第6話 闘争への誘い
弧光VSダン・ルキア
第3戦
「あまり代わり映えしないわね〜」
弧光はシュミレーターの画面に映るダンとルキアの機体を見て言う。
PF自体は今まで通り変更はない。
根本的にPFのフレーム交換や、内部パーツの交換などは、パイロットの領分ではない。
口を出すパイロットもいるし、ダンやルキアの様にカスタムされた機体に乗る物もいるが、基本的に自分でオーダーを出してフレームやパーツを交換しているのではない。
彼らはこうして欲しい(パワー重視、加速重視など)というオーダーを整備士に渡し、整備士がパーツを選び機体を組み上げていく。
基本的にPFは頑丈な精密機械であり、機体のバランスや、操作系のOS制作など、ただパーツを寄せ集め組み上げればいいと言うものではない。
本来は何人もの専門スタッフがいなければ、とてもではないがまともに動くPFなど組み上がらない。
故に、PFが組めるパイロットなどほぼ皆無と言ってよい。
希にジャンクPFを寄せ集めて機体を組み上げるジャンク屋や、テロリストがいるが彼らの場合そのほとんどがデフォルト機体よりも性能が落ちたり、極端な癖があったりとまともに使えるような物ではないのだ。
もちろん、極端にPFに精通した者がいる場合は勿論デフォルト機体のそれを凌駕するが、それは相当レアなケースである。
そして、機体変更する能力のない二人は武装換装を施しやって来た。
ダンはVシールドとカイザーナックル、ラグーンブースト、ルキアはレーザーマシンガン、ヴァリアブルウェーブ、ヘルファイヤー、ファーフレアに換装してきた。
ダンは高加速型、ルキアは火力重視というか、サポート重視という感じであった。
たしかに、ヘルファイヤーの直撃を受けてはカスタムGFと言えども洒落にならない。
大破こそしなくとも、致命的なダメージになりかねない。
ただ、内部パーツの変更がないのでルキアのヘルファイヤーは発射不能のブラフであった。
そして、それは弧光にもモロバレだった。
「ずいぶん、勇敢な武装ね〜」
もっとも、勇敢と無謀をはき違えているけど・・・、ね。
「ご託はいい、いくぜ!!」
ダンは速攻で特効を始める。
なぜか、ルキアもダンの後ろにぴったりついてくる。
対する弧光は、ドゥームのサマーソウルキックで2機ともなぎ払おうとする。
「やっぱり、そうくるわよね」
ルキアは看破入れずにファーフレアを放ち、ダン諸共自機を吹き飛ばす。
フレアは衝撃重視で自機はほとんどダメージを受けない。
この運用法は、強制回避である。
ダンとルキアは、機体を吹き飛ばしドゥームのサマーソルトを辛くも回避する。
そして、サマーソルトを不発して思いっきり背後を曝したドゥームに向かいルキアはヘルファイヤーを外すと思いっきり投げつける。
「ダン!!」
「おおさっ!!」
ダンはVシールドに内蔵されたガトリングガンでヘルファイヤーを打ちまくる。
射撃が苦手な上、ドゥームのジャミングでWCSを手動にせざる負えなかったがそれでもダンはヘルファイヤーを破壊した。
カッ!!
次の瞬間、世界は瞬時にホワイトアウトした。
轟音も何もかもを吹き飛ばす衝撃に、Vシールドを構えたダンだったがVシールドはあっと言う間に砕け散ってしまった。
次の瞬間、機体そのものも消し飛ぶか否かというところでダンの機体を引っ張って飛ぶルキアがヘルファイヤーの爆風範囲を突破し事なきを得た。
「ダンの射撃能力を計算に入れた割に多少喰らったわね、生きてる?」
「エライ言われ様だな、まあ生きてるからいいけどな」
虎の子の直撃に、しばし安堵する二人には余裕すら伺えるが、インターバルは一瞬だ。
なにせ、爆風は一瞬で全てを薙ぎ払った。
レーダーに映らないドゥームは目視するしかないので、次の瞬間半壊したドゥームに間髪入れずに追撃を掛けねばならないはずだった。
だが、二人の目にはあり得ないものが映った。
「馬鹿な!!」
「い、いくらなんでも・・ありなえい!!」
二人は見た。
サマーソルの動きで今まさに着地しようとする巨体の様を・・・
二人はバリアとか張っても、無傷でサマーソルキックのモーションをヘルファイヤーの爆発無視して続けるなど絶対にあり得ないと、そこまでは思考した。
だが、二の句が出なかった。
驚愕に対し、拙い想像力が目の前の光景の真実を想像させなかった。
と、二人の心の空白に弧光が言葉囁く。
「流石の私でも、これをリアルでやられたらおののくわね〜」
ダンは一瞬で我に返るが、レーダーに索敵はなく、声の発信源すら特定できない。
ただ、目の前の光景からは目を反らす。
ルキアも、我に返ると飛翔する。
ダン同様、弧光の居場所がわからなかったが高い場所から目視で索敵しようとしての判断だった。
が、遅すぎた。
「やろうとしてくることがわかっていれば、対処は簡単だと思わないかしら?」
ルキアは飛翔した瞬間、頭上からの声を聞きファーフレアを連打!!
弧光は二人の頭上から、ジャイアント・カイザーナックルを放った。
ダンも弧光の声に反応するも、巨大なカイザーナックルを避けるには到らない。
「く、・・」
ダンはあっさり右半身を叩きつぶされ爆散!!
ルキアは直撃こそ避けるものの、吹き飛んだ着地点に向けてばらまかれたクラスターミサイルで木っ端微塵に吹き飛ばされた。
戦闘時間1分06秒 見事なまでの瞬殺である。
シュミレータから出てきた二人
「くそ、なんなんだよあれは・・」
・・・・
ブーたれるダンと、諦めたルキアに弧光は楽しそうに言う。
かるタイムロスは無くしようがないから、その欠点を埋める方法の一つよ
まあ、使い方次第でこんな事も出来るといった感じかしらね〜
さて、まだ何か質問があるかしら?」
・・・・調子くれやがって・・・
ダンは何か言いたげだったが、それを飲み込むと素っ気なくイヤとだけ応える。
ルキアも首を左右に振ると、軽くため息をついた。
「まあ、そう落ち込むことはありませんよ
閣下はこう見えてもドゥーム1機で、寄せ集めとはいえPF3個大体を殲滅するぐらい強いのですから、たった2機ではそもそも戦闘にすらなりませんわ」
「そ〜そ〜、武装のほとんどを封印した状態でも・・・」
「な!!」
「そんな・・」
イオンの慰めに落ち込む二人に、レオンが追撃を掛けたのに二人は即座に反応する。
「ふふ、確かに射撃兵器は敢えて使わなかったけれど、手を抜いたわけではなくてよ
私は殴り合いが好きなの、そうダンあなたの戦闘スタイルが私の理想型
だから、蠅を払うときぐらいしか射撃兵器は使わないわ
主力兵器が気になるのなら、後でイオンとレオンの乗るドゥームと戦ってみればいいわ
もっとも、PFの火力とは桁が違うから戦闘にならないでしょうけどね」
ダンは小馬鹿にされることに怒りを覚えるも、ルキアが爆発寸前のダンの拳を押さえ僅かに残った理性に訴えかける。
「さて、ドリームチーム発足の祝賀会をしましょう
お料理が冷めてしまう前にね
では改めて、ようこそ・・・・
そういえば、東方戦線戦団は解任されたのだったわね
何かいい名前のリクエストはないかしら?」
「ガチホモと不愉快な仲間達とかは!!」
「ペケ、捻りがないわ
ついでに不愉快なのは、あんた達二人だけよ
失礼しちゃうわね」
お前の方が失礼だよとイオンは思いながら、それではと口を開く。
「悪魔の率いる軍団、故に魔王軍では?」
・・・めっちゃわるもんだ!!
一体何なのこのセンスのなさは・・・
ダンとルキアが呆れながら凹んでいると、弧光は膝を打つ。
「いいわね、それで行きましょう
では改めて、ようこそ魔王軍へ
明日からは冷めない悪夢に悩まされるだろうけど、めげないでね
立派な悪魔に育て上げてあげるから」
仮面に遮られ弧光の表情はわからないが、だが確実に凄惨な笑顔を見せているに違いないと、ダンとルキアは確信した。
そして、狂乱の宴が始まるのだった。
翌日
ダンとルキアは弧光率いる部隊が駐屯している基地に出頭した。
「何というか、壮観だな」
ダンが見上げる先にはGF:ガルバ、セノン、ドゥーム、ほかにも見たことのない4つ足の機種などが鎮座していた。
GFは60機程度配備されていたが、逆にPFは10機程度と数が少なかった。
「PFは主力というよりか、小回りがきく偵察機という感じかしらね
・・・私たちもGFのパイロットになるのかしら?」
「さあな、だが俺らにGF渡されてもまともに使いこなせるようになるかわかったもんじゃないぞ」
「まったくね」
PFとGFはロボットという概念では同じものだが、身長の差や、機体の操縦感の差が激しくPFを乗用車とするなら、GFは戦車と同じ走行車としても全く別物と認識されている。
今でこそOSの進化により、PFパイロットならば機体を操縦することは出来るが、慣性に振り回されたり、大きさや動きの大雑把さに振り回されただ歩行するだけも困難な程だった。
故に、GFは専用のパイロットが適性検査の後選ばれるのが常だった。
それ故、GFのパイロットは数が少なく、自由に乗りこなせるパイロットなどは一流パイロットを捜すぐらいレアな存在だったりするのである。
また、GFは基本動作系統と、武装火器系統の副座式なので、相性のいいパイロットのチームとなると、エースを発掘するのと労力的に変わらなかった。
逆に、弧光のように一人でGFを自在に操れるパイロットとなると宝くじで一等を当てるようなものだし、ダン&ルキアに勝利できるパイロット適性を持つ弧光は存在そのものが天文学的な確率と言っても過言ではなかった。
そういう意味で、適性がなかったダンやルキアでは逆立ちしても並のGFパイロットとまともに張り合うのも困難であると二人は言ってのけた。
と、半ば自分達の存在について悩む二人の前に鎖の音を響かせた二人組がやって来た。
「ようこそ、魔王軍駐屯基地へ
まずはお二人のお部屋に案内いたします」
イオンが頭を下げて二人を促す。
「魔王軍って、その場限りの冗談じゃなかったの?」
呆れるルキアにレオンは馬鹿笑いしながら言う。
「なんか、上に報告したらOK出ちゃったから正式採用されちゃったんだ
ヴァリムもバカだよね〜
ま、閣下は嫌われ者だから嫌みで受理されちゃったのかも知れないけどね〜〜〜」
ゲラゲラ大笑いするレオンは相変わらず胸元全開で、ジャンパー羽織っただけである。
笑う度に胸が上下に揺れるのをダンが視線をそらせながらもチラチラと追う。
ルキアはどっちに切れるか正直迷った据え、ダンの鳩尾に一撃入れる事にした。
ゴッ!!
「がっ、なにしやがるルキア〜!!」
「自分の胸に手を当てて聞いてみろ、スケベ!!」
痛いところを突かれたダンは思わず叫ぶ。
「健全な男子の反応だ、文句があるのならせめて揺れるぐらいの胸っ・・」
ガシュッ!!
うずくまるダンの頭を両手で押さえたルキアは、それだけは言っちゃなんね〜と言う顔で、顎目掛けて弧を描く軌道で膝で蹴り上げた。
完全に入った膝蹴りにダンは大の字にひっくり返り泡を吹いて失神した。
「天誅ですわね、お疲れ様ですルキアさん
とりあえず、レオンはダンさんを担いでお部屋に案内してあげて
私はルキアさんをお部屋に案内しますから」
「オッケ〜!!」
レオンはダンの脚をむんずと掴むと、バビュ〜ンと効果音でもつけながら走り去った。
幸いだったのか?レオンのダッシュ力がもの凄く、ダンの頭が地面を擦ることがなかったのは救いだった。
と、レオンの言動とダンの身を案じるルキアにイオンは行きましょうかと促す。
部屋に通されたルキア
「なに、これ?」
なんかの冗談?と言いたくなるような豪華な内装の施された部屋がそこにあった。
室内は10人入っても狭さを微塵も感じない広さがあり、シアタールーム、ダイニングルームに、バルコニーまで着いていた。
どこの新婚貴族にあてがわれた家だここはと言う作りに、ソファー、ライティングデスク、グランドピアノ、天蓋付きのキングサイズのベッドの横にはジャグジー付きのバスタブまで見えた。
自分の体重で沈む絨毯を踏みしめながらイオンは言う。
「こちらがルキアさんのゲストルームです
あ、ちなみに私と相部です
と言っても、そこの扉から先が私の部屋に繋がっていますのでプライベートは確保されています
何かあれば、そこのベルか、インターホンでお呼びください
元メイドの意地に掛けて快適な生活を保障して御覧に入れますわ」
イオンは会心の笑みを讃える。
・・・・・眩しすぎる笑顔が恐いわ(滝汗)
なに、私達のために元メイドを側近に付けたの・・まさか、ね。
ルキアは自分の想像にまさかと苦笑して、イオンに真面目に訊ねる。
「なにか、もの凄いことになっているけどこれは何の冗談?
私達は別に将官でもなければ、ただの尉官なのよ
この待遇はあまりにおかしいでしょう?」
「ご意見ごもっとも、ですがこのぐらいの無茶が利くぐらい閣下は力があると言うことです
また、閣下のお二人へのお気遣いと思い素直にお納め下さい
色々な意味で、この部屋はお二人への配慮の結果なのですから」
「何、どういう意味?」
質の悪い嫌がらせ?と思っていたルキアもイオンの言葉に顔色を変える。
「今、お二人の立場はヴァリム軍内部でも非常に微妙なものなのです
サーカム家の一見然り、北方大将の紫夢羅家との内通疑惑など、ヴァリム軍からはお二人を叩く理由、いえ難癖を付ける理由が多う御座います
それをさせないためのVIP待遇です
閣下は嫌われ者ですが、神佐ともただならぬ仲、敵は多いですがおいそれと彼や彼の身内に手は出せないと言うのが暗黙の了解で御座います
それは、仕える私達や、配下の兵士達、そして今回側近に迎えられたあなた方二人に対しても同じ事が言えます
それでも外堀から切り崩そうとするものに、見せつけるための処置とご理解下さい」
ルキアは家族を弧光に虐殺された。
怒りも、憎悪も、嫌悪も何一つ揺るぎもしない。
だが、同時に自分を救ったのも彼だという事実に感謝こそしないが、信用の置ける存在だという認識だけはあった。
盾とも言える。
この状況から何かを成すとすれば、確かに魔王軍で功績を挙げヴァリム軍に小言を言わせない地位に上り詰める必要があった。
と言うか、それ以外の選択肢がなかった。
なぜなら、ルキアは確信に近い予感として紫夢羅・武信がヴァリム軍と事を構えると思っているからだ。
そうなれば1000機単位でPFを都合した、ロンシュタット家、サーカム家は謀反の協力者になってしまう。
そこから先は想像するだに恐ろしいとしか言えない。
「はぁ〜、私達には選択の余地も何もないというわけね」
「そのようです、ですが・・
絶望するには贅沢すぎる環境かと思われます
部屋も、お二人専用の新型機体に関しても・・ね」
「新型機体ねぇ〜、まさかGFじゃないでしょうね?」
「ええ、GF適性のないお二人にGFを預ける程閣下は物好きではありません
そもそも、小回りの利かないGFは掃討戦や制圧戦は得意でも、それ以外の作戦では使い勝手が悪いですから・・・
ハッキリ言って、折角有能なパイロットがいるのにまともに運用できない状況など作りはしませんわ
もっとも、新型はまだ閣下の機体を含めロールアウトしておりません
完成されるまではシュミレーターか、戦果を上げるためにあちこちに転戦することになると思います」
少し安心していいのかしら?ルキアは渋い顔をして笑う。
と、なにやら叫び声が聞こえた。
「今、悲鳴か何か聞こえなかった?」
「ええ、たしかに・・
ダンさんの叫び声のようでしたけど、あ!!」
「何、ダンがどうしたの?」
「たぶん、閣下かレオンに襲われてるのかと思いまして・・」
「ちょっ!!
なによそれ、っねえダンの部屋はどっち」
ルキアは自室で迷子になりながらイオンに叫ぶ、かなり必死に。
イオンは頷くとルキアをすくい上げるとお姫様抱っこで、廊下を飛ぶように駆け抜ける。
ルキアが部屋に案内されている頃
「お〜い、そろそろおきなよ〜〜〜
・・・・返事がない、ただの屍のようだ」
ピキュ〜〜〜ン!!
レオンはニンマリとするとダンを剥き始めた。
ふんふんふ〜〜ん
レオンは鼻歌歌いながらゴシゴシと自分の身体を洗うと、泡だらけの身体でダンの身体をまさぐり始めた。
「は〜や〜く起きないと、た〜べ〜ちゃうぞ〜〜〜
お、おっきした〜〜〜」
レオンはニマ〜っと顔を緩めると、豊満な胸でダンの下半身に迫る。
と、ようやく気絶したダンが目をさます。
「あ、どこ・・どわぁぁぁーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
ダンは、泡風呂に自分が入っていることよりも素っ裸のレオンが迫ってきてるのに驚きバスタブから立ち上がる。
「ちょ、折角起きたんだから・・」
逃げようとするダンの下半身を抱きついて押さえつける。
と、二人のバランスが大きく崩れダンの上半身がバスタブから落下、思いっきり頭を浴室の床に打ち付ける。
ゴン!!
「ああっ・・・、お〜い生きてるか〜
・・・・返事がない、ただの屍のようだ・・・
やばっ、ホントに死んでないわよね」
レオンはダンを抱きかかえると、ベッドに寝かせ心臓が動いているか胸に耳を当てる。
どくん、とくん、とくん・・
「ほ、生きてた〜〜」
レオンはほっとしてダンの胸の上にべた〜っと力尽きたところだった。
「レオン!!」
「きゃぁ!!
あ、あなた達何してるのよ!!」
イオンは何となく何があったか察したが、ルキアは顎をガタガタさせながら叫ぶ。
外から入ってきた二人から見れば泡こそ付いているが、ベットの上で激しくやりあって汗だくで力尽きた直後のようにも見える。
「あ〜、叫びたいのはごもっとも
ご想像通りのことをしようとしたことも否定しません
でも、まだ何もないから」
「まだって何、まだって!!」
半狂乱のルキアが掴みかかろうとするが、レオンはルキアの伸ばした手を引くとパッと立ち位置を入れ替え、後ろの医療器具を取りに行く。
「ちょっと手違いがあって、思いっきり頭ぶつけちゃってるんで先に手当てさせて
ないと思うけど、脳挫傷とかあったら洒落になんないからさ」
「の、脳挫傷って一体何したのよ」
「伸びてたんで身体で洗ってあげてたら、ビックリして浴室で転んじゃいました」
「さっきの悲鳴はそれね、まったく大概になさいレオン」
「は〜い」
そう言いながらレオンは全く反省の色を伺わせない。
ルキアは相変わらず切れていたが、ハンディMRIで検査する邪魔をするわけにもいかず二人の成り行きを見守った。
数分後、たんこぶが出来ているがダンが問題ないことがわかると、怒りをためていたルキアがそれを大爆発させると、レオンに大急ぎで服を着せ説経を始めた。
イオンは、それを横目にしつつ手際よくダンの身体をタオルで拭き取ると、制服に着替えさせそのままベットに寝かせた。
その後、弧光に呼び出される4人
「ねえ、どこに向かってるの?」
建物から出た4人は、GFハンガーのある建物の更に裏手にある地下に降りようとしていた。
そこはGFハンガーのせいで日の光も当たらずジメジメしている上、見渡し限り光取りの天窓や通風口も見あたらない地下倉庫?と言う場所だった。
「閣下の自室ですよ」
「そ、拷問部屋兼、牢獄とも言うけどね」
「は?」
「なんだそりゃ?」
「まあ、行けばわかりますよ」
「そうそう、あ・・何かの覚悟だけは決めといてね
一応平気だと思うけど、ダンさんは特に、ね」
レオンはクスクス笑いながら、ダンの周りを小走りで周りながらそういう。
「何が危険なのかわからないけど〜、ダンにとってはあんたの方が危険極まりないわよ」
ルキアはそういいながらレオンの耳を掴むと容赦なく引っ張る。
「いた、ちょ、痛いってば〜〜」
「あ〜、どうでも良いけどダンさんとか気持ち悪いからダンでいいよ
ってか、なんで俺だけなんだ?
どっちかって言えばルキアの方がやばそうな感じだぞ?」
と、話混んでいると通路の奥から甲高い金属音が連続で響く。
そして、叫び声が続く。
「絶対だ、絶対殺してやる!!
殺してやるからな!!!!」
叫びに反応してダンとルキアが、無意識にファイティングポーズを取る。
怒声の迫力も、言葉の内容どうり強烈な殺気がこもっていたからだ。
と、叫び声を上げた主であろう男が独房から飛び出してきた。
右手から出血し、左手にはハンマーを持つ時点で充分異様な出で立ちだったが、それに拍車を掛けるように、その男は真っ裸だった。
そのあまりの奇天烈ぶりに、思考が停止した二人はその男を素通りさせてしまう。
と、去り際男が囁く。
「速く逃げろ」
「なに?」
男はダンにかすれた声でそう言うと地下室を出て行った。
「今の、何?」
「いや、それより捕まえなくて良かったのか?」
「ああ、平気です
この基地で一般作業の従事をしている可哀想なスタッフの一人ですから、彼は」
「可哀想なスタッフ?」
「なんか、ただごとではない感じだったぞ、おい!!
それに、逃げろとか囁かれたし・・」
イオンはヤレヤレと首を振り、レオンはうんざり顔でダンの首根っこを掴むと白状する。
「この基地にいる男性一般スタッフはね、全部閣下のダ〜リンなわけ
前も言ったけど閣下はガチホモでお盛んなの、今のも裸だったことだし毒牙にかかりながらも死ぬ気で逃げてきたんだと思うよ
まあ、あの様子だとあと4〜5回で廃人になっちゃうか、発狂するだろうけどね」
ヤレヤレと語るレオンに対し、ダンは意識が失せる音が聞こえるようだった。
そう、今までの会話の全てが繋がった瞬間だった。
「ダン、気絶すると味見されちゃいますよ」
!!
脱力し始めるダンはイオンの一言で一気に覚醒する。
「おい、レオン離せ!!」
「離したら逃げるでしょ、だからダ〜メ」
「俺を生け贄にでもするつもりか、おい!!」
ダンは必死にもがくが、レオンに猫掴みされたまま足が地に着いていないダンにはどうしようもない。
「ル、ルキア助けてくれ!!」
「ちょっと〜、人の部屋の前で騒がないで欲しいわね〜」
「「でた〜〜〜〜」」
「え、なにが?」
ベルトを締めながら出てきた弧光に二人は叫ぶが、イオンとレオンにがっちり捕縛された二人にはどうすることも出来なかった。
狂喜乱舞する二人を軽く落としてから4人は弧光の部屋に入った。
ゲストルームと違い、フタのないトイレと、畳一枚それ以外何もない3畳程の狭いまさに独房に半ばすし詰め状態になりながらも5人は愉快に話をする。
「ちょっと〜、二人とも変な脅し掛けないでよ
ダンにもルキアちゃんにも変な手は出さないわよ、私は」
弧光があっけらかんと笑いながらそういう。
「またまた〜」
レオンはご冗談をと返す。
「・・・でも、そうね
闘志も、情熱も、怒りもなくただ従順になり果てたつまらない家畜になり果てたなら、捨てる前に楽しんじゃおうかしらねぇ〜」
「やっぱり〜」
したり顔で笑う二人にダンは言う。
「一体、お前は何を考えてるんだ?」
「あら、至ってシンプルな事よ
私はね、戦いに美学を求めてるの、戦うことに存在意義を見いだすものなの
戦争然り、人生然りね
だから、どんな方向性でも闘志を持つ者を愛でているのよ
私が二人を側近に選んだのもそう
ダン、あなたは闘争心の塊で勝てない相手にも立ち向かうことを躊躇わない
ルキアちゃんはもそう、どんな逆境の中でもそれを受け入れてなお立ち上がろうとする雑草の如き強さがある
私が愛する美そのものよ
その上、あなたたちには才能があるわ
今はくすんだクズ石だけど、私が磨いて最高のカットを施してみせるわ
それが済んだら、私達三人で輝きましょう
ヴァリムの歴史に名を残すぐらい、世界の覇権を争うぐらいにね
フフ、夢物語に聞こえて?」
恍惚とした声色で語るそれはだが、ダンにもルキアにも笑い飛ばさせない迫力があった。
だから、ダンは言う。
「おもしれぇ〜、お前ですらそこまで強くなれるんだ
すぐに追い抜いてやる、その後はとことん上を目指そう
悪くない、ああ悪くないぜ
なあ、ルキア」
ルキアはダンの瞳に懐かしい光を見る。
それはダンが野心、いや突っ張ったガキだった頃持っていた無邪気なギラギラした光だった。
それは現実の厳しさや、汚い軍内部の汚職、矛盾を飲み込みそれでも我を通した「漢」グリュウとの出会いで矯正され、それと同時に失われた光だった。
ダンは思っていた。
色々制限のある立場や、めんどくさい責任がついて回る立場を取っ払って、ただ獣のようにがむしゃらに強い者と戦いたいと。
だが、それは決して許されるものではなかったし、それを許されることなど訪れはしないと思い、ずっと自制してきた。
無論、今すぐそれが許されるとは思っていなかったが、いつかそれが許されるときが来るかも知れないという希望が、ダンを生まれ変わらせるに匹敵する変化を与えた
のは事実だった。
そんなダンの変化を見ながらルキアは、心の中でため息をつく。
・・はぁ〜〜、付き合わされるこっちのことも考えなさいよ・・・
思いながら、ルキアははたと気づく。
なんだかんだで、私もやる気はあるんだ
、と。
「なんか、振り回されてる感が否めないけど・・
でもいいわ、最後まで面倒見ましょう
こうやって責任感を護るのが私の戦いなんでしょうから・・
とことん戦ってやるわ、恵まれない境遇に立ち向かうのは嫌いじゃやいもの」
「マーーーヴェラス!!
それでこそ私の惚れた二人よ」
弧光はその短い足に似合わない跳躍で二人に抱きつくと、両手で二人を抱きしめる。
と、次の瞬間静電気に感電したかのように二人から離れる。
「何、ダン
なんで乳臭いのよ、あなた!!」
「ああ!!」
弧光の言葉にダンが機嫌の悪い声をあげる。
そのダンを無視して弧光の視線は、イオンとレオンに向かう。
「いや〜、閣下が絶対にダンに襲いかかると思ってたんで〜〜〜
見るも無惨な修羅場になる前に、匂いツケしときました〜〜〜」
レオンはしたり顔でルキアに向かって笑う。
「あっ!!」
ルキアもレオンの舐めた行動が、ようは虫除けスプレーならぬ、弧光(ホモ除け)と気づき、しこたま溜飲を下げるのだった。
「いい仕事するじゃな〜い
まあいいわ、チャンスはいくらでもあるのだから・・・
ダン、尻を洗って待っていなさい!!」
洗うのは首だーーー!!
ダンはブルッと震えると声にならない叫びをあげていた。
と、イオンと何とルキアが同時に回し蹴りを入れる。
「ゲフ、ッッゴゥッ!!」
時間差攻撃を弧光はおめでたいことに、律儀に二つも喰らい悶絶する。
が、この程度で弧光はへこたれない。
「あああ、も、もっと蹴って〜〜」
「追加オーダー入りました〜〜〜」
レオンのドロップキックを皮切りに、弧光はルキア・イオン・レオンが繰り出すトライアングルキックで無惨にのされるのだった・・・・・
第7話に続く
後書き
・・・・弧光、魔王を目指しているキャラなのだが間違いなくただの変態だな〜〜〜
い、嫌すぎる・・・
ケイオウという自爆キャラもいるが、作者的にと言う意味では弧光は群を抜いているな・・・
さて、本筋に戻って何にせよ精神的に解放されたダンと、半ば脅迫的に覚悟を決めたルキアが、目指すもののために今後は努力を始める話に入る予定です。
次回は新型機体の話が先か、祖国ヴァリムにあだなす者達とのバトルが先かは設定の完成次第ですが、少しダン達の成長を連続して書こうかと思っております。
さあ、脱ヤラレ役に成れるかこうご期待!!
感想も待ってま〜〜す!!