第8話 忍び寄る不幸
ダンのボコボコリンチ生活1週間
肉が裂け、骨が折れ、全身は発熱し、常に意識は朦朧としている。
そんなダンだが、ズタボロの身体を引きずられリンチに会い、点滴で栄養と消炎沈痛物質などを流し込まれていた。
そして、そんな7日目の夜。
手足に蛇が巻き付くような感触にダンは眼をさます。
「手当はもう済んだだろ、体中が痛ぇえんだ
匂い付けもいらねぇ、もう寝かせてくれレオン」
バキ!!
「はぁ・・っっっ・・・・・」
ダンのくっつきかけた肋骨が抱きしめられた反動で7本も折られた。
ダンはレオンを引きはがそうと腫れ上がった瞼を剥き、腕を伸ばしたときだった。
後頭部に力強い圧力を感じた瞬間、ダンの唇に吐息が吹き込まれる。
平熱が39度台で常に頭が煮えているダンは、「ああ、とうとう来たか・・・」と覚悟を決める。
そして、ダンの想像を決して裏切りませんとばかりに頭を押さえたのと反対側の手が、胸から下へとゆっくり、ゆっくりと下がってくる。
ダンは動かぬ身体に嘆き、最後の言葉を漏らす。
「わりぃ、ルキア・・・」
「悪くないよ、ダン
ごめんね、無理矢理みたいな形で・・
でも、もう待てないよ」
ダンはレオンだと思っていたのがルキアだったことに驚くと同時、ルキアが何かせっぱ詰まった状態だと言うことに気づく。
俺は、なんて無力なんだ・・・
ルキアの身に何か起きた。
または、これから何か起こるのか?
どちらにせよ、小やかましいが奥手なルキアが強姦まがいの事までしようというのだ、よほどのことなのだろうとダンは察するのだった。
そして、身体の動かぬダンはルキアを抱きしめることも出来ず、されるがまま身を委ねる。
それを優しさだと信じ・・・
でばがめ三人衆
「あ〜あ、とうとう先越されちゃいましたね〜閣下」
「まあ、べつにかまわないわよ」
「ほえ、そうなんですかぁ〜?」
意外そうな顔でレオンは弧光をみる。
「二人が幸せなら、私はそれでいいのよ
嫉妬なんてみっともないわ
まあ、ちょっかい出さないかっていったらそうでもないんだけどね」
「しっかし、大丈夫かねルキアちゃん
いくら何でも盛りすぎじゃない?
ダン君腹上死とか、洒落にならないかも」
「さきほど、リカバーシェルが届きましたので、即死さえしていなければ数日で全快しますから問題ないかと」
「そう、ならダンちゃんの方は問題なさそうね
で、ルキアちゃんの方はいい変化出たのかしら?
ずいぶん、欲望に忠実ですてきな感じだけど」
「まだ観察途中ですが、幻視というか、未来予知のようなものが発現しているようです
出来ればもっと高次元の量子観測能力を発現してもらいたいのですが、難しいかもしれませんわ」
「そう、なかなか思い道理にならないわね
引き続き観察を怠らないように、優先事項は戦力としての生存よ
高望みはしてないから忘れないように
では、撤収しましょう」
弧光が促すとレオンは「は〜い」と付き従い、イオンは一仕事終えてまどろむルキアを自室に帰るよう促す。
ルキアは覗かれていたことすら気づいていたようだが、そのことにも動じずダンをよろしくと言うと自室に戻ってとっとと寝てしまった。
「ずいぶんとまあ、肝が据わってきたというか、何というか・・・」
ルキアの劇的な性格の変化をイオンは確信しながら、ルキアにつけたバイタルチェッカーの数値を確認する。
心拍や血圧以外もホルモン量などが測定されており、身体の変化がリアルタイムに計測されているが、その数値は想定内とはいえ強化兵士並みの数値をたたき出してきていた。
どのくらいかといえば、双子の悪魔キサラギ・ユイのそれに近い数値と例えるのがわかりやすいか?
ちなみに、ダンの身体能力は常人の1.3倍、キサラギ・マイの半分ぐらいである。
翌日、リカバーシェルで治療中のダン
ダンはルキアの変化と安否をレオンに訪ねる。
「特に差し迫った危機とかはないよ〜」
「嘘をつくな、じゃあ何でルキアは・・・」
昨夜のことを告白するのをためらうダンにレオンはぶっちゃける。
「エッチしてきたのかって?
そりゃ〜、いつまでも煮え切らないからじゃない
いいじゃん、相思相愛だったんでしょ
それにさ、やっぱ閣下に襲われてホモに目覚める前にものにしたかったんじゃないの?
あ、そういう意味では危機迫ってたわね」
「ちょっと待て、何で知ってるんだ昨日のこと」
顔を真っ赤にするダンに、レオンは目を細めていう。
「アンタの今朝の姿思い出せる?
はき出しまくった体液でドロドロになって、それも素っ裸で・・・
子供でも何があったかってわかるって
まあ、私たち3人は一部始終覗いてたから後始末した後でも意味ないけどね〜」
「な、なにしてやがる!!」
「ハイハイ、済んじゃったことにいちいち目くじらたてない
ルキアちゃんは私たちがでばがめしてるの気づいてたけど、見せつけてくれちゃったわよ
もう少し図太くなりなさいよ、女はいろいろでかい方が好みよ
この辺とかね〜」
レオンはつつ〜っと人差し指を滑らせて下半身で指を止める。
「だ〜〜、ちった気を遣えよ
って、いっても無駄か」
「うん、無駄
それにね、べつにただ興味本位で覗いてたんじゃないよ
アンタが腹上死しないか、見張ってたんだから
全く、あれだけ派手にちちくりあってよく死なないわね
ゴキブリ並の生命力に感動したわ、どう気持ちよかった?」
「あんな下等生物と比べんな、まあ良かったよ
これで満足か?」
「そうだね、悪くない反応だよ」
レオンはからかいがいないな〜と苦笑しながら、装置をポチポチ操作する。
「オレはいつ動けるようになる?」
リカバージェルの水槽に浸かったダンはまじめな顔で問いかける。
「早ければ明日、超回復なんかを考えると3日は欲しいかな
超回復が済めば常人の2倍の身体能力を得られるわよ
そのくらいの能力があれば、とりあえず新型機に殺されないレベルだね
できれば、キサラギ姉妹並みの身体能力、ざっと常人の2.5〜3倍ぐらいの身体能力がほしいわね
これはアナタがPFのエースパイロットとなるために要求される最低レベルの必要条件だよ、理解できる?」
「ああ、そっちの方は正直おまえに任すよ、レオン
自己管理とうかそういうのは、自信がないからな
で、オレはほかに何をしないといけないんだ?」
「話が早くていいね
とりあえず、新型のデータをみて理解したらシュミレーションで機体になれてほしいかな
もっとも、リカバーシェル内部だとGなんかがかからないからゲーム感覚だけど、さっさとルキアちゃんの僚機とのコンビネーションなんかも考えてくれると時間を無駄にせずに済むかも」
「了解だ、しかしなんだこれは?
こんなんでちゃんとPFとして機能する、いやこのスペックで動けるのか?」
「私は技術担当じゃないから、わかんないよ
でも、機体は結構組み上がってるみたいだよ
今はいろいろな調整に苦労してるみたいだけどね
ああ、それから今週末ちょっとポイント稼ぎをするために転戦して実践の勘を取り戻そうとか閣下が言ってたよ」
「転戦?」
「うん、反ヴァリム派のテロリストの討伐任務を受けるとか受けないとか」
「強いのか、そいつら?」
「まさか、横流しPFに愚連隊のパイロット崩れだよ
たかがしれてるよ
でも、ゲリラ戦や市街戦の経験値や、弱いもの達の知恵を学ぶのは悪くないよ
ないなりの戦い方というのは、いざというとき身を助けるものだよワトソン君」
・・・・誰だよ、オレは
「それまでに新型は間に合うのか?」
「ムリ、だから2.5世代カスタムPFで出撃してもらうことになるかな
ちなみに、機体構成なんかは似た感じになるから問題ないんじゃない?」
いい加減なもんだな〜と思いながらも、生身の殴り合いに比べればずいぶんパイロットらしい仕事だとダンは思うのだった。
ダンが治療中の頃ルキア
「どうですか、ストレス解消になりましたか?」
「そうね、ロマンチックとはほど遠い感じだったけど・・
興奮したわね
・・・なんか、恥女みたい
少し鬱になったわ」
眉間を押さえてうなだれるルキアにイオンは、クスリと笑いながら言う。
「まあ、客観的にみて恥女というか変態ですわね
でも、閣下と比べれば生やさしいかと・・・」
「やめてよ、あれてと比べればグッドマンでも、モアイでもまともな人間と変わらないわよ
・・・でも、そうね
ロマンチックではなかったけど、とっても満たされた感じがするわ
ダンはどうかしら?
襲われちゃったけど、落ち込んでなかった?」
「何が事か、切迫した状況に陥っているのかとむしろ心配されていたようですよ」
「そう、ふふダンらしいかもね」
ルキアは楽しそうに含み笑いをする。
「さて、電脳戦と戦術戦のシュミレーションを始めましょう」
「今日も不意打ちがあるのかしら?」
ルキアは電子電脳戦のシュミレーションをしつつ、EBM(中周波筋力トレーニング)を搭載したトレーニングスーツを着込んだ状態で、希にライフルでの狙撃(模擬弾)にあっていた。
「ないと言っても信じないでしょう?
そういうことは聞くだけナンセンスだわ
それよりも、どうかしら?」
イオンは何か変化は?と訪ねる。
「よくわからないわ
ただ、やっぱり何か見えるときがあるわね」
「飛蚊症みたいなかんじかしら?」
「おおむねそんな感じ、後はものがぶれたり二重に見えるわね
疲れ目みたいな感じなかなかうまくいかないものね
・・・・後は我ながら性格がポジティブというか、押しが強くなったわね」
どちらかというと、欲望に忠実になったように見えるけどね。
性欲はおろか、食欲や、睡眠欲とかが貪欲になってるわよと、思うことはあるもののイオンは口に出さず「そう」と素っ気なく答える。
そして、弧光
とある場所にて・・・
「体の調子はどうだい?」
弧光にそう投げかける声に張りはない。
だが、気を抜くと弧光でさえ魂を引きはがされそうなプレッシャーをまとわせている。
普段、変態の限りを楽しみに無法の限りを尽くしている弧光が、萎縮していた。
「まだ、顔の痛みは残りますが体の調子は快調です」
「そうかね、それは残念なことだね
しかし、幾千万の失敗を繰り返し唯一生き残ったキミは、貴重なサブルートだ
良い結果が残せるようならば、まだメインルートへの復帰の可能性が残されていることを忘れないようにしたまえ
今以上を望むのならば、だがね」
「はっ、生まれの不幸も、生きる不幸も甘んじることが出来なかった私を拾っていただき
人を超える可能性すら与えていただいたご恩は、結果を持ってお答えしたく思います
そのための準備も、着々と推し進めております」
カン!!
声の主は杖で床をたたく。
弧光は瞬時にファイティングポーズをとってしまう。
が、小さな殺気は水面の波紋のように消えた。
「私が求めているのは、完全な個のみ・・・」
「はっ、努々・・」
世界が閉じるかのように声の相手の気配が消える。
そして、静寂があけた後
「ふう、心臓に悪いわね、相変わらず・・・」
弧光は手のひらの汗をぬぐうとイオンとレオンのことを思う。
二人は生まれつき常人の5倍近いスペックを持っている。
自分がすべてと引き替えに得た身体能力である。
「世の中、不条理よね〜」
特に私にばかり・・・
別に、だからといって文句があるわけではない。
ただ、この理不尽な世界を変えたいと切に願っていた。
別に平等や、平和な世界・・には興味はない。
弧光が願う世界、それは努力や変化を望む限り、世界が自分を見捨てない世界である。
誰かの勝手な判断で、自分の道が絶たれない世界、それが弧光の望む世界だった。
そして、弧光は今その分岐点にいた。
だからこそ、望む未来を得るために弧光は今ここにこうしているのだった。
同時刻:ヴァリム某所
「貴方達、やる気あるんですの?」
とがったヤンキーのようなグラサンかけた女性が、すごい剣幕でお付き?の二人に吼えた。
「協力するとは言ったが、それ以上の事は何も確約したつもりはないぞ」
「私も、そのつもりだよ」
良い感じで太陽光を反射する頭、肩、胸・・・露出した部分が全開でマッチョさを強調している男と、のど仏がなければちょっと背の高いブロンド美女といった顔の華奢な男性陣がやんわりと抗議する。
「はぁ〜、人選ミスというのは分かっておりましたが・・・」
人格はともかく、類希な戦闘能力を買って二人を連れてきたのだが、あまりの協調性のなさに頭痛を覚えていた。
「まあ、そう言ってくれるな」
「そうとも、これが捜し物の行方だよ」
二人はそう言うと女性にメモを渡す。
「これはヴァリム軍の基地ですわね、搬入される前に奪取出来るかしら?」
気楽に言う女性に、二人は渋い顔をする。
「今から目立たず追いかけたとして、追いつくのは搬入直後だろうな」
「強引に向かったとして、たどり着く前にヴァリム軍と戦闘になって撤退せざる終えないだろうね」
ジレンマですわ・・・・
「そうですわね、とにかく追いつき奪取する事が肝要ですからこのまま出来る限り急ぎましょう」
二人はうなずくと、ホットドックの入った紙袋をトレーラーの座席に放り込むとさっさと発進してしまった。
「まったく、貴方たちはレディーファーストという言葉を知りませんの?」
置いてきぼりを食らった女性は、そう叫ぶと深紅のスポーツカーに飛び乗るとアクセル全開で二人を追った。
その際、彼女の車をよけようとした軽自動車がたまたまいたガソリンの給油車に突っ込み、ガソリンスタンド兼カフェバーはキノコ雲を発生させて大爆破&大炎上した・・・
なお、この3人組がここに到るまで、18件同じような偶然の事故が起こっている。
先に言っておこう、意図的なテロなどではなく、あくまでも偶然、不幸な出来事が縦続いて起きたのである。
まるで、不幸が吸い寄せられるかのごとく・・・・
そして一週間後
魔王軍に転戦先で使用される代替機がハンガーに格納されている頃
「結局、追いつけませんでしたわね」
クリステルはため息をつく。
が、連れてきたギーグとベロニカは渋い顔でクリステルを見る。
「な、なんですの・・・
私が悪いとでも言いたいんですの?」
二人は真顔で眼を細める。
クリステルは変わった女性だが、それは彼女の性格だけではない。
一番の問題は、体質である。
彼女は、ぶっちゃけると「不幸を呼ぶ女」なのである。
なお、それは「幸薄い女」と同意ではない。
彼女自体は、全く不幸ではない。
彼女の不幸を呼ぶ力は、彼女以外の周囲にのみ無差別に発動する。
全くもって恐ろしい話な上、制御不能なので味方からも彼女は嫌煙されており、そのせいか性格も極端に育ってしまった。
が、連れのギーグとベロニカはしょっちゅう二人の世界に入っている上に、並大抵の不幸などものともしないスペックを持ち合わせているため、今回この3人である非公開の任務に入っている。
ちなみに、今回の任務だが・・・公式のものではない。
これはクリステル独自の発案の任務である。
その内容は、新しい換装用ドレス(ガール系PF専用追加装甲)をゴルビーに発注したところ、日頃の戦果に免じて制作の許可を取ったクリステルはワン・オフ・ガール機体クイーンの新装甲を制作を開始した。
が、新装甲外注中にクイーンは強奪されてしまったのである。
それにキレたクリステルは、休暇中のギーグとベロニカを引き連れ行方を捜し、とうとうヴァリムにまでやってきてしまった。
ただし、クイーンの行方を捜すのに難航したあげく、ヴァリムに行かなくてはならなくなった事など様々な理由から、強奪から既に3ヶ月近く立っていた。
そして、ベロニカの集めた情報によると、機体名はアマダスと変更されたあげく、機体自体にも大幅な改造が施され、もうほとんど原形をとどめていない事が分かった。
それでもクリステルは、元愛機を取り戻しに来た。
はっきり言ってクイーンは倫理的に問題がある特機ではあったが、見た目と違い性能はそこらのカスタム機とは一線を画すものであった。
強奪犯を追いかける中、いくつかのPFに乗り換え戦ったクリステルが思った事は「量産機など私にはふさわしくない!!」の一言である。
改造されたものが気にくわなければ、リペアしてくれた第1研究所に持ち込んで残してあるデータを使って元に戻せばいいし、よりよいものになっているなら自分で使えばいいとクリステルは思っていた。
が、そんな思惑も色々手をこまねいているうちに機体は完成し、既に搬入されてしまったのだから元も子もない。
いじいじするクリステルにギーグが言う。
「せっかくここまで来たのだ、プランDを発動しようじゃないか
あらゆる意味で死の覚悟がいるがどうする?」
「はぁ〜、ここまで来たんですのよ
為す術がないならともかく、出来る事があってそれをしないのは怠惰でなくて?
今すぐ実行しましょう、今ならパイロットも搭乗していないでしょうし強奪し返せるでしょうから」
変な癖をつけられる前に!!クリステルはそう言うと、ギーグ達の乗るトレーラーからバズーカ、アサルトライフル、グレネードを引っ張り出すと深紅のスポーツカーに放り込む。
「では、僕らは今から1時間後に基地に向かって強襲をかける、御武運を」
「貴方たちこそ、死なないでくださいまし
寝覚めが悪いですから」
ギーグとベロニカは顔を合わせて笑うと、同時にうなずいた。
それを見たクリステルは基地に向かって爆走した。
魔王軍基地
「閣下、新しいPFがハンガーに搬入されました」
イオンの言葉にダン達と格闘訓練をこなしていた弧光は言葉を紡ぐ。
「訓練もそれなりになってきた事だし、私も含めPFでの実践の感もそろそろ養っておきたいと思っていたことだし丁度いい頃合いね」
弧光はそういうと、ダンとルキアを率いてハンガーに向かう。
「今日届いたのは本命が来るまでの代替機なんだろう
どのくらいのモンなんだ?」
ダンは当然の疑問を投げかける。
「そうねぇ〜、分類としては2.5世代と言ったところだからあなたたちのカスタム機とそう大差はないわ
でも、一芸に秀でた機体よ
1機は完全なパンチャー、1機は射撃特化、この2機はあなた達に合わせて調整してあるわ
そして、最後の1機は本命のプロトタイプ機の技術を応用した特機・・・
PFを超えるPF、私はそれをレボリューション・フレーム:RFと分類した機体よ
まあ、強いには強いけど各パーツごとに理想だけを追い求めすぎてバランスが悪いのでパイロットのトライアルに1機作らせてみた機体よ、みんなで使い回しましょう」
「私はいいわ、そんなちぐはぐした機体に乗ったら変な癖が付きそうだし」
ルキアがなにやらうんざりといった感じで、しっしっと手を振る。
「何だよ、面白そうじゃねぇか
じゃじゃ馬だからこそ、乗りこなす醍醐味があるだろが」
ダンはワクワクしながら子供のように拳を振るわせる。
「・・・ふ〜ん、じゃあ私も乗りこなしてよ」
それを見たルキアは子供なんだからと思いながら眉を細めると、ダンの耳を引っ張るとキスをする。
ダンは眼をパチクリさせてうろたえて押し黙ってしまう。
「しっかりしなさいよ、ダン
全く、アンタの意気地はどこに行ったのよ」
「う、うるせえな!!
あんま調子に乗ってると・・、うひゃぁ〜〜!!」
ダンがルキアに詰め寄るなか、弧光がダンの尻を掴んだ。
「あんた達こそ、調子に乗り過ぎよ
あんまり見せつけられると、私も混じりたくなっちゃうじゃないの」
身体をクネクネさせる弧光にルキアはお邪魔虫といいながら踵落としを入れ、ダンは尻を押さえながらルキアの後ろに飛び退く。
はぁ〜、頭痛いわね。
ダンといちゃつこうとする度に、弧光に邪魔されルキアがうんざりしていたその時、ルキアは虫の知らせか、ふと上を見る。
そこには見慣れない女性がうろついているのを発見する。
普通の基地なら、見慣れない人間がいても何ら不思議はないのだが、この基地に関しては全く違う。
弧光の非人道的価値観のせいで、まともに自我を保っている女性はこの広い基地内部にルキア、イオン、レオンのたった3人しかいない。
むろん、ほかに全く女性がいないというわけではない。
残りの女性隊員は、皆GFパイロットになるためにある処置を施され、常に戦闘待機として自室にて管理されていた。
その上、よほどの事があっても勝手な行動はせず、死ねと言われれば自害するそんな女性しかないないのである。
故に、ルキアは即座に動く。
「ダン、弧光、部外者がいるわ捕まえるわよ」
弧光はルキアの目線を追うとイオンとレオンに行けと促す。
即座にイオンはスカートの中の二丁拳銃を抜くと、片方をルキアに投げる。
その間にダンは階段を駆け上がり、レオンは整備用のエレベーターの支柱をよじ登る。
周囲の変化に気付いたクリステルは、舌打ちしながら飛びかかろうとするレオンに遠慮なくバズーカをぶっ放す。
「これでも、喰らえですわ!!」
「ちょ、嘘でしょ!!」
エレベーターの支柱から飛びかかろうとしたレオンは、パーツ搬入用のクレーンにダイブする方向を変えると一気に飛び退く。
その間、イオンはクリステルの放ったバズーカの弾を拳銃で撃って僅かに機動をずらしながら爆発させ直撃を回避させる。
そして、ダンが階段を上り上がるタイミングでルキアは射角が取れないことなどお構いないとばかりに、跳弾を使ってクリステルを狙撃する。
クリステルは危機を察知して、即座に床に転がるとルキアの狙撃を回避し、アサルトライフルでダンを蜂の巣にしようとする。
そんなことを知らないダンは、階段を蹴って飛びかかろうと最後の階段を蹴ったその時である。
なぜか、ベリベリという音と共に蹴り上げた足の底に付いているはずの靴底が丸ごと引きちぎれた。
そして、ダンは階段を蹴るはずの慣性を維持したまま顔面からモロに階段の角に頭を打ち付けると、階段をそのまま転げ落ちた。
と、上がってくるはずのダンが来ないことなど想像もしなかったクリステルのアサルトライフルが火を噴くが、自身が呼んだ不幸により空振りに終わる。
「ダン、何やってるのよ!!」
ルキアはそういいながら、拳銃を発砲しながらダンの元に急ぐ、追い打ちをさせないために。
と、クリステルは一人では不利とグレネードを景気よく放り投げる。
「ちょっと、なに考えてんのよアンタ!!」
ルキアとイオンは転がるグレネードを拳銃で狙撃する。
もの凄いことを平然とするルキアだったが、それがまるで当たり前とばかりに出来ること自体に疑問も思っていなかった。
だが、一月前には100回やってまぐれでも1度も今と同じ事は出来なかったであろう。
今、ルキアの中には宙を舞うグレネードの動きが完全に把握できている上に、尋常成らざる集中力がこれを可能とさせていた。
そのことに気づいたのは、妙なことに敵であるクリステルだった。
不味いですわね、ここまでの手練れがいるとは思いませんでしたわ。
クリステルは正直焦っていた。
彼女のPFまであと数十歩と言ったところだ。
走ればすぐの距離だ。
だが、PFに搭乗した途端にPFは動くものではない。
スタンバイモードならともかく、新品まっさらなPFの場合初期設定やらなんやら動かせるようになるまで、しこたま時間がかかる。
正直PFに搭乗する自信はあるが、PFが起動するまでにPFから引きずり出されない自信はない。
するとクリステルには二つの選択肢が出てくる。
一か八かPFに搭乗するか、諦めて逃げる算段を付けるかの二者択一である。
もっとも、どっちを選択しても結果的に変わらないとクリステルは瞬時に悟ると、まだカバーの掛けられたPF:元クイーンのコクピットに滑り込む。
と、それを見計らったかのように基地内部に大きな振動が走る。
「あらあら、今度は何事?」
時間の問題とばかり、高みの見物を決め込んでいた弧光が基地司令室に問いかける。
「基地正面よりミサイル攻撃を受けています、閣下」
無機質な女性の声が荒げるわけでもなく、淡々と告げる。
「敵はPFかしら?基地の防衛システムは起動してないの?」
「敵対戦力はアンノウン、現在基地防衛システムはフル起動にて応戦中
ですが、攻撃激しく防衛機能25%低下、ご指示を」
PFでもGFでもなく、アンノウンとはね〜・・・
あの侵入者のお友達かしら?
何にせよ、基地防衛システムをものの数分で25%も低下させるのは大した物ね。
「ふふ、面白いじゃない
イオン、レオン聞こえて?
基地が攻撃を受けているわドゥームで出て頂戴
興味があるから生け捕りよ、いいわね?」
イオンとレオンはクリステルへの攻撃の手を緩め、一つ頷くとすぐに隣のGFハンガーに走り出す。
ルキアは相変わらず気絶しているダンに寄り添い看病している。
それを見た弧光は、仕方がないとばかりゆっくりと階段を上るとクリステルのいるコクピットに足を運ぶ・・・
第9話に続く
後書き
時間がね〜〜〜〜!!
本当はPF&キャラのイラストも描き上がっている予定だったが、1話上げるのでやっとになってしまった(号泣)
今後も、人気治療院に成りつつある我が仕事と睨めっこしながらゆったり話を書くことになるのだろうな〜と思います。
皆様、気長にお待ち下さい・・・
さて、今後の展開!!
ダンとルキアがまるで勝負にならなかったGFドゥームと戦うギーグとベロニカは果たしてどうなるのか?
不幸を呼ぶクリステルは弧光を退けられるのか?
そして、まだまだヘタレなダンはこの後どう成長するのか?
大胆に成ったルキアはどう暴走するのか?
などなど、たぶん予想外の展開になる予定です!!
次回は、バトル中心に書き進めるので早く書き上げられるといいな〜と思っています。
ではでは、感想をお持ちしながらも書き進めたいと思います!!