読む前に:この話はガンパレードマーチのシナリオを元にして構成されています。話の中でのセリフのほとんどが作者が考えた物ですが、「原作のセリフを元にしたセリフ」がたまに入る事があります。話の関係上の為ですのでご了承ください



これは二つの物語が一つになった一例である。









機甲兵団Jフェニックス+高機動幻想ガンパレードマーチ



翼と翼をつなぐ歌









 

 第2話「そういやJの人類って、元地球人だったな」




 殺風景な部屋に2人の男性と一人の女性が居た。

 一人はケン・サンジョウ。彼は先の戦闘で接触した集団(地球の軍)との交渉のために来ていた。



(…高級将校の割りには意外と質素な部屋だな…)

 この部屋に入って来た時のケンの第一印象がそれだった。

 部屋にはさして装飾品も無く事務用のスチール机が一つと少し広めのソファーが二つでテーブルをはさんで向かい合ってあるだけ。壁には巨大な九州の地図が張ってある。それだけである。



「俺は小細工は好かん、本題から入るが、貴様らの望みは何だ?」

 目の前の「準竜師」と呼ばれる男が言ってきた。

 単刀直入に言ってきた事にケンは意外にも好印象を感じた。

「…聞くまでもない事だと思うが?惑星J…アルサレアへの帰還以外に何があると思う?」

「ふん、聞く間でもない事だな…。我が従兄妹殿、実験のほうはどうなっている?」

 準竜師は隣に座っていた女性、芝村夕子に目を向けずにそのままケンを見ながら話し出した。


「そうね。2名のうち1名…つまりミラーソードね。彼が帰ってきてくれた事からもう一度の転移は可能だと思う。ただ…」

 そこまで言って夕子は言葉を止めた。

(おおかた、俺らを戦力として組み込む気だな。)

 夕呼が言葉を止めた理由をそう考えたケンは機先を制して言った。

「こっちもただで望みを言う気は無い。多少の条件が出るが、なにせ「タケル」の故郷だからな、一応は。それに俺達は傭兵出身だ、雇われる形で協力を申し出たいと思う」

 ケンは一方的に喋り捲った。

 実際、アルサレアは傭兵が集まって出来た国だ。雇い主との交渉方法に多少の違いは出るものの、大半の兵は交渉術に長けていた。

「そちらから参戦を願い出るとはな…。それで条件は?」

「そうだな…まず…」





 30分経過





「それで良いな?」

「こちらとしても不都合は無い。むしろ良い買い物をした気分だ」


 30分間の間、ケンと準竜師はその場に居た夕呼を無視した形で交渉をしていた。

 その夕呼はと言うと交渉の間中に手元の端末とにらめっこをしていた。

 隣の夕子に顔を向けながら準竜師は

「従兄妹殿、こちらの交渉は終わった。何か言う事はあるか?」

 淡々と夕子に言った。

 それに応じて夕子

「そうですね…まず、次の転移ですが装置の規模を大きくしなければ全員の転移は難しいわね。期間にして…1,2ヶ月。そのくらいあれば惑星Jとつなぐ事は可能ね」

 事実上の契約期間の発表であった。

 ケンは交渉の間中にも横目でではあるが夕子のことを観察はしていた。何をしているのかは気付かないでいたが、よもや帰還の為の準備期間を算定していたとは全く考えていなかった。


 不意に交渉に来る前にタケルに言われた事を思い出した。



――先生は性格がひねくれていてやることも自分勝手で無茶苦茶だけど、自分の利益よりも何か別の…うまくは分からないですけど別の考えで動く時があるんですよ。まぁ、悪い人じゃないです。――



(なるほど…確かに普通ならそんな細かい事は言わないはず。当面は信用にたる人物だな)

 ケンの心の中で考え終わったことを見透かしたかのように準竜師は話し掛けた。

「以上だ。もう用はすんだ。以後、貴君達と5121小隊と合同で『第5121独立駆逐戦車中隊』を編成してもらう」

 準竜師の一言に夕子は一言突っ込んだ。

「その名前…小隊を中隊に変えただけじゃないの!」

 夕子の声が狭い部屋に響いた。
















 

 尚敬高校内部第62戦車学校プレハブ



 5121小隊所属のパイロット4名は先日の戦闘の反省会をしていた。

 何故過去形かと言うと、2回目の戦闘、つまりアルサレア勢との邂逅の話になった時、2番機のパイロット・滝川陽平がPFについて、およそ関係の無い話に持って行ってしまったからである。

「だからー!俺達の士魂号もあんな風にしようぜ!」

 滝川は拳を強く握って力説していた。ロボットアニメが好きな滝川にとって大○原氏のデザインのPFは彼の理想的なデザインと一致していた。現に片方の手にはプラモデルが握られている。

「この、たわけ者!!!」

 またも芝村舞の怒声が響き渡った。

 隣に座っていた速水厚志が何とかたしなめながら喋った。

「でも、滝川。あの機体の何処が良いの?士魂号のほうが絶対良いって!」

 あくまで士魂号のほうが良いと説得する速見に滝川は続けた。そうしなければ隣からまた大声が来るからだ。

「背中に武装が取り付けられるんだぜ!それにあの装甲、かなり頑丈そうだし。何よりブースターが付いてる!」

 速水に言い返すことは出来なかった。滝川の話す内容は(珍しく)的を得た内容だった。

 反省会でも出たことだが滝川の戦闘方法は主に立ち止まっての射撃戦が多い。

 だったら1番機と同じく軽装甲から重装甲に変えるべきである。


 だが、

重装甲なんてかっこ悪い!やっぱ軽装甲じゃなきゃな!」

 と周りに駄々をこねながら呆れさせていた。

 速水は自分だけではダメだと思いもう一人のパイロット、壬生屋未央に目線を向けた。

 しかし、速見の目論見は打ち砕かれた。

「確かに…あの機体の方が格闘戦向きですね。」

 壬生屋もまたPFのほうが自分にむいていると判断していた。

 味方が増えた事に機嫌を良くしたのか滝川がうっとりしながら言った。

「あの紺色の機体の翼のパーツ、アレを開きながら空から撃ちまくる…いいぜぇ!最高だ!」

 これ以上の反論は無駄だと考えたのか速水も芝村もこのまま滝川に夢を見させておいてやろうと思った。どうせ、士魂号をあんな風に改造なんて出来ないのだから妄想だけでもやらせておいてやろうと思ったのだ。

「それにしても舞。あの人たち、これからどうするんだろう?」

「それは上が決める事だな、厚志よ」

 二人は窓の外の校庭のど真ん中に置いてある輸送機を見ながら口にした。










 

 輸送機の中



「…なぁ、ルリエルちゃん。輸送機…ここに停るのはちょっと不味かったんじゃない?」

 キースは少し戸惑ったように言った。

 ルリエルが輸送機を止めた場所、それは近くの学校の校庭のど真ん中である。

 キース他数名もこの状況に戸惑っていた。

「だって、向かい側にある基地に停めていいか分からないですし。何処に停めろとか指示は無かったんですから。」

 あまりに自分勝手な内容にキースは思った。

(昔はこんなんじゃなかったのに…誰の影響だよ?)

 そう思わずにはいられないキースだった。



「隊長。何故、ケン少佐が交渉役だったんですか?」

 ルリエルとキースが話している所とは別の場所でアイリはグレンリーダーに疑問を聞いていた。

「ん?何だ、その事か。ケンに言わせると「お前が行って人質にされたら困る、一応は小将だしな。特尉は…そんな階級で行ったなら『人質にしてください』と言ってる様なものだ。」といった具合だ、アイリ」

 グレンリーダーはケンの喋り方を真似ながら答えた。

 それにうなずきながらアイリは言った。

「そうですか。…交渉、大丈夫でしょうか?」

「大丈夫だろ。あいつ、単純馬鹿に見えるが実際はかなり腹黒い。その点は問題無い。」

 信頼しているのは良いが友人を腹黒呼ばわりするのもどうかと思いつつアイリは納得した。





 その様子を見ながらタケルは救われたと思っていた。

(みんな…俺が惑星Jの人間じゃないって言ったのに何も責めたりして来ない…前の時と違ってみんな、良い人たちだな。)

 前回の戦闘の後、タケルは自分が惑星Jの人間でないと言う事を通信で伝えたのだ。タケル本人としては、周りから白い眼で見られると思って覚悟していたのだ。

 だが現実はと言うと、自分のいた部隊が全滅した事で慰めばかりか励ましてをもらったのである。

 そして、「一人にしてくれ」と言った時、さらに励ましの言葉とその要求が飲まれたのだ。

 タケルは自分がアルサレアに行った事を感謝していた。












 

 そのころケイオウ特尉達ヴァールハイト小隊は輸送機の中で人目につかない場所に集まっていた。

「親父、どうやら戦局は前より悪化してるみたいだぜ。」

 シェルは先ほどの間に輸送機が止めてある学校に忍び込み、できる限りの情報をコンピューターから落としてきた内容から判断して報告した。

「だろうな…ユーラシアも落ちたみたいだしな、ここの戦況も悪化の道をたどるだろう。」

 今後の戦況予想をケイオウは落ち着いた様子で淡々と口にした。

「特尉、Jに居るエスバット達を呼び戻しては?」

「それでも時間はかかる。ゴールド、前に作った切り札はどのくらい残っている?」

 ラムスの提案に答えながらゴールドに話し掛けた。

「そうですわね…前に作った物でしたら、ほとんどを破棄しました。残りは何処に置いたか忘れましたわ。」

「そうか…」

 ゴールドの涼しげな解答にケイオウはまた黙考した。

 それに対しシェルとラムスは言った

「アレを使えば変わるのでは?」

「アレならこの星を救えるはずですよ。」

 その提案にケイオウは首を振る事は出来なかった。



 心の中で二人の養子からの提案について黙考している時、機内無線からルリエルの声が流れた。

『機内の皆さーん!少佐が帰ってきたので至急にブリーフィングルームに集まってくださーい!』













 

 輸送機内、ブリーフィングルーム



 ブリーフィングルームには各小隊の面々、それに輸送機内に居たルリエル配下の整備分隊総勢10名が集まっていた。

「交渉は終わった。要はあのおっさんの私兵だ。さっきの5121小隊とか言う奴らと中隊を組めだとさ。それから…」

 帰還したケンは、早速にも傭兵として雇われた際の契約内容を話し始めた。

 その手始めに部隊の運用について話し始めていた。

「俺達はあくまで遊軍扱いらしい。本部とかいう奴らからの依頼が無い時は5121の奴らと相談して戦場を決めて良いって訳だ。で、5121との協議の結果だが、当面の出撃先は熊本市街地に決まった。」

 ここまでの内容に誰も反論する事は無かった。

 そもそも、ここに居る小隊は基本的に遊軍として行動ばかりしている、賛成はすれども反対はする理由は無かった。

「補給の面はどうなっているんだ?」

 そう質問したのはグレンリーダーだった。

 昔から「素人は戦術を語り、玄人は補給を語る」という言葉が有るとおり、補給というのは現代において直接の戦闘よりも重要視されていた。

「それについてはルリエル。あちらで生産されている電子製品や重工業部品のリストを貰っている。後で5121から整備員が何人かくるから、一緒に整備に使えそうな部品をリストアップしておいてくれないか?」

 ケンの発言にルリエルは答えた。

「了解しましたー。でも、足りない部品はどうするんですかー?」

「それについてだが…受注生産になるそうだ…」

 その言葉の意味を理解したグレンリーダー、コウスケ、ヴァ―ルハイト小隊の面々の顔が曇った。

 理由を理解していないサリアやキースはひたすら悩んでいた。


 何故、彼らの顔が曇ったか?

 それは受注生産をすると言う事はこちらの技術を提供して作ってもらうになる。

 そうなればPFの軍事機密に触れる事になるからである。

 悲惨な状況でさらに悲惨な気分にさせてはいけないと思ったのかケンは強引に話題を変えた。

「後、住む所は向かい側の基地が空きだから使えだって。」

 そして、最後に言葉を付け足した。

「最後にだが、俺達の雇い主…準竜師とか言う階級で、俺らの階級で言うなら中佐らしいんだが。そいつから簡単な挨拶をするって言ってた。」

 そう言って全員が見えるようにモニターを置いた。

 プッン

 モニターの起動音とともに画面に男の顔が画面一杯に映った。

 準竜師である

「俺だ。」

 挨拶も無しにいきなりだった。

「貴公等だが存分に戦え。以上だ」

 そう言ってモニターから画面が落ちた。


 あまりの急展開に混乱する者や呆れた者もいた。その中でアイリはサリアの異変に気づき声をかけた。

「どうしたの、サリア?」

 しかし、サリアは答えなかった。よく見ると気絶していたのだ。

 サリアの気絶理由だがおそらく準竜師の顔がドアップで映ったのが原因であろう。

 あえて今まで準竜師の顔について言わなかったが、一言で言えばつぶれたカエルのような顔である。体格も割腹がよく、軽く100キロは超えているのであろう

 そんな者をいきなり見たのである、見事に気絶したのであった。





 そんな中でルリエルは配下を連れて格納庫に行こうとしていた。

「と言う訳で、格納庫に行ってきまーす!」

 元気に走り出した。

 しかし、足元に工具箱が置いてあった事に気付いてはいない。
誰もが転ぶと確信していた。


 しかし転ばなかった


(ルリエルが工具箱をひっくり返さないなんて!)

 その場の全員がそう思った。

 しょうもない事で意見が一致する集団である…













 

「ケン、ちょっと良いか?」

「…ダメ。」

 ルリエルが部屋を出て行った後、ケンにコウスケがシオンを連れながら話し掛けてきた。

 しかし、ケンは話を聞く前に却下した。

「お前…ふざけてるだろう?」

「気のせい、気のせい…で、何の用だ?」

 どこかの犬猿の仲コンビの様な漫才をした後でケンはヤレヤレと言った具合に聞き返した。

 コウスケは「いつもの事」と分かっている為、特に気にせず話し出した。

「お前…タケルが宇宙人だって知ってたのか?」

 その質問にケンは後ろを向いて思いっきり含み笑いをした。そして、そのまま話し出した

「まさか。確かにタケルがそんな感じの事を病院で言ってたことは知っているし、グレンリーダーにもその事は伝わっている。最も、それがホントだなんては予想もしていなかったがな。」

「貴方は一体…どんな基準で部隊の人員を選んでるの?」

「信じられない」という表情でシオンはケンに言った。

 そのケンはというと、

「俺の場合、腕が良くて性根が腐っていなければ、「来る者拒まず・去る者追わず」で選んでるんだがな。」

 その内容にコウスケとシオンは呆れてしまった。

 コウスケは呆然と呟いた。

「…そうだよな。お前ってそうゆう奴だったな」

「当たり前だ。だいいち、タケルの話の内容を虚言癖だと言う奴が居たとしても、虚言癖自体はお前の高校時代で十分に慣れている…」

 否定できない内容にコウスケは一言も言えなかった。

 ただ、話に混ざっていないはずのグレンリーダーのかすかな笑いが二人の耳に届いているだけだった。











 

 格納庫



「ルリエルちゃん、がんばってるねぇ〜」

「ルリエル。どう、調子は?」

 ケンとシオンとコウスケがしょうもない議論を繰り返しているころ、キースとアイリは格納庫に居るルリエルの下に来ていた。

「キースさん、アイリさん。はい、今来ている人達のおかげではかどっています。」

 そう言って彼女に近くにいた3名の人にアイリとキースは目を向けた。

 さらにルリエルが続ける。

「まず、この人が原素子さん。そして田辺真紀さんに車椅子の人が狩谷夏樹さん。3人ともかなり優秀なんですよ〜」

 そう言いながら一人一人の名前を紹介して行った。

 アイリとキースも自分達のことを紹介し始めた。

「オレッチはキース・エルヴィン。お嬢さん方よろしくぅ!」

「…ホント分かってないわね、キース。えっと、私はアイリ・ミカムラです。よろしくお願いしまーす」

 二人の自己紹介に5121整備班の3人も答える。

「さっきもルリエルさんに説明して貰ったけど、私が原素子よ。5121小隊で整備班班長を務めさせてもらっているわ。」

 原素子は元カレの善行忠孝には絶対に見せない微笑をしながら答えた。

「わ、私は田辺真紀です。その、あまり役に立たないかもしれませんがよろしくお願いします。」

 田辺はおどおどしながら自己紹介をした。

 2人の説明が終えたところでキースは内心でナンパをしたいと思っていた。

 だが、隣のアイリから「やったら殺す!」というオーラに押されて出来なかった。

 そうこうしている間に3人目の車椅子の男が話し出した。

「自分の名前は狩谷夏樹です。こんな車椅子ですがその事で特別扱いされないようにがんばってます。」

 狩谷の発言を気に入ったのかアイリは狩谷の両腕を掴むと思いっきり顔を近づけて言った。

「良く言ったわ!なんかあったらお姉さんに何でも言いなさい!」

 突然の事である。物見事な静寂が周囲を襲った。現にその場のアイリ以外の者は呆然とするしかなかった。

 静寂に包まれる中でルリエルは己の保身に走った。

「リストアップ終わったので私は失礼しまーす」
そう言いながら格納庫から出て行こうとした。だが、

「わきゅっ!」

 事に工具箱をひっくり返しながらこけた。

 助けようと田辺が近寄って行き、ルリエルを起こそうと手を伸ばした。

 その時、

「「ふぎゃっ!」」

 なんと彼女達の頭の上に何故か金ダライが落ちてきたのだ。その一撃に2人は気絶一歩手前まで陥った。


 キースは駆け出して二人に近寄っていった。内心ではチャンスと思っている。

 けが人(?)を助けるという大義名分のもとでナンパができるのである、逃す理由をキースは持ち合わせていなかった。

「お嬢さん方。大丈夫かい?」

 そう言って二人に手を伸ばした。

 キースは「成功だ!俺の勝ちだ!」と思ったに違いない。

 だが、田辺はともかくルリエルが居た事が問題だった。

「キースさーん。いつものナンパですかー?」

「!!!!!」

 実の所、アルサレア要塞内ではキースは「ナンパ大王」と裏で呼ばれていた。その事はルリエルも知っているらしく、思いっきり口にしてしまった。

 それがキースの悲劇だった。

 キースは後ろから迫り来るすさまじい殺気を感じた。後ろを振り向いた瞬間、キースは宙を舞った。


「こんな時にぃぃー――ナンパするなぁー―――――!!」

「パンツアァァァ――――――――――!!!!!」


 キースは断末魔を叫びながら地に付いた。

キース・エルヴィン中尉、逝く。享年24歳、独身

 整備班の一人がそんな事を口走ったがアイリの強烈な一撃でダウンしているキースに反論できるわけも無かった。


 その様子を無視して、アイリは二人を起こすとその場から立ち去ろうとした。


 その時、

「輸送機内の小隊に告ぐ!こちらグレンリーダー。出撃依頼が来た。各自、自分の機体に搭乗。ルリエル大尉は輸送機の操縦を頼む!」

 機内無線から出撃を意味する内容が流れた。

 アイリは今だ痙攣しているキースの腹に蹴りを一発ぶち込むと自分のPFに乗りながら言った。

「キース!いつまで死んでんのよ!出撃だからさっさと用意しなさい!」

 その言葉にキースうめきながら反応するしかなかった。















 

 輸送機操縦席



「こちらルリエル。発進しまーす。全員搭乗しましたかー」

 輸送機内部にルリエルの陽気で大きな声が響き渡った。

「こちらグレン小隊。問題無い!キースが多少苦しんではいるが大丈夫だろう」

「スラッシュ小隊だが、全員健康そのものだ…ツマラナイ」

「ヴァールハイト小隊、誰も行方不明にはなっていない」

 ふざけたように聞こえるが一応は真面目に答えている。

「了解しました―。と言う訳で離陸しまーす!」

 ルリエルの声の後、輸送機内にかなりのGが掛かってきた。

 そして、飛翔!

「後、3分で着きますので勝手に戦闘の相談しといてくださーい!」

「「はやっ!」」

 相談の時間があまりに少ない事から突っ込みが来たものの、ルリエルは無視して無線を切ったのだった。




「時間がないので手短に言う。降下地点は戦域の中央部。ヴァールハイト小隊が最初に降下し橋頭堡を確保、後に残った2小隊が降下し周辺を制圧。いいな!」

「「「了解!」」」

 グレンリーダーの「本当に手短な作戦」にどの面々もあっさり肯定した。

 こんな単純でいい加減な作戦でも平気でこなそうとする面子も如何なものであった。









 

 アルサレア勢が輸送機で降下を開始しようとしている頃、5121小隊は今だに戦場にたどり着いていなかった。それもそのはず、輸送機(飛行機)とトレーラーでは速さも移動する為の場所も全然違うのである。

 最も、そのおかげで善行は小隊の面々と作戦を決める事が出来た。

「前回接触した部隊が私たちと合同で部隊を組みます。」

 その発言に滝川は喜んだ。彼の頭にはもう一度かっこいいロボットが見られると思っていたからだ。

 それに反して壬生屋、速・芝コンビは緊張していた。

 何故緊張していたかというと、自分達と全く違う人型兵器を扱っている事から「連携は取れるのか?」「運用方法の違いは?」などと滝川と違って真面目に悩んでいたからである。

 その事を見越していたのか、善行は前もってに決めておいたことを言った。

「それでですが今回はお互いの事があまり分からないのでそれぞれの判断で行動する事になっています。何か質問は?」

 滝川以外の面子に言う事はなかった。自分たちが不安がっている事を解消してくれたのである。

 残った滝川はと言うと違った。

「ええーー。じゃあ一緒に戦えないんですか?」

 ホントに残念そうである。善行はそれに対して答えた。

「彼らは敵陣の中央に降下するとの事です。ですので、彼らと合流することが出来ればこの戦闘での勝利は間違いないものになるでしょう」

 滝川の質問を利用して部隊を鼓舞した事にオペレーター席にいた瀬戸口は苦笑しながらも話しに混ざってきた。

「と言う訳だ。それで何だが、あちらさんの戦闘を映像として流せるんだが…司令、良いでしょうか?」

「かまいません。」

 善行があっさり賛成した事で瀬戸口はコンソールを操作し始めながら言った

「ののみ、俺が呼び出した映像、みんなに配ってくれ」

「うん、たかちゃん」

 瀬戸口が話し掛けた先にはおそらく小学生にしか見えない子供、東原ののみが同じくオペレーター席で操作していた。

「おわったよー」

「えらいぞ、ののみ」

 オペレーターコンビが話している間に善行ほか戦闘部隊の近くにあるモニターに輸送機が映った。








 

「さて!ヴァールハイト小隊…踊る風、行くぞぉぉー――――――!!」

 ケイオウは雄たけびと共に輸送機の後部ハッチからゴールドと共に降下した。それと同時に前部ハッチからもシェルの「スペリオル」とラムスの「イリア・ソニックカスタム」も降下する。

「ケイオウ君!いつもの頼むぜぇー!」

 輸送機内に待機していたキースは無線越しにケイオウに向かって言った。

 ケイオウはそんな事は言われる前からすでに全周囲無線・外部スピーカーなどのスイッチを起動していた。

 そして、

我が名はケイオウ・ロンドゲイル!アルサレアを舞う踊る風なり!」

 叫びつつ剣鐘を鳴らした。


 そして彼はそのまま敵陣に降下して又も叫んだ

くらえぇぇー!神風のロンドォォー――――――!」

 叫びと共に繰り出された無数の斬撃が地上にいたミノタウロス・ゴルゴ―ンを一瞬にして細切れにした。

 さらに降下してきたシェルが両肩にマウントされたMLRSを地球軍の最前線と対峙している敵の集団に乱射した。爆炎と共に中型・小型幻獣が吹き飛ばされていった。

 その一方でゴールドとラムスがレーザースピアでケイオウの討ち洩らした敵を潰していた。





「さーすが戦友!愛してるよ―――!」

「「「「「………」」」」」

 その様子を輸送機内で見ていたキースの発言に誰もが引いていた

「でも…さすが特尉ですね。わずか3分で敵20匹を葬りましたよ。」

 そんなキースの危険発言を無視してアイリはグレンリーダーに言った。

 ある意味珍しくない後景だったが、相手は怪獣のような物である。そのインパクトはかなり高かった。

「俺達も負けてられないな。グレン小隊、出撃!」

「…スラッシュ小隊。出る!」

 ケイオウの演舞のような戦いに触発されたのか2次降下部隊の顔は通常の2倍真面目な顔だった。







 

 ケイオウの演舞のような戦いを見ていた5121小隊の面々にもその戦いのインパクトはすごかった。

「すごいですね…」

 司令である善行もその戦いぶりに見惚れてしまっていたくらいである。

 同じ前線で戦うパイロット達にいたっては戦場に着いた瞬間、「早く出撃させてほしい」とせがんできたくらいである。

 その様子に満足したのか、善行はすぐに戦闘命令を出した。

「壬生屋未央、参ります!」

 壬生屋は両手に装備した大太刀二刀流を煌かせながら踊りかかって行った。

「壬生屋さん、なんか張り切ってるね。」

「そうであろう。ケイオウという者の戦法は壬生屋に似ている。その戦いを自分もやってみたいと考えるのも分かるものだ。」

 淡々と言う芝村の心の中では壬生屋の行動はかなり焦っていた。確かに壬生屋の剣術は高い物だがケイオウの剣術は次元が違う。下手に真似をしたのでは返り討ちに合うのが目に見える事だ。

「壬生屋さんに合流しよう。近接支援しながらミサイルの発射地点まで護衛してもらおうよ」

 速水の意見は正確だった。

 士魂号3番機…複座型の背部には計24発搭載の全周囲ミサイルランチャーが装備されている。その一撃を発射する場面を作り出し、より多くの敵を撃破するのが彼等二人の仕事だ。

「かまわんが…滝川はどうする?」

 芝村はPFの活躍に最も影響の受けやすい滝川の心配をしていた。彼は戦闘中には移動砲台程度の機動しかしないため、装甲の薄い人型戦車では最前線の戦闘には不安があった。

 そう考えているところで指揮車の瀬戸口から通信が入ってきた。

「芝村、話は分かった。滝川への指示はこっちでするから壬生屋と一緒に行動してくれ」

 瀬戸口からの指示を聞いた二人は敵集団に太刀二つでチャンバラをしている壬生屋に援護射撃をしながら駆け出していった。









 

「おまえらなんかにぃぃー――――――!!!!」

 降下したタケルはいつもと違っていた。鬼のような形相で中型幻獣をアサシンファングで両断しながら奥へ奥へと進んでいった。

 その様子をみながらコウスケはケンに言った。

「ケン…タケルの様子どう思う?」

「危険だな…アレじゃ何時包囲されるかわからん!」

「きっと、たくさんの友人が死んだ事が彼を動かしているのでしょうね…」

 さらにシオンが言ってきた。

 その指摘は的を得た物であり、タケルの頭には実際には仲間の仇を討つ、という事しかなかった。いかに短い期間であっても共に過ごした仲間である、彼にとって大切な友であった。

 敵を討つ事ばかりで攻撃中心の戦い方である、その戦いは良く言えば勇敢・悪く言えば無謀であった。

 ケンの指摘どうりタケルの周りにはミノタウロスが包囲陣を作り始めていた。

「仕方ないな…タケルに花を持たせる!あいつに気付かれないように援護するぞ!」

「OK、OK!」

「粋な事をしてくださいますわね」

 ケンの提案を飲んだ二人はタケルを援護すべく周囲の敵を狩り始めた。






「さて…このくらいか?」

 ケイオウは神風のロンドを放ちながら敵の密集地点をしらみつぶしに切りまくっていた。

「ええっとー…ケイオウ特尉でしたよね?」

 ケイオウに無線越しで言って来たのは速見だった。

「そうだが?君は?」

「自分は速水厚志です。特尉はどうしてこの場所に?」

「敵を手当たり次第に切りまくっていたんだが、気付いたらここにいたというわけだ。」

 速水がケイオウのすさまじさを感じた時、指揮車から通信が入ってきた。

 善行の声が流れる。

「スイマセン。ケイオウ特尉でしたよね。司令の善行です。」

「こちらケイオウ・ロンドゲイルだ。よろしく頼みます…で、何の用です?」

 あくまで司令が相手と言う事でケイオウの口調は敬語だった。

「特尉の腕を見込んでお願いしますが、彼等速水君と芝村さんを指定した敵の集団中央部まで連れて行ってくださいませんか?本来は壬生屋さんに頼むはずなんですが彼女は別の方面に向かってしまったので。」

 善行のケイオウへの依頼を聞いて驚いたのは速水でもケイオウでもなかった。

「司令、ちょっと待ってください!司令の指示した集団の数は半端じゃないですよ!」

「構いませんが…自分ひとりでも殲滅できますが?」

 乱入してきた瀬戸口を無視してケイオウはさらにとんでもない事を口にした。

 しかし、善行も負けてはいなかった。

「そうして下さるとうれしいんですが…」

 そこまで言って善行は秘匿回線に変更した。

「私としては彼らをこの戦いで生き残らせたい。そのために彼らには狡猾で抜け目無いパイロットに育ってほしいのです。」

 善行の言う事は「戦闘で安全に部下を育成したい」と言ってるものである。狂った内容だった。

 だが、

「あい分かった。先の誓い通りに彼らを無駄死ににはさせません。」

 ケイオウもまた「クレイジーウインド」と呼ばれているのである。

 普通はやりたがらない難易度のことでも彼ならやる。

「と言う訳だ!遅れるなよ!」

「「了解!」」

 善行があえて敵の規模を教えなかった事もあり速水・芝村は威勢のいい返事をしながらケイオウに追従していった。







 

「あそこに切り込むぞ!」

「りょうかい!」

 ケイオウが叫びながら斬馬刀を構えると速水も返事をしながら右手に持ったアサルトライフルを構えた。

神風のロンドォー―――!」

 本日何度目かの神風のロンドが決まった。ケイオウが中央に近づくに従い幻獣が切り刻まれていく。

 その少し後ろ、神風のロンドの範囲外ギリギリで士魂号3番機はアサルトを乱射しながらケイオウの後ろを追っていた。

「なんか…すごい人だね。」

「そうだな…もうすぐ発射地点に着く!速水、こちらも負けてられんぞ!」

 そうこう言っている間にケイオウのヘルフェニックスと速芝コンビの士魂号複座型が中央にたどり着いた。

 周囲には埋め尽くさんばかりの幻獣が攻撃をしようとてぐすねを引いている。

「「速水!」」

 ケイオウと芝村の声がハモリながら速水を呼んだ。

「発射!」

 速水の声と同時に3番機の背中からミサイルが吐き出された。次々と着弾しながら爆炎を上げていく。

 その時、ケイオウのヘルフェニックスが3番機を掴んだ。

「逃げるぞ!!」

 ケイオウが叫んだ瞬間、速水の視界が真っ暗になった。1秒後とはいえ、気付いた時にはヘルフェニックスと3番機はすでに敵陣より離れたところに居た。

 何があったのかと言うと、ケイオウはヘルフェニックスで3番機を掴んだ後に神速を発動し、そのままその場を脱出したのだ。

 神速が解けて意識が戻った速水はケイオウに結果を聞きだそうとした。

「…特尉?どうなったんですか?」

「気付いたか…お前さん等は良くやったよ…アレを見ろ!」

 ケイオウはヘルフェ二クスの右手で燃え上がっている敵陣を指した。

 実は神速を発動と同時にシェルがスペリオルの全火力を集中させた結果である。

「すごい!アレを僕らがやったんですね!」

 シェルが砲撃をしたことを知らない速水は純粋にうれしがった。実際、ケイオウは彼を喜ばす為にシェルに砲撃を命じたのだ。

「ああ。今連絡が入ったんだが、敵が撤退を始めたそうだ。」

「了解!」

 速水はそう言いながら追撃戦に移っていった。

 その様子を見ながらケイオウは思った。

(あいつ…まさかな?)

 そうしている間にもいたるところで幻獣が撃破されていった。






 この日の戦闘は人類軍の戦力が5121中隊を除いて戦車4両、歩兵24人だけに対し、幻獣軍の戦力は小型500・中型60であった。

 だが、人類側被害は戦車2両小破、歩兵1人の負傷、死者無しであり圧勝だった。

 この日、九州戦線全域にある電報が走った。





「熊本市街地にエース部隊出現!」










3話に続く
 



 後書き

 何とか2話目も完成しました。
 やはり2作共同は難しいです。
 今回、グレン小隊が全然目立てませんでしたが次にはがんばってもらいたいです。
 キースも今回は景気よく吹き飛びましたし(笑)

 とりあえずがんばっていきたいです。
 


 管理人より

 神楽歌さんより第2話をご投稿頂きました!!

 いや〜、ケイオウがやたら強いですね(爆)

 次回はグレンリーダーの活躍機会はあるのか!!(爆笑)
 


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