第13話 思う覚悟と、決める覚悟のゆくえ
強くなる目的を見つけたダン
ダンは機体の設計をしているガイウスの元にやってきた。
「ガイウス、今いいか?」
「ん、ダンか・・・!!
どうしたんだい?」
ガイウスは先ほどとは別人の顔つきをするダンに驚きながら、しかし成長した息子でも見るような顔でダンをみる。
「アンタに頼みがある
オレを本当に強くしてほしい
ここにいる中では一番オレのスタイルに近いアンタがオレを鍛えるのに一番適任だと思う
だから、頼む」
ダンは90度に腰を曲げて懇願する。
「ずいぶんな変わり様だな、何があった?」
「いろいろと甘えていた
その事実にようやく気づいただけだ
そして変わりたいと思った、いや・・・
変わらなければならないと思った、ただそれだけだ
それよりどうだ、頼めるか?
自慢じゃないが、頭を下げて人に頼み事をするのは片手に余るぐらいしかしたことがないんだ
だからその・・・、必死さが伝わらないかもしれないんだが、今回はマジだ
命がけでオレは強くなりたい、頼む」
・・・本当に人に頭を下げたことのない奴だなと、ガイウスはほくそ笑む。<
「頼みかたなど問題にせんよ
ただ、強さにもいろいろある
ダン、キミはどう強くなりたいのか?
私はそれを知りたい
何のために、どう強くありたいのか?
それはとても大切なことだ
本当に強い猛者たちは、必ずそれがある
逆にそれがない者は、ただ強いだけになってしまう
目的のない強さとは、何のために強いのか?
そもそも、それは本当に強いのか?
経験上、意味もなく強い者や、強さを誇示する者はあきらめがよく
自分よりも強い者に負けるとわかっていて向かっていくことはなく・・・
また、がむしゃらに血反吐を吐いてぐしゃぐしゃになりながら、それでも勝利に手を伸ばし続けることはない
それでは、まぐれも手にできない
強くなりたいのなら、すべてをかなぐり捨てても必ず勝利する執着心を持つことだ
そして、それをもたらすのが戦う理由だ
口に出せない程度の思いなら、キミが得る強さもその程度になる
その程度の強さなら、私に師事しない方がいい
それは結果、無駄に命を危険にさらし、死期を早めるだけだ」
わかるかね?
ガイウスの言いたいことは理解できる、だからダンは素直に口を開く。
「ルキアがオレを守るために命を張ってた
オレはそれすら気づかず、あいつを守っていたつもりだった
あいつを守りたかったのに、肩を並べてすらいなかった
あいつは、ウイルス進化説という訳のわからん人体実験さながらの綱渡りしながら、命がけでオレを守ろうとしてたのに、オレはただ自分の意地を通すことにだけ必死になってた
だから、オレはあいつを守れる力がほしい
あいつが無理をしなくてすむ力がほしい
あいつがオレを心配しないですむだけの圧倒的な力がほしい
アンタなら、オレにもそんな強さを授けられるだろう
どうだ、オレの覚悟はまだ足りないと思うか?」
ふぅ〜〜〜〜、ガイウスは深くため息をついた。
「な、何が足りないってんだよ」
ガイウスのため息にダンは噛みつく。
「思いが空回りしているぞ、ダン
キミは自分の理想を未だに追い求めるあまり、多くを見失っている
重たいぞ、キミのその考えは」
ダンは独りよがりすぎる。
ルキアはダンと共にあるために命を文字通りかけた。
だが、ダンはそんなルキアの思いをすべて無視している。
オレが守ってやるから、ルキアはオレの後ろで隠れていろと言っている。
相手の思いを理解して、尊重する。
それを人は仁(じん)と呼ぶ。
ダンには、自分の求める先に自分自身の理想しかなく、他人を尊重し、他人の思いまでをも護る覚悟がない。
これでは、ただ強いだけで終わってしまう。
この強さはより強い者に立ち向かうだけの強さ、何かを守るつもりで自分すらも滅ぼしてしまう無謀な強さになってしまう。
そう思うガイウスは、だからこそ尋ねる。
「ダン、キミがこだわる二人の「漢」はどうだった?」
「二人?」
「そう、二人だ
グリュウ・アインソードと、コバルトリーダーことケイオウ・ロンドゲイル特尉だ
彼らの覚悟はどうだったと思う?
二人とも化け物じみた強さと、それにふさわしい高潔な覚悟があったのではないか?
私は特尉とは縁があったが、グリュウという「漢」はよく知らないがあのレベルの化け物たちの覚悟は並大抵ではない
なら、十分に参考にならないか?」
ガイウスですら、ダンからみれば狂気の化け物である。
その人を押して化け物といい知らしめる二人の覚悟とはどうなのだろう?
ダンは今更ながらに思い出す。
「オレもずっとあの人の元にいたわけじゃないが、あの人の考えは・・
俺なりの意見は言える
グリュウ隊長の強さは、正々堂々と正面突破で敵を圧倒する強さ・・
それによって自分より劣るものを無益に殺さない強さ・・
敵味方の被害を出来るだけ止め、良い結果を追求する強さだった気がする
決して効率のいい戦い方じゃなかったが、誰にも文句を言わせない強さと、そう信じさせるに足る強さだったと、今でも思う
今思うと不器用な生き方だった
なんで、あんな戦い方をしていたんだろう?」
「理由までは推し量れないが、そういう戦い方を選びたくなる理由があり、それを成し遂げるだけの覚悟があったのだろう
それこそ、死ぬまで自分を曲げない覚悟が・・
今のキミにその覚悟はあるかね、ダン?」
「ある
この思いに偽りも、誤魔化しもない
だからこそ、覚悟が足りないと言われることが気に入らない」
「足りないとは言っていないさ、ダン
ただ、キミの覚悟はキミの目指すところに届かないと言っているんだ
腹立たしいことだろう?
だからこそ、考えねばならんのだ
キミがわからない覚悟を持つ者がどんな思いで戦っていたのか、戦っているのか?
キミの強さと、彼らの強さを比べてキミの足りない覚悟を決めるといい」
覚悟の差が強さの差だとするならば、オレは確かにグリュウとケイオウの強さの源といえる覚悟を知らなければならない。
ダンはそう思いうなずくと、ガイウスの言葉を待つ。
「そうだ、少しずつ理解していけばいい
まずは、わかろうとすることが肝要だ
それでは、私の特尉に対する私的な印象を語ろう」
ガイウスはダンを見る。
学ぼうとする意思を見せる顔に、ガイウスは期待しつつ語り出す。
「特尉の印象的なところは、圧倒的強さと、命を対価にしても意地を押し通す意志の強さ、特に殺さぬことに強いこだわりを持っている
彼の強さとは他者を圧倒し恐怖を与えるものではなく・・
敵であるヴァリム軍にさえも認めさせた誓約の強さにある
それは、武装解除すれば絶対に手を出さない、捕虜としての身の安全の確約
もし約束を勝手にアルサレア軍が違えるならば、たとえ上官ですら斬り殺す絶対の覚悟・・、それ故、多くの者が投降に応じ命を散らすにすんだ
無論、ヴァリム軍が投降することでアルサレア軍の戦死者の数も激減したのは言うまでもない
その極端さが、狂気的なファンを増やした
アルサレアだけでなく、ヴァリムにも、ミラムーンにもファンクラブがあると聞く程に・・・、何とも妙な話だ、が、ね
話を戻そう
彼の戦い方は、憎しみを生まず、戦わずに勝つ、最強無敵の戦法といえるだろう
それはまるでたった一人で戦争を根絶する戦い方を人々に知らしめているようだともいえなくもない
ただ、それはあくまでも限りなく不利な形で、その上圧倒的な戦闘能力差がないとできない戦い方だ
その上、この戦い方は敵味方の被害を押さえる効果が高い代わりに非常に効率の悪い運用方法だ
それ故、彼は休息無しの連続出撃で運用効率の悪さを補うという無茶を自身に強要せざる終えなかった
普通、自身の強さは抜きにしても、同じ人として特尉と同じペースで運用されたらそれこそ戦場に出る前に過労死するし、確実に戦死するだろう
そういう意味ではまさに、化け物そのモノだ」
オレからすれば、アンタも十分化け物なんだが・・
「確かに、Gエリアでの敗北もあいつの無茶苦茶な連続出撃のせいで、全く体制を整える暇もなく押し流されたことが、要因の一つにある気がするな
あいつは何であんなに必死だったんだ?」
「戦争根絶
馬鹿馬鹿しい話だが彼はそれを本当にやろうとしていた
彼の思い人が平和な世の中で暮らせるように・・・
もっとも、それはもうかなわぬ話になってしまった
それでも特尉が戦い方を変えない理由は私には推し量れない
が、あれは意地を押し通す「漢」だ
人が無茶だと、不可能だと笑うことを何の疑問も持たずにやってのける力がある
自分が不利だとか、それこそ損得ですら全く勘定に入っていない
ただ成し遂げたいことを成し遂げる
そこに至るまでの課程がどうとか、一切を無視して自身の叶えたい結果をたぐり寄せる
ある意味、キミが目指すのは特尉と同じ覚悟なのかもしれない
今のキミの覚悟と、特尉の覚悟の差がキミはわかるかいダン?」
何が違う?
オレはルキアだけを守りたいと思っているが、あいつは全員を守りたいと思っている?
それとも、できないことなどないと思いきる覚悟がたりないのか?
わからない、できることだけやろうとすることが悪いとでも言うのだろうか?
「まだわからないか・・
まあいい、今の例は極端すぎたな」
ガイウスはよく考え、難しい顔をするダンに好感を覚えながら笑う。
と、そこに機体設計やら武装設計を一息終えたイヴァンとセシリアがやってきた。
「あんたたちはどうなんだ?
っごぉぉぉぉぅ」
「主語と述語が足りませんわ」
ダンの股間を思いっきり蹴り上げながらセシリアは一括する。
「彼はルキア嬢を守るための覚悟を決めたそうなのだが・・
彼自身が立てた覚悟は彼が望む結果に至らない覚悟だと私が言ったので、目指すべき結果を得る覚悟について模索しているところなのだよ」
「なるほどね、だが私たちの覚悟はあまり参考にならないと思うのだが、それでもイイのかい?」
ダンは涙目になりながらコクコクと首を振る。
「ボクには、理想とする戦いの美学がある
ボクの理想のそれはガイウスの戦い方そのものだ
一撃必殺、あらゆる攻撃を華麗に避けきり、決して傷つくことすらなく一撃で勝利を得る
美しい、そう完全と言っていい芸術
それが私の理想だ
だが、ボクにはどんなにがんばってもそれはできない
彼と同じ動きをするのは身体能力的に不可能だ、残念ながらね
だからボクは覚悟を決めたのだよ
ボクは自分の理想を体現する彼を守る覚悟をしたんだ
己の全てを賭して、届かなかった理想を守ることにした
それによってたとえ死すとも、一片の後悔もない
誰かを守るとか、平和のためとか、そんな大義名分の一切ない身勝手な思い
ただ、誰かがない分僕の思いは強い
全てを、自分自身すら犠牲にしても理想に手を伸ばすそれが僕の覚悟だ」
キミにはわからないかもしれないね。
イヴァンはそう思いながらダンを見る。
穏やかに語るイヴァンの顔には酷薄な笑みが浮かんでいた。
ダンは、それを恐いと思いながら思うことを口にする。
「オレも昔はそうだった
オレが強くなる為なら、他はどうなってもいいと思っていた
ただ、目標がなかっただけで漠然としていたが、な・・
セシリア、アンタは確たる覚悟があるのか?」
見下すように眼を細めたセシリアは馬鹿にするように言う。
「随分と平和な人生ですわね、うらやましいことですわ
本当に・・
私は生まれた時から波瀾万丈でしたわ
10歳にも満たない内にわたくしは暗殺されましたわ
まあ、本当に亡くなったのはわたくしの影武者でしたけどね
その後、誰にも干渉されないようにひっそり暮らしましたわ
不思議とあれこれ拘束されていた生活から解放されたせいか、退屈だけはしなかったですわ
それだけは救いですわね
それから紆余曲折あって、人の役に立ちたくなったり、間違ってPFパイロットになったり、色々ありましたけど・・
今の目標は平和な日常を得る事、その為にならあらゆる努力を惜しまない覚悟がありますわ
平和ボケした戦士もどきのあなたには、わたくしの求める平和の価値とありがたさなど想像だにできないでしょうけどね」
・・・どれだけ謎な人生なんだ?
セシリアの覚悟うんぬんよりも、10歳にも満たない内に暗殺される状況って一体?
皆の疑問を代弁するかのようにガイウスが問う。
「セシリア嬢、つかぬ事を訊ねるがどこぞの有力貴族の令嬢だったり、豪商の令嬢だったりするのかね?」
ガイウスの言葉にセシリアはハッとする。
「思わず喋りすぎましたわね・・
この話はここまでにしましょう
最後にガイウス、あなたの質問にお答えしまと、そのどちらでもありませんわ
それ以上は知らない方が、あなたの身の為ですわ」
「了解した、無理を言わせて済まなかったなセシリア嬢」
お気になさらずと視線を逸らすセシリアは手をフリフリする。
「さて、最後は私の番だな
私もイヴァン同様他人のことなど何も考えていない
私の生きる道は、漢道・・
一撃必殺という芸術をただひたすら極める為だけ
それ以外の全てを擲つ覚悟が私にはある
その覚悟の体現がこそが、私のPF
正直、私やイヴァンの覚悟は参考にならないだろう
以前の君なら、良いお手本だっただろうがね」
「そうだな、今の俺が目指す覚悟はルキアを守れる強さを得る覚悟だからな・・」
ダンが思案しようとした瞬間、セシリアがその頬を張り倒した。
「なにしやがる!!」
「何もわかっておりませんのね、あなたという人は」
「なん、だと」
「彼女を守りたければ、結婚でもして家に引きこもるなりなんなりして軍や、戦争から逃げればそれで事は済むことですわ
なぜ、そんなことすら気づきませんの?
それとも、誰かを殺していないとルキアさんをあなたは守れないと仰りますの?」
セシリアの目頭には涙が浮かんでいた。
ダンはギョッとしながら、返す言葉が見つからなかった。
「あなたの覚悟という言葉は薄っぺらいのですわ
だから、聞いていても覚悟を感じられない、恐怖を感じない、誰も納得しない
そんな男に何が守れるというのです
馬鹿馬鹿しい
あなたがすべきことは、あなたがまずどうしたいのか?
その上で、何が出来るのかを知ることですわ
あなたは理想ばかり追い求めて、それを成し遂げる術を持たな過ぎですわ
まるで、返せる宛もないのに借金を重ねるダメ人間のようですわ
耳が痛いというのなら、出来ることで理想を追いなさい
今のカードでそれが叶わないというのでしたら、それを成し遂げるカードを是が非でも手にしなさい!!
自分を磨きもしないで、生まれや立場に胡座を組んでいる人間に成し遂げられることなど何もありはしないですわ
少なくとも、ルキアさんの努力と覚悟には命を賭けている信念を感じますわ
同じ覚悟もなく、彼女と同じマネがあなたに出来まして?
出来ないでしょう?
真の覚悟とは、半端物が同じ事を成し遂げられないレベルのことを成し遂げてしまう原動力ですわ
私達にあって、貴方だけにないモノ
それを私達は、覚悟と言っていますの!!
あなたも、彼女と釣り合いたいというのなら・・・
せめて同じステージに上がりなさい!!」
まくし立てたセシリアは、ふぅと息を吐くともう一度ダンの頬を張るとその場を後にした。
「大丈夫かい、ダン?」
「あ、ああ、平気だイヴァン
しかし、全く耳が痛いよ・・
ふぅ〜
二人もセシリアと同意見だったんだな?」
まあね・・、と二人は浅く頷く。
「言われないと気づけない情けなさはこの際置いておいて・・
まず俺には何が出来るだろう?
俺は戦うことしか出来ない
姉ちゃんみたいに商才があるわけでもないし、あんた達みたいにPFや武装の設計が出来るわけでもない
だから、PFパイロットとしての道をこのまま行こうと思う
確かに、セシリアの言うとうり戦場から離れればルキアは無事でいられると思うが・・
それは違うと思う」
「なぜかね?
彼女なら結婚しようと切り出せば、そのまま田舎に引っ込むことに異存を上げるとも思えんが」
ガイウスのしたり顔にダンは苦笑する。
「かもな、でもそれはダメだ
あいつは俺の無茶に付き合う為に命を賭けた
セシリアが言うように同じステージに立つのが俺の責任だ
命を賭けるかどうかは置いといても、俺はルキアと肩を並べるレベルのパイロットにならなきゃ成らない
背中を預けられるパートナーになる必要がある
ガキの言い分を言えば、あいつをルキアを守れる力が欲しい
普段は背中を預けつつ、いざというとき守れる男に俺は成りたい」
ガイウスとイヴァンは拍手する。
「そう、それが君に足りなかったところだ
相手が何を望んでいるのかを尊重する心、そしてそれを押してなお自分の我を押し通そうとする意志
それを人は覚悟と言うんだ
君はこの短時間で、イタズラに命を危険にさらす馬鹿でなくなった
私としてはもう少し時間を掛けて君に自然に気づいて貰いたかったのだが、そこはセシリア嬢に感謝したまえよ」
「ああ、そうだな
感情的で、すぐ手が出るわ、傲慢だわ、無茶苦茶な女だが基本的に理不尽なことは言わないし、実はいい女だな」
「人を見る目がなってないな、君は
彼女は強がっていなければ生きていけない繊細なレディーなのだよ
後でちゃんと礼を言っておくんだよ
手土産を持って行くのを忘れずにね」
・・アンタは、セシリアに輪を掛けて繊細だよイヴァン。
ダンはなにやら凹みながら、甘いものでも見繕うかと思案すると、ガイウスがダンを呼ぶ。
シュミレーター用のデータをダンに見せるガイウス
「イヴァンのグロザー:雷帝を見て、洒落で作ってみた風神:アイオロスだ
攻撃力が私の求めるものではないので、お蔵入りになる予定の機体だが・・
この機体のコンセプトは突風は、今の君には向いているかも知れない
この機体は攻撃力ではなく、速度を重視した機体設計だ
キミのボルカノ・ブラット程攻撃力はないが、機動性能は圧倒的だ
バトルスタイルに合わせて機体を調整すれば、ある程度はキミの理想実現の力になろう
どうかね?」
・・・ある程度?
「なぜ、ある程度なんだ?
絶対の機体は作れないのか?」
ガイウスは、ため息をつく。
「君は護りたいのだろう?
相手を倒したいわけではないのだろう?
倒したいなら強さを追求すればいい、私達のように・・
だが、守りたいのなら守れる能力を得なければならない
庇う戦い方や、駆けつける戦い方
どれも君に出来ない戦い方だ、そうだろう
君に向かない戦い方を習得しそのうえ、守るまでもなく敵を圧倒する強さを追求するとなるとどうしても無理がある
相対する戦い方だからな・・・
君が完全を追い求めるなら、グリュウや特尉のようなエース・オブ・エースと呼ぶ圧倒的戦闘能力が要求される
だが、どんなに頑張っても君には無理だ
私ですらあの二人のようには戦えない
私やイヴァンは凡人と比べれば圧倒的に強いが、長時間は戦えない
私達の強さはあくまで状態が万全での強さだ
私はサドンデスというリスクがあるので、集中力が少しでも維持できなくなれば即死ぬだろうし、イヴァンは弾切れ=死となる
グリュウのようにどんな状態でも信念を貫き通し戦闘能力が低下しない者や、特尉のように私達すら瞬殺し、効率よく敵を倒し限界まで戦い続け、戦えなくなった途端に自爆して敵勢力を壊滅させる戦い方・・
どちらも私達には再現不能だし、君はイヴァン程ではないが決して身体能力が高いわけではない
身体的才能は努力では補いきれない
少なくとも、私の対G適性SSはこれ以上努力したところでSSSには成らないし、君の対G適性Bは努力したところでB+が限界だろう
アイオロスを完全に使いこなすには、対G適性SSが必要だ
君には、理想を叶える機体を用意したとしてもそれを完璧に使いこなすことが残念ならが出来ない
だから、君がすべきことは出来うる努力をして出来ないモノは我慢することだ
わかるかね?
・・いや、納得できるかね?」
そんなに差があったのか、俺には届かないのか・・・
ダンは歯を食いしばる。
理解できてしまう自分がイヤだった。
だが理解し、認めなければ先に進めない。
そうしなければ、勝手な理想を追い求める今までの自分と何ら変わらない。
だから、ダンは首を縦に振る。
「ダン、簡単に諦めてはいけないよ」
イヴァンはクスリと笑いながらそう言う。
「どういう意味だ?」
「ガイウスはね、努力しても届かない所は我慢すればいいと言ったんだよ
諦めろ、とは言っていない
望みに比例して爆発的に増えるリスクを負えば、奇跡ぐらいは起こせる
可能性が全くないとは言っていない、と言うことだよ」
「マジか!!」
ダンはガイウスに振りかえると、思わず叫ぶ。
ガイウスは「うむ」と頷く。
それを満足そうに見ながら、イヴァンは続ける。
「それにね
才能は確かに超えられない差を生むが、時に技術は才能を飛び越す
僕の射撃適性はSSだが、高性能なWCSと最新式のスナイパーライフルを装備したパイロットがじっくり標的を狙える状況さえ作れれば僕と同じ結果が出せる
つまりだ、同じ方法で同じ結果が出せないのなら、違う方法で同じ結果を出せる努力をすればいい
1000mを1秒で移動するなら飛ぶばかりでなく、駆け抜けるのもありだ
裏技使って瞬間転移するのも良い
君がこれから学ぶべき事は、成し遂げたいことをどれだけ効率よく達成させるプランを発想できるかということだ
セシリア嬢が言った通り、出来ることという選択肢を学べば、自ずとどれだけ効率よく動けるかがわかるだろう
それで到らない時は、無理を押し等して道理を引っ込めるアイディアをその場で思いついて実践すればいい
簡単な事だろう?」
イヤ、無茶苦茶難しいぞ、それは・・
ダンは、困惑しながら渋い顔をする。
「自分や、誰かの命がかかれば四の五の言っていられなくなる
大丈夫、自分を信じろ
それが出来ない君なら、とっくに戦死している」
ガイウスはバシバシとダンの肩を叩く。
その顔は嬉しそうだった。
と、そこに事情を知らないレオンが入ってくる。
「ダンみっけ、ボルカノ・ブラット改めボルカノ・ブラストを打ち込んできたよ
ちょっとシュミレーターで試乗してみてよ、自信作だよ!!」
レオンはさあ見ろ、さあ乗れとばかりダンをシュミレーターに押し込む。
「おい、待てって
オレは・・」
ガイウスはクスリと笑い、レオンの肩に手を置く。
「まあ、待ちたまえレオン嬢
ダン、今から私たちがそれぞれの機体の特性を生かしたアピールをする
どの機体が良いかではなく、自分が使いこなせる部分、自分が使いたい部分をピックアップしてくれ
そして、最終的にミキシングしてキミの機体を完成させよう
選択肢は多い方が良いだろう
どうだろう、レオン嬢?」
「・・〜ん、何か心境の変化があったみたいだね
まあ、いいよ
私の機体もかなりイメージが変わってるから、いっぱいアピールしちゃうよ〜〜」
「お手柔らかに頼むよ」
レディー・・、ファイト!!
二人はシュミレーターに入ると、有無を言わさずバトルを開始する。
「レディーファースト、先に行かせてもらうよ〜
行け、サナトス!!
かっ飛ばすぞ、グラビティー・ソニック!!」
レオンは両肩に装備されたアーマーを分離すると、ガントレットから両肘にかけて伸びる荷電粒子バーニアから光を放つと瞬時に強制加速して、一気に肉薄する。
「同じ、コンセプトか・・」
光り輝く荷電粒子をまき散らすボルカノ・ブラストを一別したガイウスは、左腕を伸ばすと手のひらから同じ光を放つ。
「砕け散れーーー!!」
レオンは視界から急速に消えようとするガイウスが視界にあるうちにブラスト・ナックルを放つ。
速射砲のように繰り出される拳の壁がガイウスのアイオロスを捕らえる。
「至近距離では、このくらいでは避けきれんか
ラジカル・アクセラレーター」
バチン!!
ガイウスのアイオロスの右手に付いた鎧通し付きスモールシールドが、ボルカノ・ブラストの拳を滑らすように軽く弾くと、左足からも荷電粒子を解放し一瞬で距離を置く。
「あ、やば!!」
レオンは拳が弾かれ体勢が崩れた瞬間、アイオロスの足からまき散らされる荷電粒子砲の直撃をモロに側面から受けてしまう。
先に分離展開していたガーディアン・サナトスが、電磁シールドを展開しながらカバーに入るものの、衝撃のすべてを防ぎきれずレオンは盛大に吹き飛ばされる。
荷電粒子砲の反動で飛んでいった機体が、即座に反転して追撃はないと思っていたレオンは減速したタイミングに合わせてエナジーカイザーをお見舞いしようとチャージを開始したときだった。
ガイウスのアイオロスから、3対6条の光条が放たれる。
なんか、やばい!!
レオンはチャージ途中を承知の上で、エナジーカイザーを射出する。
崩れた体勢を立て直す時間を稼ぐためだ。
「これは反則だぞ、ダン
ブレイズ・エンブレム、レベル3」
ガイウスの機体の背部、背中と腰、足から同時に荷電粒子砲をぶっ放し、横っ飛びした慣性を瞬時に打ち消してかつてない急加速を見せる。
そして、一瞬で勝敗は決する。
シュミレーターから排出される二人
「ずるいっ!!
というか、あんな機体じゃ味方までなぎ払うでしょうが!!
あれじゃ使えないわよ!!」
「キミも肘から同じ事をしていたようだが?」
「確かに!!
でも、あの程度なら状況を選べば良いだけだよ
あなたのじゃ、味方が全く近寄れない
ダンに孤立無援の戦いでもさせたいの?」
ぷりぷりするレオンにダンが聞く。
「それは置いといて、最後何があった?
早すぎてスローで見てもわからねぇ」
「アイオロスの鎧通しの穂先はエナジーアンカーになっている
エナジーアンカーでエナジーカイザーを迎撃消滅
反対の腕のエナジーアンカーをコクピットに突き立てて戦闘終了
超、超加速による時間圧縮戦闘と言ったところだ
先に言ったようだが、今のは反則だ
なぜなら、今のキミにはブレイズ・エンブレム:レベル3は使えない
あの加速をした瞬間にキミはGロックと言わず、圧死する
もちろん、レベル2でも戦闘結果は変わらなかったと思うがね
異論はあるかね、レオン嬢?」
「ないわよ、ないから文句行ってるんじゃない」
少し勝ち誇ったガイウスに、一方的にボコられたレオンが噛みつく微笑ましい空間にダンが一人取り残されながら鬱になる。
・・・オレだけか、何があったのか分からないのは?
こんなにも差があるのか?
次元が違う事を否応なしに認識させられるダンだった。
「まあ、荷電粒子砲に関してはもうある程度解決の目処は立っているから安心したまえレオン嬢
さあ、もう少しアピール合戦といこう」
「そうだね、次はイイとこ見せるから眼を離さないでね、ダン
・・・おーい、聞いてるか〜〜」
惚けるダンは、ああと生返事する。
そのダンの肩を力強くガイウスが叩く。
「今は知る事に専念したまえ、強くなるのはそれからだ
今はより強くなるために、学び、考えるときだ
理想を描き、それに近づく努力をするのは今ではない
いいかね、ダン?」
「ああ」
ニヤリと暑苦しい笑顔で笑うガイウスは満足そうにシュミレーターに入る。
イヴァンは、ガイウスの代弁でもするようにハーブティーを差し出しながら言う。
「それでいい、大切なのはあきらめない事、見失わない事
成し遂げたい事がある人間がしない事を今キミは学んだ
そうやって一歩ずつ、高見に足を伸ばせばいい
焦っても、転ぶ回数が増えるだけだからね」
「了解だ」
ダンは、何も見逃さないとばかりシュミレーターを一心に睨みながら言葉を返す。
そして、1時間近いアピール合戦が繰り広げられた。
第2章に続く
後書き
人はそうそう変われない。
人は簡単に変われる。
舌の根も乾かぬうちに、全否定ですまん(笑)
今回は覚悟の話・・・
身勝手な覚悟と、一人よがりな覚悟と、思う覚悟と、背負う覚悟
覚悟とは、迷いを去り、真実の道理を悟ること。
覚悟とは、諦めること、観念すること。
覚悟とは、あらかじめ心構えすること。
誰かの為に覚悟することは、果たしてどれだろう?
多分、どれでもないのだろう。
なぜなら、それは全てであり、そうでないからだ。
時と、状況で、人のそれは即座に逆転するからだ。
だからこその、今回の話だ。
ダンの理想は、かなり大きい。
現状、不可能に近い理想をダンは追い求めなければならない。
そう思ったからこそ、覚悟を決める為に1話使ってみた。
訳もわからず強くなる話は、意外に嫌いじゃない。
惚れた女の為に、そんな話は結構好きな部類だ。
だが、俺の中のダンはヘタレだ。
甘えが先に出て、そのくせ身勝手で、周りのことなどお構いなし、我が儘な一人っ子というイメージが強い。
その上チャットのアンケートでも、ダンは強そうにしているが大したことがないという評価があった。
だから、強くなる確たる理由を与える為に今回を費やした。
次回以降、この伏線がどう生かされるのか正直自信はないが、なにやら面白くなりそうな感じが俺の中にはある。
なので、次回以降もご期待あれ!!