お読みになる前に
 今回は今までと違って、結構「殺す」などの暴力セリフや作者の妄想兵器がでますので、気をつけてください









 

機甲兵団Jフェニックス裏史実













 

 終息の灯火

 8話サイド1「フェンナの演説1」









 

 ヴォナンシティでアルサレア特務隊とヴァリム・国際軍の連合部隊が激戦を繰り広げている頃、陽動となったサーリットン戦線でも戦いが繰り広げられていた。
 陽動された結果とは言えサーリットン戦線の重要さは今更問うまでも無い事である。
 アルサレアは此処を抜かれればアルサレア要塞への進撃路が確保される事になる。
 対するヴァリムも失態続きの戦況の中で激戦区である此処を奪われるような事が起きれば政権交代すら起きかねない。
 罠にはめたアルサレアは兎も角、騙されたヴァリムは「アルサレアへの最終決戦への布石」と自らを誤魔化してまで此処を制圧しようとしていた位だ。
 と言う訳で、お互いに引けない両者の戦いは苛烈だった。










 

 カンドランド防衛ライン・北拠点



 

 アルサレアとミラムーンの同盟軍が構築するカンドランド防衛ラインの北戦区にある最前線基地はヴァリムの猛攻にさらされていた。

「あら・・・メールが届いたわね?」

 自分に送られてきたメールを一瞥したトワネは通信ラインを常に固定してあるPFに送られてきたメールを転送しながら話し掛けた。

「貴方。整備部のタケダさんから聞きたい事があるそうですよ」

「タケダ君からか・・・成る程な」

 妻であるトワネから受取ったメールに付随してきた文章と図の中身はエイジの予想通りだった
 そして一瞬だけ黙考して語りだす。

「そうだな・・・アブソーバーにはフジモリ社の3番を使わせるとして・・・それからラジエーターには強化アルミじゃなくてネオ・ジュラルミンだ。あとレーダーにはエンケラの予備をバラさせるが、どうだ?」

 トワネに問い掛けている最中にエイジの近くで大爆発が起きた。
 瞬間だけだが目を凝らして確認するとロキの頭部が近くまで飛んできたようである。その様な危険な周囲とは裏腹に聞かれたトワネは少し考え込むと直ぐに解答を出した。

「そうですね・・・私的には良いと思います。でも、レーダーをバラすんでしたらエンケラよりもミマスの方が良いんじゃないでしょうか?」

「成る程な、お前が言うのならば間違いはないだろう」

 妻の言葉だからエイジは肯定した訳ではない。二人のPFに対する知識は優秀を通り越して権威と呼んでも問題は無い、設備と人員さえ揃えば新型のPFすら設計を出来るほどの能力は持っているのだ。

「では決まりましたわね。タケダさんには私が伝えますので少しお願いします」

「ああ、任せたまえ! お前とモモネは私が守る!」

 エイジは言い切って近寄ってきたロキ・デザート3匹を愛機「鬼哭」に装備されている10mもあろう大型斬馬刀「鬼王」で一斉に薙ぎ払った。
 その間にもトワネは愛機「レイ・プリムローズ」のコクピットに付属されている端末で細かくまとめられた整備資料と前々から考えていたゼムンゼンの強化案を文章化している。

「貴方。後は10分ぐらいで終わります」

「そうか! ならば私も10分以内に此処の敵を倒して見せよう」

 気づいている方も多いですがトワネとエイジは拠点の格納庫でなく、拠点の外で戦いながら手伝っていたのだ。





 

 念の為だが二人の担当はパイロットである。
 しかし慢性的な優秀人材の不足を最大の問題とするミラムーンでは前線で戦う兵達だけ出なく整備部や補給担当の後方支援の人材すら劣悪であり、その為に僅かな優秀な人材には多数の担当を掛け持ちでさせるような現実になっていた。
 とは言うもののエイジとトワネの能力は簡単に言えば「上の上」であり、3つや4つの仕事を容易に成し遂げる実力はあるのだ。





 

 そして8分が過ぎた頃、地区で戦っていたヴァリムの部隊は後退し始めていた。
 つまり拠点の防衛に一時的にせよ成功した事になる。

「此方はそろそろ終わりそうだがどうだ、トワネ?」

「此方も今終わりましたわ」

 夫の問いかけにトワネは微笑んで答えた。
 戦闘中にやるような事ではないが、そんな悠長な事を言っていられないほどの戦況であった。
 そして、その戦況を示す音が鳴り響いた。

 ピィーーー! ピィーー!

 緊急事態を知らせるブザー音と共に司令部から通信が入ってくる。

「こちら司令部。エイジ中佐に伝令です! 現戦区より南4キロにて戦闘中の部隊が危険になりつつあります。至急に救援お願いします!」

 本日4度目の転戦指令だった。
 お互いに戦線を瓦解させられれば穴埋めを送って補修する。
 そんな消耗戦が朝から繰り広げられていた。
 大まかな戦区の情報を受取ると二人は拠点に自分以外の機体を残す指示をだして進路を南に向ける。

「行くぞ、トワネ!」

「はい! 貴方!」

 2機のPFは噴射炎を撒き散らしながら飛び去っていった。







  

 北東戦区



 先の北戦区より南4キロの戦線でアルサレア軍の防衛戦は瓦解寸前だった。



 「ヒ・・・ヒィーーーーー!!!」

「ゴキ、ゴキブゥゥーーーー!」



 アルサレア軍所属のJファーカスタムやJバビロスに乗っているパイロット達が謎の悲鳴を上げていた。
 彼等の数は13機。元々は34機ほど居たのだが今は減ってしまったのだ。
 そして彼等を其処まで追いやったヴァリムはと言うと15機ほどのロキである。
 いや、その遥か後方に彼等は居た。ダンとルキアだ。

「何で俺達がデータ収集をやらなきゃならねえんだよ!」

「仕方ないでしょ。いざと言う時のレスキューなんだから!」

 ダンの怒鳴り声にルキアも怒鳴り返す。
 彼女達は前衛で戦っているロキのデータ採集と戦線が不利になった時の予備兵力として布陣しているのだ。

「仕方ないとは何だ! 俺等が出るまえに終っちまうぞ!」

 ダンの反論は続く。早くグリュウに追いつきたい彼は戦いたいのだ。

「あんなのに負ける雑魚と戦って嬉しいの、ダンは!」

「うっ」

 ルキアの反論にダンは言葉を返せなかった。
 確かに雑魚を相手にしてもダンだったら不完全燃焼で終わるだろう。
 更にルキアは続ける。

「それとも彼等と一緒に居て耐えられるの?」

「・・・」

 口には出さなかったがダンは分かっていた。
 ―絶対に耐えられない―と。
 そして遠くで戦っているロキ部隊を心底嫌そうに眺めた。





 

 ダンの眼には暴れまくっているロキと逃げ惑うアルサレア軍が映った。
 両者の練度は一応はアルサレアの方が上そうである。
 しかし、何故アルサレア部隊が瓦解し、挙句はダンですら耐えられない相手かと言うと理由はロキのパイロットであった。



「GOOOOOO―――――Doooooooooo――MAaaaaaN!」

「オマーーーータセシマシタァ! アルサレアノミナサァアァーーーーーーーン!」

「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHHAHAHAHAHAHHA!!!!」



 そう。
 アルサレア軍に深手を負わせているのは量産化が始まったグッドマンである。
 実際問題としてアルサレアの防衛線は瓦解しているが破壊された機体は僅か3機と少なく、残りは失神しただけであった。
 つまりアルサレア部隊はグッドマンの戦闘力ではなく、彼等のインパクトによって倒れたのだ



 

 通信を繋いでみたが一瞬で解除したダンの表情は死んでいた。

「・・・誰でも良いから、あいつ等を駆逐してくれ・・・頼む、マジで」

 味方の敗北を願うのは不味い気もするが、それほど嫌なようだ。作者も書いていてそう思う。
 モニターを眺めていたルキアの表情に変化が現われた。

「・・・グッドマン1番と4番が撃破されたみたいよ」

「ホントか?!」

 ルキアの報告にダンは喜んだ顔で画像をリンクさせた。(まて)
 其処には北方面から転進してきたらしいPF2機がグッドマン部隊に攻撃をしていた。
 彼女達は気付いていないが数日前に戦ったトキノ夫妻が転戦してきたのである。
 言っている内にグッドマン2、5、12番の乗るロキがエイジの鬼哭が装備している巨大斬馬刀の横薙ぎで一閃された。

「・・・あの機体の装備している斬馬刀は威力よりもリーチ面を重視しているのかしら?」

「俺に聞かれても知るわけねえだろ!」

 ルキアの分析にダンは楽しそうに答えた。
 今度はもう一機のイリア改「プライムローズ」が腕装備型のスライスカッターを発射。
 グッドマン3、7、9番のロキの装甲が次々と切り刻まれていく。
 其処へ鬼哭の肩に装備されているガドリングが火を吹き、ボロボロの装甲を突き破ってロキを破壊していった。

「腕装備型のスライスカッターに強化型のガドリング・・・他の機体に装備されていないのを見ると個人改造かしら?」

「んな事は同だって良い! この前の奴等だ、今度こそ倒すぞ!」

 今頃気付いたダンの意見にルキアは少し考えた。

(こうなったダンを止めると後でいじけるからな〜でも、前回の雪辱は晴らすべきよね)

 そして結論を出す。

「・・・そうね。これ以上の損失は面倒になるわ。私達が直接行って情報を集めるわよ」

「行くぜェェェ!」

 2機は疾走していった。









 

 ―あら? 敵が後退して行きますわ、貴方―

 防衛線が瓦解寸前の所で間に合ったトキノ夫妻の攻撃にさらされたグッドマン部隊が後退し始めた事をトワネには確認できた。

 ―らしいな。第2波に耐えられそうか?―

 エイジは反転して後退し始めたロキに向けて改良型ガドリング「火縄銃」を撃ちこむ。
 薄い背面装甲は火縄銃の強装弾に簡単に突き破られてジェネレーターに到達、爆砕して火の玉に変った。

 ―ええ、問題はないです。ロキのパイロットの操縦技術自体は大したことは無かったですし―

 ―ああ。インパクトさえ防げば十分に撃破可能な相手だったな―

 エイジの言う通りグッドマンの実力は大したことは無かった。
 言い方を変えれば謎の奇声と笑いを誘う顔を無視できれば一般兵でも対抗が出来る。

 ―そろそろ面倒ですし、顔も見たいですから通信を元に戻しませんか?―

 と言う訳でトワネは通信をONに戻し、モニターとスピーカーの配線を繋げ直した。
 つまりトワネ夫妻はグッドマンの精神攻撃(?)を防ぐ為に通信を使わないだけでなく、外部情報をメールとレーダーと計器のみで読み取るという戦いをしていたのだ。

「ふぅ〜〜・・・どうやら本命がきたようだぞ」

 モニターを復旧してトワネの顔を見て一息ついたエイジの目にレーダーに新しく映った2体の機影が映った。
 その装備と機体を確認した瞬間、誰だか理解できた。
 言われたトワネも戦闘レベルまで一気に意識を戻した。

「前回の彼等ですね」

「ああ。少しは腕を上げたかも知れんな」

 そう言いながら二人とも剣を構えた。













 

 南戦区の陣地の一つ



 一方で南戦区でも戦いは激しさを増していた。
 荒れ狂う砲弾の嵐や光剣と鉄刀の交差。
 その渦中にグリュウは部隊を率いて戦っている。

「2番隊、3番隊は左翼から回りこめ! 1番隊は俺に続け!」

「「「はッ!」

 グリュウに各部隊の隊長から返答がきた。
 そして2番隊と3番隊が離れ始めるとグリュウは自らが駆るキシン改のブースターを全開にして砲撃の雨の中を疾走していく。
 そして追随していくヤシャ量産型×3。

「隊長! 要請しておいた支援が受領されました!」

 1番隊の部下が報告してきた。
 此れだけの大規模な戦闘でグリュウと共に戦えると言うのが彼には嬉しいらしい。

「そうか・・・そろそろ敵を目視できる頃だ。気を抜くな!」

 グリュウの言葉通りアルサレア軍の攻撃が一番隊とグリュウ達を襲った。
 バスターランチャーの緑の閃光にナインやMLRSの誘導噴進弾などの重砲である。

「俺達を舐めるんじゃネェ!」

「隊長だけに無茶させるかよ!」



 

 エースクラスのグリュウは兎も角、並のパイロットならば混乱して捕まるような砲撃であったがヤシャ量産型のパイロットは耐えた。
 彼等を其処まで奮い立たせたのはグリュウの存在である。
 グレンリーダーやグレン将軍の様に命を預けられるカリスマがあるのだ。

 

「隊長。敵拠点の戦力はJファー量産型が16機にJファーCが3機。それとグラップラーが4体でカスタム機「Jナイト」が3体です。後方には砲兵隊が居るのでしょうが数・機種は未だに不明です」

 部下の報告を聞いたグリュウだがやる事は決まっていた。
 そして後方の砲兵隊からの砲撃が止み、陣地部隊の直接攻撃が始まった。
 JナイトとJファー量産型×12が前進する最中に残りの機体が援護射撃を撃ちまくる。
 しかしグリュウ達には関係が無かった。

「このまま突破する! 攻撃開始だ!」

 グリュウは叫ぶと同時に正面のJナイトに狙いをつけて肉薄する。
 Jナイト達が気づいて斬馬刀で斬ろうとしたが、叶わずにキシン改に装備されたシラギクの斬撃で地に伏せた。
 その一方で置いていかれた1番隊であるが彼等も必死に突破しようとしている。

「どけぇ! 雑魚がぁ!」

「隊長に遅れるなぁ!」

「フオォォォー―――――!!」

 1番隊のヤシャ量産型のパイロットは雄叫びを上げながらJファー量産型の真っ只中に突撃しカタナを振り回して殴りこんでいった。
 こうしてグリュウ達は見事にラインを突破した、狙うは砲撃部隊である。
 それを阻止しようとアルサレア部隊は反転して追撃しようとするが回り込みをかけていた2・3番隊のヤシャ量産型とカルラ・シンザンによって押えられてしまう。
 そして陣地を突破したグリュウ達の前にアルサレア第13と第24砲撃中隊のJランチャーやJキャノン、Jブラスターなどが待ち構えていた。彼等も戦うのを辞さない覚悟である。

「全軍抜刀! G弾の支援が来るぞ!」

 グリュウの抜刀合図と共に一番隊は重火器を捨ててカタナなど白兵武器を構えた。
 程なくして後方から砲弾が地面に着弾し大量のガスを撒き散らす。
 不幸はアルサレア部隊はガスの正体に気づかなかった事だった。

 

「こちら13中隊より24中隊に伝聞。自分達が先に砲撃を開始。以後、交互に掃射戦を提案する」

「こちら24隊。了承した」

 両中隊は簡易な相談をすると砲撃態勢をとる、そしてJブラスターやJキャノンのキャノンやJランチャーのバズーカが火を吹く。


 ズガガァァ―――ん!


 それぞれの火器から放たれた瞬間に砲弾はガスに引火して自爆。当然の事ながら発射したPFは吹き飛ばされた。



 G弾とはミラムーンが開発した気化爆薬を砲弾に詰めた物の事である。
 此れが地面に着弾すると気化爆薬を戦域に煙幕のように広がり、誘爆によって射撃兵器を使用不能にする特殊兵器であった。

「今更気づいても遅い」

 僅かな時間であったが誘爆による混乱の間にグリュウ達は砲撃隊に接近。
 瞬く間にJブラスターを撃破する。
 続いてヤシャ量産型が次々とJキャノンやJランチャーを潰していく。
 遠距離支援を目的とした部隊は接近されると脆い。
 比較的、遠近のバランスの取れた武装を持つアルサレアPFでも相手が悪かった。
 そして支援砲撃を失った拠点も数はアルサレアの方が上だったがグリュウに鍛えられたサムライ達の猛攻は激しかった。
 この拠点での戦闘はグリュウ達の勝利だった。









 

「生き残ったのは此れだけか・・・」

 拠点を奪取して勝利を得たグリュウだったが自分の周りに集結した部下の数が減っていた事に対して悲しそうに呟いた。

「1番隊はヤシャ1と2が小破しましたが戦闘は可能です。ですが2番隊のカルラ1と3が中破、3番隊隊長のシンザンが大破で3機とも後方行きです」

 部下が部隊の被害状況を述べた。その声から多大な疲労を読みとれる。

(連戦続きで皆の疲労も限界に近いな・・・一度後退すべきか?)

 グリュウは一度だけ後退して戦力の回復を考えた。
 彼等はこの戦闘までに何度も北や南の転戦を繰り返し連戦続きだった。
 相次ぐ連戦によって各自の疲労や機体の損傷も激しくなっている。
 朝の戦闘開始時には1隊4機編成の5番隊ほど戦力を持っていたのだが信頼できる部下のダンとルキアは別の戦線で戦っていていない。更に部下として赴任してきたユイとマイも他の戦線に援軍として送られ結果として彼女達5番隊が抜けた。その後の戦闘で各部隊に破損機が出てしまい、対応策として4番隊を解体して補充した。
 補給の為の後退を指示しようとした時、司令部からの直接通信が入ってきた。
 モニターには初老の将軍が映る。

「グリュウ大尉。スマンが中央戦区に移動してくれぬか」

 サーリットン戦線の最高司令直々の通信だった。
 断りたいのが現状だが相手が相手だけに断り難い相手である。

「司令殿・・・我が隊の残り弾薬や機体稼動時間上の問題で一度後退を具申したいのですが」

 それでも言わずに入られない。言わなければ大切な部下を更に失う羽目になる。

「分かっておる・・・貴隊に更なる負担をかける事になるのは承知だ。だが中央戦区にアルサレアとミラムーンの戦力が集結し始めているのだ。あそこを抜かれたら戦線が瓦解する! 無理を承知で頼みたいのだ」

 司令の言葉は本音だった。



 軍内部は穏健派と強硬派と言うヴァリム内の争いの為に周りを不用意に信じられない伏魔殿と化している。その中でヴァリムの為に戦っていると言う信念の為に両派閥関係なく信じる事の出来るグリュウに頼りすぎていた事に司令は負い目を感じていたのだ。



「ならば私が先行して遊撃機として動きます。その間に隊の補給を頼みたいのですが」

「すまない・・・頼む」

 司令はグリュウに何時も応えて貰っている分、自分も応えるべきと感じていた。

「隊長! 俺は行けます」

 グリュウの進言に部下達は不平を叫ぶ。
 しかし、グリュウの決意は凄まじかった。

「ならん! お前らには別の仕事がある」

 そう言いながら砂漠の南にそびえる山脈をグリュウは眺めた。

「中央戦区でのアルサレア優勢は分かっているな?」

「カンドランドに装備されている長距離曲射砲の支援砲撃のせいですね」

 中央戦区でのヴァリム劣勢の理由はカンドランドに急遽装備された曲射砲による物が大きかった。

 アルサレア第6研究所で製作された3連装45口径46cm曲射砲の威力は一撃でヴァリムの作り上げた陣地を破砕し、一瞬にして中隊を消し去る威力を持っている。

 それが2基だけとは言えカンドランドに設置されて猛威を振るっていたのだ。

「その観測基地が南の山脈に立てられている。お前らには破壊を頼みたい」

「分かりました! 俺達に任せといてください隊長!」

 簡単に引き受けた。
 其処に除外された扱いだった司令が入り込んでくる。
 司令の顔には何かを秘めた物があった。

「いや其処には別の人物を向かわせている。君達は補給後に大尉に合流してくれ」

「だそうだ・・待っているぞ!」

 司令から何かを感じたグリュウは司令の指令に付随した。
 グリュウの真剣な顔に押されたのか部下は同意する。

「すぐに戻ってきます! それまで無事で居てください隊長!」

 そう言いながら残存戦力は後退して行った。





 

 残ったグリュウは指令に問いただす。

「南の山に何かあったのですかな?」

 その問いを予想していた司令も答えた。

「ああ・・・観測基地を落とすために多数の山岳部隊を派遣したのだが全滅した」

「なんですと?!」

 グリュウは驚いた。
 火力戦が大きく左右する山岳での戦闘でヴァリム部隊を圧倒する兵力が其処にいた事である。普通ならば所在を隠す為に大部隊は置かない筈なのであるからだ。

「そうだ。何が出てくるか分からない以上は送る兵力も選ばねばならない」

「感謝します」



 ウソである。

 司令の本音は無理をかけ過ぎたグリュウへの出来る限りの配慮である。
 そして気づいたグリュウも礼を言っていた。

「そこで先ほど剣狼を送ったのだ」

「彼ならば遣ってくれるでしょう!」

 数日前まで一時的にせよチームを組んでいたグリュウはジークの実力を十分に知っている。
 本気で信じているのだ。

「うむ・・・貴公には連戦ですまないが中央戦区を頼む」

「心得ました。では!」

 グリュウは司令との通信をきると中央戦区へ向いた。
 其処に遠くで戦っているルキアから急な通信が入ってきた。









 

 北東戦区



「こちらルキアです・・・隊長、応答願います」

「こちらグリュウだ。どうした?」

 半壊したイリアで必死に回避するルキアは何とかグリュウに連絡がついた事で使命を果たせると感じた。

「現在北東戦区で敵のエースと交戦中。既に機体が限界に近いです。チッ」

 報告の途中でエイジの鬼哭が鬼王を上段で構えて急降下してきた。


 ズシュン! ザバァッ!

 間一髪で回避に成功。巻き上がった砂を煙幕代わりに距離をとろうとする。
 突然トワネの声をイリアの通信機が拾った。

「甘いですよ」

 退避中のルキアのイリアにスライスカッターが迫る。
 何とか機体を捻って回避しようとするが元々別の動きをしていた最中だから限界がある。

「く・・・まだ!」

「無事か!?」「ルキア、無事か!?」

 機体の確認しているときグリュウとダンから通信が入った。
 そしてダンの声が聞こえた事でグリュウはダンの無事も確認できたようだ。

「二人共、一体何があった?」

 二人を追い詰める相手に興味を覚えないのはあり得ない。
 彼も武人であるからだ。

「はい・・・実は」





 

 話の内容はこうである。
 戦闘開始直後、ダンとルキアは連携でプライムローズを撃破しようと考えていた。
 鬼哭の持つJファーバルカンのフォルムから空中運動性が低いと判断したが大型斬馬刀のリーチから近接戦の不利を感じていたルキアは機動力で翻弄しつつ、その隙にイリアに近いフォルムを持っているプライムローズを射撃武器で撃破しようとした。
 しかし作戦はプライムローズの機動力とトワネの技量で覆された。
 二人の攻撃を簡単に回避し、更に装甲の薄いルキアではなく近接戦を考慮したダンに接近戦を仕掛けてきたのだ。
 腕に装備された西洋剣「スピニングチェイサー」の鋭い突きをダンに放つ。
 ダンは回避したのだが、その先には鬼哭が待ち受けていた。
 鬼王の一撃を運良く回避するが、追撃で反対の腕に装備されていたクロー系武器「狩人の皇牙」の一撃がダンのヤシャの頭部を砕いた。
 そのまま、各個撃破を狙っていた二人は逆に夫妻の連携で分断されつつ追い込まれていったのだ。



 

「なるほど・・・状況は理解した」

 ルキアから事の顛末を聞いたグリュウは状況を理解できた。
 二人を手玉に取る猛者が近くに居ると言うのは顔には出さないが歓喜の念があった。

「これ以上の戦闘は不可能です。遺憾ですが一旦私達は後退します」

「情報の提供を感謝するぞ」

 ルキアの言葉にグリュウは即答した。ルキアにはダンを説得するという仕事が残っているのだから時間を掛けさせるわけには行かない、その間に行動不能に陥るかもしれないからだ。

「・・・奴等も来るだろうな。行くぞ!」

 通信を切ったグリュウは進路を北に向けた、目指すは中央戦区である。










  

 中央戦区



 猛烈な風切り音が鳴った後、猛烈な閃光と共に轟烈な爆音と巨大な火柱が砂もろとも舞い上がった。
 カンドランドに設置されている46cm曲射砲の砲撃である。
 その爆心地の中心に居たPFは消滅し、周りに居た機体に無傷な機体が残っていない有様だった。

「全軍突撃ぃぃーーー!」

 アルサレアの指揮官の叫び声と共にJファーやJフェニックスなどの機体がヴァリムの生き残り部隊に突撃してきた。
 当初は40機いたヴァリム部隊だが残りは大破、中破を含む11機である。


「ウワァァーーーー!!」

「アルサレア如き・・グハァ!」

 ヴァリムの必死の抵抗空しく瞬く間に蹂躙されていった。



 

 数で劣るアルサレアとミラムーン部隊が最も戦力の集中している中央戦区でヴァリムに優位なのは先も述べたとおり46cm曲射砲の威力だった。
 第6研究所でオーガルディラムを殲滅する為に開発していた超重砲を急遽としてカンドランドに曲射砲として設置したのだ。
 元々は大型戦艦に装備されていた主砲を再設計したものだから威力は高い。
 2基装備されていたが、片方はカルラ決死隊の玉砕で破壊されたのだが一基だけになってもアルサレアに優勢を運んだ。



 何より圧倒的な威力の前にヴァリム兵達の士気は下がった。
 砲撃を受けなかった部隊も恐怖によって瓦解した所もあった位だ。
 そんな瓦解した戦場の一角である。

「死ねや、ヴァリムの金持ちめ!」

「お前らに殺された兄貴の仇!」

「俺は尊敬する知り合いのだ!」

 アルサレアのPFパイロットが色々叫びながら逃げ惑うヌエやヴェタールを襲っている。
 ヌエやヴェタールの損傷は激しく反撃しようにも出来ない。
 そして追い付いたJグラップラーがクラブを振り被った時、


「逃げる兵を襲うのは関心せんな!」


 戦場に到着したグリュウはシラギクを一閃。
 グラップラーを一撃で粉砕した後に残りのJファーを撃破した。
 機体を別の戦場に向けながら撤退する友軍機にグリュウは言う。

「後は任せたまえ。貴公らは下がっていろ!」

「「「「御武運を!」」」」

 グリュウの命令に素直に従って後退していった。
 それとは正反対にアルサレアの部隊が前進してくる。

「ふん・・・ヴァリムの勝利の為に倒させてもらう」

 グリュウは計20機のアルサレアPFに突撃した。


 ヒュンヒュン!


 圧倒的な火線をキシンカスタムの大推力で回避。
 ショットガンやレールキャノンが火を吹くたびにJキャノンは崩れ、シラギクが振られるたびにJフェニックスが爆発した。

「く、黒夜叉だ!」

「俺達も引くわけにはいかねぇんだよ!」

 半数を一瞬で失ったアルサレア部隊だが血気盛んだった。
 相手が黒夜叉と分かり、また強力な新型PF(先行量産型キシン)に乗っていると分かってもアルサレアは退かない、別の戦場で戦う新しい指導者のためにも負けたくは無かったのだ。

「ほざくな! 死に急ぐのではない!」

 そんな様子にグリュウは叫び返しながら次々と撃破していく。
 僅かな時間でアルサレア部隊は壊滅させた後、別の部隊の救助に向かって行った。



 

 グリュウなどのエース達の到着は中央戦区のヴァリム兵達を奮い立たせた。
 腐敗した上層部とは裏腹にヴァリム一般兵は腐りきっているわけではない。
 彼等は母国を守るために必死なのだ。
 そして同じくアルサレアにもエース達が到着した。






 

 お互いにエース達が到着した事で彼等が戦う状況も増えてきた。
 そして此処でも始まった。

「あれが黒夜叉か」

「かなり出来る方ですね」

 エイジとトワネは相対する漆黒のキシンを見てパイロットを直感した。

「貴公らが部下を撃破した者達か?」

 グリュウから入ってきた通信を聞いて夫妻は先に撃破した赤いヤシャを思い出した。

「そうですわ」「君こそ黒夜叉だな?」

「いかにも!」

 トワネが答え、エイジの問う。そしてグリュウは轟然と答えた。
 お互いに名乗りあっていて動かないが、その周りの他の兵は滲み出るオーラに気圧されて近寄れない。


「「「いざ・・・勝負!」」」


 3機が吼えた。



「頂きますわ!」

 最初に動いたのは機動性の高いプライムローズ。
 スピニングチェイサーで鋭い突きを繰り出す。

「遅い! 邪魔だ、どけぇ!」

 その一撃をグリュウは回避するとプライムローズに体当たりを喰らわせて飛び越す。


 ズダダダダダ!


 鬼哭から火縄銃が連射される。


 キンキンキン!


 なんとグリュウはシラギクで銃弾を弾いたのだ。
 それでもエイジは冷静に見極めて鬼王を振りかぶる。

「これで終らせるぞ」

「いい一撃だ。だが、その程度では俺は倒せん!」

 振り下ろす前にグリュウは鬼哭の懐に入り込んだ。
 10mほどの斬馬刀では1mも無い距離の敵を切り倒すのは難しい、いかにエイジであってもグリュウ相手では不可能だ。


 ズダン! ズダン! バン!

「クッ!」

 鬼哭を捨てブースターを全開にして何とか距離を離したがショットガンとレールキャノンを数発の直撃を受けてしまった。
 夫のピンチにトワネはグリュウの背後から斬りかかった。

「今助けます!」

「下がれ、女!」

 スピニングチェイサーの斬りを今度も避けると逆に回り込んでウイングの片方を斬り跳ねた。
 片方を失った事でバランスを狂わせて動きが僅かにずれたプライムローズにトドメを刺そうとしたがHP回復パックで回復し終えた鬼哭の援護射撃に阻まれた。
 その隙にトワネは一旦距離を離してグリュウを挟撃の形にした。



 

「・・・強いですね。これほどとは」

「ああ・・・予想以上の戦闘力を持っているな」

 自分達を追い込みながら未だに損傷らしい損傷を負っていないグリュウのキシンを見て実力の高さに驚いた。
 此方は全開で動いているがグリュウには余裕すら感じられる。

「トワネ・・・アレを使うか?」

 エイジは決心したかの様にトワネに聞いた。
 その言葉にトワネは驚く。

「アレですか・・ですがアレは!」

 トワネは理解していた。切り札を使わなければ勝てる相手ではないと。
 それでも躊躇が生まれる。
 しかし

「分かっている。アレの危険差は十分なほどにな」

「だったら・・・」

 しかしエイジの決心は固い。

「私達は負けるわけには行かない。モモネを残して逝く訳にはいかないだろ」

「・・・分かりました」

 トワネは折れた。愛娘は大事である。
 そしてモニターでトワネの顔を見たエイジは笑いかけて言う。

「絶対に死なないさ。お前と一緒ならばな」


 その言葉にトワネは提案した。


「この作戦が終ったら旅行に行きましょう、3人で」


 それが合図だった。
 二人のPFから壮絶な光が滲んできた。
 それを見たグリュウは悟る。次で勝負を終えさせる気だと。


「此れで終わりにするぞ!」

 グリュウは叫びながら猛スピードで鬼哭に迫る。
 そしてエイジとトワネも叫んだ。





 


「喝目せよ! 滅壊之理(めっかいのことわり)!」










 

 9話に続く

 次は8話サイド2ですけど




 



 後書き

 今回も読んでくださってありがとうございます。
 翼の続編(馬鹿の一つ覚えで今度もクロス物です)として考えていたゲームのHPがようやく更新されて嬉しい神楽歌です。<発売日は相変わらず未定ですが(汗)
 漸くサイド1が書きい終わりました(コロニーの名前とは無関係です)
 本当は10Pで終る予定が気づいたら(戦闘で調子こいて)15Pでした。
 次は誰の話になるのでしょうね〜
 ここらで謝罪
 今月中には終らなさそうです(まて)

 どうだって良いですね。

 では失礼します、それでは又!









 

オマケ

サイド○:8話は複数の話の時間帯が同時に進行しています。それを1回で書く事が(私の腕で)不可能ですのでサイドごとに視点を変えて投稿する事にしました。

冒頭の説明:単なるでっち上げ(笑)

G弾;オリジナル兵器。
 気化爆薬を内包した砲弾で、炸裂すると煙幕の如く周囲にガスを撒き散らして射撃不能の戦闘フィールドを作り出す。

3連装45口径46cm曲射砲:オリジナル兵器
 カンドランドに設置された巨大曲射砲。作ったのは第6研究所のシエル。
 元々はオーガルディラムを撃沈させる為に作っただけあって威力はトンデモネェ兵器です。
 元ネタは某不沈戦艦(結局沈んだけど)

滅壊之理(めっかいのことわり):桃音様から御借りました
 夫妻の自作HM。威力は次の機会に(まて)


 


 管理人より

 神楽歌さんより第8話その1をご投稿いただきました!!

 サーリットンも凄い事になってますね(爆)

 さて、グリュウとエイジ達の対決や如何に!
 


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