中編
めまぐるしい1日が過ぎて翌日
コバルトリーダーは????だった。
なぜ、目の前にチェンナが?
それ以前になぜ膝枕?
疑問は数限りないが、久しぶりにPFのシート以外で寝たせいかすこぶる体調が良かった。
コバルトリーダーがまったりしている頃、マコトはせっせと自分のPFを組んでいた。
それを流し目で見ていたキースとムラキは言った。
「頑張るのはいいが、出撃出来るのか?」
「いくらあいつが温厚でも、おっさんとチェンナちゃんが黙ってないだろうな」
「あまり同情もできんが、ああも一生懸命だと不憫だな」
「まあ、しょうがないさ」
ちなみに、ギブソンはまだ寝ていた。
チェンナに至っては、長時間の正座により足がしびれうなされていた。
なぜかマコトにいわれのない折檻を受ける夢だったそうな
ところ変わって、アイリ達
「ちょっと!!私の朝ご飯はどこよ〜〜〜!!」
ぶっ飛んだ叫びをあげているのは、夜明けと共にやって来たアイリだった。
リンナになだめられ、オスコットに説明されて事情は分かっているのだが叫ばずにはいられないようだ。
「すいません」
もはや小さくなるしかないジータが蚊の泣くような声で言った。
「あ〜〜〜もう、お腹空いた。イライラするわ!!こうなったら八つ当たりしてやる〜〜〜!!」
アイリは夜間の行軍で眠たくならないように夜食を抜いていたのだった。
リンナも女の子の悩みがあるとかないとかで、夜食を食べていなかった。
アイリはジータと合流してたらふく食べた後に、食後の運動をかねて進軍しようと思っていたのに、ありつけたのは自前の携帯食だった。
そして、怒りを胸にアイリはPFに乗り込むと真っ直ぐに北にあるヴァリム軍基地に向かって突っ込んでいった。
「や〜れ、やれ。食欲までは考えつかなかったよ、おじさんには」
「すいません」
「失態は次で取り戻せばいいですわ、頑張りましょう」
「へぇ〜」
リンナの棘っぽい余裕のなさがいつの間にか取れていた事に気づいたオスコットは、思わずはにかんだ。
朝食を済ませたコバルトリーダー達はミーティング中だった。
「マコトは謹慎が妥当だと思います」
厳しいもの言いはチェンナだった。
「ワシも今回は弁護できんゾイ」
「オレも2〜3日謹慎がだとうかと」
「キース、お前は?」
ずっと傍観を決め込んでいたキースにコバルトリーダーは言った。
「死人の出ない失敗なら笑ってすましたいねぇ、誰だって失敗はあるんだし」
「「「う」」」
皆思うところがあるのか口を閉ざした。
「そうだよ、ボクだってワザとじゃないんだし、もうロボも組上がったんだし、ね」
腕を組んで皆の意見を聞いたコバルトリーダーは口を開いた。
「ふぅ、いいだろうマコトに最後のチャンスをやろう。今すぐ出撃して昨日落とす予定だった基地を一人で落としてこい」
「うそ」
マコトはそう言うと固まった。
「いくら何でも無茶ですよ!!」
「そうじゃ、無茶だゾイ!!」
「せめてオレを一緒に行かせてください」
なんだかんだ言っても心配性な3人をよそにキースは音もなく笑っていた。
「昨日カルラを20機も落とされたんだから、戦力もたいして残ってはいないだろう
まあ残っていたとしても、それぐらいあしらえないような足手まといは、オレの部隊にはいらん!!
さっさと行け、昼までに落とせないようならお前はアルサレアに帰れ」
「わかったよ、行ってくればいいんだろ!!」
マコトはそう言うと、大急ぎで出撃していった。
「で、俺らはどうするんだ?」
なんて横暴な、そう思っていた一同だったがキースの一言に「え!!」となった。
「とりあえず、キースとおっさんは後ろからついて行ってやばくなったら長距離支援を頼む、できればマコトにはシステムに頼らずに乗り手としての自信をつけてもらいたいからな」
「まあ、そんなことだろうとワシはわかっとたゾイ」
当然というような顔で豪語するギブソンだったが、周りの視線は冷たかった。
「見事な采配だとは思いますが、オレは今度も出番無しですか?」
この頃目立って出番のないムラキは妙にこだわっていた。
「ちょっと、今回は私やコバルトリーダーも待機なのだから」
チェンナにたしなめられたムラキはシュンとなったが、コバルトリーダーの口からは意外な言葉が出てきたのだった。
「いや、オレは出る。最短ルートで」
「「「は?」」」
「まあ、新しいルートでも創ってみようかと思う。ムラキとチェンナは北の基地が落ちたら、マコトを残して4人で即時進軍してくれ」
「って、あんな大絶壁と氷壁の谷をいく気ですか?いくらPFだって渡れるはず無いですよ!!」
「まあ、ものは試しだ」
コバルトリーダーはそう言って笑うとその場を後にした。
「昨日完成させたアレを試したいんだろ、まあいいさおっさんそろそろ行こうぜ」
「了解だゾイ」
「俺達はどうする?」
取り残された感じになったムラキは言った。
「私は機体が届いたばかりだから、調整をしようと思いますが」
「そうか、がんばってくれ」
ムラキは肩を落として出て行った。
「あ、・・・」
チェンナはフォローを入れようとしたが、二の句が続かなかった。
そうこうしている頃 アイリ小隊
「見えてきたのはいいが、どうするんだいアイリ隊長?」
「そうねぇ〜、強引に叩きつぶしちゃいたいけどお昼がアレになるのは避けたいから、奇襲で行きましょう」
目がいっちゃてるアイリに口答えできるものはいなかった。
「で、具体的な作戦は?」
ジータがこわごわ聞いた。
「ジータとリンナがタッグで強引に切り崩してちょうだい、いけそうならそのまま制圧しちゃっていいわよ」
「危険そうならどうしましょう?」
「危険ならそのまま撤退してくれていいわ、後は勝手にくっついてきた奴らをオスコットさんがバスターランチャーでなぎ払ってくれるから」
「・・・・・・、え〜っとアイリさんは?」
ああまで燃えていたアイリが作戦に出てこないことに疑問を覚えたジータが聞いた。
「私は基地の裏手に回って、あなた達を追って出て行ったところで基地を制圧するわよ」
「でも、追ってこなかったらどうするんですか?」
「別にいいわよ、サンドバックになってもらうから。あ、ジャマしないでね一緒に殺っちゃうといけないから」
アイリは怪しい笑顔を浮かべながら言った。
「いくら何でも隊長じゃあるまいし無茶ですよ!!」
アイリの本当の実力を知らないジータが噛みついたが、リンナがそんなジータの肩をガシッと掴むと静かに顔を左右に振った。
???
ジータはリンナが何を言いたかったのか分からなかったが、肩を押さえたその力加減からこれ以上追求するべきでは無い事は理解できた。
「こんな感じだけど、いいかしら?」
アイリは傍観していたオスコットににっこり微笑んだ。
「まあ、気楽に行こうかね」
「では、作戦開始は1時間後でよろしいでしょうか?」
「30分でいいわよ、お腹空いたし」
「では、30分後作戦開始といきますか」
「「「「おおーーー!!!!!」」」
その頃、マコト
「マコトさん、そろそろ基地が見えてくる頃です。気をつけてくださいね、基地の前衛にはヌエ局地戦仕様が10機控えていますから」
マコトのフォローにとコバルトリーダーはクランにオペレーターを任せたのだった。
「了解、ボクのロボもちゃんとロックしてるから大丈夫だよ」
ちなみにマコトのPFはJカイザーマコトカスタムだった。
内部装備はそのままに、カイザーシールド、斬馬刀、MLRS、ニアフレアで出撃していた。
「いいですかマコトさん、今転送した位置まで敵を誘い込んでください。そこからならかなり有利に戦いを進めることが出来ますから」
「う〜、とりあえずはボクなりに戦ってみるよ。コバルトリーダーみたいに行かないかも知れないけど、ボクだってやれば出来ること証明したいし」
「そうですか、では健闘を祈ります」
クランはコバルトリーダーがマコトの成長を促そうとしていることを知っていたので、大人しくしたがった、そして
「聞こえますか?」
「こちらキース、感度良好!!」
「ワシも大丈夫だゾイ」
「マコトさんは、予想通り指定ポイントに向かいませんでした」
「はあ、まあある意味正解なのかも知れないがフォローする方は大変だな」
「仕方がないのぉ、もう少し前進して援護しやすい場所を確保せんとな」
「ご苦労様です、では何かありましたら追って連絡します」
「ふう、それにしてもテデヘ装備の機体から気づかれないように援護するのは骨が折れるぜ」
「もう歳か、キース」
「うるへー、おっさんこそ足踏み外すなよ」
「まだまだ、おんし如きに心配してもらわんともいいわ」
二人がそうこうしている内に、マコトは交戦に入った。
「いけ〜〜〜ロボ〜〜〜!!」
マコトは叫ぶと同時に、ジャンプ切りを決めた。
「まずは、1機目!!」
そう言うなり、マコトは向かってくるヌエ局地戦仕様にニアフレアを連発した。
5機のヌエ局地戦仕様が巻き込まれ吹き飛ぶ中、マコトはまたもジャンプすると一番奥にいたヌエ局地戦仕様に1撃入れると、またジャンプしながら振り返り起きあがろうとするヌエ局地戦仕様にMLRSを叩き込んだ。
「まだまだ〜〜〜!!」
なおもマコトは着地と同時にジャンプして、この攻撃を繰り返していった。
そして、その動きについて行くことが出来なかったヌエ局地戦仕様10機は、マコトに大したダメージを与えることも出来ずに撃破されたのだった。
それを見ていたクランは、驚きを隠せずにいた。
マコトが強いのもそうだが、本当に驚くべきはその動きだった。
異常とも言える操縦能力の高さと、ジャンプ能力の自信だった。
氷上では、グリップが効かないためジャンプ移動が有効ではあったが、それでもジャンプは扱いにくい運動なのである。
そもそも、あれだけの巨体が上下に大きく運動するのであるからパイロットに掛かる負担は相当なものだし、極端に足場が悪いため失敗した時はどうなるかわかったモノではないのだ。
それだけ見ても、マコトの操縦技術とPFへの信頼の高さはうかがい知れるものである。
「はぁはぁはぁ、ど、どうだ〜〜〜〜!!!!」
マコトが勝利の雄叫びをあげた直後、今度はヌエが20機もぞろぞろと出てきた。
「げ!!聞いてないよ〜〜〜マコッちゃんピ〜ンチ!!」
マコトがやばくなり出してる頃
アイリ小隊も作戦を開始し始めていた。
攻撃布陣はリンナ、ジータ共に空中からの急降下攻撃だった。
しかし、基地に待機しているのはイリア20機、それは20門のレーザーピストルに蜂の巣にされることを意味していた。
そして、その初弾がリンナの横をかすめ去った途端
「き、きゃぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!」
布を切り裂くような悲鳴が、スピーカーを通して基地周辺にこだました。
「い、いや〜〜〜、死にたくない〜〜〜〜」
リンナはそう叫ぶと、無秩序に飛び回ると基地の正門前に降り立った。
逆にジータはリンナをかばうためにイリア部隊に果敢に攻め込んだ。
しかし、激しい攻撃に耐えきれずヴィクトリアルウェーブを盾代わりに撤退を開始した。
ジータは撤退する際、放心してただ突っ立ているリンナ機を相撲の突っ張りの様なカッコで押しながら撤退を開始した。
「うまくいきましたね、あ、左から攻撃来ます」
リンナはスピーカーを切ると、ジータに通信した。
今までのは全てイリアをおびき出すはったりだった。
ちなみに分かると思うが、今はリンナが後方を確認しながら、ジータというPFを操っていたのだった。
そして二人の予想通りイリアは二人を追ってきた。
ただし、10機だけだった。
あまりに過剰なお芝居のせいで、かなり侮られたようだ。
「ちょっとやりすぎましたわ」
「どうする?手はず通りやりますか」
「10機ぐらい、アイリさんには朝飯前でしょうから無理に引っ張り出す必要は無いでしょう」
「そろそろですね、舌噛まないでくださいよ」
「ええ」
リンナがそう言った途端、ジータはリンナ機諸共ジャンプした。
その途端、2機がいた場所に緑色の閃光が走った。
言わずと知れたバスターランチャーである。
それを見たイリア達だったが反応までは出来なかったのか、勢いそのままに10機すべてがバスターランチャーの餌食になった。
「はい、お疲れ様!!」
そう言ったオスコットの目の前には、上半身とか半身がさよならした10機のイリアがジタバタしていた。
「とりあえず、お縄について頂きましょう」
時代ががってるな、そう思いジータは吹き出しそうになりながらリンナを手伝った。
ジータ達が上手くやってる頃
マコトはクランの指示に従って先ほど指定された場所に逃げていた。
すでにニアフレアは弾切れになっていたし、MLRSは残弾40発を切っていた。
実のところマコトは、PF3機をお釈迦にしたOSを積んで来ていたのだ。
それ故に、豪快なジャンプ戦を可能にしていたのだが、WCSの調整までは間に合わなかったため無駄弾が多かった。
しかし、それはそれで目くらましや、心理的プレッシャーになっていたので完全には無駄ではなかった。
「いいですか、既にムラキさんがランデブーポイントで待機しています。そのままジャンプを続けて移動してください」
「は〜い、わかってますよ〜」
マコトは挑発するように後ろ向きにジャンプ移動をしていた。
マコトを追撃してきたヌエ20機だったが、足場が悪いのか先頭の5機以外は少し離れて団子状態になっていた。
そして、運命の時は来た。
「と〜ちゃく!!」
マコトがそう言った途端に、先頭の5機の頭が撃ち抜かれた。
それを見た残り15機ヌエも、周囲をぐるりとミサイルの雨によって塞がれた。
「チェックメイト!!頭のない奴らは下手に動くとクレパスに落ちるぜ!!
団子になってる奴らも、もう一撃入れればみんなそろってあの世いきだぜ!!」
キースがそう宣言すると、ヴァリム軍は微動だにしなくなった。
「命の惜しい奴らは投降せんか!!」
その大声だけでも氷にひびを入れそうな一喝に負けたのか、ヴァリム兵はぞろぞろと投降し始めた。
「勝負あったな、今回は大量だなマコト」
「うん、ありがとうムラキのおじちゃん」
「ムラキさん!!」
「おじちゃん!!」
「コバルトリーダーに頼んで謹慎にしてもらおうか?」
生意気にこだわるマコトに、ムラキは意地悪を言った。
「ああ、ごめんなさいムラキさん!!」
「ふふ、お楽しみのところ申し訳ありませんが、そろそろ基地の方を制圧してくださらないかしら?チェンナもそろそろしびれを切らしてるようですから」
「了解しました。ところでやはり彼女怒ってますか、クランさん?」
「もうカンカンでなだめるのに苦労しましたわ」
ムラキの顔が青くなるのを見て、クランは笑いながら言った。
「冗談ですよ、このことはコバルトリーダーには内緒にしておくと言っていましたわ」
「ありがたい、今度なにかおごると伝えてください」
「ええ、分かりました。ところで、私もおごってもらえるのかしら?」
イタズラっぽいクランの顔を見たムラキは
「もちろん」
そう言うと基地を制圧に向かった。
その頃アイリ
「もう、いきなり基地内部に撤退するなんて余裕かましすぎじゃないの?」
レーダーから光点が減っていくのを見たアイリが吼えた。
「ああ〜〜〜もう、ホントにここは最前線かーーー!!」
アイリは叫ぶと、イリアが収納された格納庫目掛けてアサシンファングを繰り出した。
轟音と共に、半開きだったPF用格納庫は半壊した。
丁度パイロットが降りている途中だったのか、はたまた逆なのかは分からないが、全機パイロット不在だった。
「今ここでPFが爆発したら、あんた達みんな死んじゃうわよ!!」
アイリはそう叫ぶと、パイロットが乗り込もうとしたPFにアサシンファングを突きつけた。
「死にたくないのなら、投降しなさい!!こっちはお腹空いてイライラしてるんだから、容赦しないわよ!!」
ただの勧告ならいざ知らす、お腹が空いててイライラするから殺す、なんて事言われたのは初めてだったが、皆かなり思い当たるところがあるのか面白いようにそこにいた全員が投降を始めたのだった。
こうして、マコト、アイリ両小隊は見事に進軍してみせるなか
コバルトリーダーは、チェンナのいる基地に帰還してきた。
「コバルトリーダー、どうしたんですか?」
「Gエリア恐るべし!!やはり無理だった」
コバルトリーダーだけは、環境に負けていた。
基地を制圧したマコト小隊
「どう、ボク強いでしょう?」
「まあ足手まといじゃないのは証明されたわな」
「だが、調子に乗ってはいかんぞ」
「そうだゾイ」
キース達にたしなめながらも、マコトはホクホク顔だった。
「さて、ゆっくりせずに出撃するか」
「そうだな」
「え〜もう行くの?」
「安心していいゾイ、マコトはお留守番だ」
「えええーーー!!そんなのずるいよ〜〜」
マコトはギブソンに詰め寄った。
「まあ、ここに戦力を残しておく必要がある限り、戦力になることを示したマコトが残るのは妥当なんじゃないか?」
「どうしても出撃したいのなら、チェンナが来てから西方面に出撃すればいい」
ムラキは無責任な事を言った。
その頃アイリ小隊
「ふ〜〜〜、お腹一杯」
「あんなによく食べられますね」
軽く4人前をたいらげたアイリを見て、ジータがあきれた。
「運動の後はお腹が空くのよ」
味はともかく、食べまくったことによりアイリのストレスはどこかに行っていた。
「まあ、これで人もPFも補給が出来たことですし当面の不安は大丈夫ですね」
「で、この後はどうするんだいアイリ隊長?」
「そうねぇ、とりあえずコバルトリーダーの指示を仰ぎましょうか。このまま進軍してもいいけど、あまりに足並みに差が出るのはちょっと問題だしね」
「それが妥当ですね」
アイリの意見に満場一致したジータ達は一旦その場に止まることにした。
その頃
コバルトリーダーはキース、ムラキ、ギブソンが出撃のためにいなくなった基地にチェンナと共にやって来ていた。
「隊長〜〜〜!!ボクちゃんと一人でこの基地落としたよ!!」
これでもかと天狗になっているマコトの頭を容赦なくコバルトリーダーは殴った。
「報告は受けている。調子に乗るな!!いつか痛いじゃ済まなくなるぞ」
殴られたところを押さえて、涙目になっているマコトがチェンナに助けを求めるような視線を送った時
「コバルトリーダー、基地の後方からヴァリム軍が進軍してきます!!」
「な、クソ!!強引に氷河を渡ってきやがったか」
「とにかくコバルトリーダー出ましょう」
「ああ、全機出撃だ」
「おおっし、マコッちゃん頑張るからね!!」
「頑張りすぎてみんなの足を引っ張らないでよ、マコト」
チェンナがたしなめたが、マコトは意に介さずに走っていってしまった。
出撃したコバルトリーダー達にクランが言った。
「コバルトリーダー気をつけてください、敵は3機のみです。かなり腕に自信があると思われます」
「自信はかなりありそうだな、ってチェンナ!!」
緑色のタルカスを見た途端、チェンナは不用意に突っ込んでいった。
「ううううおおおおぉぉぉぉーーーーー!!!!!!!」
「っちぃぃぃ!!チェンナ後ろだーーーーーーー!!!!!!!!」
「なに?きゃぁぁぁーーーー!!!!」
コバルトリーダーの大声に我を失ったチェンナが反応して振り返ったが、反応しきれずに大きく3機のタルカスの後方に吹き飛ばされた。
「隊長!!なにを」
マコトは叫んだ。
なぜならチェンナを後方からはじき飛ばしたのは、コバルトリーダーの投げた斬馬刀だったからだ。
しかし、チェンナをはじき飛ばした斬馬刀は、数瞬を置かずタルカスのXハンマーで叩きつぶされ粉々になった。
「マコト、チェンナを連れて撤退しろ!!俺は時間を稼ぐ」
「了解!!」
マコトは大ジャンプでチェンナの元に降り立つとチェンナに呼びかけた。
「チェンナ、大丈夫!!撤退するよ、ねぇチェンナ!!」
必死に呼びかけるマコトだったが、不意をつかれたチェンナは気絶していた。
「心配しなくていいぞ、お前もすぐに死ぬんだからな」
いつの間にか、チェンナを叩きつぶそうとしたタルカスがマコトの目の前に来ていた。
「そう簡単にやられるもんかーーーー」
マコトとタルカスが戦闘に入った頃
コバルトリーダーもバールの駆るタルカスと、お付きのタルカスに距離を取られながら戦っていた。
「どうした、アルサレアの実力はこんなものか?もろい、もろすぎる!!」
右手の斬馬刀を失ったコバルトリーダーは、AAFミサイル改とXハンマーを同時に捌くので一杯だった。
「くそ、思いの外強いな。せめて後ろの奴だけでも何とか出来れば」
コバルトリーダーはマコトの方に目をやったが、マコトはチェンナ機をかばいながらよく戦っていて、フォローに入る余裕は皆無だった。
「つまらん、拍子抜けも大概せんか!!これで終わりだ!!」
コバルトリーダーを挟んでいた2機のタルカスはCB一斉射撃を発動した。
ドクン、その瞬間血液を沸騰させたコバルトリーダーが叫んだ。
「くそーーー!!後悔しろ、俺に切り札を切らせたことを!!!!!!」
コバルトリーダーは前後から自分を襲うミサイルの群れを静かに認め、HM発動ボタンに手をかけた。
そして、少ししてからPFの撃破音とも言うべき大爆発が起こった。
「が〜〜〜はは!!フォルセアのババアももうろくしたものだ、この程度の輩に手を焼くとは、笑いがとまらん。がーはははははは」
だんだん爆煙が晴れて、その先に姿を認めたPFが話しかけてきた。
「所詮ヴァリムなどこの程度か?」
「な!!」
爆煙の先にあったのは、完全に大破した2機のタルカスだった。
「ば、ばかな、何があったと言うんだ!!」
「ふ、無粋な客だな、なあ戦友!!
お客はエンターテイメントを楽しみに来てくれたわけではないそうだ」
コバルトリーダーのその声に、キースが答えた。
「悲しいねぇ、まあそう言う客にご退場願いましょう」
「何を言っておる!!」
激昂したバール目掛けて、どこからともなくサーマルプラズマライフルの弾が襲いかかってきた。
バールはレーダー範囲外からの攻撃を、ステルス機からの攻撃と勘違いをした。
「ははは、こうでなくては面白くもない。決着はワシの基地でつけるとしよう、さらばだ!!」
バールはHMを発動させると、不利と判断したのかとっとと撤退していった。
「まて〜〜〜、逃げるな卑怯者〜〜〜!!!」
「マコト!!追うな、罠かもしれん」
駆けだしたマコトはその言葉に唐突に止まった。
「う、たしかに。了解、ボクはチェンナの面倒をみるよ」
コバルトリーダーはそれを聞くと黙って基地に入っていってしまった。
一体何が起こったのか?
コバルトリーダーはミサイルが自機に直撃する瞬間にHMを発動させ起死回生を計っていた。
しかし、ミサイルはコバルトリーダーの機体の前後10メートルの場所で全て唐突に爆発したのだった。
コバルトリーダーは、それがキースやギブソンの神技と判断すると爆煙が晴れない内に後ろにいたタルカスを斬馬刀で切り捨てた。
ちなみにマコトの方にいたタルカスは、ムラキの攻撃で右足を破壊されたところをマコトに畳みかけられたのだった。
基地内の一室に一旦集まったコバルト小隊
「お前に何があったのか知らないし、俺は興味もないが、勝手に死に急ぐな愚か者!!」
椅子に座っていたチェンナを、斜め後ろに座っていたギブソン諸共張り倒したコバルトリーダーはそのまま続けた。
「お前が勝手に死ぬのはいいさ!!
だがな、何にも分からない新兵達はお前についていっちまうぞ!!
その結果、お前は生き残れてもお前に続く者は誰一人生き残りはしないだろう
お前はお前の後を追った者達の死に報いることが出来るのか?
俺ですら出来ないことに、今のお前に出来るものか!!
強者たり得たければ、弱者の心をしれ
何のために戦っているかをいかなる時でも忘れるな!!
お前にはそれが出来るのだから」
コバルトリーダーはそうまくし立てるとその場から去っていた。
「チェンナ大丈夫?」
マコトが駆け寄ってきたが、チェンナは睨み付けるような視線を向けるとマコトの手をはねのけた。
それを見たムラキはコバルトリーダーの後を追った。
「気に入らない、そんな感じだろ?
何も知らないのに、それなのに正論を並べるコバルトリーダーがムカツクだろ」
キースの言葉にチェンナは怒りに燃えた目を、悲しみの色の目に変えて小さく泣き出した。
それを見たギブソンはマコトの頭に手を乗せると、部屋の外を指さして二人で出て行った。
その頃
コバルトリーダーはトイレで吐いていた。
「コバルトリーダー、大丈夫ですか?」
コバルトリーダーは顔中に発疹を浮かび上がらせ青い顔で吐いていた。
首から上しか肌が露出していないコバルトリーダーだったが、多分全身こんな感じなのだとムラキは思った。
「捨て置け、どうせただの拒絶反応だ。じきに収まる」
「拒絶反応?!コバルトリーダーまさか、もう身体が限界なんじゃ」
「捨て置けと言っただろう、どうせじきに腐って地に帰る死人のことなど」
コバルトリーダーはそう言うと膝から崩れ落ちた。
ムラキはコバルトリーダーを抱き留めると医療室に駆け込んだ。
その頃
ようやく泣きやんだチェンナにキースは言った。
「あいつはマジでチェンナちゃんのことを心配してたんだよ
だからあんなひどい言い方をしたんだ、わかってやってくれよ」
チェンナは赤い目をこすりながらそれでも納得できないのか、両足を抱えてうずくまっていた。
「あいつはな、君たちを助けるために禁断の切り札を切ろうとしたんだ。それは今のあいつにとって禁忌であることだった。それが分かっていても、あいつはそれを使おうとしたんだ、なんでだかわかるか?」
キースの柔らかな声に顔を上げたチェンナは聞いた。
「ヘルファイヤーを使ってどうやって私たちを助けるつもりだったんですか?」
キースは驚いた顔をしたが、すぐに納得した顔で言った。
「あいつは死人を自称する
それは死を恐れないこと、なにも失わないことを意味してる
だから、あいつは平気な顔をして自爆する
死者は何も失わない、そう言ってな
では、あいつにとって生者とはなんだとおもう?」
「私たちみたいに死ぬ人間ですか?」
キースはゆっくりと首を振って見せた。
「半分当たり、あいつにとっての生者とは、生き続けようとする者のことさ
故に、あいつは死者の奥の手ヘルファイヤーではなく、生者の切り札を切ろうとした
しかし、ここからが問題なんだ
死なない、もしくは死んでいる死人が、生き続けようとするのはおかしいだろ?
君たちを助けるには、あいつは生き返らざる負えなかった
しかし、あいつはそれをよしとしなかった
もの凄い葛藤があったと俺は思う
一歩間違えば精神崩壊だってあったかも知れないような、そんな中でも
あいつは君たちを生かすために生き返ろうとした
前に言ったよな、死人を生き返すことがどれだけヤバイ事かって
あいつは無茶苦茶で、横暴な奴だが、覚悟もある「漢」だ
忘れないでやってくれ
あいつは俺達の誰一人も欠けることのなく
万人に誇れる友だと思っていることを」
チェンナはキースの言葉を聞いて、全身に鳥肌が立った。
「私は、そんな・・・」
キースは人差し指でチェンナの唇を押さえると
「あいつが勝手にそう思っているだけだよ
でもな、俺はそう思われていることに誇りを持ってるつもりだ
だから俺は、常にそう思われて恥ずかしくないように努力しているつもりだよ
チェンナちゃんも、身に余る評価だと思うのなら、そう思わなくていいようになればいいここには、大した奴らが山程いるんだからさ」
キースは立ち上がるとチェンナに手をさしのべた。
「はい!!」
チェンナはその手をしっかり握りしめると、ハンガーに向かった。
その頃アイリ小隊
「そう、思いの外北ルートは苦労してるみたいね」
クランからの通信でコバルトリーダーが倒れたことや、バールの奇襲を受けたことについて報告をうけたアイリが言った。
「リンナちゃん、心配?」
左胸を押さえたリンナは首を縦に振った。
「コバルトリーダー達に敵の戦力が集中してる今、私たちが好き勝手出来るいいチャンスと考えるのが妥当だわね」
一同うなずいて見せた。
「そこでリンナはここから西の基地を落としにいってもらえるかしら?キース達と挟み撃ちにすれば無理なく落とせると思うから頑張ってね」
リンナは遠慮がちにいった。
「よろしいのですか?」
「いいのよ、恋する乙女は少しワガママな方がかわいいもの」
そんなものなのか?
真面目な顔で悩んでいるジータを見たオスコットが言った。
「とりあえず、恋に恋いこがれてる若者はカッコつけないとな」
「何ですかそれ!!」
ジータは顔を赤くして笑っているオスコットに噛みついた。
「はいはい、その辺にしときなさいよ。リンナ、私たちは北東に進軍するからその報告も忘れないでね」
「はい!!」
「二人ともいい?」
「了解です!!」
「もちろん」
それから10分もしないうちに4人は出撃していった。
その頃コバルトリーダー達
「さて、どおするかのぉ」
「とりあえず、また奇襲されるわけにはいかないから俺とおっさん、それから〜〜〜マコトはここに残るか」
「ええ〜〜〜!!やだよ〜さっきの戦い見てたでしょう?チェンナを守ってボク大活躍したんだからね、進軍にボクはついて行くよ!!」
キースの意見に露骨に反発するマコトだったが、キースは意にも介していなかった。
ただ、チェンナには痛かったのかうつむいてしまった。
「ふ〜、いいかマコト。ワシらが残るということは強い者がここを守るという事じゃぞ」
「あ、そうか。でも進軍も捨てがたいし・・・・」
キースの思惑とはちょっと違うが、とりあえずキースは話を進めることにした。
「シュキからの報告でリンナが北東の基地に向かっているらしい、敵がいるかわからんがとりあえずムラキと、チェンナそれに戦友でどうだ?」
「ああ、妥当だな。任せろ」
「「「「「コバルトリーダー!!!!」」」」」
当たり前のようにそこにいる人物にキース以外の誰もが驚いた。
「寝てなくていいのですか?」
チェンナがコバルトリーダーに駆け寄るとそう言った。
「死人の心配までするとは、ずいぶんと余裕が出てきたようだな」
「そんなことより、まだ動かない方が」
「心配するだけ無駄だよチェンナちゃん、それじゃ今すぐ作戦を開始ししますかね」
コバルトリーダーはキースの言葉にうなずくとハンガーに向かって歩いていってしまった。
「はは、大丈夫なのか?」
あきれるムラキにチェンナが言った。
「私たちが全力でフォローするしかないです。行きましょう」
決意を秘めたその瞳を見たムラキも力強く首を縦に振った。
「うむ!!」
数時間後 コバルトリーダー小隊
コバルトリーダー達は北東の基地を制圧しようと進軍していたが、コバルトリーダーが見たのは健気にもたった一人でレッドバイザー部隊と戦っているリンナだった。
「ハァァァーーーー!!」
残骸が多いので何機で攻めてきたのかは分からないが、かなりの敵を撃破していたようだった。
「ふむ、通信がこないことから俺達に気づいていないようだな」
「ふむ、とか言ってないで援護に!!」
チェンナはそう言うと飛び出していった。
「まったく、ムラキお前も行ってこい!!俺は体調が優れないから少し様子見させてもらう」
「大丈夫ですか?」
「さっさと行ってこい、出番が無くなるぞ」
「は、はい」
「リンナ助太刀するよ!!」
チェンナはそう言うと、ブーストサイフを振り上げドリルアームで襲いかかってきたレッドバイザー2機の首をはねた。
それに追い打ちをかけるようにムラキがサーマルプラズマライフルを乱射した。
「隙はつくらせん!!思う存分暴れてくれ!!」
久しぶりの出番なのだが、どうにもサポート体質が抜けないのかイマイチ目立たないムラキだった。
それを見たコバルトリーダーは
「はは、どうにも控えめな奴だな」
そう笑った。
「お二人とも、すいませんがジャマですわ!!」
リンナはなにやら鬼気迫る声で叫んだ。
「ちょっと、リンナ?どうしたの」
「嬢ちゃん?無茶だ」
しかし二人の声が届いていないのか、リンナは怯みもせずにレッドバイザーに立ち向っていった。
しかし、無謀に思われたリンナの攻撃だったが口調に対してリンナは冷静だった。
「カァァァーーー!!」
攻撃してきたレッドバイザーの隙をことごとくつく攻撃によって、リンナはみるみる間にレッドバイザーを全滅させたのだった。
「一体なにが?」
リンナの態度もそうだが、その強さにもムラキは驚いたのだった。
もっとも、ムラキはただ数にとらわれ相手の質が悪いことに気づいていなかった。
その頃 アイリ小隊
「敵はマウントハンター20機だよ、ジータ撃ち落とされないようにね」
「一言余計だ、シュキ!!」
「はいは〜い、そこまで。とにかく至近戦に持ち込まないと勝負にならないわね」
「それは分かりますが、どうするつもりですか?」
「たまにはルーキーも頭使わないと呆けちまうぞ」
ジータは渋い顔でオスコットを見た。
「はぁ〜、めんどくさいわね」
アイリはそう言うと基地に向かって特攻をかました。
「あんた達は出てこないで!!」
中・遠距離型のマウントハンターは基地の前面に整列すると、一斉にアイリを攻撃し始めた。
あきれる程のミサイルとバズーカの弾がアイリを襲ったが、アイリは束になって飛んでくるミサイルにマシンガンを撃ち、丁度両軍の中間地点でミサイルを誘爆させて見せた。
また、バズーカの弾もその誘爆に巻き込まれ、まともにアイリまで届かなかった。
「ヒュ〜〜!!やるねぇ、さすがアイリちゃん」
「夢でも見ているのかボクは?」
半分あきれるオスコットに対し、接近戦(打撃戦?)オンリーだと思っていたアイリがムラキ並みの射撃でマウントハンターを翻弄しているのを見て、気が遠くなりかけているジータだった。
バズーカをあっという間に使い切り、ミサイルが届いていないことにいい加減気づいたマウントハンター部隊だったが、統率が取れていないからこそ、逆に動けずにいた。
まあ、無理に隊列を崩すと味方のミサイルの餌食になったり、出来もしない接近戦を強いられることぐらい、そこにいる全員が分かっていたから動けないのも事実だった。
そして、30分とかからずにミサイルまでも撃ち尽くしたマウントハンターとアイリとの間には、本来氷に閉ざされ日にさらされるはずのない大地が顔を出していた。
「ジータ、オスコットさん出番よ〜〜〜!!」
「なんともお手軽な話だな」
「拍子抜けですね」
「うだうだ言わない!!全員生け捕りにするのよ、いいわね!!」
「「はい!!」」
アイリに気押された二人は、そう答えるとそそくさとマウントハンターを生け捕りにしていった。
その頃 コバルトリーダー小隊
「一体どうしてあんな行動を取ったんだ?」
コバルトリーダーの中ではリンナはもっと協調性があると思っていただけに、理解に苦しんでいた。
リンナは顔をうつむき赤くなって上目使いに言った。
「あの、笑いませんか?」
「はぁ〜〜〜〜〜、命がけの戦いだぞ、怒りこそすれ笑うモノか」
コバルトリーダーは特大のため息と共に言った。
「実はその〜、賭というか、願掛けをしていまして」
「願掛け?」
一体何の?
ムラキは不思議そうな顔でリンナを見た。
「その私一人でレッドバイザー20機を撃破できれば、コバルトリーダーは無事、出来なければアルサレアに強制帰還するとまあそんなことを・・・・・」
リンナは耳まで真っ赤にしてうつむいた。
チェンナはリンナのその一途さが可愛らしくも、うらやましくもあった。
当のコバルトリーダーは、首をうなだれあきれるしかなかった。
「わかった、まあその件はここまでにしよう。さて、ヴァリム軍がこの基地に地形を利用して奇襲をかけられる以上、ここに戦力を残さずにはいられなくなったな。そこで、俺とチェンナはこのまま進軍、リンナ、ムラキはここの防衛を頼む、以上だ」
「待ってください!!私より、リンナを連れて行ってあげてください」
チェンナは身を乗り出して抗議した。
「だめだ、お前はついてこい、お前は乗り越えるべき事があるだろう?
それにリンナは絶好調のようだが、そのせいで身体の疲労に気づいていない、今無理をすると死ぬかもしれんぞ
ついでだから言っておくが、ムラキは接近戦オンリーのリンナには必要不可欠な戦力だからここに残ってもらう、いいな」
チェンナ、リンナ、ムラキ3人とも首を立てに振らずにはいられなかった。
それを見たコバルトリーダーは
「納得してくれたのなら、チェンナ行くぞ」
そう言うとコバルトリーダーはさっさとハンガーに向かって歩いていった。
チェンナはリンナに頭を下げるとコバルトリーダーの後を追った。
「うまく、いきませんね」
リンナは悔しいのか悲しいのか分からなかったが、両目から涙が出るのを押さえられずにいた。
「そうだな・・・・」
ムラキも涙こそ見せなかったが、それでもやり場のない気持ちを抑えきれず震えていた。
その頃 アイリ小隊
「さ〜って、どうしたものかね」
オスコットに振られたアイリは腕組みしてジータを見た。
「ボクですか?」
「「そう」」
「はぁ、やっぱり叩いておくべきかと。万が一に備えて」
今アイリ達が悩んでいるのは、西側のヴァリム軍本拠地を叩くか、東側にある離れ小島の拠点を叩くかであった。
「で、誰が行く?アタシは行きたくないわよ」
「おじさんも飛行性能に自信がないから行きたくないなぁ」
別に離れ小島までPFで飛んでいくわけではなかったが、戦闘になれば海に落ちる事も考慮せねばならないだろう。
まあ、しかしそれもいい訳なのだ。
渋っている一番の理由は、戦略的にあまり意味がない上に往復するだけで大量の時間を取られてしまい、コバルトリーダーと行動を共にする事が出来なくなってしまうからだった。
何も今更出番がどうのこうの言うアイリ小隊ではなかった。
いままで好き勝手暴れていたのだ、拠点防衛でも文句の言いようがなかった。
それでもコバルトリーダーと合流したいとアイリ達が思っているのは、ひとえに倒れたと報告があったコバルトリーダーの負担を少しでも減らしたいと思ってのことだった。
普段はめんどくさがり屋のオスコットでさえもそう思っていた。
もちろん、ジータは言うに及ばすだった。
そして、3人はいつまでも悩むのだった。
翌日
「な〜んか、全く元気ね」
不思議なモノを見るような目でコバルトリーダーを見たアイリが言った。
「なんか元気なのをがっかりした目で見られるのは侵害だな」
「倒れたと聞かされれば心配しますよ、誰だって」
「はぁ、ジータ。死人の心配などいちいちするな無益だ」
「まあ、みんなお前さんの事を心配していたんだ。照れる必要はないぞ」
コバルトリーダーは別に照れているつもりはなかったが、そういうことにした。
「で、俺が元気なのが分かったところで・・・・」
死人が元気?戯けたことをコバルトリーダーはそう思って思わず小さく笑ってしまった。
急にどうしたんだ?
そんな視線を感じながもコバルトリーダーは続けた。
「とりあえず、進軍だが西には俺、ジータ、チェンナで向かう。アイリ、オスコットは東の拠点を落としてくれ」
「はぁぁぁ〜〜〜、まあある程度予想はしてたけどね」
「中間管理職は辛いよね〜」
アイリとオスコットはがっくりとしながらも、潔くハンガーに向かった。
「さて、貧乏くじをあからさまに引かせてしまった彼らに報いるためにも、威張っていきますか」
「そうですね」
「うう、なんか不安が残る」
ジータの不安はこの後見事に的中するのだが、まあそれはまたの話。
その後、アイリ小隊は順調にコマを進めヴァリム軍基地を制圧した。
コバルトリーダー小隊も順調にコマを進め、とうとうバールのいるヴァリム軍最後の拠点にやって来ていた。
「ようやくここまで来ましたねコバルトリーダー」
「いまだにベリウムがどこにいるかも分からないのに、大はしゃぎするなジータ」
ジータはたしなめられるとうなだれた。
「チェンナ、無理に気負う必要はない」
「分かってはいるのですが、どうしても力が抜けないのです」
コバルトリーダーは苦笑すると言った。
「あるがままを受け入れればいい、気負う必要も、無理に力を抜く必要も有りはしないさ構えていても、予想外のことには対処できん。わかるな?」
「言いたいことは分かるのですが・・・・」
「ふぅ、前に俺が目を閉じて戦っていたのを覚えているか?」
「はい」
そう答えるチェンナに、そんな馬鹿な!!とジータは思ったがコバルトリーダーならやりかねないかもそう思い頭が痛くなった。
今回のエリアでアイリの桁はずれた凄さを見て、自分に嫌気が差しそうだったにもかかわらず上には上がいると知って、ジータは勝手に自己嫌悪に入っていってしまった。
「目をつぶれば、耳がさえるし、肌が敏感になる。俺は色々考えて疲れる時は良くそうする。頭が空っぽになれば、視覚をつぶされている方がよく見える」
「見える?」
ジータは相変わらず無茶苦茶言うなと思った。
「PFの回りを流れる風や、大気の振るえを知覚できれば、見えないモノまで見えるようになる。チェンナなら俺が言わんとすることが分かるだろう?」
「はい、でも不思議ですね。マヌール族の者でもないのにそんなことを言えるなんて」
「ふふ、ヌマール族もアルサレア人も所詮は同じ人間だ、不思議がることは何一つ有りはしない。逆をかえせば、俺達はベリウムの考えも分かると言うことだ」
「あまり、分かりたくないですね。でも、そう考えるとコバルトリーダーのお考えも理解できると言うことですね」
「生者は俺の考えなど分からない方がいい」
「うう、なんかボクだけ蚊帳の外」
ジータは話に入れずに泣きが入った。
「知識はあるに越したことはないが、何事にも自分のスタイルを確立することが肝要だ。お前はそれが出来ているだろう?いちいち振り回されるな、そんな風だといつまでもシュキに頭があがらんぞ」
「どうしてそこでシュキの名前が出てくるんですか!!」
「どうしてでしょうね」
ようやく余裕が出たのか、チェンナまでジータをからかい始めた。
その時だった。
「コバルトリーダー、ヴァリム軍最終拠点から大量のPF反応確認、識別でます。そ、そんな!!」
「落ち着けクラン、現実は小説より奇なりだ。今更驚くことなど有りはしないさ」
「はい、ご報告します。まず拠点後方にマウントハンター20機、上空にはカルラ20機、前衛にONIGAMI20機展開しました」
「60機も!!」
「どっからそれだけの兵力を!!」
「ここまで何の抵抗も見せずに進軍させたからおかしいとは思ったが、思いの外余力があったな。多分基地内部にもう20機ぐらいはいるんだろうな」
コバルトリーダーはさも楽しそうに笑っていった。
「コバルトリーダー楽しそうなのは結構ですが、策はあるんですか?」
「いくら何でも、今回は特攻というわけには行きませんよ」
「クラン、とっておきを使うから準備を、それと傘を頼む一雨降りそうだから」
「天気はいいですけど?」
「素直すぎるのも考えすぎかもね」
チェンナはそう言うとジータを笑った。
「とにかく一旦引くぞ、色々あるからな。俺がしんがりをするからお前らから先に行け」
「私はここに残ります」
「ボクも残ります」
ジータもチェンナも一歩も譲らないそんな顔をしていた。
「はは、一機駆けをすると思っているのか?」
「「はい」」
「いや、ハモられても困るんだが・・・・、動かないようだな、よし帰るぞ」
そう言うとコバルトリーダーは先頭に立って帰還を始めた。
流石にそこまでされれば二人も従わざる負えなかった。
基地までの帰還中 コバルトリーダー小隊
「コバルトリーダー!!急にレーダーが!!」
チェンナの呼びかけにジータも自分の機体のレーダーがおかしくなっていることに気づいた。
「どうなってるんだ?」
「原因はアレだよ」
コバルトリーダーの指さした方向には、大型の円柱が刺さっていた。
「げ!!」
「なにあれ?」
ジータは知っているが、あまり倉庫の備品に詳しくないチェンナにはそれがなんだか分からなかった。
「こいつを基地まで持って行くから手伝ってくれ」
コバルトリーダーがそう言うと、ジータは渋々つきあった。
チェンナはそれがなんなのかいまだに気づけずにいた。
「あの〜、何なんですかこれ?」
「この戯けたミサイルはシューティングアロー、某天才のとんでも強襲用輸送機だよ」
「これが、・・・・輸送機?」
「深く考えない方がいいですよ、紙一重のとんでも輸送機ですから」
「はぁ」
今度はチェンナが置いてけぼりになった。
基地に帰還したコバルトリーダー小隊
「あの〜、何ですかこれ?」
コバルトリーダーは基地に帰還するとシューティングアローの中身を取り出した。
「これが俺のとっておき、崩剣ブレイクインパクトだ」
「宝剣・・・」
PFにもそんなものがあったのか?
チェンナの頭の中にはそんな疑問すら浮かんでいた。
「とりあえず、どうにもとんでもない代物なんでな説明するから来てくれ」
コバルトリーダーはそう言うと食堂に向かった。
「さて、飯にしよう」
そう言うと、コバルトリーダーは中華鍋を振り始めた。
・・・・・・行動が読めない
「コバルトリーダー説明は?」
「そう焦るな、出撃は明日の明け方だ」
「寝起きを襲うつもりですか?」
「いや、狙いは別のところにある。とにかく今は飯だ、よし出来たぞ」
「はやっ!!」
「中華なんかは、火力さえあれば瞬間芸だよ」
コバルトリーダーは笑いながら、チャーハンと野菜炒め、残り物の玉子とじを一気に作って見せた。
「とりあえず、頂きましょうか」
チェンナがそう言った時だった。
「ちょ〜〜〜と、まったーーー!!」
アイリが叫びながら入ってきた。
「アイリさん、それにオスコットさんも!!」
チェンナとジータが驚く中
「いいタイミングだな、出来たてだぞ」
「急いだかいがあったってもんだな、アイリちゃん」
「とりあえず、色々聞きたいことがあるけど。いまはいっただきま〜す」
アイリはお腹が空いていたのか、もの凄い勢いで食べ始めた。
アイリの大食漢を知っているジータとオスコットもそれに続いた。
しかし、チェンナだけは出遅れてしまった。
そして、皆が夢中で食事をしている中コバルトリーダーは食堂を後にした。
食後コバルトリーダーはホワイトボードを持ってやって来た。
「さて、腹もふくれた事だろうし、人の話も聞けるだろうから説明に入ろうかね」
そう言うとコバルトリーダーは設計図らしきモノを書いたホワイトボードをみんなに見せた。
みんなが何じゃこりゃ?!と思っている中、チェンナだけは宝剣じゃなくて崩剣なんだと変なところで納得していた。
「とりあえず、難しい説明なんかはむしろ欲しくないだろうか特徴だけ話すぞ」
「そうして、こんな図面見ても技術屋じゃない私にはさっぱりだわ」
「恥ずかしながら、ボクもさっぱりです」
皆、同じ顔をいていた。
「俺も細かい説明は時間が掛かるからしたくない」
コバルトリーダーは苦笑して見せた。
教えること、そして理解させることは、何よりも難しい事だと言うことをコバルトリーダーは知っていた。
「ます、こ・・」
コバルトリーダーがそう言いかけた途端、人影が飛び込んできた。
その人影はコバルトリーダーの両肩に手を置くと肩を上下させ言った。
「・・・・・・・・・・、わ、わたした、ち、も、さくせ、んに、・・・」
思いの外ダッシュしたのだろう、言葉になっていなかった。
「ああ、とりあえずジータ水だ」
「あ、はい!!」
そこに現れたのは、リンナとムラキだった。
リンナ達は拠点防衛をしていたのだが、奇襲をかける基地をコバルトリーダーが落としたことを聞きつけ後を追ってきたのだった。
5分後
「あ〜、新入生のリンナちゃんとムラキちゃんだ。みんな拍手〜〜」
コバルトリーダーはオスコットのマネをして言ってみた。
「初めまして担任のオスコット・・」
そう言いきらない内に、リンナの刺すような視線が飛んできた。
キースやギブソンがいないためか、みんな乗りが悪かった。
「コバルトリーダー、いい加減にしてください」
「ははは、いや〜思わぬ援軍に作戦練り直す時間が欲しくて、ついな」
「そうだぞ〜、みんな乗りが悪いぞ。おじさんすねちゃうぞ〜」
そう言い張る二人に、あきれていいのか、怒っていいのか分からなくなる一同だった。
「さて、作戦会議と行きますか!!」
「って、もう作戦思いついたの!!」
流石のアイリもあきれたのか吼えた。
「ん、まあフィーリングだよ作戦なんかはさ」
コバルトリーダーは笑っていたが、みんなは不安だった。
こういう時のコバルトリーダーの作戦は、色々な意味で危険極まりないモノだと言うことをみんな知っていたからだ。
「じゃ作戦を公開する前に、俺のとっておき崩剣ブレイクインパクトの説明をさせてもらいぞ、なにせこれは使いようによっては俺達を全滅させかねんからな」
流石にそれは・・・・、あり得ないと言い切れない自分達がそこにはいたのだった。
「まず、この剣はニブル改を主成分に作ってある」
コバルトリーダーがそう言った途端、アイリがコバルトリーダーの胸ぐらを掴んで前後に振り回した。
「ちょっと!!どうしてそういうことするのよ、あんたは!!道理で、レーダーに不調が出る訳よね、全滅ってこういう事!!」
マッハの速度で切れたアイリの手綱を引くキースがいないせいか、コバルトリーダーはなすがままだった。
そこに割って入ったのはリンナだった。
「やめてください、私のコバルトリーダーに何するんですか!!」
平然と凄いことをいうリンナだったが、惜しむらくべきかコバルトリーダーの意識は半分飛んでいた。
5分後
「あ〜、とりあえずだ。ニブル改で作ってあるが、レーダーとWCSの性能を害さないようにすることがの剣には出来るんだよ」
冷静になったアイリはそれを早く言いなさいよと思いながらも、それを言わさなかったのは私か、と少しだけ反省した。
「そんなこと出来るんですか?」
詳しいことは分からないが、それなら使えるかもとジータは思い言った。
「理屈は簡単だ
そもそもが磁気を帯びている金属だからレーダーに悪影響を与えるとされているが、原因はもっと別のところにある
それはニブル改の磁気がでたらめに発生している事が原因なんだ。
裏を返せばだ、磁気の方向が一方行になれば・・」
「レーダーに悪影響を及ぼさない」
チェンナがそう言ったが、ムラキやアイリはホントか?と疑いのまなざしを向けた。
「流石にそんなに甘くはないよ、チェンナ」
コバルトリーダーは苦笑いしていった。
「で、どうなったら磁気が無効になるんですか?」
「まず磁気が一方行になるメリットってな〜んだ?」
???
「は〜い、さっぱり分かりませんで〜す」
オスコットがそう言うと、皆うんうんとうなずいた。
「では、この剣の最大の特徴を大公開!!
実はこの剣は磁気の方向性を電気で操ることによって、リニアモーターシステムを作り剣内部にある重さ1トンの重りを前後に移動させることにより、シラギク以上の扱いやすさと、Xハンマー2並の攻撃力を生み出すことが出来るのだ〜〜〜!!」
コバルトリーダーは子供が100点を取ったのを見せびらかすような顔で言った。
「もしそれが本当なら、最悪の兵器だわっって!!1トンの重りって何なのよ、一体何トンあるのよその剣は!!」
またアイリが吼えた。
「重りはドゥークSで作ってみました、剣の総重量は3トン弱かな」
「3トン!!・・・腕がもげるな」
ムラキが冷静に突っ込んだ。
その横でアイリは突っ伏していた。
「な〜に、その辺は俺の技量でなんとかするさ」
「あの〜、それでレーダーはどうすると使えるようになるんですか?」
リンナが控えめに聞いてきた。
「リニアシステムが発動すると、磁気の方向を制御できるだろ
要するにそれは磁気を剣内部で干渉させて中和する事が出来ることを意味しているんだよ
ようは剣の形をしたでっかい電磁石だと思ってくれればいいさ
まあ、本物の電磁石と違って電気を通してない時に磁気を発生しているがね」
「なんか、なんでもありね」
アイリがため息ながらにつぶやいた。
「落ちもある、刀身が斬馬刀の二倍ぐらいあるから持ち運びに専用の鞘が必要なことと、ワザとレーダーやWCSを攪乱する時以外は常にジェネレータ出力を消耗すること、他にも色々あるんだよ。まあ、一番の問題は使いこなせるかだけどね」
笑いながら言うコバルトリーダーに、ジータは一抹の不安を覚えた。
「大丈夫だよ、コバルトリーダーは見事に振り回してみせてましたから」
「ああ、よかった」
チェンナはジータに完成直後のお披露目の光景を思い出していった。
「まあ、とりあえず崩剣の話はこれぐらいにして、作戦に入ろう
もちろんこの作戦には、崩剣のレーダー&WCS攪乱も計算に入っているから皆注意してくれよ」
ここまで聞いただけでも、これからコバルトリーダーの口から出てくる作戦がとんでもないモノだと言うことに確信を覚えたアイリ達は、お腹一杯になった。
あわよくば、今日はこの辺で勘弁して欲しかった。
ちなみに、ジータとリンナは崩剣とそれを使いこなすコバルトリーダーの姿を想像して、無駄に熱くなっていた。
後編へ続く