不幸続きのエヌス君に光明はあるのか?!








 

機甲兵団Jフェニックス裏史実





 

「Jメガバスター開発物語・戦闘前編」







 

アルサレアの隣国「ミラムーン」の要所の一つ、アーマイル丘陵地の上空を一機の輸送機が飛んでいた。



「じゃあ、作戦に異議は無いわよね。って言うか口答えは許さないわ

 そのブリーフィングルームに集まっていたエヌス、ヨハンス、タケル、エドワード…以下略にシエルは言い放った。





 ちょっと待て!

 いきなり作戦説明を飛ばしたら読者の方々に迷惑だろ!ほら、タケル達も困ってるし。

「それ以前に作戦の説明を聞いていないんですけど?」

「「「うん」」」

 エドの指摘に3人はうなずいた。

 どうやら作戦の説明自体は未だされていないらしい。

「これから説明するんだから当たり前よ。要は口答えするなって事を最初に言っておいただけだから」

 だがシエルは全然関係無しに答えた。しかも眼がマジである。

 口答えするなって、前もって言うものなのか?

 付き合いの長いエヌスが小声でタケル達に付け足した。

「とりあえず了承しといてあげて。ああ言ってるけど、気遣ってくれたり無茶な事は言わないからさ」

 前回の精神的ダメージから回復したらしく、愛ゆえのシエルへの弁護である。

 段々と作者としては本気でどうにかしてあげたくなってきたぞ。




 

 エヌスの小声でのお願いの中でシエルの作戦説明が始まっていた。

「今回の作戦は敵主力部隊への強襲、ガチンコね。敵の規模は一個大隊で、こっちは君ら一個小隊。殲滅するまで撤退は無し。分かった?」

「「「…冗談だろーーー!!!???」」」

 シエルの提示した作戦に3人(エドは除く)は心の底から無茶苦茶だと思った。



 

 アルサレア広しと言えども、そんな芸当はグレンリーダーかケイオウ特尉、あるいはヴァイス大佐ぐらいで、ヴァリムでは黒夜叉に剣狼のジーク、ミラムーンならゴールド・スレイブ級の腕を持っていなければできる筈も無い。

 確かにヨハンスやエド、それにタケルとエヌスは精鋭であるが、それでも無理であろう。



 

「本気かよ?」

「私が冗談を言うように見える?」

 ヨハンスが半信半疑でシエルに聞いたが、答えを聞いて本気だと思った。

「そもそも戦力の2割が撃破されたら撤退するのが普通じゃないのか?」

「だめ。撤退は敵前逃亡罪よ」

 タケルが前に教本で読んだ内容を口にしたが一蹴された。



 ギロッ!



 その瞬間、タケルとヨハンスがエヌスを睨んだ。

 さっきは無茶を言わないと言ったばかりで無茶を言われたのだから当然であろう。

 恐怖を感じたエヌスが申し訳無さそうにシエルに嘆願した。

「頼むから冗談だと言ってよ」

「そう?じゃあ、冗談よ。今のは単なるジョークだしね。本当の作戦は違うから」

 ・・・冗談かい!

 ぜんぜん面白くないジョークだぞ(汗)

 作者が呆れている中でシエルは本当の作戦を説明しだした。

「本当は基地への奇襲が作戦よ」

 本当の作戦を聞いた時、3人(エドは気にしていなかったので除外)は真剣に聞いていた。

 その辺は通常は不真面目でも軍人(タケルはともかく、真面目なヨハンスとエヌスには失礼だろ)なのだ。

 シエルは更に続ける。

「こっちの主力部隊が敵主力と交戦中の隙を突くわけだから敵戦力は低いはずね」

 聞きながら4人は作戦の進め方を頭の中で思案していた。



 アルサレアでは、作戦の目標と大まかな概要を指令として受け取った後は部隊の裁量で判断して行動するのが主流なのだ。



「僕達の他に出る部隊ってあるんですか?」

 エドが不意に思い出した様に言う。

 かなり重要な要素なのだが、いつもは固定メンバーやソロで動いている連中なだけあって忘れていたのだ。

「ちょっと待ってね・・・何でも参謀本部長直属の特務小隊が出るらしいわ」

 その言葉を聞いた4人は期待できると思った。

 アルサレア軍の戦略の方針を決める参謀本部の長の直属部隊である、精鋭と見て間違いないだろう。

「特尉の部隊だったら俺らの出番は無いですね」

 ヨハンスが最もな事を言う。

「案外、俺らの隊長だったりして?」

「それは無いと思うよ、さすがに」

 タケルの言葉にエヌスが突っ込む。

 そういやタケルとエヌスは参謀本部長の直属の特務中隊だって事を忘れてた。

 3人が未だ見ぬ特務小隊に期待をはせている頃、エドが又思い出した用に言う。

「その特務小隊って何処に居るんですか?」

 ボケキャラのエドが真面目に見えてみたぞ。

 おそらく、真面目なはずのヨハンスがタケルとシエルの所為で抑えられているから、その反動でエドが真面目に見えるのだろう。

「何でも陸路で来るから現地で合流らしいわ」

「そうなんですか」

 エドが感心したように言った。

「長くなりすぎたわね。今から30分後に降下地点に着くから各自用意しときなさいよ」

 そう言ってシエルは部屋から出ていった。

 思えば貴女が最初にジョークを言ったから話が長くなったんじゃないか?











 

 輸送機のPF格納庫





 メインジェネレーター・・・OK

 バランサーシステム・・・OK

 WCS・・・ALL GREEN



 コクピットに座ったエヌス達は自分の機体を起動させた。

 第1研究所が総力をあげて作った汎用OSであるから立ち上げも早い。

 いつでも降下を出来ると確認したタケルはオペレーター室に居座ったシエルに通信を送った。

「ちょっと良いか?」

「却下。だめよ」

 タケルの呼びかけはシエルに即却下された。

「・・・」

「で、用件は何?」

 却下しときながら結局は聞くみたいである。

 意地が悪いのかヒネくれているだけなのか分からない人だ。

「何で新型のパイロットがエヌスじゃないんだ」

 気を取り直したタケルは少しだが怒気を含めて言った。

 実はタケルはエヌスがシエルの事を好きという事を理解していたのだ。

 今までに多数の女性に言い寄られながら気付かなかったくせに、他人の事に対しては勘が鋭いようである。

「そうね・・・彼だからよ」

「どういう意味だよ、それ?」

 シエルの意味ありげな言葉が相手ではタケルの(低い)思考能力では理解できないのだろう。

だ・か・ら!彼だからよ」

 シエルは同じ言葉を繰り出す。

「そうなのか・・・もう聞かない事にするぜ」

 遂にタケルの方が折れた。

 が、全然分かっているわけではなかった。

 しかし、通信モニターに映るシエルの顔からエヌスの事を本気で考えていると理解できた。

 話している間に降下地点までの距離が残りわずかという事で通信を切ろうとしたタケルはシエルに対して付け足すように言った。

「俺の個人的な頼みなんだけどさ。あいつの事を頼むわ」

 タケルのお願いにシエルも

「こちらこそ彼を頼むわよ」

 そう言って双方の通信モニターの電源がOFFになった。









 

「何を話してたんだ?」

 通信を切ったタケルに今度はヨハンスが話し掛けてきた。

「ま、上官への陳情ってとこだな」

「なるほど」

 タケルの答えに納得はしなかったが、自分に関係は無いと思って興味を失った。

 そこに乱入者が現われる。

「ヨハンスさんでしたっけ。その新型はどうですか?」

 昨日のウェイトレス服のままのエドである

 何故ウェイトレス服なのかは気にしてはいけない、ただ女装癖は無いと言っておきます

 とにかくエドに急に話し掛けられたヨハンスは調子よく答えた。

「今のところは異常は無いみたいだな。つっても、地面に着くまではオペレータルームにいる主任が機体の操作を遠隔でやってくれるみたいだから、俺の仕事はそれからだし」

 との事である。

「マジかよ、それ?」

 聞いたタケルはエヌスからシエルの性格の概要を聞いたため、正気か?と思った。

 そして、それを遠くから(輸送機内なので、実際は近いです)聞いたエヌスもヨハンスに対して同情の気持ちが少し生まれた。



 

 遠隔でシエルに操作されるPFに乗る。ある意味、GN出力が1000以下で高出力ブースターを装備した違反機に乗る事に等しいものである。



 そんな事を思われているとは露知らずにヨハンスは逆にタケル達に聞き返した。

「そっちの機体はどうなんだ?」

 自分を護衛する機体の状態を知っておく事は正しいのだ。

「俺は何時でもパーペキだ」

「僕の機体も問題は無いね」

 タケルとエドは問題が無いと伝えた、だが。

「エヌスって言ったっけ?そっちは?」

 エヌスだけは報告しなかったのだ。

 ヨハンスに言われたエヌスは思い出したように言う。

「特に問題は無いけど」

 ぶっきらぼうに答えが帰ってきた。

 その言葉にヨハンスは

「なら良いんだけどな」

 そう言いながら苦笑して見せた。同時にエヌスからの通信回線が遮断される。

「悪いな。あいつ、昨日から少し機嫌が斜めになってるみたいだからさ。何時もは良い奴なんだぜ」

 状況を見かねたタケルがヨハンスに謝るように言ってきた。



 昨日、シエルがヨハンスをメガバスターのテストパイロットにすると決めた時から、エヌスはヨハンスに対して敵意に似た物を持っていたのだ。

 まだ酷くは無いものの、いつ暴走するか分からない精神状態の為に注意が必要なのである。



「良いって、良いって。だったら今から仲良くしてきゃ良いだけだし」

 そう言っている間に降下地点に着いた事を知らせる通信が入ってきた。

 そして、輸送機内放送にシエルの声が響く。

「全機発進!」

 その言葉と共に4機のPFが降下していった。











 

 ヒューーーーン!!!ズシィィ―――――ン!

 激しい地響きと風切り音と共にタケルの乗ったJファーカスタムが大地に降り立った。

 そこに続けてエヌスのJファー改とエドのJグラップラーも降り立つ。

 そして

 ヒューーーーーーン!

 最後に降りて来たヨハンスのJメガバスターが

 ドガガッシャーーーーン!

 着地に失敗して転んでしまった。まるでキースである。

「ちッ!着地に失敗しっちまったぜ」

 そう言いながらヨハンスは倒れているJメガバスターを立たせようと操縦した、が。

「な、何!」

 途中まで立ち上がったものの、又も途中で倒れてしまった。

 近くに寄ったタケルとエドは倒れているJメガバスターの手を持って立たせようとした。

「大丈夫か?」

「ああ。一体、何だって操縦桿が効かねぇんだ…」

 機体の操縦桿が余り効かないことに疑問を持ったヨハンスは機体のOSをモニターに映し出す。

 映ったOSのプログラム言語を見た彼は驚いた。

「・・・マジかよ!JファーでもヴァリムのOSでもねぇ?始めて見るタイプだぞ、これ!」

 それなりにPFのOSなどの電子制御系の知識を持っているのなら分かるほど違うらしい。

 そんなヨハンスの驚きにシエルが輸送機から通信で答えてきた。

「あ〜〜、それね。そいつ用に作ってたOSが間に合わなくて…」

 どうやら専用のOSが間に合わないから別ので代用したのであるようだ。

 しかし、何を使った?

「一昨日の夜にやってた鎧核(ヴァリム製3DロボットACTゲーム)ってゲームのデータを入れたのよ」

 ズガガガッシャァァーーーーーーーーーーーーン!!

 ヨハンスだけでなくタケル・エド・エヌスも倒れた。

 いくらOSの開発が間に合わないからってゲームの…しかもヴァリムのゲーム(アルサレア版名はジェイ不死鳥)を入れるか普通?!

 と言うより、ゲームをやる暇があるんなら作れよ!

「何でそんなのを入れるんだ、シエル!」

「面白そうだからに決まってるじゃない」

 エヌスのツッコミにシエルは当然と言った感じで言い返した。

「普通のOSは使えないのか?」

 ようやく回復したヨハンスが聞いてきた。

「一応、専用のOSは98%まで出来てるわ」

 だったら、そっちを入れろよ!

 シエルの返答に周りは本気で思った。

 98%も出来ているのなら、後はヨハンスの腕でカバーできる。

「しょうが無い人達ね…すぐ入れるから待ってなさい」

 しょうが無いのはどっちだ!

 そう言いながらシエルは通信を切った。

 呆然としながら待つこと30秒・・・

「出来たわよ」

 はやっ!

 ダウンロードの時間が本当に早い。

 その力を真面目に使う気は無いのか?(まず無い)







 

「でも、残りの2%って何が問題なんですか?」

 エドは歩きながら思い出した用に言った。

 彼等は特務小隊と合流する為に目標基地の近くの合流地点まで歩いているのだ。

「そ・・・それは」

 聞かれたシエルは急に口ごもってしまった。いや、微妙にエヌスの顔を見ている。

「・・・メガバスター砲とHMが使えねぇんだな、こりゃ」

 機体をチェックしたヨハンスが冷静に説明した。

「だって仕方なかったじゃないの!」

 まさかゲームの所為で遅れたなんて、調整してくれたエヌスに恥ずかしくて言える訳無い。

 まして、自分の所為で彼の自信作が使用不能な機体に乗せたくない。

 だったら、完成したら乗せれば良いし、それまでは彼よりも遥かに腕の立つパイロットを乗せた方が良いと思ったからだ

 ある意味でエヌスへの愛の行動だった(ヨハンス、ヨニカさん、こんな理由になってスイマセンでした)

「まぁ、俺としては新しい機体に乗れるだけあって嬉しいがな」

「シエル・・・気にすること無いのに」

 ヨハンスとエヌスが慰めるように言った。



 ヨハンスは元来の人の良さ。

 エヌスは珍しく責任感を感じているシエルを見て。

 怒る気は無かったようだ。



「そう?じゃあ、さっさと合流しなさい」

 一瞬でシエルは切り替わった。

 ・・・切り替わり早ッ!

 同情するようにヨハンスがエヌスに言う

「ツライかもしれんが、頑張れ」

「そちらこそ頑張ってください・・・」

 同じくエヌスも励ますように言う。

 エヌスには当初の恨みはなくなっており、本気で被害者となってきたヨハンスに友情のような物を感じてきていた。

 雨降って地固まるとはこの事だろう(そんな大そうな物ではない)



 

 そして、忘れられていたエドとタケルは・・・

「若いってのは良いですね〜」

「俺らも若いけどな・・・」

 エドの呑気な言葉にタケルは突っ込むように答える。

「人間関係、特に恋愛は大事だからね」

「俺は恋愛恐怖症になりそうなんだけど」

 現在の所、タケルは元の故郷と惑星J・その他で合計15名の女性に言い寄られて、未だに答えを出せないでいたのだ

「はははははは」

「笑い事じゃないんだけどな」

 そんな会話の為に作者が書き忘れていたのだった。













 

 目標基地の近くの合流地点

 友情を暖めたり、人生に対しての絶望を味わい(?)ながらヨハンス達は合流地点に着いた。

 ここで参謀本部長の直属部隊と合流する手はずになっている。

 しかし、

「だ〜〜〜れも、来てませんね〜〜〜」

 エドののほほんとした声が場に居た全員の心の代弁だった。

 不意のトラブルに対応する為に予定よりも早く集合するのが普通である。

 ヨハンス達は先のトラブルの所為で合流時間ギリギリになってしまったのだが、噂の特務小隊も未だに来ていなかったのだ。

「案外近くに隠れてんじゃねぇのか?」

 部隊が強いのならば有り得るのだろう。

 その期待を裏切るかのように走ってくるPFがレーダーに映った。

「遅刻かよ・・・」

 ヨハンスが呆れるように言った。

「そうだな・・・マジ?!」

 肯定したタケルはレーダーで機種と部隊名を調べようとしてモニターに映ったPFを見た時、驚く。

 そして接近と同時に全方位回線でヨハンス達に特務小隊の会話が流れてきた。



 

「ようやく着いたわね」

「早くお兄ちゃんに会いたいわ」

「嘘っぱちだったらお金取るよ!」

「静かにせんか!グレンリーダー様に見られたら恥ずかしいだろうが!」

 ピンク色のJフェニックスである。

 援軍とは「デストロイド・カルテッド」「暴走姉妹」の異名を持つ非公認(本人に)グレンリーダー親衛隊「LIPS小隊」であった。

 彼女達の少数の活躍と大量の被害を知っていたタケルは呆然としてしまった。

 そんなタケルを無視してLIPSのセリナはヨハンスを隊長機と判断して通信を送ってきた。

「貴方が隊長ですね。私はLIPS小隊の代表のセリナです」

「自分はヨハンス・フォスト・グリフィスです。よろしくお願いします」

 セリナの普通の挨拶にヨハンスは丁寧に返答する。

 この辺は部隊内で一番まともな人だから適任だったのだろう。

 そんな中で通信に割り込んできた人物が居た。

「そんな事よりグレンリーダー様は何処よ!言わないんだったら100万ギャラ払いなさいよ!」

 言うまでも無くプリスである。

 幼女としか言えない少女に居ない人物の事や金銭要求(こちらの方が驚いた)をされてヨハンスは何を言っているのか解らなかった。

「この馬鹿者!私だって知りたいのを抑えて話してるんだぞ!」

 先程の挨拶はグレンリーダーの事だけを考えて居た為に言葉に飾りが無かったようである。

「あの、グレンリーダーがどうしたんですか?」

 そもそも居ない筈のグレンリーダーを捜していると聞いて不審に思ったエヌスは話に混ざっていないJP1号機(リサ・イズミ搭乗)に話し掛けた。

「お兄ちゃんを呼び捨てにしないで!」

「上の言葉は無視してと。ここでグレンリーダー様が戦闘をするって聞いたからお手伝いに来たんですよ」

 イズミが何か言っていたが、リサは一蹴して自分達が来た理由を話し出した。

「え?でも、グレンリーダーって今は・・・」

 ブツッ!

 立ち直ったタケルがグレンリーダーは現在はサーリットン戦線で激戦を繰り広げている事を伝えようとした時、急にタケルの通信システムがフリーズした。

 代わりにシエルが混じってくる。

「グレンリーダーだったら、今から攻める基地に反対側の方から進軍する事になっているみたいよ」

 完全なウソである。

 そもそもグレンリーダーの進撃地点は機密事項に近いのだ。タケルが知っているのは彼らの所属部隊が参謀本部所属である事と、指揮小隊の面々がグレンリーダーとの面識がそれなりにあるからであった。

 それは置いておいて、そんなウソを間に受けたLIPS小隊の面々は反対側に向かおうと動き出そうとした。

 そこにシエルがウソを続ける。

「行くのは勝手だけどさ。命令無視をした人達にどんな顔をするのかしらね、彼?」

 シエルの一言を聞いたLIPSは即座に動きを止めた。

 恐るべしシエル!あのLIPSすら手玉に取るとは!

 実はフェンナ経由でシエルはLIPS小隊が向かう事と彼女達がグレンリーダーラブであり、作戦通りに彼女たちを動かすように頼まれていたのだ。

「さあ!とっとと終わらせてグレンリーダー様に会うわよ!」

「「「了解」」」

 セリナの号令に3人娘は高々と返事をした。

 そんな様子を見てエドが

「面白い人達ですね〜」

「大丈夫なのか、この戦闘?」

 エヌスが呆れながら不安になった。

 本当に大丈夫なのか?











 

 それから3分後



 

 ヨハンス達とLIPSが漫才を終わらせて3分ほど経った時、その遥か後方にて待機していたアルサレア軍主力部隊が動き出した。

「こちらシエル。全員聞こえる?」

 無論、上空の輸送機のオペレータールームから通信を送っているのだから聞こえるのは当然である。

「こっちは全機がOKだ」

「こちらも問題は無いです」

 ヨハンス達「テスト小隊」と「LIPS小隊」から何時でも行けるという返答が返ってきた。

「後10分ぐらいで主力部隊と敵の部隊・・・フェンリル師団第3大隊がぶつかるわ。激突後に基地に奇襲、いいわね!」

 シエルの確認に誰も返事はしなかった。

 戦場に馴れていても、攻撃を待って待機している時間は誰でも緊張するものだ。







 

 7分経過



 普通に過ごすのならば7分などは苦でもない。

 しかし、現状が現状であるからタケルは7分が30分に感じていた。

(やっぱ、この瞬間が一番緊張するよな〜)

 だが、それと同時に不思議な高揚間も沸いてくるのである。

 だが、あくまで冷静だ。戦闘に必要な精神は氷の冷静さと焔のような攻撃性であるからだ。

 そんな中でタケルの目に厄介な事が映し出された。

 見るとLIPS小隊の2号機が飛び出しているのである!

「にゃははははは!!!ファーストルック、ファーストキルなのだぁ!」

 プリスの大声と共にJフェニックス2号機が飛び上がった。

「あーー!ずるーーーい!!」

 それに続いて1号機も飛び上がる。見事な作戦無視だった。







 

「ち!厄介な事をやってくれるね」

 エヌスは舌打ちしながらLIPSの行動を非難した。

「よりによって空を飛ぶかよ!」

 タケルも続く。

 彼等は時間を早めて飛び出した事に対しては余り面倒に思っていない。

 しかし、飛び上がっていった事が問題なのだ。



 

 アーマイル丘陵地は多数の山と崖に囲まれた地域である。

 故に陸上兵器の進軍が阻害され、また基地のレーダーも阻害されてしまうのだ。

 そうなると進軍する側も基地のほうも空に目をつけるのは当然である。

 陸を行くより空を飛んでいった方が遥かに効率的なのだ。

 だから、基地の方も対地よりも対空設備が整っている。

 大部隊の強襲ならば数を多く見せる為に有効だが、隠密が原則の奇襲では陸をいくべきだったのだ。





 

 LIPSの行動は本当に失敗のようだった。

 即座に基地に発見されてしまい、馬鹿みたいな数の対空火器の出迎えを受けてしまった。

「エヌス!ヨハンス!俺とエドで救助に行くから撃ちまくってくれ!」

「「わかった!!」」

 タケルの提案にヨハンスもエヌスも即座に肯定する。

 ヨハンスのJメガバスターの両腕に装着されたVシールドが可変してガドリング砲になる。

「そらよ!」

 基地から少し離れた距離に布陣したヨハンスはLIPS小隊に向かって撃ちだされた対空ミサイルを肩のミサイルショットとカウンターリングで次々と無効化し、さらにガドリングの掃射で基地に配備された4足歩行戦車達を撃破した。

 その隣に布陣しているエヌスも負けて入られないと言わんばかりに両肩のキャノンの発射態勢になる。

「距離805!座標・・・48、39、21、97!」

 エヌスが小さい声を出すたびにモニターに映る基地防衛施設がロックされていく。

「秘儀、一人CB一斉射撃!」

 意味不明の叫びと同時に両腕のMガントレットから76m誘導弾と、両肩のキャノンから105m砲弾が轟音を放ちながら飛翔していった。

 ズドン!ズガン!ズダダダァァーーン!

 撃つ側としては心地良い響きを発しながら爆発がいたる所から発生した。

 一瞬だが基地の対空攻撃が止む。





 

「おい!下がれ!」

 ヨハンスとエヌスが作った一瞬の隙を突いてタケルは先行していたLIPSの2機に接近した。

 今は良いが、何時に敵の迎撃部隊が出撃して来るか分からないのだから、無闇に戦力の分散は避けたい所である。

きゃぁぁぁーーー!私のフェニックスに傷がぁーー!」

うるさいなーー!こんな雑魚達なんてプリスにかかればイチコロなのよ!」

 リサの発言を無視してプリスはタケルの発言を否定する。

「私達の実力を舐めないで欲しいものだな!」

 セリナは言い放って機体を更に前進させた。



 彼女達が多少の戦果を上げているのはJフェニックスの性能による物なのが真実である。

 しかし、Jフェニックスが配備された事と自分達を超過大評価している彼女達は自分の実力はアルサレアトップクラスと思っていたのだ。



 

「な!?んなこと言ってる場合か!」

 他にもタケルは何かを言いたかったが基地から発進してきたロキ部隊の砲撃に邪魔された。

 LIPSの動きは過大評価しても「下の中」であり、未だに撃破されないのはヨハンスとタケルの支援の賜物であった。

 言い方を変えればタケルやヨハンス達を撃破すれば簡単にLIPS小隊を捕獲する事が出来る事になる。

 人員はどうでも良いが、機体は鹵獲する価値が高いのだ。

 そんな理由で基地に肉薄していたタケルに敵が殺到するのは必然の出来事である。

「・・・マジィぜ!」

 状況が悪化した事を感じたタケルは前進していたLIPSを見た。

 彼女達の射撃は素人と変わりなく、機動も幼稚すぎる。

 はっきり言って援護を頼んでも無駄にしか思えない。

 カタナを振りかぶって近付いてきたロキ×2をアサシンファングで一気に吹き飛ばす。

 しかし数が多い。

 アサシンファングの硬直時間を狙うかのようにロキ1機がタケルの後方に回り込んだ。

「チッキショォォーーー!!」

 自分がやられたと思って断末魔の叫びをあげる。

 バガァァーーン!

 しかし、謎の轟音がした後、自分が死んでいないことに気付いた。

「タケルぅ〜。大丈夫〜?」

 エドの乗ったJグラップラーが後ろに居た。

 彼は何時も良い所を持って行く。エドがロキを撃破したのだろう。

「サンキュ」

「それよりさ、上から敵の変態(エドの誤字)が近付いてるよ」

 編隊を変態と説くとはやるな、エド!

 そんな事より上空からカルラ部隊が接近してきた。

「こいつ等は俺が片すから、他をどうにかしといてくれ!」

「お〜け〜!」

 エドの返事を聞くと同時に、タケルは両肩のウイングを広げて飛翔した。






 

 基地で2人(LIPSは戦力的に低いのでエドとタケルのみ)が大暴れしている頃、基地後方で遠距離支援をしていたヨハンス達にも転機が来た。

「ち!あいつ等が邪魔で、射線が取れねぇ!」

 ヨハンスが悪態をついたのは又してもLIPSだった。

 基地の中心部まで突き進んだLIPSだったが敵の砲火の前を回避するのに精一杯の状態となり、はっきり言って邪魔にしかなっていない。

 今のところヨハンスは彼女達に当てていない、読者の大半の人達はLIPSに直撃が来るのを待ち望んでいるのだが(まて)

「こちらエド。格納庫を発見したよ」

 エドが又しても良い所を持って行く。

 奇襲によって基地の防衛部隊の大半は未だに格納庫で出撃待ちの状態なのだ。

 そこさえ破壊すれば状況は一気にアルサレアへ傾く。

 しかし、

「・・・ヨハンス!そっちから撃てない?こっちは射線が取れない!」

 エヌスから通信が入ってきた。

 エヌスの現在位置は残骸や他の施設が邪魔で砲撃出来ない位置なのだ。一応は移動しているが何時残りの敵が出てくるか分からないのだから即破壊しなければならない。

「こっちもだ!LIPS隊が邪魔で撃てねぇ」

 実はLIPSが現在足止めされている場所は格納庫の目の前だった。

 無闇に撃てば彼女達に被弾するだけでなく、下手すると誘爆で巻き添えを喰らうかもしれない。

「こちらヨハンス。LIPS小隊、援護するから格納庫を破壊してくれ!」

 ヨハンスは迷わずに叫んだ。

「お兄ちゃーーーーーん!!」

「だぁぁーーーー!!うるさい、うるさい!」

「グレンリーダーさまーーーーー!」

 謎の雄叫びばかり上げていて全然聞いていない。

 こいつ等を参加させたのは何処のどいつだ?

 彼女達が居ない方が成功率が上がる気もしてきた。

「構わないから撃ちなさい!」

 どうやってLIPSに格納庫破壊を伝えるか迷っていたヨハンスにオペレータールームにいたシエルから予想もしなかった命令が来た。

 敵を味方ごと撃ってしまう事が多いヨハンスだったが本人はワザと撃っているわけでない。

 だが、彼女は自分から巻き込んで破壊しろと言っているのだ。

 彼女は此処にいる面子の中で一番軍人らしいのか?



 

「味方ごと撃つなって無理だ!まして女性なんだぞ!」

 ヨハンスから返って来た返答を聞いたシエルは即座に通信を切った。

「仕方ないわねぇ」

 独り言のように言うと猛スピードでキーボードを叩く。

「・・・操縦不能!?」

 急にJメガバスターが自分の操縦を受け付けなくなった事にヨハンスは驚いた。

 それだけでは無い。機体が勝手に動き出したのだ。

「攻撃目標・・・格納庫!?」

 彼の手を離れてJメガバスターは勝手に攻撃態勢に入っていた。

 そして・・・

 ズダダッダッダッダッ!ビュォオン!!

 両腕のガドリング、それにメインパーツに装備されていたハイドロブラストが火を噴いた。

 さらに移動していたエヌスのJファーも一斉射撃をしており、よく見るとタケルやエドも砲撃を集中させている。

 部隊ごと機体が暴走しているのだ。


 ボギャァァーーーーーン!!!!!!

 

「お兄ちゃーーーーーーん!」

「グレンリーダー様ァァァァ!!」

「グレンリーダー様に栄光あれぇぇーーー!」

「私のJフェニックスゥゥーーーー!!!」



 

 格納庫が破壊されると同時にLIPS小隊機も巻き込まれた。

 謎の断末魔を上げながら機体が戦闘不能になったようだ。

「あら、生きてるの?」

 シエルは残念そうに言う。

 テスト小隊の機体は暴走しているのではなく、全てシエルが遠隔操作をしたのだ。

 Jメガバスターだけでなく本当は部隊機の全てに遠隔操作は施されていた。



「これじゃ報酬は入んないわね」



 余談ではあるが、アルサレアの一部の将校や指揮官達に「戦闘中にLIPSを事故に見せかけて消せ」と言う指令が某オペレーターと特務小隊パイロットより発せられていた。

 報酬が高いので一部の者達は狙っており、噂を聞いたシエルも該当していたのだ。



 

「もう少しで陥落できるな」

 基地上空でカルラ部隊を撃破したタケルはしみじみと言った。

 上空から見た限りでは基地の施設が少し残っているだけで機動戦力は存在しない。

 格納庫と共に失ったのだから当然だ。

「終わったら飲みに行くか?」

 敵の残りを掃討していたヨハンスが答える。

「良いかもね」

 エヌスも賛成した。

 もう何も言わん!

 ともかく、基地は陥落したも同然になっていた。









 

 後編に続く




 


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