機甲兵団J−PHOENIX プロジェクトBT
5〜7ターン
5ターン
アルサレア
基地DとEでは、静かな動きがあった。
動いているのはハクト、マガミ、ジェークだった。
作戦名ムイトラと名付けられたモノだった。
もちろん、正式な物ではないのでオペレーターすらもつかない。
その上実行すれば、軍法会議で良ければ左遷、悪ければ・・・・・・。
割の良いものではなかった。
しかし、しかしだ、それでも彼らに取っては、それは必然だった。
「結婚式は、赤いワインが飲みたいな」
そう言ったハクトに対してマガミは言った
「飲み慣れないものを飲むと、この前みたいに白いシャツにシミをつけることになるぞ」
「そう、そう、ヘタレタYみたいな染みつけたもんな。あ、でもアレはオレンジジュースだったっけ?」
冗談めいたチャットだった。
もちろんムイトラの布石だが、その無駄に見えるチャットは意図的か無意図的か、あちこちに脱線しながら5時間も続いた。
F基地では、まだケイオウがベットに寝ていた。
「特尉、もう3日も意識不明だなんて。早く起きてくださいよ、俺だけじゃ何かあったらどうするんですよ?」
タケルはぼやいた。
アルサレアGSからケイオウを助けたときには、既に意識が無い状態だったが、何をされても全く反応がないとなれば、不安にもなるというものだ。
「失礼します!」
入ってきたのはケイオウ特尉の追っかけヒルツと、見知らぬ女性だった。
「あら、先客が居ましたか初めまして私はソフィア・シュトゥール少佐です。よろしくね」
静かな物腰で、ソフィアは握手を求めた。
「は、はい。自分はタケル・ミラソード伍長です」
相手が、少佐だったことに緊張したのか、それとも美人だったことに緊張したのかは、敢えて追求しないがタケルの声は裏返っていた。
「まだ、起きてないようですね聖女」
「聖女?」
「ふふ、私に付いたあだ名よ。彼が「踊る風」と呼ばれるのと同じね」
「は、はあ」
「いいかげん、起きたらどう?」
「もう少し寝ていたいのだがな?」
ソフィアの言葉にケイオウは目も開けずに応えた。
「と、く、い・・・・・、意識があったのですか?」
「俺にとって寝る=仮死状態になるだからな。まあ、すぐに意識が戻るようにぐらいはしていたさ」
「ど、どれだけ、心配したと思ってるんですか!!」
「わめくな、身体が動かないのは事実なんだから」
「すいません」
「口だけで充分です。私がここにいる理由、貴方ならわかるでしょう?」
「ああ、申し訳ないと思っているよ。心底」
「そう、なら理由を聞く権利が私にはあると思うのだけれど、どうかしら?」
「ふう、そうだな、あるな。かの人への報告は、君に任すよ」
「ええ、任されました」
二人の会話にイマイチ入っていけないタケルが囁いた。
「先任(ヒルツのこと)、一体何の事なんですか?」
「聞くな、言いたくても言えない事なんだよ」
「よく知ってますね、そんな事」
「運命のイタズラだ、俺も出来れば知らなかった方が幸せだと思ってるよ」
一体何なんだ?自分の事は棚に上げても、他人の秘密は密の味だった。
そうこうしてる内に会話が進んでいた。
「あの未確認機は、タケルにとどめを刺さなかった。簡単に出来るのにな。だから、確信した。狙いは基地だと。俺のPFじゃどう考えても2〜3回攻撃するので限界だった。だが、それでは残念ながら仕留められないと判断した。だから、確実に倒すためにヘルファイヤーを使った。あのタイミングでしか使うチャンスもなかったしな。ちょうど、タケルが風に流されていたのはラッキーだったよ、まったく」
「そう、分かりました。貴方が命を無下にしなかったことが分かっただけでも、私がここに来たかいがありましたね。では、私の方からあの方に報告しますね。それと」
ソフィアは振り合えると、軽く頭を下げた。
タケルはその意味が分からなかったが、ヒルツは十分に理解していた。
「いくぞ、ここにいると後悔するぞ」
ヒルツはタケルに囁くと、二人は病室を後にした。
その後、そこで何が話されたのかは誰も知らない。
ただ、ソフィアがケイオウの監視役として同行する事だけが報告された。
ミラムーン
基地Cの執務室にて、ゴールドとジークが進軍の最終調整をしていた時だった。
「失礼します!!カイン=イシュタルスただいまを持って着任致します」
室内にいた二人は、驚いた。
別に、声が大きいとかではない。
パシャ!
そう、カインの首には年代物のカメラがぶら下がっていたのだった。
「へへ、グッドシャッターチャンス・ゲーット!!」
呆気にとられていた二人だったが、すぐにジークが動いた。
「いきなり何を考えてるんですか、あなたは」
「まあまあ、そうつっかかんなさんな。フィルムが押収されなかったら、お前にも分けてやるからさ」
何とも爽やかなカインの笑顔が印象的だったが、ジークの形相もそれに引けを取っていなかった。
「ふふ、面白い人ですね。私の写真おいくらかしら?」
「と、特佐〜〜」
「そうですね、まあこの写真なら2000が相場ですが、3500で配ろうかと」
「ぼったくりも良いところだぞ!!せめて、3000にしろよ」
「まあ、それでも買い手がつくなら凄い話だわ」
パシャ!
「2枚目ゲーット!!」
「いい加減にしろよ」
一瞬道を外していたジークがカインの胸ぐらを掴んだ。
「ジークさん、私はイヤではありませんよ。だから、離してあげてください、ね」
パシャ!
「う〜ん、いいねえ!!あんまり、人は撮らないタチなんだが久々に嬉しい被写体だ」
何とか理性でジークはカインを離したが、目で殺せそうな程鋭い視線は彼を離さなかった。
「面白い人ね。でも、いまならフィルムは回収し放題!!」
「うっ、勘弁願えませんか?みんな楽しみにしてる事だし、ね、ね」
指を振り振りしながら言うゴールドを、カインは泣き落としに入った。
「ダメですよ特佐、こう言うのをのさばらせるから、公認ファンクラブとかが大きくなるんですよ」
「ふふ、彼らは彼らで私のために役に立ってくださってるのだから、無下にしてはいけないわ。そうですね、販売を許可してもいいですけど、取り分は7:3で良いかしら?」
「え〜っと、もちろん俺が3ですよね」
「ええ、その代わり自由に私を撮って構いませんよ。ただし、時と場合を考えてくださいね。それと、邪な事を考えないように。既に前例があるから、大丈夫でしょうが」
「ええ、貴方を敵に回すぐらいならヴァリム軍に1機駆けする方がましですよ。それに俺はピンク系より、この国の自然の方が被写体として燃えますからね」
「ちょっと焼けちゃいますね」
パシャ!!
「貴方は例外ですよ」
「ふふ、口がお上手ですね。私の取り分は、貧しい方々や戦災の方々に等分して分けてあげてくださいね」
「全部配っちゃって良いのですか?少しは貯めておいた方が?」
「悲しい事に私も軍人です。何時死ぬとも分からない私に、残すべき相手の居ない私に、お金が何の価値があるでしょう?生きて行くに困らないだけのものがあれば、それで充分です。ファンクラブの方々も、それを理解してくださった。貴方にも、理解してもらえると嬉しいのだけれど」
「まいった、惚れそうだ。了解、手続きが分からないからファンクラブのナンバー2に送くっとくが、それで良いかな?」
「ええ、お願いします」
パシャ!!
言いたい事が山ほどあるが、とりあえず写真が手にはいる事が分かって安心したジークが睨みをといた時だった。
「ジーク伍長時間ですよ、移動とは言えヴァリム領内に入るのですから気を抜かないように。カイン伍長、ここを任せました」
ほんのちょっと前まで柔和な笑顔をこぼしていた聖女は、いつの間にか戦乙女を彷彿させる武人の顔になっていた。
「お任せを、この命に代えても守り抜きますよ」
それはカインも同じだった。
もっとも、彼がシャッターチャンスを逃す事はなかったが。
自分だけが取り残された事にすら分からなかったジークは、ただ呆気にとられていた。
「しっかりしろよ、お前がそんな調子だと彼女が怪我するぞ!!」
「わ、わかってるさ」
ジークはようやく正気を取り戻しながら、自分の頬を叩いて気合いを入れた。
ヴァリム
「ミラムーンも相変わらず人手不足のようね」
神佐小隊はミラムーンDを簡単に制圧したのだった。
しかし、かの者の瞳には新型を拝めなかったことへの怒りか、それとも別の目的が果たせなかったせいか、怒りの色が合った。
6ターン
アルサレア
イベント:作戦名ムイトラ発動!!
まだ、足下の溶岩流以外に明かりが無いその場所には3機のPFが集まっていた。
「向こうさんは結構な手練れだそうです。少なくとも、僕の基地から偵察に行った先輩のJフェニックス2機はまともに偵察も出来なかったようです」
ここまで来て、不安そうなことを言うハクトにマガミが言った。
「考えるな、俺たちは奇襲をしに来たんじゃないんだから」
「そうそう、俺たちがやるのは特攻あるのみ」
「もちろん、生き残る事が大前提でのな」
ジェークの言葉の後に、マガミはそう付け加えた。
「そうですね、生きて帰らないと始まりませんからね」
「そうそう、生きていないといけないんだよ俺たちは、そうじゃないと死んでいったものに申し訳が立たない」
ハクトとマガミは深くうなずいた。
「じゃあ、作戦を確認しますね。まず僕が特攻を駆けます。そこでPFが1機出てきたらそのまま交戦に入ります。その後、もう1機出た来たら回り込んでいたマガミさんがパワーでねじ伏せてください。この次点で僕たちはたぶん苦戦しているはずです」
「そこを見計らって、俺が後方から奇襲をかける」
「ええ、この作戦はジェークさんにかかってます。早すぎず、遅すぎずお願いします」
「任せろって」
「全員生きて帰る、いいな」
3人とも深くうなずいた。
「では、1時間後に作戦を開始します。お二人とも御武運を!!」
「お前にもな」
ジェークはそう言うと愛機に乗り込んだ。
マガミも親指を立ててそれに答えた。
1時間後
「まったく、いくら最前線とはいえこうしょっちゅう攻撃されるとやっていられないな」
シャドーは愚痴をこぼしていたが、考えている事は全く別の事だった。
「敵はたった1機だ、お前が片付けてこい」
ロキ・デザートの上官が眠たそうな声でそう言った。
「ええ、早く切り上げてきますよ」
「おおおおおーーーー!!」
ハクトは両肩のガトリングを全開にして、文字通り特攻した。
このときヴァリムの基地砲手は気づいていなかった。
この攻撃が見せかけだけの特攻ではないという事を、それは先のJフェニックスのようにすぐに帰ってしまう偵察だと思っていた。
「狙いがなってませんね、それじゃ僕を倒す事も、誘導する事も出来ませんよ!!」
そう言ってハクトが支援砲台を破壊していた時だった。
「今回は、マジで落としに来たのか?」
背後からシャドーのシャドーブレイカーが語りかけてきた。
「まずは、ラフトの敵討ち、ついでにこの基地を頂いてやらーーー!!」
それまで冷静だったハクトが、シャドーのPFを目にした途端に切れた。
こいつがラフトを殺した奴かも知れない、それが理由だった。
「冷静さを失うと、早死にするぞ!!」
レーザーソードが火花を上げながら交差する、しかしハクトは冷静さを失ったせいでガトリングの残弾を気にしなくなっていた。
2機のPFが交差するたびに、シャドーのPFはガトリングの餌食になった。
「くそ!!早く来い、くそったれ先輩!!」
シャドーの顔に明らかな焦りの色が感じられた。
「生きて帰れると思うなーーー!!」
その頃マガミは2機目があまりに出てくるのが遅い事に苛ついていた。
それとハクトの豹変ぶりが気になっていた。
本能的にイヤな予感がしていたのだ。
そして、マガミは作戦外の行動に出た。
2機目が出てくる前に基地に特攻を駆けたのだった。
ヴァリムの基地内部では、ようやく自体の重要さが分かってきたのか、急ピッチでロキ・デザートが出撃した。
「ええ、障害物が邪魔だ。俺は急いでるんだよ!!」
マガミはあろう事か、目の前のビルにビックフォーンによる特攻を駆けたのだった。
しかし、それはビルではなかった。
それは、PF発進ゲートをビルにカムフラージュした建造物であり、アルサレア軍が必死に探していた2機目のPFの出現場所だった。
そしてそれは轟音と共に起こった。
見事としか言いようのないタイミングで、マガミのビックフォーンはロキ・デザートの土手っ腹に突き刺さったあげく激しく吹き飛ばしたのだった。
「うわああああ」
予想外の手応えというか抵抗に、マガミは情けない叫び声を上げてPFごと隣のビルに突き刺さった。
しかし、そんな事は些細な事だった。
吹き飛ばされたロキ・デザートはハクトの機体に激突していたのだった。
「このヤローどきやがれーー!!」
そう叫ぶハクトの声を聞いたシャドーは、撤退を始めた。
「ふう、ここはもうダメだな。なかなか、骨のある奴らもいるじゃないかアルサレアにも」
シャドーの捨てぜりふを聞いている余裕のあるものはいなかった。
「ええ〜い、上官を見捨てていくな!!」
ロキ・デザートのパイロットも同じく撤退を始めた。
その頃、マガミはビルの残骸から抜け出るのがやっとだった。
そして、ハクトの機体も激突によってフレームが変形したせいで立ち上がれなくなっていた。
そして、トリだったはずのジェークは出番すらなく、基地は制圧されたのだった。
「ふう〜〜、終わりましたね」
ジェークが来たときには既に正気にもだっていたハクトが言った。
「そうだな」
「やりきれないな」
そう、3人はあくまで敵討ちに来ていたのだった。
基地の制圧はそのおまけだったかが、結果は基地を制圧しただけだった。
「とりあえず、アルサレアD,E基地に結果だけは報告しておく」
マガミはそう言って立ち去った。
生き残れた事は嬉しかったが、あまりのやるせなさにじっとしてはいられないマガミだった。
「ふ〜〜ぅ、空が良い感じだ」
ハクトの言う通り、空は曇っていたが雲の隙間から光の回廊が姿を見せていた。
それは、まるでラフトの魂が空に帰る架け橋のようだった。
「そうだな、良い感じだな」
複雑な心境の3人だったが、数時間後に彼らは軍法会議に襲われるのだった。
ミラムーン
その頃アルサレアの独断先行部隊とは違って、ミラムーンは巧い用兵をしていた。
「部隊配置前にD基地を落とされたのは痛かったけど、これで神佐を包囲殲滅できますね」
ちょっと前に斥候に出ていた部隊からの報告を聞いたジークは言った。
「いいえ、これは元からの作戦でしたの。ごめんなさいね、一時的とはいえ我が国の基地がヴァリムの手に落ちる事が分かっていたから、あなた達に報告しなかったの。ごめんなさいね」
ゴールドは本当に申し訳ないといった顔で、ジークに頭を下げた。
「ああ、いえ、その、頭を上げてください。そんな考えがあったなんて気づかない俺たちもどうかしてました。いえ、作戦ならうまくいって良かったじゃないですか!!」
ジークなりに気を使ってゴールドを励まそうとしたが、逆効果だった。
胸が締め付けられている、そんな顔でゴールドはうつむいた。
「良くありません、あの基地にはPFが配備されてはいなかったとはいえ、無人ではなかったのですから」
静かな口調であったが、それは悲痛な叫びにもにていてジークの心を掻きむしった。
「すいません、ホントに考えが甘かったです」
ジークの口から出た言葉は、それが精一杯だった。
「ごめんなさいね、こんな話するんじゃなかったわね。でもね、これだけは忘れないでね。私たちは戦争をしているの、どんな立て前や、どんな大儀を掲げてもやっている事は、ただの人殺しなの。命をもてあそんでる事と変わらないの」
その言葉に、ジークは間髪入れずに叫んだ。
「ちがう!!少なくとも、貴方だけは違う!!」
ゴールドは首を振り、続けた。
「違わないわ、思いはどうあれ、人が死ぬのは事実。それは変わらない。貴方がここの基地をまかされる事になったら、貴方の意志一つで人が死ぬ。それを肝に銘じてくださいね。貴方は国のために戦っているけれど、大事なのは国じゃないわ。大事なのは国を作っている人なのだから、だから例え兵士といえど無下に扱わないでくださいね。貴方ならそれが理解できると思って、今の話を打ち明けました。出来れば、その意味に気づきそれに応えてくださいね」
ジークは震えていた。
今まで立派な軍人であれと自分に言い聞かせていたが、その実どういうのが立派な軍人なのか理解していなかった。
しかし、今の言葉で分かった気がした。
少なくとも、そう思った事だけは確かだった。
体中に鳥肌が立つほどの衝撃を受けているジークを見てゴールドが微笑んだ。
「難しく考えなくてもよいのです、ただ多くの人が悲しまなくなるように努力をしてください。それが例え軍人のすべきことでなくても構いませんから、責任は私が取ります。では、私は出撃します、後は任せますね」
ゴールドは感動で固まってしまったジークの胸ポケットに、今後の細かな指示を書いた紙を差し込んで出撃した。
ジークが正気に戻ったのは、ゴールドが基地を後にした10分後だった。
その後4時間後、無人のヴァリムK基地を無事制圧したという報告があった
ヴァリム
一方、ヴァリムKにゴールドが向かっている頃、神佐小隊もミラムーンCに奇襲をかけていた。
しかし、あっさり巡回に見つかっていた。
「よーし、まずは下手に遭遇戦に持ち込まずに基地にご案内してくれ。最高のご馳走を持ってお出迎えだ」
カインはワザと巡回部隊を奇襲部隊にぶてけ時間稼ぎしている内に、基地での戦いが有利になるように巡回部隊を用兵した。
そして、巡回部隊は神佐小隊の横っ腹が基地のすぐ側を通過するように巧く通過した。
本来なら、それくらいの事は簡単に推測できる事がだ、神佐の人望の無さか、それとも森林のせいか、部隊は間延びした状態で巡回部隊を追撃していた。
そして、ちょうど神佐が基地からの攻撃を気を付けろと言おうとしたその時だった。
なぜか基地とは反対側から攻撃があった。
スマートガンの乱れ内だった。
「ミラムーン魂を見せてやる!」
WCSを無視した、乱れ撃ちだったか注意を引くには充分だった。
「ミラムーン如きが、この程度の不意撃ちで粋がるな!!」
小隊の誰かがそう叫んでカインに襲いかかったその時だった。
基地からの遠距離支援ミサイルが、神佐小隊を襲ったのだった。
「楽しいことしてくれるじゃない」
神佐はあざけり笑いながら、カタールで隣にいたロキ・デザートを串刺しいするとミサイルの群れに放り投げた。
何するまもなく、ロキ・デザートはミサイルの餌食になり粉々に消し飛んだ。
神佐以外の誰もがその光景を見て、唖然としていた。
しかし次の瞬間、第2波が来た事でみな正気に戻った。
その頃には、既に神佐は逃走していた。
取り残されたYAMABUSIは瞬間移動で、ミサイルを交していたがそれが仇になった。
カインの乱れ撃ちの射線に出現してしまったのだった。
「うわーーー!」
その隙を見逃さずに、ポリタンがYAMABUSIを撃破した。
その頃には、すでに神佐小隊はちりぢりに撤退していた。
「追わなくて良いぞ、引き際が良すぎる。伏兵に注意しつつ一旦基地に戻る」
勝って兜の緒を締めるカインだったが、実は調子に乗りすぎてスマートガンの残弾は既に底をついていた。
「こう、思惑通り行くとゾクゾクするわね」
カイン達が撤退する様子を神佐はPFの肩の上から双眼鏡で覗きながらほくそ笑んだ。
7ターン
アルサレア
ヴァリムG基地にて、ハクト、マガミ、ジェークの3人は青くなっていた。
軍法会議の結果は、射殺!!
ではなかったが、アルサレア要塞に強制送還、その後5週間の独房生活と異常なほどの処罰だった。
「これを見ると、したくないけど後悔したくなりますね」
「流石に、これはへこむね」
既にマガミは口さえ開ける事はおろか、何の反応も見せなくなっていた。
その頃アルサレアF基地にて、ケイオウもその話を耳いしていた。
「あ〜ははは、あっぱれな奴らもいるもんだ」
ケイオウは心底嬉しそうに大笑いしていた。
「笑い事じゃありませんよ、いくら何でもやりすぎですよこれは」
「どうせ俺への当てつけだろうな」
「どういうことですか?」
「あいつらを見せしめにして、俺が無茶をしたら俺を除隊もしくは射殺する算段なんだろうさ。上役の考えそうな事だ。身内の死すら紙の上の数字でしか知らない奴ららしい、愚かなことさ。戦友の死を悲しむ事を考慮に入れた用兵が出来ないクズ共が!!」
さっきまで笑っていた男が既に、鬼なっていた。
「貴方の怒りは分かりますが、これは私がどうにかします。あなたは大人しくしていてください」
ソフィアも少なからずその理不尽に腹を立てていたが、それを見せずにケイオウをたしなめた。
「な〜に、そんな必要はないさ」
そう言ってケイオウはパソコンを操作した。
「「あーーーーー!!」」
ソフィアとタケルはそろって声を上げた。
その画面には極秘任務と記された命令書が映し出されていた。
それもなぜか、実行日が3人がヴァリムG基地進行の前日になっていた。
「特尉、これは?」
まだ、頭が正常になっていないタケルを余所にソフィアが言った。
「新兵には良くある事さ、こういうのはな。だから、事前につくって他の基地にも送っておいた。もちろん、開封出来ないようにプロテクトも掛けておいた」
「ま〜だ、良く理解できないのですが?」
「これには名前がないだろ?つまり、どこの誰が勝手に動いたってよかったんだよ。動いた奴に俺がそうしろと命令した事にすれば、軍法会議もクソもあったもんじゃない」
ソフィアはようやく全てのことを理解して、くすくす笑い出した。
しかし、タケルはそうでもなかった。
「でも、日付が1日ずれてますけど?」
「事前に出したんだからしょうがないだろ。良いんだよ、あの3人は新兵なんだし準備に時間がかかったとか、尻込みしていて遅れたとか、勝手ないい訳付けりゃ。それに、遅れた事を口実に俺が適当な罰をあたえときゃあ、上役も大人しくせざる終えないだろ」
そんなんで良いのか?タケルはそう思いなが、最後の疑問を口にした。
「でも、他の基地に送ったのはどうするんですか?今更回収も出来ないじゃないですか」
「あのな〜、頭つかえよ。内部にスパイがいる事を見越してどうこうとか、敵をだますにはまずは味方からとか、アドリブでどうとでもなるだろそんなの」
それが出来るのは、あなたぐらいだ!!
そうタケルは思いながらも、伊達に特尉になったのではないという事を思い知らされた気がした。
結局、ハクト、マガミ、ジェークはケイオウの裏工作のお陰で5日間の基地防衛と、便所掃除、パーツ磨きの罰になった。
もちろん、この裏工作が通用したのはケイオウの知人達が後押ししてくれた事が大きかったが、それを知っているのはケイオウ以外ではソフィアぐらいなものであろう。
そして、3人にはケイオウからのお馴染みの語りメールが届いていた。
・・・敵討ちが出来なくてへこんでいる3人へ
お前達は良くやった、あっぱれだ!!
これは、軍事規則を破ってまで進軍した事を褒めたわけでも、敵PFを撃破できなかった事への皮肉でもない。
これは、お前達がラフトの仕事を完了させてやった事と、敵PFのパイロットを殺さなかった事についてのことを指している。
死者のために、生者がしてやれる事はほとんど無い。
そしてそれは、分かっていてもなかなか出来る事ではない。
いいか、お前達は死した戦友のために命をかけた、それは胸を張って良い事だ。
それは、人の強さだ!!
忘れるな!!
それが分からなくなった時、お前達は人でなくなる。
そうなるな、そうなったら俺に殺されると思え。
そして、知れ!!
人はすべからく皆、希望だという事を
そして、例え敵だとしても無下に命を奪うな
彼らもまた、希望なのだから、
そして、君らもまた希望だ!!
忘れるな、命あるもの皆全て希望だ
それを、忘れないでくれ・・・
ケイオウのメールにはそう書いてあった。
メールをどう理解したかは、誰にも分からないが彼らの顔は晴れていた。
ミラムーン
ミラムーンC基地は少し浮かれていた。
理由は神佐小隊を撃退できたせいだった。
しかし、神佐もただで転びはしなかった。
神佐は子飼いにしているヴァリム軍の諜報員のリヴィア・ストールを送り込んでいた。
彼女の狙いは未確認の新型機の正確な情報だったが、残念な事にこの基地には配備されていなかった。
「まったく、神佐も冗談が過ぎるわね」
リヴィアは頭に来ていたが、それ以上に悩んでいた。
神佐の事だ、何もせずに帰ろうものなら処刑もあり得る。
どうすれば、神佐の利になるか、どうすれば殺されずにすむか、問題はそれだった。
結局彼女は基地内部に偽物の時限爆弾と、本物の爆弾、そして偽物に偽装した爆弾を仕掛けたのだった。
しかし、それは全てブラフだった。
目的は誤情報を流し一時的に基地内部の機能を麻痺させる事だった。
それによって隊長機、つまりカインの機体を整備不良状態にするのが目的だった。
そして、それは面白いようにうまくいった。
ヴァリム
「ふう、もうクズは沢山ね」
神佐は目の前の二人を見ながら言った。
二人とは、ヴァリムGから落ち延びたシャドーとロキのパイロットだった。
「あなたは、どんな死に方がお好み?」
神佐は唇をなぞりながら、鋭い視線で二人を絡め取った。
ロキのパイロットは、そのプレッシャーに負けたのか嘔吐しそうになった。
しかし、シャドーは落ち着いた口調で言った。
「俺はあなたの思い通りには行かない」
その言葉を聞いた神佐は、唇をなぞっていた指をゆっくりとシャドーに向け始めた。
そして、指先がシャドーを捕える数瞬前に銃声がした。
その銃弾は確実にシャドーの心臓を捕えた。
しかし、シャドーは顔色一つ変えなかった。
そして、シャドーはこれ見よがしに防弾チョッキを見せつけて言った。
「なんでも、思い通りに行くと思うなよ」
神佐は薄く笑いながら、答えた。
「あなたがどう出るか、興味がわいたわ。それまで必死に生きなさい」
そう言った途端に、神佐はまた引き金を引いた。
今度は眉間を狙ったものだったが、シャドーは右腕の時計で銃弾を弾いて見せた。
そして、悠々と後ろを向いてシャドーはその場を後にした。
「面白い、久しぶりに退屈せずにすみそうだわ」
そう言った神佐は、妖艶な笑みを浮かべていた。
余談だが、ロキのパイロットは失禁して泡を吹いて転がっていた。
8〜9ターンへ続く