機甲兵団J−PHOENIX  プロジェクトBT

8〜9ターン










 

8ターン


アルサレア


 F基地ではタケルが興奮していた。

 ヴァリムG基地でのアルサレア側の事後処理が一段落ついたことにより、アルサレア軍もようやく重い腰を上げる事にしたのだった。

 それはつまり、全面的な進軍を意味していた。

 そしてその一番槍を任されたのがケイオウ特尉だった。

 まあ、本当は二番目だったのだが、例の3人が暴走した事は棚に上げておく事になったらしい。

「やっと、退屈な基地防衛から解放されますね特尉!!」

 タケルは先の戦いの事を忘れて、浮かれまくっていた。

 まあ新兵だから手柄を立てたいとか、実践をやりたいとか、理由はよく分かるケイオウだったが、ケイオウの顔は暗かった。

「ふう、若いなあ」

 ケイオウのため息混じりの一言は、タケルの機嫌を損ねるには十分なものだった。

「特尉は良いですよ、このまま退役されても十分に生きていけるし、すでに英雄になっていて武勇伝だけでもみんなからチヤホヤされて良い老後が送れるから。でも俺はまだなんにもないんですよ、語るべき武勇伝もなにも」

 やはり若いな、そう思いながらケイオウは考えた。

 話すべきか、話さぬべきかを

 それを考えている最中にソフィアがタケルをたしなめた。

「血気盛んは大いに結構!でもね、これは戦争なの。武勇伝は血に染まった悲しい夢、英雄は生き残ってしまった生け贄のなれの果て、戦争の良いところばかり見てはダメよ」

 その言葉にタケルは、ごくりと喉を鳴らした。

「ソフィアさんから、そんな言葉が出てくるとは思いません出したよ」

 青い顔をしたタケルが言った。

 ソフィアはそれを聞いてくすくす笑い出した。

「そうね、私の言葉だったら、それは驚くでしょうね、ふふ。でも安心していいわ、全部ケイオウ特尉の受け売りだから」

 あ、納得!!

 タケルはそんな顔をしてケイオウを見た。

「ふう、まあ一部俺もある人の受け売りだがな」

 ケイオウはいかにも彼らしい苦笑いを浮かべていった。

「特尉に説教した人がいるとは、驚きですね」

 タケルはケイオウの苦笑の意味を取り違えていた。

 ソフィアもまだ、ケイオウが考えている本当のことを理解できずにいた。

「そうだな、俺に説教した女性は後にも先にもただ一人だ」

 何かを懐かしむようにケイオウは天井に視線を向けた。

「ねえ、その人私の知っている人?」

 ソフィアはいきなり禁断の質問をかました。

「いんや〜、知らない人だよ。あの人に話したら、笑っていたがね」

 思い出に酔っているのか、ケイオウはふやけていた。

「失礼します!!」

 そこにヒルツが入ってきた。

「お、待ってたぞ。首尾は?」

 ケイオウの問いに、また何かたくらんでんのか?

 そう、思わず勘ぐってしまうタケルだった。

 ソフィアの方は、さっきの発言を聞いて傍観しようと思いつつ、苦笑の理由が分かった気がした。

「それでは、そのように」

 そう言ってヒルツは足早に出て行った。

「なんだったんですか?」

「まあ、色々だよ、色々」

 お茶を濁すケイオウの態度が気に入らないタケルは、噛みついてみた。

「作戦を共にするなら、隠し事はなしにしませんか?」

 それを聞いたケイオウは思わず苦笑した。

「そうだな、だがお前も何か隠しているだろう?自分のことを聞かれると、妙に口を紡ぐぐらいだしな」

 ケイオウの不適な笑いにいらだちを感じるタケルだったが、もうつき合いもいい加減長い。

 この程度では彼は引かなかった。

「プライベートを聞きたがるのはどうかと?」

 その言葉を待っていた。

 まさにそういわんがばかりに、ケイオウは苦笑して言った。

「ヒルツは俺のなんだ?そう考えれば、話していた内容ぐらい想像がつかないか、ん?」

「なにって、ファンクラブの・・あ!!」

 タケルは自分の落ち度に気づき、顔を赤くしてうつむいた。


 それを見たソフィアが、小さく笑った。

 流石特尉ね、人の心を読むのがお上手ね。

 それに、タケル君もかわいいものだわ。


 おねーさんには、バレバレだった。

「タケルさん、そろそろ出撃よ。もう一度、PFを見てきなさい」

「はい、分かりました」

 タケルは、恥ずかしさのあまりすっ飛んでいった。

「で、彼の首尾はどうだったのかしら?」

「今回は小細工なしだそうだ、少なくとも現時点ではな、たぶん彼女がいるせいだろう」

「そうですか、感謝しないといけませんね」

 ケイオウはうなずくと、その場を後にした。

 ケイオウはヒルツが勝手に作ったファンクラブを公認としていた。

 ファンクラブの会報には、ケイオウの今現在の居場所と、その時の出撃で立てた武勲を誇張して乗せてあった。

 なぜそんなことをするかと言えば、アルサレアに取って英雄らしい英雄に見せることと、ヴァリム、ミラムーンからより狙われるように目立たせるためだった。

 またグレン小隊の様に、いつどこにいるかを探さなくてすむ分命を狙いやすくするためだった。

 だが、それだけではなかった。

 今回のようにケイオウはヒルツを使って、餌に食いついてきたものを監視しアルサレア、ヴァリム、ミラムーンがどう自分を狙ってくるかについて情報収集をさせていたのだった。


 ソフィアはそれを知っていた、そしてこぼしたのだった。

「味方から命を狙われているなど、やはり新兵には言えませんよね」

 英雄の光と影、ケイオウは特尉と共にそれを背負う事になった。

 しかし、ソフィアはケイオウを哀れんではいなかった。

 なぜならケイオウ自身が、それをより高見を目指そうとする踏み台だと思っていたからだ。





「さて、どうする?またお前から行くか?」

 前回の戦闘の事を思い出して、操縦桿を握る手が汗ばんでいるのを承知でタケルは言った。

「先に特尉を行かせてしまったら、俺の出番悪なっちゃいますよ」

 虚勢を張っている事はバレバレだったが、変に腰が引けていないのは評価に値した。

「その心意気や、好!!暴れてこい、骨はきっちり火葬にしてやる!!」

「ちょっと、助けてくれないんですか?」

「甘ったれるな、いつまで俺と一緒にいられるか分からないんだぞ?」

「まったく、とんでもない人だな」

 そう言いながらも、タケルは何とも落ち着いた感じで出撃させてくれる様に会話をし向けたケイオウに感謝した。

「では、行ってき」

「まて、基地に動きがあるぞ!!」

「え!!」

 折角のリラックスが台無しだったが、今はそれどころではなかった。

 基地からは1機のPFが出撃していった。

「巡回ですかね?」

「いや、巡回にしては方角が変だ。もしかしたら、進行かもな」

「1機でですか?」

「俺ならしょっちゅうだぞ」

「あなたは特別です!!」

「そうか、自信がある奴なら結構やってるぞ。うちでもラフトが1機駆けだったろ」

「でも、あいつは戦死しました。不謹慎ですよ特尉」

「ふう、あくまで例えだ。死んで帰ってこないかも知れないし、帰ってくるかも知れない。どちらにせよ、制圧完了までに帰ってこられた場合挟み撃ちに会う。時間をかけずに、一気にカタをつかなくてはな」

「はい」

「俺はここで動きを伺う、お前はこのチャンスを生かせ!!サシでまけんなよ」

「了解!!タケル、行きます!!」










 

ヴァリム


 E基地からI基地にやって来たシュウは、引き継ぎに司令室にやって来た。

「やってられっか!!」

 司令室からの怒鳴り声にシュウは迎えられたのだった。

 なんかいきなり気まずい雰囲気だったが、入らないわけにも行かないので意を決してシュウは司令室に入った。

 ゴン!!

 開けた途端に、クリスタル製の重たい灰皿が股間を直撃した。

「・・・・・・・・・・・・!!」

 シュウはもはや声にならない叫びを上げてうずくまるしかなかった。

「あ!!」

 それを見たショウは、吐き気を覚えながら哀れんだ。

「す、すまん!!」

 ショウは顔の前で両手を合わせて頭を下げた。

 ついでに頭に昇った血も下がった。


 ・・・・15分後

 ようやく復活したシュウはショウと引き継ぎを終えたあと聞いたのだった。

「一体なににそんな腹を立てていたんですか?」

 ショウは申し訳なさそうな顔で言った。

「神佐だよ、ミラムーンC基地に破壊工作を施したから今の内に落とせだと。こっちにはお前さんを入れても2機しかPFが無いのにだぜ、やってられっか」

 沸々と怒りがどうしょうもなく沸き上がるのを、シュウは感じた。

「でも、神佐の事だから奇襲をかけて挟み撃ちにする策なんじゃ?」

 怒りをなだめようとしたシュウだったが、逆効果だった。

「気休めはよしてくれ、あの神佐がそんなことするかよ」

「・・・・・・・・・・。」

 もはやシュウにはかける言葉もなかった。

「行ってくる。そうだ料理が上手だそうだな、万が一生きていたらご馳走してくれ」

「はい!!」

 ショウは束ねた長い髪を振りながら、足音一つさせずに消えていった。

 シュウはそのことに多少の違和感を感じていたが、これから起こる事を考えればどうでも良い事だった。

 

 それはシュウがショウのために、お得意のフルーツポンチを作っているときだった。

「緊急警報、アルサレア軍が真っ直ぐ向かってきます、迎撃体勢を取ってください!!」

「っち!!こんな時に」

 ホントにそうだった。

 戦力が2分したばかりのあげく、フルーツポンチはまだ缶詰のふたを開ける最中だった。


「うおおおおおーーーーーーー!!」

 タケルは時間制限のためか、気合いが入りずぎている様にも見えた。

「俺には守るべきものがあるんだ、アルサレア如きに俺をやれると思うなよ!!」

 対するシュウの気合いは、研ぎ澄まされた槍のようだった。

 タケルはガトリングの弾をまき散らしながらシュウに襲いかかった。

 しかし、シュウは空中高く飛び上がりスマートガンで両肩のガトリングを破壊した。

「このヤローー!!降りてきやがれーーー!!」

 射撃兵器を失ったタケルは障害物を盾にしながら、逃げるほか道はなかった。

「そら、そら、そら!!」

 シュウは見事にこの戦いの主導権を握ったのだった。

 しかし、それが後に仇となった。

 調子に乗ったシュウは、ショウに連絡を怠ったのだった。

「くそ、時間がないの」

 タケルが苦虫をつぶした顔で唸ったその時だった。

 爆発音がした。

 そして、シュウの乗ったヌエが空から落ちてきた。

 何があったかは理解できなかったが、チャンスとばかりタケルはトドメを刺しに不用意に近づいたのだった。

「甘いんだよ!!」

 シュウは叫ぶと同時に、レーザーソードをタケルに向けて突き出した。

「か・・・」

 交わせない!!

 コクピットコアを直撃する。

 タケルが初めて己の死を確信したその時だった。

 爆発が起きた。

 シュウの乗ったPFが体勢を崩しながら、タケルのPFの左腕を切り落とすとそのままの勢いで、タケルのPFを蹴り飛ばして攻撃を受けた方に身構えた。

「やってくれる!!」

 先ほどの攻撃のせいか、シュウの口の中からは鉄の味がした。

 シュウはそれを吐き出しながら、タケルのPFを見た。

 タケルはまだ死のヴィジョンから抜け出し切れてはいなかった、そのせいか微動だに動けずにいた。

 もっとも、先の空中からの攻撃もあって、機体は既に限界となっていた。

「お、おれは、死ぬのか・・・・、いやだ、そんなの、いやだ・・」

 錯乱状態になったタケルの声を聞いたケイオウは苦笑した。

「ふ〜ぅ、やはりまだ早いよなあ」

 そう言いながらも、ケイオウには既に覚悟があった。

 既に、どう決着を付けるかまでのヴィジョンがケイオウには見えていた。

 まずはフライキラーでたたき落とし、本来のケイオウに戻って戦う。

 だが、それは新兵が見るには高くつくものだった。

 武勇伝や英雄になぞられることのない闇は、見るものの心を食らいつくす。

 そのことをケイオウは知っていたし、タケルが耐えられるかどうかもうすうす分かっていた。

 しかし、今がきれい事を言っている時ではない事も事実だった。

 ただの2対1ならなんの問題もなくとも、守るべき相手が動けないPFでは流石のケイオウも分が悪すぎた。

 だから、ケイオウは覚悟をきめた。

「タケル、聞こえるか?」

「と、特尉、助けて、助けてください!!」

「良く逃げなかったな、良くやったぞ!!例え逃げることが出なかったとしても、そこに居続けたことは、お前が無意識に引きたくないと思った証拠だ。だから、誇ると良い。これからお前があこがれた、英雄という奴を見せてやる刮目せよ!!

「おおおおおおーーーーー!!!!!!!」

 ケイオウは気合いを張った。

 ケイオウを中心に大気が吹き飛ぶような感じと、鳥肌がタケルとシュウを襲った。

「な、何者だ!!」

 シュウはまだ相手が誰だか気づいていなかった。

「う、う、うゎ・・・」

 タケルの恐怖はその一撃で吹き飛ばされた。

 そして、タケルはよく知ったはずの人間が、何か別の物へと変身した様な気がした。

 そして、ケイオウは剣鐘鳴らした。

 キィーーーーーーン!!

 心底に良く響くその音は、二人の戒めを解いた。

「ま、まさか、クレイジーウインド!!」

 シュウは自分で言って後悔した。

 神佐の企みか、ヴァリム軍はケイオウの存在を知らなかった。

「これが、ケイオウ特尉?」

 なにが起きたのかよく分からなかった。

 押しつぶされそうなプレッシャーは健在だったが、近くにいるのにまるでそれを感じていないようだった。

 むしろ、喉のつかえが取れたような開放感さえ感じていた。

 今までに全く感じた事のない、ケイオウの姿にタケルは視線を外せなくなっていた。

「我が名は、ケイオウ。アルサレアの踊る風、ケイオウ特尉だ!!命が惜しければ、投降せよ!!」

 投降などあり得ない、分かっていたがそれでも言わずにはいられなかった。

 剣鐘で頭に昇った血も下がり、冷静になりつつあったシュウだったが時が悪かった。

 そう、弟が神佐の手に握られていたのだった。

 正確にはまだそうなったわけではないが、それでも投降しようものなら見せしめにあうのは容易に想像できた。

 弟のためになら、何を犠牲にしても構わない。

 その覚悟がシュウの身に重くのしかかった。

「大変嬉しい申し出だが、俺にも譲れないものがある。勝負だ!!」

 シュウの赤いその瞳に緋が走った。

 何となく、背負うものがある、それがケイオウには分かっていたから余計にやりきれなかった。

「この機体でどこまでやれるか分からないが、見るがいい神風のロンドーーー!!」

 シュウはコマのように回転するケイオウから距離をとり、ガトリングとスマートガンを力の限り撃ちはなった。

 いつもならば、なんてことはないその攻撃に神風のロンドはあっけなくキャンセルされた。

「やはり無理だったか、本来の十分の一の力も出せないとは。ならば」

 機体を違法改造しているから出せる奥義も、規格PFではタコ踊りだった。

「なんだ、いけるのか?」

 シュウは困惑した、出せば最後の必殺技を簡単に破ってしまったからだ。

 しかし、油断はしなかった。

 ケイオウは悠然と向かってきたからだ。

 フライキラーのせいで、空に飛ぶ事が出来なくなったシュウはバックジャンプを駆使して射撃戦に持ち込んだ。

 しかし、それが無意味なあがきである事をシュウは目の当たりにしたのだった。

「これは夢か?」

 シュウが思わずもらした。

 ケイオウは斬馬刀の切っ先を使って、ガトリングとスマートガンの弾丸の軌道を変えていたのだった。

「これが、踊る風、きれいだ」

 ただの傍観者になっていたタケルが、まだ夢見心地ながら言った。

 銃弾がケイオウを避けて飛ぶ様を見れば、誰もがそう思うかも知れない。

 しかし、相対している者は洒落にならない。

 シュウは、ケイオウの接近を阻止する術を既に失っていた。

「くそ、これでも食らえ!!」

 シュウはレーザーソードを振りかぶった。

 しかし、ケイオウの突進力は予想以上だった。

「がぁぁぁーーー!!」

 獣のような雄叫びと共に、ケイオウは左肩からタックルをかまし、機体が離れる瞬間に斬馬刀を持った持ったまま右パンチを入れ、吹っ飛びだしたところを斬馬刀ではじき飛ばした。

「わあわっっっっーーーーーー!!」

 何が起こったかシュウには分からなかった。

 むちゃくちゃだ、そこまでしなくても良いのに

 今までの繊細さは無かった。

 ただ、凶暴な巨人が狂気の限りを尽くしていた。

 タケルは怖くなった。

 やれたか?

 ケイオウは慎重にシュウの機体を見た。

 殺せたか、ケイオウが思ったのはそんなことではなかった。

 殺すつもりなら、もっと美しく早く決着は付けられる。

 しかし、今の攻撃は見た目こそ派手だが、威力は大したことはなかった。

 ケイオウの狙いは、シュウの信念を断つことだった。

 人は誰しも希望!!

 シュウはその信念故に引こうとしなかった。

 それがケイオウに彼を殺すには惜しいと判断させた。

「ここまでなのか?いや、まだだ、まだあきらめないぞ!!」

 シュウのPFが動こうとしていた。

 立つな、もう、立つな!!

 ケイオウの心の声は届かなかった。

 大馬鹿者め!!

 ケイオウはそう思っていたが、口から出た言葉は

「大した奴だ、そうでなければ面白くない!!」

 だった。


 シュウは最後の大博打を打つ事にした。

 敢えてケイオウの一撃を受け、そこに出来るスキついて攻撃することだった。

 余りにも危険きわまりない分の悪い賭けだったが、シュウには既に選択の余地はなかった。

「せめて、安らかに眠れ」

 ケイオウは笑っていた。

 絶対の信念を狩るのは難しい、そう思って笑ったのだった。

 かつて、ただの一度だけ自爆ボタンを押してなお倒せなかった男がいた。

 その男はちょうど今の自分と同じようなことを考えていたのだろうと、そう思うと笑わずにはいられなかった。

 命を賭けろ!!

 自分はそうされた

 だから、今生きている

 ケイオウは口元を引き締めた。

 そして、頭のリミッターを解除した。

 その瞳には、PF内部のパイロットを見通すかのようだった。

 あの男に出来た以上、俺に出来ないはずはない。

 ケイオウはそう信じた。

 そして、両者は想いを胸に激突した。

「うをををーーーーー!!」

 シュウは叫んだ、これが自分の最後だと勘違いさせるために。

 ケイオウは無言だった。

 時を止めた、そう表現するのが適当なほどケイオウは動いていなかった。

 次の瞬間、ケイオウは一瞬で間合いを詰めシュウのコクピットコアに斬馬刀を突き刺した。

 シュウは覚悟を決めて、演出のためにワザとその攻撃を受けようと身を乗り出した。

 しかし、それが仇となった。

 なんとか、コクピットコアを外す事は出来た、しかし切っ先が思いの外深くPFに突き刺さった。

 一か八かの大勝負の結果は、ジェネレーター損傷による大爆発だった。

 

 すんでの所で、爆発の被害を交したケイオウは言った。

「死に急ぎやがって、・・・・・。だが、最後のその覚悟は、見事なり」

 ケイオウは確かにコクピットコアを狙っていた、しかし殺すつもりはなかった。

 コクピット内部のシュウをダイレクトに攻撃して、戦闘不能にしようとしていたのだった。

 もちろん、それはあくまで希望に過ぎなかったが、ケイオウにはそれが出来る確信があった。

 少ししてからタケルがギリギリ中破した機体を起こして、ケイオウの元にやってきた。

「あの、特尉ですよね、」

 まだタケルが何か言おうとしていたが、ケイオウはそれを遮った。

「下を見ろ、そして英雄とされる者がした事をその目に刻め」

 ケイオウはそう言うと、瓦礫と死体の転がる基地を制圧しに行った。

 タケルは言われてやっと、自分たちがしている事の重大さに気づいた。

 言葉も出なかった。

 そこには、何時誰が死んでもおかしくないという現実と、ただ悲惨さだけが伺える地獄が広がっていた。




 制圧した基地の1室で、失意にくれていたタケルをケイオウは外に連れ出した。

 そこには、壊れたレーザーソードが瓦礫の山に突き刺さっていた。

 ケイオウはそれに手を合わせると、黙祷して去っていった。

 終始無言だった。

 言葉で伝えられる事は何もない、ケイオウがそう思っていたのかどうかは分からない。

 そして、タケルがどう思ったのかも誰も分からなかった。

 ただ、タケルが、何時までもそこに立ちつくしていたことだけは、事実として残った。




 今さっき出てきた基地がそんな事になっているとは、夢にも思わないショウはミラムーンC基地を伺っていた。

「基地戦力は実質ポリタン2か、リヴィアの情報通りなら一気に司令室を落とせば何とか出来るかもな」

 希望的観測は一切無かった。

 冷静を通り越して冷徹な光をその目に宿したショウは、基地の裏側から突入した。

 視界の悪い前方の防衛についていたポリタンは完全に不意をつかれた。

 しかし、後方にもガードは存在していた。

「そう、何でもうまく行くと思うなよ!!」

 カインはスマートガンをショウに向けて撃ったが、明後日の方向に飛んだ行った?

「な、なんだと!!くそ、整備不良か?」

 仕方がなくカインは接近戦をしようと前に踏み出した。

 ショウは隊長機が使えなくなっているという情報を確認すると、一撃で黙らせようと思った。

「これでも食らって、大人しく寝ていろ」

 ショウはそう言って、刀を振るった直後だった。

 カインの機体はバックステップした。

「「なに〜〜〜!!」」

 双方が同時に予想外の事態に困惑した。

 そして、ショウは考えてしまった。

 実は整備不良ではないのではないかと。

 そう、隊長機はあくまで接近戦のエキスパートで、射撃は下手くそなのでは無いかと。

 それゆえ、ショウは一旦距離を置いてしまった。

 カインの方は動けずにいた。

 下手に動いたらどうなるか知れたものではなかったからだ。

 カインが動かない事は、逆にショウの予想を正当化させた。

 そして、2機のPFが睨み合いをさせているその頃、不幸にも巡回中だった機体が戻ってきた。

「くそ、新手か、おお!!」

 戻ってきたポリタンは、早速ガトリングで攻撃してきた。

 それと時同じくして、防衛配備されていた2機のポリタンが現れた。

「「「お姉さんが楽にして上げるから、そこ動くなーーー!!」」」

「くそ!!」

 信じられない速度で3機のポリタンはトライアングルアタックを敢行した。

 シュウはスライスカッターをばらまき一撃目を交したが、第2,3撃目は交しきれずにきりもみしながら吹き飛ばされた。

「ぐ・・・・・」

 普通なら叫び声を上がるような攻撃だったが、ショウは冷静だった。

 いや、冷徹だった。

 自分に今何が出来るか、それを考え実行した。

 カインはスマートガンを構えるも、動けずにいた。

 ポリタンは攻撃に成功するも、激突の瞬間に蹴りやらスライスカッターやらを貰ったせいで、体勢を整えるのにほんの数瞬隙があった。

 ショウは的確な射撃で、スマートガンとガトリングをレーザーピストルで撃ち抜いた。

 そして、爆発と同時に手近な森にレーザーピストルで火を付けた。

 森からの煙に身を隠しながら、ショウは神佐に敵が侮れない事を報告しながら撤退した。

「っち、やられたな。追撃はいい、森林の消化を急げ!!」

 基地こそ守り切れたが、既に工作兵が入り込んでいる事、そして今攻めてきた兵士の引き際の良さがカインの不安を増大させた。

 なにか、とてつもなくイヤな事が起きる。

 これはその布石ではないかと、どうしてもカインはその予感を振り払えずにはいられなかった。




 その頃進軍中にショウからの通信を手にした神佐は

「あらミラムーンも、思いの外頑張るわね」

 そういいながら、性悪女剥き出しの嫌みな笑みを浮かべた。

「さて、あなた達の心のよりどころが失われたら、どこまで頑張れるかしら?」

 立て続けの任務失敗を気にも止めずに笑う神佐に、シャドーは自分の考えが正しかった事を確信したのだった。



 その30分後に神佐は遭遇戦に入ろうとしていた。

「神佐!!いいかげん兵を無駄にする用兵はもう止めてもらおう」

 シャドーは直球勝負に出た。

 シャドーはもしここで、神佐が攻撃してくるならミラムーンに寝返ってもいいとまで思っていた。

 しかし、神佐の答えは意外なものだった。

「無駄になるような兵士はいらなくってよ。でも、今回は私が矢面になって戦いたい気分なの。そこまでいうのなら、あなたが他の兵士を有用に用兵しなさい。良いわね?」

「了解」

 自分の考えがどこまで正しかったのか謀りかねるが、それでも間違ってはいなかったとシャドーは思う事にした。

 と、その時だった。

 遙か前方から赤い閃光が飛んできた。

「総員待避ーー!!空に逃げろーーー!!」

 シャドーは発射位置を確認すると同時に神佐を探したがすでにいなかった。

 そして、第2波に備えるもそれはこなかった。



「初めまして、ミラムーンの特佐殿。私はヴァリム軍神佐フォルセア・エヴァ。味方を犠牲にしたくなかったら、私に従いなさい」

 神佐が目視で確認できる頃には、既にポリタン達はハーメルンヴォイスシステムの餌食になっていた。

 神佐もゴールドを初めは殺そうと思っていたが、ハーメルンシステムの餌食になっていない事を知り興味が沸いたのか部下にしようとしてきた。

「良いでしょう、その代わりすぐにミラムーンに対する進軍を撤退しなさい。それが確認できないのなら、この場で果てます」

 そう言ってゴールドはナイフで自分の首を軽く刺した。

 首からは赤い血が流れたが、そんな事はお構いなしだという顔で神佐にほほえみを浮かべた。

「ずいぶんと大きく出たものね、別にあなたを殺しても私にはなんの損もないのよ?」

「私には、それをしてなお余りがある利益があると思っているわ」

 神佐は一瞬だけ思案した後、その条件をのんだ。

「私のためにせいぜい役に立ちなさい。ミラムーンのことを思うならばね」

 神佐は上等の捨て駒を手に入れたと、その時は思っていた。

 しかし、特佐ゴールド・スレイブは神佐が思いもしない理由のために、神佐の軍門に喜んで下っている事を知らなかった。

 この次点では、この場にいる全てがゴールド掌の上で踊っている事に気づいてはいなかった。









 

ミラムーン


 ゴールドが神佐の軍門に落ちた事など夢にも思わないジークは言った。

「森林浴も良いが、諸島地域のビーチでゆったり過ごすのも良いな」

 リゾートを彷彿させるヴァリムJ→K間を輸送機の窓から見下ろしながら、ジークは相変わらず平和ボケしていた。

「こんど特佐を休暇に誘おうかな?」

 デートは無理でも、水着姿ぐらいは拝みたいと邪なことを考えていたせいか罰が当たった。

 輸送機が攻撃を受けたのだった。

「どこからの攻撃だ!!」

「真上です」

 窓から上を見たジークが言った。

「PFだと、逃げ切るのは無理だな。こっちは飛べないってのに」

 そうは言っても、出るしかないジーク達だった。

「輸送機上部から反撃するぞ、敵は1機だ何とかなる。いくぞ」

 後部ハッチが開きポリタンに続き飛び出そうとしたその時だった。

 目の前のポリタンが逆噴射をかけたように、突っ込んできたのだった。

「なんなんですか?」

 そこにはヒートパイルハンガーを構えたYAMABUSIが立っていた。

 瞬間移動で開いたハッチに、ピンポイントで転移してきたのだった。

 そして、次の瞬間ポリタンの下敷きになっていたジークめがけて、ヒートパイルハンガーが襲ってきた。

「させますか!!」

 しかし、ジークの持っていたインブレイクスピアの方がリーチがあった。

 インブレイクスピアに貫かれたYAMABUSIは、開いているハッチから見事に捨てられた。

「いまだーー!!」

 転移する前に落とそうと、ジーク達は一斉掃射した。

 当たり所が悪かったのか、YAMABUSIは瞬間移動が不発に終わり討ち取られた。

「ふーーーーー」

 長いため息の後、ジークは叫んだ。

「初めての大勝利だーーーーーーー!!」

 そう、いつもおまけだった彼れから見れば、それは紛れもない事実だった。



















 

9ターン


アルサレア


 ヴァリムGではまた例の3人が動き出そうとしていた。

「やはり、ヴァリムDを落とすなら手薄なヴァリムBを先に落とすべきだよな」

 ハクトがそう主張したが、ジェークは賛同しなかった。

「いや、奇襲が失敗したら命に関わる。ここは確実に行くべきだよ」

「そうだな、例えうまくいっても挟み撃ちに会うな。よし、俺はヴァリムAを落とそう」

「ちょっと、マガミまで何言い出すんだよ!!」

「ま、三者三様、自分の命には責任を持つと言うことで行きましょう」

 普段まじめなハクトは言い出したら引かない性格だと言うことを、二人はようやく知ったのだった。

 マガミは元からそうだった。

「分かりました、その代わり死なないでくださいよ」

 ジェークは覚悟を決めた。

 二人が死ぬかも知れないことにではなく、ヴァリムDを二人が奇襲をかけてしまう前に落とす覚悟だった。

 そうすれば、失敗しても撤退先が確保されている分、安心だと考えたからだ。

 三者三様、皆が皆自分以外の心配をした結果だったが、誰一人皆が自分と同じ考えをしていることに気づいていなかった。

 

「タケル出撃だ」

 そう呼ばれたタケルは、力無くケイオウを見上げた。

「辛そうね?」

 ソフィアはケイオウに向かって顔を振った。

 今回は連れて行かない方が良い、そう言いたかったようだ。

「もう、帰るか?」

 タケルは力無く、だが顔を左右に振った。

「特尉はどうして平気なんですか?」

「悩むのは良い事さ、おおに悩め若者よ」

「答えてはくれないんですか?」

「俺は死人だ、少なくとも戦場にある俺はな。死人は何も失わない、そして何も欲しない。故に、心が痛むことも無ければ歩みを止める事もない」

 タケルはケイオウから視線を外し、うつむいて言った。

「心が痛まないなら、なら、どうしてあんな墓標を立てたんですか?」

「言ったろ、俺は戦場でしか死人じゃないんだよ。生者である内は、傷つき悩むさ。だがな、俺は特尉だ。祭り上げられた英雄だ、故に歩みを止める訳には行かない。お前が憧れた英雄とは、いかなる時も歩みを止めるわけには行かないんだ。なぜならば、英雄はその後に続く全てのものの道しるべだからだ。俺はこう思っている、誰かが望んだ未来をかなえるために今できる事をしようと、それをしないうちに諦めるわけにはいかない。俺は、信念を貫き通す」

「俺は、英雄でも特尉でも無いです。俺はただ世話になった人達のために戦いたかっただけです」

「立派な願いじゃない」

「そうだな」

「でも、それだけです」

「人が何かをするときの理由は人それぞれよ、でも大抵は些細なものよ。想いが変わっていないのなら、それに向かって歩きなさい。うつむいていても、何も変わらないわ」

 ソフィアの言っている事は間違いなく正論だった。

 しかし、正論過ぎて逆に受け入れがたかった。

「今は、自信・・・・・、無いです」

 それを見たケイオウは言った。


「己が歩む道は、己を高める道なり、それに迷ったならば力を抜け、迷い悩み疑うくらいなら真っ直ぐ突き進め。
 自分を信じろ、自信を持て!!
 道は必ずできるのだから
 それでも答えがでないときは、感情のままに行動せよ
 それがそのとき出来る最前の選択だ。
 今できることを知るのは、己を知ることとしれ。
 今己に出来ることを精一杯せよ、それをしないうちにあきらめるな!!!
 ・・・・・・、お前の人生だ、好きにするがいいさ
 俺は行く、後は好きにしろ」


 ソフィアは笑って、ケイオウと一緒に出て行った。

 


 ケイオウがヴァリムJ基地を攻撃しようと、作戦を練っていたその時。

「特尉、俺も行きます」

「良いのか、また辛い思いをするぞ?今度は死ぬかも知れないぞ、相手はPF5機だからな」

「辛いのは、我慢します。あなたですら、辛いってことが分かりましたから。ついでに俺は死にませんよ、何たって特尉の部隊から戦死者が出た事は無いそうじゃないですか」

「俺のいた基地からは2人も戦死者が出たぞ、俺のミスでな」

「・・・・、だ、大丈夫です、・・・よね」

 タケルはソフィアを見た。

「大した自信ね、戦う理由は固まりました?」

「そっちはさっぱりです。よく分からないから、今できる事をしてみようと思います」

 ソフィアは不適な笑みを浮かべてケイオウを見た。

 ケイオウも苦笑でそれに答えた。

 タケルはそんな二人を見て、困惑したが顔には覇気があった。

「もう、お守りはいらんな。これからは俺らしくやらせて貰う、ちなみに反論は受け付けるつもりはないが、意見があるなら言うだけ言ってみろ、聞くだけ聞いてやる」

「ようやく、あなたらしくなってきたわね」

 ソフィアは楽しそうに笑ったが、タケルはかなり不安だった。

「じゃあ作戦を伝える、俺が敵陣中央停止をかける。タケルは逃げていく機体を、片っ端から落とせ、以上!!」

「あの、無茶すぎやしませんか?」

「言っても無駄よ。まあ、彼の十八番だからたぶん大丈夫よ」

 ソフィアが無責任なことを言い出した。

「まあ、お前はお前の出来ることを精一杯しろ。やばくなったら逃げて良いぞ」

「そんな、真顔で怖いこと言わないでくださいよ」

「まあ、なんとでもなるさ。うだうだ言ってても始まらない、行くぞ」

「まったく、どういう神経してるんだ?」

「死人に神経も何も有りはしないわよ、考えた方が負けよ」

 そう言ったソフィアがタケルの頬にキスをした。

「少佐!?」

「いい顔する様になって死なすのが惜しくなったから、祝福よ。生きて帰れますようにってね」

「は、あ」

 そこまで無垢ではなかったが、タケルの頭は煮えていた。

 

 ヴァリムJ基地の正面、それも目視で捕えられるところにケイオウは立って宣戦布告をした。

「我今ここに誓いを立てる!!
 この戦いの勝利も敗北も生も死もすべて、アルサレアに捧げる。
 そしてこの剣鐘の後には誰一人として無駄死にはさせん!!
 異議申し立ての有る者は名乗り出よ!!
 ・・・・名乗り出ぬのなら、その胸に秘めしそのセリフ金輪際吐くな!!
 この誓いは約束、そして我と我らに続く全ての者の誇りなり!!!!」


 既にポリタン達が基地から出てきてガトリングを撃つが、ケイオウはお構いなしに続ける。

 キィィィィィーーーーーーーン!!!

 透き通る剣鐘の音は、ガトリングの騒音を優しく飲み込んだ。

「今ここに誓いは交わされた。命の惜しい奴は投降しろ、投降するならば決して俺たちは牙をむけん。だが、向かってくるのならば純然たる死おもこえる絶望があることを覚悟するがいい!!」

 長い講釈が終わる頃には、既にケイオウは5機のポリタンに囲まれそうになっていた。

「おおおおおおーーーーーーーー!!!!!」

 しかしケイオウは、当たり前といわんがばかりにその中心に向かって行った。

 ポリタン達は同士討ちを避けるために射撃を止めたが、今度はポリクローの嵐がケイオウを襲った。

 が、かすりもしなかった。

 ケイオウは斬馬刀を巧みに操って、ポリクローの軌道を修正して同士討ちをさせ始めた。

「甘いんだよ、多対一は俺の十八番なんだよ!!」

「くそ、うわさ以上の実力だ」


 ・・・・・・、俺、いるのか?


 タケルは真剣にそう思った。

「離れろ、距離を取って射撃戦に切り替えろ」

「遅すぎるんだよ!!」

 ケイオウは手近なポリタンの両肩を切り落とした。

「タケル出番だ!!」

 そう言うとケイオウは斬馬刀をバットに見立てて、ポリタンを張り飛ばした。

 玉突きのように2機のポリタンがタケルめがけて飛んできた。

「どうして、あなたはそんなに極端なんですか!!」

 もの凄い勢いで飛んでくるポリタンを、タケルは冷静にレーザーソードで切り倒した。

「お、やるねえ!!よし、おまけだ」

 そう言うとケイオウはポリタンをもう1機張り飛ばしてよこした。

「調子に乗るなーーー!!俺を殺す気かーーー」

「若い頃の苦労は買ってでもしろって言うじゃん」

「後で、覚えとけよーー」

 ケイオウは残ったポリタンをいたぶりながら、タケルの戦い方を観察した。

「これでも食らえ!!」

 タケルはレーザーソードでポリクローを破壊した。

 武装形態を破壊して、機体性能を下げて確実に仕留める手に出た。

 確かにタケルの機体では、ポリタンとまともにやり合うのは辛かった。

 しかし、1機落とすのに時間がかかりすぎた。

 最後にケイオウに跳ね飛ばされたポリタンは、機動性にものを言わせてガトリングで攻めてきた。

「くそ、こっちはそろそろヤバイっていうのに」

 タケルもガトリングで攻撃したが、機動性の差が大きくでた。

「オイ、動けよ、動いてくれよーーーー!!」

 そしてとうとうタケルの機体は、限界に達した。

 しかし、いつまで経ってもポリタンはトドメを刺しに来なかった。

「お疲れさん」

「え」

「任務完了だ、出てこれるなら張って出てこい」

「どうしてあなたは、そう勝手なんですか?」

「俺が勝手なのは昔からだ、ソフィア後を任す」

 そういうとケイオウは意識を失った。

「ちょっと特尉、無視ないでください!!聞いてますか?特尉?」

「無駄ですよ、そろそろ肉体限界ですから」

「はい?」

「聞いていませんか?」

「はあ」

「彼は肉体限界が来ると、仮死状態になるの。まあ3時間もあれば目覚めるわ」

「・・・・・・、特尉って、ホントに人間なんですか?」

「彼は普通じゃないでしょう?つまり、そういうことよ」

「要するに、普通じゃないということですか?」

 ソフィアは笑ってうなずいた。











 

ヴァリム


 ヴァリムKでは、神佐がゴールドを試そうとしていた。

 発端はゴールドだった。

 別にゴールドが不穏な行動に出たわけでも、神佐の不利益なことをしたわけでもなかった。

 ただ、ゴールドはいつも通りにしていただけだった。

 しかし彼女も伊達に聖女と呼ばれていなかった。

 ただあふれる笑顔で兵士に接し、敵国の兵士相手にも当たり前のように優しかった。

 神佐のせいで、誰しもギスギスしていた基地内部が一転してほんわかムードになった。

 そして神佐はそれを傍観した。

 しかし、シャドーはそれを怪しんだ。

 怪しまれたのは、神佐の態度と、ゴールドの動きだった。

 そして、今回の発端になったのはこの一言だった。

「次の進軍に特佐を連れて行くなら俺は行かない」

 執務室でシャドーは神佐に嘆願したのだった。

「理由は?」

「得体の知れない者と行動して、これ以上に危険を増やしたくない。それに何時裏切るとも知れないし、噂ほどに特佐が強いとも限らない」

 それを聞いたゴールドは、心底楽しそうに笑った。

 神佐も笑っていたが、目は笑っていなかった。

「何かと私に不満があるようだから基地防衛に残しても良いけど、あなたこそその実力があるのかしら?」

 シャドーは押し黙った。

 返す言葉がないのだ、神佐を納得させるだけのものをシャドーは持っていなかった。

「私と戦って見るのはいかがでしょうか?」

 ゴールドは笑顔を絶やさずにそう言いだした。

「それも面白いわね、では1時間後に」

 神佐は決定事項だけを告げて出て行った。

 シャドーは神佐とゴールドを睨んだが、神佐に無視され、ゴールドからは笑顔で返された。

 シャドーは完全に二人の手の上で遊ばれていた。



***1時間後***

 公平を期すためにお互い完全規格のヌエでの勝負だった。

 ただし、YAMABUSIとロキが射撃してくるおまけ付きだった。

「っち、あわよくば目障りな奴らを一掃しよって魂胆かよ」

「実践なのですから、どこからでも弾が飛んで来るのは当たり前ですわ。せいぜい、彼女の役に立つ捨て駒に見るように頑張りましょう」

 さらりと、ゴールドは笑顔で言った。

 何を考えているんだ?

 シャドーにはますます分からなくなった。

 仕方なくシャドーはこの戦いで真意を確かめよとした。

 ゴングが鳴ると同時に、2機はガトリングを全開にしてレーザーソードを振り上げた。

 剣撃になるかと思いきや特佐がいきなり空振りをした。

「もらったーー」

 シャドーは前傾姿勢のヌエの頭上から切り伏せようとした。
が、既にそこで勝負はついていた。

 ゴールドはシャドーが振り落としのモーションに入った瞬間にHMを発動した。

 直後ゴールドは体当たりで、シャドーのヌエをはじき飛ばすと、ガトリングとスマートガンを的確に関節に向けて撃ち続けながら接近し、レーザーソードをコクピットの前で寸止めした。

 本当に一瞬のことだった。

 横からの邪魔が入る前に勝負は決まったのだった。

 シャドーはゴールドのHM発動後硬直を狙って反撃を試みたが、既に関節には弾丸が食い込んでいて稼働しなかった。

「被害を最小限に抑えてみたのだけれど、いかがかしら?」

 ゴールドは外に出てきて、神佐に向けてにっこりと微笑んだ。

「そんな使えない駒、私の小隊には要らないわ。殺しなさい」

 神佐の見下ろすその目には、怒りすら感じられた。

「御意に」

 ゴールドはシャドーをコクピットから引っ張り出すと、ナイフで心臓を一突きした。

 胸から血を流しピクリともしなくなったシャドーを見て、神佐は何とも表現しづらいいやらしい恍惚的な表情をした。

「部隊はさっき話した通りに準備なさい」

 ゴールドにもシャドーにも言葉はなかった。

 それが何を意味しているのかは分からなかった。


 その後、ヴァリム兵のゴールドへの見方がどう変わったかというと、大した変化はなかった。

 それどころか、ファンが増えたのだった。

 理由は同情だった。

 神佐にいつ捨てられるか分からない彼らにとって、祖国のために神佐のいいなりになっているゴールドに親近感を覚えたのだった。

 そして、シャドーのことを心に止めているものは皆無だった。

 なぜなら、よくあることであったし、イヤな自分の未来にはみんな目を背けたかったからだ。









 

番外編


 その頃、ショウは帰る場所を探していた。

「くそ、命からがら逃げてくりゃ基地は落とされてるし、PFは活動限界で動けないし、神佐の疫病神め!!」

 それはショウが砂漠に足を踏み入れる前に、最後に口にした言葉だった。

 すでに、PFは機密のため破壊し終わっている。

 PFでヴァリムI近くまで戻った後、ヴァリムHを目指したショウだったが彼の前には砂漠地帯が立ちはだかった。

 もちろん、砂漠に入る前の局地森林でPFは廃棄してしまった。

「・・・・・・、・・・、・・、・、」

 既に携帯食料を食べ尽くし、水なんてものは食べたこともなかった。

 すでに口を開けることによる水分の放散にまで、気を回さねばならなくなってきている。

 食べ物なし、水なし、その上自分が向かっている基地が無事かどうかも分からない。

 この絶対的状況にありながらショウは歩みを止めなかった。

 ショウを突き動かすものがなんなのか?

 それは分からない、だが彼の目には闘志は消えていなかった。










10ターンへ続く
 


[感想掲示板へ] [目次へ] [投稿部屋へ] [踊る風さんの部屋へ]