後編


 

 そして翌日早朝

 ヴァリム軍最終拠点上空輸送機

「クラン、後どれぐらいだ?」

「およそ15分後です、コバルトリーダー出撃どうぞ!!」

 コバルトリーダーはクランに微笑むと、ジータ、リンナに向かって言った。

「祝福を!!」

 そう言うとコバルトリーダーは単独で出撃していった。

「お願いですから死なないでくださいね」

 リンナのその言葉はコバルトリーダーに届かなかった。

 ジータも静まらぬ心臓の鼓動に苛立ちを感じながら祈ることしかできないでいた。

「ムラキさん、お願いですよ」





 

「こちらクラン、コバルトリーダーの出撃を確認!!オペレーション:シューティングレイン開始してください」

「二人ともいっくよ〜〜!!」

 マコトはそう言うとロボのボタンを押した。

「了解!!」

「任せるゾイ!!」

 クランの通信を受けたキースとギブソンが動き出した。

「超超超長距離支援ファイヤーーーーー!!!!」

「オーーーラオラオラーーーー!!!!」

 二人はマコトが開けた空の大穴に向かって一斉射撃開始した。






 


 ヴァリム軍基地を見下ろせるレーダーに引っかからない高台の上

「こちらアイリ、気持ちは分かるけど出来ることといったら深呼吸ぐらいよ」

 そう言われたムラキは落ち着かないのか、深呼吸を始めた。

「まあ、気楽にいこうや。失敗したらお前さんが隊長になればいいだけだからさ」

「オスコットさん!!」

「チェンナ、落ち着きなさいよ。あと15秒、しっかり気張りなさいよ!!」

「ああ」

 覚悟を決めたのかムラキの目はすわっていた。

 そして、ムラキは引き金を引いた。








 

 ちょっと前のコバルトリーダー

 コバルトリーダーはヴァリム軍最終拠点のレーダーが届かない遙か上空にいた。


「イッツ、ショーターーーイム!!」

 コバルトリーダーはヘルファイヤーを真下に放つと、その上にある乱気流に向かって上昇した。

 ちなみに、コバルトリーダーの真下にはカルラ20機と基地があった。

 そして、コバルトリーダーの狙いは基地の破壊でも、カルラ20機の撃滅でもなかった。

 コバルトリーダーの狙いは、上空の乱気流だった。

 そう、ヘルファイヤーの爆風で乱気流を吹き飛ばすのがコバルトリーダーの本当の狙いだった。

 そして、コバルトリーダーが乱気流に突入して2分が過ぎたその時、ムラキが放った弾丸がヘルファイヤーを撃ち抜いた!!

 その瞬間、大気が赤く染まった。

 まるで、戦士の血で空が染まったように


「な、なにごとだーーーーーー!!」

 轟音と赤い閃光の空をみたバールが叫んだ!!

 コバルトリーダーは多少ヘルファイヤーの余波を受けて吹き飛ばされながらも、今度は急降下しながら通信をオンにして叫んだ。

「クラン!!道は開けた、フェイズ2スタートだ!!」

「了解!!第1波通過と同時にジータさん、リンナさん出撃してください!!」

 クランがそう言う間に、ヘルファイヤーの開けた乱気流の大穴から光の粒が降り注いだ。

 それに一瞬見とれた無傷のカルラ部隊だったが、光の粒がPFに触れた途端にダメージを受けたカルラ部隊は、それが上空からのサーマルプラズマライフルの一掃射撃と勘違いした。

「おのれ〜〜、調子に乗るなよアルサレア風情がーーーー!!」

 ダメージを受けたカルラは上昇を始めると、集団心理か皆それに従った。

 その頃コバルトリーダーの上空を通りすぎたジータとリンナは、基地後方に展開したマウントハンターに襲いかかろうとしていた。

「指揮官が単純だと、部下も単純だな」

 コバルトリーダーは先頭のカルラにヘルファイヤーを叩き込むと、一目散にジータの後を追った。








 

 それを見ていたアイリ隊

「やっっったーーーー!!成功よーーーー!!!!」

「昇進しそこねちまったな、ムラキ」

 そう言うオスコットの顔も笑っていた。

「ふぅぅぅーーーー、死ぬかと思った」

 ムラキはそう言いながらも、ガッツポーズをしていた。

 チェンナも思わず昨日の話を思い出して感動していた。






 

 〜〜〜回想〜〜〜

「まず、今回の作戦だがムラキがせっかく来てくれたので派手に行こうと思う」

 ムラキは回りから見えないように拳を強く握りしめた。


「今回の作戦の概要だが、まずギブソン達から長距離支援砲火によってカルラを掃討し、その後基地に火を付ける
 まあ、火の規模は大したことはないだろうが、基地の中の隠し戦力ぐらいは引っ張り出せるだろう
 ヴァリム側がそうしている内に、俺とジータ、それにリンナは上空から基地の後方に強襲をかけマウントハンターを撃滅する
 同時にアイリ、ムラキ、オスコット、チェンナは前衛に展開しているONIGAMIを打ち破ってくれ
 その際、アイリが指揮をとってくれ、それからチェンナはONIGAMIに構わず基地内部に突入してくれ、俺もマウントハンターに一撃入れたら基地内部に強襲する
 あとは中で落ち合ってバールを生け捕りにする
 ただし、チェンナお前では残念ながら奴には勝てないから、とにかく引っかき回してくれればいい
 後は皆がそれぞれの仕事をこなせば、この作戦は成功するだろう」


 コバルトリーダーは笑顔で言ってのけた。


 全員唖然としていた。

 余りにも希望的観測やら何やらで言葉も出なかった。

「あの〜のっけから無理があるようなのですが?」

 もうコバルトリーダーの無茶苦茶な作戦を聞き慣れたジータが質問した。

「あわてなさんな、一つずつ説明していくから」

 コバルトリーダーはそれは楽しそうにジータに言った。

「まず、ギブソンからの長距離支援だが大きな問題が二つある
 まず弾の飛距離が足らないこと、もう一つはGエリア特有の乱気流のせいで弾道が安定しない事だ
 まずは飛距離の問題だが、サーマルプラズマライフルを使おうと思う
 あれなら、出力さえあげれば飛距離は稼げる」

「そもそもどうやって出力を稼ぐつもりですか?それに例え届いたとして、威力は雀の涙では?」

 今度はチェンナが噛みついてきた。

「まあ、そうあせんなさんな」

 オスコットがチェンナをなだめた。

「説明に戻るぞ、出力は基地からダイレクトにもらってくればいい
 威力はむしろなくていい、あくまで支援だからな
 支援の目的はあくまでヴァリム軍の目を上空に持っていく事
 あとは残り火で基地の中身を引きずり出すこと
 それが出来ればいい」

 チェンナやジータ、それにムラキとリンナは、PFを倒す以外の目的で支援攻撃をすることがあるのに今更ながらに気づいた。

「俺の狙いがだんだん分かってきたみたいだな」

 コバルトリーダーは4人の顔を見て笑った。

「で、乱気流だが、あれはヘルファイヤーで吹き飛ばす
 というか、ぶっちゃけた話ヘルファイヤー以外では空に大穴を開けることは不可能だからな
 ちなみに、ギブソン方面の乱気流はマコトが、こっち側の乱気流はもちろん俺が穴を開ける」

「言いたいことは分かったが、どうやって実行するつもりだコバルトリーダー?カルラに当てたら基地ごと吹き飛ばしちまうぞ」

 コバルトリーダーはそう言ったムラキに対して、ニヤリと笑った。

「この作戦はここが最大の峠なんだよ。で、キーマンはムラキお前だ」

 コバルトリーダーはそう言ってムラキを指さした。

「お、おれか!!」

 とりあえず、皆がムラキの方を見た。

「そう、お前だ
 空に穴を開けるのはヘルファイヤーを使うのはわかったろ
 あとはどうやってヘルファイヤーを爆発させるかだが、それはムラキお前がヘルファイヤーをピンポイントで撃ち抜いてくれればいい」

「な、無茶言わないでくださいよ!!当てるだけでも大変なのに、一歩間違ったら隊長ごと消しとんじまいますよ」

 ムラキはそう捲し立てた。

「いくら何でも無茶です!!やめてください、コバルトリーダー!!」

「ボクもそう思います」

「私も今回ばかりは無茶だと思います」

 リンナ、ジータ、チェンナがそろって反対した。

 コバルトリーダーは片足をテーブルに叩きつけると叫んだ。

「この大馬鹿共がーーーーー!!!
 一体何を考えている!!
 俺達は戦争をしているんだぞ!!
 命の奪い合いに安全なんかあるかーーーーー!!!」


 怒りを露わに叫ぶコバルトリーダーを止めたのはオスコットだった。

「押さえて押さえて、だめでしょ〜僕たちこんな事に惑わされちゃ〜、ね」

 オスコットの言葉の真意を理解できない4人に今度はアイリが口を開いた。

「あんた達だって、危険のない戦いなんて出来ないことぐらい分かってるわよね
 ただ、出来ればリスクは減らしたいと思ってるから思わず口に出しちゃったんでしょ
 でもね、それぐらいはアタシやオスコットさん、コバルトリーダーだって分かってるの
 コバルトリーダーが切れてる本当の理由は、あんた達どうして自分や仲間を信頼できないのかってことなのよ
 ムラキさんにそれをやらせるって事は、ムラキさんになら出来ると確信があるからそう言ってるのに、どうしてコバルトリーダーの言葉や確信を疑うのよ」

 4人とも下を向いてうつむいた。

「俺は過大評価や、命の掛かっている戦場で他人の命を賭けたりはしない。俺やキース、アイリやギブソン、それにオスコット、お前らよりも遙かに大した奴らがここに入る
 だがな、確かに今は見劣りするかも知れないが、お前達が一流であることは嘘偽りのない事実だ
 ここには当たり前のように、一流の乗り手が集まってきているせいでそれに気づかないのかも入れないが、お前らは自信を持つべきだ
 少なくとも、慢心しない程度にはな」

 コバルトリーダーがそう言っても、4人は納得できない顔をしていた。

 それを見たコバルトリーダーは笑って言った。

「もし俺が死んだら、ムラキお前がコバルトリーダーになれ」

「「「「「え、ええぇぇぇーーーー!!!」」」」」

 いきなり何を

 みんなそんな顔だった。

「お前は作戦を立てたり、指揮をしたりすることは出来ないだろう
 だがな、小隊の仲を取り持ったりするのは得意だろう
 苦手なことは、キース達にでも任せればいい
 何も全てを背負い込む必要はないさ、ただ小隊をまとめるだけでいい
 俺にはそれが出来なかった、だからお前という存在は俺にはありがたかった
 もし、この戦いで俺が死んだらお前が後を引き継げ
 いいな!!」

 コバルトリーダーはさも当たり前といった表情で言った。

 そこには、確かに、そう納得している者と、急に何をと思う者がいた。

「コバルトリーダーになりたくなければ、このくらいのこと笑ってやってのけるがいい
 お膳立ては俺達がいくらでもやってやる、お前はただ引き金を引くだけでいい
 簡単だろう?」

 そう言われても、ムラキはそう思った。

 ジータは自分がそんな大役に選ばれなかった事にホッとしつつも、自分がそうだったらと考えてプレッシャーで気分が悪くなった。

 リンナは『もしもの事があったら殺しますよ』とムラキに囁いてやろうかと思ったが、いらぬプレッシャーを与えないように敢えて黙っていた。

 チェンナは、自分とキース、そしてコバルトリーダーとバールとの実力差がどのぐらいあるかについて考えていた。

 自分の力量を知っておきたかったからだ。

 しかし、答えは出なかった。


 思い思いの顔を浮かべる者達にコバルトリーダーは言った。

「お前達に言葉を贈ろう、その身に刻め
 迷わないこと、自分を信じること、それに全てを賭けること
 それは口で言うは容易いが、実行するには難しいこと
 されど、それが出来た時人は本当に強くなる」

 ムラキは不安な顔でコバルトリーダーを見た。


「ふ、口程にものを言う・・・か、ならもう一つ言葉をやろう
 恐怖とは所詮打ち勝つものだ!!
 そんなものを恐れてどうする?
 くだらない
 笑い飛ばしてみるがいい!!
 スカッとするぞ
 恐怖など、所詮その程度のものだ!!」

「は、はは、その程度のもの・・・、わーーはははははは!!」

 ムラキは壊れたように大笑いを始めた。

 ジータとリンナがギョッとムラキを見た時

「ふ、ふははははは!!」

「あはははははは」

 コバルトリーダーとアイリも大笑いを始めた。

 それを見たチェンナも笑い始めた。

 もはやジータもリンナも笑わずにはいられなかった。

「わ、わはははは」

 皆が馬鹿みたいに笑ってる中、オスコットが一言言った。

「ふ、若いな」

 その突っ込みに皆顔を赤くしたが、皆憑き物が落ちたかのように顔は晴れやかだった。

「ムラキ、出来るな」

 コバルトリーダーはムラキの肩に手を置くと言った。

「やります、やらせてください!!」

「いい面構えだ、任せた」






 

 回想終わり

 チェンナは思った。

 自分も迷わず、自分を信じ、それに全てを賭けることが出来れば、いつかコバルトリーダーのように強くなれると、ムラキを見て確信したのだった。





 

 その頃、基地の上にはまたサーマルプラズマライフルの光の粒子が舞っていた。

「く〜〜〜、なんたることだ!!ええ〜〜〜い、こうなればワシ自ら出る、続け!!」

 バールはそう叫ぶと出撃した。

















 

 その頃コバルトリーダー小隊


「おおおおーーーー、吹き飛べーーー!!!!」

 調子に乗りまくりのコバルトリーダーが叫んでいた。

 コバルトリーダーが調子に乗りたくなる程に、崩剣はその威力を発揮していた。

 崩剣ブレイクインパクトは切れ味よりも、激突の衝撃によって内部にダメージを与える作りになっていた。

 敵に直撃する寸前に重心を剣先に持っていくことで、ハンマーで横凪をするかのような重い一撃と共に数体のマウントハンターを吹き飛ばして見せた。

 そしてその直後には、背後からバズーカでコバルトリーダーを襲おうとしたマウントハンターに重心を柄元に戻してから崩剣を向け、WCSを狂わせて見せた。

 何が起きているのかすら分からないマウントハンターに、ジータとリンナは斬撃を入れて確実に撃破して見せた。

 それを見たコバルトリーダーは言った。

「ここは任せた!!俺は先に行くが、お前達は中に入らず出ようとするものを叩け」

「了解!!」

「お任せを!!」

 コバルトリーダーはそれを聞くと、崩剣を縦に振り下ろした。

 斬るのが目的ではない。

 ただ、目の前の壁を叩きつぶすのが目的だった。

 そして、PFの体当たりや、バズーカの直撃にも耐える城壁は轟音と共に崩れ去った。

 いや、表現が正しくない。

 正しくは、城壁は爆発するように吹き飛ばされた。

 それを見ていたヴァリム兵がつぶやいた。

「破壊神かなんかなのか?あいつは」

 同感する者はあっても、反論する者がいない程そのもの言いは的を射ていた。

 一瞬の沈黙があったが、幾分免疫のあるジータとリンナは早く回復しマウントハンターに襲いかかった。

 マウントハンターもそんな二人に数の暴力で挑んだが、実は質の暴力で挑まれたから反撃しているだけだが、勝負は始める前から見えていた。

 なぜならジータはマウントハンターの主力兵器であるMLRSをはじき返すヴィクトリアウェブを装備していたからだ。

 密集している状態でミサイルが跳ね返されれば、結果は火を見るまでもなかった。

 それを理解しているリンナはマウントハンターの群れに斬りかかると、2〜3度斬りつけると次の機体に襲いかかった。

 ジータはそれを見ると、ヴィクトリアウェブをフル稼働させながらCB一刀両断を連発した。

 マウントハンターは攻撃を封じられ、なすすべもなく撃破されていった。

「ふ〜〜〜、コバルトリーダー大丈夫かな」

 一通り倒し終えたジータには、コバルトリーダーを心配する余裕さえ出てきていた。

「大丈夫に決まってますわ。ただでも強いのにあの剣があるんですもの、向かうところ敵なしに決まってますわ」

 リンナは既に決めつけて掛かっていた。

「確かに鬼に金棒だな」

 崩剣の威力を目の当たりにしたジータはそうつぶやいた。








 

 コバルトリーダーが基地内部に突入するちょっと前のアイリ小隊

「いい、とにかくチェンナちゃんの突入を最優先分かったわね」

「はいはい、おじさん頑張っちゃうから任せてよ」

「援護は任せろ」

「お願いします!!」

 そう言うと、オスコットを先頭にムラキ、チェンナがくさび形にONIGAMIに向かって正面突破に出た。

 上空からの攻撃に目を奪われていたONIGAMI達も流石に接近されれば、やって来た3人に気づかないはずもなく戦闘態勢を取り始めた。

 それに対してオスコット達は足を止めると、マスターキャノン、ヘッドマシンガン、MLRS−2で攻撃を始めた。

 その余りにも馬鹿にした攻撃に、5機のONIGAMIは切れてヒートグラブで猛然と襲いかかった。

 しかし、その後方では15機のONIGAMIが一斉にバスターランチャーのチャージに入った。

「いや〜、こうも予想通りだとおじさん困っちゃうな〜」

 オスコットはおどけた口調とは裏腹に、眼鏡を取ると切り札を切って見せた。

 その直撃を受けた先頭のONIGAMIは一瞬で消滅し、両隣のONIGAMIも左右に激しく吹き飛ばされた。

 そして、オスコットはチェンナが走り出すのを確認すると、もう一発今度はバスターランチャーをチャージしている一団に向けてお見舞いした。

 この一撃も容赦なく、3機のONIGAMIを屠ると、基地内部に展開していたPFを巻き込んで大爆発をあげた。

「ははは、威力があるのは知っていたが、実戦でこれを当てられる人物がいるとは」

 ムラキは嬉しそうに感嘆の声をあげた。

「まあ、たまにはマジで行かないと命かけてるコバルトリーダーに悪いからねぇ〜」

 オスコットはそう言うと、弾切れになったハイドロブラストの発射ボタンから手を離した。

 ちなみにWCSに頼らずオスコットは目視でロックして当てて見せたのだった。

 しかしこれで戦闘が終わるはずもなく、余裕を見せているオスコットとムラキに向かって怒りを露わにしたONIGAMIが襲いかかろうとしていた。

 ちなみにバスターランチャーをチャージしていたONIGAMIは、後少しでチャージを終えようとしていたが、的をチェンナかオスコット達のどちらにするかで大いに迷っていた。


 その時だった。

 信じられない速度で何かがONIGAMIの隊列に向かって突っ込んできた。

 しかし、ONIGAMI部隊は動かなかった。

 まあ、チャージ中故に動けなかったというのが本音だったが、中のパイロットは別に逃げようとはしなかった。

 なぜなら、その何かはONIGAMI部隊の少なくとも10メートルは上を通過する予定だったからだ。

 そしてチェンナがONIGAMI部隊の隊列の穴を通り過ぎると同時に、巨大な何かもONIGAMI部隊の最後尾の上空を通過したのだった。

 その刹那、ONIGAMI部隊のチャージが終わったのだった。

 そして、全く同じタイミングで巨大な何かのオマケがONIGAMI部隊に襲いかかった。

 その何かはアルサレア強襲用輸送機シューティングアローだった。

 そして襲いかかったのは、もちろんアイリだった。

 とはいえ、アイリはシューティングアローに搭載されていたわけではない。

 アンカーフックをシューティングアローにくっつけ、ぶら下がってきたのだった。

「ドッッセーーーーーーーーーーイ!!!!!!」

 アイリはマッハ6近い速度で飛来するシューティングアローに結局ついていけす、アンカーフックを途中で離してしまっていた。

 本来ならば、アイリが言い出したとおりに、シューティングアローにぶら下がったアイリがアサシンファングでONIGAMI部隊をなぎ払う予定だったが、途中で離してしまったせいで到着が遅れたのだった。

 しかし、マッハ1近い速度でアイリは根性の、否ヤケクソのアサシンファングを決めて見せた。

 その威力はすさまじく、次から次へとなぎ払うONIGAMIをクッションの様にぐしゃぐしゃに変形させながら、12機を一撃でなぎ払った。

 否、鉄くずに強制変換した。

 ただし、自機諸共だった。

 その余りにももの凄い光景を見ながらも、オスコット達は向かってきたONIGAMI2機を撃破した。

「アイリさん!!」

「アイリちゃん!!」

 ムラキとオスコットは半壊したアイリ機に向かって駆けだした。

 しかし、そこにあったのはもはやPFなどではなく、誰が見ても鉄くずだった。

「そ、そんな、こんな馬鹿なこといって・・・」

 どう考えてもアイリの生存は絶望的だった。

 そう思ったムラキは目の前が真っ暗になった。

 しかし、オスコットはアイリ機の様子を見て違和感を覚え、はじかれたように背後を振り返った。

 そこにはパラシュートでゆっくりと降下してくるアイリがいたのだった。

「いや〜、心配して寿命が3年はへっちゃったぞアイリちゃん」

 その声に反応したムラキは振り返ると叫んだ。

「おおおおおーーーーーーー!!!」

 ムラキは叫びながらアイリを掌に着地させた。

「いや〜、すまんっす!!やっぱりアレにぶら下がるの無理だったわ」

 アイリが悪びれることもなく笑っていた。

「しかし、一瞬マジで焦ったぞ」

「一瞬だったのか?」

 ムラキはオスコットの一言で赤くなったのをごまかすようにいった。

「どうしてオスコットさんは気づいたんですか?」

「なに、見慣れたコクピットタラップが足下に刺さっていたのでね。脱出でもしなきゃこうはならないと思っただけさ」

「さっすがオスコットさん、いいカンしてるじゃない」

「でも、いつの間に脱出したんですか?特攻の雄叫びが聞こえましたけど」

「ん〜〜〜、激突の5秒前ぐらいまでは微調整していたからね。って、あれは雄叫びじゃないわよ!!コクピットから飛び出す時のかけ声よ!!もう、女の子に雄叫びとは何よ!!失礼しちゃうわね」

 いいながらアイリは笑っていた。

 3人とも生還を本当に喜んでいるようだった。


「さて、チェンナも無事突入出来たようだし、私たちはここで逃げてくる奴を待ち伏せるわよ!!」

「イェッサーーー!!」

「はい、ところでアイリさんは?」

「ちょっと、生身のレディーを戦わせる気?冗談でしょ、私はこのままあなたの機体に回収して欲しいのだけど」

 勝ち誇るかのようなアイリをムラキは苦笑しながら迎え入れた。








 

 コバルトリーダーより若干早く基地に突入したチェンナ


「なかなかやってくれおる、だがそれもここまでだ!!」

 チェンナの前にはバールとバール親衛隊のタルカスが18機たちはだかっていた。

 そして叫んだバールの足下には、多分2機のタルカスであろうモノがXハンマーの餌食になっていた。

 どうやらオスコットの放ったハイドロブラストの余波を食らったタルカスを、バールは問答無用で叩きつぶしたようだ。

「蒼き空に舞う翼あるものたちよ 我に力を!!」

 チェンナはそう言うと、基地の建物を盾にしながらバールと距離を取るとオーロラカッターで迎撃を始めた。

「小賢しいマネを!!やれーーー」

 バールはそう叫ぶと、AAFミサイルで攻撃した。

「そう簡単にはやられないよ!!」

 チェンナは建物の陰からヘッドマシンガンでミサイルを撃ち落とし始めた。

 チェンナがミサイルに夢中で動けなくなっていると思ったバール親衛隊のタルカスは、左右からチェンナに襲いかかった。

 チェンナはそれをいち早く察知すると、右手から来たタルカスにはオーロラカッターで迎撃し、左手から来たタルカスにはアサシンファングをお見舞いした。

 そこまでうまくいくとは思っていなかったバールだったが、余りにもあっさり退けられるのを見て驚きを隠せずにいた。

「男子3日会わずば刮目せよか、面白いスパイダーの陣をひけー!!」

 バールがそう叫ぶと、チェンナを中心に蜘蛛の巣状にタルカスが移動した。

「さあ、今度はどうかな?」

 バールはそう言うと再びAAFミサイル改を一斉に放った。

 しかし、発射寸前でその場にいた全てのPFのレーダーとWCSが機能しなくなった。

 発射プロセスに入っていたミサイルは、発射直後に的を失い手近なモノに向かって飛んでいった。

「何が起きたーーーー!!」

 理解に苦しむ状況と、大量の同士討ちにバールは焦った。

 チェンナはその隙を逃さず、スパイダーの陣をアサシンファングを振り回し突破した。

「この程度で驚いてるようじゃ、先が見えたねバール!!」

 磁気によって通信障害が出ているのでチェンナは、外部スピーカーをオンにして叫んだ。

「だまれ!!小娘が、調子に乗るな!!」

 バールが有視界に映るチェンナに猛然と襲いかかったその時、バールはコバルトリーダーの投げた親衛隊のXハンマーで吹き飛ばされた。

「く!!おのれ〜〜〜、馬鹿にしおって思い知らせてやる!!」

 バールはHMを発動した。

「チェンナ!!30だ」

 コバルトリーダーはそう言うとバールにではなく、親衛隊に向かって崩剣ブレイクインパクトを振るい始めた。

 バールには、崩剣の真の力を使わないと痛い目を見ると判断したコバルトリーダーは、持っているだけでエネルギーを無尽蔵に消費する崩剣へのエネルギーをカットし、今はジェネレーター出力の回復に努めていた。

 とはいえ、総重量3トンの鈍器から繰り出される攻撃は、レッグ50の足と合間って洒落にならない威力を発揮していた。

 コバルトリーダーの真意を理解したチェンナは、ワザとバールを挑発するとレーダーが使えずまともにコバルトリーダーとチェンナを捕えられない親衛隊を盾にして、バールの猛攻を交していった。

 ちなみに切れたバールは、じゃまな親衛隊を容赦なくXハンマーで吹き飛ばして見せた。

「は!!ヴァリムの猛牛も大したことないわね」

 チェンナはなおも挑発を続けた。

「おのれ〜〜〜!!」

 チェンナは30秒たったのを確認し言った。

「コバルトリーダー今だーーー!!」

 チェンナが叫んだ途端バールはAAFミサイル改の発射ボタンを押した。

 もちろんレーダーとWCSが正常に使えるかを確認した上でだった。

「それぐらい分からないワシだと思ったか〜〜〜!!」

 しかし、それを見たチェンナはワザと動きを止めた。

「ははは、諦めたか!!」

 バールはそう言うと、まさかな、そう思い振り返り様にXハンマーを振るった。

 しかし、それは見事に空振りに終わった。

 ただし、それは無駄な一撃ではなかった。

 Xハンマーが通過したその先には、コバルトリーダーが仁王立ちしていたからだ。

「大したものだな」

 コバルトリーダーがそう言った途端、バールは横に飛ぶとチェンナの攻撃をかわして見せた。

「ふがいないモノだな、・・・・だがワシは違うぞ!!」

 バールはミサイルを発射した瞬間に、またレーダーとWCSが使えなくなるのを確認していた。

 そして、いま親衛隊が全滅しているのも確認して言った。

 ちなみに親衛隊を撃破した内訳は、コバルトリーダー数11機、チェンナ3機、オスコット2機、バール4機となっていた。

「なぜアレが交わせたの?」

 困惑するチェンナにコバルトリーダーはいった。

「目に見えるモノが全てではない」

「え?!」

「目に見えぬモノが真実でないように、目に見えるモノも真実でないのだ」

「え、ええっと・・」

「認識せよ!!
 レーダーに俺達は映らないが確かに俺達はここにいる
 俺もバールも目に見えぬモノを認識している
 俺は目をつむったままでもあいつが認識できる
 あいつもカンで俺達を認識しているのだろ」

「か、カンで、ですか?」

 コバルトリーダーのやってることですら、あながち信じにくいことなのにバールがカンだと言われては、流石に言葉もないチェンナだった。

「俺とバールと、お前との格差はここで生まれる
 目に見えるモノを認識もしくは知覚できるかどうかが、いざというとき生死を分ける
 感じたことを疑うな、信じ抜けないモノから戦場を去っていく
 それが現実だ」

 コバルトリーダーは崩剣をバールに突き出すように構えた。

「作戦会議は終わったか?もう少しぐらい待ってやっても良いぞ、どうせ人生最後なんだ悔いの無いようにな」

 バールはそう静かにいった。

「チェンナ、さがっていろ!!
 首を突っ込むと死ぬぞ」

 コバルトリーダーはそう言うと、崩剣ブレイクインパクトを発動させると機体を横に回転してなぎ払いにいった。

「そんな単純な攻撃、避ける気もおきんぞ!!」

 バールはコバルトリーダーの崩剣の切っ先をXハンマーで叩き伏せて止めようとした。

 しかし、直撃したXハンマーは簡単にはじき返されるとバールの機体を軽くはじき飛ばした。

 自重があるので軽く浮いた程度だったが、バールは大きく驚いた。

 しかしもっと驚いたのは、バールをはじき飛ばした次の瞬間には既にバールの目の前に立ち崩剣を振り下ろしていたことだった。

 バールは思った。

 あれほどの威力は、相当にPF自体の体重移動と、武器の重さ無しではあり得ないと。

 しかし、今目の前にいるコバルトリーダーは明らかに異常だった。

 剣を投げ捨てて目の前に立つなら、まだ説明もつく。

 しかし、コバルトリーダーはあの想像以上に重たい剣を持っているにもかかわらず、今まさに剣を振り下ろしていた。

 そこまで考えるとバールは思考を捨てた。

 考えていては死ぬ!!

 彼の直感がそう告げていた。

 そしてバールは動いた。

 右手のXハンマーを地面に叩きつけ、バールは機体を軽く浮かすとブーストを全開にしてその場で回転し、コバルトリーダーの振り落とした崩剣の横っ腹に左腕のXハンマーを直撃させて見せた。

 甲高い音と共にバールのタルカスは距離を取ることに成功した。

 機体を浮かせたのも、崩剣に攻撃したのもこれが狙いだった。

 一方コバルトリーダーは、追撃とばかりに崩剣でバールを突いたが、紙一重で届かなかった。

 原因はバールがそこらここらにXハンマーを叩き込んだことによって、基地の床が既に平らではなくなっていたことが原因だった。

「す、凄すぎる!!」

 チェンナが見ているのは、もはや人間の反応速で対応できる次元の戦闘ではなかった。

 最高位の格闘家が相手の二手、三手をよんだ攻撃を、全て最小の動きでいなすような戦いだった。

 悔しいがチェンナのレベルでは、近寄ることすら命に関わるぐらい、その戦いは神聖なモノに見えた。




 

「なかなかやりおる、アルサレアにも骨があるモノがいたと言うことか」

「その言葉、そっくり返すぜ!!
 これ程純粋に強い奴は俺が知る限りでもそうはいなかった
 戦いを楽しみたくなってきた・・・・が、
 残念ながら次で終わりにしよう
 死人の俺には楽しみなどいらん!!
 死者の願いのため、ただおもむろに滅べバール!!!!!」

 途中から急に口調が変わったコバルトリーダーに疑問を覚えたバールだったが、その口調が変わりだしてからのセリフがどうにも気に入らなかったのか、バールは猛攻に出た。

「死人風情が、世迷うな!!!!!!」

 バールは手近にあった建物にXハンマーをぶつけ建物の破片をまき散らせた。

 破片自体はコバルトリーダーに向かって飛んでいったが、それは避ける気も起こらないモノであったし、目くらましのたぐいでもなかった。

 まあ、瞳を閉じたコバルトリーダーと直感のみで戦うバールには、一寸先も闇の無音の空間すらも戦いに支障をもたらすことは出来ないだろう。

 なぜバールはそんなことをしたのか?

 いわゆる狼煙だった。

 これから意地と意地のぶつけ合いをするという。

「ベリウム様のため、土に帰るがいい死人よ!!」

 バールは叫ぶと両肩のAAFミサイル改を強制排除するとHMを発動した。

 そして緑色に光るバールの機体は、Xハンマーをシラギクのように振るい、コバルトリーダーを横凪にしようとXハンマーで襲いかかった。

 コバルトリーダーもそれに合わせるように崩剣を横凪に振るった。

 そして両者の武器が激突する瞬間、二つの武器はぴたりと止まった。

 次の瞬間バールは、反対の手のXハンマーをコバルトリーダー目掛けて振り下ろしながら、静止していたXハンマーで崩剣をブロックした。

 全く同じ瞬間、コバルトリーダーは崩剣をワザとブロックさせ逆に片方のXハンマーを黙らせると、崩剣の重心を移動させ振り下ろそうとしているXハンマーを持つ腕の関節部分に蹴りを入れた。

 バールはその瞬間思った。

 攻撃は予想外だったにしても、あれだけ重心が崩れればブーストで踏ん張ったとしても、必ず転倒する。

 そうなれば後はただ叩きつぶすだけで良い。

 しかし、バールの思惑通りにコバルトリーダーは転倒しなかったばかりか、その不自然な体勢のまま地に着いた足を軸足にして、腰の反動を乗せて崩剣をブロックしていたXハンマーを打ち据えた。

 そしてコバルトリーダーはその反動を利用して距離を取った。

 バールもまさかの行動に心はしっかり驚いていたが、身体は冷静だった。

 バールは蹴りを食らった反動が生きている内に、崩剣に打ち据えられたXハンマーを軸にして一回転すると、蹴られた方の腕に持ったXハンマーをコバルトリーダーに投げつけた。

 防げばやられる、そう判断したコバルトリーダーは敢えてその一撃を受けて大きく後ろにはじき飛ばされた。

 その判断は正しかった。

 バールは投げたXハンマーを拾おうともせずに、残ったXハンマーを両手で持ちながらコバルトリーダーに襲いかかって来ていた。



「コバルトリーダー!!!!」

 チェンナは叫ぶとコバルトリーダーとバールの間に割って入ろうとした。

 しかし、身体は凍り付いたかのように動かなかった。

「おねがい!!うごけ、私の身体だろうがーーー!!!!!」

 チェンナがそう叫んだ時、バールはコバルトリーダーにトドメを刺そうとXハンマーを振り下ろしていたが、その一撃は紙一重のタイミングで突き出された崩剣の攻撃を受け止めるために費やされたのだった。

「残念だったな、見切っているぞワシは
 その剣は、なぎ払う時と、振り下ろす時に真の威力を発揮する剣であると言うことをな
 故に、突き出す時はこの程度の威力しか無いこともさっきの激突で見切ったわ!!
 往生するがいい!!」

 チェンナはバールの叫びを聞いてなおうごけないでいた。

「ふふ、流石だ
 敬意を表してこの剣、崩剣ブレイクインパクトの名の意味を教えてやろう
 この剣は突き崩し、破壊する、衝撃を生み出すことが出来る剣
 故に崩剣ブレイクインパクトと言うんだーーーー!!!!!

 バールはコバルトリーダーの言葉の意味を理解できていなかった。

 しかし、何かある。

 そしてここにいては危険だという直感に従い、その場を離れようとした。

 その瞬間甲高い金属音を伴いながら、頭部をもがれ、半分近く基地の建物にその身を埋めたコバルトリーダーの機体が予備動作無しで、崩剣ブレイクインパクトを突き出したのだった。

 バールはとっさにXハンマーを突き出し、コバルトリーダーをもう一度瓦礫に埋もれさせようとしたが、考えられない程の速度で突き出された崩剣の威力にあらがうことも出来なかった。

 それでころか逆に、Xハンマーはその勢いに負けバール自身に跳ね返ってきた。

 そればかりか、突き出された崩剣はXハンマーを強引に突き砕くと、タルカスの首をも跳ねて見せた。

 しかし、バールもただやられただけではなかった。

 崩剣の勢いが止められないと判断したバールは、とっさにしゃがみ込むことによりコクピットへの直撃を交したのだった。

 そしてバールはコバルトリーダー最後の切り札を回避すると、素手でコクピットを殴ろうとした。

 だが、ここで誤算があった。

 PFは予備動作ゼロで剣を突き出せるモノなのか?と言う疑問だ。

 答えはNOである。

 しかしバールは、直感的にこの期を流したらもう反撃は出来ないと分かっていた。

 だからそこまで考えが回らなかった。

 そして拳で殴り伏せようとしたバールは、いまだに崩剣の勢いに引っ張られたコバルトリーダーの機体に跳ね飛ばされた。

「ぐわぉぉおぉおおおおおお〜〜〜〜」

 ヘッドパーツを失ったことにより、視界を失っていたバールは無防備にタルカス諸共はじき飛ばされた。



 だけでは済まなかった。



 バールを跳ねたコバルトリーダーは、吹き飛ぶバールに崩剣を横凪にしてなぎ払ったのだった。

 崩剣の切っ先は吹き飛ぶタルカスの右足のかかとを捕えた。

 バールはそれによりただ吹き飛ぶのではなく、きりもみしながら後方に吹き飛ぶ形になった。

 結果バールはきりもみしながら、存分に基地の床をなめ回すように吹き飛んでいって、最終的にコバルトリーダーが開けた基地の外壁の穴から外に飛び出し、ジータとリンナが集めておいたマウントハンターの残骸に突っ込んだ。

「ふぅぅぅぅ〜〜〜、大した奴だったな。思わず手加減できなかった」

 バールを生け捕りにしようと思っていたコバルトリーダーはそう言った。

 いまだに金縛りから解放されていないチェンナが叫んだ。

「コバルトリーダー!!ご無事ですか!!」

「ああ、久しぶりに手傷を負ったがな。それよりチェンナ、よく動かなかったなえらかったぞ!!」

「え!!」

 チェンナは動かなかったのではなかった。

 動けなかっただけだった。

 コバルトリーダーの勘違いにそう戸惑ったチェンナは、力が抜けたのか急に身体が言うことを聞き始めた。

 動けなかった原因は過度の緊張により、全身の筋肉が硬直したためであった。

「あの、違います
 私は動けなかっただけです
 なんども助けに入りたかったのに、どうしても動くことが出来なかっただけなんです
 えらくなんか、えらく・・なんか・・・」

 チェンナは嗚咽を伴いながら、泣き出した。

「ふ、大したものだな!!」

 チェンナは伏せていた顔を上げて驚いた。

「お前がなぜうごけなかったのかは、俺には分からない
 だがな、うごかないのは恐ろしいことだ
 それが見知った者や、自分自身の生死に関わることならなおさらだ
 それを押してまでうごかなかったのは勇気だと思う
 俺への信頼か、はたまた何かな」

 チェンナはコバルトリーダーが自分を許そうと、励まそうとしていると思った。

「そんなんじゃないです、そんなんじゃ、ないんです・・・」

 言葉の続かないチェンナにコバルトリーダーは言った。

「ただ、恐ろしくてうごけなかった訳ではないだろう?
 死ねばいいと思っていた訳でもないだろう?
 ならば、動かなかったのは勇気だよ
 そう自分を責めるな、自分を追いつめても何も解決はしないぞ」

「でも、私は、私は悔しいです!!」

「ようやく、本音が出たな」

 コバルトリーダーは笑って見せた。

「案ずるな、人は簡単に強くなれるのだ
 なぜなら、覚悟を決めた瞬間からもうすでに強いのだから
 だから覚悟を決めるがいい
 許せない自分を許す覚悟を!!
 そして、同じ覚悟を二度としない覚悟を!!」

 コバルトリーダーは優しい笑顔で言った後、苦笑した。

 どの面下げたセリフだろうな、コバルトリーダーはそう思い苦笑したのだった。

「はい」

 また力が入ってきたチェンナだったが、それでも一応は納得した様だった。












 

 バールがマウントハンターの残骸に突っ込んだ頃


「な、なんだ〜〜〜」

 あまりの速度で飛び出してきたバールに反応仕切れなかったジータが言った。

「あれは?敵将のバールかしら?」

 一度もその姿を拝んだことのないジータとリンナに判別が出来なかった。

「ピクリともしませんが、亡くなられているのでしょうか?」

 リンナがそう言った時、タルカスは再起動した。

「な!!動いた」

 ジータは驚きながらもとどめを刺そうと動きだした。

「まってジータさん!!もしバール機ならばとどめを刺しては!!」

 なにもジータは命を取ろうとは思っていなかったが、損害から見てどこに一撃入れたとしても爆発は免れない程バール機は崩壊寸前だった。

「連行しましょう、頭はおろか両手ももげて今更なにも出来ないでしょうから」

「そうですね、基地内部には敵PFの反応もありませんし」

 ジータはリンナの言葉にうなずくと、2機のPFで挟むようにしてコバルトリーダーの元にバールを連行した。







 

 チェンナの精神状況が自信喪失から正常に戻った頃


「コバルトリーダー、バールらしきPFを連行しました」

 リンナが嬉々として言うと、バールのタルカスを仰向けに寝かせた。

「アレを食らって生きているのか?バールは」

 コバルトリーダーはあきれたようにリンナに聞き返した。

 その時だった。

 タルカスのコクピットハッチがはじけ飛び、中から血まみれのバールが這い出てきた。

「人間なの?本当に!!」

 チェンナも一部始終を見ていただけに驚愕した。

 息も絶え絶えに這い出てきたバールは土下座をすると、半死半生とは思えない大声を上げた。

「コバルトリーダー、ワシの負けだ!!
 だが、ワシはまだやらねばならないことが、
 ベリウム様をお守りし、ヴァリム軍を立て直す役目があるのだ!!
 どうか、見逃してくれ!!」

 一同唖然とした。

 命乞いまでなら、まあ、分からないこともないのだが。

 いまから叩きつぶそうとする相手を守らせろだの、アルサレア戦役で多大な犠牲を払ってまで疲弊させたヴァリム軍を立て直すだの、そんなことを口走るか、普通?

 それを聞いて一番始めに切れたのは、チェンナだった。

「ふざけるな!!私の部隊を壊滅させた挙げ句、・・・・今ここで殺してやる!!」

 チェンナはブーストサァイフを振り上げたが、コバルトリーダーに阻まれた。

「お願いですから、殺らせてくださいコバルトリーダー!!」

 チェンナの叫びにコバルトリーダーが切れた。

「悲しみに怒りをぶつけてなんとする!!
 この大馬鹿者がーーーーー!!!!!!」


 一同ビクッとしてコバルトリーダーを見た。

「一体何回過ちを繰り返し、悲しみをどれだけ増やせば、お前は満足するのだ?
 そんなことでは、例えアルサレア軍がヴァリム人を皆殺しにしたところで戦争は終わらないぞ!!」

 チェンナはそんなことは分かっているつもりだった。

 だが、チェンナには理屈ではどうしようもない何かがあった。

「チェンナ、怒りを静めコクピットの外に出て目を閉じてみろ、何が聞こえ、何が見えるか言ってみろ」

 コバルトリーダーの声は静かだったが、反論を許さない凄みがあった。

 チェンナは大人しくそれに従った。

 ジータは一体チェンナに何を伝えたいのか分からずにいた。

 リンナも同じだった。

 だからリンナもコクピット内で目を閉じてみた。

 チェンナは落っこちないようにPFの掌に立つと、目に映る景色に言葉を奪われた。

「どうだ?何が聞こえ、何が見える?」

 コバルトリーダーは薄暗いコクピットの中から瞳を閉じたままで言ったせいで、チェンナがまだ目を閉じていないのが分からなかった。

「世界が燃えるような、そんな音がします
 それから、基地が燃えるのが見えます
 さび付いた空が見えます」

 チェンナは目を背けたくなるような空と大地を見て、見たままを伝えた。

「目に見えるモノだけが真実ではない、目に見えないモノを感じ取れチェンナ」

 言わんとすることはチェンナにも理解できた。

 しかし、どうしても自分にそれが出来る気がしなかった。

「私には出来ません、コバルトリーダー」

「前に言ったろ迷わないこと、自分を信じること、それに全てを賭けること
 簡単な事ではないが、それを試しもしないでダメだと決めつけるな!!」

「はい」

 チェンナはイマイチ気のない返事をすると目を閉じた。

 チェンナは焦げた風と、何かが燃える音が聞こえた。

 それ以外の音など聞こえるはずがない。

 チェンナはそう思っていたがそれは思いこみだった。

 チェンナは頬に何かを感じた。

 嫌な予感、いや確信を感じるとチェンナは目を閉じたままPFの掌に隠れるように伏せた。

 その瞬間、目の前で銃弾がはぜる音がした。

 チェンナは目を開くと、目の前には壁があった。

 否、そこにあったのは崩剣ブレイクインパクトだった。

 視界ゼロのはずのコバルトリーダーは、チェンナの顔に当たるレーザーサイト照準を感知して崩剣ブレイクインパクトを盾代わりに突き出したのだった。

「やれば出来ただろう?」

 コバルトリーダーは笑っていった。

 PFのレーダーには人は映らない上に、カメラアイでも人を見ようとしない限りはまずは人を見逃してしまうだろう。

 その上、PFは人が撃つ拳銃の音など感知できないのだった。

 しかしコバルトリーダーはやってのけた。

 ちなみにジータとリンナには兆弾の音すらも分からなかったため、コバルトリーダーの言っていることが分からなかった。

「質問をよろしいでしょうか?」

 チェンナはPFに乗り込むと言った。

「どうして分かったのですか?」

「死人は死んでいる
 死んでいるから、考えず、また自らの意志を伝えようと口を開かない
 沈黙という死があるからこそ
 命の音が聞こえる
 命あるモノが作り出す旋律を求める
 俺はお前達と違って死んでいるからこそ
 より命あるモノを感じようとする」

 コバルトリーダーがそう言うと、チェンナは口走った。

「それが死人にしか出来ないことなの、なら生者にしか出来ない事って一体?」

 コバルトリーダー以外の者には、それはあっさり聞き流された。



 チェンナの言葉にコバルトリーダーが反応しようとした時だった。

「お前達、いい加減にせんかーーーーー!!!!」

 バールが吼えた。

 叫んだ相手はバール親衛隊のタルカス乗り達にだった。

「おっと、忘れるところだった。おい、さっきタルカスに乗ってた奴ら全員出てこい!!それがお前達を解放する条件だ!!」

「「「え、ええーーー!!」」」



 いきなり何を口走ってるんですかーーーー!!!



 ジータ、リンナ、チェンナ三人とも驚いた後にそう叫んでいたが、余りにも驚きすぎたのか誰一人としてその声は音になっていなかった。

 そしてバールのPFの回りには、20人の人が集まってきた。

「隊長!!ほ、本気ですか?」

 その時になってやっとジータが声をあげた。

「ああ」

「一体何を考えているのですか?」

「何と言われても困るが、そうだな殺すに惜しい「漢」だからとか、昔の自分がヴァリムにいたらどうなるのか興味があるとか、まあ色々だ」

 コバルトリーダーは愉快そうに言った。

「それじゃ納得できません!!
 昔のあなたがどうだったかなんて知りませんが、バールはただの馬鹿でしょうが!!
 私は絶対、そんな奴を「漢」だなんて納得いかない」

 チェンナは怒りを露わに言った。

「はぁ〜〜〜、全くネンネのガキなんだから・・・・・
 チェンナもう少し学習した事を生かせよ!!
 バールの回りに何人の人間が見える?」

 チェンナは顔を赤くして怒りながら言われたとおり数を数えた。

「20人ですが、それが・・・・・20人!!そんな馬鹿な!!」

「超〜おせえよ、俺はバールとやり合ってる時から分かっていたぞ!!
 だからこそ、おれはバールとの決着を早急に付けようとしたんだ
 タルカスから這い出てきた者達を巻き込まないようにな」

「でも、なんで20人いるんですか!!バール自身が何機か仲間を撃破したはずなのに」

「「ええ!!」」

 状況のイマイチの見込めていないジータとリンナが驚いた。

「前に俺がお前にやっただろう?
 あの時は勢い余ってお前を気絶させちまったがな
 バールは足手まといの部下共を殺させないためにワザとPFを破壊したんだよ
 自分が本気を出さねばならない相手に向かっていって死なせるぐらいなら、戦力を減らしても生還する人数を優先させたんだよ」

「そ、そんな、まさか・・・・・、コバルトリーダーあなたじゃあるまいし」

 チェンナは動揺を隠せなかった。

 あの馬鹿でにくったらしいバールがそこまで考えていたとは、どうしても信じられなかった。

「何か根拠があるんですか?私にはどうしても信じられません」

 チェンナから話を聞いただけのリンナには、先入観を拭う確たるモノが欲しかった。

「よく見ろ!!Xハンマーで叩きつぶされた機体はどれもコクピットコアの部分にはまるで遜色が無いだろう?一つならともかく、全てがそうである以上偶然とは言い難いぞ」

「確かに」

 確認したジータはそうとしか言えなかった。


「確かにバールは馬鹿だ、愚かと言っても良い程の大馬鹿者だ
 だが、馬鹿は愚直で疑うことを知らない
 自分という存在を認め、欲してくれるモノのためならば
 命すらいとわずにそれに応えようとする
 その思いは純粋だ
 純粋、それ故にバールは強いのだ
 お前達のように、戦場に色々持ち込まない
 勝利のために全てを捨てられるモノは強い

 お前達も認めているだろう?
 俺という存在を
 生者と死者の差こそあれ
 バールもまた迷わず、自分を信じ、それに全てを賭けることができる
 おれはそんな者を「漢」と呼ぶのだ
 それに、ただの大馬鹿ではないのかも知れない

 よく見ろ!!
 逃げることが出来たはずの者達が、
 誰一人逃げることなくあいつを守ろうと武器を手にしているぞ
 PFには傷一つ付けることが出来ないのを分かっていても
 あいつのために戦おうとしているのだ
 見上げたモノではないか
 ヴァリムとアルサレアの差がなかったのなら
 話ぐらいしてみたいとおもわんか?

 俺は失うには惜しい者だと思うぞ」


 コバルトリーダーはそう言うと、PFから降りだした。


「コバルトリーダー!!」

 リンナが叫ぶと

「武器を捨てよ、無礼はワシが許さん!!」

 バールが言うと、皆一斉に武器を遠くに放り投げた。

「こっちは軍法会議ものの事をするんだ
 猶予は1時間それまでは手出しはしない
 いけ!!」

 コバルトリーダーがそう言うと、バールが訪ねた。

「ワシは死人を名乗るものが嫌いだ
 命を惜しむ事を忘れたものが嫌いだ
 投げやりになり、未来を希望を捨ててしまうものが大嫌いだ
 コバルトリーダーよ、貴様は死人ではない
 決してワシを倒した「漢」は死人ではないぞ!!」

 こんな事を言っては失礼かも知れないが、バールは愛らしい瞳でコバルトリーダーを真っ直ぐ見つめると、なんとも憎めない笑顔で言った。

「いいや、俺は死人だよ
 俺は死者の願いを叶える唯一の死人
 死者の願いが叶うまで
 俺は決して滅ばない
 俺はその願いに突き動かされている分だけ
 お前の知る死者達とは違うだけさ」


 バールはなぜか満足した顔で言った。

「そうか。さらばだ、次は負けんぞ!!」

 そう言うと親衛隊を率いて輸送機で撤退した。
















 

 半壊したヴァリム軍最終拠点を放棄したコバルトリーダー達は、キース達がいる基地に帰還した。

 そのブリーフィングルームにて

「ははは、流石お前らしいよ!!」

 一部始終を聞いたキースは笑い転げていた。

「笑い事じゃありません!!どうするんですか、ベリウムの居場所を知る人を逃がしてしまうなんて、何考えてるんです!!」

 その横でクランが大激怒していた。

「ああ、そのことなら問題ないよ。バールとその部下達の何人かに発信器をくっつけておいたから」

 コバルトリーダーは当然といわんがばかりに笑いながら言った。

「あんたって人は、ホントくえないわね」

 アイリはそう言うと、テーブルに顎を乗せた。

「いつの間にそんなことを?」

 リンナはずっと見ていたがそんな余裕は無かったと思った。

「なに、バールと生身で話した時にちょっとな。これでも奇術師なんで種は明かせないが」

 コバルトリーダーはそう言うと、強く握った拳を開いた。

 その瞬間、赤いゴムボールがあきれる程溢れ出した。

「さて、これで行き先は分かったってことだな」

「ああ、そうだな」

「ああ、そうだな、じゃな〜〜〜い!!」

「なんだシュキいきなり」

「コバルトリーダーと互角にやり合った人逃がしちゃったんでしょ!!ジータあんたなんか簡単に殺されちゃうわよ!!」

 シュキは本気でジータを心配していた。

「なんで俺なんだよ!!いやそれより、お前なんかに心配されなくても生き残ってみせるさ」

「いや〜青春だねぇ〜、おじさん参っちゃうよ」

 呆けなすジータは、シュキの気持ちに気づいていなかった。



「でも、現実問題としてどうしますか?」

「な〜に、出会ったら逃げればいい。今回の戦いもそうだが、去る者を追う男でもなければ、追うだけの余力も今のベリウムのは無いだろうからな」

「そうだといいのですが」

「まあ、どっちにしてもカッコばっかで大した奴は居そうにないわね」

「どっから出てくるんですかその根拠は?」

 アイリの言葉に驚愕のリンナだった。

「中身の連度が低いのよ、完全にPFの性能に振り回されてたわね。まあ油断はできないけど」

 確かにそれは皆感じていた。

 指揮官以外は大したことがないと、特に最近はそう思うようになっていた。

 まあ、コバルト小隊そのものがレベルアップしている事が大きな要因であった。

 そのことについて皆が、あ〜だこ〜だ言うなかコバルトリーダーは一人ハンガーに向かった。








 

 アルサレアGSの頭を取り付けているコバルトリーダーにチェンナが話しかけてきた。

「コバルトリーダー、今日は色々ありがとう御座いました!!」

 コバルトリーダーは降りてくると言った。

「お前には生まれ持っての素質がある、ただ今はPFを乗りこなそうとして忘れているだけだ、焦らなくて良いが出来れば気にかけてくれると嬉しいな」

 コバルトリーダーは笑顔で言った。

 その笑顔に思わずドキッとしたチェンナをコバルトリーダーがいきなり押し倒した。

「え、ええ!!こ、コバルトリーダー?!!」

 心の準備が〜〜〜

 などと可愛らしい事をチェンナが思っているその時だった。

「こ、こ、コバルトリーダーーーーーー!!!!!!!!」

 その瞬間を目撃したリンナが思いっきり切れていた。


「リンナ来るな、伏せろーーーー!!!!!!!」

「な!!ええ!!」

 リンナが戸惑っていた次の瞬間、コバルトリーダーの機体の右手首がもげると、手首諸共崩剣ブレイクインパクトがコバルトリーダーとチェンナ目掛けて倒れてきた。

 そして崩剣ブレイクインパクトは、ハンガーの壁にめり込みながら自重を利用してコバルトリーダーの背中にギリギリ届くか届かないかのところで迫った。。

「チェンナ右から出てくれ、俺は左にずれるから」

 コバルトリーダーは重なるように下にいるチェンナにそう言ったが、動転していたチェンナはどっちから見た右だか分からなかった。

 そして、キスはしなかったが同じ方向に移動したチェンナと鼻の頭を激突させた。

「コバルトリーダーご無事・・・・、ですか〜〜〜〜!!!」

「リンナ不可抗力だよ、私たち鼻をぶつけただけだから、ね」

 チェンナは慌てて繕った。

 リンナもそんなことは言われなくても分かっていた。

 分かっていたが、それでもこのシチュエーションがリンナには溜まらなくうらやましかった。


 そこに轟音を聞いたコバルト小隊のメンバーが駆けつけてきた。

 彼らが見たのは、何とも異様な雰囲気を醸し出したリンナと壁を自重で結局貫き崩した崩剣ブレイクインパクトだった。

「なんだかわかんないけど、問題あるわねあの剣」

 アイリの一言に皆うなずくばかりだった。

「否定はしないが、手首がもげたのはバールの奴がXハンマーで崩剣を何度も叩いたせいだぞ、自重のせいじゃないぞ」



 ジトーーー

 そんな目線がコバルトリーダーに集中した。


「はぁ〜〜〜、しかしこの分じゃ一から組み直した方がいいな。どこがいかれてるか分かったもんじゃない、クラン一式手配を頼む」

 コバルトリーダーはそう言うと、外に出て行ってしまった。

「コバルトリーダーどこへ」

 そう言ったクランを押さえキースが言った。

「みんなはここの後始末頼むや、とりあえず俺はコバルトリーダーに話がある」





 

 コバルトリーダーは降りしきる雪の中、両手に鉄扇を持ち舞っていた。

 キースは死者への鎮魂の意味を秘めたその舞を飽きもせず30分見守った。

「つきあわずとも良かったのに、雪つもっているぞ」

「お互い様だよ、それよりもようやくだな」

 コバルトリーダーは苦笑した。

「なあ、チェンナが妙な事を口にしていたのだが・・・」

 コバルトリーダーにそう振られたキースは苦笑いで答えた。

「そろそろ、良い頃だと思ってな」

「そうだな、もう頃合いだろうな・・・・、キースみんなを集めてくれ死者らしいことをしたいから」

「ようやくだな」

 キースは笑いながらうなずいた。

















 

 コバルト小隊のパイロット達はなぜか輸送機の中に集められた。

 そればかりか輸送機は無駄に基地上空を飛んでいた。

 ちなみに操縦しているのコバルトリーダーで副操縦者はキースだった。

「あの〜ここまで大げさなことして、一体なにを始めるつもりですか?」

 ジータはよく分からないなりに、重要な話だということを期待して聞いた。

「そろそろ、本格的に死期が近づいて来たのでな遺言を託そうと思ってな」

「縁起でもない話はよしましょうぜコバルトリーダー」

 どこか緊張のないそんな顔のムラキが言った。

「ムラキよ、俺は覚悟を決めたから、だからお前達以外の何者もこの話を聞くことが出来ない、ここに呼び出したのだぞ」

 コバルトリーダーの目は笑っていない、澄んではいなかったが、覇気は確かにあった。

 一同押し黙った。

「事の重大さを分かったようなので選択肢を出そう。選べ、今から聞くことを時がそれを欲するまで決して他言しないか、聞くことを拒絶するか」

「時が欲するとは?」

 リンナの問いにコバルトリーダーは答えなかった。

 だれもが皆沈黙した。

「・・・・・・、覚悟を持って選択せよ、拒絶を選ぶものはパラシュートで降下せよ。聞く意志のあるものは残れ、3分やろう」






 3分後

 誰一人その場を離れるのもが居なかった。

「さっきも言ったが、今から聞くことを時がそれを欲するまで決して他言するな、いいな」

 時が欲する時の意味は分からなかったが、皆首を縦に振った。

「いいというまで決して口を開くなよ」

 コバルトリーダーは皆を眺めるとおもむろに話し始めた。

「力とは、
 振りかざすものでも、見せつけるものでも、まして隠し持っておくものでもない
 力とは、あるものだ
 そう、あるものだ
 力は、あるから使うのでもなく、見せつけるのでもなく、隠しておくのでもない
 力は捨てるものだ
 捨てるために、我らは武器を手にしているのだ

 忘れるな
 我らは、平和を手にするために戦っているということを
 それはつまり、戦う力を捨てるために戦っているということだ
 それが、時が力を欲するということだ
 時が力を求めるとは、
 つまり、
 平和を願う心が
 戦う力を捨てる時を
 求めるということだ

 以上だ、ここまでの言葉を決して他言するな」


 自分がどこまで、今の言葉の真意を理解できたのか、誰も分からなかった。

 そして沈黙が訪れた。

 コバルトリーダーは静かに目を閉じて何かを待っていた。

「本当に、遺言みたいな事言わないでくださいコバルトリーダー!!」

 リンナは泣きながら言った。

 言葉の意味を全く理解できない訳ではない。

 だが、その言葉の重要性を考えると遺言に聞こえてならなかった。

「コバルトリーダー、言いたいことはそれなりに理解したつもりだが、この言葉の真意はどこにある?」

 いまだに沈黙を続けるコバルトリーダーにオスコットが真面目な顔で言った。

 コバルトリーダーは目を開けると言った。

「わからん、その答えを知るものはもうこの世にはいないからな。だから、答えはお前達自身で出せ、そして今の言葉も伝えるべきものだと思った時口にすればいい」

「どういう事、あんたのセリフじゃないの?」

 アイリが身を乗り出して聞いた。

 皆も同様に驚いた。

 まあ、コバルトリーダーが他人の言葉を語ったことに驚いたものや、コバルトリーダー以外にもこんな事を語れるものがいるのかと驚いたりと、驚き方に差はあったが。

「この言葉はお前らがよく知っている方のお言葉だよ」

 コバルトリーダーはそう言うとようやく笑って見せた。

「あ、もしかしてグレンリーダー!!」

 言ったのはマコトだった。

「それはねえ、もしそうだったら俺らが知らないはず無いだろ。すると参謀長か?」

「え〜、それこそもっとなさそうだよキース」

「たしかに」

「もしかしてフェンナ様とか」

「いや、それもちょっと」

「では誰なんでしょう?私たちが他によく知る人物となると他には」

「お主ら何を聞いておった、この言葉を言った方は亡くなられておるのだぞ」

「ああ、そっか・・・・で、だれ?」

「あの方じゃないよな」

 キースがそう言うとコバルトリーダーは当然といわんがばかりに首を縦に振った。


「まったくお前らと来たら、聞いて驚け!!グレン・クラウゼン将軍閣下のお言葉だ!!」

「「「「「え、えええええええーーーーーーーーー!!!!!!!!」」」」」

 何人かを残して皆、目が点になった。

「なあ、質問して良いか、お前記憶戻ってるだろ?」

「ああ、絶望の淵から這い上がった時、力と一緒にな」

「そうか」

 キースは納得するといつもの調子に戻った。

「さっぱり、分からないんですがコバルトリーダーって記憶喪失だったんですか?」

 驚きすぎて現実に戻ってしまったジータが聞いた。

「まあ、古いはなしだよ。ついでだから少し昔話をしてやろう
 俺は今の元帥閣下がグレン特務小隊に入隊した次の補充要因として、グレン特務小隊に入隊した
 先の言葉は、俺を含め3人のメンバーに入隊祝いと言われて語られた言葉だ
 もう、その言葉を知るものも元帥閣下と、参謀長、あと中将閣下の3人だけだ
 俺という例外を除けばだがな
 ちなみに俺はグレン特務小隊での初陣でプロトタイプヘルファイヤーで自爆して、記憶を失いキースに一命を拾われ、顔と名前をもらった
 キースとはその頃からのつき合いだ」

「な、なんでいきなり自爆なんですか、コバルトリーダーあなたって人は・・・」

 着眼点がずれたリンナがため息混じりに言った。

「したくてしたわけではないさ、ただそうしなければグレン特務小隊は全滅していただろう、だから俺は自爆に反対したグレン将軍を背後から斬りつけてまで自爆して皆を助けたんだよ」

 コバルトリーダーは懐かしそうに語って見せたが、一同唖然とした。

「いくら将軍の為とはいえ、そこまでするな〜〜〜!!」

 マコトが叫ぶ横で、記憶があろうと無かろうと行動自体は変わらないのだなと、キースとアイリは眉間を押さえた。

「一歩間違えれば軍法会議素通りで極刑ものだゾイ、とはいえ昔からお主はかわらんのぉ」

 ギブソンはそう言って笑い出した。

「そう言う問題では絶対無いと思いますが」

「良く今まで生きていられたものだ」

 またわいわい始めたのを見てコバルトリーダーは言った。

「さて、盛り上がっているところ悪いがマジな話に戻すぞ」

 コバルトリーダーは皆の視線を集めると言った。


「俺が先の言葉を他言するなと言った意味だが、俺すらも把握できていない部分があり、取り方一つで新たなる戦いを生むことすらあるだろう
 だから俺は他言を禁じたのだ
 そして死人の解釈を話しておこう
 一つの意見として受け止めて欲しい

 俺は始めこの話を聞いた時、笑ってしまった
 戯れ言を!!
 俺はこう考えた
 力あるものが武器を捨てても平和は訪れないだろう
 むしろ、それを良いことに愚か者達がまた戦争を起こすだろうと
 そこまで考えて俺は、俺なりにこの話の真意を思い知った
 あくまで、俺が真意だと思ったことをな
 それは、再び戦争が起こった時
 力を捨てた俺達は再び武器を取るだろう
 だが、その後また俺達は力を捨てられるのか?と言うことを考えた
 その答えは、・・・・・・少なくとも俺の答えはNOだ
 俺は多分世界を許さないだろう
 平和を望みながらも、新たなる戦いを生み出してしまう人類を許さないだろう
 グレン将軍閣下はわかっておられたのだ
 俺のように心までは強くない者がいることを
 だから、ああ言われたのだ
 力を捨てる覚悟をせよと

 俺は正直驚いた
 命を賭けて守るべき価値のある者を始めて知り
 命と引き替えにしても守りきると決めた
 もっとも、俺は二度も守れず
 朽ちることすら忘れ相変わらず彷徨っているがな・・・・

 だが、お前達は違うぞ!!
 俺が言いたいこと、それがわからなけりゃ、お前達はただの人殺しになっちまう
 それは、人以上でも、人以下でもないが
 誇れることでないのは確かだ!!
 人は、いつから争い高めあうことを忘れ、
 争い憎しみあうようになったのだろうな?
 それは、知らない方がいいことなのかも知れないが
 知ろうとしないことは、果たしていいことなのだろうかな?

 その身に刻め!!
 俺は死人だ
 明日を紡ぐ者達に、この程度の問いかけを残すことしかしてやれない
 俺は、死者は戦うことしかできない
 死者は思い出の景色を守ることしかできない。
 だが、お前達は違うお前達は生者だ
 生者には死人に出来ぬ事が出来る
 それは平和を噛みしめること、平和を維持すること
 生きることとは、戦い以外のものに身をゆだねることが出来るということ
 子を産み、子を育て、脈絡と続いた悪しきことも良きことも伝えていくこと
 それは決して、戦い、奪い、悲しむことじゃない
 辛く、過酷な人生であっても
 それに負けない心を持っていたモノがいたことを伝えること
 我らの最後の一人までもが夢半ばに倒れようとも
 我らの意志は後生に残る
 無駄にもならなければ
 希望も決して失われない

 忘れるな!!
 我らは誇り高き者
 人々に誇りと勇気を指し示す者
 我らの戦いに多くの者が突き動かされる
 死に急ぐな!!
 我らが死ななくとも我らの背を追うものが死ぬぞ!!
 生き急げ!!
 閃光のようにまぶしく、力強くその生き様を多くの者に示してみせるがいい
 それこそが我らの生き方だ!!

 じきにこの戦いも終わるだろう
 そうなればコバルト小隊も解散だ
 俺は死者にしか出来ぬ事と、生者にしか出来ぬ事を確かに教えたぞ
 お前達がこの先道に迷ったなら
 思い出せ!!
 これからしようとすることが、どちらにしか出来ぬ事なのかを見極めよ

 そして、死者に・・・・逃げるな!!」


 コバルトリーダーは、最後に逃げるなと言った。

 逃げていると、認めたのだった。


 どう反応して良いのかわからない者、力強くうなずく者、笑顔を向ける者、感動してか涙を流す者、反応は十人十色だった。

 誰一人口を開こうとする者がいない中、機内が青い色に染まった。

 クランが緊急回線を開けと照明弾を上げたのだった。

「こちらクラン、かなり広範囲に広がったバール部隊に付けた信号が一カ所に収束しました。ベリウムはそこにいると思われます」

 コバルトリーダーは武人の顔に戻ると言った。

「勝って兜の緒を締めよ!!
 この戦いはこれで最後かもしれんが
 我らの戦いはこの戦いの先にあることを忘れるな!!
 すぐに出撃するぞ」

「「「「「はい!!」」」」」





 

 コバルト小隊はこの後、Gエリア最後の戦いに赴くのであった






 


 設定(簡易版)

 書き慣れないのでオリジナルだけです。



 崩剣ブレイクインパクト

 一言で言うと大剣です。
 形状は斬馬刀と同じですが、刀身の部分が斬馬刀の2倍あり、重量は3トン弱という剣というよりも鈍器。
 刀身自体が、極限までに精錬された磁気方向が一定したニブル改で出来ているので、剣にエネルギーを送ることで内部にリニアモーター(回転する構造の一般の電動機に対して、直線状に走る構造の電動機をいう。)を発生させ、剣内部にあるドゥークスS製の重さ1トンの重りを時速300キロ以上の早さで鍔元から剣先に移動させることが出来る。
 また、剣にエネルギーを供給している間はEP全消費が剣自体に発動するため、レーダーとWCSに悪影響を及ぼさなくなる。
 逆にエネルギー供給をカットすると、2トン近い磁気物質の塊となり全方位300メートル以内のレーダーとWCSを狂わせる。(敵味方の区別は当然出来なくなり、通信もノイズのため接触回線か、外部スピーカーを使わないと出来なくなる)
 武器としては、剣内部の重りの位置を任意に移動させることにより、圧倒的な破壊力を生み出す。もっとも有効的な使い方としては、遠心力をつけてのなぎ払いと振り降ろしである。
 また、使用回数に制限(剣自体の強度を著しく消耗するため)があるが、鍔元から剣先まで重りを移動させるのではなく、鍔元から剣先に重りを打ち付ける(発射する?)事によって、異常な突進力を持った突きを放つことが出来る。使用回数は5回まで




 シューティングアロー

 巡航速度マッハ10で飛行する特大ミサイル型PF専用強襲用輸送機
 パイロットの事を何一つ考えていない設計のため、誰一人使おうとする者がおらず、ヘルファイヤーを多用するコバルトリーダーに押しつけるように回ってきた特殊輸送機
 その後、使えるようにコバルトリーダーが手を加えたが、いまだに実用出来る代物にはなっていない



 

 後書き!!

 「次回作は・・・・・があるかはともかくとして、」そう言われる程にあるはずの無い次回作を書いてしまった(汗)
 今回は気合いを入れて2週間かけて書いてみました。
 そのせいでページ数ワードで90ページに増えた(汗)
 まあ、書いてしまったものはしょうがないか(笑)

 では、恒例の伝えたいこと!!
 死に逃げるな、生きている者は生きている者として行動せよ!!
 なげやりになったり、辛いことから逃げるな!!
 そんなことは言えません、俺達は生きている以上よわっちい存在なのだから
 でもそれは、生きていると言うこと
 それは平和を噛みしめることが出来るということ
 希望も決して失われないと言うこと
 12才の子供が4才の子供の命を奪う世の中に、忘れてはならないことだと
 俺は思います
 気に入らないこと、怒りが頭から離れないこと、不安に駆られ何も手につかない時
 思い出して欲しいです
 生きている限り、希望は決して失われないことを
 偉そうな事を言いましたが、俺は期間限定の試練を受けていた時後何日でこの辛さから解放される、そう希望がもてたから色々なことに耐えることが出来ました。
 なんにでも希望はあるはずです。
 見えないのなら、見えるまで探してみてください!!
 その努力をやりもしないで、俺には希望がないなんて絶望しないでください
 足掻き続ける限り、希望は決して潰えません!!

 さて、語りもいい加減聞き飽きたでしょうから後書きらしい後書きでも
 今回の狙いは、全パイロットに戦闘シーンでの活躍を書きたかった。
 前回は戦闘シーンがおざなりだった。
 今回は戦闘シーンをかなり多くしてみんなを活躍させたつもりだったが、イマイチ偏りがあったことが否めない。
 そして、一番の誤算?はバールが異常に強く、その上馬鹿だけど凄く良い奴になってしまったことだった。
 まあ、実に俺好みの男になってしまったが、これはこれでインパクトがあって良かったかな(笑)
 さて、次回作ではとうとうコバルトリーダーが生き返る?そんな感じのを書こうと思っていません!!
 この調子で書き続けると100ページ越えそうだし、何よりも語るネタが!!(ここが重要)
 そんなわけで、当分はバトルロイヤル最大手(アップされている頃には自称が取れているだろう)らしく、本業にせいを出そうかと思っています(笑)

 それでは皆さん、最後までお付き合いありがとうございました!!


 


 管理人より

 踊る風さんよりご投稿いただきました!

 ここから極光の不死鳥へと続きます・・・

 ある意味結構重要な話かも(苦笑)

 


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