読む前に:この話はガンパレードマーチのシナリオを元にして構成されています。話の中でのセリフのほとんどが作者が考えた物ですが、「原作のセリフを元にしたセリフ」がたまに入る事があります。話の関係上の為ですのでご了承ください



これは二つの物語が一つになった一例である。








機甲兵団Jフェニックス+高機動幻想ガンパレードマーチ



翼と翼をつなぐ歌







 

 第6話「怒号の新展開!?」









 輸送機内部




「で?これからどうするわけ?」

 自分の機体を降りて輸送機内のブリーフィングルームに来たキースは誰にとも無く口にした。



 彼らは今、熊本を離れて本州へと向かっていた。

 正直言ってキースの声は少し苛立っている。

 いや、彼だけではない。この輸送機に乗っている人員の殆どがそうである。


「まぁ、悩んでもしょうがないな。その内、連絡当たりが来るだろ?」

「ケイオウ君…分かった」

 ケイオウが答えたところキースはあっさり黙ってしまった。


 何故これほどまでにこの面子の表情が苛立っているのか?それは熊本脱出の際にゴールドを置いてきてしまったからである。

 元ミラームーンの兵とはいえ共に戦ってきた仲間である。それを失う悲しみは誰もが同じだった。

 実際、ゴールドはケイオウと一緒に居るべくアルサレアに居た身である。彼にとっては無二の相方と同じ存在とキースは思っており黙ったのだ。





 一瞬の沈黙の後にタケルが不意に言った。

「ゴールドさんの弔い合戦の為にも俺達は負けるわけにはいかないっすよ!」

 実際問題としてゴールドはまだ死んでるかどうか分からないはずだが、そんなことはお構いなくタケルは周りを励ます為に口走った。

「そうだな…彼女の為にも俺達は生きて…生きて、生き抜いてやるんだ!」

 最後に締めくくったのはグレンリーダーだった。

 彼もゴールドの死は信じていない、それでもこの事だけは言いたかったらしく叫んでいた。












 

 ブリーフィングルームで彼らが「青春日記」を繰り広げていた最中、部屋に設置されていた大型モニターに通信が入ってきた。

 自分達の行く末を知るうえでも大事な事と思い、その場の全員は顔を引き締めてスイッチをオンにした。




「私よ」

 挨拶も為しに災害的マッドサイエンティストこと芝村夕子は話し出してきた。

「…タケル、お前が一番適任だ。交渉頼む…」

 夕子の顔を見るなり、ケンはタケルに耳打ちをした。



 ケンにとって夕子は苦手な女性だった。

 熊本に居た頃から彼女とはあまり接点は無く、ケン本人に言わせると「一番敵に廻したくないタイプ」と言っており、この面子の中で最も彼女との付き合いが長いタケルに(強引に)委任したのだ。





「先生…いきなりですね?」

 タケルは半ば呆れながら返した。

 しかし、タケルのツッコミを無視して夕子はに重要な事を話し出した。

「んで、これからの貴方達なんだけど…下関海峡に行ってくれない?そこで九州からの幻獣の本土上陸阻止軍に合流してほしいわ」

 そう言われたもののアルサレア出身の彼らにとって「下関海峡」の場所は知るわけも無く、ただ頭をひねっていた。

 さらに、夕子は続けた。

「後、あの豚…勝吏は失脚したから貴方達のクライアントは私が続いてやらせてもらうわ。それと、そっちの補給物資も尽き掛けてるでしょうから用意してあるわ。と言う訳で早く来てね〜」

 そう言って一方的に通信をきってしまった。









 

 あまりの急展開さと、重要な事柄を一気に言われた事から誰もが唖然としていた。

「何て言うかぁ…あの人すごくない?」

「どういう意味ッスか?」

 コウスケは事態の流れを把握したからこそ言える言葉をタケルに言った。

 しかし、その夕子の性格を知っているタケルはあまり驚きもしなかったためにコウスケの言った事のいろんな意味に気付かなかった。


「いや、まぁそれは良いとして。あの人って昔からあんな風だったのか?」

 そう言われてタケルは急に感慨にふけった顔になって口にした。


「あの人って俺が居た学校で名目上は「ただの教師」何ですけど、実際はあの学校の実質的な支配者だったんすよ。いろんな教師の弱みを握ってたらしくて」


 そう言われてコウスケは確信した。







――――――――――――絶対に敵にまわすまい―――――――――――――――













 

 と、そんな感じで話し合っているうちに下関上空に彼らは着いた。


 そこに着くまで着陸できない事に彼らは気付かなかった。

 下関海峡に空港は無く、結局はそこから30キロはなれた所にある宇部空港に向かうはめになったのだ。

 さらに、到着した当初は未確認機と言う事で警戒されて着陸許可がでなかった。

 だが、タケルが夕子の名前を出した瞬間に着陸許可が出たという出来事は在ったものの、それ自体はこの物語には対して重要ではなかった。










 

 着陸自体は無事に終わった。

 しかし、着いた早々に新しい任務が彼らを待っていた。

 この基地は本州への最後の防衛線であり他にも大量の部隊が集結しているのが現状である。

 だが、どの部隊も到着したばかりであり行動可能な部隊は少ないのだ。

 結果として彼らは哨戒のような雑務もこなさなくてはいけなくなった。
















 

 そんな訳でケンとタケルはPFで海岸線を哨戒していた。

「おい、タケル。あの機体って何だ?」

 上空を飛んでいる航空機を指差しながらケンはタケルに聞いた。

「アレは…三菱重工製、F-1ですね。種別は戦闘攻撃機です」

 彼らが着陸した時、空港には大量の航空機が待機しており興味が湧いていたのだ。

「そうか…あっちは?」

 ケンが指差したのは同じく海岸線を哨戒していた戦車だった。

「あれは自衛軍の主力戦車、90式戦車です」

「そうか…そういや空港で見た、東の方に飛んでった大型の航空機は?」

 ケンは空港で見かけた大型の航空機の事を言った。

 タケルは少し考え込んだ後に言い出した。

「えっと…あれは関西飛行隊所属のB-52ですね。多分、訓練飛行で来てた奴ですよ」

「B-52?」

 ケンが頭に?マークを作りながら聞き返すとタケルは得意げに言った。

「はい。アレは元々は米軍が使ってた奴ですが、その米軍が新安保を無視して本国に撤退してったんですよ。で、その際に餞別として置いてった爆撃機です」

 タケルが解説したものの、ケンには全てを理解できるわけも無かった。


(ベイグン?シンアンポ?)


 そんな感じである。

「そうか…で、戦力的には問題は無いんだな?」

 タケルの話の全てを理解できたわけではなかったが、その事は顔に出さずに彼にとって最も重要な事を口にした。

 その質問にタケルは昔の事を思い出す感じで途切れ途切れに答えた。

「そうですね…99式自走砲や8・8艦隊は期待しても良いと思います。ただ…」

 そこまで言うと、今度は苦笑しつつ続けた。

「さっきのF−1の後継機、F−2って奴ですが…通常装備時は運動性は高いんですけど予備の燃料タンクを付けると一気に運動性が落ちます。あとレーダーと機体の相性が悪いのも問題ですね。
 それに89式歩兵戦闘車の35m機関砲ですけど即応弾が34発しか入ってないです。
 他にもコストが高いとか、設計に無駄が多いとか色々問題はありますね…」

 タケルの自衛隊兵器に対する辛口トークを聞いたケンだったものの、やはり全部を理解出来る訳は無かった。


補足しておくがこれは現実の問題である







「何となく分かったような…分からないような気がする…」

 聞きなれない言葉を連発された為にケンは満身創痍だった。

 その様子に気付いたタケルは話をそらしてやろうと考えた。

「そういや、副長とシオンさんは何処言ったんスか?」

 タケルは同じ小隊の二人が何処に行ったのか知らなかった事もあり、純粋に疑問に思っていたのだ。

「ああ…あいつ等なら特命をやった。来る途中に在った森に行かせた」

 多少のダメージは残っているものの、復活したケンは今まで通ってきた道の方を向いて言った。



 ケンの言った「特命」が何なのか気付いたタケルは急に顔を明るくした。


「二人で森にですか…じゃあ、かなり良いっすね!(ニヤリ)」

「そうだな…二人で仲良く特命を果たしてほしいな…(ニヤリ)」


 そう言いながら彼らは哨戒任務を続けた。



















 

「わびしいぜ〜」

「こればっかよね…」

 キースとアイリの手にはジャガバター、ジャガイモ団子、ジャガイモ汁…まさにジャガイモのオンパレードだった。

 当然のことながら二人は飯を食べていた。



 キースは手に持ったジャガイモ汁をすすりながら不平たらたらの口調で嘆いた。

「熊本に居た頃からジャガイモばっかだな…いい加減に肉食いて〜」

 脇に座っていたアイリも同じような事を口にした。

「確かにね…私もこればっかりじゃさすがにきついわ」

 そう言ってジャガイモ団子を口に運んだ。




 二人の不平も分かるが、この状況の日本の食糧事情はかなり酷い物である。

 現状では3度の飯が食えるだけでもかなり優遇されており、それが軍人だけの特権である事は二人にも分かってはいた。




 そんな中でキースは自分の鼻に香ばしい匂いが入って来た事に気付いた。

「何か…肉の焼いた匂いしね?」

 キースの発言にアイリも肯定した。

「…するわ。あっちの方よ!」

 この時点でキースとアイリは餓えた獣のような目で匂いの発生元を睨んだ。





 その先には…串焼きを焼いているケンとコウスケ、蒲焼きを焼いているシオンが居た。

「「…」」

 串焼きから発生してくる塩コショウの匂いと蒲焼きから流れてくるカレーの様な匂いの前に二人は目を反らす事は出来るわけもなかった。

 二人の発する異常な眼力に気付いたのか、ケンは一言だけ言った。

「そろそろ焼き上がるが…食うか?」

「「当然!」」

 アイリとキースは音速の壁を超えたスピードでスラッシュ小隊が調理しているスペースに近付き、焼き上がった串を貰うと一気に口に運んだ。

 串焼きを口にしたキースと蒲焼きを口にしたアイリは同時に幸せそうな顔になった。

「これ上手いじゃん!サリアちゃんも食べる?」

「この蒲焼き、歯ごたえも抜群。カレー味ってのもナイスよ!」

 アイリは両手に蒲焼きを持って食べ、キースに至っては自分で作っているわけではな無いにも関わらずサリアに進めた。



「隊長は食べないんですか?」

 アイリはグレンリーダーが遠慮している事に気付いた。

 いや、むしろ食べているキースとアイリに同情の念すら抱いている顔だった。

「ああ…俺は遠慮しておくよ…」

 グレンリーダーはそう言って拒否した。






 

「そういやタケル君は何処行ったんですか〜」

 キースに貰った串焼きをほおばりながらサリアはこの場に居ないタケルの居場所を聞いた。

「あいつか?あっちの方でクンセイ作ってたはずだが?」

 同じく串焼きを食べていたケンは少し離れた場所を見ながら言った。するとタイミングよくタケルの声がした。

「出来ましたよ〜」

 そう言ってタケルは皿の上にクンセイを持ってきた。

 新しい料理が運び込まれてきた事に気付いたキースとアイリはそれを取るとすぐさま口に入れた。

「これ美味しいじゃない。ね、タケル君。これ、何のクンセイ?」

 保存食であるクンセイが意外に美味しかった事でアイリは何の肉で作ったのか知りたくなり聞いた。
タケルは笑いながら答えた。





「ああ、それっすか?のクンセイです」



ブフォォォー―――――!






 アイリは蛙のクンセイを見事に吐き出した。

 その様子を見たシオンはなだめる様に言った

「まぁ、アイリさん。はしたないですよ」

 そう言われたものの、アイリは自分が美味しいと言っていた物がであったことで動揺を隠せるはずも無かった。

 その事実を知ったキースも自分が食べている焼き鳥の様な串焼きが何なのか不安になってきた。

 キースの心情を察知したのかグレンリーダーはキースが手に持っている物の正体について語りだした。




「キース…それ何だが…多分、トカゲを小さく切って串焼きにした物だと思う」



ブフォォォー―――――!






 今度はサリアが吐き出した。

 そりゃそうである。普段、蛙やトカゲなんて食わないのが普通である。正体を知っていたら誰も食うはずも無いものだ。







 

 そんなグレン小隊が驚愕の事実に戦慄を覚えている中、ケンはコウスケに「特命」の報告を聞こうとしていた。

「この様子じゃ特命は成功だったな?」

「そうだな。シオンなんてお手柄だぜ?かなり大型の大蛇を捕まえたんだしな」



 ケンのさっき言った「特命」とは森に入ってトカゲや蛙等の食料を調達する任務の事である

 余談では在るが、閃光の爪隊は補給が入ってこないときは、いつもこの食事をとる




「ヘッへビィぃー――――――?!」


 二人の会話が偶然聞こえたアイリは大声で叫んだ。

 いきなりの事を叫ばれたがシオンはいつもの調子で答えた。

「ええ、その蒲焼きですが?本当はそのまま生の方が美味しいのですが、コウスケ君が「匂いがキツイからカレー粉使ってくれ」と頼んでくるので、仕方なくカレー粉で味付けしましたわ」

 シオンの口から出た言葉にサリアは完全に失神した

 この瞬間、アイリとキースは自分たちが食べている物がとんでもない物だと思いっきり実感した。

 グレンリーダーが遠慮したのも分かる話である。

 そして過酷な現実にアイリはキレた。

 そしてその矛先は毎度のごとく決まっている。





「…アンタのせいでぇぇ――――――――――!」

「セイスモォォ――――――――――!」





 アイリの10連コンボをまともに喰らったキースは断末魔を上げつつキリモミしながら空中を舞った。


 その様子を見ていたタケルは一言口にした。


「飯の時ぐらいは静かに食わせてほしいっす」


















 

 彼らが騒ぎまくっているのを他所に一人の金髪女性が遠くから彼らを睨んでいた。

(あいつが…イレギュラー)

 彼女はタケルを睨むと右腕をタケルに向けた。

 すると、右腕が銃に変化したのだ。

(ロック…まさか!)

 狙いをつけてレーザーを放とうとした瞬間、ケンが睨んできたのだ。

 その目は人間の目ではなく獣の眼光を持っていた。

(気付かれたのか?…今は無理ね)

 女性は右腕を戻すと霧のように消えた。









 ケンがあさっての方向を向いている事に気付いたタケルは不思議そうに聞いた。

「隊長?どうしたんスか?」

「いや…あっちから獣に睨まれてる気がしたから捜したんだが…居なかった」

 タケルの質問にケンは残念そうに返事した。

 謎の女性を動物と間違え、さらには捕まえる気だったらしい。


 そんな中でタケルの耳に久しぶりに聞く声が聞こえた。

「タケル…先輩?」

「この声…マコトか?」

 タケルが振り向くと、そこには他の兵隊とは違った制服を着た小柄で女顔の学兵が居た。

 タケルが名前を呼ぶと、そのマコトと呼ばれた者はニッコリと笑って話し掛けてきた。

「タケル先輩!久しぶり〜。先生の実験で行方不明になってたって聞いてたんですよ〜」

 マコトはそう言うとタケルの周りに人がいる事にようやく気付いた素振りをした。

 そしてケンを見ると誰も予測しなかった事を口にした。


あれ〜?カール先輩、目つきが悪くなってませんか?」


 …思いっきり人違いである。


 突然、聞いた事も見た事も無い人扱いされてケンは混乱しかけたが答えた。

「残念だが…俺はカールなんて名前では無い。…タケル、こいつの紹介してくれないか?」

 これ以上マコトに話を続けさせていたのでは埒が明かないと思ったケンはタケルにマコトの紹介を頼んだ。

「え、ああ、はい。高校の時の後輩ッス。マコト、自己紹介してくれ」

 そう言うとマコトはグレンリーダー顔負けの敬礼をしながら自己紹介を始めた。

「僕の名前は飛田真琴(ヒダ・マコト)。宮内庁皇室警護隊・第17戦隊第2小隊所属。よろしくぅ!」

 敬礼や姿勢は正しいのだが、いかんせん話し方が砕けていた。

 しかし、その辺はアルサレア勢も人のことは言えないので誰も口にはしなかった。

「俺の名はケン・サンジョウだ…」

 ケンを初め、他のアルサレア勢も各々と自己紹介をし始めた。








 

 自己紹介が終わると、マコトはPFを凝視していた。

 その様子に気付いたタケルは理由を聞こうとした。

「マコト、どうした?」

 その問にマコトは楽しそうに答えた。

「だって、だって!士魂号なんかと比べてすっごくカッコ良いんだよ!これを見て騒ぐな何て言ったら常識を疑うよ!」

 この時、この場に居たマコト以外の者は共通して思った


(ここにも…滝川の仲間がいる!?)


 皆そう思ったものの、あえて顔には出さずにした。

「その様子じゃ本音だな…で?近衛軍のお前がどうして此処に?」

 話がややこしい方に行くのを危惧したタケルは話題の転換で反らそうとした。

 だが、マコトの方が上だった。

「う〜ん…あの羽はナイスだね!フレームもいい感じだし。後は…斬馬刀や烏帽子型の頭部があれば最高なんだけどなぁ〜」

 マコトはタケルの話しを全然聞いていなかった。

 実際、マコトの要望するPFは存在したがタケルは話すと長くなりそうなのであえて言わなかった。

 そんな事は露知らず、マコトは他にも何か言おうとした。

 しかし、

「マコト!そこに居たのか!」

 今度は顔に大きな傷のある青年を初め、青年3人がマコトの名前を呼びながら近付いてきた。

 その青年たちを見たマコトは不服そうな顔をしながら言った。

「何もそんな大声出さなくても良いじゃん」

 マコトの不平に慣れているのか3人の中で一回り大きな青年が言い返した。

「勝手に待機命令を無視して、その辺をほっつき回っているのにそれは無いだろう?あ、スイマセンでした」

 その青年もアルサレア勢の存在を忘れていたようだ。それだけマコトを探すのに集中していたらしい。

 青年たちは一人ずつ自己紹介を始めた。

「自分の名前は鬼無里村樹(キナサト・ムラキ)であります!貴方達の勇名は聞き及んであります!共に戦い抜きましょう!」

「俺の名は…ランブル・マッドドッグスだ。俺はミスをしない。だからあんた等も俺の前でミスをするな」

「はい。自分の名前は乱鳩神太(ランバト・ジンタ)です。まだルーキーですが足を引っ張らないようにがんばって行きます!」

 全員の性格はそれぞれ個性的だった。

 本日2度目の自己紹介を余儀なくされたアルサレア勢がようやく自己紹介を終わると、ムラキはマコトを睨んで言った。

「マコト!待機命令中だ。どうもスイマセン…俺達は待機命令なので失礼させていただきます。ほら!マコト、いい加減、諦めて行くぞ!」

 そう言ってムラキは尚も留まろうとするマコトを引きずりながら帰っていった。











 

「「タケル!あの子の事をもっと教えてくれ!」」

 マコトがムラキに引きずられて帰っていった直後、キースとコウスケがタケルに聞いてきた。

 いきなりの事だったがタケルは何事かと聞き返した。

「何だっていきなり…」

 タケルがそう言うとキースとコウスケは胸を張って言った。

「あんなかわいい娘を見て、ナンパしないなんて俺には耐えられん!」

「結構面白い娘だったし、声かけといても損はしないと思うしな」

 つまり、二人はマコトがカワイイからナンパしたいという事であった。

 その事を瞬時に理解したタケルは彼らを哀れむように言った。




言っておきますが…マコトは男ですよ




「そうか男…何ですとぉー―――――――――!






 驚愕の事実を知った二人は崩れ落ちた。





















 

「グレンリーダー、緊急事態だ!…ってキース君もコウスケ君もどうした?」

 走ってきたケイオウは真っ白に燃え尽きたような表情をしているキースとコウスケを確認すると、当初の目的を忘れて驚いた。

 だが、そんなケイオウの心配をよそにグレンリーダーはケイオウの言う「緊急事態」の事の方が気になった。

「そんなことより特尉。緊急事態と言うのは?」

 危うく本題を忘れてしまうところであったがグレンリーダーのおかげで思い出したケイオウはキースとコウスケを無視して「緊急事態」の事を報告した。

「今、哨戒中に入ってきた情報だが福岡が落ちたらしい…」

 その言葉にどの面々も表情を引き締めた。

 その中でタケルは心配そうに質問をした。

「先輩やゴールドさんはどうなったんですか!?」

 その言葉にケイオウは少し声を低くして答えた。

「幾島は撤退中の部下を守るために囮となって戦死、ゴールドは行方不明だそうだ」

 この言葉を聞いた時、スラッシュ小隊はタケルが心配になった。

 タケルにとってゴールドも幾島も、彼にとって数少ない尊敬できる人物であった。

 その二人の事実上の戦死報告でタケルが自暴自棄に陥ってしまうのではないかと本気で心配していた。


 だが、その予想は見事に裏切られた。

「分かりました」

 タケルはそれだけであった。

 最悪の結果を免れたとはいえ、予想外の様子を見たケンは思わずタケルに問い詰めた。

「本当にそれだけなのか?」

 その問にタケルはいつもと変わらぬ雰囲気で言った。

「約束したんですよ…俺はあの人達と。自分が決めた生き様を貫くって」

 その言葉に何も迷いは無かった。

 正直に言えば、この時ケンを初め全員はタケルの成長を認めた。


 ケンに至っては

(熱血君から卒業だな)

 と思ったぐらいである。





 

 タケルの成長を喜んではいたが、同時に人類にとっての滅びの物語が終章に入りつつあるという現実もあった。

「特尉!敵の上陸はいつごろになる?」

 タケルの成長をうれしく思いつつも、グレンリーダーは目先の事に集中しようとした。

「早く見積もって1時間、遅くても2時間しかない。」

 ケイオウの報告を聞いたグレンリーダーは瞬時にこれからの事を決めると立ち上がっていった。

「ルリエルに30分以内に離陸を伝えてくれ。総員、第1級戦闘配置!」

 その命令に誰もが力強く答えた。

「「「「了解!」」」」








 

 グレンリーダーから離陸要請を聞いたルリエルは輸送機を飛ばそうとパイロットシートに座った時、コクピットの異常に気付いた。

 パイロット兼オペレータ―席の隣に新しいシートが備え付けられていたのだ。

 不意に部屋のドアが開き夕子が入ってきた。

「ああ、気にしないで」

 そう言って新しく付け加えられたシートに座り込んだ。

 気にするなとは言われたものの、気にしないわけにはいかずルリエルは何故夕子が此処に居るのか聞いた。

「何で此処に居るんですか?」

 しかし夕子は自分が此処に居るのが当然と言う感じで言った。

「あんた達のオブサーバーとしているわ」

「「オブサーバー?」」

 ルリエルだけでなく通信越しで聞いていたタケルまでもが驚いた。

 そんなことはお構いなく夕子はさらに続ける。

「そ。あんた達に本州での兵器のアドバイスなんかね」

 タケルは夕子の性格を知っている為あえてそれ以上は口にしなかったが、ルリエルは違った。

「軍人じゃないのに、よく司令が許可しましたね。」

 ルリエルは半分疑問半分呆れのこもった口調で言ったが、夕子の次に言った言葉にルリエルは当然として話に混ざっていなかったほかのアルサレア勢を大いに驚かせた。


「ああ、あの司令ね。いろいろ小言言ってきてムカついたから、「同性愛趣味ばらす」って言たら、泣いて許可してくれたわ」


 誰もツッコミを入れることは出来なかった。


















 

「敵機接近中…5分後に上陸と予想されます。」

 海岸線より5キロ離れた陣地にグレンリーダー達に上空で管制をしていたルリエルから通信が入った。

 その報告を聞いたグレンリーダーは頭の中で作戦の概要を確認した。

「敵集団が上陸して橋頭堡を確保後に攻撃を開始…撃退後、航空隊による敵海岸地区の増援に対する爆撃。どうやら上層部は此処で本州上陸軍を殲滅する気だな」

 そこまで考えてグレンリーダーは誰にとも無く言った。

「これが本来の人としての戦いに思えるな…グリュウ」

 戦いの先にある平和を求めて戦ったライバルの顔を思い出しながらの言葉だった。









 

 ルリエルからの報告から5分後に幻獣軍は海岸線へと上陸を果たした。

 そして、それから1時間で同地より4キロ地点までの区域を確保した。

 しかし、その快進撃もそれまでだった。

 下関海峡陣地の守備隊と九州より撤退してきた部隊の合同軍の反撃が始まったのだ。


























 

「これが先輩の分!」

 タケルの声と共に放たれたアサシンファングの一閃がミノタウロスを薙ぎ払った。

 振り終わると今度は反対の手に持っているアサシンファングを構えてブースターを吹かし始めた。

「そして…これがゴールドさんの分だぁぁ―――――――!

 タケルの魂の響きと共にJファーカスタムは爆発的に加速してナーガの集団を蹴散らした。



 タケルの攻撃は時間が経つにつれて激しさを増していった。

 その戦い方は見ようによっては死に場所を探しているようにも映った。

 だが実際は違う。

 彼は生きる為に戦っているのだ。






「タケル!前に出すぎだ!」

 タケルの後ろに迫っていたミノタウロスを一刀両断にしながらグレンリーダーは叫んだ。

「ありがとうございます、グレンリーダー」

 タケルは礼を言うと、グレンリーダーの警告を無視してさらに前に突き進んだ。

 自分の命令を聞かず前進したタケルにグレンリーダーは再度叫んだ。

「無茶をするな!」

 しかし、タケルは笑顔で答えた。

「心配してくださってすまないと思います。ですが…俺がここで前に出れば、その分だけ他の皆の負担が減ります」

 グレンリーダーは他にも言いたい事が山ほどあった。

 だが言えなかった。

 タケルの言った言葉や行動は普段の自分とそっくりなのだ。

 二の句が告げずに黙っているグレンリーダーにケンからの通信が入った。

「そう言う訳だ…いつの間にかお前に似てくるとはな…」

 そう言って進撃するタケルの支援を開始した。

 さらにケンは続けた。

「これからはアルサレアは、あいつの様な新しい世代の時代だと俺は思う。だからな。あいつ等が自分の道を進めやすいように手助けするのが俺達の仕事だと俺は思う」

 その言葉にグレンリーダーは思った

(後に続く者か…時代は常に新しい方へ進む)

 そして言った。

「それもそうだな。アルサレアの新しい英雄たちの為にも俺達は行くべきだな。それにしても…」

 ケンの言葉に賛同した後、グレンリーダーは苦笑しながら言った

「お前…年食ったな」














 

 彼らの必死の戦いは遂に報われる時がきた。

 下関海峡陣地を防衛する部隊の戦闘は鬼気迫る物だった。



 ある戦車は弾が切れると主砲を振り回して打撃攻撃に走った。

 ある自走砲はミノタウロスに向かって体当たりを繰り出し、主砲で串刺しにしつつ自爆した。

 ある歩兵はゴルゴ―ンに肉薄するとナイフで斬りかかった。



 彼らの被害も甚大だったが幻獣の被害はそれを遥かに上回っている。

 作戦の一段階が成功しだしたのだ。











 

「幻獣が後退し始めています!追撃に移ってください!」

 ルリエルからの通信を聞いたケイオウは二刀流の斬馬刀を掲げると叫んだ。

「今こそ人類の底力を見せる時だ!俺に続けぇー―――!」

 そう叫びながらウイングを展開して駆け出した。

 周囲の兵達もそれに続いて駆け出した。





 ケイオウは撤退中の幻獣の集団を見つけると殿の幻獣を無視して中央部に突き進んで叫んだ

「喰らえぇぇぇぇー―――!神風のロンドォォ―――――!」

 両手を大きく開いたヘルフェニックスが独楽の用に回転し始めた。

 わずか一秒にして音速の領域に達すると周囲の敵を見境無く斬り跳ねた。

 音速回転が終わる頃にはケイオウの周りに動いている幻獣は存在し無かった。







 回転が終わり、当たらしい獲物を探すために目を凝らしていたケイオウの目に見慣れない幻獣が映った。

 一言で言うなら「目玉付きの尻尾を持った亀」である。

「新型か?だが!」

 そう言ってケイオウは甲羅ごと一刀両断にしようと接近しようとした。

 だが、ケイオウの斬撃の範囲に入ろうとした瞬間、尻尾の目が空を向き光った。

「何だ?」

 自分の機体に異常が無い事を確認すると周りの様子にも注意した。だが、何も変化は無かった。

 不信に思いながらも脅威ではないと確認するとケイオウは再度特攻をかけようと身構えた。

 だが、ルリエルの通信により遮られた。

「そ…そんな…?」

 あまりの不鮮明な内容の通信に何かを感じたケイオウは叫んだ。

「ルリエル、一体何があった!」

 ケイオウの叱責により多少の平静を取り戻したルリエルは自分が何を確認したのか報告をした。

 その報告に誰もが耳を疑った。













7話に続く
 



 後書き

 第6話ですね〜
 前回の反動でギャグ中心でした。(いいのか?)
 この話ってワード10ページで終わる予定だったんですが、気付いたら18ページで挙句は次回に持ち越しになってしまいました(爆)
 さて、平行世界である以上は、平行世界のもう一人の自分をやってみたいと思ったんですが、何の因果かジータ・ムラキ・ランブル・マコトの4名の平行世界の存在を作ってしまいました(笑)
 本当ならもう最終回のはずでしたのにね…
 さて、ケイオウが聞いた衝撃の報告とは?!
 読んで下さってありがとうございました!











追加設定


下関海峡:本州と九州を繋ぐ海峡。今回の話の舞台。


宇部空港:下関海峡に一番近い空港。実際にあります(地図帳を見ながら書いていた)


三菱F−1戦闘攻撃機:自衛隊に配備されている戦闘攻撃機。お国柄で支援機と分類されている
 初飛行は1977年・同年に実戦配備された。現実では退役が始まっている。
 対地・対艦攻撃が役目。


90式戦車:自衛隊の主力戦車。現実でも主力。120m砲が主砲。


B−52:米軍の大型爆撃機。現実では日本駐留軍には配備されていない(と思う)
 1953年に初飛行。


99式自走砲:155ミリ砲を搭載した主力自走砲。


8・8艦隊:海上自衛隊の艦隊。護衛艦8隻とヘリ8機の組み合わせ。


タケルの自衛隊兵器に対する暴言:F-2の欠点や89式戦闘歩兵車の欠点は現実問題です(本当に)。
 開発に競争原理が無いからだと思ってます。


ジャガイモのオンパレード:ガンパレではジャガイモが主な主食です(本当)。


ゲテモノ料理:恐ろしいですね(苦笑)


カール:踊る風さんのSSに登場させていただいた、タケルの親友。


宮内庁皇室警護隊:親衛隊を出したかったので考えました。通称は近衛隊。天皇を守るのが一応は役目ですが…


飛田真琴(ヒダ・マコト):マコトの平行世界の存在。男です(笑)
鬼無里村樹(キナサト・ムラキ):ムラキの↑と同じ。
ランブル・マッドドッグス:ランブルの以下略
乱鳩神太(ランバト・ジンタ):ジータの以下略

 


 管理人より

 神楽歌さんより第6話をご投稿頂きました!!

 スラッシュ小隊、恐るべし!!(大爆笑)

 そして一体ラストに何があったのか!!<次回を待て(爆)
 


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