第10話 銀盤の姫騎士
和解後
血まみれだったギーグが止血した後、弧光の自室
狭くて臭い日の光が僅かに入る牢獄に集められた。
「どっせ〜〜〜い!!」
裂帛と同時、クリステルのヒールが弧光の股間を蹴り上げる。
弧光はガードを試みるも、不幸を呼ぶクリステルの力で膝に力が入らなかった弧光は最悪のタイミングで直撃を受けた。
「ほっっっ・・・・・」
むごすぎる・・
完全に突っ伏した弧光を尻目に、男性陣が吐き気を催す。
「これのどこがVIP待遇ですか!!」
クリステルは和解条件の反故にキレていた。
「ここは私の私室よ、あなた達の部屋は別に・・、オウチ・・!!」
「こんな汚い部屋に呼ぶな!!
私室にするな!!
とりあえず、詫びなさい!!」
クリステルは股間を押さえてうずくまる弧光の頭を蹴り上げ、叫ぶごとにマジ蹴りを追加していく。
既にクリステルが「不幸を呼ぶ女」であることを知ったルキア達は君子危うきに近寄らずと、その行為を止めようともしなかった。
そして、クリステルが肩で息をするまで弧光を蹴り倒した頃
「このマゾ芋虫、なにをしたら反省しますの?」
クリステルに踏んづけられながら、ハアハア言って悶えてる弧光にクリステルはうんざりして言う。
「基本的にホモで、マゾで、いじめられっ子な閣下は何をされても喜びますわ」
・・・・最低の生ものですわね。
「わかりました、徹底的に修正して差し上げますわ
生意気な生ものの修正は、初めてではありませんから・・」
クリステルはそういうと、ゾッとするようなダークな笑みを浮かべ、眼をつり上げる。
「あの〜、なにをやっても人間としてダメな閣下には時間の無駄だと思うんだけどなぁ〜」
「甘やかすことが、人間をダメにするんですわ
このダメ人間が、ダメなままなのはあなた方にも責任があるんです事よ」
クリステルがルキア、ダン、イオン、レオンを一人ずつ指さしながらそう言う。
一方、弧光は踏まれながら、ダメこそ付いているが人間扱いされたことに感動を覚えていた。
「まずは、この格好悪い仮面をお取りなさい!!
そもそも人と話そうという時に、顔を隠すなど言語道断!!」
クリステルが弧光の鉄仮面を引っぺがそうとするが、全く外れそうにない。
と、弧光が顔を押さえたままクリステルから逃げた。
「顔は火傷で随分酷い顔してるのよ、人を不快にさせないために仮面を被ってるの
無理に引っぺがそうとするのは良くないわ」
弧光がやんわりそう言うが、ムキになっているクリステルが問答無用で引っぺがす。
本来、鉄仮面を止めていたボルトがいきなりバッキッと折れて、鉄仮面が剥がれた。
仮面の下には、皮膚はなく、骨と筋肉、ボルトに基盤が見え隠れするおよそ人の顔と思えるものではなかった。
ルキアは一声漏らすヒマもなく気絶し、ダンはこれが人の顔なのか?と言う疑問と共に怒りが気持ち悪さを吹き飛ばした。
そして、ダンが怒りの叫びを上げようとしたとき、弧光が先に吼えた。
「 !!!」
それは森の中に木霊す獣咆のように、意味を持たないが故に強烈なプレッシャーを与えた。
ルキアは気絶したまま痙攣を起こし、ダンは腰が抜けたのかペタンと尻餅をついた。
対するクリステル、イオンは身構える。
そんな中、レオン、ギーグ、ベロニカは涼風でも流れるかのように、全く同時もしなかった。
獣のような強烈なプレッシャーを放ったままの弧光は問う。
「良く気絶しないわね」
クリステルは興味なさげに言う。
「パイロットになる前は、衛生兵をしていたわ
なぜ生きているのか不思議なぐらいの人を腐る程診てきたわ
あなたなど、眼も鼻も耳の穴も二つあるし、口も、歯並びが悪くとも歯もある
人など、一皮剥けばあなたと変わりませんわ
せいぜい、爆風の直撃を受けて皮膚が吹き飛び、そこらのゴミが刺さった程度じゃないかしら?
イチイチ気持ち悪がっていたら、バタバタ人は死んでいきますわ
何か、間違っていて?」
クリステルの言い分は、正しかった。
ただし、言った通りの認識を持っているならばと言うことが大前提としてあらねばならぬ。
普通なら、眼を背けたり、見て見ぬふりをする。
まあ、言う程簡単ではないということだ。
だから、弧光は考えを改める。
「私はね、アマダスのデータが取れたらあなたを処分しようと思っていたのよ
まあ、ギーグとベロニカは必死に説得しようかとは思っていたけどね
でも、気が変わったわ
お好きにしなさい、何をするにも許可はいらないわ
そして、あなたが私の害にならない限り、私はその全てを黙認するわ
よろしくて?」
弧光は偽りない意見としてイオン達を見る。
「承知いたしました」
「おっけ〜」
弧光の言葉に、頷くイオンとレオンを余所にクリステルは当然ですわと首をする。
「では、それを踏まえて契約を改めましょう
・・・まずは、あなた達の部屋に移動してからにしましょうか」
弧光は鉄仮面を拾うとボルトを締め直しながら独房である私室を出て、ルキア達の寝泊まりしているVIPルームに移動する。
VIPルームにて
「まずは部屋だけど、ルキアちゃんとクリステルは相部屋、イオンをメイドに付けるわ
ちょっと手狭になるけど、男性陣はダンの部屋に寝泊まりすることにしましょう、こっちにはレオンを付けるわ
あと、今夜からは私も一緒よ」
弧光はギーグ達に流し目しながら、異論はない?と促す。
ルキアやダンは抗議の声をあげるが無視され、部屋の作りが気に入ったクリステルは早速ジャグジーを見ていて相部屋のことなど気にも止めていなかった。
「異論はないようね、では次は本題
あなた達3人をフリーの傭兵として私が個人的に雇うわ
ただし、アルサレアとのこともあるでしょうから、あなた達には偽名登録で、機体も新しく組んで貰ってテストパイロット兼、戦力となって貰うわ
期間は未定だけど、時期にヴァリム内で大がかりなテロ活動をする親玉をあぶり出せると思うから、それを退治するまで
その後は、自由にしていいわ
機体を持って帰るも、私の元に残るもあなた方の自由よ
後、お給金だけど出来高制で通常のパイロットの3倍で如何かしら?」
正直、あまり長く休暇を取るのは不味いのだが、既に1ヶ月も勝手にアルサレア軍から離れている。
勝手に除隊させられていてもおかしくない。
まあ、扱いにくい兵士なので脱走兵という扱いはないだろう。
何せ扱いにくいが戦闘能力はエースクラスに勝るとも及ばないのだ。
下手に突っつけば、無用な被害を増やすばかりだからだ。
「嫌われ者も、悪くないのかも知れないね」
そう思ったベロニカは、クスリと囁く。
そして、3人は細かい契約を詰めていった。
翌日
ギーグ、ベロニカはヴァリム国内で手に入るパーツデータを元に機体を組み上げる作業に入る。
一方、弧光、ダン、クリステルはRF(レヴォリューション・フレーム):アマダスに乗り込み、新型フレームを乗りこなそうとしていた。
まずは、弧光・・・
「パワーバランス、おかしすぎるわこの機体・・」
弧光はハンガー内部で見えない壁にぶつかって三角飛びを繰り返すと言った感じで、袋小路にはまったかのように行ったり来たりして完全に身動きが取れなくなった。
「おい、何遊んでんだ
手本見せてやるから代われ」
ダンの声に、RFに酔ったかのような感じを覚えた弧光が反論もなく交代した。
ダンの場合
「だ〜〜、なんだ、なんだっ!!」
ダンは一歩踏み出した途端に壁に激突しそうになり、両手を突き出して衝撃を受け止めようとして、その反動で思いっきり背後の壁まで滑っていき背中を壁に打ち付け、その反動で顔面から転けた。
そして、立ち上がろうとして腕のパワーのバランスが悪いのか横に側転して床を転げ回る。
下で見ていたクリステルは引き殺されそうになって心臓をバクバクさせながら叫ぶ。
「あなた、私の機体を傷物にしただけじゃ飽きたらず私を殺す気ですか!!」
「う、うるせ〜、くそまともに立ち上がれもしねぇなんて・・」
ダンは機体を上手く制御できず、プルプルしながら土下座と腕立て伏せの中間の姿勢で機体を曖昧に固定した。
「だから言ったじゃない、パワーバランスがおかしいって・・・」
ダメねぇ〜、人の話を聞かない子はと弧光はヤレヤレと肩をすくめる。
クリステルの場合
ダンを無理矢理引っぺがすと、腕立て姿勢のアマダスは倒立しながら両腕だけでジャンプすると、機体を小さくまとめて一回転するとスタッと立ち上がる。
「私が指定した通りのパワーを出せるようになっているようですわね
さて、レックはどうかしら?」
弧光とダンはあんぐりして、その様を見る。
パワーがありすぎて、両手のパワーバランスを揃えることすら出来なかった二人には、まともに動くその機体が別物に見えた。
そんな二人を無視してクリステルはレックの様子を見るために、左足を軸にして、右足を蹴り出す。
アマダスはゆっくりと、コマのように回り出す。
「スリックレックの割にグリップも案外利くものですわね」
クリステルは3度、4度と床を蹴りどんどん加速し回り出す。
レックにブレードも付いていないのに、フィギアスケーターのように回転しながらハンガー内部をアイスアリーナのように見立てて踊り出した。
「恐ろしく滑らかに踊ってるわね・・」
「何で、歩き出すだけで、それこそ何もない床で転けられるような機体であんなに平然と動けるんだ?」
おかしすぎる事実を目の前に、二人は常識って何だろうと頭を抱えた。
「この機体は私のオーダーを忠実に守られて組み上げられたようですわね」
・・・これが、忠実に組み上げられた機体?
「ちょっと、あなたいったいどういうオーダー出したのよ」
弧光の声に、クリステルはワンターンをピタッと止めてそれに答える。
「そうですわね、積載重量を維持しつつ、レックはノン・ブレード滑走が出来るようにスーパースリック使用、レック稼働率を最高値、ジャンプ力変更機能を要求しましたわ
まあ、その代わりオートバランサーはついて来られないようですけど、それはクイーンの時からそうでしたし、無茶な機体を乗り慣れていますからこの程度のバランス崩壊何ともありませんわ」
「文字通り、バランス崩壊してるな・・・
ってか、摩擦係数ほぼゼロのレックで、レック稼働率最高値ってどうよ
その場駆け足ししか出来ねーじゃねえか」
ダンがボソッと毒づく。
「まともな機体しか乗りこなせない人をなんと呼ぶか知っていて?凡骨さん」
「てめぇ〜、マニアックな機体乗りこなせるからって調子ずくのもいい加減にしろよ!!」
「器の小さい男ね、大きな声を声を張り上げるなんてはしたないですわね」
クリステルとダンの火花を散らす視線を弧光が割って入る。
パン、パンと手を打ち言う。
「はいはい、王道、邪道、自分の道にそぐわないという理由だけで他人を否定しないの
やり合いたいのならシュミレーターを使いなさい」
「おう!!」
「よろしくってよ」
クリステルは機体をハンガーに固定すると、先行するダンをゆっくりと歩いて追う。
二人が出て行った後、弧光はアマダスを見上げる。
「思わぬ拾いものねあの子、さて内包したのはお宝か、それとも毒蛇かしら?」
何はともあれ、これでアマダスのデータが取れる。
それは残りのRFの完成に近づくという事を意味している。
されに言えば、それはより理想に近づくと言う事だ。
爆弾を腹に抱えたまま、と言うのが気になるけど・・・
弧光は、明後日の方を見てそう思う。
シュミレータールーム
アマダスに挑戦しなかったルキアが、先にここに来ていた。
「調子は悪くないようですが、どうですか?」
シュミレーターでの模擬戦闘や、狙撃練習をしているルキアにイオンは声をかける。
「悪くないだけね、ここ数日戦績が伸びなくなってるわ」
ルキアは正直煮詰まってきていた。
何せ、デモンストレーションでAIがやってのけた方が戦績がよいのだ。
無人機に劣るようでは、人が乗る意味がない。
もちろん、あくまでシュミレーターの結果は仮定であって、現実は無人機というわけにはいかないがそれをいい訳にしているエースパイロットはいない。
と、スランプ中のルキアの元にダン達がやってきた。
「イオン、オレのボルカノのデータは入ってるか?」
「ええ、ルキアのケーニッヒ・フラウ同様、あなたのボルカノ・ブラッドも既にデータ入力済みです」
「わたくしのアマダスは?」
「アマダスはまだ戦闘データが蓄積されていませんので、初期設定データのみしか入力されていません
それでよろしければ、使用可能ですが」
「結構ですわ
どのみち専用OSもまだ出来ていないような機体ですし、問題ないですわ」
「は、後で負けた良いわけが出来たな」
「もうですの?
負け犬の遠吠えは負けてからするものですわよ」
「て、てめえ、大概にしやがれ!!」
ダンは怒り狂ってシュミレーターに入る。
クリステルはダンにつられることなく軽くストレッチしてから、シュミレーターに入った。
ダンVSクリステル フィールド:砂漠
「あなたの機体も新型機のようですわね、随分見知らぬ兵装もあるようですけど・・
使いこなせて?」
あくまで高みから見下ろすクリステルに、ダンは全く余裕なく特攻する。
「その性格諸共ぶっ飛べ、ブーストナックル!!」
ダンは機体の左腕に装備されたカイザーナックルとシールドを一体化させた兵器、不知火・突を起動させる。
するとシールド部分がスライドし、3基のブースターがせり出し機体諸共突き出した拳が急加速し、そのままアマダスを殴りつける。
クリステルは、ふぅっとため息を一つついてブーストナックルをアマダスの顔面でモロに受け止めた。
「どうだーーー、〜〜〜ぁあ〜?!」
殴られたアマダスはもの凄い速度で、砂丘をなめるように後方に向かって滑走していった。
「全く、効きませんわ!!」
「な、なんて、捌きかたなの!!!」
受けた衝撃を一切蓄積することなく、すべて運動エネルギーに変換して機体ダメージをゼロにしてしまった。
これはRP(レヴォリューション・フレーム)が本来保有する能力ではない。
というか、そもそもこんな発想をした研究者もパイロットも聞いた事がない。
つまり、この機体オーダーを出したクリステルが発案し、誰もが馬鹿にするであろう戦術を確立してやってのけたという事だ。
言われれば出来るかもしれないと冗談で思っても、ほぼ100%のパイロットはやろうとしないだろうし、同じくほぼ100%のメカニックはそんな無茶に答える機体を作らない。
なぜなら、攻撃は防ぐか、よけるかが主流であって、当たった衝撃を逃がすというのは超一流どころが緊迫した戦闘の中、回避が間に合わないため仕方なくする行為であり、狙ってするものではないからだ。
そもそもからして、狙って出来るか?という疑問すら湧かずにはいられない。
だが、クリステルはその馬鹿な発想を機体特性と、度胸でやってのけた。
シュミレーターだから死なないとか、そう言ったいい訳はたぶん無意味だろう。
リアルでもクリステルなら必ずやると、彼女を知るものなら思うだろう。
だが、ダンはそう思わなかった。
「何だ、バグか?
なめてんじゃねぇぞ、まじめに戦いやがれ!!」BR>
「現実を直視出来ないものに、未来など重いだけでしてよ」
再び突進してくるダンに、クリステルは鞘に入ったままの剣を横薙ぎして足払いする。
ダンは体勢をくずも可変式バーニア:ソニック・ブレイダーの推進力にものを言わせ錐揉みしながらアマダスを殴りつける。
クリステルは今度は左手の小手の側面で拳を弾き、弾いた衝撃をクルクルと右回転の運動エネルギーに変換しつつ、鞘に収まったままの身長よりも長い剣でダンのボルカノ・ブラッドを背後から打ち据える。
「なぁ〜めるなーーー」
あり得ないほどのロングリーチでたたき伏せられるも、ダンは右足を軸にソニック・ブレイダーの推進力で強引にアマダスの方を向いて構える。
「手加減はやめだぁーーーー!!
ぶち抜け、エナジーナッコォーーー!!!!」
裂帛と同時、ダンは左手のブーストナックルで加速、クリステルが鞘で衝撃を吸収しようとするのを確認して、それまで温存していた右手のエナジーナックルを本体めがけて射出する。
「バカの一つ覚えも、大概にしなさい」
右手の剣で、エナジーナックルをたたき落とそうとした時だった。
光る拳が光爆と言える強烈な光を放ち視界を奪う。
不味いですわね・・
クリステルはたたき落とそうとした鞘に手応えがない事と、光爆に危機を感じて横っ飛びする。
「あめぇーよ、セカンドウォーリアーーー」
ダンは一気に間合いを詰めるとHM:セカンドウォーリアを発動させる。
「機体カラーが変わった!?」
クリステルはその場で一回転しつつ、アマダスの鞘と左腕を貫通して帰ってくるエナジーナックルを動力に、より遠心力をつけてローリングソバットを叩き込む。
「そんなモンが利くか〜〜〜!!」
赤を基調にした機体色を全身シルバーに染め直したダンのボルカノブラッドは、肥大化させた胸でそれを受け止める。
それも、全くよろめくこともなく。
「大した性能です事・・」
油断が過ぎましたわ・・
持っていた剣は、半ばから鞘諸共風穴を開けられ完全に使い物にならなくなり、その上クリステルはソバットの反動で離脱しようと思っていたが、思いの外ソバットの威力が吸収されてしまったので、予想よりも離脱する事が出来なかった。
「相変わらず、すばしっこいが・・・これでチャックメイトだ!!」
ダンはバーニアナックルでアマダスに追いつくと、腰部のスカートを掴んで地面に押し倒す。
「トドメだーーー!!」
「ああもう、すぐに調子に乗りますわね
この小猿は!!」
これだからガキはイヤだ。
クリステルもマウントを取られたままでは不利とHM:セカンドウォーリアを発動させる。
まだこのRF専用のHM:セカンドウォーリアの内容は確認していないが、これで条件が互角になる。
そうすれば、まだ勝機はあるとクリステルは全く諦めていなかった。
が、そんな希望は脆くも崩れ去った。
ガァーーーーーー!!!
「あら?」
クリステルの戦闘画面にノイズが入りフリーズした。
と、そんなことになっていることなど気づかないダンは数発アマダスを殴り倒すと、チャージを終えたエナジーナックルでアマダスの胸に風穴を開けて完全勝利を納めた。
ダンの勝利にてシュミレーター終了
「どうだ、高飛車女!!」
「その高飛車女がシステムエラーでフリーズしているのにも気づかないカスに、私は何と声を掛けたらいいのかしら?」
勝ち誇っていたダンは、マジかとルキアを見ると、ルキアはシュミレーター上部の観戦用ディスプレーを指さす。
たしかに、ダンの画面は勝利シーンがリプレイされていたが、クリステルの画像は未だに画像が止まりノイズが出ていた。
ダンは言葉が出なかったが、そこに拍手が送られる。
「なかなか面白い戦いを見せて貰ったわ、女王様」
ふふっと、弧光は含み笑いをする。
「別に見せ物になるつもりはなくてよ
ただの躾ですもの・・・
でも、正直いい勉強をさせていただきましたわ
わたくしの機体の問題点を教えていただいた点には感謝しますわ」
クリステルはダンに握手を求める。
ダンはどうしようかと思っていると、いきなり腰が抜けた。
思いっきり尻餅を打ったダンが痛がっていると、クリステルは握手しようと出したその手で顔面を思いっきり掴む。
「い、いでぇ、いてえぞ、おい!!」
「紳士たる者、貴族たる者、女性の手を即座に取らないとは何と恥知らずなのでしょう
もう少し、常識を学びなさい!!
ルキアさん、笑っている場合ではありませんわ
あなたの責任でもあるのですわよ」
全くもってその通りと笑っていたルキアは、いきなり話を振られて困っているとイオンがやってきた。
「申し訳ありませんクリステル様、先ほどのエラーはアマダスのブラックボックス内のHMと、RF専用HMのシステムが一部共有しているものがぶつかったのが原因と判明いたしました
出来る限り早くブラックボックスを解析し、反映したいと思います」
ブラックボックスの中身は・・・PDですわね。
「結構ですわ、そのシステムに関しては私がやりますわ」
「あら、煩わしいものは下々のものに任せれば良くてよ女王様」
弧光は肩をすくめながら、あなたは女王様なのだからと念を押す。
「別にあなた方に隠したいシステムがあるなんて事ではないですわ
ただ、アレは私でしかコード解除できない専用システムですから・・・
まあ、秘密にしておきたい最終兵器?・・・
違うわね、秘密にしておきたいアルサレアの恥ですわね・・・
だから触られたくないというのが本音ですけど、調べたければ御自由に
私の能力では、阻みたくとも阻めないでしょうから」
「そう、なら好きにさせて貰うわ」
・・・・この汚豚が!!
女性の秘密を知りたがるなんて・・・
怒りを露わにしたクリステルはふと思いつく。
「そうだわ、今の戦いで一つ今後の問題点を発見したのですけど
それの対処法を検討して機体に搭載したいのですけどよろしいかしら?
受注代金はそちら持ちで」
これくらいは当然ですわと、クリステルは顔で言っていた。
「ものによるけど、その辺は問題ないわ
さっきも言ったけれど、好きになさいな
ちなみにどんなものが欲しいのかしら?」
弧光の言葉に、クリステル唇を人差し指でノックしながら言う。
「剣が折れると戦う術がなくなりますのでね
剣を失った後でも戦えるよう
追加武装なり、折角のパンチ力や腕稼働率を活かせるガントレット内蔵スパークフックみたいなものを用意したいですわね」
・・・面白い子、本当にいい子を拾った物ね。
戦闘を見ていた弧光は二人の違いを強く感じていた。
ダン、それに実はルキアにも言えることだが、二人は新型機体の性能や、新しい武装に馴れようとするばかりで、機体や武装を自分に合わせようとはしていなかった。
対するクリステルは、機体に文句を付け自らの発想でより自分が戦いやすい機体へと昇華させる努力を惜しまない。
どちらがいいということではないが、せめぎ合うことで高まると弧光は思わずにいられなかった。
「もちろん、大歓迎だわ
それなら、ギーグ達二人の所に行ってきなさい
二人の機体受注のついでに必要なパーツなり、武装を受注してくればいいわ」
「そうですわね、何かアイディアも頂けそうですしそうさせていただきますわ」
クリステルはそう言うと、既にぐったりしたダンの顔面を放すとシュミレータールームから出て行った。
「どうだったかしらルキアちゃん」
弧光の問いにルキアが肩をすくめる。
「もう少し馴れないと、アレは捉えようがないわね
彼女のことは知らないけど、結構名うてなのあの二人見たく?」
ルキアの当然の疑問にイオンが答える。
「実験小隊に在籍しており、その関係で特機を保有しております
実力は中の中と言ったところですが、先ほどの戦闘を見るに上の下か中に上方修正する必要があるかも知れません
少なくとも、先ほど見せたような戦い方をする方ではありませんでした
ですが、少ない戦闘記録を見たところ以前の機体はジャンプ力がない機体のようでしたことから、今回見せたような戦い方を思いついたのかも知れませんね
これが誰かの発案ではなく、彼女の思いつきならそのセンスは非常に優秀かと思われます」
「何にせよ、貴重な人材だわ
発想然り、戦闘スタイル然りね
本番まで、時間もあることだし存分に相手をして貰いなさい
理想はギーグ達を凌駕して貰いたいところだけど、急には出来ないでしょうね・・
まあ最低でも単独でドゥームぐらい圧倒できないようじゃ、お話にならないわ
いいわね」
弧光の声に疑問はない。
これは確定事項故に、弧光はそれだけ言うとその場を後にした。
「全く、無茶苦茶言うわね・・
まあ、確かにレーディヒ・シュライが当たればドゥームなんか一撃だけど・・・
使いにくいのよね〜〜〜」
でも、私もダンもドゥームを圧倒することが出来る兵器と、運動能力を誇る機体を用意されたのだから、それに応えるのはある意味義務かも知れないとルキアは思う。
「ダン、復活した?」
「ああ、あのくそ女!!
なんてやっかいな体質してやがる」
高確率でクリステル周囲の人間はひざまずく、主に体調不良により・・・
全くね、ルキアは同意しながらダンをシュミレーターに誘い模擬戦を開始させる。
「良い傾向ですわね」
その様子をイオンは微笑ましく見守るのだった。
一方、ギーグ達
「機体構築はいかがかしら?」
既に発注準備をすませギーグ達は紅茶にウイスキーを垂らして一息ついていた。
「なかなかおもしろい技術があって目移りしたけど、先ほど発注リストを制作し終わったよクリステル嬢」
ベロニカはキミもいかが?と紅茶を差し出す。
「ありがとう、頂きますわ
その割に、思いの外早かったですわね」
「私の機体はパンチャーだ
それもレアHM搭載型のとなると、最新技術などパーツ選びに全く関与しない
だから、時間をかけたのはベロニカだけさ」
「ヴァリムのパーツでもHM:瞬間停止を発動出来る機体を組めましたの?」
「むろんだよ、クリステル嬢
機体構成HP1000以下、基本守備力100以下の違反機体にすればイイだけだ
やろうと思えば、ジャンクでも組める」
スーパーハイリスク、ウルトラハイリターン・・・
敵にしろ、自身にしろサドンデス、即死以外あり得ない。
よく考えれば、この二人は一歩間違えれば即死という極端なリスクを背負って、超戦闘力を得る機体構成を信条としてる。
それ故、ヴァリムにその機体構成を提出してもたいした問題にならない。
なにせ、あまりにも使い勝手が悪すぎてたとえエースクラスのパイロットでも嫌煙する。
ハイリターンかどうかは別として、アマダスも使いこなせないという意味では同じである。
弧光が、生かして返しても良いという理由はこの辺なのだろうとクリステルは独りごちる。
「わたくしの機体の問題がいくつかありましたので、お二人にご意見をお聞きしたいのですがよろしいかしら?」
クリステルは武装不足の話を二人にすると、リストからよさげな兵器や、それをカスタマイズする技術などをベロニカに教えられた。
そして、数時間3人は知恵を絞って使いやすい形状、特性を持った新しい兵器の設計図を作ると発注した。
それをおとなしく後ろから見ていたレオンは、ルキア、ダンの新型機には無駄が多いように思えた。
正確には、ダン達の新型機はごちゃごちゃして使いにくいと言う感想だった。
そして、その意見は弧光に伝えられ思わぬ方向に話は進むのであった。
第11話に続く
後書き
敵でも味方でもめんどくさいクリステル嬢もとい女王様?が、ご立腹しながらも波乱を巻き起こす今回・・・、もしかしたら次回も(滝汗)
とりあえず、あまり強くないクリステルも衝撃を運動エネルギーに変える特殊レックにより、エース級までとは行かないまでも戦力と呼べるキャラに昇華してみました。
弧光に見捨てられない伏線です、正直。
尚、タイトルの銀盤の姫騎士は、アイススケーターのようにフィールドを滑走するというアマダスのイメージでつけました。
そして、未だにうだつが上がらないダンとルキア、まあダンは一応1勝しましたし、ルキアも少し片鱗を見せ出しましたが、次回からは新型機体の元々のコンセプトを一新するという暴挙によりそろそろ化けます。
なお、ダン達の機体はプロト原案、ボルカノ・ブラッド&ケーニッヒ・フラウと既に第2案まで出来ているのに、正式採用はまだ出来ていない第3案になる予定です。
本当にまだ機体原案が完成していないので、次回は遅れそうです(滝汗)
まあ、何はともあれご期待下さい!!
ちゃんと、噛ませ犬を脱して見せますので(爆)
感想も待ってま〜〜〜す!!