤認する情報を入れても神速は解除されなかったので、このレトロな方法がとられた。
また、瞬間転移発動直後にインドルガンツイアをはめることも試してみたが、こちらは転移自体がキャンセルされる上に、システムがエラーを起こし機体が停止するという異常事態が起きてしまったので、この実験はあっさりお開きとなった。
ちなみに、天神速の「天」は天才、天然、転移の転をもじった内どれでしょうと言ったところだ(爆)
そして、ヒルツが天神速を発動し狙った場所は・・・・・・・・・
ジークの死角である真っ後ろではなかった。
本来ならそうなのだろうが、ヒルツは敢えて光牙を持つ右側に出現して見せた。
そして、一声
「天神速秘技:武破紅羅漢(ぶはこうらかん)!!!!」
両腕を後ろに引き絞りまずは右手を突き出した。
ジークに向かう崩剣は出現と同時にコクピットキラーのように刃を伸すと、ギリギリジークの間合いの外からジークに襲いかかった。(この場合間合いは、神速発動時での一足飛びを示す)
その結果、ヒルツはジークの右腕を斬り飛ばすことに見事成功した。
だが、世の中そんなに甘くない!!
ヒルツはイクシオンの右肩を打ち砕かれるという代価を、結果として払ったのだった。
一足飛び以上の間合いから攻撃したのになぜ?
どうやってそれをなしたのか?
いや、それ以上に疑問なことがある。
それはヒルツの行動をどうやって読んだのか?
・・・・・・・しかし、それに対する答えは出来ない。
なぜなら、ジークはヒルツが何をしようとしていたのか、想像も付かなかった。
ぶっちゃけ、考えもしなかった。
ただ、余裕はあった。
ケイオウの腰巾着だった新米神速使いが相手だったからではない。
歴戦の戦士としての「経験の差」による余裕だった。
ヒルツがあれこれ考えていたのは、命がけの勝負に挑む経験の絶対数が足りていない証拠だった。
ジークにとっては、それ自体が日常となっていた。
物騒この上ない日常だが、そういう「漢」なのだからしかたがない。
もう、その時点で勝負は着いていた。
覚悟あるモノの力は、機体性能だけではなかなか埋まらない。
ジークは、ヒルツが神速、正確には天神速にはいる寸前、神速を発動させていた。
先手必勝とかではない。
全ては勝利への、生き残るための絶対的布石!!
ヒルツはこれを見逃してはいけなかったのだ。
だが、天神速と、相対したジークの強さに呑まれたヒルツには、ただ天神速のタイミングだけしか頭になかった。
結果、ジークにしてやられるのだった。
一体どれほどの差なのか?
そもそも、絶対的結果を覆す布石とは何か?
それは予備動作!!
人もPFも動くために関節を有する。
さっきの戦いでも、関節の動きを観察することで圧倒的有利を得てヒルツは勝利した。
そして、雑魚相手の闘いも、強者相手の闘いも、基本が決めとなる。
ジークは先に神速で動くと、膝を曲げ、剣を振り上げると同時にヒルツが消えるのを確認した。
本来はヒルツがどう動くかを、関節の動きから読むのだが、消えたことも情報という意味では同じだった。
そう、消えたからにはどこからか出現するということは不変なのだ。
そして、ジークの神速は、ヒルツが消えた瞬間切れた。
次の瞬間、ジークの右腕は幾ばくかの抵抗を受けて切断されたが、それに気づいたジークは連続神速にはいると、さっき作った予備動作ですぐに動き出すと被害を右腕だけにとどめつつ、たたらを踏むように一歩半地面を蹴った。
ジークが神速で飛んできた時、ヒルツの天神速は出現と同時に神速が解除されていた。
とはいえ、普通に動くという意味では全く隙はない。
ブレイクインパクトの衝撃で打ち出されるコクピットキラーモードの崩剣の突進速度だって、尋常じゃない速度だ。
それでも、神速で待ちかまえ動き出したジークには遅いのだ。
神速発動中のジークにとって、射撃兵器は意味を成さない。
コクピットキラーだって、似たようなモノだ。
そして、第1波をモノともしないジークに、第2波を打ち込もうとしたヒルツは神速を発動したが、神速の素人ヒルツはここで自爆した・・・・・・・・
天神速の直前から今までずっと神域にいたのだ。
そう、ヒルツが焦って神速を発動した瞬間、ヒルツの神域が解けたのだ(爆)
神速使いにもかかわらず、神速を無駄に発動させる。
神速使いにあるまじき愚考だった。
そして、ヒルツが情けないオチを披露している頃、ジークは予備動作というタメの真価を見せつけようとしていた。
ジークは右腕の犠牲を顧みず機体ごとヒルツに向かって飛び込むと、光牙の鞘でヒルツの右肩を砕いたのだった。
本来は、コクピットを狙うことも出来たのに、敢えてジークは右肩を砕くのみで事を済ませた。
これに驚いたのは、もちろんヒルツだった。
「ぐっっっっ!!・・・・・・・・・・・やっぱ、・・・・格が違うか・・・・・」
ヒルツはそう思いながらも、頭痛と吐き気の中神域に入ったが動けなかった。
左腕も崩剣も無事であったが、勝負は見事について居ることは明白だった。
悪あがきはかっこわるい以前に、今動けばたぶんジークは容赦しないだろう。
それでもヒルツは戦意なく神域に入った。
ヒルツは警戒していた。
デススコーピオン50機も気になるが、イヤな視線を感じていたからだ。
神佐、もしくはその部下が見ている感じがしていた。
ジークもそれを感じているのか、微動だに動かなかった。
ヒルツ激突中
「まあ、所詮グッドマンみたいなウザイの作るのが限度の施設だしな・・・・・」
クローン培養施設と、製造過程のデータを見ながら、写真を撮っていたケイオウは、まあこの程度かと思った。
「さて、あらかた欲しいモノも手に入れたし、そろそろ消し飛ばすかな」
施設に入ってからケイオウは帝皇剣舞・無視を発動させ、出来損ないの奇声を上げるだけのグッドマン(敢えて描写しないが、グットゾンビと思ってください)をやり過ごしながら、いろんな情報を得ていた。
もし、研究員が残っていたなら逃がそうと思っていたのだが、元々廃棄予定の施設だったためか研究員はおろか、雑用の為のヴァリム兵すらいない有様だった。
そしてケイオウが研究所を去ろうとした時だった。
「なかなか姿を現さないと思えば、生身でこんなところに来るとはね。まあ、好都合だけど」
研究所内部のディスプレーにフォルセア・エヴァの映像がでると、グッドマンの培養層が砕け中から素っ裸のグッドマン(こっちは彷徨いてたのよりましな普通のグッドマン)が出てきた。
「「「「「「グググッッッッットメ〜〜〜〜〜〜〜ンンンンン〜〜〜〜〜〜〜〜」」」」」」」
「まったく、際限なきうざったさだな」
大方こいつらで足止めしている内に、ヘルファイヤーで施設諸共自爆と言ったところか
「愚かな話だ・・・・」
そこまで言ってケイオウは気づいてしまった。
それはもう笑える事実に
(神佐の奴め、俺が生身で神速を使えることを知らないとはな)
神佐はケイオウの発見に異様な程時間が掛かった。
なぜか?
生身で激神速を使えるケイオウは、人はおろか警備用のカメラにも写らない。
そして、研究所に忍び込んだケイオウは人の気配(グッドマンに人権はない)がないことを確認すると、激神速を解いたのだ。
神佐が気づいたのはその後、そうでなければ行動が遅すぎる。
そのことに気づいたケイオウは、神佐にも常識があったのかと大いに笑った。
さてどうする?
神速を使ったところでどうせバレないとも思ったが、神速使うのも馬鹿らしかった。
所詮、精神攻撃オンリーの屑(それなりに精神攻撃は強力だが)だし、何よりその顔と声はもう見飽きていた。
なんだかんだ言っても視覚と聴覚には、精神攻撃はしっかり効果を示していたり・・・(汗)
「うざってえっての!!喰らい尽くせ、失われし姓の剣よ」
ケイオウは背中から剣になる団扇を抜くと、一気に天井を剣に喰らわせ(物理的刃による切断出はなく、剣の峰の部分での溶解とご理解ください)そこから抜け出して行った。
グッドマンも後を追ったが、ガタイがでかすぎるせいかケイオウの通った隙間にグッドマンは挟まった。
「OH!!!バットマ〜ン!!」
「なにもんだよ、お前は!!」
ケイオウは思わず突っ込みを入れてしまった。
そして、基地からでた瞬間ゴールドが用意したリニアビットの加速フィールドに激神速(生身)で突っ込んだ。
その頃ゴールド
研究所の遙か後方の洞穴
「まったく、使えない奴らね・・・・・・・・
でも、いいわ
いくら不死身の男でも生身ではヘルファイヤー耐えられないでしょうから」
研究所から脱出しようとするケイオウを、研究所内のカメラで確認している神佐は薄く笑みを浮かべていた。
「生身だろうが、何であろうが、単純な熱や冷気、熱線ではケイオウは殺せないわよ
彼は、全ての物理法則を構築できるのだから・・・」
声が聞こえた気がした。
だから、顔を反射的に上げた。
しかし、反射行動にもかかわらず、神佐は顔をゆっくり上げた。
いや、体がゆっくりとした動作でしか動かなかっただけだ。
なにが起きているかもわからない、だがそのまま神佐は絶命した。
自らを殺したモノに瞳を向けてなお、その眼は像を写さなかった。
神佐の胸には、ゴールドの手が添えられていた。
一種の掌低だ。
ただ、それは体内に莫大な衝撃を蓄積させるといったモノだった。
莫大とは、脊髄、心臓、肺、その他の体内臓器の原型を根こそぎ奪う程の威力だ。
直撃すれば即死は免れない。
掠っただけでも、触れた部分は生涯使い物にならなくなるであろう程の一撃に、神佐の内臓は完膚無き程に破壊された。
だから、反射行動が神佐に許された行動の全てだった。
「ふう、いったい何人偽物がいるのでしょう?」
ここに来るまでに同じ顔をした連中を3人仕留めていた。
流石にもう人の気配はしない。
しかし疑問はでる。
本物は、そもそもまだ生きているのだろうかという基本的な疑問だ。
まあ、そんなことにゴールドの興味は引かれなかったが・・・
ただ、今後のために障害になるのなら偽物であろうと容赦するつもりはなかった。
そして、神佐が昆虫型の監視マシンで得た情報を少しいじると、情報を送信すると同時にそのモバイルPCを破壊した。
もしかしたらデータはまだ送れていなかったかも知れないが、それならそれでいいかとゴールドは思った。
破損データの方が、信憑性のあるデータだと思ったからだ。
まあ、どう解釈されてもケイオウもゴールドも困りはしない。
なぜなら、今回のこの進撃は特尉としての行動なのだから・・・・・
ヒルツとジークが視線の主を探っていた時
「偽神佐はゴールド特佐がもう抹殺なさいました
ですが、精神攻撃のスペシャリストがヘルファイヤーを持ってなだれ込んできます
ここは一時休戦とし撤退を進言致します」
いきなり二人の真横に、可愛い顔したPFが現れた。
もっとも、あまりにでかいので可愛い顔していても、全く可愛くなかった(爆)
そんなこと、全く気にしないソナタはゴット・ポリターンVから二人に声をかけた。
一瞬驚いた二人だが、敵でないと判断したのか殺気を解いた。
「また、特尉との戦闘を所望なさるのでしたら、ジーク様も私達にご同行を」
ソナタはダンとルキアの機体を片手で鷲づかみ(全長60メートルだけあって、手もでかい)にすると、ヒルツとジークの前に左手を差しだした。
なぜ敵に様付け?ってか、なんだこの馬鹿でかいGFは?
ジークはそう思ったが、何も言わせない雰囲気を醸しだすソナタの機体の手にヒルツ共々乗った。
「では行きます!!」
ソナタは両手に載せた機体ごと瞬間転移した。
そして、後方待機し続けていたヌート・アノンの真後ろにソナタは現れた。
「おかえり、ソナタ」
「はい、ただいま戻りました」
なぜかゴールドのヌート・アノンを肩に留まらせると、ソナタは言った。
「ルリエルさんが飛び立つ前に、ヒルツさんはイクシオンの修理をすませてください。それから特尉が前線に出るので予定通り、指揮はあなたがとってください」
ゴールドに対して以外は、丁寧ながら事務的なもの言いに聞こえるかも知れないが、ソナタには悪気はない。
そもそもオペレーター出身のパイロット(普通は逆)なので、命令にしろ、アドバイスにしろ、的確かつ冷静になる癖が付いているから仕方がなかった。
まあ、ゴールドの場合は放っておいても、というかむしろ何もしない方が戦果を上げるのでソナタも気楽に話していられるのだった。
「了解しました、ジークさんも機体の修理をしたいのなら付いてきてください。それから全部隊後退、見晴らしが良く特尉の自爆射程圏外に各自移動せよ。俺もすぐ行く」
ジークもそれがわかっているのか、敵国のモノの言葉にも文句も言わずしたがった。
そして、ヒルツがそう指示した直後、研究所からグッドマン内蔵デススコーピオン50機が一斉に出てきた。
それに会わせてケイオウもシャインフェニックスで打って出た。
「あの〜、もしかして特尉は本当に自爆するつもりなんですか?」
ヒルツに寄ってきた兵士はそう言った。
「だろうな、ってか当然そうするだろうね」
「今回はいくら何でも・・・・」
兵士はケイオウのFCだ。
だから自爆することをいとわないケイオウの性格もよく知っていた。
だが、いくら何でもアルサレアに数機しかいない第3世代でいきなり自爆するとは、その兵士も信じてはいなかった。
正確には、信じたくなかったである。
でも、自爆するんだろ〜なって予感だけはありまくりだった。
そしてケイオウを包囲するようにスコーピオンが展開した。
ケイオウはシャインフェニックスのシンクロトロンを加速させ、ヘルファイヤー2発を大幅に超える自爆をかまそうとしていた。
とはいえ、自爆までには時間が掛かる。
それをどうしようかとケイオウが考えていた時だった。
グッドマンが攻勢にでた。
ただ、ヘルファイヤーでの攻撃ではなかった。
その攻撃とは、お得意の精神攻撃だった。
「「「「「「「ブラズゥワ〜〜〜〜のカタキウチデ〜〜〜〜ス。オワリで〜〜〜〜〜〜〜〜〜「させるかーーーーーーー!!!!!!!!!!」ーーー」」」」」」」
ケイオウは一括しながら、蒼空衣を360度全方に向けて発射すると、シャインフェニックスを隠すかのような凍れるカーテンを出現させた。
そして次の瞬間、ケイオウは大気を切り裂く悲鳴にも、雷鳴にも似た咆吼を放った。
シャインフェニックスの必殺兵器、スーパーサウンドブラスター:オルランドをケイオウは蒼空衣の霧のカーテンに激突させたのだ。
ケイオウの咆吼は、ぶっちゃけ音になっていなかった。
まあ、音になっているか否かは別に問題はない。
なぜなら、オルランドは音を媒介としたグッドマンの精神攻撃と違い、音圧を利用した音圧兵器であり、人の耳に聞こえない音にもちゃんと音圧は発生しているからだ。
そして、その瞬間大気が氷を押しつぶした様な小さな悲鳴を上げると、空気中の水分が大炸裂した。
超音圧兵器の一撃は、蒼空衣で作った全方位カーテンにまんべんなく伝わった後、大爆発と共に大気を根こそぎ吹き飛ばした。
急速冷凍された大気は爆散すると、強烈な気圧変化によって大気密度を崩壊させ、空間を歪めたような不可思議な世界を構築して見せた。
精神破壊属性のグッドマンの声は、大気がなければ伝わらない。
そう、ある種無駄に無敵に見えるグッドマンの精神攻撃は、シャインフェニックスの音波砲オルランドで滅っせられた。
「(NO〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!なんてコトデ〜〜〜〜〜す!!!ミ〜〜〜〜のビセイガ〜〜〜〜〜〜〜)」<大気がぶっ飛んでいるので声は伝わりません
「(消し飛べ、オーバー・デス!!)」<同じ理由で声は伝わりません
声は伝わらない。
でも、シンクロトロンで最大加速された荷電粒子は、ヘルファイヤーの大爆発によって大気中に高エネルギーを纏ったままばらまかれた。
一つ一つは螢の光のように、淡く、また儚い光なれど
その正体は高電圧と、超加速を得たエネルギー粒子である。
触れるモノ全てを蒸発させながら、半球状に広がったそれは大地を貪り大爆発した。
その瞬間、世界が光った。
そして、そこにあったモノ全てが消し飛んだ。
「いつにも増して、壮大な花火だな」
それですませて良いのかという突っ込みは置いといても、誰一人ケイオウの心配をしないのはどうかと思うぞ!!<大方読者もそうだろう、作者の叫び
「ですよねえ、でも良いんですか?これで当分、特尉戦えないじゃないですか」
「そんなことないさ、代替機があるからこそ派手に自爆したわけだし」
「も、もうシャインフェニックス量産ライン出来てるんすか!!!!!!」
その兵士は、凄すぎるぜ!!って顔でヒルツを見た。
「いや、流石にそれは無理」
「じゃ、じゃあ代替機って?」
ヒルツはケイオウがいそうな場所を指さした。
オーバー・デスの爆発が収まり、爆煙が薄らぎ始めた頃
そこに向かって何かが突っ込んで行った。
次の瞬間、爆煙が吹き飛んだ。
そこにはヘルフェニックスをヘルフェニックスたらしめる、紋章入りの斬馬刀を持ったPFが立っていた。
ルリエルがケイオウの居そうな場所にヘルフェニックスを放ったのだった。
ケイオウといえば、コクピットルーム中に装甲闘衣を満たし、自爆の衝撃と熱から身を守っていた。
そして、ヘルフェニックスに乗り込むとすぐに神風のロンドで爆煙を吹き飛ばしたのだった。
その後、ケイオウはヘルフェニックスから出てくると一声した。
「俺をヘルファイヤー如きで殺れると思うなーーーーーーー、フォルセア・エヴァ神佐ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
絶対にどこかで見ていると思ったケイオウは盛大に叫んだ。
でもって、ジーク
「・・・・・・・・あの機体、以前とは違うようだな・・・・・・、とはいえ手傷を負った者とやりあうのも武人の恥か・・・・・・」
ジークはちゃっかりルリエルにオニカスタムを修理してもらいながら、望遠カメラでプスプス血煙を上げているケイオウを見て言った。
本当は、装甲闘衣にくるまっていれば無傷でいられるのだが、いくら何でもそれでは怪しいと思い、大気温度が下がらぬ内に装甲闘衣の繭から出てきてワザとケイオウはヤケドを負っていたりする。
もちろん、わざとなので見た目程のダメージはない。
まあ、あくまでケイオウの基準でだが(汗)
そんなことなど知らないジークは、天神速という新たなる神速があることを知っただけでも来たかいはあったと思い、失神しっぱなしのダンとルキアを回収して去ろうとした。
「あれ、帰っちゃうんですか?あのヘルフェニックスは・・」
それに気づいたルリエルが言った。
「わかっている。だからこそ今は引くのだ、俺が目指すのは最強のみ!!中途半端なあいつなど見たくない」
本当にどうしようもない人なんだから・・・・・
ルリエルは呆れながらも、ジークを見送った。
その頃ヒルツ
「とりあえず、全軍突撃!!何か残っていたなら回収せよ」
何か残っているなどとヒルツは夢にも思わなかったが、念には念を入れることにした。
でもって、ヒルツは余りにも無事すぎるケイオウを見て泣きが入っていた。
「もう少し、せめて包帯を巻いたほうがいいぐらい怪我しても良いのでは・・・・・」
並の人間なら、即ICU行きの大怪我だったが、誰一人としてケイオウの心配をしようと考える者はここにはいなかった。
この分ではケイオウに一時の休息を取らせるのは無理そうだ。
「先が思いやられそうだ・・・・」
ケイオウに引き合わせたい人物がいるのだが、この分だと紹介は遅れそうだ。
さあ、どうしよう?
ヒルツはそんなプレッシャーの中、アルサレア軍PFの人混みを割りながら歩くジークを見た。
ジークのオニの手には、ダンとルキアの姿があった。
あの二人の今後がどうなるかわからないし興味もないヒルツではあったが、ジーク本人には聞きたいことがあった。
「特尉とは話しもなく去るつもりですか?」
「話すことなどない、あるのはただ行動のみ」
お前は違うというのか?
ケイオウの側近を自称するくせに
ジークの口調にはそんな雰囲気を醸し出していた。
ジークという男はそういう「漢」だ。
一見は百聞にしかす
兎にも角にも、自分でやる「漢」だ。
そして、ケイオウもジークも力ずくでやってのけてしまう「漢」達だった。
そう思っている時、ヒルツはふと気づいた。
いま、自分はそんな「漢」達と同じ場所に肩を並べようとしていることを
なぜそんな大それた事に気づいたのかと言えば、見えたのだ。
周りが自分をどういう目で見ているのかが
PFのカメラアイ越しにだが、それでも自分とジークを見る者達の視線の種類が、まさに見えたのだ。
そう、それはまさに以前の自分のそれと、おもしろいくらいダブっていた。
それは以前、ケイオウとジークが相対しているのを見守る視線だった。
それは獲物に食らいついた肉食獣が、自分達を襲い出さないか心配している、そんな視線だった。
ケイオウもジークも分類的には、抜き身の刀のような物騒な人種である。
そう「引かねば何も斬れない!!」そう言う存在なのだ。
それを知らない、もしくは頭でしか理解出来ない者達が、自分に今しているような視線を送るのだ。
ヒルツは自分の心音を知覚した。
神域に無意識に入れる程、ヒルツは卓越した達人ではない。
故に、神域にいるから心音が聞こえているわけではなかった。
だが、一拍ごとに身体が揺さぶられるような感覚を知覚していた
そして、頭はどこまでも冷静だった。
目の前にいる人物がどんな存在か理解した頭と、よ〜っく見知った視線を浴びせられるようになってしまった身体とが、拒絶反応を起こしているようだった。
どっくん、どっがん、どっごん・・・・・
頭が割れそうな心音にヒルツは耐えながら考えようとした。
沈黙を起こしてしまった自分の失態に、自分はどうするべきかを
今までのヒルツならケイオウに助けを求めれば良かった。
もちろん、襲われるわけでもないのだから、2〜3言葉のキャッチボールをすれば、それで事態は収まるのだがその為の一言が出てこなかった(泣)
そして、いつまでも沈黙を続けるわけには行かないと思ったヒルツが神域に入って、時間を稼ごうとした時だった。
頭が真っ白になりかけていたヒルツは、体を楽にしようと脱力した瞬間、コクピットハッチを開けるスイッチを押してしまった。
気密が開放され空気が抜ける音と共に、青空がヒルツの目に飛び込んできた。
だ〜〜〜〜、やっちまったよ〜〜〜〜〜〜!!!!!!
ここまで来ると、もう言葉のキャッチボールというわけにはいかない。
周囲の視線はより二人に集中した・・・・かどうかはわからないが、たぶんそうなったろう。
ヒルツは覚悟を決めるというか、ヤケクソになってPFから出てくると両手をあげた。
いわゆる「お手上げ」というジェスチャーだった。
ヒルツはたぶん考えた。
頭が禿げそうなくらい、たぶん考えた。
でも、三下出身のヒルツに、この状況を打破する手段は思いつかなかった。
ケイオウなら無難に、いやヒーローらしい結末に導くのだろうが、同じ舞台にいても役者が主役とお城の役(人ですらない無機物の役)ぐらい違った。
そして、ヒルツの出した答えは「出来ないことをさせるのは馬鹿者」だった。
お城の役者?が主人公になり得ない以上お手上げ、ヒルツはそう判断すると思った通りに行動した。
もう、逃げ腰オンリーの木っ端ずかしい態度だったが、自分の選択に間違いはないとヒルツが思っていたせいか、そのアクションは堂々としていた。
そして、ヒルツを見る者達の視線は、ケイオウの行動を見る者達と同じ視線だった。
そう、ヒルツはどうあれ、周りには堂々とした立派な行動に映っていた。
返答を待っていたジーク
即座に返事がないことに、ジークはヒルツという男を自分なりに分析した。
弱くはない、少なくとも自称だかなんだか知らないが、ケイオウの側近を将来は名乗ることを笑われることはないだろうと思っていた。
だが、ジークから見ればヒヨッ子だった。
始めて飛び立とうとして、広げた翼の大きさに驚いたヒヨッ子のようだと思った。
それはそれで面白いとジークが思った時だった。
ヒルツが生身で出てくると、両手を自分に向けて伸した。
(ヒルツがあれこれ感じたり、悩んだりしていたのは実際大した時間ではありません)
その行動を見てジークは思った。
憧れから来るケイオウのマネか、否かと
それを確かめるために、ジークは斬裂片手にPFから出てきた。
ジークは、武器を持たず生身をさらすヒルツの行動を「ここに戦いはない」という意思表示であるのかと思ったのだ。
二人は出てきたはいいが、まったく動かなかった。
それこそ、一言も発しなかった。
周りの時が凍り付いたようだった。
その静寂を打ち破ったのはジークだった。
ジークは微笑を浮かべると、愛機「黒狼」に戻ると武装解除した。
ジークはヒルツが何も言わないことこそが、返事だと考えたのだ。
「話す事などない、あるのはただ行動のみ・・・・・か」
自分が言ったセリフだった。
その返事として、言葉ではなく行動のみでヒルツは返事をしたのだと思った。
でもって、ヒルツ
ジークが出てきたのを目の当たりにしたヒルツは、ジークの斬裂に視線を集中させた。
馬鹿な行動に刀を抜くのか?
冗談ではなく、ヒルツは本気でそう思った。
その時の緊張はいかほどと問われれば、ヒルツの心臓はジークが動く前に確実に止まってしまう、もしくは破裂すると、ヒルツに思わせる程だった。
だが、ヒルツの心情など知りもしないジークは「黒狼」に戻ると、武装解除を始めたのだ。
もう、何がなんだかわからなかった。
だが、自分もそうするべきだと身体は反応した。
ヒルツもイクシオンに急ぎ戻ると、両手の崩剣を大地に突き立てて放した。
「お前の行動は、あいつの役に立つだろう」
ジークはそう一言だけ言い残すと、イクシオンの横をすり抜けてそのままアルサレア部隊の外へ行ってしまった。
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ヒルツにはジークの言葉は届いていなかった。
なぜなら、ヒルツは崩剣を放した途端に、気絶していたのだから(笑)
そんなヒルツを目覚めさせたのは、周囲の歓声だった。
皆が口々に何か言ってくるが、何を言っているのかヒルツにはさっぱりわからなかった。
ただ、自分に対して歓声が上がっていることだけは理解出来た。
もっとも、どうしてジークがどこにも居ないのかは分からなかったし
そしてもっとわからない事はがあった。
それはケイオウがここにいないことだった。
助けに来ないのはタメされたのだと理解出来ても、見守っていてさえくれないのはなぜなのか、ヒルツには皆目わからなかった。
ただ、近くにいないことと、自分がかつてない疲労感に苛まれていることだけはハッキリとした事実だった。
これ以上無理したら死ぬな・・・・・
そう思ったヒルツはゴールドに後を頼み、輸送機に戻った。
後書き
ケイオウが主役じゃないと、書きにくい(汗)
なんというか、へっぽこ主人公は正直書きにくい(笑)<書き慣れていないからだと思うが(笑)
とはいえ、ケイオウとは異なる主人公の視点は新鮮だ(笑)
まあ、何はともあれ、これは今後の伏線であり現時点では何の意味もありません!!
ヒルツ編は、あくまで序章です。
次回はヒルツ編最終話ですが、意外な展開だろう
ふ、ふ、うふふふ・・・・・・(爆)
管理人より
踊る風さんより第2話をご投稿頂きました!
神速がいっぱい〜(マテ)
それはともかく次回どうなるやら(苦笑)