ヴァリム内乱編
〜〜〜動乱のヴァリム〜〜〜



 第7話 フォルセア・エヴァ症候群?






 魔王軍駐屯基地

「さて、あなた達用の新型機が届く前に新型機に見合う能力を身につけて貰おうかしらね」

「おお、まず何をしたらいい?」

 やる気満々のダンは拳を打ち鳴らし気合いを入れる。
 ルキアはそれを静かに見守る。

「フフ、頼もしいじゃない
 では、ダンあなたには高度な格闘術、特に中距離射撃が得意な相手との戦闘能力を上げて欲しいわ
 同時に最低限の射撃能力、超高速戦闘に対応できるだけの対G能力を身につけて貰うわ
 できるかしら?」

「やってやるさ、強くなるためなら労はおしまいぜ」

「OK、いい返事ね
 今日中に後悔させてあげるわ
 レオン、ダンを連れてひとっ走りしてきなさい
 その後で、足腰立たなくなるまで集団リンチね」

「アイアイ、サー
 じゃ、行こうかダン
 軽く100キロぐらい走るから、ストレッチちゃんとしてから走ろうね」

「おい、待てなんだ100キロって・・」

あら〜、もう弱音かしら?

「ちげえ、さっき言った能力と100キロ行軍が結びつかねぇ
 集団リンチはまあ、わからなくもないが・・」

 ・・・そこはいいんだ・・
 ダンらしいわねと、ルキアはあきれる。

「要するに、納得できれば理不尽な要求も呑むと言う事ね
 では概要を説明するわ、平たく言うと無駄な気合いのガス抜きかしら
 あなたの良さは恐れ知らずの猪突猛進、その熱血気質は嫌いじゃないし失って欲しくないのよ
 でも、私が求める熱血は力尽きそうな逆境の時に発揮できるものであって欲しいの
 体力の充実したときは指揮者の声を聞く冷静さを持ち、疲弊時には仲間を引っ張れるリーダーになって欲しいのよ
 それに足腰鍛えれば、対G能力も自然に上がるでしょ
 もちろん、対G能力用のトレーニングもして貰うけど、まずは体力ないと身が持たないわ
 さて、後は何を言って欲しいかしら?」

 ダンは仕方ねぇ〜と頷くと身体を捻ってストレッチしながら言う。

「とりあえずは、納得したよ
 だが、後悔も弱音も吐かねぇ
 そんなヒマはないからな」

 ダンは顎でレオンに付き合えと合図すると外に出て行った。

「ダンたら可愛いと思わないかしら、ねえルキアちゃん」

「チャン付けは止めてよ」

「フフ、ねんねにはちゃん付けで充分よ
 それよりも次はあなたのメニューを言い渡す前に見せたいものがあるから付いてらっしゃい」

 ?
 ルキアはいぶかしげながらも、弧光の後に続き歩いていく。








 

 3人が行き着いたのは独房の地下に隠されたPFハンガーだった。

「なんでこんなところにPFハンガーがあるのよ」

 ほこり臭く薄暗いハンガーには1機のPFがロックされていた。
 そのPFの足下に来た三人は、PFを見上げる。

「この機体を知っているかしら?」

「知らないわ、イリア系の新型?」

「そう、この機体はローレライ
 プロトタイプ・オードリーともいうわね」

「プロトタイプ・オードリー?
 神佐の機体になるはずだった機体なの?」

「ちょっと違うわ、ね
 ローレライは、ハーメルン・ヴォイス以外にも、ハーメルン・ウィスパー、ローレライ・システムなどオードリーに搭載されていない機能を搭載しているわ」

「後の二つがよくわからないのだけど、何
 この機体はオードリーよりも上位機種なの?」

「そうなるわね」

「そうなるって、じゃなんでオードリーの前に完成してないの
 いえ、それよりもどうしてこれがここに?」

「ローレライがオードリーの後に作られたのは以前の技術力では、すべてPFに乗せられなかったから、スペックダウンしたオードリーを神佐専用機としてロールアウトさせたのよ」

 横に並んだ弧光がそう言うと、弧光はルキアの方を振り返り言葉を続ける。

「いいこと、ルキアちゃん
 この機体は神佐用に2週間前にロールアウトしたばかりの機体よ
 それを私の独断で外装フレームをそっくりにして作った機体とすり替えたの
 つまり、ハーメルン・システムそのモノを搭載した機体を穏便に奪取させてもらったのよ」

「な、なんてことするのよ!!
 バレたら、いくらあなたでも・・・」

 弧光は手を振りながら落ち着けと促す。

「大丈夫、すり替えた機体は既に神佐が乗って出撃して撃破されたわ
 神佐諸共にね」

「な、・・・・何がどうなって、あなたは何をしたいの?」

 驚くのに疲れたルキアは、諸手を挙げて降参した。

「悪くない判断よ、ルキアちゃん
 重要なことはね、軍内部でもわかっていないハーメルン・システムのオリジナルがここにあるということ
 もっとも残念ながら、ハーメルン・システム自体はブラックボックス過ぎて、それ自体を解明することは出来なかったわ」

 弧光もお手上げよと肩をすくめる。

「でもね、ハーメルン・システムを起動させる方法はわかったの
 それはどういうことなのかしら?」

「私たちもハーメルン・システムを使えるって事でしょう?
 でも、たとえ使えてもそれが神佐の目に入ればタダじゃすまないわ
 結局、リスクだけを背負い込んでるだけのようだけど」

「そう、一見するとそうなのかもしれないわ、ね
 でも、前提条件が足りないわ」

「何が足りないというのよ」

「一つはハーメルン・システムがどんなものか誰も知らないということ・・・
 同じ事が出来てもそれがハーメルン・システムそのモノかどうか誰にも確認が取れないということ
 全く別の方法で同じ事をしてのけたと言っても、ほとんどのものは疑わないわ
 仮に神佐が見たとしても、彼女はどこにそれを言及するのかしら?
 軍上層部、ガルスキー財団?
 どちらも無意味よ、だって事実があっても証拠がないもの
 ま、機体の中にあるブラックボックスを調べられればやばいけど・・・
 そんなヘマはしないわ
 いざとなれば自爆してでも、隠蔽するもの」

 勝ち誇る弧光にルキアは大いにあきれながらため息をつく。

「まあ、そう言うわけだから死なないようにがんばってちょうだいねルキアちゃん」

「チョ、何で私ぃ〜!!」

「あなた用の新型機にブラックボックスごとハーメルン・システムを搭載予定なのよ
 ついでに言えば、私を含めこの基地にはハーメルン・システムの適合者は誰もいなかったの
 私も無理にがんばってみたけれど、5回ほど生死を彷徨ったわ」

「死ねばいいのに」

 やんなっちゃうわ〜と弧光が首をすくめる中、イオンはボソッと聞こえるように言う。

「フフ、かわいいこと言うじゃない
 なでなでしてあ・げ・る」

 そう言いながら弧光はイオンの頭を軽くはたく。

「変なことで怒らないでよ、気が散るわね」

「あら、怒っちゃないわよ、むかついたなら殺してるもの」

「ついて行けない価値観だわ
 それよりもねぇ、イオン
 一応〜、上官なんだからさ〜
 気持ちはわからんでもないけど・・」

 ルキアのいわんとすることに、弧光は「あら、軽い冗句じゃない」とまさに息抜きとばかり合いの手を入れる。

 イオンもルキアをかわいそうな目で見ながら、それに続く。

「私たちはべつにヴァリム軍人ではありませんから閣下を敬う必要など皆無です
 特に閣下からお給金が出ているわけでもなし・・
 ああ、衣食住に関しては面倒を見ていただいておりますが、GFパイロットとしての評価を考えればむしろ私たちの待遇は最低ですね」

「あらあら、もっとVIP扱いしてほしかったの?」

「えいえい、元メイドだけにもっとご奉仕に足る主人と、職場環境を期待しますわ
 便器に浸かって身体を洗うゴキブリや、立って寝るパイロットなど甚だメイドの仕事がなくて退屈です」


「そこはそれ、ルキアちゃんとダンにご奉仕しなさいな」

「許可なされるのですか?」

「ええ、そう言ったはずよ」

「そうでしたか、では遠慮しませんのでお覚悟のほどを、お嬢様」

 すがすがしい顔でイオンはルキアをそう呼んだ。

「いつぶりにそう呼ばれたか思い出せないけど、その呼び方やめて
 亡くなった父を思い出すから・・・」

「左様でしたか、では姫・・」

ル・キ・アでいいわ、それ以外は却下
 って、なんか随分話が逸れてるんですけど」

 もう、インターバルは良いの?という仕草で、弧光は話を切り出す。

「そうだったわね・・・
 では、本題に入りましょうか
 ハーメルン・システムはフォルセア・エヴァにしか使えないシステムなの
 でも、オードリーは複数機存在する
 予備の機体ではなく、フォルセア・エヴァという個体のために用意されている
 意味わかるかしら?」

「フォルセア・エヴァは複数人存在する・・・
 私も噂ぐらいは知っているわ
 軍部内で、複数の土地に同時に現れたなんて話も聞くしね
 でも、影武者が・・
 どういう事?」

 弧光は気づいたわねと、声を荒げて笑う。

「今はまだ、詳しく言えないけれどフォルセア・エヴァは複数人いるわ
 でもね、フォルセア・エヴァは作られたものでも、本来成るものでもないのよ

「どういうこと?」

「それは私が死んだら教えてあげる
 それを知るということは、ヴァリム軍、そしてヴァリムという国の根幹に関わることなのよ

 まだ、受け止められないでしょう、あなたには」

 ごくり、ルキアは喉に梅の種でも詰まったかのような息苦しさを感じる。

「アンタ一体何を知ってるのよ?」

「一つは地獄、もう一つはその地獄の成り立ち、もしくは何のためにその地獄があるのかということかしら?」

 ヴァリムは何かを成すために非人道的な事をしている。
 フォルセア・エヴァはその集大成?
 そして、それを知る弧光はそれに関係する何かを受けたと言うことなんだろうとルキアは思う。

 と、ふと疑問が浮かぶ。

「この話私もそうだけどイオンが聞いても平気なの、彼女軍人じゃないんでしょう?」

「平気ですよ、私はキサラギ研究所の出身ですから閣下の知っていることは何となく知っておりますし、それ以外にも危険な情報を沢山知っておりますわ
 あなたの知るところですと、双子の悪魔と言われる姉妹がどうして育ったかなどの詳細などを私達は知っています
 他にもグッドマンやブライスなどの試験体に付いても詳しく知っていますわ」

「良くそんな危険人物を野に放ったわね、キサラギ研究所は」

「その為の枷ですわ」

 イオンはそういい、首と手首の枷とチェーンを見せる。

「爆弾か何か付いてるの、それ?」

「ええ、以前は付いていましたよ
 このチョ−カーは盗聴器になっており、タブーに触れようとするのを感知して、爆発する仕組みになっていました
 とっくに解除して、これは思いっきり飾りですわね
 ああでも、私達は生まれつき強化人間以上のスペックがあるので純粋にパワーセーブ代わりに付けていますわ
 ちなみに、閣下は後天的強化人間です
 それ故、生まれつきパワーセーブが出来るので枷は必要ありません」

 パンパン
 弧光は手を叩くとイオンに下がれと促す。


「さて、本題に戻しましょうか
 ハーメルン・システムやローレライ・システムを使いこなせるように成って貰いたいの
 ぶっちゃけ、後天的にフォルセア・エヴァに成って貰うわ
 本当は何ともナンセンスなんだけど、あれらのシステムを使うために必要なのよね」


「なんか、何のためにフォルセア・エヴァになるのか分からなくなるわね
 私もぶっちゃけて聞くわ、私に一体何をさせたいのよ?」

「フォルセア・エヴァと呼ばれる者達は、人よりも脳内の知覚野が活発に活動してるの
 彼女たちは、ごく少数を除いて後天的にその能力を得ているわ
 そうでしょ、イオン」

「ええ、キサラギ研究所には後天的にフォルセア・エヴァになった女性が何人もいますわ
 正確には、今もフォルセア・エヴァになるよう調整を受けている者や、調整を完了したままコールドスリープで待機しているものもいますわ」

「何をされてるのかは後でわかるとして、今聞かないけど・・
 ごく少数ってのは何、生まれつきフォルセア・エヴァってのはクローンか何かなの?」

「フォルセア・エヴァなんか、クローンで量産してどうするのよ
 後天的に作れるのに

 そもそもからして前提が違うのよ、前提がね
 ま、それはひ・み・つ・よ」

「なにか、やなかんじねぇ〜」

「そうね、同感だわ
 でも、強くなるためや、色々なことのためにね
 覚悟はあるかしら?」

 弧光の言葉にルキアは胸を張って応える。

「あるに決まってるじゃない
 私はもう後に引けない、可能性があるのならどんなものにもしがみつかなきゃならないのよ
 それがたとえ命がけの行為だとしてもよ」


 ルキアはかすかに涙ぐんでいる。

「そうね、あなたもっと悲観的になっていい立場だものね
 なら、話しましょう
 これから行うことがどういう事かを・・」

 弧光はイオンに顎で促す。


「はい、閣下
 このカプセルの中には、あるレトロウイルスが入っています
 これを接種すると、ウイルスが脳に感染しホルモンなどの分泌が変化します
 また、遺伝情報が変異・破壊されます
 すると、生存本能が活性化し脳内部の活動が活発化します
 目に見えないものを見ることが出来るようになったり、知覚できないものを知覚できるようになったりします
 それがあるレベルに達したものを私たちはフォルセア・エヴァと呼んでいます」

「・・・命がけ?」

「お〜いぇ〜す」

 突然の死刑宣告もどきに戦慄するルキアに対し、弧光はなぜかノリノリで答える。

 と、イオンはまだ話の途中とばかり冷静に説明を続ける。

「正確には死にはしません
 失敗すると廃人になるくらいです」

「は、はい・・じん・・」

「もしくは、変態ですかね
 閣下みたいな感じになれるかと」

「い、いっそ殺してぇ〜〜〜」

 イオンの容赦ない追撃にルキアはめげて、床にのの字を書き始めた。

「ちょっと!!、失礼ね〜
 ま、たしかに私は失敗したケースだけど・・
 それは私が男だったからよ、ねぇイオン」

「そうですね、ルキアさん男女の違いはなんだと思いますか?」

 ?

「生殖器の違い」

「そうですね、身体的特徴という意味では間違いではありませんね
 ですが、性転換などでそのあたりは後天的に変化させる事が出来ます
 変えようのない男女の違いはDNAです
 男性はxy、女性はxxこの差が男女を分ける差なのです」

「意味わかんないんだけど?」

「つまり、レトロウイルスに感染すると遺伝子が破壊され男性はxy染色体のうち男性の象徴であるy遺伝子が破壊され、男でも女でもなくなります
 ちなみに閣下は遺伝子的に男でも女でもありません
 y遺伝子には、妊娠した赤ん坊に血液を送る胎盤形成のデータが組み込まれています
 そのy遺伝子を失った事で閣下は子供を作れなくなりました
 ちなみに、女性の場合2重螺旋遺伝子が同一であるのでどこかが壊れても女性でなくなったりする事はありません
 また、閣下も遺伝的には男ではありませんが、身体的な機能や特徴に変化はありません
 見えないところで、人間やめちゃってるわけです
 全く、救えないですね」


 イオンはやれやれとルキアに語る。

「私がこの話をルキアちゃんだけにして、ダンに話さなかった理由を察してくれるかしら?」

「チカラを求めてダンが無茶しないように?
 じゃないわね・・・
 いや、だといいわね・・かな?」

「まあ、そんな所ね」

「とりあえず、遺伝情報が壊れてもコピーがあるので肉体的にも、遺伝的にも貴方には問題ないわ
 もっとも、一時的に遺伝情報が書き換えられる事で覚醒が促されるわ
 望んだ能力を必ずしも覚醒するとは限らないけどね」

「ま、取り返しのないリスクが起きないであろう確率が少ないのはわかったわ
 さっさとその薬をよこしなさいよ、イオン」

「あなたの思い切りの良さには感服です、どうぞ」

 イオンから薬を受け取ったルキアだが、しばし逡巡する。

「女は度胸よ、ルキアちゃん」
「わかってるわよ!!」

 ルキアはカプセルを一飲みする。


 ・・・・・
 ・・・・
 ・・・
 ・・
 ・

「いつ効果が現れるのこの薬?」

「遺伝子を破壊するといったって、1個や1000個壊れたってどうって事無いわよ
 普通の人間だって紫外線によってずいぶん壊れてるんだからね」

「個人差はありますが、およそ1週間で何らかしらの変化が訪れます
 1ヶ月たっても変化が現れないものは別に特殊な才能があるか、覚醒する才能が全くないかのどちらかです」

「私は普通に才能を開花させたかったわ
 で、その間どうするの?」

「筋トレといいたいところだけど、体調管理を徹底したいから戦術のお勉強と、そうねシュミレーションで射撃・・・、狙撃でも特訓しなさい
 あなた用の機体には、大口径だけど超超距離狙撃用の兵器を用意しているわ
 今のうちに慣れておいて、それは私たちの切り札になるから」

 頼んだわよ、と弧光はルキアのお尻をなでるととっとと逃げた。

「蹴りはどうしました?」

「いや、小さすぎてロックできなかった・・
 というか、気配まで消されるとあまりの存在感のなさに触られた事にもすぐには気づかなかったわ」

「まず、閣下を捕らえられるように努力しましょうか」

「そ、そうね」

「では、一度戻りましょう
 ここは封印しておきますので、パイロットスーツに着替えておいてください」

「ええ、わかったわ」








 

 その頃ダン

「だ〜〜〜〜、後何キロだレオン」

 既にバテバテのダンが、息も絶え絶え叫ぶ。

「ん〜っと、後60キロぐらい?
 って、まだ3時間しか走ってないよ」

 ふざけんな・・・

 よく考えれば100キロ、フルマラソン2回半というのは尋常ではない距離だ。
 いくらパイロットとして鍛えてあるとはいえ、持久力の限界がある。
 対G訓練などと違い、こういった地味な訓練は達成感が得がたいがためにシンドイのである。

「ま〜、脱水で倒れられてもあれだし給水休憩
 いや、インターバルでもしようか、どう?」

「ああ、そうさせてもらうぜ」

「了解、お〜いそこの人たち水持って集まって〜〜〜」

「ああ、何で大勢集めんだ?」
「いや、スケジュール詰まってるから給水しながらリンチでもしようかと・・」

「鬼かてめえは!!」

「だってほら、閣下が言ってたじゃない
 今日中に後悔させてやるって・・
 ああ、後へこたれてる暇はないぞ
 終わるかどうかも定かじゃないけど、今夜あたり閣下が部屋に忍び込んでくるかもしれないから、眠れない夜に備えておいてね」

「だぁ〜〜〜、どうしろってんだよ!!」

 ダンの絶叫がこだます中、20人近くの男がコップや水筒片手に集まった。

「姉さん、お持ちしました」

 そのうちの一人がどうぞと水を差し出す。

「うん、ありがとう」

 レオンは満面の笑みでコップの水を飲み干す。

 と、次のコップがレオンに向けて差し出されるが、それをレオンは手で制止恨めしそうにレオンを見るダンを指さす。

「以前から言っていた閣下の新しいおもちゃ・・・・
 兼、この部隊の新戦力のダン・ロンシュタットよ」

「「「おおお〜〜、メシア(救世主)!!!」」」

「メシア〜?!」

 いきなり胴上げでも始められそうな乗りにダンは1歩後ずさる。

「ど〜ど〜、皆の衆」

 レオンはダンににじり寄る男達を大人しくさせるという。

「アンタは閣下の本命でしょ
 ここに居る男達はね、私達に故郷を滅ぼされた挙げ句占領された植民地の人間なの
 ま、それはどうでも良いんだけどね」

「・・・、よくわからんがヴァリム人を恨んでいないというか、歓迎されてるみたいだからそうだろうよ
 で?」

「まあ、ヴァリム人を恨んでるかも知れないけど、そんなのはここに居る人にとっては二の次なのよ
 なんせ、さっきダンもすれ違ったみたいに閣下はこの基地の連れてきた男を気まぐれに自室に埒って食い散らかしてるのよ」

「あの野郎、マジか・・・」

「大マジよ、もうどうしょうもなく救いようもない程ね
 で、人間の尊厳を汚しまくってる閣下に対して、ここに居る男達は怒りと憎悪を燃やしてるんだけど、あのなりでも強化人間何で全く歯が立たないわよ
 もう、捕食されるだけの家畜状態ね
 なんだけど、今は同じ家畜でも優先順位が生まれたの」

「・・・、想像だに恐ろしいが、俺が一番ヤバイって話か・・・・・」

「ピンポン、ピンポン、ピンポ〜〜ン」

「ろ、ろくでもね〜〜」

「まあ、けつを締めて耐えろ?」

「できるか〜〜〜!!」

「え、挑戦したことあるの!!」

「あるか〜〜〜〜!!」

 絶叫するダンを見て、眼が血走って恐いな〜〜とレオンは思う。

「まあまあ、そのうち試す機会があるからガンバ!!」

「あ、あってたまるか〜〜〜!!!!」

「オーケー、オーケー
 なら、リンチにあって死に体になりなさい
 閣下は嫌がる相手を無理矢理手込めにするのが大好きだから、マグロになったアンタは襲われないわよ
 もちろん、意気消沈の閣下は他のどうでも良いのを襲う気力はないわ
 と言うわけで、殺っちゃう寸前までボコっちゃえ!!」

「「「おおおおーーーー!!!!」」」

「おおお〜〜、じゃねぇ〜〜」



 チャラララ〜〜〜、ズチャ、ズチャ、ズチャ・・

 魔王の餌A〜Zが現れた!!

 魔王の餌Aは痛恨の一撃を放った!!
 ズバババ、バン!!
 ダンは274ポイントのダメージを受けた!!

 魔王の餌Bは痛恨の一撃を放った。
 ズバババ、バン!!
 ダンは184ポイントのダメージを受けた。

 魔王の餌Bはダンを倒した。



「無茶いうな・・」

「体力ないな〜、いいよ追撃しちゃって
 ここには、敗北を許される人間はいないって事を身体で教えてあげて
 やばくなるなら私が止めるから」

 魔王の餌達は、顔を見合わせるとうなずきダンになおも痛恨の一撃を入れ続ける。
 ダンは必死に防御したり、カウンターを狙うも、死角から角材やロープのムチ攻撃になすすべもなくボコボコにされた。

「アレレ〜〜、もうギブアップ?」

 腫れ上がった瞼のせいで、声を掛けるレオンの姿すら見えないダンは潰れた喉で叫ぶが、口から漏れたのは血だけだった。

「姉さん、これ以上はもう」

「そうだね、流石にこれ以上はまずいか〜
 じゃ、ダンを氷水に入れておいて
 後、塩と一味唐辛子も忘れずにね」


「し、死にますぜ」

「死んだらそこまでだったってことよ
 世の中そんなに甘くないわ
 あんた達がどんな思いで生きてるか、私知ってるよ
 だから、閣下が特別扱いしても私は特別扱いしない
 いじめ倒してなお、闘志を燃やして立ち上がるなら良し
 認めようじゃない、閣下の片腕になることを・・」


 ちゃらんぽらんのレオンだが、こだわりもある。
 それは存在意義だ。

 何のために、どこにいて、何をするのか?
 

 ここに居る者達は、弧光に対しての怒りと復讐のためにいる。
 故郷を、家族を奪われた復讐、そして自身の尊厳を奪われたもの・・・
 怒りは全く尽きない。

 普通は、絶望に自我崩壊しそうなものだが、それで楽になる程ここは生やさしい場所ではない。
 だから、彼らは怒りをその胸に抱くことを強要される。


 レオンは彼らの現状を良く認識している。
 だからこそ、レオンはダンを試すのだ。

 そして、ルキア、ダンの本当に命を賭けた日々は幕を開けるのだった。








第8話に続く




 



 後書き
 とりあえず、ルキアのパワーアップ大作戦とばかりにこれまたヤラレ役のフォルセア・エヴァと同格に到るチャレンジに挑戦して貰いました〜〜
 もちろん、ハーメルン・システムに頼るキャラには成りませんよ〜

 そしてダン、今回はスペースが足りなかったので書けませんでしたが、次回は懐かしくも強烈に暑苦しい先生をお招きしてダンはよりボコボコされつつ、戦い方というものを学びます。

 というわけで、次回をお楽しみに!!

 


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