機甲兵団J−PHOENIX オリジナルストーリー


覚めた悪夢の終わりは・・・









 

 プロローグ


 暗い沈黙が瞼の上にある布きれからもたらされた。

 光なき闇、耳には雑音、鼻からは硝煙と血の臭い、口腔には鉄の味いや、血の味がする

 目は光を捕えていない

 しかし、目の前に女がいる

 殺す価値もない程にどうしようもない、ただ震えるだけの女だ

 だが、震える女の目はつぶられている

 いや、眼が見えていないようだ

 例えようもない破壊衝動の中、男は破壊するためにのみ冷静にならざるを得なかった。

 自らの意志ではない

 強制された生活、そして実験、そして・・・・・

「茶番だな・・・・・・・・、ああ、神よ、そう呼ぶ者があるのなら賭けよう・・・・俺にどうか幸福な夢を・・・・・」









 

「わぁあぁぁぁあぁぁああーーーーーーー!!!!」

 大絶叫と共にレオン=ウィッシュは目を覚ました。

 レオンは眼を見開き大汗をかいていたが、それを拭おうともしていなかった。

 それを見て、隣にいた女性が濡れたタオルでレオンの額を拭いた。

「大丈夫あなた?」

「ああ、済まないキー」

 レオンはすまなそうに妻のキー=ウィッシュを仰ぎ見ると、彼女のお腹に手を当てた。

「お前も驚かせて済まなかったな」

 キーは妊娠5ヶ月だった。

「あなた、辛いのならもう戦わなくてもいいわ」

「いや、辛くていい。俺はそれだけの事をしているのだから」

 レオンの眼は虚ろだった。

 キーはレオンを抱き起こすと、彼の顔を胸に押しつけた。

「聞こえますか?私だけじゃなくこの子の鼓動を、こんな時代ですから叶わない願いもあります。祈っても変えられない運命だってあります。でも、あなたには選択肢があります。どうか、忘れないでください」

 キーの黄金の義眼から涙が流れ、レオンの額を濡らした。

 レオンは何も応えない代わりに、キーにキスをした。

 レオンは嘘をついていた。

 戦争の夢にうなされると、キーに嘘を言っていた。

 悪夢が記憶であることも、惨劇の行き着く先がどうなったのかもレオンは知っていた。

 自分が誰で、なぜ生きているのかも知っていた。

 だが、自分を偽っているつもりはなかった。

 どんな自分も、やはり自分だと言うことをレオンは知っていた。









 

その日の黄昏時


「外が騒がしいわね、あなた」

「そうだな、少し見てこようお前は大人しくしているんだぞ」

「ええ、どのみちこの眼ではどこへも行けないもの」

 キーは悲しむどころか、イタズラっぽく笑っていった。

 レオンはキーの額にキスをすると家から出て行った。




 

 あれは、・・・オニにヤシャ!!なんだってこんなところにPFが?

 レオンはどんどん冷静になっていく自分に吐き気を覚えながらも、怒りを剥き出しにした。

 誰でもない、自分自身にだった。

 そしてレオンの目の前のPFからパイロットが降りてきた。

 レオンは慌てて横の路地に駆け込んだ。

 別に見つかったからといって、どうと言うこともないのだがレオンはそうした。

 そして、レオンは降りてきたパイロットの会話に耳をそばだてた。


「おい、ソウリュウ!!あのバカは修正しておけ、それから戦車部隊は国境方面2キロの位置に待機、一ミリたりとも街に近づけるなよ」

 無意味にPFの足に片足を乗せカッコをつけながら、一見女性のような容姿をした男が怒鳴りつけていた。

 男の名はレビ=プラウド、階級は中佐だった。

 彼はワザと目立って見せた。

 そうすることによって、まずは自分が男であることをアピールし、それと同時に自分達の行動を町民に知らしめようとした。

「了解しています、ニコラス=ハルゼーは強制的に反省させ自ら重営倉を望んだので、それを受理し今はサーリットン戦線であります!!」

 そう大声で答えたのは、ソウリュウ=レファーナン大尉だった。

 彼はレビ中佐の副官であり、礼儀正しく硬い信念を持つまだ若干19才の兵士であった。

 もっとも、士官学校では常に主席をとり続け時期エースとも呼ばれているが、レビ中佐と同じヴァリム穏健派だった。


 これ程の人物が国境まで町にしても2〜3個あるこの場所に現れたのには、やはりそれなりの訳があった。

 それは、ニコラスが守備していた最前線の基地をアルサレアの軍に奪われたからだった。

 ニコラスの守備していた基地の左右にも基地はあったが、かなり距離があった上にアルサレア軍をおちょくりにニコラスが出撃してしまったところを、アルサレアの遊撃新兵隊にまんまとかすめ取られてしまったのだった。

 ニコラスは腕は立つが頭が悪く、基地を奪われた事に気づくと奪還を開始するも途中で活動限界になりそのまま逃亡したのだった。

 そして、逃亡先の基地のPFを勝手に使い基地奪還を開始したが、そこは既にもぬけの殻になっていたばかりか、前後からアルサレア軍に挟撃され全滅を余儀なくされた。

 最終的にニコラスは基地を自爆させ自分だけ逃げ延びたが、レビ中佐に掴まり後は聞いての通りだった。

 ちなみに、レビ中佐は穏健派と強行派との会議でつい「また戦争やるとでも言うのか?・・・くだらねぇ事言ってんじゃねぇ!もう一度訳解からない事言いやがったらここで解体するぞコラァ!!」などと本音を叫び、一時的に左遷されていた。

 公には、深く切り込まれた最終防衛ラインの維持と復興だった。


 自分達の事をそれなりにアピールしたレビ中佐率いる機動師団(PFを主力に置いた部隊ではなく、戦車などPF以外を主力にした部隊)は、街の国境側に防衛ラインを展開すると町長の家を訪れ、部隊の補給を約束させた。

 そして、レビは放送塔を使って町民に呼びかけた。


「俺はヴァリム軍レビ=プラウド中佐だ
 今現在ジオハイド基地をアルサレア軍に奪われたために我々はここに駐屯している
 現状ではここが戦場になる可能性が無いとは言いきれない
 故に、脱出を望むものは我が部隊のPF輸送用の輸送機にて脱出するといい
 我々も出来る限りはここを戦場にしないように努力をするつもりだ
 だから、協力しなくても良いからジャマをするな
 以上!!」


 随分と一方的なもの言いだったが、しょうもない政治家の様な無様な演説と違い、わかりやすく何を望み何をしてくれるのかが明確だったために、町人達は特別な反感を持たなかった。

 まあ、それでも全てが大人しくすむわけではなかったが。








 

 自宅に帰ってきたレオンにキーが言った。

「お帰りなさいあなた、私たちはどうしましょうか?今更どこへも行けませんけど、各地をまわってみます?」

「残念だが先立つものもない、それにPFを置いていくわけにも行かない。最悪、俺も戦うことになるだろうな」

「そうですか・・・」

 キーはPFを軍に売り渡して路銀を稼ごう、そう言おうとしてやめた。

「心配するな、まだ攻めてくると決まったわけではないのだから」

 レオンがそう言った時、玄関のチャイムが鳴った。












 

町長邸の一室を借りたレビ中佐達PF乗り


「いい話と、悪い話があるのですが」

 そう言ったソウリュウは、ソファーにふんぞり返っているレビに敬礼をした。

「悪いのから聞かせろ、いい話はたかが知れてるからな」

「たしかに、では悪い方からですがジオハイド基地を探らせていた部隊から報告がありました。今朝方、特尉が基地の司令官に着任したそうです」

 特尉、それだけで誰なのかを特定できるはずがないと思われるだろうが、そんなことはないのだ。

 なぜなら、特尉なる階級はヴァリムには存在しないし、アルサレアに置いてもたった一人にしか与えられていない階級なのだから

「クレイジーウインドか・・・・ふ、それはいい知らせだよソウリュウ。で、いい話は?」

 上機嫌のレビにソウリュウはすまなそうにいった。

「この町にカスタムPFの傭兵が今戻ってきているそうなので、現在交渉中です」

「カスタムPFとは珍しいな、使い物になるなら、いやお飾りであっても欲しいところだな」

 レビの思惑はこうだ。

 今レビが率いてきたPFは、オニが3機、ヤシャ1機これで全てだった。

 後は戦車が50車両だったが、これは町人の目に触れない位置にいた。

 とりあえず安心感を与えるためにも、お飾りでも良いから目に見える戦力をレビは誇示しておきたかった。

「で、本題だが特尉はどう出ると思う?」

 レビは優秀なる副官に楽しそうに聞いた。

「敵意持つものには容赦のない男ですが、どちらかと言えば、戦火を強制的に消しにいくタイプの男ですから防衛に徹するかと思われます。まあ、こちらから打って出なければ手段を選ばないようなマネはしないかと」

 レビはニヤリと笑うといった。

「違うな、たぶん早い段階で動くだろうな、一カ所に止まるのは苦手そうだ」

「打って出ると?いくら腕に自信があり、切り札を簡単に切る男だとしても軽率では?」

「まだまだ頭が固いな、まあいいさ」

「頭が固いのは認めますが、アルサレア軍の勝率は間違いなくゼロですよ、良くても相打ちぐらいなものです」

「なぜ言い切れる?」

「特尉はグリュウに破れています、その程度の実力なら中佐はともかく俺でも負けはしないかと」

「では、賭けよう。特尉の出方と、強さに」

「ええ、構いませんよ。では俺が勝ったら最高のワインでも頂きましょうか」

「いいだろう、なら俺が勝ったら暇をくれ」



 二人がそのまま世間話に突入しそうな時だった。

「失礼します、例の傭兵の方が参られましたが」

 ドア越しでそう言ったのはオペレーターのカノン=エルザードだった。

「ああ、丁度良い入ってもらえ」

 レビがそう言うと、黒髪黒眼で長い髪を頭の後ろで束ねて背中に流している一見女性に間違われる容姿をしたショウ=ミカズチ中尉が、レオンを連れて入ってきた。

 レビはレオンを見ると違和感を覚えた。

 何がどう、とは言えないが不自然なものを感じたのだ。

「単刀直入に聞こう、この町を守るために力を貸してくれないか?」

 レビはショウの様子から見て、交渉は以前継続中であると判断してそう言った。


 レオンはずっとショウと行動を共にしていたので、レビが今だ交渉中だということは知らないはずだと思っていた。

 この男はかなり出来る

 そう思ったレオンは言った。

「この街を守るのは当然だろう、そのための軍隊なのだから。俺は傭兵として雇われに来ただけだ」

 レビはショウに目配せした。

「彼のPFを見ましたが、なかなかのものです。クセが強そうですがかなり強いかと」

 ショウはつつがなくレビの期待に応えた。

「いいだろう、言い値で雇うとしよう。その代わり、命令は絶対服従。それが条件でどうだ?」

「契約成立だ、俺は自宅に戻る。用があればいつでも呼んでくれ」

 レオンはそう言うとさっさと出て行ってしまった。

「なれ合いは嫌いらしいな」

 シャドー・マイケル少尉がそう言うと、レビは笑いながら言った。

「まあ、いいさ。はなから過度の期待はしていない」









 

 家への帰り道レオンはドキドキで一杯だった。

 目の前にしたレビ中佐の雰囲気に飲まれそうだった。

 高圧的ではないが、有無を言わせぬものがあった。

 しかし、本当にレオンをドキドキさせていたのはそれではなかった。

 以前研究所で、自分に色々と強制していた時の記憶がフラッシュバックしてきていたのだ。

「くそ、思い出したくないのに!!」

 レオンは空き缶を蹴飛ばすと、家には向かわず家の近くのPF格納庫に向かった。

 嫌なことがあるとPFの調整で気を紛らわせるのが、レオンの習慣だった。

 その時レオンは気づかなかった。

 イライラしている自分を舐めるように観察するものの視線に





















 

アルサレアサイド ジオハイド基地にて


「久しいなお前達」

 そう言ったのはケイオウ特尉だった。

 女受けしそうなマスクに黒髪の長髪が印象的な男だった。

 そして、彼の目の前には四人の青年が最敬礼で立っていた。

 右から、タケル・ミラーソード中尉、ハクト=アカツキ軍曹、ロウガ マガミ軍曹、ジェーク・ハイドラ軍曹だった。

 この四人はアルサレアでは無法特急と遺憾な名で呼ばれていた。

「「「「は!!おひさしぶりです!!」」」」

 ケイオウはそれを聞くと、無言で四人を殴りつけた。

「このお調子者どもめ!!」

 叫び声一つあげられずに壁に叩きつけられた四人は、ケイオウの副官(アルサレア軍非公認)のゴールドに助けられよろよろと立ち上がった。

「ケイオウ、このぐらいでやめましょうね。これ以上やりたいのなら私を殴りなさい、いくらでもこの身を差し出しましょう」

「結構ですよ聖女、落ち度があったことも、その尻ぬぐいをさせるのも俺達ですから」

 聖女と呼ばれたケイオウ特尉の自称副官ゴールド・スレイブ特佐(ミラムーンでの階級であり、現在はケイオウ特尉の追っかけの一般人。あくまで書類の上では)は微笑むと、タケルの口から流れる血を拭いた。

「わかっているならそれでいい、とりあえず後先考えずに勝手に進軍するのは控えよ」

「ケイオウ特尉はみんなの事を心配していたのだから、許してあげてくださいね」

 柔らかな微笑みを浮かべる顔は優しさに満ち、ケイオウとおそろいの黒髪長髪は彼女の色白をより際立たせていた。

 もっとも、一人だけ漆黒の修道女のようなワンピースを着ているので、違う意味でもゴールドは際立っていた。

 ゴールドの言葉に、当然と四人がうなずいていると

「失礼します!!ルリエル・カルズリー大尉(整備技師)ただいま戻りました!!」

「同じく、ヒルツ・クライン少佐ただいま着任致します!!」

 二人は入って来るなり最敬礼をした。

 ちなみに階級だけなら、少佐は特尉の上である。

「ご苦労、でルリー援軍の内訳は?」

「はい、Jキャノン4機、Jファー7機と、少佐のカスタム2機です」

「2機?」

 ケイオウ特尉はヒルツ少佐を見た。

「ヴィクティム准将子飼いのヒットマンが同行してきました。まあ、いつものことなので放任してきましたが、いけませんでしたか?」

「ふう、懲りないねえ。まあいいさ、いつも通り無視しよう」

 今の会話から予想できたかも知れないが、ヒットマンはケイオウ特尉を暗殺しに来ていた。

 なぜなら、悪夢の戦略家ことヴィクティム准将は効率よくアルサレアに取ってお荷物な者達を戦死させることを生業とする軍師である。

 しかし、例外もあった。

 それこそがケイオウだった。

 彼は、ことあるごとに名誉ある戦場にケイオウを送り込んだが、その度にケイオウは生還して見せた。

 まあ、それだけなら何度でも使い捨てればいいのだが、彼がヒットマンまで送り込むのには訳があった。

 以前彼は少尉のケイオウに、作戦が気に入らないといわれたあげく両足を撃ち抜かれたのだった。

 それ以来ヴィクティム准将は、目の敵のようにケイオウを名誉ある戦場にヒットマン付で送り込んだのだった。

 ちなみにこれで7度目だった。



「さて、どうでも良いのは放って置いてヒルツ土産みやげは?」

「そうですね、あまりいい話ではないですが手近な街にヴァリム軍が展開しています」

「指揮官と距離は?」

「指揮官はレビ=プラウド中佐、距離は70キロ、主力は戦車50車両、PFは現在4機ですがもう5〜6機は増えるかと」

「根拠は?」

「彼は穏健派ですので、大部隊は呼ばないでしょう。それに彼のフェンリル機動師団は、今はミラムーン方面に展開しているので早くても1週間はこれないでしょう。それに近間には基地がないので、流れの傭兵を総動員したところで5〜6機が限度でしょう」

「いい読みだ、少佐は伊達ではないな」

 ケイオウはそう言って笑った。

「俺は情報を集めてまわっただけですよ、あとはあなたの受け売りです」

 そう言ってヒルツは苦笑いした。

「さて、どうします?後学のため一戦交えたいところですが?」

「俺的には基地を爆破して、どさくさに紛れて撤退したいですね。戦闘は苦手だし」

「よく言いますよ、この中で3番目に強いくせに」

 ハクトはそうヒルツに言った。

 ヒルツはまた苦笑した。

「とりあえず命令待ちだな、っと言ってもヒットマンがいる以上は攻めさせられるだろうな」

 ケイオウは笑いながら言った。

 また良からぬこと、いや彼らしいとんでもないことを思いついたようだった。














 

その頃、ヴィクティム准将


「そろそろこいつらを実戦で試したいものだな」

 ヴィクティム准将の声に、白衣の男はうなずいた。

「ええ、十分にご期待に応えられるでしょう」

「期待に応えられなければ最前線にお前達に行ってもらうぞ、今度こそな」

「半年前の不始末に関しては何も言いませんが、今度はその反省も含めて作っていますので大丈夫です」

「だと、いいがな」

 ヴィクティム准将は含み笑いを残して去っていった。

 それを見計らって別の白衣の男が、話しかけてきた。

「所長、ロストナンバーが見つかりました。それも今回の目的地にいました」

「まだ生きていたか、良く自己崩壊しなかったものだな。しかし、今思いだしても忌々しい!!」

 所長と呼ばれた男は歯ぎしりしながら怒りに震えた。











 

〜〜〜半年前〜〜〜

「まるで悪夢のようだな、あれだけの時間をかけ苦心の末に作ったものを自らの手で破棄せねばならないとは」

「ですが、使えないゴミなど邪魔なだけです」

「無論だ、さあ始めよう、目隠しを!!」

 男の目の前には三本の棒にくくりつけられた3人の男女がいた。

 名前はなかった。

 白衣を着た男達が、銃殺される三人に目隠しをした。

 この三人は罪人ではない、むしろ被害者だった。

 これはアルサレア軍非公式の実験機関でのワンシーンだった。

 そして、この研究所でこれから銃殺されるのはマンマシーン計画(以後MM計画)の被験者達であった。

 ちなみに、ヴァリム軍にも双子の悪魔(キサラギ=ユイ、マイ)などに代表されるMM計画の被験者達はいたが、あまりに非人道的行為により、ヴァリム国内でも大いに波乱を呼ぶ計画であった。

 もちろん、アルサレア内であっても口外されれば、どうなるかわかったモノではない計画だった。

 そして、目隠しされた三人は一応に大人しくなった。

 銃口を向けられていても、それ自体が見えなくなると、いや暗闇に覆われると人は恐怖ではなく安心を感じるのだ。

 だから、通常銃殺刑などでは目隠しされることが決まっていた。

 
だが、それがまずかった。

 この三人に施されたMM計画の内容は、肉体強化(主に対G能力、反射神経、基礎運動能力の向上)と精神操作であった。

 そして、多くの犠牲の上にこの三人はそれを得ることが出来たのだった。

 しかし、あまりに高すぎる身体能力と、いきすぎた精神操作により、手がつけられなくなったため廃棄が決定したのだった。

 ちなみにどの様な精神操作が行われたかというと、まず第一に飽くなき破壊衝動と、烈火の如き怒りを伴う闘争本能の暴走、この二つを持ってしても異常なまでに維持される永久氷壁の如き硬い冷静さだった。

 多少、前者二つにバラツキはあるものの三人はそれを持っていた。

 そして、右端の一人が頭を撃ち抜かれると同時に残りの二人に破壊衝動と闘争本能が暴走した。

 二人は金属製の手錠を引きちぎると、手近にいた研究員を文字通り盾に銃を奪い取ると、動くものが無くなるまで暴走した。

 ちなみに、上役の研究者はさっさと雲隠れしてしまった。

 そして、とうとうMM計画の二人しか動くものがいなくなると、今度は二人で殺し合いを始めたのだった。

 そして、勝利したのはレオンだった。

 そして、精神が正常に戻ってきた時彼の目に映ったのは、死体の山と二人の戦いの被害に遭い盲目となったキーだった。

 レオンは希望を感じた。

 破壊するだけの兵器となった自分が殺し損ねた。

 自分も人に戻れるかも知れない。

 レオンはキーを連れてヴァリムに逃げた。

 そして、キーを拝み倒したレオンはキーと結婚したのだった。

















 

アルサレアサイド


「久しぶりだなケイオウ」

 ヴィクティム准将は暑苦しい顔をスクリーン一杯に映し出しながら、さげすむような目でケイオウを見た。

「相も変わらず、貴様も懲りない男だな」

 ケイオウ特尉も相手が准将とは思えないもの言いで返した。

「相変わらず無礼な奴め、まあいい。今すぐ進軍してこい、なんならヴァリム首都まで攻め入ってもかまわんぞ」

「言いたいことはそれだけか?」

 目障りな顔でニンマリと笑うヴィクティム准将に、ケイオウ特尉は涼しい顔で言い返した。

「ぬ!それだけだ!!」

 そういうとヴィクティム准将は通信を切った。

「愚かな男だ、こちらの思い通りに動いてくれようとも知らずに」

「いいえ、わかっているのですよ。ただ、わかっていても何かしていなくては気が済まないのですよ。まあ、そうなるようにあなたがし向けているのですけどね」

 ゴールドの言葉にケイオウは苦笑した。

「あの〜、そろそろ事を起こしませんか?色々勘ぐられてもやっかいですし」

「そうだな、ではルリーよろしく」

「は〜い、では通信繋ぎます」
















 

ヴァリムサイド


「失礼します、レビ中佐。あの〜その〜

「どうしたカノン、はっきりしろ別に怒りはしないぞ」

「中佐自然に凄んでますよ」

 ソウリュウがそういうとレビはソウリュウを睨み付けると、カノンに微笑んだ。

「あの、アルサレアの特尉から通信が来て指揮官と話がしたいと言ってきました」

 そういったカノンの顔に陰りが見えたのをショウは見逃さなかった。

「ははは、さすがアルサレアの奇行、こう出るか。了解した、通信に出よう」

 レビは通信室に行きながら、ソウリュウに向かってニヤリと微笑んだ。

 ソウリュウはギクリとして引きつった笑顔をレビに返した。









 

アルサレアサイド


「応じるでしょうか?」

「無用な心配ですよルリエル、レビ中佐は穏健派ですし、なによりお互いに利益がありますからね」

 ゴールドがそう微笑むと、ルリエルはなぜか苦笑いで応えた。








 

アルサレア、ヴァリム両サイド


「お待たせしたな、俺がヴァリム軍司令官のレビ=プラウド中佐だ」

「初めまして、俺はアルサレア軍司令官ケイオウ=ロンドゲイル特尉です」

 お互いに腹のさぐり合いを始めるかと思った矢先

「ふ、勝った」

「中佐一体?」

「どう見ても俺の方が美形だ」

 その一言にケイオウ、ソウリュウその他両陣営のお付きがこけた。

 ただ唯一、ゴールドだけが涼しい顔ではにかんでいた。

「まあ、何とでも言ってくれ、どうせもらい物の顔だ。けなされて傷つくのはこの顔を作ったドクターだけだ」

 ケイオウがそう言うとレビは切り返した。

「それは無礼だったな、連れのご婦人は・・・・、こちらの負けのようだな」

 レビはスクリーンに映るゴールド、ルリエルと、隣にいるカノンを見比べていった。

 ショウは心中穏やかではなかったが、敢えて見逃した。

 シャドーはただ呆れていた。

「お褒めにあずかり恐縮ですわ、自己紹介を許可願えるのならば副官の名を名乗りたいのですが」

 ゴールドがあふれる笑顔でそういうと、レビはソウリュウを見た。

 ソウリュウはうなずくと前に出た。

「こちらこそ、自己紹介が遅れて申し訳ありません。自分が副官のソウリュウ=レファーナン大尉であります」

 ソウリュウは敬礼すると、ゴールドにどうぞと促した。

「承知しましたわ、ではこちらも。私はゴールド=スレイブと申します、以前はミラムーンで特佐をしておりましたが、今は彼専属の傭兵と言ったところです」

 その言葉に、スクリーンに映らない位置にいたシャドーがなにやら納得した顔になっていた。

「なるほど、アルサレアの傭兵もなかなか見事なものだな、なあソウリュウ」

 レビは意地悪な顔でソウリュウを見たが、ソウリュウはただうなずくだけだった。

「なかなかくえん男だな貴殿は、さて本題に入ろう。時間もないことだし」

 ケイオウはそう言うと、強引に話を戻した。


 馬鹿話をしながら雰囲気を和ませ、その隙に相手を見定めようとしたレビだったが、どうやら見定められたような感じになってしまった。

 とはいえ、悪い気分はしなかった。

「時間がないというのはいささか気になるな」

「なに、話のわかる穏健派のあなたがいなくなる前にカタをつけたいだけさ
 それでは、本題に入ろう
 単刀直入に言うと、我が部隊は強制的に進軍するように上から命令されている
 まあ一応は軍人なので、たまには命令を守らないといけないので進軍するつもりだ」

「随分いい加減な軍人を、特尉にしたものだなアルサレアは」

「そういってくれるな、ただ人が不必要な死に会うのが我慢できなかった結果なだけだ
 話を戻すぞ、こことそちらの丁度中間地点で両軍相まみえるとしないか?
 最高級とは口が裂けても言えないが、バーベキューの用意をしてお待ちしているよ」


 ・・・・・・バーベキューの用意?


 ヴァリム軍レビ部隊全員の思考が停止した。

 どこをどうするとそういう話になるのか、どうしてもつじつまが合わなかった。

 しかし、いち早く復活したレビは言った。

「では、こちらはワインでも用意した方がいいかね」

「お気遣いなく、それに飲酒は致しませんわ。PFは飲酒運転禁止ですもの」

 ・・・・・からかっている様子はない、ゴールドの目をみたレビは確信した。

「補足しよう、俺は茶番を演じたいのさ
 進軍したが、ヴァリム軍レビ中佐率いる部隊に押し返され進軍は不可能
 そういう結果をアルサレアに報告する為の口実が欲しい
 はっきり言おう、現状ではアルサレアはこの楔からヴァリムを強行制圧するのは不可能だと、俺は思っている
 無駄な血は一滴たりとも流させたくない
 だから撤退する口実が欲しい」

「愚かな程、馬鹿正直だな貴様は・・・・・・ソウリュウどう思う?」

 話を振られたソウリュウは、戸惑いながら言った。

「あなたは我が身がかわいくないのか?」

 ヴァリム軍に有益であり、アルサレア軍の兵士にも有益な話だったが、ケイオウ特尉に限定すれば減俸は確実、もし茶番がばれれば軍法会議は必死だろう。

 はっきり言って、ソウリュウには正気の沙汰とは思えなかった。

「戦場の俺は死人、死人が何を失おう?失うことを恐れるものが、おいそれと自爆などするものか」

 ケイオウは微笑を浮かべてソウリュウを見た。

「クレイジーウインド・・・まさに、狂気だな。中佐俺はこの茶番に乗ろうと思います」

「だ、そうだ」

 レビはソウリュウにうなずくとそういった。

「協力を感謝する
 我が名と、誇りと、命に賭けて決してこちらから仕掛けることはさせないと誓おう
 もし、疑わしい行動をしようものなら俺がそいつを叩っき斬ってやる」

「では、後ほど」

 レビはそういうと通信を切った。

「さて、邪が出るか蛇が出るか楽しみだ。レオンを呼べ、PF部隊のみ出撃!!」

「PF部隊出撃!!戦車部隊は現状維持を」

「「「了解!!」」」

 レビが部屋から出て行くと、ショウがカノンに言った。

「忘れろとは言わない、だが我慢しろ。お前のようなものを一人でも減らす為に」

「大丈夫だよ兄さん、わかってるから」

 ショウはカノンにキスをすると、出撃を開始した。









 

 だれもいなくなった部屋でカノンは再び通信を繋いだ。

「あの〜、ケイオウ特尉をお願いできませんか?その、完全な私用なのですが、お願い!!」

「愛の告白ですか?」

 余りにも真剣な瞳に思わずルリエルは勘違いした。

「違います!!」

「なにをやっているルリー」

「ああ、丁度いいところにご指名ですよ。あ、私席外しますから」

 ルリエルはそういうと、愛用の工具箱を持ち上げたが、なぜか蓋しかついてこなかった。

 そして、お約束!!

「わきゃ!!」

 ルリエルは思いっきり工具箱の中身をまき散らしながらこけた。

 そして蹴り飛ばしまくって変形した工具箱を修理し始めた。

「戦友は大事に扱ってやれよルリー」

「わかってるんですけどね」

ルリエルは涙目、苦笑いで応えた。

「さて、君はさっきの・・・オペレーターの子かな?」

「ケイオウ特尉、イオス=エルザードと言うものを知っていますか?」

 ケイオウは真剣なカノンの質問に、遺族、もしくは彼女の親しいものであると感じとり、大急ぎで記憶を呼び戻した。

「ああ、B(ボックス)エリアで戦死したヴァリム軍の兵士だったな」

「あなたが殺したのは私の兄です!!」

 そういったカノンの目は真剣だったが、その瞳には怒りではなく期待が見て取れた。

「俺には、何も出来ない」

 真剣な顔で言うケイオウにカノンが声を張り上げた。

「あなたじゃないんでしょ!!どうして、どうして真実を教えてくれないの!!」

「事実は何も変わらないからだ
 真実を知っても悲しみは変わらない
 それでも、俺は謝ることも出来ない
 仇を討ちたければ君も来るといい、仇討ちなら生身でお相手しよう」

「敵討ちなんてしたくありません、私は真実が知りたいだけ」

「何のために?」

「お兄ちゃんの死が無駄でなかったと、確認したいから・・・・だから・・」

「軍人の中では、戦闘中には口を滑らす馬鹿もいるだろうな」

 ケイオウはそう言うと通信を切った。

「良かったんですか?無責任なこと言っちゃって」

「お前並には覚悟がある子さルリー、それより手はず通り頼むぞ」

「ええ、任せてください特尉専属の意地を見せて魅せますよ」

 ケイオウはルリーの頭を撫でると出撃していった。

 その頃通信を切られたカノンは吼えていた。

「ずるい!!でも負けないんだから!!」

 カノンは立ち上がるとレビ中佐の元へと走ると泣き落としに入り、強引にショウの機体に乗り込んだ。

 レオンは呆れていた。

 タッパを持たせたしっかり者のキーにもだが、ホントにパーティーをやると信じているレビ達にも大いに呆れていた。















 

パーティー会場


「そろそろ焼き上がりますわ」

「あ、自分が運びますね」

「タケル、俺がやるからテーブルクロスはお前が張れよ」

「ハクト、その両手に持ったコップを置いてからそういうこと言いましょうね〜、聖女俺がお手伝いしますよ〜」

「ジェーク!!特尉に言いつけるぞサボってるって!!」

「愉快なことだ」

 ヒルツまで混じって馬鹿やってるその様を見て、マガミは笑った。

「馬鹿話もそこまでだ、少しはお行儀良くしろ!!一応は茶番でも会合なのだからな」

「下手に気負うよりかはずっといいですわ、フォローは私がしまうから、ね」

 ゴールドの笑顔に、ケイオウはため息をつきガックリうなだれた。

 その頃、偵察機まで飛ばして様子を見ていたレビ中佐達

「本当に他意は無いようだな、少しがっかりだが。まあいい、いくぞ」

「「「了解」」」」






 

パーティー会場


 3機のオニと1機のヤシャ、そしてカスタムPF1機が高速でやって来た。

「旨そうな匂いにつられてやって来るとは、我ながら子供のようだな」

 レビはオニから降りてきながらそういった。

「丁度焼けたところですの、どうぞ」

 そういってゴールドはレビ小隊を優先して食事を配った。

 そしてパーティーは他意なくパーティーとして行われた。







その一角


 ヒルツがカノンを自分のPFの足下に連れ出していた。

「君のお兄さんを殺したのは俺です、敵討ちしたいのなら」

 そういうとヒルツは拳銃をカノンに差しだした。

「なにか、証拠はあるんですか?私は真実が知りたいの」

「彼は最後に「ごめんカノン…お兄ちゃんもう…帰れそうにない……ごめ……」そういっていた、余りにも後味が悪かったので覚えていた」

 カノンはその当時の事を思い出し歯を食いしばりながら、それでも泣き出した。

「すまん、俺は自分の身を守るので精一杯の男だから、英雄に憧れることしか出来ない男だから、彼のことまでは構っていられなかった」

「あなたは謝るんですね、特尉は謝らなかったのに、謝ってなにか変わるんですか?」

「わからないよ、でも戦争のせいにはしたくない。経緯はどうあれ、手を下したのは俺だから」

 カノンは悩んだ。

 目の前にいる男は、兄と戦う前からこうだったのか?それとも、兄と戦ったからこうなったのか?

 カノンにはわからなかった。

 でも、ハッキリしていることはあった。

 悪い人ではない。

 カノンは拳銃をヒルツに押しつけるように返すと、股間を蹴り上げた


「う・・ぎゅ・・」


 ヒルツはうめきながら突っ伏した。

「仇は取らせてもらいました、では」

 カノンはそういうとその場を後にした。

 密かに様子をうかがっていたショウは、吐き気を覚えながらも何もなくて良かったとホッとしていた。













 

 その頃、キーへの土産みやげをタッパにしっかり詰め込んだレオンは、PFの調整をしていた。

「シルキス(MM計画でレオンに殺された被験者の名をつけられた戦闘用AI)、WCSの調整がまだ甘いぞ」

 〜調整は完了している、精度には問題ない。問題なのは兵器であることを忘れようとしているマスター自身だ〜

「それのどこが悪い!!俺は人間だ!!お前は俺の命令を忠実に完遂すればいいんだよ!!」

 レオンはコクピットルームを殴り飛ばした。

 〜了解〜

 レオンは苛立った。

 シルキスは確かに有能なAIであり、最強の武器でもあった。

 しかし、折り合いは悪かった。

 いや、自分から拒絶していた。

 自分はもう、シルキスの様なMM計画の兵器ではなく、人間なのだからシルキスと折り合いがつくのはおかしいと思っていた。

 とはいえ、戦闘ではしっかり兵器に戻ってしまうレオンは、シルキスを必要としていた。

 誰よりも息のあった相棒のように、必要としていた。




















 

 パーティー開始から35分後、ケイオウのPFから警戒音が鳴り出した。

「どうやら、招かれざるお客が来たようだ。挨拶しにいってくる、なかなか楽しいパーティーだったよレビ中佐」

 ケイオウはそう言うとPFに乗り込み、単機でその場を離れた。

 ゴールドはレビ小隊にお辞儀をすると言った。

「詰まらぬ余興ですが、よろしければ話のネタにでも見学していってくださいね」

 そういうとゴールド達もPFに乗り込みだした。

「全機、50歩後退しつつ目標ケイオウ特尉!!構え、撃て!!」

 ゴールドは何の迷いもなくそう言った。

「喧嘩でもしてるのか?・・・・カノン、照合終わったか?」

「はい、レビ中佐。国籍は不明、全30機共にカスタムPFですがボディーがアポロンであること以外に、武装共に共通点はありません」

「如何しましょうか中佐」

 味方の一掃射撃を見事にかわすどころか、それを援護射撃として戦うケイオウの動きを見たレビはうなずくとPFに乗り込んだ。

「ソウリュウ、ここは任す!!つまらん茶番に華を添えてくる」

 そう言うとレビは、ケイオウの元に走っていった。

「レビ中佐、私たちは手加減しませんわよ」

「弾も使わず無傷で帰っては、いくら盛大な煙を炊いても疑われる。当てられるものなら当ててみろ」

 それを聞いたゴールドははにかんだ。













 

 その頃ケイオウは疑問で一杯だった。

 ヒットマンが攻撃を当てられないことにではない。

 そもそも、射撃兵器による攻撃などキースクラスのものでない限りは、よほどのことがない限り当たるはずもなかった。

 問題にしているのはそんことではなかった。

 問題なのは、今自分を包囲している者達のことだった。

 十中八九ヴィクティム准将の寄越した部隊であるはずなのに、乗り手の腕があまりにも普通だった。

 まるでやる気がないかのようだった。

 レビのいる手前、本気で戦うなどと言う馬鹿なことをするつもりはなかったが、それにしてもやる気が削がれる相手だった。

 そこにレビが現れた。

「何なんだこのカス野郎共は!!茶番にもなりゃしねえじゃねえか!!」

 あからさまに興ざめ、そんな感じのレビはシラギクで手近な2機を切り裂いた。



 その直後だった。

 中途半端に振られたレビの攻撃を、今度は皆回避し始めた。

「レビ中佐!!こいつらまっとうな人じゃないぞ!!異常な学習能力というか、適応能力を持っているようだ、ここは・・」

「ああ、長引かせよう!!」

「当然!!」

 ここにバトル馬鹿が二人いた。

 普通は、相手が強くなる前にカタを付けるのが正論だったが、二人は迷うことなくバトル馬鹿だった。














 

 遠目から見ていたソウリュウは、違和感を感じていた。

「遊んでいるのか?敵がだんだん強くなっているような気がするが?」

「ソウリュウ様、その通りですわ」

 ソウリュウはドキッとした、様などと呼ばれたのは初めてだったし、何気なくもらした言葉に反応が返ってきたからだった。

 ソウリュウはどうやってこちらの会話を聞いたのかと思うと、ゴールドが先手を打った。

「先ほど話しかけようとしたのですが、回線が切られていたようなのでアンカーでの接触回線を繋いでいます。ご迷惑ですか?」

 いつの間に?疑問に思いながらもソウリュウはアルサレア側に通信回線を開いた。

「これでよろしいかな?」

「ええ、ありがとう御座いますソウリュウ様。では、茶番に私も華を添えようと思うのですがよろしいですか?」

 ソウリュウは勘違いした。

 彼女もレビの元に行くのだと思っていた。

「お好きにどうぞ」

 例え二対一でもレビが後れを取るとは思っていなかったソウリュウは、そう言った。

「ありがとう御座います」

 ゴールドはそう言うと、手近なJファーからサーマルプラズマライフルを取り上げると、三連射した。







「は〜、だんだんアホらしくなってきやがった」

 レビがそう言った時だった。

 絶妙のタイミングでサーマルプラズマライフルのエネルギー弾が襲いかかってきた。

「俺を舐めるな!!」

 レビはレールキャノンを撃つと、その反動を利用して機体のバランスを崩しこれを回避して見せたが、レビの予想外の行動にレビの後ろにいたケイオウがバランスを崩した。

 そこに、これ見よがしに2発のエネルギー弾が肩と膝に飛んできた。

「やってくれる!!」

 ケイオウも悪態をつくと、斬馬刀を地面に叩きつけた反動で軽く浮き上がると、ブーストでこれを回避した。

「相当嫌われるようなことしたようだな」

「いや、ただのらりくらり戦っている俺達が気に入らなかったのだろう」

「俺も入ってるのかよ」

「残念ながら」

「とんでもない女を副官にしたものだな」

「同感だが、それを引いてもあまりある程有能なんだから仕方がない」

「そうが、まあいい」















 

二人が必殺の攻撃を回避して和んでいる頃


「無茶をする」

 ソウリュウは唖然としていた。

 レビを狙った攻撃ではなく、狙いはあくまでケイオウだったことにソウリュウは驚いていたが、次の瞬間にはそれは忘れ去られた。

「打ち方やめ、金剛陣!!」

「朱槍陣!!」

 ゴールド、ソウリュウは同時に反応した。

 二人を突き動かしたのはカウンターリングのパルス波だった。

 攻撃力などは皆無の攻撃ですらないそれだったが、二人は過剰に反応した。

 なぜなら、カウンターリングに影響を受ける兵器を誰一人使っていなかったからだ。

 何か裏がある、二人は瞬時にそう考えた。

 そして、二人の指示通りに展開した両軍は次の行動に備えた。

 しかし、どこからも攻撃がこないと思った矢先だった。

「うわぁぁぁーーー!!」

 叫びをあげたのはシャドーだった。

 そして、叫ばせたのはレオンのブーストサァイフだった。

「レオン、貴様一体何を」

 ヴァリム軍はレオンをアルサレア軍と挟むように展開した。

 しかし、ソウリュウの問いかけにレオンは応えなかった。



 無作為に飛んできたカウンターリングは、レオンの中にあった後催眠の発動キーだった。

 レオンの目には、パルス波は手錠に見えた。

 そして、レオンはMM計画の兵器に立ち戻った。

 音もなく、いやむしろ音なくだった。

 いま、レオンの中には暴走した破壊衝動と、闘争本能が駆けめぐっていた。

 そしてレオンは、恐ろしい程に冷静であった。

 より多く破壊したければ冷静になれ、心の奥底で誰かがそう言っているのが聞こえた。


 〜全て破壊する!!破壊する!!破壊する!!〜


 感情の全くない機械の音声がレオンのPFから響き渡った。

 両軍に戦慄が走った。

 感情のこもっていない殺意に身の毛がよだったのだ。

「ヒルツさん、全機を率いて撤退してください。しんがりは私が引き受けます」

 ゴールドがそう言った途端に、レオンは恐ろしい程的確に両肩のMLRSをまき散らすとゴールドの後ろに出現し、ブーストサァイフを振り上げた。


 〜破壊する、破壊する・・・・・〜


 相変わらずシルキスはそう言っていた。

「ソウリュウ様、自己防衛ぐらいは大目に見てくださいね」

 そう言うと、ゴールドはゴールド専用特殊棒型武装:ビーナスヴェルティゴの電圧式形状多記憶型リボンで、瞬間移動してきたレオンのPFの足を巻き取り、レオンのPFを放り投げた。

 しかし、レオンは投げられながらも的確にゴールドに向かってレーザーマシンガンを撃ちこんだ。

 それと同時に、両肩のMLRSが的確にソウリュウ達に襲いかかった。

 ソウリュウ迷わずショットガンでミサイルを撃ち落とすと、そのまま空中を自由落下しているレオンに襲いかかった。

 ショウはショットガンでレオンの意志とは別の意志で操られている様な正確さをみせるMLRSを迎撃し続けた。

 シャドウもサブマシンガンでレオンの軌道を制限して見せた。

 しかし、レオンは全ての連携を冷静に分析すると、何の迷いもなく反撃に出た。

「ソウリュウ大尉!!そいつはナイトメアだ!!」

 シャドウが叫んだ。

「ナイトメア?なんだそれは」

「この頃噂になってる、小隊が忽然といきなり全滅するって奴だ。破壊、破壊と機械音声が回収されたブラックボックスに残ってたって話を、今頃思いだした」

 一進一退の攻防の中でも、これ程の余裕を見せていたソウリュウ達を見たゴールドは言った。

「こちらが大変な事になっているのを知りながら、ヤンチャを始めた二人が怪我をしないように見張ってきますね」

「はい?」

 一体何を、ソウリュウがそう思った矢先ゴールドの機体が瞬間移動した。

 その行方を確認したソウリュウは言った。

「あ、あなどれん」














 

その頃ケイオウ特尉とレビ中佐


「あ〜うざって〜、いい加減我慢するのに飽きてきたぜ!!」

「同感だ、底も見えたしな」

 二人は必死に自分を押さえていた。

 目の前にいる極上の相手と死ぬ程戦いたいという欲求を、死ぬ程押さえていた。

 しかし、いい加減限界に達したレビとケイオウはそう言うと、回りを無視してタイマンバトルに突入し始めた。

 そこにゴールドが瞬間移動で現れた。

「っち!!お目付役に見つかったか」

 レビは舌打ちした。

 手応えのないザコの代わりに、比べるのももったいない程の相手と殺りあえると思っていただけに、露骨にいやな顔をした。

 だが、ゴールドの返答は予想に反していた。

「ああ、お構いなく続けてくださって結構ですわ。中途半端に高ぶった気を今夜のベッドで晴らされては、私の体が持ちませんから。でも、状況が動いておりますから都合が悪くなったら、止めさせて頂きますね」

 ゴールドは悪びれもせずに、さらりと言ってのけた。

「英雄色を好む・・・か、ふっ!!
 もう少し一本気な男と思っていたのだが感心したぞケイオウ特尉!!」

 レビはおもしろがって笑った。

「俺は惚れた女以外に手はださん!!ミラムーンを手玉に取る女の口車に簡単に乗せられるな!!」

 ケイオウは抗議したが、満員電車の痴漢の戯言並みの説得力もなかった。

 そして死合を始めた二人に代わり現れたゴールドが、ヴィクティム准将の作らせたニュー・マン・マシーン部隊の標的になった。

 しかし、ゴールドの戦闘能力は、実のところケイオウよりもずっと上だった。

 もちろん、ある程度条件付のものであったが、それでもニュー・マン・マシーン部隊などには間違っても後れを取るものではなかった。

 そして、ゴールドは二人の死合を傍観しながら、5分もたたずに二人が倒し損ねた13機を撃破して見せた。











 

その頃ソウリュウ達


「くそ!!えげつないマネをーーー!!」

 ソウリュウは半ギレ状態だった。

 なぜなら、レオンはショウの乗ったオニを目の敵に攻撃してきたのだった。

 ショウの乗った機体には、無理言ってついてきたカノンが同乗していた。

 そのせいでショウは目立つ程に動きが悪かった。

 シャドーがフォローに入ってはいたが、レオンの戦闘力は完全状態のショウとシャドーの戦闘力を足してなおあまりあるものがあった。

 ちなみにソウリュウとはいい勝負だった。

 そして、今はソウリュウが足を引っ張っている二人のフォローにはいるという泥沼に入っていた。

「カノン大丈夫か!!」

「・・・・」

 既にカノンは対Gに耐えきれず落ちていた。


 〜破壊する、破壊する、破壊する〜


 相変わらず不気味にそう言い続けるシルキスにシャドーが切れた。

「いい加減にしやがれーーーーー」

 シャドウはカタナで斬りかかったが、レオンはレーザーマシンガンを見事にヤシャのAAFミサイルに連続ヒットさせると、AAFミサイルを破壊した。

 ミサイル自体は既に弾切れになっていたので大きな爆発は起きなかったが、それでもヤシャの左腕は関節諸共吹き飛んだ。

 そして、その隙を見逃すレオンではなかった。

「くっそーーーー!!」

 シャドウはブーストサァイフで斬り裂かれる寸前に脱出した。

 しかし、レオンはそれを見過ごさずコクピットコアにレーザーマシンガンを叩き込み、同時にMLRSをショウに打ち込んだ。

「くそ、間に合えーーーー!!」

 ソウリュウはショットガンを投げつけると、シャドーのコクピットコアを掴んでレーザーマシンガンの攻撃からシャドーを守った。


 一方ショットガンを投げつけられたレオンは瞬間移動でそれをかわすと、少しでも距離を取ろうとしていたショウの真後ろに転移した。


 〜破壊する、破壊する、破壊する〜


「ヤバイ!!」

 身の毛のよだつシルキスの声にショウは戦慄と共に死を覚悟した。

 レオンがブーストサァイフを振り下ろした瞬間、レオンが後方にはじき飛ばされた。

「そんなに破壊されるのが好きなら、俺が破壊してやるよ」

 ノーマルサックでレオンをはじき飛ばしたのは、瞬間移動能力のあるヒルツのカスタムPFだった。

「なんで、あんたがここに」

「ヒーローに憧れててさ、追いかけてばかりいたんだ。気づいたら少佐になってたけど、イマイチ違うんだよ、何がどうとは言えないけど。だから、少しだけ背伸びしてみようかと思ってね」

 ショウの問いかけにヒルツは苦笑で応えた。

 その瞬間またレオンの機体が瞬間移動した。

「みんな集めれ、だれが狙われてもフォローできるように!!」

 ソウリュウの言葉に従って3機のPFが集まったが、レオンは一向に現れなかった。


「逃げたのか?」

「まさか、俺なら・・・まずいタケル達が!!」

「しまった戦車部隊が!!」

「「え!!」」

 ヒルツは残してきたアルサレアPF部隊を思い出した。

 ソウリュウは戦車50車両を思い出した。

 そしてソウリュウは悩んだ。

 どうやって戦車部隊を助けるか?

 しかし、ソウリュウにはその手段がなかった。

 ソウリュウだけならレオンと互角に渡り合える。

 しかし、一人だけでは戦車50車両を守るのは不可能だった。

 その上、ショウ一人をこの場に残すと間違いなく狙われることになるだろう。

 例えレビを援軍に呼び戻すとしても、レビが来る頃には戦車部隊は全滅しているだろう。

 そもそも、今から駆けつけたところで間に合うかすら疑問だった。

 ソウリュウが悩んでいたのは、5秒にも満たない時間だった。



 しかし、この短い時間に決断したものがいた。

「おい、こっちでいいんだな!!」

「え!!そっちには戦車部隊がいるだけ・・・」

 ヒルツの問いかけにソウリュウは呆然とした。

「俺の憧れた男なら迷わず俺と同じ事をすると思う、俺が特尉の後を追いかけて唯一学んだことだ。戦車部隊にアルサレアの援軍が向かったと連絡を入れてくれ、狙い打ちにされてはかなわんからな」

 ヒルツはそう言うと瞬間移動した。

「了解した、借りを作ってしまったな」














 

その頃ケイオウ達


「随分と偉いことになってるようだが、行かなくて良かったのか?」

 ゴールドに止められるまでもなく、異変に気づいたケイオウとレビは戦闘をやめ3人で高みの見物をしていた。

「あいつは頭が固い上に仲間思いだからな、悪くはないが、意地を押し通すのならもう少し無茶が出来るようになってもらわねば」

「ふふ、でも少し意地悪ですね。苦戦するのを知っていて援護射撃すらしないのですから」

「それより、お前さん方はいいのかいこんなところで油売っていて?」

「な〜に、既に作戦は完了間近だよ」

「そうなんです、元々私たちはここに残る作戦でしたから。もっともヒルツさんの行動はイレギュラーですが、まあ許容範囲内ですね」

「くえんやつだなお前さん方は、でどっちだと思う?」

「「アルサレア軍側!!」」

「賭にもならねえな」

 3人にはわかっていた。

 レオンがどっちに行ったのか。

 別にレーダーに映っていたわけではない。

 ただ、ヴァリム方面(街がある方向)にのみレオンはレーザーマシンガンをたたの一度も発射してはいなかった。

 それが3人がレオンの向かった方向を決めた一番の理由だった。












 

 そして、タケル率いるアルサレア軍

「どこ行ったと思う?」

「ヴァリム軍の彼女のところだろうね」

「やっぱね」

「しかし、もう少しあの人も女っけがあるといいのにな」

「なんでだよそう思うんだジェーク?」

「ああ、そうなれば俺達だってヒルツ少尉から女の子紹介してもらえるかも知れないじゃん、あの人恐ろしい程人脈広いし・・・、なあマガミ」

「しらん、俺はルカだけでいい」

「っちこれだから彼女持ちは・・・・、な、そう思うだろタケル!!」

「いや俺はもういらない」

「っけ!!モテモテだったな中尉殿は!!ハクト、心の友はお前だけだよ!!」

「俺もそこまでモテたいとは思ってないけど」

 そう四人が馬鹿話をしながらある場所に向かっている時だった。

「どうしたステイ(ジェークのPFに搭載された自作AI)?おい、少佐飛べーーー!!」

 ジェークが叫んだ途端、先頭を走っていたヒットマンの目の前からレオンのカスタムPF:ルシル(始めに殺されたMM計画の被験者の名前)が現れた。

 そして、有無を言わさずヒットマンの機体を横一文字に切断した。

「全機散開!!その後は迷わずランデブーポイントに迎え、援護は一切いらない!!フォーメーションφ(ファイ)行くぞ!!」

「「「おお!!」」」

 タケルは怒鳴ると四人はレオンを中心に楕円形を描き始めた。

 そしてランダムにφの字を書きながらレオンに襲いかかった。

 レオンは四人に囲まれても冷静にそれを避けながら、攻撃の隙をついてMLRSを叩き込んだ。

「がぁぁーー」

「っちぃぃーー」

「マガミ、ハクト!!大丈夫か?」

「タケル上だ!!」

「このヤローー!!」

 タケルの攻撃をかわしきれなかったレオンだったが、それでもレオンは見事にカウンターのブーストサァイフを叩き込み右腕をもぎ取った。


 〜破壊する、破壊する〜


「闇雲に攻め込むな、俺とステイが指示を出す。粘るぞ!!」

 ジェークには皆が違和感を覚えるレオンの動きと射撃の正確さが、同じAIを積む機体のパイロットとして理解できた。

 その上、ジェークのAIステイはレオンの射撃支援AIシルキスと違って、索敵に特化していた。

 それは瞬間移動ですらも捕える程高性能だった。

「さ〜っすが、ジェーク頼りにしてるぜ!!」

「任す!!」

「あと、3分逃げ切るぞ!!」

 状況はソウリュウの時よりも遙かにいいように思えた。

 しかし、レオンは強かった。

 ブーストサァイフの直撃こそ無いものの、仲間を逃がした方向に逃げるわけにも、逃がすわけにも行かない四人はほぼ一方的に攻撃され続けた。














 

その頃、ヒルツに追いついたソウリュウ達


「どうやらアルサレア側に行ったようだな」

「すまん、全てこちらの落ち度だ」

「油断するな、まだ決着がついた訳じゃないんだ。いつこちらが戦場になるかわからないぞ」

「そうだな、気を引き締めていこう」

 二人の会話に戦車部隊の者達は、でたらめな違和感を覚えた。

 丸くなったのかソウリュウ大尉?

 理論詰めのソウリュウ大尉が、何故かアルサレア軍の人間に諭されていたから皆そう思った。

「あの、助けて頂いてありがとう御座いました。それからさっきはごめんなさい!!」

 合流途中に意識を回復したカノンはショウから話を聞いてそう言った。

「ん、ヴァリムの人達に頭下げられたり、礼を言われたり、今日は珍しい日だな。俺もヒーローになりかけてるのかな?」

 ヒルツは真顔で言った。

 どうやら冗談などではなく、マジでそう思っているようだった。

「いい人には違いないのだけど、面白い人」

 カノンは思わず笑ってしまった。











 

タケル達がレオンの猛攻に耐え始めて5分後


「も〜、どうして撤退組が豪快にバトルしてるんですか〜〜〜」

 タケル達を回収しに来たルリエルは輸送機の中で半ギレだった。

「はぁ〜、こうなったら・・・・全ての責任はヒルツに押しつけましょう!!必助技ルリエルサイドアタッーーーーーク!!!!

 ルリエルは大型輸送機(PF30機輸送可)で急速旋回するとバトルしているレオンに向かってパワーダイブを敢行した。

「だ〜〜〜、無茶すんなーーーー!!!!」

「馬鹿言ってないで乗り込むぞ!!」

「俺がしんがりになる、早く行け!!」

「ジェークは俺がフォローする」

 4人はどうやったら地面に激突しないのか不思議で堪らない機動を見せるルリエルの輸送機に張り付いた。

 レオンは輸送機の体当たりを瞬間移動でからくも避けたが、既にレーザーマシンガンもMLRSも弾切れになっていたために、輸送機を撃墜することが出来なくなっていた。

 そして、レオンは輸送機にまんまと逃げられた。


 〜・・・・・、・・・・・・・〜


 完全にターゲットを失ったレオンとシルキスは沈黙した。













 

10分後


「奇跡でも起きたというのか?」

 レオンはいつもMM化している間の記憶を覚えている。

 しかし、過去に自分以外のものが生き残った事実は一度しかなかった。

 そして、今までは例外なく目の前に地獄が広がっていた。

 結局レオンは2機のPFを破壊しただけで、人も1人しか殺さなかった。

「一体、どうしたというんだシルキス」

 レオンは笑いながら泣いた。


 〜出来損ない、廃棄、破壊、死を、死を、死ね、死ね〜

「うわぁぁぁーーーーーー」


 レオンの乗ったコクピットシートに電撃が走った。

 レオンは堪らずコクピットハッチを強制排除すると、外に飛び出した。

 しかし、そこは地上8メートルだった。

「俺は死ぬのか・・・」

 落下し始めたレオンはすぐに意識を失ったが、地面に激突したりはしなかった。

 空中でガクンと落下の止まった反動でレオンはかろうじて意識を取り戻すと、自分を掴んでいるものを見て言った。

「天女の羽衣?」

 正体は瞬間移動してきたゴールドのビーナスヴェルティゴのリボンだった。


 〜死ね、死ね、死ね〜

シルキスが再びそう唱え始めた時だった。


「うう、うがぁぁぁぁーーーーー!!」

 再びレオンは絶叫した。

 再びレオンは電撃に襲われたのだ。

 しかし、ゴールドがそれをしたわけでも、シルキスを搭載したルシルがそれをしたわけでもなかった。

 そう、誰も何もしていなかった。

「無粋な!!」

 ゴールドはレオンを捕えたリボンを締め上げると、レオンの意識を刈り取った。











 

さらに10分後


 レオンとゴールドの元にはケイオウ特尉、レビ中佐、ヒルツ少佐、ソウリュウ大尉が集まっていた。

 ちなみにショウ、シャドー、カノンはお留守番だった。

「一体何をしているんですか?」

 ソウリュウの目の前には、なぜかパイロットスーツの上から漆黒のワンピースを着たゴールドが、レオンを解剖していた。

 腕を少し切ったり、スカートの裏から出した薬品でなにやら調べているようだった。

「少しばかり気になるところがありましたので、調べてみているところですわ」

「で、どうだった?」

「強力な肉体強化と、かなり劇薬を使った後催眠がかけられていますね」

「なんだと、まさか・・・・」

 その言葉に思うところがあるレビは押し黙った。

 ケイオウも言葉に出しはしないものの、先ほど戦ったものの同類だとすると、アルサレアで大きな闇が渦巻いていると思わずにはいられなかった。

「治せそうか?」

「あなたは誰に、何を、聞いているんですの?当然ですわ、ただこの場では後催眠しかとけませんが」

「治せるのか!!」

「うそだろ」

 驚くレビ、ソウリュウをよそにケイオウは言った。

「とりあえず、後催眠だけでもといてやってくれ。さっきみたいに暴走されても、自害されても困るからな」

「ええ、それに聞きたいこともありますしね」

「君は何者なんだ?」

「破壊なす聖女、深緑の魔女、そして特佐・・・、そう呼ばれるに値するもの。それが私という存在」

 レビは今日始めてゴールドの悲しい表情を見た。

 もっとも、そう言ったからゴールドは悲しい顔をしたのではなかったが。

 ゴールドはワンピースの中から、猫型タヌキロボを思わせる程色々な薬を出すと、恐ろしい早さでそれを調合すると、それをカプセルに入れるとレオンに口移しで飲ませた。

 そして、ゴールドは泣きそうな顔でケイオウを見た。


 計られた、ケイオウはそう思った。


 レビ、ソウリュウは無言で後ろを向いた。

 ヒルツもそれに習った。


 そこで気を使うなよ!!


 そう思ったケイオウだったが、結局ケイオウは人差し指と中指にキスをするとゴールドに間接キスをした。

 それでも、ゴールドは嬉しそうだった。


「で、どうする?気づくまで待つか?」

 ケイオウの言葉に振り返ったソウリュウが言った。

「彼には奥さんがいるので、もしかしたら何か知っているかも知れません。一応そう思ってショウに迎えに行ってもらっています」

「期待は出来ないがしばし待つか?」

「ああ、その間に俺はアレを見てくるとしよう」

 ケイオウはそう言うとレオンのPFに乗り込んでいった。










 

30分後


 ショウはキーを連れてやって来た。

「あなた大丈夫ですか?」

 後催眠と戦っているレオンはうなされていた。

 中を彷徨うキーの手をレオンの手に握らせたレビは言った。

「酷な話ですが奥さん、彼は何者なんですかね。俺達は別にあなた達をどうこうしようってつもりはサラサラ無いが、旦那さんみたいな被害者を出さないようにしたいとは思っているんだ、だから話してくれないかい?」

 キーは明らかに動揺していた。

「私なら彼を人間に戻して差し上げられますわ」

「いい加減なこと言わないで!!私がいくら頑張っても後催眠すら解除できなかったのに」

「では、あと数分待ってくださいね。精神崩壊しないでいた彼の精神力ならじきに意識を取り戻すでしょうから」

「何を根拠にそんな、そんな無責任なこと」

 キーが怒りを露わにした時だった。

 レオンがキーの手を強く握った。

「あなた、大丈夫!!」

 鼻の頭でキーの涙を受けたレオンは何も言わずに、キーの頭を抱くとキスをした。

 その途端、活動限界になって停止していたレオンのPF:ルシルが再起動した。


 〜不要、廃棄、破壊、死ね、死ね、死ね〜


「どうやら、こいつの意識と連動してるみたいだな」

 そう言うとヒルツは問答無用でノーマルサックを叩き込んだ。

 しかし、無人のはずのレオンのPFはすり足でそれを避けて見せた。

「な、まさか」

 ヒルツは間髪入れずに瞬間移動でその場を離れた。

「キーさがっていなさい、カタを付けます。誰かPFを貸してください」


 〜死ね、死ね、死ね〜


 後催眠が解けてシルキスの声から何も影響を受けなくなったレオンはそう言った。

 そう、MM計画の完成系のレオンであったが、完全に人の姿をした機械にした訳ではなかった。

 もしそれを望むのであればAIでも事足りるのだ、必要とされたのは柔軟な反応だった。

 だから研究者は、レオン達に強烈な破壊衝動と闘争本能、そしてそれを効率よく行う為の冷静さを植え付けた。

 そして、後催眠により後から命令を付け加えられるようにしたのである。

 それにより全てを破壊するために冷静になるレオン達を、ヴァリム軍のみを破壊するために冷静になるレオン達にすることが出来るのだった。

 しかし、シルキスは完成されなかったために、ただ破壊とだけレオンに命令を下すだけだった。

 もっとも、破壊命令以前に、暴走を恐れた研究者たちは自滅命令をインプットしていたために今回のような事態になったのだ。


「俺のを貸してやる、お前の機体とそんなにスペックは変わらないはずだ」

 ヒルツはそう言ってレオンに機体を貸し与えた。








 

「いまなら、よくわかる!!俺を縛り付けていた鎖が、消え去れナイトメアーーー!!!」

 ブーストサァイフを振り上げたシルキスだったが、所詮サポートAI、PFの全てを動かすOSを自在に動かせる程には進化できなかったのか、その動きは悲しい程に緩慢だった。

 そして、レオンはノーマルサックでコクピット部分を叩きつぶした。

 派手に吹き飛んだルシルは爆発炎上した。


「うをぉぉぉぉ−−−−−!!!!!」

 レオンはそれを確認すると雄叫びを上げた。

 そしてレオンは降りてくると言った。

「ありがとう、あれだけ攻撃した俺を助けてくれて」

「気にするな、こっちもやっかい払いが出来てせいせいしているんだからな。とはいえ、感謝を感じているのなら、応えてくれないか?」

 ケイオウの言葉にキーが反応した。

「私は、アルサレアでマン・マシーン計画という研究をしていました。そこでは人を兵器に造り替える実験をしていました。そして、夫はその中で唯一生き残った被験者です」

 キーは泣きながら応えた。

「アルサレアがそんなことをしているとはな」

 レビは知っていた。

 ヴァリムもMM計画をやっていることを、それでも彼は手をこまねいていることしかできなかった。

「こんな馬鹿な事をやってるのはヴィクティム准将だろ?」

 ケイオウの問いかけにキーはうなずいた。

「そろそろ、潮時かも知れないな」

「そうですね、少しもったいない気もしますが、彼は命をもてあそびすぎましたね」

 表情には出さないが、ケイオウもゴールドもその瞳に殺意をみなぎらせていた。

 それを見たレビは他人事なりに、二人の心配をした。

「あなた達はこれからどうするんですか?」

 聞いたのはソウリュウだった。

 今回のことを報告するつもりはなかったが、それでも彼らにはヴァリムにもアルサレアにも、もう居場所は無くなっていることは明確だった。

「肉体強化を解除するのであれば、ミラムーンにある私の秘密の研究所にいらしてくださいね。それから、あなた達が望むのであれば私が知人達に頼んで保護してもらっても構いませんよ」

「ホントに何者なんだ?」

 レビはなにやら危険なものを見るような目でゴールドを見た。

「そんな目で見られても、私の心は彼のものですから諦めてくださいね!!そうじゃないとセガワ大佐に告げ口しちゃいますよ」

 ゴールドはイタズラっぽい笑顔を浮かべて言った。

「な!!なんでシオリのことまで!!」

 レビは端から見ても大げさに動揺していた。

「乙女のたしなみです、この程度は」

「あまり突っかかるな、手玉に取られていいようにあしらわれるのがオチだぞ」

「あ、ああ、そのようだな」

 確かにそのようだ。

 レビはヒシヒシと得体の知れない何かにのしかかられるような感じがしていた。


「あの、いいですか?」

 馬鹿話をしていた間に話をまとめたレオン夫妻が話しかけてきた。

「あ、ああすまん。で、決まったかい?」

「ええ、大変嬉しい申し出ですが俺はこいつを守る力を失いたくないし、ハッキリ言ってアルサレアを許す気にもなれません、だから俺はヴァリムで生きていこうと思います」

 ケイオウはゴールドとレビに目配せをした。

 二人はうなずくと

「レオンさん、あなたは肉体強化の反動でこのままではいずれ肉体崩壊を起こすことになります。ですが、それは極度に肉体を損傷した場合に顕著に起こります。ここに書いてあるものを、日々の生活で接種してくだされば40代半ばぐらいまでは大した問題もなく生きていけると思います。あと、もし気が変わりましたら下に連絡をくださいね」

「本当にありがとう御座います」

「今回の戦いで俺達はケイオウ特尉率いるアルサレア軍と交戦して、シャドーのヤシャが撃破されたことにする。お前という傭兵はうちの部隊には始めからいなかった。ヴァリムに残るのならここを頼ってみるといい、どうせPFを失った以上もう戦えないだろうからな」

「すいません、何から何まで。俺達には感謝することしかできません、ありがとう御座います」

「気にするな、一般人を守るのは軍人の勤めだ」



「それでこれからどうしますか?」

 ソウリュウがそう言うと、待っていましたとばかりにケイオウは言った。

「そうそう、言うつもりは無かったんだがこうなってしまったから仕方ない。これから俺はジオハイド基地で自爆する」


「「「自爆!!!!」」」


「一体なぜ?」

「機体が大破したところで帰還の理由にはなりませんが、機体諸共守るべき基地を失ったのなら、命令いかんに関わらず撤退しないわけにはいきませんからね。私たちは元々ここを守りに来たつもりはありませんし」

 ゴールドは笑顔で言ってのけた。

「疑問なんだが、自爆する以上遠隔操作は」

「当然出来ない、する必要すらない
 俺はヘルファイヤー如きで死にはしない
 なぜなら、俺には生き返ってでも会いたい人がいるからな
 彼女のためになら、俺は何度でも生き返ってやるさ」

「無礼な奴だな貴様は」

 ゴールドを見ながらレビはそう言った。

「お気になさらず、全ては私の至らなさの賜物ですから。それに私も彼女のこと好きですから、嫉妬なんてみっともないマネ出来ませんわ」

 ゴールドは涼しい顔でレビに微笑んだ。

「不思議な関係ですね」

「じゃあ、そういうことで後よろしく。それとレオン殿、もう犠牲者は出さないように首謀者、並びに研究所は俺が完膚無きまでにぶっ潰すから、言えた義理ではないが安心してくれ」

 ケイオウはそう言うと基地に向かって歩いていった。

「ヒルツさん、ルリエルに連絡よろしくお願いしますね。それではレビ中佐またいずれ、出来れば戦場以外の場所でお会いしたいですね」

 ゴールドはそう言うとケイオウの後を追った。

 ヒルツはもちろんケイオウの後を追わず、明後日の方に転移していった。

「彼女は自爆に巻き込まれるつもりなのだろうか?」

「もしかしたら、耐えられるかも知れませんね。あれだけの重装甲PFなら」

「いや、無理だと思いますが?」

 議論を始めたレビ達にレオンがいった。

「あの〜、撤退しませんか?ここにいて巻き添えを食うのは勘弁して欲しいですから」

「同感だな、お前らは撤退しろ。俺はギリギリの場所で特尉殿の勇士を拝んでから撤退する」

「俺もお供します、ショウ中尉はレオン夫妻を連れて撤退したまえこれは命令だ」

「・・・・・、了解致しました」










 

5分後


「さて、景気よくいきますか。悪夢さえもなぎ払えーーーーー!!!!!!

 その一言と同時にケイオウの乗るヘルフェニックスは、HMとは明らかに違う朱色の閃光を関節からまき散らすと、白閃と共に消し飛んだ。

 そして、閃光は全てをなぎ払ったかのように思われたが、そこにはゴールドの乗った機体が鎮座していた。



「馬鹿な、あの衝撃に耐えるとは」

 唖然としているソウリュウにレビは言った。

「いや、一瞬レーダーから反応が消えた。紙一重のタイミングで瞬間移動でかわしたのだろう」

「人間ではないですね、あの二人は」

 ソウリュウはPFのカメラアイを最大望遠にして、上方に射出されたコクピットコアから出てきて、ゴールドのPFの手の平の上で手を振るケイオウを見ていった。

 それを見たレビは祝砲とばかりにショットガンを上に向けて弾の続く限り撃ちまくった。

 ゴールドは器用にPFにお辞儀をさせると瞬間移動でその場を去った。

「お前もすぐに、あのぐらいのレベルになってもらわねば困る。俺の副官として笑われないようにな」

 誰もいない場所を見ながらレビは言った。

「ええ、すぐになって見せますよ」
















 

エピローグ

 レオン夫妻は、ヴァリム領でもミラムーンに近い田舎に住んでいた。

 そこで農園を営んでいた。

 とはいえ、そこは必ずしも平和な場所ではなかった。

 戦争に巻き込まれているのではない。

 戦場から逃げ出したPF乗り達で構成された盗賊団が、思い出したように襲ってくる土地だった。

 レオンはそんなときだけカスタムPFに乗り込み、愛する家族の為に戦うのだった。

 レオンはささやかな英雄になっていた。

 そして、アルサレア戦役終戦の日にキーは双子の男女を出産した。

 子供の名前はシルキスルシルだった。

















 



後書き

 とりあえず、一言だけ言わせて頂きます。
 この話の主人公は、誰がなんと言おうとレオン=ウィッシュです!!!!!
 かなり疑わしいがご勘弁を!!
 また、主人公がケイオウ特尉ではないことをアピールしてワザと語りらしい語りを入れませんでした!!(ここがポイント!!)

 え〜なぜ踊る風の作品なのにケイオウ特尉が主人公でないのかというと、この作品はナイトメア殿からのご依頼作品だからです。
 ちなみに、このようなネタを頂きました。


「大まかなことを言うとアルサレアを裏切った男の話です。時代背景はJ2(まだどんなのかが分からないので仮定です) 。
 その男はマンマシーン計画(ヴァリム側ではなくアルサレア側)によって作られとある事件によりヴァリム側について ・・・というはなしです。
 なぜアルサレア側かというとヴァリムではおもしろくないのとアルサレア=正義と思っているユーザーに対して「アルサレア もこれ位あくどいことをしている」と言いたいからです。後あれだけ研究所があるのだからマンマシーン計画位誰かやっているだろうと思ったからです。
 以上拙い文ですが興味を持ったら書いてみてください。」


 とのことでした。
 チャットで「なぜこれを俺に?」当然の疑問をぶつけたところ、「踊る風さんが一番これを上手く書けそうだから」との意見につい踊らされて書いてみました。
 しかし、やはり頂き物キャラは難しい、その上設定がほぼまるで無かったので、何度もメールのやり取りで作るハメに(汗)

 

 まあ、結局はかなり趣味に走ったというか、お得意の暴走オリキャラオンリー小説になってしまいました。(笑)
 その上ワードで36ページと、相変わらず短編あるまじきボリュームだし(汗)

 ちなみにお気づきかも知れませんが、この作品にはかなり頂き物のキャラが出てきます。
 それも、猛烈に懐かしいキャラまで出てきますので、俺の旧友達は思わずニヤリとなること請け合いです(爆笑)

 それでは、最後まで読んでくださった方ありがとう御座いました!!
 感想など頂けると、非常に嬉しいです!!
 では、次があったらまたお会いしましょう!!



 キャラクター設定集へ


 


 管理人より

 踊る風さんからご投稿頂きました!!

 本当に懐かしいキャラ達が……(笑)

 策士ゴールドもGoodです(爆)

 


[感想掲示板へ] [目次へ] [投稿部屋へ] [踊る風さんの部屋へ]