読む前に:この話はガンパレードマーチのシナリオを元にして構成されています。話の中でのセリフのほとんどが作者が考えた物ですが、「原作のセリフを元にしたセリフ」がたまに入る事があります。話の関係上の為ですのでご了承ください



これは二つの物語が一つになった一例である。









機甲兵団Jフェニックス+高機動幻想ガンパレードマーチ



翼と翼をつなぐ歌









 

 第4話「踊り子と竜、風と嵐




 九州熊本アルサレア軍駐屯地 



 アルサレアからの来訪者が寝泊りしている基地(熊本在住)のブリーフィングルームに計13名ほどの人員が集まっていた。

 しかし、この時間は午前5時である。ほとんどの者は未だに寝ながらそこに居た。



「ZZZZZZZZ…」

 グレン小隊のキースもその例外ではなくイスに座りながら見事に寝息を立てていた。

 いや、彼だけではない。

 シェルやサリアは勿論、スラッシュ小隊に関しては4名全員が眠っていた




 あまりの不真面目さに怒ったのはアイリである。

 彼女も眠かったのだが我慢しているのである。

 ヤツ当たりに走るのは時間の問題。

 否、すでに矛先であるキースの元へ近づいていた。


「起きろぉぉぉーーーーーーーーー!」

「マイダスメッサァァァァーーーーーー!」


 お決まりのキースの断末魔の叫びが聞こえたのか、その場で眠っていた面子は全員で目を覚ました。

「ファァァ…アイリさん。そんなに大声出しますと、彼に嫌われてしまいますよ…」

 起きてくるなりシオンはアイリに向って言い放った。

 アルサレア内部ではアイリとフェンナのグレンリーダーに対する想いは周知の事実であった(そのことを未だに知らないのは4名ほどいるが)。

 唐突に関係の無い話を振られた事とグレンリーダーにとんでもない所を見られてしまった恥ずかしさから冷静になったのかアイリは急に大人しくなった。

 しかし、その事実をグレンリーダーは気付いていない。






 ――――――――――最強朴念仁男グレンリーダー恐るべし――――――――――――











 

 それから5分経った頃、部屋のドアが開いて半ズボンのおっさん、善行が入って来た。

「皆さん、朝早くてスイマセン。急な作戦が決まったので集まってもらいました」

 善行は部屋に入ってくるなりその場の13人に向かって言った。

 自分に視線が注目した事を確認するとさらに言葉を続けた。

「最重要命令です。熊本市街地にある熊本城より幻獣のオリジナルが発見されたとのことです」

 幻獣のオリジナルという単語が出た瞬間、アルサレア勢は見事に驚いていた。

 そりゃそうである。いきなり霧のように現われ、死ねば幻のように消える生き物である、捕獲して研究しようにもそれが出来ないのが現状であった。

 その条件を根底から覆す内容である。

 考えようによってはこれからの戦いで人類が初めて優位にたてるかもしれないのである。

 波紋が来る事を予想していたのか善行はある程度考える時間をとっていた。

 そして、彼等のざわめきが少し治まってきたのを見計らって続けた。

「時を同じくして各地での幻獣が熊本市街地への集結を開始しました。よって、我々5121中隊の4個小隊を含む計10個小隊で今日午後から熊本城で警備任務を開始します」

 善行が淡々と作戦を告げた後、グレンリーダーは質問をした。

「敵の到着はいつごろになるんだ?」

「予測ですが、おそらく明日の朝になるでしょう」

「規模は?」

 次に聞き返してきたのはケンである。

「おそらく…4個大隊は下らないでしょう。もっとも、熊本市街地に展開している部隊も居ますから我々だけではないという事は確かです」

 そこまで言うと、善行はまた一息ついて話し出した。

「上層部の作戦としては…我々が防衛線を展開している間に熊本城を包囲する形で援軍を配置し、包囲殲滅戦をする予定とのことです」

 そこまで聞いてグレンリーダーやケイオウはこの作戦の裏に気付き始めた。


 彼等の予想では「幻獣オリジナル」自体はウソだろうが本当のことだろうがどちらでも関係なく、要は熊本城に敵を集めて包囲殲滅戦をするための動機付けであると考えたのだった。


 そんな中でタケルの発言は意外な物だった。

「なら、核弾頭で一掃すれば良いんじゃないっすか?」

 核弾頭を使うというとんでもない発言をしたのはタケルだった。

 案の定、その場の視線が全てタケルに集まる。

 いきなり注目を浴びたものの、タケルは冷静に自分の考えを述べていた。

「いや、ですから…敵がある程度集まったら、核やN2、ヘルファイアーあたりで熊本城ごとふっ飛ばせば一気に殲滅できるんじゃないかなぁ〜って思っただけですから」

「物騒なこと言うなぁ〜」

 タケルの発言にケイオウは「物騒だな」と返していた。

 おそらく「お前が人の事言えるのか?」と、その場のアルサレア出身者は思ったに違いない。

 そんなことばかり考えられているとは知らない善行はタケルの案に重大な内容で返していた。

「言い忘れていましたが、市街地の住民の避難が間に合っていません。よって、熊本城の本丸に避難する事が先ほど決まったようです。ですからタケル君の案は採用できないようです」


 善行の言葉にグレンリーダーとケイオウは「茶番だ」と心で思った。

 彼らはこの時点で「幻獣オリジナルはウソ」と判断していた。

 おそらく本当の餌は避難している住民なのだろう。



「了解しました。では、用意が出来次第に熊本城に警備の為出頭します」

 ケイオウ達と同じ結論に至ったケンは内心の怒りを抑えながらも命令を復唱していた。

 部屋を退出しようと善行はドアの前に来たが一端立ち止まると小声で言った。

「私もこの作戦は気に入りません」

 静かにだが力強い声だった。

 こうして、前代未聞の作戦の序曲が静かに流れ始めていた。















 

 5121中隊が出撃の準備を済ませて熊本城に着いた時、すでに他の部隊は展開し終わっいた。


 彼等の配置は、

 本丸本部:・2個重砲小隊(155ミリ榴弾砲2門、多連装ロケット車両4両)

 南側陣地:グレン小隊・1個戦車小隊(士魂号L型4両)

 西側陣地:ヴァ―ルハイト小隊・1個スカウト小隊(戦車随伴歩兵)

 東側陣地:2個戦車小隊(士魂号L型8両)

 北側陣地:5121小隊・スラッシュ小隊

 の組み合わせである。


 これは一箇所で中隊規模での運用は不可能の為に分散配置せざるえないからであった。











 

「ふあぁぁぁぁぁ…」

 熊本城北側陣地より2キロの地点で哨戒をしていたタケルは命令を受けた昨日から警戒態勢のために寝ていなかったことが原因で欠伸をしていた。

 そのタケルの機体の近くに紺色のJフェニックス、つまりケンの乗った機体が近づいてきた。

「…話がある」

 その声は少し険しかった。

 数日前(3話)にタケルの一言でケンとの間に不協和音が生じており、実際問題としてこの数日間の間に二人の会話は最低限度の物しか為されなかったのである。

「何か用スか?」

 二人の間に不協和音があるといってもタケルの場合は少し事情が異なっており、どちらかと言うと謝ろうと考えていたのだ。

 そんな訳でタケルとしてはこの会話でどうにかして謝ろうとしていた。

 そんなタケルの思惑を知っている訳も無く、ケンは話し出した。

「いろいろ考えたんだが、前回の答えだ…」

 そこまで言ってケンは一息つくと再度話し出した。

答えはどちらでもない…居ないのなら作るか探す。選択の余地が無いってことは無いはずだ

 ケンの言葉を聞いた時、タケルはどう答えて良いのか分からなかった。

 タケルとしては自分の非を認めて謝る気だった。

 しかし、ケンが前回の答えを持ってきて予定が狂わされるとは想像すらしなかったのだ。

「えっと…その…」

 いきなりの事でタケルは未だに戸惑っていた。

 だが、その一方でケンの言った内容についても考えていた。


 確かに彼は今この瞬間にも自分の大切な者が永久に失われるかもしれない状況に陥っているのは事実である。
 一時はその大切な人の事を諦めたりもした。
 だが、ある出来事により、その者への想いは不死鳥のように再度燃え上がっていたことがあった



(無理かもしれない…でも諦めるのはまだ!)

 もはやタケルの信念は決まった。

「俺は…まだチャンスがあるかもしれない。だからそれに賭けてもう一度この手に手に入れる!」

「…何を言ってるんだ?」

 ケンはタケルが建前抜きの本音を言った事を理解してあえてボケで返した。

 ケンは自分が過去に縛られすぎている事を理解はしていた。

 だが、それと向き合う事は出来なかった。だが、タケルとの会話で決心が付いたのだ。



 ―――――――後悔や恐怖する前に立ち向かって抗え――――――――――――――――



 その考えにたどり着いた時、行方不明の幼馴染を後悔するよりも探し出すと誓ったのだ。

 そして、ケンは自分と同じ状態に陥りつつあると感じたタケルをそうさせないために動き出すと決めたのだった。結果としてそれは成功した。





「いや…だから…忘れてください…マジで恥ずかしいっすから」

「…青春だな

 タケルの弁明も虚しくケンはさらにボケて見せた。

 お互いには気付いてはいなかったのだろうが二人の不協和音は見事に消えていた。

「で、隊長はそれ言う為だけにここに来たんすか?」

ばかなっ!」

「…そこで何で驚くんですか?」

 そう答えつつ、タケルは今この時を楽しいと感じていた。

「で、哨戒任務は交代だから来たんだが?」

はひ!」

 ボケの最中、いきなりケンに本題を言われてタケルは奇声を発した。

「狂ったの…何、分かった!」

 ケンはタケルをからかう為にもう少しボケていようとしたが本部からの連絡によって中断された。

「何かあったんですか?」

「市街に幻獣が突入してきたそうだ。すでに市街内の陣地の一部では戦闘が始まったらしい」

「了解!戦闘体制に移行っすね」

「ああ、本部から迎撃命令が出るまで臨戦態勢で待機だ。あいつらと合流するぞ!」

 会話しながらも二人は熊本城北側陣地に向っていた。





 こうして…九州第3次防衛戦争にて最大の激戦と言われる「熊本城攻防戦」が今始まった。

















 

「皆さん、ここにいる全員が集まる事ができるのはこれで最後かもしれません。しかしです」

 善行は自分の周囲にいる5121小隊の整備班を含む全員を見ながら語りだした。

「皆は戦友です。死のうが生きていようが関係はありません。私には勇敢に戦えしかいえません。ですが、勝てば生き残れるはずです。だから勝ちましょう!」

 善行の話が終わった時、その場にいた全員が見事な敬礼をしていた。

 その様子に満足したのか善行は出撃の合図を出した

「各員、戦闘準備。5分後に前進防御を開始します」

 全員が一斉に動き出した。




 士魂号複座型に乗りながら芝村は相棒の速水に語りかけた

「厚志よ…この戦い負けられん」

 力強い声に速水も力強く返す

「うん。この戦いで全てが決まる。この世に住む生きとし生ける者達のために!」

 そしてハモった。

「「我らは勝つ!」」

 トラックよりリフトアップした士魂号複座型は戦場へと駆け抜けていった。










 

「各機、攻撃開始!1匹たりとも抜かせるな!」

 ケンの通信が入ると同時にスラッシュ小隊の面々は市街地の陣地を突破してきた集団に攻撃を開始した。



 説明をしておこう。

 この作戦の主旨は敵の包囲殲滅である。

 そのために市街地陣地の攻撃目的は敵の撃退ではなく、あくまで敵勢力の数減らしである。ある程度の攻撃で数が減少した幻獣の集団をわざと熊本城地区へ進軍させる事になっているのだ。

 そして数が減った幻獣を少しずつ熊本城を中心とした地域に集め、警備部隊と突破させた陣地部隊で足止めしつつ包囲援軍と共同で完全殲滅を目指す物である。







「こちらオペレーターズルームのルリエルでーす。北側陣地の皆さん、敵第1陣の規模ですがスキュラが10匹、ミノタウロスが30匹、他小型幻獣が100匹です。健闘を祈りまーす」

 上空で熊本城周辺のオペレートをしていたルリエルからの通信が入ってきた。

 その内容はまともな思考の人間なら泣きたくなるような内容だった。

 しかし、まともな思考を持っていない(問題発言)スラッシュ小隊にとっては普通の情報解析でしかなかった。




 ルリエルからの報告を聞いたケンは5121小隊の指揮車に通信を繋いだ。

「こちらケン!5121小隊司令、善行司令を出してくれ」

「こちら善行です。何ですか?」

 そう言いつつも善行はケンが何を言いたいのか予想はしていた。

「作戦についてだが、俺達がスキュラを殺る。その間に時間を稼いでくれ」

「了解しました…御武運を」

「俺達は死にはしない。必ず帰ると決めてるんでな…」

「愚問でしたね」

 通信を切るとスラッシュ小隊の各機は上空を浮遊しているスキュラの集団に目を向けた。

「各機、支援射撃後に作戦通りに行く。良いな!」

「「「了解!」」」



 熊本城の本丸付近に待機していた長距離榴弾砲や多連装ロケットから無数の火が放たれた。





「各機、飛べ!コウスケ援護を頼む!」

 ケンの命令と共にケン・シオン・タケルのPFがブースターを全開にして急速上昇し始めた。

 その傍らで地上に残っていたコウスケのJブラスターは両手で構えているガドリングガンをスキュラに向って撃ちまくった。

「そりゃそりゃそりゃぁー―――!」

 距離が遠かった事と弾丸をばら撒いているだけの射撃ではスキュラを殲滅する事はできない事はコウスケでも気付いてはいる。しかし、スキュラの興味はコウスケに向いており、それが彼等の狙いだった。



 スキュラ達は自分に対して豆鉄砲を撃っているコウスケ機に紅い目を向け出した。

 その目からは戦車はおろかPFでさえ一撃で黙らせる事ができる光を出す事ができる。

 その光が放たれようとした瞬間、スキュラの上方からタケルの声が響いてきた

ジャンプキャンセル!もとい、反転ブーストダイブ

 タケルのJファーカスタムが一気に落下してきた。

 そしてスキュラの上面に見事に乗っかったのだ。

 いや、彼だけでなくケンやシオンもスキュラの上面に降り立った。

「さて、皆様。存分に殺りましょう」

 ケンが攻撃を合図しようとしたのだがシオンに先に言われてしまった。

 そんな事は気にせず3人は足場としているスキュラの上面にレーザーソードやアサシンファングを突き刺した。それだけでは無い、突き刺した後は回転させたりえぐったりするなど徹底的にやりまくった。

 その間にスキュラはただ耐える事しか出来なかった。


 ケン達が対スキュラ用に考えた作戦とは、「上あたりが死角っぽいから空飛んで乗っかっちまおう」である。

 その作戦は見事に成功してスキュラが全滅するのに10分も必要は無かった。
















 

 北側陣地でスラッシュ小隊や5121小隊達が激戦を繰り広げている頃、ヴァールハイト小隊を含む西側陣地でも戦闘が繰り広げられていた。

喰らえぇぇぇーーーー!神風のロンドォォーーーーーー!」

 ケイオウの叫びと共にヘルフェニックスが両腕を広げながら超高速回転し始めた。

 そして、回転切りをしながらゴルゴーンの集団に向かって行った。

 当然のことながらゴルゴーンも反撃の為に背中のコブを広げて大量の生体ロケット弾を吐き出した。

 しかし、ケイオウはいつも敵陣中央停止をしているのである。大量のミサイル攻撃には当然慣れていた。


無駄だぁぁぁぁぁーーーーー!」

 それらの生体ロケット弾はケイオウに命中し爆発するはずだった。

 だが、一発もケイオウに直撃はしなかった。

 全ての生体ロケット弾は両腕に持っている斬馬刀の斬撃で軌道をずらされていたのだ。

 普通の人には出来ない防御法でロケット弾が無効になった事に気付いた時、ゴルゴーンの群れは見事な肉隗と化していた。





 ケイオウが見事に神風のロンドを決めた後、シェルから緊急通信が入ってきた。

「親父、ヘルヒドラ小隊(同じく西側陣地を守っていたスカウト小隊)がヤバイ!損耗率40%を超えたそうだ」

「分かった。本丸に避難させて再編成させとけ。その間、俺達でどうにかするぞ!」

「了解」

 ケイオウは即座に判断を下した。



 通常、戦力の20%を失った部隊は再編成や解散して他の部隊と併合するなどされる。

 つまり壊滅したと判断されたのである



 今、ケイオウは西側陣地の指揮官を兼任しており判断したのだ。

「こちらルリエル。敵第2波接近中でーす。戦力は…ミノ介が10匹・ナーガが30匹でーす。がんばってくださーい」

 ルリエルからの報告を聞いた後、多少黙考したケイオウは今度も特攻をしようと考えていた。

 って言うか、考えている時点ですでに動いていた。

 しかし、今度の相手の中にはナーガが含まれていた。ナーガは分類上は「多門光波砲型幻獣」と呼ばれており多数のレーザー砲門を装備していた。

 いかにケイオウ特尉と言えども多数(そんなレベルではないが)のレーザーの軌道をそらすことはさすがに出来なかった。

 激しい弾幕ゆえに見事に孤立してしまったのだ。


 こうなってしまうとケイオウ特尉の行動は一つしかなかった。


「行くぜぇぇぇぇーーーーー!」

「「やめんかぁーーーーー!」」



 ケイオウ特尉の十八番「自爆」が決まろうとした瞬間、シェルとラムスの声が響きながらケイオウを包囲していた幻獣が四散した。


「親父!こんなとこで自爆したらシャレになんねぇぞ!」

「熊本城には人がいるんですよ!」

 そうである。熊本城には未だに避難している人が残っていたのだ。その事を忘れて危うく自爆しそうになっていたのだ。

「むぅ…この頃やってないからついやってしまうところだった」

 事もなげに言ったケイオウだった。

















 

 ケイオウ達が善戦している頃、北側陣地の状況はさらに凄くなっていた。

「ミノタウロス撃破!ってまだこんなに居るんかよ!」

 92m砲でミノタウロスを撃破した滝川は戦果とは裏腹に泣き叫ぶように言った。

 今日の戦いにおいて5121小隊で最も撃破数の低い滝川でさえすでに8匹の中型を屠っていた。

 しかし敵の戦力は未だに衰えず、敵の第3波も合流してきてその数は膨大だった。

 滝川の悲鳴にも似た声に芝村は淡々と答えた。

「熊本城は元来、南からの敵を迎え撃つ為に作られた物だ。北の守りはそう厚くない以上、そこを突くのは道理のはずだ」


――補足事項だが熊本城は十七世紀初頭に加藤清正氏のよって建築された城で、薩摩の島津氏の北進を防ぐ為に設計されたのである。それ故に南側の守りと比べて北側の守りは薄かったのだ――


「それでも敵の数は膨大ですよ」

 芝村の答えに反応したのは壬生屋だった。

「それだけ幻獣も必死なんだろうね」

 作戦自体を提案した(裏工作担当)速水はあっさりと言った。

 と言っても本人も敵がこんなに集まるとは思っては居なかったが、彼にとっては芝村と一緒ならいいやと考えていた。

 そんな感じの話をしている間にも速水は幻獣の密集地点に浸透していた。

 そして、

「ミサイル発射!」

 複座型の背部に設置されていた大型ミサイルポッドから24発のミサイルが発射され、多くの幻獣が塵に帰った。

 相棒の戦歴を見ていた芝村はあることに気付いた。

「厚志よ。そなたの中型幻獣撃破数が300を越した。分かるな?」

 中型幻獣撃破数300。この数字はある勲章を意味していた




絢爛舞踏

―戦うがごとく生き、息をするように敵を殺す。人でありながら人で無き者―





 そう表現される「人類最強」を意味する称号であった。

 しかし、その称号自体に速水は大して興味を持ってはいなかった。

「そうなの?でも、僕としては君と一緒に居られる事のほうがうれしいしなぁ〜」

「たっ、たわけぇーー!」

 自分たちがどんな状況か知っている筈であるが、それでもラブラブな二人だった。


 しかし、一瞬だけ取り乱したものの芝村は真面目な顔になって呟いた。

「父の話が本当なら来る筈だ…奴らの決戦存在が」

















 

 本丸陣地


 熊本城周辺で激戦が繰り広げられている頃、本丸陣地では前線より下がって来た車両を修理する為に各部隊の整備班が必死になっていた。

「サウナ天国小隊1番車両の修理終わりました!」

「六角レンチ、誰か取ってーーー」

「しっかりしろ!傷は浅いぞ!」

「ふふふふふふふ、いい!凄くイイ!」

 その中に車椅子の整備兵、狩谷も居た。

 彼の整備技能は超1流と呼んでも差し支えなく、損傷が酷い車両を受け持っている整備班から何度も援軍要請が来ており、今はその場所に向かっている最中だった。


 そんな時、西側陣地から撤退してきたヘルヒドラ小隊のスカウトが走ってきて見事にぶつかった。

「いってぇじゃねぇか!このガキ!」

「すみません」

 そう言って狩谷はその場を立ち去ろうとした。彼から見て、ヘルヒドラ小隊の隊員達如きにかまっている暇は無いと判断したからだ。

 しかし、前線でぼこぼこにされた為か、ヘルヒドラ中隊のスカウトAとBは気が立っていた。

「それだけで済まそうってのか、ええ!」

 あろうことか狩谷が乗っている車椅子を横に蹴倒したのだ。

 無論、乗っているのだから狩谷も倒れた。

「な、何ですか?」

 理不尽な八つ当たりにも狩谷は平静をよそおって答えた。しかし、

「うるせぇーんだよ!車椅子の役立たずはさっさとくたばってろ!」

「ああ、そりゃいいわ!ひゃひゃひゃひゃ!」

 Aの身勝手な意見にBは笑いながら肯定した。

 それだけでは無い。あろうことか狩谷を蹴り始めたのだ。

「な、何を…ぐふっ」

 狩谷の言葉を聞かずにAとBは蹴り続けた。それは完全なヤツ当たりでしか無かった

(なんで僕がこんな目に…それもみんなこの足が、この足がぁーーー!)

 狩谷の心は自分の動かない足を、そしてこの世の全てを恨み始めた。



――――――――――――――憎いか?――――――――――――――――――――



狩谷の脳裏に聞いたことの無い声が聞こえた。



――――――――――この世の何処が楽しいんだ?―――――――――――――――――



狩谷は蹴られている間に思っていた事を謎の声に指摘され、少し戸惑ったものの思った。



(憎いさ。憎いに決まっている!こんな反吐が出る世界!)



さっきまで高圧的だった声が急に優しく聞こえた。



――――――だったら…全てを破壊せよ!―――――――――――――――――――――







 

 その瞬間、狩谷の体に異変がでた。

 背中が盛り上がり背骨を圧壊させ、人でない化け物に変わった

 それまで狩谷を蹴っていたAとBは目の前の後景に恐怖し逃げ出そうとした、がそれもかなわずに左手の銃から放たれたレーザーでこの世から消滅したのだった。

「コロ、コロ、コロ、ス、ス、SU」

 元狩谷は謎の声を叫ぶとその身を9m位まで巨大化させ、左手や口からレーザーを吐き出しまくった。

 本丸陣地は一瞬にして地獄絵図と変わった。















 

「ちぃ。スラッシュリーダーより各機へ。敵の第3波に仕掛けるぞ!」

 ケンが叫ぶがその時点でスラッシュ小隊は攻撃を開始していた。

 ケンは敵の密集地点の最前線で降下すると同時に大型レーザーソードでミノタウロスを袈裟斬りにしつつ、ウイングを変形させてトルネードショットでナーガの群れを牽制していた。

「包囲援軍はどうなってるんですか?!」

 同じくケンの近くでゴルゴ―ンをアサシンファングの一撃で吹き飛ばしながらタケルは叫んだ。

「集結が遅れてるらしい!まだ来れそうに無いそうだ!」

 答えたのはコウスケだった。

 彼も空から対地攻撃を繰り返してくる「きたかぜゾンビ」にガドリングガンで対空射撃をしていた。


 そんな中でルリエルから緊急通信が入ってきた。

「緊急事態です!本丸B地区にて幻獣が出現したそうです!救援要請が来てます!」

 その声はいつもと違ってかなり切羽詰っていた。

 今度は善行が割り込んできた。

「善行です。我々はB地区へ向かいます。急いでください!」

 善行の命令に壬生屋が叫ぶ

「ここを突破されたら作戦は失敗しますよ!」

 それに答えたのは善行ではなくタケルだった。

「ここは俺達が抑える!早く行けぇ!」

 いつもの話し方と違って怒声だった。

 タケルの思いが通じたのか5121小隊の士魂号は本丸に向かって駆け出した。

 ただ、速水が通信で言って来た

「死なないで下さいよ!」

 その最後の言葉にスラッシュ小隊の面々はやけになりながらも見事にハモって言った。

「「「「誰が死ぬか!そして誰も死なせない!俺達がいる限り!」」」」












 

 5121小隊が本丸へ向かい始めたころ、ヴァ―ルハイト小隊の方でも動きがあった。

「ついに奴が出たか!シェル!ラムス!ここを頼む!」

 ケイオウは叫ぶと本丸を目指そうとした。

 だが、それを止める者がいた。

「あら、ケイオウ。何処へいらっしゃるんですか?貴方の行くべき道はそちらではなくてよ」

 ゴールドであった。ゴールドは周囲によって来るミノタウロス数体を一瞬にして細切れにすると本丸とは全く反対の方向を指差した。

 しかし、ケイオウは半分怒りつつ言い返した。

「ゴールド!一体何処に行っていた!」

 ケイオウが怒った理由はゴールドが戦闘直後に行方不明になっていた事である。

 その時は友軍の事が気がかりで捜す事はできなかったが、今は目の前にいるために理由を聞こうとした。

 その声にも動じずにゴールドはいつも通りに言った。

「ええ。ちょっと熊本城のほうへ…昔作った物を起動しに行ってましたわ」

「!?!」

 ゴールドの返答にケイオウは急に感心したように言った。

「そうか…で、なんで俺が行ってはいけない?」

 怒っていた事をあっさりと無視すると、今度はゴールドのたくらみが非常に気になってきた。

「その先にある倉庫からある物を取ってきてほしいんですよ。それを彼に渡して下さいませんか?」

「分かった!」

 普通なら「中身は何だ!」や「誰に渡すんだ?」と聞き返すものだが長い付き合いである。ケイオウはゴールドの思惑を読むと一気に倉庫のあるほうへ向かっていった。

 ケイオウへの通信を切ったゴールドは独り言のように呟いた。

「さて、風が嵐を呼ぶのでしょうね

 その呟きを聞いたシェルとラムスは頭に?マークを作っただけであった。

















 

 5121小隊が本丸陣地B地区に着いた時、すでに陣地はその機能を有してはいなかった。

 あまりの被害に驚きつつも滝川は生存者を捜して外部スピーカーで呼びかけた。

「誰かーーーー生きているかーーーー!」

「生きてまーーーす」

 答えたのは田辺だった。

 彼女の後ろには多少の傷はあるものの5121小隊の整備班が無事に立っていた。

 しかし、速水はその中に狩谷が居ない事に気付いた。

「狩谷君は?」

 切羽詰ったように言うと田辺は申し訳なさそうに答えた。

「ごめんなさい…敵が来た時、彼…他の車両の手伝いに行っていたから分からないんです」

 話している途中に田辺は泣きそうになった。

 その様子に見かねた滝川は声をかけようとしたとき、瀬戸口から通信が入ってきた。

「お前等!敵が近づいて来てる!かなり早いぞ!」

 瀬戸口の通信を聞いたとき、4人のパイロットはすぐにその場を離れた。生身である整備班の近くで戦闘しては危険であるからだ。





 瀬戸口のオペレートに従って移動している時、遂に彼らはそいつと遭遇した。

 その体から放つ異様なオーラに4人は今まで感じた事の無いプレッシャーを覚えた。

 そんな中で手が震えるのを我慢しながら芝村は誰にとも無く言った。

「竜だ…」

「竜?」

 芝村の呟きに反応したのは速水だった。

人にとっての決戦存在「絢爛舞踏」が居る様に幻獣にも「竜」が居る

 芝村が語り終わった瞬間、竜は左腕からバスターランチャーよりも高出力のレーザーを放っていた。

「くっ!」

 3機の士魂号は辛うじてかわす事に成功した。






 

 壬生屋は態勢を立ち直すと両腕の大太刀で竜に斬りかかって行った。

「我が一族の使命!あしき夢よ、今ここで全ての悲しみを終わらせます」

 彼女は自分の家に代々伝わる「使命」を目の前の敵を倒す事と感じ取り、「使命」を果たそうとした。

「グルゥゥアァァァァァーーーーーーー!!」

「そんな…!?」

 だが、壬生屋の渾身の一撃も竜の前には大して意味を為さなかった。

 大太刀を右腕で軽く受け止めると同時に、口で壬生屋機の左腕を食いちぎりながら尻尾で吹き飛ばした。

「スイマ…セン。機体は動きそうに無いです」

 そう言って壬生屋は失神してしまった。


 速水達が竜の強さに戦慄を覚えている時、竜は食いちぎった士魂号の右腕を食べていた。

「滝川!奴の足をとめて!」

「しゃーなろー!」

 速水の要請に答えて滝川は両腕で持っている92mライフルを連射した。着弾と同時に竜の周りに爆煙が充満する。

 これで足が止まる、と考えた速水は一気に竜に接近して攻撃を加えようとした。

 だが、爆煙が晴れた時すでに竜はその場に居なかった。

「う、うわぁぁぁぁぁーーーーー!」

「滝川?!」

 滝川の絶叫を聞き取り速水が後ろを振り向いた時、そこには頭部を失い全身から人工血液を垂れ流しつつ大地倒れている士魂号と、その士魂号からむしり取った頭部を食べている竜が立っていた。

「くそ!」

 芝村は竜をロックすると背部ポッドから24発ものミサイルを発射した。

「ウウウグゥゥワァァァァーーーーー!」

 芝村の勝利を確信したミサイルも竜はあっさり回避した。その機動力はJフェニックスをもはるかに凌いでいた。

 そうこうしている間にも竜は左腕を構えてレーザーの発射態勢に入っていた。

 速水達は回避しようと必死だった。

 しかし、先のミサイル発射からほとんど時間は過ぎていないため、いまだに回避行動に移ることができなかった。


「舞!」

「厚志!」


 二人はお互いに死を感じて名前を呼びあった。

 この時、二人の頭に聞いたことの無い声が聞こえた。


 ―――――――――――逃げて。逃げて今度こそ彼を許して…――――――――――――


 二人の士魂号操縦装置が急に切り替わった。


――脱出装置作動――



士魂号3番機の背部から2機のポッドが射出された。

 その中には速水と芝村がそれぞれ乗っていた。

「舞…士魂号が逃がしてくれたのかな?」

「何も言うな!我らが戦友よさらば!」

 二人はポットの中で消滅した士魂号に対して敬礼をした。















 

 ポットが着地した。

 芝村の着地位置は士魂号からかなり離れた場所だった。

 だが、速水は違った。

 彼のポットは士魂号の爆発の余波で飛距離が伸びず、比較的竜に近かった。

 自分の状況を確認した速水は一歩も引かずに目の前の竜を睨んでいた。

(舞の為にもここで引くわけにもいかないしなぁ〜)

 彼の頭には「舞を護る」しかなかった。

 だからと言って、別に竜が手加減する理由は無くて速水に左腕を向けた。

(あ〜〜あ。これで終わりかぁ〜。もう少し…舞と一緒に居たかったんだけどなぁ〜)

「厚志!」

 舞の悲鳴が彼の耳の届いた。

 その叫びも虚しく竜の左腕が光り始めた。速水は目をつぶった。

「さよなら…舞。」

 速水は最愛の人の名前を呟きながら消滅すると思っていた。

 だが、いつまで経っても自分が死んでないことに気付き両目を開けると目の前に

神々しく洗練された体を持つ巨人が立っていた。









 

「何これ…」

 目の前に立つ巨人を前にして速水は呆然と呟いた。

 巨人は速水を確認するとコクピットを開け、その中に入るように器用に指差した。

 その光景を見た速水は迷うことなく巨人の中に乗り込んだ。

 いくら彼でも生身で竜と戦闘することは不可能であるし、

(この機体…何か知らないけど、このために存在している気がする…)

 と考えたからだった。





速水は巨人のコクピットの中に乗り込んだ時、コクピットの中の計器類が作動した。

 それだけでは無い。正面のモニターに文字が映った。

 ――――OVERS システム 起動OK――――
KONNITIWA PAPA GO!GO!



(パパって誰や!)

 速水の脳裏に一応は芝村が映ったもののすぐに否定した。

 そんな中でコクピットの隅に置いてあったCDプレイヤーから女性の声が流れ出した。

こんにちは、どこかの誰か。私はこの機体を製作した聖女です。この機体は世界を良い方向へ導く為に作られた「夢を観る機械:士翼号」です。そのAIと一緒に世界に良い夢を見させてください。では♪」

 そう言ってCDプレイヤーは爆発した。


「…」

 あまりに急な展開の為に一瞬だが何も喋れなかった。

 だが、すぐに気を取り直して網膜投影される竜の姿を睨みつけた。

「今度こそ…みんなの為にお前を倒す!」

 速水の乗った巨人・士翼号は猛然と竜へ目掛けて駆け出したのだった。












 

 ズガガシャシャァァァーーーーーーーーン!!!!


 士翼号の蹴りが竜に見事に決まった。竜は熊本城の外壁に激突した。

 しかし、竜も負けて入られないと思ってか左腕からリング状のレーザーを発射し返した。

「くっ!」

 速水のうめき声とは裏腹に士翼号はそのレーザーを難なく回避していた。


 PAPA! BOKUDATTEIRUNDAYO


 モニターの端に映った文字を見て士翼号が回避してくれたのだと速水は実感した。

 速水が士翼号の動きに慣れてくるようになると竜は防戦一方になった。

「このぉぉーーーーーーー!」

 速水の怒声と共に放たれた拳が竜の腹部にクリーンヒットした。

「まだまだぁーーーー!」

 追撃と言わんばかりに竜を地面に倒すと、マウントポジションを取りながら顔面を殴り続けた。

 速水の容赦皆無の攻撃に竜は全身で痙攣していた。

 速水は勝利を確信しトドメの精霊手の一撃を放とうとした。

 まさにその瞬間、竜の顔が狩谷の顔に変わった。


「は…ヤミ…ハヤク…ボクヲころ…して…」

 竜の顔が突然に狩谷の顔となり、速水はトドメの一撃を繰り出す事が出来なかった。

 その瞬間を竜は見逃さず、マウントポジションを取っていた士翼号を逆に蹴り返した。

「ぐはっ!か、狩谷君?どうして…?」









 

 速水の問いかけに狩谷は苦しそうに答えた。

「僕は…さっきスカウトの人達に理不尽に蹴られていた時…何か解らない声に反応してこの世を憎んでしまったんだ…速水!頼む、こんな姿でみんなを殺すなんて嫌だ!早く殺してくれ!」

 狩谷の声は必死だった。先ほどまで全てを憎んでいたが心の底では希望を持っていた。しかし、このままでは全てを無に返してしまう。そんな思いから親友に討たれる事を選んだのだ。

 だが、戦友である速水にとって彼を討つ事は出来なかった。

「出来ないよ!出来る訳ない!」

「ハ…やく」

 狩谷の必死のうめきに反して竜本体は士翼号に攻撃を繰り返していた。

 対する速水は狩谷への攻撃に対する心理的抵抗から防御しか出来ないのであった。

 同じ決戦存在である、竜の攻撃は凄まじい物で士翼号は膝をついてしまった。

 目の前で自分の体がやってしまった事に狩谷は叫んだ。

「僕が…僕が全て憎んだからいけないんだぁーーーー!」

 狩谷の絶叫に速水は答える余裕はなかった。

 ただ、どうしたらいいのかと言う考えで一杯だった。

 そんな時に指揮車から予想外の声が聞こえてきた。

なっちゃん、メーーなの!大事なのは昔でも今でもないのよ!大事なのは明日なの!だから諦めたらメーーなの!」

 指揮車でオペレーター補佐をしている東原ののみだった。

 あまりの唐突な声に速水も狩谷も呆然となった。

 しかし東原のとんでもない事はそれだけではなかった。


 ――貴方の差し出す手を取って私も一緒に走り出そう。私は今一人じゃない――


 東原はガンパレードマーチを歌い出した。











 

 南側陣地で戦っていたグレン小隊にもそれは聞こえてきた。

「何だ?いきなり何だってんだ?」

 蟻の様に迫って来るゴブリンをキャノンで蹴散らしながらキースは叫んだ。

「私に聞いたって分かる訳ないでしょ!」

 アイリは叫び返していた。

 そんな中でグレンリーダーはサリアが何かを言っているのに気付いた。

「サリア…どうした?」

 しかし、サリアはそんな声も聞かずに歌っていた。

 ――幾千万の貴方と私で立ち向かおう。そうよ未来はみんなとある――





 東原が歌いだしてから次々と他の者まで歌いだした。

 ――全軍突撃。オールハンデット・トゥ・ガンパレードマーチ――

 その歌声はすでに熊本城だけに止まらず熊本市街地はおろか熊本城に避難している人たちにも伝わった。









 

 その様子を見た速水は大声で叫んだ

「狩谷君!どんな事が会っても君を助け出す!それが今の僕の為すべき事だ!」

 速水が叫んだのを熊本城の天守閣の上で確認したケイオウは、特殊回線で速水にばれないように通信を送った。


 ―今人類は滅亡の淵に立っている。汝に全ての敵を滅ぼす力を授けよう―


 ばれない様にボイスチェンジャーでカードデッキを配り歩きながらいろんな人を戦いに引き釣り込んでいる男性の声を再現しながら話し掛けた。

いえ、そんな力は必要ないです

 速水は即座に否定の言葉を口にした。

 ニヤリとしながらケイオウはさらに続けた


 ―力がほしいのではないのか?―


 その問いに速水はしっかりとした口調で返した。


今必要なのは想いに答える力。自分の信念をつらぬく心の力がほしいです


 ―力の在るべき姿を理解しているようだな。認めよう!世界をよき方向へ導け!―


 そう言ってケイオウは天守閣にさしておいた物…ゴールドから頼まれていた物を士翼号へ投げつけた。


 ―それは汝の敵のみを滅ぼす物だ。受け取れ!―


 投げつけられた物を士翼号は取った。








 

 士翼号の腕に持たれているもの、二つの刃の間に一つの勾玉がはさまれた刀、最強の武楽器「剣鈴」であった。

 その武器を持った速水は頭に何をなすべきかを理解した。

「狩谷君!今助ける!だから信じて!」

 そう言うと速水は士翼号に剣鈴で請願に構えると竜に向かっていった。

「速水…今…だ」

 狩谷も速水に一撃で決めてもらう為に必死で抵抗した。竜の動きが鈍くなった

「あしき夢よ!今、ここに朝を呼ぶ!去れぇぇ――――!」

 剣鈴が青い光を放ちながら振り落とされた。















 

 士翼号が剣鈴を振り下ろした先にはすでに竜は消滅していた。

「狩谷君!?」

 足元を見ると狩谷が倒れていた。

「うっ…生きて…る?」

「狩谷よ。汝は生きている。あしきゆめはそなたから去った。」

 速水の次に戦闘地区に一番近かった所にいた芝村が最初に狩谷に接触した。

「狩谷君大丈夫ですか?」

「狩谷〜生きてるか〜」

 そして続々と5121小隊の面々が狩谷を心配して駆けつけてきた。

 その様子を見ながら速水は思った。

(僕にも…人の幸せを守れるんだ…)











 

 速水が竜を倒した頃、周囲の状況は一気に変わってきた。

 北側陣地では5121小隊が抜けた穴を埋めようとスラッシュ小隊の面々は必死に戦っていた。

「くそ。キリがねぇ!」

 コウスケはすでに弾薬が切れた武器を捨てるとレーザーソードを構えて目の前の敵に集中し始めた。


 その時、空から爆音と共に小型の爆弾が幻獣の群れの中に大量に落ちてきた。

 上空を見るとF15J「イーグル」とF4EJ改「ファントム改」が爆撃を開始していたのだ。

「こちら第83飛行団、第2飛行小隊。今から支援を開始する」

 それだけではなかった。

「こちら自衛軍第2機甲大隊。包囲殲滅戦を開始する。もう少しの辛抱だ、踏ん張ってくれ!」

 彼らの予想では後1時間は包囲援軍が遅れると思っていたのだ。

「助かった〜」

 あまりにタイミングよく包囲援軍が動き出した事で気が抜けたのかタケルはほっと一息ついたような気分になった。

「まだ敵は残っている。今死んだら話にならん。全機、絶対に死ぬな!」

「「「了解」」」

 彼らは生きるために戦場へと駆け出していった。







 

 同じ頃、東側陣地でもゴールドは呟いていた。

「どうやら運命は人類の方へと向いたようですわね」

 そう言いながら目の前のミノタウロスを葬っていた。








 

 包囲援軍の攻撃開始によって熊本城攻防戦は人類の勝利で終わった。

 この戦いで戦死者は膨大な物だった。

 だが、その誰もが人類の明日を信じて散っていった。

 この戦いを契機に熊本戦線で人類の優勢が明らかになるのは自明の理であった。


















 

 熊本城攻防戦から早1週間。

 その間に人類は一気に優勢となった。

 なにせ熊本内の幻獣の大半を撃破したのである、ミリタリーバランスが人類に傾かないはずが無い。

 政府の考えとしては熊本さえ残っていれば九州での防衛は成功と考えているのである。(作者は理由を知らないが、おそらく九州の中心地点だからと思う)

 ほとんどの人がこの戦争での人類の勝利(防衛戦争であるが)を確信していた。




 そんな中で、アルサレア用基地の屋上でケイオウとルリエルとサリアがのんびり日向ぼっこをしていた。

「平和ですね〜」

「そうだな」

 熊本城攻防戦が終わってからと言うもの、5121中隊が本気で必要とされる戦闘が少なくなり、こうして日向ぼっこしている時間でさえ取れる状況になっていた。

「善行さん達元気でしょうかねぇ〜」

 強いて変わった事があったとすれば、それは善行の関東帰還である。

 善行は整備班の茜大輔を連れて関東に帰還したのだった。

 その後、5121小隊の司令は3番機が複座型から士翼号になった為に追い出し無職となった芝村舞が務める事になったのだった。

「このまま帰れればいいんですけどねぇ〜」

 本当に平和そうである。

 この時に阿蘇山で何が起きているのかも知らずに…














 阿蘇山:とある洞窟


 洞窟の中にきれいな金髪を持っている女性が立っていた。腕には少し大きなバックを持っている。

 彼女は目の前の社を確認すると片方の腕をその社に向けた

 その瞬間、彼女の腕は銃に変化して社を木っ端微塵に吹き飛ばした。

 それと同時に周囲が暗闇に覆われた、たくさんの獣のうめき声と共に。













5話に続く
 



 後書き

 つー訳でようやくゲーム編が終了しました。
 書いていて気付いたんですが、原作を知らないと理解できないという問題が浮上してきました(烈汗)
 と言っても、次から作者原案のオリジナルシナリオを展開していきます(内容がすごく不安)。
 後、キースの断末魔を募集しようかななんて思ってます。(条件は版権に違反しない・大声で伸ばせる叫びです)

 謎が多すぎてどう収拾つけるのか不安ですが夜露死苦お願いします。m(--)m








 用語集


 熊本城:文字通り熊本にある城。詳しくは文中にて


 熊本城攻防戦:ゲームでも結構重要な一戦。説明は劇中の通りであるが、市民が避難しているについては作者のオリジナル。これは幻獣オリジナルと言う理由で、なんで幻獣が来るのか理解できなかった為である。


 サウナ天国小隊:ゲームに出てきた小隊。名前が面白かったので名前だけ出した(笑)。


 ヘルヒドラ小隊:いい名前が思いつかなかったのでとりあえずとして考えられた小隊。狩谷を暴走させる為だけの存在。


 絢爛舞踏:300機の敵を撃破したときもらえる勲章。ゲームでは簡単に取れる。


 :幻獣の決戦存在。ゲーム版・CDドラマ版のラスボス
補足説明だが、何故狩谷が変身したか?<これについてはシナリオ集やネットでもいろいろな仮説が立っていてどれが真実か解らない為にオリジナルでいきます。
狩谷が事故になった時、彼の下半身に聖銃が埋め込まれてしまい、それが発動した。しかも、それの所為で下半身付随になっていた。という設定に今回はさせていただきます


 壬生屋の使命:俗に言う退魔士の様な一族なので(同社の「式神の城」にて同じ壬生屋一族が出ている)悪魔払い的な使命


 ガンパレードマーチ:タイトルにもなっている歌の名前。小説版やゲーム版によって歌詞が違う。ゲーム版ではこれを戦闘中に歌うと能力は上がるが「敵味方構わず撤退不能。どちらかが滅びるまで戦う」になる。


 士翼号(ウイングオブサムライ):開発コードネーム「嵐の王」と呼ばれる最強の兵器。ゲームでもかなりの高性能を誇っている。
完全機械式の体を持っている。
AIと操縦者の二人で操縦する
なお、今回はCDドラマ版をベースにしている為OVERSシステムを搭載しており、しかもゴールドが作った代物になっている(勝手に設定を付け足して踊る風さんスイマセン)。通称「夢をみる機械」・「世界最強のゲーム機」
他にもいろんな設定があるものの省略させていただきます。


 OVERSシステム:今回はただの制御システムとして出しているが、実際は「あらゆる困難を突破するHEROを実在化するためのシステム」(その設定を使うと話をややこしくする為却下しました)
正式にはOmnipotent Vicarious Enlist a Recruit Silent System
であり、「それは全能の代理を微募せし物言わぬ機構」の意味を持つ


 剣鈴:小説版ガンパレードマーチに1コマだけ出てきた速水の夢の中で士魂号が使っていた物。武楽器と呼ばれる。説明は劇中にて。


 F15J「イーグル」:現実の世界でも自衛隊の主力になっている戦闘機。


 F4EJ「ファントム改」:以下上文と同じ


 何で竜が死んだのに幻獣が消えないのか?:知りません(断言)CDドラマ版でもそうでしたし、話が続かないからと思ってください。オリジナルの設定として「歴史が人類に傾いた」と解釈してます




 今回の説明はこんな物です

 


 管理人より

 神楽歌さんより第4話をご投稿頂きました!!

 ・・・・何だか凄いな、ケイオウ達(汗)

 ただ、一言だけ。





 「自爆はするな!!」(核爆)
 


[感想掲示板へ] [目次へ] [投稿部屋へ] [神楽歌さんの部屋へ]