お読みになる前に:この作品は、あくまでJメガバスターの開発物語です。
断じて「エヌス君、不幸日記」や「シエルのエヌス虐め日記」ではないです(多分)
アルサレアとヴァリムの国境の一つ
アルサレアとヴァリムの国境を走っている人影があった。
ズシィィーーーン!ズシィィーーーーン!
いや、サイズが全然大きいし肩にキャノンを背負っている、さらに速度も時速135kmと足で走る速度としては速い。(と言うレベルではない)
何より人間とは一言も言っていない(あくまで人影)
その人影の正体はアルサレア軍の現主力PF「Jファー」であった。(ただ、完全規格ではなくて両肩にキャノンと両腕にMガントレットを装備)
「情報だと、この辺だったかな?」
そのJファーのコクピットに座っているエヌスは周りに人が居ないのに、誰かに確かめるように言った。
「その辺を少し捜すしかないのかな…」
念の為に言っておきますが、エヌス君は別に「見えない世界の住人と話す趣味」や「○が見える霊○者」では無いです。
ただ単に気分が彼にそうさせているだけです。
作者の無用な解説が囁かれている中、エヌスのJファーにレーザーや機銃弾が飛んできた。
ヒュン!ズダダダッ!
「敵!奴か!?」
エヌスはレーザーや機銃弾を愛機の高い機動力で回避すると、自分に攻撃を仕掛けてきた敵を確認した。
「敵はイリアが2機に…ヌエが2機か」
確認し終えた時、エヌスの声のトーンが落ちた。どことなく残念そうな声である。
「敵は一匹。昇進のチャンス!」
「アルサレアごときがぁぁーー!」
イリアとヌエが何時ものセリフを叫びながら射撃武器で攻撃を再開してきた。
複数対単数の戦いでは格闘攻撃よりも距離をとった射撃攻撃の方が同士討ちや各個撃破の心配が少なく有効だった。
「あのさぁ、君たちには用は無いんだ。邪魔しないでくれません?」
そう言ってJファーの加速ペダルを全開に踏み込んだ。
エヌスも高速戦闘隊である「閃光の爪隊」の一員である。彼のJファーも高速仕様の改修が行なわれていた。
「は、早い!」
イリアのパイロットが驚愕の声を上げた。
エヌスのJファーはイリアより速い速度で至近距離に接近すると、両肩に装着されたキャノンを発射した。
ズドォォン!
その火薬が燃焼して砲弾が射出される音はエヌスにとってタバコの一腹に近い物である。
そんなエヌスの感情とは裏腹に、キャノンの直撃を受けたイリアは洒落になっていない。
彼等はサブマシンガンやバルカンなどの近距離射撃武器が最大の効力を発揮できる距離で撃たれたのだから回避も出来ずに爆砕されたからだ。
「こ…こいつ強いぞ!」
残った2機のヌエは目の前の敵が意外に強い事を悟り逃走しようとした、が。
「とりあえず追撃はかけなきゃかな?」
そう言いながら追撃する。
高速仕様に改造されたJファーにヌエが逃げられる筈もない、すぐに追いつかれてキャノンの餌食になった。
「結局は居なかったか…」
1個小隊をあっさりと壊滅させて予定通りに捜索活動に入ったが、エヌスは目的の物が見つからなかった事を確認するように言った。
「あの神楽歌って言う情報屋の話だと、この辺に出たらしいんだけどね?」
エヌスの言った「神楽歌」とは閃光の爪隊の隊長であるケンが昔から利用してきた情報屋の事で、閃光の爪隊の人員が度々利用している。
詳細は不明だが、神楽歌という名の謎の人物を中心とした情報組織であり、アルサレアやヴァリム、ミラムーン内にかなりの情報収集用パイプを持っている怪しい会社であった。
そして、ただ解っている事はケンが言うに「閃光の爪隊の中に神楽歌(人物の方)に親しい奴が居る」だそうである。
口では半信半疑であったが、今までの情報の正しさから結構信じている。
エヌスはJファーの向きを変えると走り出した。
「次はアーマイル丘陵地か〜」
次の予想地点に向けて走っていったようだ。
一体…シエルに耳打ちされた内容とは何なんだろうか?
エヌスがシエルの為に働いている頃、シエルも真面目に働いていた(と思う?)
なぜ「と思う」かと言うと…
「フフフフフフフフフ…」
電気も点けていない部屋で微笑を浮かべながらパソコンとにらめっこをしているのだから?が付いているのだ。
パソコンの画面には幾つもの文字とパイプのような物の絵が映し出されている。
「次は右行って、そんでタワーを書いて箒っと」
ゲームをやっているにしては画像に面白みが無い。
だがOSなどのプログラムを作っている様には見えない。
「所詮は彼女達もこの程度ね…フフフフフ」
下手に子供に見せたらトラウマとなって将来に悪影響を及ぼすような微笑である。
エヌスへの命令といい、彼女が今行やっている事は一体なんだろう?
(Jメガバスターの開発だろ?)
そんな訳で3日間経過
ガショォン!ガショォン!
Jファーの歩行音が聞こえる…まだエヌスは走っていた。
この1週間の間にアーマイルに行ったり、ザーリトンに行ったりとアルサレアやヴァリムを駆け巡っていたのだ。
ここまでシエルに尽くすのだから、何かご褒美を上げたくなってきたぞ。
「お…お腹空いた〜」
作者の考えとは裏腹にエヌスは空腹に喘いでいた。
彼の命令は難度の高さに対して、シエルに「期限は5日間」と言われ(命令)ていたので補給する時間がゼロに等しく燃料や弾薬、予備部品交換しか出来なかった。
「ひもじぃ…ほんとにヒモジィよ」
と言う訳で食料が尽きるには時間が掛からなかったので空腹に喘いでいる。
「でも、シエルも頑張っているんだから僕も諦める訳にはいかないんだ!」
だが、エヌスは研究所で頑張っているシエルを想像するとやる気を取り戻したように表情を引き締めた。
「愛は強し」とはこの事だろう。
頑張れエヌス!作者は君の味方だ(多分)
その頃、第6研究所
「この霜降り肉は活けるわね!」
「他にもカルビやタンも有るから存分に食べなさい」
シエルはバッカス所長や某ドラ○もん体系の男性と焼肉を食べていた。
「あ、ホントに美味しいですね。口の中で溶ける様な味がします」
「どんどん焼き上がるから遠慮しないで良いゾイ」
アルサレア軍でトップクラスの砲撃技術を持つギブソンが焼肉奉行をしていた。
ギブソンが居る理由は突っ込まないで下さい。
そんな中でシエルは何処からか一升瓶を取り出した。
「この将軍殺しって酒は活けますわ」
そして3人分のコップに注ぎ始めた。
「ホントに活けるのぉ〜」
バッカスは美味しそうに飲み干した。
「焼けたゾイ!」
ギブソンは焼けた肉を皿に盛り付けていく。
エヌス…哀れすぎるぞ
さらに4日間が経過
「ただいまぁ〜」
シエルの研究室にエヌスが2週間ぶりに入ってきた。
つまり1週間の間、ずっとJファーで走り回っていたという事になる。
「遅いわよ。2日の遅刻ね」
シエルはねぎらいの言葉よりも文句の言葉を口にした。
普通の人だったら逆に文句を言い返すがエヌスは違う。
「何度も見つかったんだけど、目的の部分が中々見つからなくてね。ご免!」
申し訳無さそうにシエルに謝った。
しかし、
「良いのよ。遅いと言っただけで怒ってもいないし、感謝はしているから」
シエルの顔は笑っており、本当に怒っていないようだ。
先の発言も現状を報告しただけでエヌスを咎める為に言ったわけではない。
この辺はシエルのエヌスに対する信頼と秘めたる感情ゆえにだろう。
「そう言ってもらえると僕も報われるよ」
エヌスも笑顔になった。
そのまま3分もの間、ずっと2人で微笑みあいながら見つめあっていた。
「で、荷物は?」
モテナイ男の妬みなのか作者の意向で静寂は破られた。
建前は話が進まないからなのだが。
「格納庫に置いてあるよ。そっちは?」
「こっちは足以外は組み上げ済みよ」
シエルは何時もの偉そうな表情になると即答した。
エヌスも気を引き締めて考えながら言った。
「じゃあ、僕が取ってきた物の調整だけで終わり?」
自分が1週間も賭けて見つけ出した物が最後のピースになると分かり嬉しくなった様だ。
「そうね。とっとと終わらせるわよ!」
「おおぉ〜!」
エヌスは2週間前と違い、やる気に満ちた声を上げていた。
格納庫
「これがアシュラのレッグパーツね。本当に良くやったわ」
エヌスが回収して来た部品を見て、シエルは満足そうに言った。
シエルは新型機の開発に当たり、他のアルサレア軍の機体には採用されていないアシュラのレッグパーツを使おうと判断したのだ。
つまり、エヌスがシエルに命令させられて捜していた物とはアシュラのレッグパーツであった。
戦争によってPFが大量生産されているから回収する事は簡単に思えるがアシュラの場合はそうではない。
実際、アシュラの生産台数は少ないのである。
アシュラは攻撃能力強化型として開発されたが、生産性の低いヤシャをベースにしてしまったために生産性が極端に悪い。
加えて、この時期のヴァリム軍の主力はゾックス・アインハルト社製のロキとヴェタールに移されており、ライバル会社のジャポネクル製のアシュラのラインは狭かったのだ。
高い情報力を持っている神楽歌の情報によって何度か探し当てたが、至近距離からのキャノン攻撃で完全に破壊する事が多く、それによって回収作業が遅れたのも事実ではあった。
「でも、何でこれなの。砲撃戦ならJブラスター辺りが良いんじゃない?」
エヌスは誰もが持つ疑問を口にした。
確かにアシュラレッグにする理由がわからない。
むしろ、Jブラスター辺りで手を打つ方がデータも揃っているのだから効率的なはずだ。
その質問にシエルは教師のような態度で解説し始めた。
「それはね、Jブラスターレッグだとエネルギー消費が大きすぎるからよ。あそこまで多いと頭部のビームを撃つのに支障が出るわ。」
これは本当である。
JブラスターレッグのEP消費は従来機の倍に近いのだ、高い防御力と積載量でJファーカスタム並の機動力を維持しようとした代償である。
「後、ビームの反動に耐えられるグリップ力を持たせる必要があるんだけどね。Jブラスターじゃ重すぎて、無理に改良したら性能を落しかねないの」
これも事実で、Jブラスターのグリップ力は高いとは言えない。
ブースターのフォローで高旋回性を確保しているが、無理に機能を追加すればバランスが崩れてしまう可能性もある。
加えて重量が重過ぎるため(Jブラスターレッグ<1570、タルカスレッグ<942)改造次第では低い機動力が更に絶望的になりかねないのだった。
「でもアシュラレッグなら軽量級(487)の割にフレームがしっかりしているから改良しやすいしの。旋回性も高いからグリップ力を強化すればビームの反動に対応できる、わかった?」
自分の考えを一通り説明し終えたシエルは期待した眼をエヌスに送った。
なんだかんだ言って、助手であるエヌスの考えも大事だと思っているようだ。
それに気付いたのかエヌスは昔の事を思い出したように言った。
「確かにね。だったら君が前に作ったJキャノンは?あれだったらデータも豊富だから悪くないと思うんだけど?」
エヌスは不思議そうに思って言うがシエルは簡単そうに答える。
「Jキャノンは元々Jファーを改造した機体なのは知ってるよね。Jファーがベースなだけあってアレが限界なのよ。それよりもアシュラって機体は改造すれば高いポテンシャルを確保できると思うわ」
そこまで言いながらシエルは付け足す。
「下手するとヴァリムも其処に気付いて作ってくるかもしれない。だったら、その前にデータを取っておくのも悪くないでしょ」
余談では有るがシエルの展望は的中し、アルサレア要塞攻防戦においてアシュラを改良したレッグを持っている新型機「キシン」や「オニ」が主力となったと後の歴史が語る。
そこまで説明されればエヌスも反論する理由も無い。
「そこまで考えてたんだ。凄いね!」
とエヌスは心の底から尊敬した。
「当たり前よ。私を誰だと持ってるの?」
シエル・マキナ女史だろ?
そんな事は知ってるって(おい)
作者の意味の無いツッコミを無視してエヌスはレッグ以外の完成した新JX‐009を観察していた。
「ふ〜〜〜ん、右肩にはミサイルショットか…あれ?」
注意深く観察していたエヌスは機体に始めて見る武装が付いている事に気付いた。
「ねぇ。あの左肩のレドームってレーダーなの?」
エヌスは左肩に付いているレーダーの様な物を見て疑問を思った。
エヌスが何故レーダーと思ったのかと言うと、遠距離砲撃機ならばレーダーによる観測も命中率に大きく作用するからである。
そして何より形がレーダーに見えるからだ。
しかしシエルの回答は全く予想外の物だった。
「あれ?あれはカウンターリングって言って、敵のミサイルの目標をハッキングで撃った本人に変更する電波兵器よ」
シエルの言った内容にエヌスは更に驚愕してた。
「凄いよ、それ!あの大型機(ゼクルヴ)のミサイルを逆手に取るなんて」
砲撃のメインがミサイルであるゼクルヴにとってカウンターリングは天敵に近いものであろう。
なにせ自慢である圧倒的火力が使えなくなるのだからゼクルブにとって嫌な事この上ない。
「でも、6研が電波兵器を作ってたなんて初耳だね」
エヌスの意見通り、電波兵器や内部破壊兵器等の主な開発先は7研がメインである。
対して6研はキャノンやバズーカなどの火砲が主な開発物であるのだから、急に電波兵器を作れば驚かれるのも無理はない。
しかし、それが本当ならばではある。
「残念だけど作ったのは私じゃないのよね。それって7研のサチコ主任が作ってたから、6日前に設計図をハッキングして作ったのよ」
おい!それって盗作だろ!
あっさりと恐ろしい事を口にしたシエルにエヌスは混乱した。
「ば、ばれたらどうするの?!」
エヌスは本気で不味いと思った。
同じ国に所属しているからと言ってハッキングしてデータを盗んだら捕まるのは当然である。
だがシエルは更に恐ろしい事を口にした。
「それと機体の防御力が低かったからシールドを装備したんだけどね」
そう言いながら両手に持っているVシールドを指差す。
「シードラボで実験中だったガドリングユニットのデータも組み込んでいるから火力も大きく出来たわ」
そういう問題じゃないだろ!(作者とエヌスの心の叫び)
他人のデータ、しかもライバルと見なしているサチコとリーネの所から盗んでくるなんて誰が想像できようか。
エヌスは戦慄していた。
それでも少しは正気を取り戻せたのか恐る恐るシエルに警告と中止を進言しようとする。
「でも、やっぱり不味いよ。下手すると捕まって…」
そこまで言っている最中にシエルは自分の指をエヌスの口にあてて発言を閉じさせながら、聞いた者を精神崩壊させるような事を口にした。
「大丈夫よ。ちゃんと彼女達のデータベースからカウンターリングとVシールド・ガドリングのデータを削除したから」
つまり、最初から自分が開発した物にするつもりであった事になる。
って言うか、そっちの方がもっとヤバイと思う。
すでにエヌスに反論やシエルを抑制発言をする気力や体力は無くなっていたのだった。
何かこればっかだけど、さらに1週間が経過
この一週間の間、シエルの犯罪発言から正気を取り戻せたエヌスはシエルと共に新型機の調整に励んでいた。
機体本体が出来てもオートバランサーを調整しなければ真っ直ぐ立つ事も出来ないし、メインパーツと他のパーツを連結するジョイントを調整しなければ腕や足などが飾りとなってしまうからだ。
と言ってもエヌスにOSなどの開発が出来るわけも無い。
その代わりに機体の機動テストや、この機体の主賓とも言うべき頭部収束ビーム砲「メガバスター」の調整を行なっていた。その点に関してはPFや大砲を扱う職業だけあって適材適所なのだろう。
そんなこんなで、遂に彼らの開発していた試作No、JX−009は晴れて正式ナンバーであるAPF−015と受け取り、この機体の象徴である頭部ビーム砲を名称とした「Jメガバスター」として完成したのだった。
「やっと…終わったぁぁーーーー!!」
開発していた機体が遂に完成した事でエヌスは心の底から嬉しがった。
この研究所に来てから2週間と少しの間だっただが、1年近く働かされたような気分に陥っていた気がしてきたぐらいなのだ。それが終了したのだから嬉しくなるのは当然だろう。
「気が早いわよ、エヌス。後は実戦試験が残っているんだからね」
そうである。
いくら試験場でデータを取っていても実戦に出て見なければ発見できない事がある。
最前線での機体の整備維持や特殊環境で不具合が出ないかなど重要な事柄が多い。
それでも、それさえ無事に終われば完全に完成となる、彼女の声も弾んでいた。
「ねぇ、エヌス。前祝に何か食べに行かない?」
「いいね、それ。早速行こっか?」
シエルの提案にエヌスは肯定の意をあらわした。反対する気もないし、そもそもエヌスがシエルに逆らえることは出来るわけない。
二人は着替えに部屋を出ていった。
とある食事屋。
「ここなの?」
シエルに連れられてきた店に入ったエヌスは目を疑った。
シエルの給料は研究所の主任だけあって高い。
エヌスと比べると3倍近い開きがあるのだ。
だから、それなりに高そうなレストランだと思っていたのだが…
「いらっしゃいませー!何名様ですか?」
「2名です」
「2名様ですね。あちらの席へどうぞ」
アルサレア国内でも有名なラーメンのチェーン店だった。
それも中華ソバが390円の格安さで有名な店である。
「…ここってラーメン屋だよね?」
「そうよ。ピザ屋に見えるの?」
エヌスの最終確認の問にシエルは残酷な回答をだした。
感じの良いレストランならばムードも盛り上がって、今まで言えなかった事が言えるのではないかと期待していたのに、オチがこれである。
(恨むよ、ヘボ能無し作者!)
心の底から作者に対する恨みの呪詛を心の中で罵った。
そこまで酷く言わなくても…(作者が泣いています)
「いらっしゃいませ!」
作者に対する恨みを考えているエヌスの耳に元気の良い声が響いた。
水が来たと思って受け取ろうと店員を見たエヌスは自分の眼が狂ったと思った。
ラーメン屋であるのに、某ユニフォームが可愛い事で有名なファミリーレストランのユニフォームを着た店員が水を運んできた事なのだが、それ以上に注目する事実がある。
「ご注文がお決まりになりましたら、御呼び下さいませ」
「じゃあ、厚切りチャーシュー麺を一つ。後、野菜ギョーザでしょ。エヌス君は?」
異常なものを見たエヌスが混乱しているのを尻目にシエルは自分の注文を的確に伝えた。
「ヱ…え!あ、中華ソバを一つお願いします」
「かしこまりました!少々お待ちください。オーダーはいります!」
そう言いながらカウンターの奥に店員は消えていった。
居なくなった事を確認したエヌスは小声で確かめるようにシエルに聞いた。
「あの人って…」
「男性だけど?」
シエルは別に大したことではないと言った具合に答えた。
いや、男が女性服を着て働いているというのは何かが間違っていると思うぞ。
幸いにして中性的な顔で良かったが、良いのだろうか?
何より、そんな事をする奴が一人だけ心当たりが有るから恐すぎる。
そんなエヌスと作者の心の葛藤を無視してシエルは普段見せない様な女性らしい顔でエヌスに話し掛けてきた。
「ねぇ、エヌス君は初めて会った時の事を覚えてる?」
いきなりの昔話にエヌスは「何を言ってんだ?」と不届きな考えをした。
君は女性の心理や行動パターンを知らないのか?
「覚えてるよ。確か高校の時に歴史の教師の事で問題になった時だよね」
「そうそう!あのセクハラ教師って軍に入隊した後、前線送りになったんだって」
エヌスとシエルが初めて会ったのは高校時代の1年の時である。
まだ性格がまともだった頃のシエルが歴史の教師にセクハラ発言をされて困ってた時、エヌスが割って入って助けたのだ。
その頃から二人は話すようになって現在にいたるのだ。
シエルの意図に全然気付かないエヌスは昔話を深く思い出そうとした。
「ふ〜ん。あの教師って不幸続きだね」
「そうよね。あの後にエヌス君が全身殴打にして学校の時計に逆さ磔にした時は驚いたわよ」
…エヌスって実はかなり凶暴なのでは?
全身殴打ならまだしも(まて)、逆さ磔はやりすぎじゃないのか?
「はははは…」
エヌスは苦笑して見せた。
何故ならば、自分がやった事は現在所属中の「閃光の爪隊」内では珍しくない事なのであるからだ。
エヌスの苦笑を見て少し不思議そうに思ったシエルであったが更に続けた。
「でもね。あの時の私は結構嬉しかったのよ」
「え?!」
いきなり告白一歩前の宣言をされてエヌスは変な声を出した。
彼の知っているシエルの性格ではそんな事を言うなんて信じられなかったのだ。
さらに大人しい性格が災いして(?)顔が赤くなって黙ってしまった。
二人は無言で見つめあっていた。ここがレストランだったら雰囲気は最高だっただろう。
このままハッピーエンドで終わるのか?!
「注文の品をお持ちしました」
そんなふざけた事、俺は認めない!(作者が)
男の嫉妬が全開の作者のせいであろう。
タイミング良くエヌスが聞いた事のある声をした店員がラーメンを運んできた。
「…(おのれ〜)?何でタケルが居るの?!」
どこかで聞いた事があるのは同じ部隊だからである。
同じ閃光の爪隊所属のタケル・ミラーソードが店のユニフォームを着てラーメンを運んできたのだ。
「エヌスじゃんか。オマエこそ何やってんの?」
タケルは質問を質問で返す。
「僕は仕事帰り(?)の一杯をやろうと思って来ただけだよ。そういうタケルは何で?」
エヌスの答えに納得したタケルも答える。
「俺?俺は隊長に置いてきぼり喰らって暇になったからアルバイトしてるだけ」
部下を置いてきぼりにする上官も問題だが、暇だからって料理屋でバイトする軍人は始めて見たぞ。
この部隊を野ざらしにして置く参謀本部にも問題がないか?
「アルバイトって…追いかけたら」
「面倒だからアルバイトでいい」
タケルよ。君は本当に軍人って言う自覚があるのか?
これ以上、作者を悲しませるような事を言わないでおくれ。
そんな二人の漫才に考え事をしていて混ざっていなかったシエルがタケルに提案をしてきた。
「タケル君って言ったっけ?暇なら仕事あるんだけどやらない?」
シエルの提案にタケルは少しも考えずに答える。
「いいけど何やんの?」
いきなりOKかよ。
もう少し交渉とか考えるかしろよ。
「明日から家の新型を実戦テストに出すんだけど、その護衛」
シエルが仕事を提示した時点でエヌスは予想していた事柄だった。
普通の恋愛マンガならば反対するが、同じ部隊で彼の実力を知っているエヌスは反対しない。
前にも言ったがシエル相手にエヌスは反対した所で無駄だと分かっているからである。
タケルの答えは即答だった。
「いいぜ。もう一人だけ暇な奴がいるけど、そいつも連れて行って良いか?」
もう一人居るって、アルサレアの人事はどうなっているんだ?
参謀本部長の下に変な特務小隊が居るから、まともな人事ではないと思っていたが。
「構わないわ」
「マジ!呼んでみる?お〜いエド。カ〜〜〜ムゥヒァァァ〜〜〜〜〜〜!」
タケルの叫びと共に一人の男性がテーブルに近寄って来る。
その男性を見たエヌスは呆然とした。
「こいつの名前は長いから省略するけど、エドって読んでやってくれ」
「始めまして。エドワード・アイゼン・ヴァルガス・ゾンゲルゲ・ヤマダ・ダムダム・ダイミョウジン・Σです」
先ほどの女性ユニフォームを着ていた男性が来たのだ。
長すぎる名前も凄まじい。
「貴方がエドワード(以下略)君ね。私が」
「6研の天才主任、シエル・マキナさんですよね」
名前を名乗ろうとしたシエルを逆に言い当てた。
さすがに変な事ばかりを知っている野郎だ。
天才と言われた事に気を良くしたシエルは満面笑みを浮かべて肯定を表した。
それに続けてエヌスも自己紹介を始める。
「僕の名前はエヌス・ハイケルンです。お願いします」
「こちらこそです」
こっちは普通の会話だった。
見た目とは裏腹にまともそうな性格なので良かったとエヌスは考えた。
その和やかな雰囲気にシエルが水をさす。
「和みあっている中で悪いんだけど、あっちでオッサンが睨んでいるわよ」
シエルにオッサン呼ばわりされた男性とは店長である。
仕事を放って置いて話し合っているのだから当然だ。
二人のアルバイト店員はそそくさと厨房に戻っていった。
そして次の日
朝早くから出撃の為のブリーフィングが有ると言う事でエヌスとタケルとエドは6研の会議室に向かっていた。
早起きのエヌスとエドは良かったが、寝坊癖の多いタケルが中々起きなくて時間ぎりぎりになってしまったのだ。
時間1分前に会議室に入り込んだエヌスはシエルの他に一人の男性が居ることに気付いた。
「遅いわよ!」
いきなりの叱責である。
そんな事よりも目の前の男性が気になってエヌスは何も言い返さなかった。
「ま、それは良いけどね。今からすぐに出撃するけど異論はないよね」
エヌスの疑問を無視してシエルは決定事項なので反論するなと言わんばかりに出撃宣言をした。
エヌスは話よりも目の前の男性が誰なのかが気になって、シエルが作戦の要項を伝えているが全然聞こえない。
そして説明が終わり、最後に付け足すように言った。
「そうそう。ヨハン君も自己紹介して」
シエルが思い出したように言った時、エヌスは耳を立てて聞こうとした。
「自分はヨハンス=フォスト=グリフィスです。よろしくお願いします」
まともな自己紹介だった。
この曲者ぞろいの臨時実験小隊の中で一番まともだろう(一番の問題児はシエル)
作者の安堵とは裏腹にシエルが次に言った事はエヌスを驚かせた。
「彼は今回Jメガバスターのテストパイロットをしてもらうわ。他のみんなは護衛ね」
ガァァーーーーーン!!
エヌスの中で何かが崩れた。
今の今まで自分がテストパイロットをするのだと思っていたからである。
シエルの作った新型に乗れると期待していたが脆くも崩れ去ったのだ。
落ち込んだエヌスを見かねたエドはエヌスの肩に手を乗せて言った
「頑張ってください」
エヌスの心に針が突き刺さった。
エドは単に仕事を頑張ろうと言う意味で言っただけだが、エヌスはヨハンスにシエルが取られるから頑張れと勘違いしてしまった。
更に落ち込んだエヌスにタケルも肩に手を置いた。
何も言わないが、彼の昔の友人の真似なのか「哀れむような顔」をして黙っていた。
エヌスの心に五寸釘が刺さる。
その行為にエヌスはシエルが自分よりもヨハンスに気があると勘違いをしてしまった。
彼の場合は面白そうだからやるのであって、同情はすれども立ち直させるつもりは今は無いみたいだ。
エドはエヌスが何で落ち込んでいるのか気づいている訳ではないが、立ち直させようと試みる。
「人は挫折で強くなるから前向きに行こうよ」
エヌスの心にパイルバンカーが打ち込まれた。
エドはJメガバスターに選ばれなかった事で落ち込んでいると思ったようだ。
だが、それをJメガバスターではなくてシエルと又も勘違いしてしまったから余計落ち込んだ。
余りに落ち込みすぎたので不味いと思ったタケルは本気で励まそうとする。
「朝まで飲もうぜ!」
お前らは未成年だろうが!
ツッコミを無視して、エヌスの心にロン○ヌスの槍が突き刺さった(よく生きてるな)
タケルとしては飲んで気分を晴らそうとしたつもりだが、例の如くエヌスの勘違いが続く。
ヤケ酒に入って忘れろと受け取ったのだ。
ここまで来るとエヌスは放心状態であった。
そして、立ち直させようとタケルとエドが助け(トドメ)を刺していく。
余りに変な光景なのでヨハンスは思った。
(本当にこんな部隊で大丈夫なのか?)
こうして、戦場の一つで実戦テストが始まろうとしていた。
戦闘編に続く。
後書き
いやぁ〜〜〜また途中で区切ってしまいました(謝)
先週からアルバイトが始まって書く時間が取れなくて(言い訳)
それはそうと、妄想でオニタイプのレッグやVシールド、カウンターリングを使用した訳をあそこまで捏造しました(爆)
実際何ですが、Jメガバスターだとゼクルブシリーズを相手にしたときは結構面白かったです。
それにしてもエヌス君の不幸は何時まで続くのでしょうね
と言う訳で次は戦闘編です。あの面子がどんな戦闘を繰り広げるかは私も分かりません(まて)
では!
設定
エヌス用Jファー
アルサレア軍主力PF「Jファー」をエヌス用に改造した機体。
機動力を中心に改造して、両手にMガントレット、両肩にキャノンを装備している。
神楽歌
閃光の爪隊が良く利用する謎の情報屋。
詳細については不明だが、高い情報力を持っている。
首領の名前が組織名でもある。
将軍殺し
お酒。(オリジナル)
グレン将軍すら二日酔いにしてしまったほどの美味しい酒。
アルサレア国内でも有名なラーメンのチェーン店
間違ってでも宣伝ではないです(笑)。
アルサレア国内でも有名な格安ラーメン屋。現実にある某ラーメン屋がモチーフです。
タケル・ミラーソード
オリキャラ
閃光の爪隊所属のパイロット。ここの所、目立ってなかったので出しました。
エドワード(以下略)
オリキャラ
バーニィさんのモルモットでお世話になっているキャラ。タケルの親友って設定もありますので使いました。
女装趣味は無いです(多分)
ヨハンス・フォスト・グリフィス
ヨニカさんより借りました。
エドと同じくモルモットに登場しているパイロット。この作品の中で一番まともな性格であるためにJメガバスターのテストパイロットに選ばれた。
管理人より
神楽歌さんよりJメガバスター物語後編をご投稿いただきました!!
……エヌス、そのうちいい事あるさ(爆)
波乱の戦闘編、一体どうなるのでしょうか。楽しみです!!(笑)