お読みになる前に

 今回は今までと違って、結構「殺す」などの暴力セリフや作者の妄想兵器がでますので、気をつけてください




 

機甲兵団Jフェニックス裏史実











 

 終息の灯火

 3話「鏡月」















 

 見渡す限りの廃墟。

 そして、巻き上がる砂塵。

 辺り一面砂だらけ。





 

 ここはアルサレアとヴァリムの最大の激戦地と呼ばれるサーリットン砂漠。

 常に一進一退の攻防を繰り広げる砂漠の拠点に両軍は睨みあっていた。


 マップ


 上記の地図は青がアルサレア。赤がヴァリムの拠点。Gがカンドランドであり、本が両軍の司令部です。



 アルサレア要塞で参謀本部長が反攻作戦を発表した日から1日後・・・







 

 ヴァリム軍サーリットン戦線総司令部。



 サーリットン戦線総司令部、それはサーリットン戦線を構成する北部、中部、南部戦線のヴァリム軍を統括する最重要拠点である。(赤の本と書かれている場所)

 その司令室で一人の老人と凄まじい闘気を発する青年が向かい合っていた

「良く来てくれた、グリュウ大尉」

 老人、この戦区の司令は目の前の青年に一言労った。

 何しろ青年はヴァリム軍でも1位、2位を争う実力を持ち、なおかつ高い信念と志を持つエースパイロット「グリュウ・アインソード」である、階級が高い立場でも敬意を払う者が多い。

「ハッ! 我々の隊は此れよりサーリットン方面軍指揮下に入ります」

「受け賜った・・・状況は分かっておるな」

 司令は自分の言葉を口にした瞬間、顔が曇った。

「心中お察しします。まさか、アルサレアが此処までやるとは思いもしませんでしたな」







 

 今から数週間の前の事である。

 アルサレアの指導者であったグレン将軍の娘の一人「クレア・クラウゼン」が短い生涯を終えた。

 死因は病死であるが事実は違う。彼女の病院にテロリスト・・・裏でヴァリム軍、フォルセア・エヴァ神佐が操っていた部隊が暗殺したのだ。

 無論、この内容は非公式であって上層部は否定しているが疑う余地はない。

 しかし、犯人は誰であれ、アルサレアには神佐の思惑通りに精神的な打撃を与えた。



 だが、その後に起きた悲劇までは彼女の予定には入っていなかっただろう。

 サーリットンが僅か4日間で死の砂漠と化したのだ。

 クレア・クラウゼンを愛する一人の漢が成し遂げた行為である

 無論、前線を知らない将校や政治屋は信じはしなかったが方面軍消滅と言う現実は信じるしかなかった。(上層部はアルサレアの一部部隊の暴走と判断)

 方面軍が完全消滅したという現実を前にヴァリム軍は新たなる部隊を派遣しようとした。

 だが、此処にいたって1つの問題が上がる。

 各地に侵攻しているヴァリムの戦線は広大だ、約3500機ものPFを数日で補充する事など不可能である。







 

「うむ・・・だが貴君達が来てくれたのは幸いだった」

 グリュウなどのエースを他方面軍から多数異動させて足りない数を補う事で戦力が整うまでの時間稼ぎにするというのが当面の方針であった。

 話が長くなりすぎたと感じ始めた司令は話を終わらせようとした

「まぁ、しばらくはアルサレアも大規模な行動はしないであろうから今日はゆっくり休養してくれたまえ」

「ハッ!」

 司令の言葉が終わるとグリュウは一礼して部屋から出ていった。











 

「グリュウか、どうじゃった?」

 自分達の小隊の部屋に戻ったグリュウに今回組む事になっている「ヴァリムの猛牛」バールが話し掛けてきた。

 名目上の隊長であるグリュウに以後の指示を仰ごうとしているのである。

 粗野で無茶苦茶そうな巨漢ではあるが、空腹にならない限りは忠義の熱い軍人なのだ。

「今日一日は休養だ。明日以降はアルサレア圏内への偵察と哨戒。しばらく大規模作戦の予定は無い」

「早く出撃させろ。俺はそんな事をするために来た訳ではない」

 グリュウの報告に異議を唱える物が居た。

 剣狼の異名をとる「ジーク・フェルナンデス」である。

 彼もグリュウの小隊に編入されたのだ。

「俺は奴を探す! 奴は死ぬはずはない。今も何処かで戦いを繰り広げているはずだ!」

 彼が言う奴とは数週間前に消息を断った人物の事である。

 前代未聞、そして後の歴史でも不可能な事を起こして行方不明になった。

 だが誰も死んだとは思っていない、ジークもその一人である。

 放って置いたら機体に乗って前線へ直行してしまう勢いだ。

 ポン・・・

 ジークの肩を掴む者が居た。

「・・・」

 ジークを止めようとした人物の名は「アッサー・ビット・シーレイル」。とあるヴァリム強硬派の上級将校の近衛隊のパイロットであり、鉄仮面と美しい後ろ髪を持つエースだ。

「・・・明日から出撃だろ? 今も戦っているような漢ならば今日明日に死ぬはずも無い」

 鉄仮面の口元から紡ぎ出される言葉の説得力は高かった。

 ジークは訝しげにアッサーを睨むと近くのイスに座る。


 

 その様子を見ていたグリュウは不思議な後景だと考えた。

(近衛隊にもあのような奴が居たとはな・・・しかし・・・不思議な男だ)

 グリュウにはアッサーが何者なのか理解できない、例えば彼の任務が見えないのだ。



 最初は穏健派の代表格である自分やバールの監視は勿論、強い者を求めるジークがガルスキーに戦いを挑まないか見極めようとしているのだと思っていた。

 だが自分達を監視している様には見えない。一介のエースとして派遣されたといっても信じられる。

 何より他の近衛隊の兵とは違った雰囲気を放っている、上に立つ威厳を感じるのだ。



 突然バールは部屋に備えてあった戸棚から大量の御茶菓子やスルメ等の御摘みを出しながら酒を用意し始めた

「どうせ機体を砂漠用に調整中じゃから出撃は嫌でも明日からじゃ。だったら一杯やらんか!」

 バールは嬉しそうに食べ物を用意している。この男は闘う事と食べる事が最大の楽しみなのだろう。しかし、他の面子は違った。

「俺は酒は飲めないんだ。悪いな」

「そんな事よりも俺にはやらなければいけない事がある」

「いきなり酒盛りはどうかと思うぞ、バール」

 アッサー、ジーク、グリュウに次々と反対されバールは渋々と酒をしまった。

 しかし、不意を突かれた事を言われた為に殺気だった空気が一変する。

「そうか・・・まぁ、腹が減っては戦は出来んぞ!」

 バールは言いながら牛タンを食べ始めた。

 食べるのが最大の狙いだが、もう一つの狙いである「剣呑とした雰囲気の払拭」は達成された為に本人としては結果オーライのようだ。

 その時、部屋に備えられているスピーカーからサイレンが鳴り響いた。

「何事だ!」

 何が起きたのかは分かっているが、それでもグリュウは口にする。

 続けて基地オペレーターの切羽詰まった声が聞こえた。

「緊急事態発生! アルサレア軍が境界線を抜けて我が勢力圏に侵攻を開始しました!」

 4人は部屋のドアを蹴破って格納庫に向かって行った。













 

 此処からはサーリットン戦線の日ごと戦況を戦線の兵士の体験談と共に掲載します。





 

1日目(当日)



 広大な砂漠地帯であるサーリットン戦線の要塞都市カンドランド(Gと書かれている場所)より同都市を占領していたアルサレア軍はヴァリム勢力圏(黒いライン)へ向けて独立隊を含む混成部隊1個師団(約PF300機)を侵攻させた。




 

 アルサレア軍侵攻部隊・第21独立大隊隊長(以下より21隊長と約します)の体験記



「へ! 落ちやがれ、ヴァリムのヘボパンツアー」

 21隊長は愛機、Jファーカスタム支援型の装備武器であるAAFミサイルがロキのメインに突き刺さった。

 弾頭から放たれた高温ガスの噴射がロキのジェネレーターを焼き尽くし、行き場を無くしたエネルギーがロキの全身に逆流した結果、ロキは爆砕した。

「各機、俺に続け! 奴等に鉛球をぶち込みまくれや」

 21隊長は意気盛んにサブマシンガンを撃ちまくりながら部下を鼓舞した。

 その激励に答える様にナイトヴェア隊がJキャノンの援護の元に突撃。

 ズドォン! ズドォン! ズグッシュ!

 ロケット弾とキャノンで陣形を乱したヌエやヴェルタールにナイトヴェアの大鎌の一撃が振り下ろされた、その一撃はヴァリム軍の命を喰らう死神の一撃。

とにかく敵を潰す事に専念しろ! ヴァリム野郎は揃って大金持ちだ、徹底的に殺れ!」

 叫んでいる21隊長もヤシャを1機撃破したところだ。

 対するヴァリムは混乱によって組織だった反撃の様子は無い。

 21隊長は闘いではなく狩りをしている雰囲気だった。








 

 この日の結果はアルサレア軍の圧倒的勝利だった。

 カンドランド付近である中部方面に展開していたヴァリム軍の戦力は3個師団である一個軍団(予備機や指揮部隊機も混ぜて1000機)であったが、他方面から臨時に集められていた所為もあり部隊間の混乱をきたした為に各地で各個撃破される事になった。

 ヴァリム軍は各師団共に戦力を15%ずつ失う結果になったが、対するアルサレアは8%の損害で留まった挙句、戦線に楔を打ち込んだ事となる。







 

2日目



 昨日のアルサレアの電撃戦によりヴァリムはサーリットン中部戦線の戦力を15%以上をも失う形となった。

 進撃してきたアルサレア軍は陣地確保よりも侵攻を優先し進撃を続行、中部戦線司令部の目前まで迫るのだが、対するヴァリム軍は前日の電撃戦と補充部隊の再編成に手間取ったままであり総司令部の混乱は凄まじく僅かな援軍しか送る事は出来ない。

 本来ならば伸びきったアルサレアの補給線を潰す事で逆に壊滅させることは可能なのだが、戦力の低下したヴァリムに出来る余裕は無いのであった。





 

 ヴァリム軍中部方面軍司令部守備隊305強襲中隊隊長の体験記



「こちら305隊です! 周辺には敵機しか見当たりません。友軍の(ズガァ――ン!)・・司令部!」

 305隊長は通信を送っていたオペレータールームがアルサレアの砲撃で壊滅したと悟った。

 アルサレアは砂漠用に調節されたJファー量産型を中心に進撃、対するヴァリムは汎用型のロキ(デザートではなく通常型)と高速重視のイリアが主力である。

 砂漠の砂地に足を取られイリアは持ち前の機動力を、ロキはレールキャノン等の重火器の狙いが激減してしまい性能を活かせずに破壊されていった。

「くそそぉぉーーーー!!」

 305隊長は自分の機体であるアシュラの武器をJファー量産型の大群に向かって撃てるだけの撃ち込んだ。

 キュイン! キュイン! チュン!

 数機を破壊したが進撃は止まない。

「なら・・・うわぁ!!」

 ならば高威力のレーザースピアで倒そうと走り出した瞬間、アシュラの右腕が消失した。

 Jファー量産型を支援していたJメガバスターである。



 砂漠のような起伏の少ない地形ではメガバスター砲の様な持続発射式は横に凪ぐだけで多数の敵を撃破できる凶悪な武器になるのだ。



 奇跡的に助かったアシュラであったが本当は助かっていない事に気付いた。

「こちらオペレータールーム、305中隊に伝令! 今の砲撃で援軍の361中隊の半数がやられました! 同中隊は再編成の為に後退を開始・・・他の部隊から援軍が移動中ですが少し時間がかかります」

「・・・!」

 司令部が未だ生きている事態は嬉しかったが援軍の到着に時間がかかるという現実は喜べる筈は無い。

 先のメガバスターは彼を狙ったものではなくて援軍を狙っていた物だったのだ。

 進退窮まった305隊長はボソボソと何かを呟く。

「・・・母さん。先に逝く不幸をお許しください・・・! クタバレやァァー――!!

 アシュラが急加速しJファー量産型の群れに突撃をしようとした。

 だが世の中そんなに甘くない。Jファー量産型の群れである一個中隊(コバルト小隊編でのNPC部隊を中隊として20機編成とします)のサブマシンガンが一斉にアシュラに火を放った。

「チィぃーー――くしょよぉぉ――――!!」

 名機アシュラは伊達じゃない。サブマシンガンの猛攻に耐えた。

 だが機体は半壊状態。

 305隊長は叫び声を上げつつ自分の末路を悟った。

 その時、彼の視界に狼が走った。







 

 ジーク・フェルナンデスの体験談


「そこの雑魚ども! どけぇぇー――!!」

 ジークの叫びと共に閃いたエクスカリヴァの一撃はJファー量産型5機を一撃で両断した。

「そこのアシュラ、下がっていろ!」

 満身創痍の305隊長に言うと新たなる愛機「キシン・カスタム」を加速させて残っていたJファー量産型に斬りかかって行った。



 剣狼ジークが駆るキシン・カスタムとは、JN−KS05「キシン」の配備に先立って製作された先行量産型キシンをベースにしたカスタム機である。

 先行量産型の性能は後の量産型と変わらないものであるが機体拡張性は高く、ジーク用にカスタム化された結果として後の主力機であるオニに匹敵する性能を会得している。

 特にBURM一刀侍魂と超高速による一撃は王狼の牙であった。



 

 そんな高性能機を相手にJファー量産型如きが相手になるわけは無い、それ以前にジーク相手に正面切って戦えるパイロット自体が滅多に居ないだろうが。

「邪魔だ! 雑魚は消えろ!」

 エクスカリヴァの一撃が煌くたびにJファー量産型がスクラップになって行く、ジャンク屋が泣いて喜ぶような後景だ。

「斬月ほどではないが、この剣も悪くは無いな」

 本来の愛刀は「斬月」であったが試し切りとしてエクスカリヴァを装備しているのだ。

 どっちにしてもジークの強さの前には愛刀だろうが何だろうが並大抵の相手では切倒されるだけで変らない、彼に愛刀を抜かせられる者は少なくともこの場には居なかった。

 満身創痍になったアシュラから出てきた305隊長は夢を観ているのかと思っていた。

「・・・すげぇ!」

 援軍の期待などしていなかっただけに、たった一機の援軍が敵を圧倒している後景は想像すら出来なかったのだ。

「あぶねぇ! 避けてくれ!」

 ジーク機に向かってレールキャノン弾が迫ってきたのが見えた305隊長は叫んでいた。

「遅い!」

 実際はジークだって気付いている。

 神域を知っている彼にとってはギリギリまで避けなくても問題は無い。

 最後の1機のJファー量産型を切り倒すと同時に直撃寸前だったプラズマ弾を切り払った。



 切り払った直後、ジークはプラズマ弾が発射された地点に急行。

 そこにはJフェニックスヘッドを装備したカスタム機がレールキャノンの砲撃態勢で第2射を放とうとしていた。

「エースか・・・いざ!」

 ジークの叫びと同時に放たれたレールキャノンの砲弾を回避しつつ肉薄!

 だが、ジークの一撃を腕に装備されていたサーマルプラズマライフルをデコイにすることでカスタム機は辛くも回避する事に成功した。

「貴様! ・・・剣狼か!」

 そのカスタム機の乗っていたランブル・クリスティーンは叫ぶ。

「そうだ! 貴様こそアルサレアの狂犬だな」

 強い者は強いもの同士で引かれあるという言葉があるが、現状はまさしくそれだった。

 お互いにエース級の猛者である。

 一瞬の静寂・・・

 そしてレールキャノンとキシンが超加速!





 勝ったのは犬ではなく狼のようである。ランブル機はエクスカリヴァの一撃で両断こそされなかったものの全身から煙を吐いていた。

「クソ・・・」

 ランブルは悔しそうに鬼の形相でキシンを睨むと戦いを続行しようとする。

 それに答えるかのようにジークもまたエクスカリヴァを構えた。









 

 その頃のアッサー



 

 ジークとランブルの一騎打ちを遠くから監視している者が居た。

 アルサレア軍に所属その他大勢に属する部隊の隊長であった。

 彼は出世欲の塊であり、ジークを倒して出世の糧にしようとしていた為にランブルとの闘いで弱った所を狙撃しようと狙っていた。

「しめしめ・・・狂犬も剣狼も俺様ちゃんに掛かれば・・・」

 もはや倒した気でいる愚か者である

 実際問題としてランブルならともかく、ジーク相手に弱った所を狙うといっても無駄だと思うぞ。

 そして天もズルは許さないようだ

「其処の者、漢同士の戦いに水を刺す積もりか?」

 名も無き隊長の前に一機のPF・・・ヌエカラーのJフェニックスが両腕を組んで佇んでいる。パイロットはアッサー。

 彼は鹵獲したJフェニックスをヌエカラーに変更させて両手にカタナを装備させて戦場をかけていた。

「Jフェニックスが敵!? 鹵獲機か!」

 名も無き隊長は驚いて何も出来ない。事態を少しだけ理解したが意味は無し。

「この一撃に我が誇りを乗せて!」

 アッサーのJフェニックスの片腕のカタナの閃きは1匹の卑怯者を両断した。

 さらに彼に従っていた部下に対して叫ぶ。

「命が惜しい者は投降せよ! 戦いを続ける者は我が誇りを持って相対する! 好きなほうを選べ!」

 アッサーから放たれるプレッシャーの前に部下たちは一目散に逃げ出してしまった。

 戦う相手が消えてしまった事を確認したアッサーはジークの方に目を向けた。

 無傷のキシンとランブル機から脱出ポッドが射出されたのを見るとジークの勝利であろう。

「アルサレアは撤退するつもりか・・・」

 それと同時にアルサレア軍は進撃していた部隊を後退させていた。






 

 この日の結果は微妙である。

 中部方面司令部の目前まで迫ったアルサレア軍であったが援軍で駆けつけたジークやアッサーなどのエースによって押し止められて膠着状態になったのだ。

 補給線が伸びすぎたアルサレアとしては進撃の続行は危険と判断して撤退、カンドランドまで後退した。

 対するヴァリムはエース部隊に損失は無いものの、通常兵の部隊の損失は昨日にも増して高く、後退するアルサレアへの追撃は不可能でありアルサレア軍の損失は低かった。

 中部戦線司令部を守りきったが損害は大きく、勝利は僅かにアルサレア側にあった。









 

3日目



 この日の天候は惑星J名物「緑月」で朝から重力が1.5Gである。

 前日まで中部方面を制圧しかかっていたアルサレア中部方面軍は前線基地であるカンドランドに篭って防御に徹していた。北部や南部も同様である。此れはJフェニックス等の過重力対応機が少ないのが原因であろう。

 対するヴァリムは違っていた。





 

 バールの視点



「野郎共、行くぞぉぉ――!!」

「おおぉぉぉーーー!!!!」

 緑色の大地に立つ巨人たちに乗る野郎達は雄叫びを上げていた。

 中心に立つのは専用タルカスに乗るバールとJフェニックスに乗るアッサー。

 そして周りを固めるのはイリアと新型機「KUTISAKE」、両機種共に過重力特化機だ。

「バール。カンドランドには俺達が先陣を切るぞ」

「分かっておるぞ、アッサー殿」

 今回のヴァリムの攻撃はアルサレアの戦力を減らすのが目的である。

 昨日までの2日間で縮まった双軍の戦力比を少しでもヴァリム優勢に持ち込むために戦力が集中しているカンドランドに攻撃を仕掛けるのだ、あくまで攻撃で制圧ではない。

 それから一時間後、カンドランドから出撃した迎撃部隊と遭遇するのは彼らの予定通りだった。





 

「我が誇りは、あの方の為に!」

 最初に迎撃部隊にぶつかったのはアッサー機である、高機動を持つJフェニックスの動きは過重力とは思えないぐらいの機敏さを発揮している。

「くらぇぇぇー――――!!!」

 アッサーの叫びは斬劇と化してJファーカスタムやJグラップラーを切り刻んだ。

 彼に砲撃を加えようとしたJキャノン隊であったが全弾ハズレである、さらに彼らにも不幸が加わった。

「もぉぉぉぉーーーーー!!!!!!」

 猛牛と同じような声を叫びながらバールは専用タルカスのHMを発動。緑色に染まったタルカスは降り注ぐ砲弾を弾き飛ばしながらアルサレア迎撃部隊を蹂躙しつつ後方のJキャノン隊に強襲。

「ガァァーーハッハハッハハ!」

 バールの豪快な笑いと共に振り下ろされたハンマーがJキャノンを潰した。

 彼らの支援機を勤めたKUTISAKEやイリアも特意環境であったが故に並居るアルサレアPFを撃破。迎撃部隊が撤退を開始しようとした頃には戦力の4割を失っていた。





 

 カンドランドに帰還したアルサレア迎撃部隊であったが不幸は続いていた。

 正面戦力に気を取られていた隙に都市内部に40機のゼクルブが転移で強襲を仕掛けてきた。

 圧倒的な火力と装甲の前に市街戦で機動力を活かせないPFは次々と撃破される。

 都市に被害覚悟でバスターランチャーなどの重火器攻撃でゼクルブ40機を撃破したときには、カンドランドの防衛施設の7割は沈黙しPF部隊も同基地所属機(戦闘前には600機であったが、迎撃戦の際に損失・大破機が100機になっていた為に500機)の内、修理不能機は130、修理可能大破機は170、壊滅的な被害であった。

 対するヴァリムは表面上は勝利したが装甲の薄いイリアの被害が大きく、またアルサレアのヘルファイアによる焦土作戦(ケイオウ特尉の行動に対するヴァリムでの認識)を恐れて、それ以上の攻撃は無かった。









 

4日目



 アルサレアの災難は続いていた。

 夜明けと共にヴァリムの主力がカンドランドの周辺に再度の進行を開始していた。

 戦力が回復していないアルサレア中部方面軍は北部、南部方面軍に援軍を要請。

 しかし、両方面軍にも無人仕様の戦車部隊が玉砕攻撃を敢行した為に身動きできない状態であった。

 追い討ちをかけるようにアルサレア軍の予想を裏切る戦略がヴァリムには有った。




 

 ヴァリム軍、ダン・ロンシュタットの体験記



「ちょっと、ダン! あんたカンドランドに行くなんて馬鹿やんないでしょうね?!」

「てめぇ! 俺の事を馬鹿だと思ってやがるな!」

 ヤシャカスタムを駆るダンは不本意な事を言ってきたルキアに怒鳴り返した。

 ヴァリムの作戦とは前線基地であるカンドランドを迂回してアルサレア中部方面司令部(拠点4)に奇襲を掛けるというものであった。

 戦力はダンとルキアを隊長とした2個大隊(120機)程度であるが、アルサレア中部方面軍の主力は前日の被害から回復しておらず、さらに予備部隊も戦力の穴埋めの為にカンドランドに配置された。後方の戦力は多いとは言いがたかった。



 実際、今のヴァリム軍サーリットン方面軍にはサーリットン中部方面の制圧を維持する戦力は無い。しかし、一時的にせよ制圧しておく事で援軍が来るまでの時間は稼げるという目算があった。

「あんたね・・・この前、基地の後方に回り込めって言ったのに、基地に突っ込んだでしょ!」

「うるせぇ! 俺は俺の好きにやる!」

 ダン・・・そこまで突撃馬鹿だったのか?

 それはさて置き、ここまで騒いでいるのだから他のヴァリム兵から冷やかしが来る筈だが、彼らの場合は違う。

 影が薄いことで有名な(影が薄いのなら有名は変だが?)ルキアのおかげでダンも影が薄くなりつつあった。よって二人の事を気にする者は居ない。





 

 真面目な会話とは程遠いが着実に司令部に近付いていく。

 馬鹿をやりながら進撃していたダンとルキアだったが戦闘時は違った。

 ダンのヤシャカスタムに装備されているカイザーナックルが電磁射出される度に立ち塞がっていたJグラップラーが吹き飛ばされる。

「おらぁ! どきやがれぇ!」

 左腕に装備されているビッグフォーンを突き出して突進。

 正面に展開していたJメガバスターの胴体が分断された。

「ちぃ!」

 不意に殺気を感じたダンはシャドーウイングを広げて飛び上がる。

 同時に地面にロケット弾が降り注いだ。Jキャノンが硬直時間を狙って砲撃したのである

「洒落くせぇんだよ! ・・・な!」

 怒りを込めてダイブを駆け様とした時、Jキャノンの真後ろに隠れていたJフェ二ックスが飛び上がってダンのヤシャをカタールで切り倒そうとしていたのだ。

 タイミングが最悪のダンに回避は出来ない、その時Jフェニックスに多数のロケット弾が突き刺さった。

「ダン! アンタ、敵が2線級だからって甘く見すぎよ!」

 ダンを救ったのはルキアのイリアカスタムに装備されているハンドMLRS。さすが女房だ



 余談では有るが、ルキアの言う2線級とは練度の高い部隊は前線に集中し、ここ後方は安全地帯であるが故に練度の低い部隊が多い事を表しているのである。



「何で邪魔しやがった! こんな雑魚は俺一人で十分なんだよ!」

「アンタって・・・次から助けてやんないわよ!」

 売り言葉に買い言葉。

 助けてもらったのに文句を言われたルキアは怒り出した。

 そう言いながらも相互に連携を取りながら敵を撃破していく。

 そんな訳で進撃していくうちにダンは新たなる敵影を補足した。

「はん! Jファーバルカンとイリア如きが俺を止められるかぁ!」

 この時、ダンは気付くべきだった。その機体の秘密に。






 

 ミラムーン軍アルサレア派遣先遣隊隊長、トキノ・エイジ中佐の体験談



 コクピットに座っていたエイジは自分に突っ込んでくるヤシャを見て考えていた

(こんな雑魚を相手にするぐらいならモモネと一緒に遊んでた方が良かったぞ)

 愛機「鬼哭」・・・Jファーバルカンをベースに改造した機体のコクピットの中のエイジはダンを雑魚扱いすると鬼哭の構えを解く。

 その行動に反応するかのようにダンのヤシャのスピーカーから怒鳴り声が聞こえてきた。

「俺を舐めるんじゃねぇ!」

 ダンは気付いていない、あえて構えを解く事で相手に行動を読ませない構えである事を

 そうとは知らないダンのビッグフォーンが鬼哭の手前まで迫る。

 エイジの眼鏡の奥の目が光った。



 キラッ!



 エイジは的確な操作で鬼哭の身を沈めてビッグフォーンを避け、同時に左腕に装備されている改造型Pクロウ「狩人の皇牙(かりゅうどのおうが)」の鋭い突きでヤシャカスタムのメインフレーム内にあるジェネレーターを破壊した。

「若者よ、覚えておけ。ギリギリまで相手を見極めて放つ一撃は意味の無い連撃を遥かに凌ぐ」

 ヤシャから射出された脱出ポッドを見ながらエイジは呟いた。

 雑魚扱いはしたものの、勇敢な一撃に敬意を表しての言葉である。無能な指揮官の訓示の数倍の価値はあるだろう。ダンに理解する知識があればだが。

 今度は3時の方向から女性の声が聞こえてきた。

ダン!? ダンの仇ぃ!

 勝手にダンを殺したルキアはエイジに玉砕覚悟の突撃をかまそうとする

 そのルキアのイリアの進路を妨害するように翼を羽ばたかせたイリアが近付いてきた。

「旦那を勝手に殺すのは如何ですよ」

 ルキアをダンの妻扱いしたのはエイジの妻「トキノ・トワネ」である。

「え! そんな・・・あんなバカの妻じゃないわよ、私は!」

「あらあら。仲が良いわね」

 愛機「レイ・プリムローズ」・・・イリアの改造型の機体のコクピットに座るトワネは茶化した。

 しかし、急に顔を引き締めるとルキアに言い放つ。

「同じ主婦同士の会話はこれ位にして、あの人の為に貴方を滅します!」

 その言葉に身の危険を感じたルキアはカタールで切りかかった。

 が、トワネ機は造作もなく回避すると共に後方に回り込み、腕用に改造したスライスカッター「スライスシューター」から光輪を放つ。

 ルキアの愛機がイリアカスタムでなければ回避は不可能であっただろう、傷を負いながらもルキア機は飛び上がって回避した。

「なんて速さなの!」

「遅いですわよ!」

 トワネの素早さに驚いたルキアであったが、更なる速度に絶句した。

 彼女が気付いた時には自分の機体の両腕と頭部が光輪によって離れていた事に気付いた。





 

「大丈夫か、トワネ?」

「大丈夫ですわ、貴方」

 エース級であるダン、ルキアを倒した夫妻はお互いの安否を気遣った。

 二人はお互いの実力から無駄な事と分かっているが愛し合っているのでやる。

「この作戦が終わったら親子3人で旅行にでも行くか!」

「でしたら絶対に成功させましょうね」

 突然あるがミラムーンである彼等が来た理由は上層部からの指示であった。

 アルサレア参謀本部より援軍要請を前以って受けていた大統領は部隊派遣を決意。

 精鋭一個軍団(PF1000機)を送り、夫妻を隊長とした先遣隊を送ったのだ。



 エイジとトワネのコクピットに警報が鳴り響いた。

「あら?敵の残存部隊が来ましたわ」

「全く・・・物好きだな、彼等は」

 内容はほのぼのとしているが目付きが変った。

 エイジは地面に突き刺しておいた10メートル級斬馬刀「鬼王」を。

 トワネも地面に突き刺しておいた西洋剣「スピニングチェイサー」を手に取って構えた

「3人の心は何時も一緒だ。行くぞ!」

「はい!」

 後続のゼムンゼンを待たずに夫妻は60機(残りはカンドランドからの救援部隊と交戦)に突撃していった。





 

 勝利を確信していたヴァリムの前に突如として現われたミラムーン軍先遣隊によって司令部へ進軍していた部隊は勿論、カンドランドを包囲していた一部の部隊が撃破される事となった。

 先遣隊の数は僅か200機ほどであったが、指揮官の采配の前にヴァリムは各個撃破された。

 この援軍でアルサレアは窮地を乗り切った。













 

5日目



 ミラムーンの援軍がヴァリム司令部に動揺を走らせた。

 戦線が膠着しかかっている現状が一気に変る、それもヴァリムが劣勢でである。

 ヴァリムサーリットン方面軍は首都にあるヴァリム軍総司令部に援軍を要請。

 総司令部もアルサレアの狙いがサーリットンの制圧、そして本土進攻の為の足掛かりと判断して他方面からの大援軍を決定した。

 しかし、それほどの援軍を送る為にはどうしても時間が必要である。

 サーリットン司令部は徹底的な待ち状態を決意した。







 

 ヴァリム軍第21航空戦隊所属、リアンカ中尉の記録。



 リアンカ中尉は熱意に燃えていた。

 数ヶ月前のミラムーン輸送船団ジャックに失敗してから辺境に飛ばされるは、奥さんに逃げられるなどツキに見放されていた。

 ここらで戦功を上げねば降格すら有りうる、数日後の進撃がラストチャンスだった。

「ったく・・・あの生意気なアルサレアの野郎め。何時かギャフンと言わせてやる」

 ヌエに代わる愛機「カルラ」のコクピットでグレンリーダーに怨念がましく独り言を付いた。

 それ以前に今時にギャフン何て言う奴が居るのかは無視して構わないだろう

「こちらオペレータールーム。リアンカ中尉、もうすぐ進撃が開始されますので基地にお戻りください」

 基地のオペレーターから新しい命令を受けたリアンカは考え事をしながら基地に向かって方位を変えた。

(オペレーターのアキちゃんだっけ・・あのクソ女と違ってカワイイ娘だよな〜)

 不謹慎な考え事をしながら飛んでいる内に基地滑走路に近付いてきた。

 真剣な眼差しになると方位と機体角度に注意しながら高度を落す。

 航空機と比べてPFの着陸は難しくはないが一歩間違えば事故になる、飛行型にとって戦闘の次に集中する時間なのだ。

 速度を130ノットに固定して滑走路に接地、ブレーキを全開にして停まる。

 空中から垂直着陸と言う手もあるが、長時間の連続使用によるブースターの負担は整備班に恨まれるのでしない。



 着陸し終えたリアンカ中尉は密閉した空間から少しでも開放されたかったのだろうかカルラのハッチを開けた。

「ふあぁぁ〜〜〜〜! 良い空気だ〜」

 その時、空が光って青い何かが落ちてきた。

 ズドォォー――――――――ん!!!!

 着地の衝撃に吹き飛ばされたリアンカは意識が吹っ飛んだ。





 

 ミナヅキ・レイジの体験記



 上空から現われた巨人に搭乗しているのはミラムーンの狩人、ミナヅキ・レイジだった。

 彼はコネのある将軍の一人からミラムーン軍本隊が突入する為に南部方面のヴァリム基地の一つ(拠点9)に向けて奇襲を掛けるように頼まれていた。

「さて・・・潰すか」

 彼の乗る青きGF「クサナギ」の戦闘力は同クラスの兵器と比べても恐竜とライオンほどの差が有る。

 それでも1機対80機の差では辛いものがあるが、だから大気圏から連続転移による奇襲を掛けたのだ。

「敵の大半は格納庫内か」

 敵の状況を確認したレイジはクサナギの右腕下部に装着してあるメガバスターをベースにしたバスターキャノンを起動。

 ビュン!

 閃光が建物に突き刺さった瞬間、その建物は木っ端微塵に吹き飛ぶ。

 大型化してあるために従来よりも威力は高いのだが基地の構造を解析して燃料庫をピンポイントで狙ったレイジの技量によるものが大きかった。

 レーダーに警報、格納庫から離れた所にいた為に助かった機体が接近してきたのだ。

「この、青いGFめぇ――――!!」

 戦場に流れる青いGFの噂を知っているロキ・デザートのパイロットは恐怖を隠すように叫びながらスパークフックを突き出してきた。

「接近戦は少し不味いな」

 レイジは冷静そうに分析する。実際、クサナギには装甲のほかにエネルギーを使って発生させる時空歪曲場によるEシールドを持っているのだが、エネルギー兵器には強いのだが物理攻撃には意外に脆い。ロキ・デザートの突撃ならばギリギリで突破できるだろう。

「俺を甘く見ないほうがいいぞ」

 そう呟きながらクサナギの視点をロキに固定、動きをトレースさせて頭部に内蔵されているマシンガン×4を発射した。

「ウグォぉーー――!!」

 悪役バリバリの断末魔と共にロキ・デザートは戦闘力を失って地に倒れ落ちた。

 1発1発の威力は高い訳では無いのだが(サブマシンガンよりは上ですが)連続で当たれば装甲は貫通されるのである。

 ロキが破壊されたのを見ていた周りのイリアやヌエはスマートガンやレーザーピストルなどの火器でクサナギに撃ちまくった、撃たれる前に倒せという意志が恐怖と共に滲んでいる。

「その位では破れはしない」

 レイジの言葉通り攻撃は時空歪曲場の壁を突き破る事は出来なかった。

 それでも撃たれるクサナギの後方から緑色の閃光が閃いた。

「少しは考えたな」

 レイジはタルカスがバスターランチャーでクサナギの後方を狙って撃ってきた事の感想を洩らした。

 時空歪曲場も高出力の槍の為に突き破られてしまった。

 もっとも、後部装甲は増設しておりサーマルコーティングのオマケもある。

 レイジが回避しなかったのは余裕で防げると分かっていたからだ。





 急に前方の視界にユラギが見えた。

「後、面倒なのはアレだけか」

 瞬間転移で近付いてきたゼクルヴを確認しながら言うとブースターを起動させて加速する。

 そのまま飛び上がり、空から急降下。

 同じGFとは思えない機動力にゼクルヴは何も出来ない。否、撃破されることだけは出来た。

 バキィ!!

 クサナギの拳(ナックルガード付)の一撃がゼクルヴを砕いた。

 白き巨人は青き魔神の前に敗れ去った。

「そろそろ本隊も来るし終わらせるべきか・・・」

 切り札を失って浮き足立ったヴァリムに最後の攻撃として全火力を放出させる。

 ズガァン、ズヒュン、ズドォン! バキュン! ドリャァン!

 僅か10秒間だけであったが暴風の如き威力の前に地上に立っていたヴァリムPFの大半は機能を停止させた。

「作戦終了。アマテラス、帰投地点まで頼む」

 通信システムが繋がっている補助AIに命令すると、クサナギは霧のように消えた。





 

 クサナギの奇襲によって基地が壊滅した事でミラムーン軍本隊は抵抗を受ける事無くアルサレア軍と合流する事が出来た。

 クサナギに襲撃された基地の格納庫から僅かに生き残ったPFが居たが、基地の惨状を前に迎撃戦を取る余裕は全くなかった。





 

6日目



 クサナギの奇襲はヴァリム上層部に更なる危機感を与えた。

 ミラムーンの本隊が無傷でアルサレアと合流もさることながら、アルサレアにも多大な援軍が駆けつけたのである。

 相次ぐ戦術的敗退により戦力が激減しているヴァリムは遂に首都防衛隊にも出撃を命じる。

 そして、援軍を受けたサーリットン方面軍はアルサレア軍のサーリットン方面軍に大会戦を挑むべく準備を始めていた。





 

 ジーク・フェルナンデスの体験記



「フン・・・」

 滑走路に停まる輸送機の前でジークは乗り込む予定の人物の前で名残惜しさを隠すようにソッポを向いた。

「おいおいジーク〜。戦友の旅立ちを素直に喜ばんかい」

 ジークの態度にバールは茶化すように咎め、グリュウはクビを振って頷いた。

「ははっはは・・・」

 旅立つ本人であるアッサーは苦笑をする。

 アッサーは首都防衛隊と入れ違いに近衛隊に復帰の命令が来たのであった。



 

 ヴァリム軍強硬派としては自分達が負けるとは思っていない。

 しかし、今回の失態で穏健派が厭戦工作をしないとは限らない、その為に強硬派の私兵ともいうべき近衛隊を手元・・・首都に置く必要があったのだ。



 

「ま。貴公等と共に戦えた事は首都での任務とは段違いの充実さを感じたな」

 アッサーは本心を打ち明けた。

 聞いたバールとグリュウとしても近衛隊に対する考えを少し変えようかと思ったぐらいだ。

「ジークとしては少し寂しくなるんじゃないかの〜」

 ジークはバールの冷やかしにも答えはしなかった。

 当初のジークは臨時としてコンビを組んだアッサーに不信感を募らせていた。

 しかし、グリュウ達と同じく近衛隊と言う所属からではなくて彼の素性に対する不信感である。彼には何かが引っかかる、どこかで会った様な気がするのだ。

 その不信感は直ぐに消える事となる。

 戦場での2人の息は見事なものであった。はっきり言って負け無しのコンビ、双子以上のコンビネーションをかました位である。

 少し考えたかと言うとジークはキッと睨んで言う。

「今回は出来なかったが・・・機会が有れば御相手願う」

 又闘おうではなく、果し合いの申し込みである。

 さすが強さを求める漢であった

「いいだろう。その時は俺も遠慮なく行かせて貰う」

 アッサーも快く応じた。

 グリュウもバールも間に入る事は無粋だと思ったのか割り込みはしない。

「アッサーさ〜〜ん! モウスグ出発デ〜ス!」

 輸送機の中から搭乗の催促が来た。

 ちなみに今の声はパイロットである。ついでに言うならブロンドリーゼントで英語モドキを話す野郎だ(だ〜れだ?)

「では、またの機会に会おう! さらば!」

 アッサーが輸送機に乗り込むと狂ったように離陸していった。

 謎の声を残して・・・・



 「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!!!!」




 

 この日の両軍は静観の構えを貫いていた。

 僅かな小競り合いは起きたが、お互いに直ぐ撤退。

 だが両軍の兵達は感づいている。

 次の日が決戦だと!







 

7日目



 

 両軍が総力をあげて行動に移った。

 互いに戦力の再編成も終えて万全の態勢である。

 ヴァリム軍は南部と北部に最低限の戦力を残し、中部方面に組み込んで進撃。

 相対するアルサレア・ミラムーンも中部方面の最前線基地であるカンドランドの正面に部隊を展開。

 両軍共に向き合っての全面会戦が始まろうとしていた。





 

 グリュウの視点



「各自、この一戦を生きて勝ち抜け! 我等の意地を見せるぞ!」

 あてがわれた部下を前にグリュウは激励の言葉を発した。

 戦力の回復に伴い彼等の部隊も再編された。

 バールとグリュウは中隊を率いて戦闘の先鋒を担当することとなり、ジークは単機による遊撃扱いとなったのだ、全員が適所に当てられたと思う。

「おぉぉぉ!!!!」

「よし! 各自、この場で待機。戦闘開始と共に行くぞ!」

 沸き上がる部下の歓声を遮る様にグリュウは待機命令を出した。

 戦闘前に興奮するのは良いが、冷静さを失っては命を落とすことになる。冷静さを取り戻す時間をあたえる必要があったのだ。

 その時、グリュウのコクピットに通信が入る。

「お久しぶりです、グリュウ大尉」

「君か・・・」

 通信の主は彼の指揮下に編入されたユイ・キサラギ。

 ヴァリムのエースとして有名な姉妹の姉である。

「何かあったのか?」

「特に緊急事態が起きたわけではありません。ですが今回の件で疑問があります」

 コンピューター並の思考力を持つと言われるユイが言う疑問にグリュウは興味を覚えた。

「なるほど・・・奴らの動きか?」

「はい・・・アルサレアの動きが少し読めません」

 グリュウもアルサレアの動きには疑問を感じていた。

 積極的な攻撃をするが反撃が厳しいと直ぐに撤退する。

 勝つまでは攻撃を続けるが、負けそうになり始めると止める。

 中途半端な攻撃ばかりしかしないのだ、おかげでヴァリムは命を何度も助けられた事になるのだが。

「戦力を減らすにしても爪が甘い・・・まさか!!」

 グリュウはハッとなって1つの結論を出した。

 アルサレアの動きはサーリットンにワザと戦力を集め様としたのではないかと思ったのだ。

 現にヴァリムの各方面から援軍が集まり、更に増え続ける。

「はい・・・狙いはサーリットンではないのではないでしょうか」

 その言葉にグリュウは叫んだ。

 「陽動か!」

 すぐさま司令部に伝えようと通信回線を繋ごうとした時、新たな通信が入ってきた。

「姉貴、あとグリュウ隊長! アルサレアが動き出したぜ!」

 ユイの妹のマイである。戦闘狂の彼女は心底嬉しそうである。

 しかし、グリュウとユイは違った。

「遅かったか・・・しかし、奴らの狙いは何処だ?」

 後戻りは出来ないのだ、迫り来るアルサレアに向かって駆け出していった。








 

 この闘いはアルサレアの陽動であった。
 アルサレアは全く別の場所を狙っていたのである。
 そこが歴史の分岐点であった。










 

 第4話に続く


 



 後書き



 毎日書いているたびに花畑が見えたり、天使が舞い降りてきたりと不安定な人生を送ってる神楽歌です。
 第3話は皆様にお借りしたキャラクターを使わせていただきました(感謝)
 ぶっちゃけ言って皆様の考えたイメージと違ってたらマジでスイマセン!(謝)
 そして、未だ登場しないヴァイスとシリアは次で出ます! ケイオウはもう少し待ってください。
 今回は少し架空戦記風に書いて見ましたが(更に調子こいて地図付き)、友人に言わせると「ゾ○ドのバトスト?」と言われてしまいました(悲) 確かにバトスト4に似てますね・・・
 今回の出番になったキャラ達の出番は未だ続きます、少し間が挟まります(次は驚愕の事実が!)が出番は増えます。もうすごい事になる予定です。
 話が無駄に長くなりすぎましたが、次は2月の上旬には書き終わりたいです。
 って言うか、J2がでるまでに終わるのか?
 では、また!





 

 設定集


サーリットン戦線:激戦地です(それだけ)
なお、方面司令部や勢力圏図がコバ小と違うのは私のオリジナル要素ですので信じないで下さい(爆)


サーリットンが焼き払われているわけ:踊る風さんの設定を使わせていただいたからです。
その方が皆様が分かりやすいかなぁ〜と思ったからです。


ジーク・フェルナンデス:我龍様からお借りしました
ヴァリム軍に所属する少尉。ひたすら強くなる事を目指して愛刀「斬烈」を振るいながら戦場を流離っています。戦意のない者に対しては決して刃を向けない。PFの装備とエンブレムから「剣狼」の異名を持つ
愛機はヤシャカスタムでしたが、強引な解釈でキシンカスタムに乗っています。
あと、今回は私の我侭でエクスカリヴァ(試験型)を装備させました。


キシンカスタム:先行量産型キシンをベースに個人調整された機体。本来は別の設定があると思いますが、今回は私の妄想で出しました。


アッサー・ビット・シーレイル:踊る風様から秘密裏に借りました。
ヴァリム軍ガルスキー財団派の少将の近衛兵で大尉。
顔には鉄仮面を被っており、後ろ髪しか見れない。
愛機はヌエカラーのJフェニックス(鹵獲した機体)でカタナ2刀流。
仮面キャラなので強い(ク○ーゼやシャ○の数倍ぐらい)


トキノ エイジ(時乃 鋭慈):桃音様からお借りしました
ミラムーンの中佐。愛機は「鬼哭」
普段は掴み所のない不思議な性格だが戦闘になると見えないが表情までもが変化し鬼の形相になる。
うだつの上がらない軍に見かねて入隊し、途方もない速度で出世し今の階級に至る。
機械工学を習い、さらにPF整備工場で働いていた為PF適正は高く、この時に結婚。
指揮能力にも優れており、オールマイティーハイスペックヒューマン。
本来は上にもいけるが娘と放れたくない為に辞退。
普段はサングラスだが戦闘時は眼鏡。スポーツ刈りを少し伸ばした髪形。


鬼哭(きこく)
(見た目はJファーバルカンそのものだが腕部が太い)

左手   :狩人の皇牙(かりゅうどのおうが)
(Pクロウみたいな武器だが少し細い・突きタイプの兵器)
右手   :鬼王(きおう)
(長さが10メートルはあろうかという斬馬刀)
右肩兵器:火縄銃
(ガトリングより少し威力が強い、連射は少し遅い)
左肩兵器:薬葛篭(くすりつづら)
(HP回復パック)


トキノ トワネ(時乃 永久音):桃音様からお借りしました
ミラムーンの少佐でエイジの妻。
芯が強くて自分の言ったことを今まで一度も曲げたことがない
が!!エイジの言う事は何でも聞いてしまう(笑)
エイジと同じ理由でミラムーン軍に入隊、エイジほどではないが素晴らしいPF操縦適応力を見せる。
トワネも元々PFの整備士であり、整備士のキャリアだけならエイジよりも上である。
エイジに告白したのはトワネの方で告白した理由は
「ただ者でないのは分かってたし何より自分のことを引っ張っていってくれそうだから」である。
結果エイジもトワネのことが好きになりかけていたらしくOKした。
彼女の出世も異例と言われるほどのスピード出世であり、エイジとの階級に大きな差が出ないようにエイジが一つ階級を上げればトワネも一つ階級を上げる、
と言うことをくり返していたらいつの間にか少佐にまで上り詰めていた・・・と言う話である。
娘が生まれてからはPFの戦闘をひかえていた、それと言うのもエイジに「俺がいない間娘を頼む」と言われてしまったためであり、トワネは主に娘と一緒にでも出来る仕事、PF整備、PFの設計を主な仕事としていた。
彼女もオールマイティーハイスペックヒューマンである(爆)
髪型はセミロングのストレート。


レイ・プリムローズ(希望の閃光)
(見た目はイリアに近い、ウイングが装備されている)
右手    :スライスシューター
(腕装備用のスライスカッター、威力は若干向上)
左手    :スピニングチェイサー
(普通のサイズより若干細い西洋剣、軽くて硬い)
肩兵器  :ウイング
内蔵兵器:クロス・ニードル
(極細の長い針を発射する機構)


リアンカ中尉:実は本編キャラ(笑)
13話でハイジャック部隊を率いていた隊長。暇でしたので出しました。


クサナギ:タングラム様からお借りしました。
タングラムさんのミラムーンの狩人に出てきたGF。
圧倒的な火力は勿論、重要箇所である背部と脚部の装甲、そして若干ながら機動力を改造した高性能機で、並みのゼクルヴじゃ足元にも及ばない。
メインカラーは青。
詳しい設定はタングラム様の作品で出ると思いますので、そちらを待っててください(謝)





 

 他にもあるかも知れませんが、その時は感想掲示板でお願いします。


 


 管理人より

 神楽歌さんより第3話をご投稿いただきました!!

 一気に凄い戦闘が行われましたね……(笑)

 それにまさかミラムーンまで囮を務めるとは(爆)

 あちらの戦場もなかなか大変になりそうですが、こちら(サーリットン)も結構大変な状況ですねw

 しかし……まさか、ね(謎)
 


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