妄想戦記第3弾です。
 今回は『シャドウ』の1人、ゼロ・ツヴァイ中佐が主役です。






 

【AGF-009X Jプロヴィデンス】
 ギガンテックフレームでは完全に出遅れてしまったアルサレアが開発を進める試作機の一機。
 瞬間転移こそ搭載してはいないがヴァリムのGFよりも小型でかつ運動性も高い。
 機体の大型化によりPFよりも大型で性能の良いジェネレーターを搭載できるようになり、多くのビーム兵器を搭載している。
 更に脳波コントロールによるパイロット強化システムを搭載しており、単独での戦闘能力は一個師団にも劣らない。
 しかしシステムの暴走により機体制御が不可能となり、シャドウのゼロ・ツヴァイ中佐の手により破壊された。


 人とは力を求める生き物である。
 より大きな力を……より強き力を……
 それが己の首を絞める事になろうとも……
 聖歴0021年、その事故は起こった。
 研究施設シード・ラボ、力を求めた一部の研究者によって命を与えられたそれは自我に目覚めた。
 全てを破壊する為に……






 

機甲兵団J−PHOENIX・妄想戦記

Jプロヴィデンス〜銀の悪魔〜  前編






 

 聖歴0021年10月某日、アルサレアの研究施設、シード・ラボにおいてある実験が行われていた。
 表向きには未だGFの開発が進んでいないとされているアルサレアだが、すでに実戦での使用も可能となっている機体も多い。
 その中でも特に完成度が高かったのがJプロヴィデンスであった。

 漆黒の宇宙に純白の機体が一機。
 人の形を成していない巨大なフレームはPFと比べればゆうに2倍以上は在るだろう。
 Jプロヴィデンス―『神意』の名を持つその機体は悠然と其処に居た。

 同宙域に停戦している大型の輸送船があった。
 それはプロヴィデンスの輸送用に作られた物であり、その中にいるのは数名の研究員だった。
 そして全員が目の前のモニターに注目していた。
 其処に写るのはプロヴィデンスであった。

「そろそろ時間だな……プロヴィデンス、聞こえるか?」

「――此方プロヴィデンス。聞こえてますよ、どうぞ」

「時間だ。これより実戦による実験を行う。ターゲットは情報に乗せられてのこのこやってきたヴァリムの小隊だ。存分に戦ってくれ」

「――了解。へっ、何て運のない奴等だ……いや、運が良いのか? こいつの初陣の相手が出来るんだからな」

 パイロットは好戦的な態度を見せると通信を切る。

「ふむ……あまり利口な者ではないようだな。次回からは違うパイロットを手配してくれ」

「判りました」

 パイロットに文句を付けたのは黒髪の研究者―このJプロヴィデンスの設計者アーノルド・ノイマンである。
 理工学に優れた彼はその才能を生かしてまだまだ研究の必要があるGFの設計に全力を注いでいた。
 そんな彼が絶対の自信を持つのがこのJプロヴィデンスであった。

「……始まるな。この戦いが私の新たな栄光の一つとなるのだ」

 アーノルドが見守る中、プロヴィデンスが動き出す。


 

 情報部より入った情報でアルサレアの貨物船がこのポイントを通る事―もっともこれはアーノルドの流した誤った情報であるが―を知ったヴァリムの小隊がプロヴィデンスの待つポイントに到着しようとしていた。

「――しかし隊長、話がうま過ぎませんか? 暗号だって殆ど掛かってなかったって話ですよ?」

「――逆に暗号が掛かってない方が今は見過ごしやすいではないか。本当なら叩いておくに限る」

「――そろそろ見えてくる筈ですが……」

 ヴェタールタイプ一機、ロキタイプ三機の小隊はその場に止まり、周辺を探索する。

「――何も無いぞ?」

「――どういう事だ?」

「――やはり罠………熱源接近ッ!!!」

 1人の隊員が気付くと同時に後方に浮いていた隕石が爆発する。

「――い、一体何処から!?」

「――隊長、前方3000に熱源発見!! これは……」

「――どうした!!」

「――でか過ぎますよ!! これじゃあ…PFの2倍はあります!!」

「――ちぃ!! GFだとでも言うのか!! 各機、迎撃体勢を取れ!!」

「……遅い」

 プロヴィデンスは既に小隊を照準に捕らえていた。

「まずは一機!!」

 ロックしたロキに向けてプロヴィデンスは両肩口のビーム砲を発射する。
 その一撃に反応できなかったロキは一瞬で爆砕する。

「次の獲物は貴様だァ!!」

 小隊の目の前まで接近し、駆け抜けながら機体を反転、下腹部の超高速レールガンでロキを撃ち抜く。

 ヴァリムの小隊長は一瞬で部下2人が墜とされ、言い様のない恐怖に落とされる。

「――ば、馬鹿な。あの一瞬で……化け物か……」

「――た、隊長!! に、逃げましょう!!」

「――わ、判っている、撤退だ!!!!」

 ヴェタールとロキは急いで反転し、空域を離脱しようとする。

 プロヴィデンスの様子を見守っていたアーノルドはヴァリムの小隊が撤退しようとしているのに気付く。

「おやおや、逃げる気かい? 仕方ない………おい、バーサークレベルを9まで上げろ」

「よろしいのですか? 其処まで行くとパイロットへの負担はどうなるか?」

「かまわん。どうせ使い捨てではないか?」

「……そうでしたね。では『バーサーク』を強化します」

 控えていた部下は室内にあるパソコンでプロヴィデンスのデータを書き換える。

「さぁお前は何処まで強くなれるのか……見せてくれ」


「はぁ……はぁ……はぁ……」

 頭の中が真っ白になってゆき、血が熱く煮えたぎる。
 そんな錯覚をテストパイロットは感じた。

「アァ……アアァ……アアアアァァァッ!!!!!!」

 理性も意思も全てが吹き飛び、真っ白な頭の中に浮かぶのはただ敵を倒すという目的だけだった。
 機体への負荷も人体への影響も無視してブースターを噴かす。

 逃げ出したヴァリムの小隊は機体が壊れる事も気にせずに機体を動かしていた。

「――隊長、奴は一体…」

「――しらんよ!! だが、これ以上関われば此方の命が危ない!!」

「――!? た、隊長!! 追ってきます!!」

 2機の後ろから先程以上の速度でプロヴィデンスは迫る。

「……トラエタ…モウニガサナイ……」

 プロヴィデンスはロキに照準を合わせると頭部のメガバスターで焼き払う。

「――たいちょーーーーーーッ!!!」

 メガバスターを避けきれなかったロキは無惨にも爆砕する。

「――あ、あぁ……うわぁーーーーーッ!!!」

 自分の目の前で起こる現実を理解しきれず、ヴェタールは狂ったようにパイルバンカーを構えてプロヴィデンスに向かっていく。
 だが、彼を待つのは死だけだった。
 プロヴィデンスは捕縛用のワイヤーを射出しヴェタールを捕らえる。

「――あ、あぁ……」

 モニターに映し出されるのは再充填を開始したメガバスターの砲口。
 そして刹那――
 オオオォォォーーーン………………
 赤い閃光と共にヴェタールは跡形もなく消えた……


 

 プロヴィデンスの戦闘を見物していたアーノルドはモニターの前で手を叩く。

「いやいや、良いじゃないか。十分な仕上がりだよ。これでまた私の名が歴史に刻まれた」

 満足げなアーノルド、ちょうどその時プロヴィデンスの回収が始まった。
 だが…その瞬間に全てが狂った。

「ん? おい、プロヴィデンスは何をしているんだ?」

 モニターの向こうでプロヴィデンスは全く身動きを取らず、回収艇に帰還しようとしない。

「何をして――」

 一瞬の事であった。
 エネルギーの充填されたビーム砲が火を噴き、回収艇を撃ち貫いた。
 回避運動も取る事が出来ず、回収艇はアーノルド=ノイマンを乗せて虚空の宇宙に沈んだ。









 

 明けて二日後、シード・ラボに一隻の高速輸送艇が到着する。

「……………」

 そして鮮やかな銀の髪を持つ1人の男が降り立つ。

「………ゼロ・ツヴァイ中佐ですね。ようこそ、シード・ラボへ」

 そう言って彼を笑顔で迎えたのはシード・ラボの若き主任、リーネ・フォルテであった。

「君がリーネ・フォルテ主任か? 今回の依頼を引き受けた、ゼロ・ツヴァイだ。よろしく」

 ゼロはすっと手を差し出して握手し、簡単に紹介を済ませる。

「では、早速ですが今回の任務について説明したいと思います。こちらへどうぞ」

 先導するリーネはゼロを誘導し、作戦室へと連れていく。


 

「では順を追って説明して行きますね。まず、中佐をお呼びしたのはある試作機を破壊して欲しいからです」

「試作機? 一体どういう事だ?」

「……そうですね。まずはその試作機についてお話しさせて貰います」

 そしてリーネは此処で新型GFJプロヴィデンスの開発が行われていた事、開発者アーノルド・ノイマンの事、そして―

「そんな事が……ではその本人は何処に? 直接聞きたい事もある、第一今の話を聞いても破壊する理由が―」

「死にました」

「……何だと?」

「彼は実験中に暴走したプロヴィデンスによって亡くなりました」

「…………そう言う事か。成る程、ようやく話が繋がった。私にその暴走したJプロヴィデンスを討て、と言うことだな?」

 リーネの話を自分の中で整理して、話の結論を導き出す。

「えぇ、そうです。こんな事―私達の失態の尻拭いをさせるなんて……本来中佐のなさるような事ではありませんが……」

「いや。こういった仕事こそ私達シャドウが動くべきだ。正規の部隊が動けばどこからか情報が漏れるだろう」

 ゼロはシャドウの仕事に誇りを持っていた。
 自分達が血で汚れる事で真っ白なままこの世界で生きていける人が居る。
 それはアルサレアを―この国に住む人々を守る事になると信じている。

「………ありがとうございます」

「構わないさ。だが……まだターゲットの居場所は掴めていないようだが?」

「どうしてそれが!?」

 ゼロの予測通りシード・ラボでは未だに姿を消したプロヴィデンスの行方を掴めては居なかった。
 だが、その事をゼロにはまだ伝えては居ないはずだった。

「やはりそうか」

「……はい、確かにまだ消えたプロヴィデンスの行方は捕らえていません。ですがどうして?」

「此処に来るまでのラボ内の様子や私へ伝わる情報の少なさ……簡単な推測に過ぎない」

「……さすがですね」

「私だって伊達に諜報部員やってる訳じゃない」

 少ない情報から正確に正しい情報を抜き出し、推測して結論を導き出す。
 シャドウの中でもトップクラスの実力を持つゼロならではの芸当であった。

「……ターゲットが見つかるまでこのラボの見学をさせて貰って良いかな?」

「構いませんよ。それでは私がご案内しますね」

「よろしく頼むよ」

 一刻の猶予も争えない状況の中、リーネ・フォルテによるシード・ラボ見学ツアーは始まった。







 

 2人はまずPFの格納庫へとやってきた。

「此処でシード・ラボに所属するほぼ全てのPFの整備・修理が行われてるんですよ」

「……聞いてはいたが…なかなかに凄い所だ」

「地上でもこれ程施設が揃ってる場所ってなかなかないんですよ?」

 2人の目の前に広がるのは大規模な整備場であるがその規模の大きさは工場と大差はない。

「まぁ此処では独自にPFの開発もしますからね。此方へどうぞ」

 格納庫を一通り見て回り、2人は次の場所を目指す。

 格納庫、シュミレーションルーム、トレーニングルームと見てきてゼロとリーネはラウンジで休憩を取っていた。

「さすがだな。施設の規模が半端ではない」

「それはどうも。一応此処は宇宙におけるアルサレア最大の拠点でもありますからね」

 にこにこと嬉しそうにリーネは話す。

「でも、今日お見せしたのはまだまだ序の口ですよ。このシード・ラボはもっと広いですからね」

「……それはまた私が暇な時にお願いするよ」

 さすがのゼロも苦笑混じりにリーネの誘いを断る。

「今までで質問はありますか?」

「いや、君の説明で十分判ったよ」

 ゼロの言う通り回った先々でリーネの説明があり、それはとても判りやすい上に細かいところまでが要約されていた。
 このまま観光案内役でも務まりそうな程であった。

「そうですか。あの…でしたら私から少し聞いても良いですか?」

「なにかな?」

「……中佐の体、どういった経緯で……」

「知っていましたか……私の体の事を」

「えぇ……『鋼の四肢を持つ銀の悪魔』ゼロ・ツヴァイよりもその異名の方が有名じゃないですか」

「……まぁね」

 ゼロはそう呟きながらゆっくりと服の袖をめくっていく。
 その下に現れたのは肌の色とはほど遠い、鈍色の腕―精巧なパーツを組み合わせて作られた鋼の義手であった。

「…………」

「あまり女性には見せた事はなかったんだが…どうして見たいなどと思ったんだ?」

「中佐に依頼を頼む時に聞いたんです。それで興味が……失礼だとは判っているんです……」

「好奇心と探求心からかな? まぁ仕方がないかもしれないな」

 やれやれと呟きながらも嫌な顔をしていない。

「………まだ私が駆け出しの傭兵だった頃だ。ずっと戦ってきて倒れる事を知らなかった私は自分の実力を勘違いしていた。ただ運が良かっただけなのだがね」

 少しずつゼロは自分の過去を語り出す。
 話しながら自らも過去のうぬぼれを噛み締めるように、少しずつ。

「あれはサーリットンへ出撃した時だ。うぬぼれていた私は武器のろくな手入れもせずに戦場に向かった。この後、何が起こったかは判るだろう?」

「……………」

「土壇場になって武器は故障、自分だけが死ぬならまだしも一緒に向かった仲間全員が返り討ちに合い、私だけが運良く生き延びてしまった」

「じゃあその体は?」

「………戦いから退いた後、ふとした事で出会った科学者が実験に協力する代わりに新しい腕と脚を付けてやると言ってきた。私は二言返事に協力を申し出たよ。死なせてしまった仲間も分まで戦ってやろうと思ってね」

「……それはどんな実験だったんですか?」

 リーネがゼロの顔を覗き込むように身を乗り出す。
 そんなリーネに俯いた感じでゼロは返事をする。

「彼は私を使ってこの義体を完成させようとしていたようだ。神経を斬り刻み、繋げ、そしてまた斬る。それの繰り返しだ」

 神経に直接刺激を与える。
 その痛みに耐えきれる人間などいるのだろうか?
 多分、いるはずがない。
 リーネにはその痛みがどれ程の物か考える事は出来なかったが話を聞くだけで痛々しかった。

「……………」

「………まぁその実験に耐え抜いたお陰で今こうして自分の脚で立っていられるのだがね。どうだ? あまり良い話ではなかっただろう?」

 さすがに話を聞き終えてげっそりしているリーネにゼロは苦笑しながら声を掛ける。

「す、すみませんでした。こんなに凄いなんて……」

「女の子には少しきつかったかも知れないな」

 リーネの反応を楽しんで苦笑するゼロ。


 ウィーーーンッ!!! ウィーーーーンッ!!!


 その時ラボ内に警報が鳴り響く。

「!?」

「これは?」

「リーネです。状況の報告を」

 リーネは警報に気付くと同時に近くの通信機に駆け寄り、司令室に繋げる。

「――そ、それが!」

「――プロヴィデンスが現れました!! 場所はポイント206!!」

「………判りました。私もすぐにそちらに向かいます! それまでの指揮は任せました」

 冷静に命令を告げるとリーネは通信機を切る。

「………中佐、聞いての通りです。すぐに出撃の準備を」

「あぁ、判っている。すぐに出よう」

 それだけ言い残しゼロはハンガーへと駆け出す。
 それを見送ってリーネも司令室へと向かう。

 シード・ラボの廊下を風のようにゼロは走る。

「着いてから準備していたのでは間に合わないか……『K』!!」

 あらかじめ装着していたマイクに向かって叫ぶ。
 そして、数秒の間をおいて返事が返ってくる。

『――ドウシマシタ、マスター?』

 その声は妙に機械チックな合成声だった。

「……悪いがふざけてる場合じゃない。仕事だ」

『――なんだ、それならそうと先に言って下さいよ〜』

 先程とはうって変わって随分と人間味あふれる口調で返事が返ってくる。

「ばらすぞ?」

『――ま、真面目にやりますのでそれだけはご勘弁を〜〜』

「だったら今すぐに機動の準備をして置け。すぐに到着する」

『――はいはい。5分以内に完了しておきますよ〜』

 そう返事が返ってくるとあちらから通信が切られる。

「あっこら! ………まったく…自己進化型にしたとはいえ少し育ち方が悪かったな…」

 そんな事をぼやきながらハンガーへと急ぐ。


 

 ハンガーに悠然と立つ白で染められたPFに向かってゼロは走る。

「中佐、お急ぎを!!」

「判っている。すぐにハッチを!」

 整備班に声を掛けながらゼロはコクピットに飛び込む。

「『K』準備は済んでいるな?」

 シートに体を固定しながら出撃の為にシステムをチェックしていく。

『そりゃ勿論ですよ。すぐにでも行けますよ。ついでに提供されたデータも組み込み済みです』

「上出来だ!」

「――中佐。準備の方はよろしいですか?」

 システムのチェックを終えたゼロの元にリーネからの通信が入る。

「此方はいつでも出れる」

「――判りました。プロヴィデンスは新兵演習場がある空域に現れました。此処からなら先に演習場に到着できます。新兵達に被害が出る前に撃破お願いします」

「時間制限付きか……いいだろう。ハッチ、開けろ!!」

 ゆっくりと目の前のハッチが開かれていく。
 その先に広がるのは漆黒の宇宙、それだけだ。

「――中佐、御武運を」

「ありがとう……ストームブリンガー、出る!!」

 ゼロのPF―ストームブリンガーは翼を広げ、飛び立った。













 

 アルサレア新兵演習場―新兵が基礎的なPFの操縦を学ぶ場であり、士官学校よりも簡単に入れる為に多くの新兵が所属している。
 また現在は宇宙での活動も重要となった為、宇宙空間にも演習場が作られた。


 レーダーには多くの熱源がある。
 もう少し間合いを詰めれば此方の射程に入る。

「スベテ……破壊スル……」

 ただ今は破壊による快楽を求めてビーム兵器のチャージをプロヴィデンスは始めた。

 ゼロはただ真っ直ぐに演習場へと急いでいた。

『それにしても珍しくマスターがやる気ですね〜。どうしちゃったんですか?』

「あのな……私だって真面目にやる時はやる」

 ゼロはコクピットの中で1人吼える。
 それを端から見ればおかしい光景なのだが。
 先程からゼロと会話をしているのは彼がPFに組み込んだ自己進化型戦闘補助AI『K』である。
 彼の得意とする戦法は超高速域でも戦闘である。
 その為人間1人では戦闘中に全ての情報を読み取る事は難しかった。
 そこで彼は『K』を開発した。
 これにより全ての情報の処理を『K』に任せて自分は戦闘に専念する事が出来るようになった。
 しかし、幾度も自己進化をしていく中で随分と性格と呼べる物が変わってしまっている。

『あんまり無茶しないで下さいよ? これが壊れれば私まで壊れてしまうんですから』

「………いっそ壊してやろうか?」

 そんな馬鹿な事を言い合いながら演習場へと到着した。

『周囲策敵…………ターゲットはまだ到着してないようですね』

「…………さて、此処の責任者と話を付けないとな」

 そう呟いた矢先ゼロの元へ通信が入る。
 通信の相手は現在訓練を行っている小隊の隊長のようだった。

「――おい貴様!! 此処はアルサレアの演習場だぞ!! 誰の許可を取って―」

「私はアルサレア機甲兵団第13独立特務機動小隊所属、ゼロ・ツヴァイ中佐だ。現在この演習場を目指してヴァリムの新兵器が進行中だ! 新兵は速やかに退避しろ!!」

「――なッ!」

「命が惜しいならすぐに退避しろ」

「――馬鹿を言うな!! このままおめおめと引き下がれるか!!」

 妙に自信家なこの隊長は自分達も防衛に参加すると言って来た。

「悪いがその申し入れは断る。参加されても邪魔でしかない。それに私の方が上官だ。命令には従って貰う」

「――くっ……りょ、了解した…ッ!!」

 悔しそうに睨んでくると隊長は通信を切り、ぞろぞろと新兵達は群がって退散していく。

『なかなか厳しいですね〜マスターは』

「居ても邪魔なだけだ。それに護りながら戦う気はない」

『まぁ男護ってもつまんないですしね〜』

「こいつは……」

 自分よりもより人間味がある『K』に呆れながらゼロはレーダーに視線を移す。
 そこには大型の熱源がはっきりと写っている。

「ターゲットまではかなりあるな……だが」

 ゼロはおもむろにライフルの照準を合わせる。

「私にとっては何の問題もない」

 右腕のバスターライフルの銃口にゆっくりとビーム粒子が集う。
 そして、最大限にまで収束された粒子は一気に解放され一直線にプロヴィデンスに向かう。

 やっと有効射程に新兵達を捕らえたプロヴィデンスであったが射程から次々と新兵達が出ていく。

「ナニ……キヅイタトデモイウノカ?」

 新兵達を追うようにプロヴィデンスは前進するがすぐに機体を真横にずらす。
 そして間髪おかずに紅蓮の閃光が走る。

「ナンダ? ワタシノ邪魔ヲスルナラ………ウツ!!」

 プロヴィデンスは全身のブースターを噴かし一気に加速していく。


 

「……外したか」

『当てる気だったんですか!? いくらこの機体の性能とマスターの腕がいいからってこの距離で当てるのは無理でしょう』

 さすがにこれだけの距離があるのだ、『K』も射程距離よりも遠い距離で当てる気はなかったらしい。

『ホント、マスターはいつも無茶ばかりです』

「何を言ってるいる。当たれば楽だろう。それよりも……来るぞ」

 ライフルの有効射程内にプロヴィデンスの影が映る。

『データ照合………Jプロヴィデンスと確認。戦闘モードに移行しますよ』

「まだ起動してなかったのか? まったく……早くしろ」

『りょ〜かい』

 その間にもプロヴィデンスは接近しており、既に肉眼でも確認できる距離まで来ていた。

 その頃プロヴィデンスの方もゼロの機体―ストームブリンガーを捕らえていた。

「アレカ? タッタ一機デハムカウツモリカ?」

 その行動を苦笑し、チャージしていたビーム砲の照準を合わせる。

「マズハ貴様カラダ。キエロ!!!!」

 ロキを一撃で葬り去った紅の咆哮が迫る。
 しかし、その先にストームブリンガーの姿はない。

「ナニッ?」

 そして直後、真横から紅蓮の閃光が迫った。

「クッ…!」

 それを何とかかわし、その方角に向けてセンサーを効かせる。
 ストームブリンガーは既にかなりの距離を取っており、機動力ではプロヴィデンスと互角であろう。

「ホゥ……ナカナカノ機体ダナ。ダガ……オソイッ!!! バーサーク、オーバーテンションッ!!!!」

 プロヴィデンスは自らに掛けられた最後のリミッターを外す。
 システム『バーサーク』―狂戦士と名付けられたそれはプロヴィデンスに搭載された悪魔のシステムである。
 搭乗者の大脳へ直接信号を加え、戦闘衝動、殺人衝動と言った破壊の本能を呼び覚ます。
 それと同時に機体に掛けられたリミッターを段階的に解除する事でプロヴィデンスは真の力を発揮し、最強の戦闘兵器となるのだ。
 だがこのシステムは大きな問題を残している。
 搭乗者への負担は一切考えられておらず、ある一定のレベルを超えれば最後、自らの身が滅びるまで戦い続ける真の狂戦士へと化してしまうのだった。

 虚空の宇宙に紅の閃光が走る。
 だがゼロはプロヴィデンスが引き金を引く前に行動を起こしていた。

「機体の性能を生かしきれてはいないな……悪いがあまり長くは遊べないなッ!!!」

 最小限にまで収束させたバスターライフルの引き金を引く。
 紅蓮の閃光は轟音と共にプロヴィデンスに襲いかかる。
 しかし、プロヴィデンスはフルブーストで横に回避する。

「ほぉ…あれを避けるとは」

『プロヴィデンス、更に加速! 真正面から突っ込んできます』

「臆するな。ならば格好の的だ。再充填開始、フルパワーで撃つぞ」

 再度粒子は集い、熱を持ち、すべてを穿つ為に高まっていく。

「さぁ………落ちろッ!!!」

 最大限にまで高まった紅蓮の閃光はゼロの咆哮と共に放たれ、真っ直ぐにプロヴィデンスに向かっていく。
 だが、閃光はプロヴィデンスの装甲を破壊する事なく四散してしまう。

「耐ビーム・コーティングか…ならば直接破壊するのみッ!!!」

 左腕を一振りし、スラストブレードを展開させる。

「回避運動は『K』! お前に任せる」

『了解ッ!!』

 ウイングドライバーを展開させ、すべての推進力を駆使してストームブリンガーは宇宙を飛翔する。

 ストームブリンガーとプロヴィデンスは一定の距離を保ちながら撃ち合う。
 お互いの一撃は装甲を削り、時にぶつかり合い軌跡が交差する。

『ランダム回避運動!! 距離を開けます』

「任せるッ!!」

 プロヴィデンスが放つビームをランダムに回避しながらバスターライフルの引き金を引く。
 だが、耐ビーム・コーティングにより思う以上にダメージを与えられない。

「便利な物だが、敵に持たれるとこうもやっかいとは…」

 普段の戦闘よりも出力を上げて撃っているのだがバスターライフルでも思うようにダメージを与えられない。
 しかしダメージを与えられないのは相手も同じだった。
 『K』が行うランダム回避は非常に回避率が高く、プロヴィデンスあろうともこちらを常に正面には捕らえてはいなかった。

『それにしてもこのまま撃ち合っててもこっちが不利ですよ? エネルギー容量はあちらの方が上ですからね』

「そんな事は判っている。お前は回避に専念していろ」

 そう『K』に言ったもののこのままではそう遅くない内にこちらのエネルギーが切れるだろう。
 そうなってしまえばこちらに勝ち目はない。

「…………一か八かに賭けるか…『K』! このまま相手の懐に取り付くぞ」

『なっ!? 死ぬ気ですかぁ?』

「自信がないか?」

 にんまりとゼロは笑う。
 その嘲笑に『K』も電子パターンの頭脳がノイズを起こす。

『良いでしょう。やってやろうじゃありませんか』

 非常に人間くさく反応する『K』をゼロはしてやったりと笑う。

「回避は最低限に。相手と間合いを詰める事を考えろ」

『了解ッ!! いっきまぁーーーーーすッ!!!』

 突如として反転したストームブリンガーはプロヴィデンスとの間合いを詰める為に加速していく。


 

「クッ!! コチラノ反応速度ヲコエテイルダト?」

『バーサーク』を最大限まで稼働させ、推進力をフルに使ってもストームブリンガーの動きを上回る事は出来ていなかった。

「何故ダ? 何故奴ヲオイヌケナイ?」

 ストームブリンガーの攻撃が直撃しようともこちらにダメージはない。
 しかし、その度にエネルギーを持っていかれるのは後々に不利だ。

「ン?」

 ちょうどその時ストームブリンガーは反転し、真正面から突っ込んでくる。

「ムカッテクルトイウノカ? カエリウチニシテヤロウッ!!」

 このチャンスを逃さないようにプロヴィデンスはアンカーを射出して捕らえようとする。
 しかしそれらをストームブリンガーは巧みにかわしていく。
 スラスターとアンバックを小刻みに使い、姿勢を制御しながらぐんぐんと加速していく。

「クッ! ナラバッ!!!」

 プロヴィデンスはほぼ零距離までに迫ったストームブリンガーへと拡散状態のビーム砲を向け引き金を引く。
 さすがに拡散状態で放たれたビームを避ける事が出来なかったストームブリンガーに隙が生まれた。
 この瞬間をプロヴィデンスは逃さなかった。

「ソコダッ!!!」

 時間にすれば僅か数瞬の間の出来事であったがプロヴィデンスにとってはそれだけで形勢を逆転するには十分であった。
 射出されたアンカーはスラスターによって弧を描いて戻ってくる。
 そしてそのままストームブリンガーを捕縛してしまう。


 

 一気に加速する機内でゼロはプロヴィデンスの動きを賢明に追い続ける。

「右だッ!! 次左ッ!!」

『うわっ! おっとと!!』

 『K』が反応するよりも一瞬早くゼロが反応し、それに従って『K』が機体の制御をする。

『マスタ〜反応できるなら自分でやって下さいよ〜』

「目で追えても体の反応は遅いんですよ。ほら上ッ!!」

 少し危なげながらストームブリンガーはすべての攻撃を見切って回避を続ける。

「攻撃がやんだな。今のうちだ」

『了解ッ!!』

 しかしこれが判断ミスであった事はすぐに判った。
 プロヴィデンスの胸部の砲口にビーム粒子が集い始める。

「くッ!! やられた!! 今すぐ反転ッ!!!」

『きゅ、急に言われてもッ!!!』

 反転は間に合わず仕方なく両腕でガードをする。
 しかしすぐに新たな衝撃が襲ってくる。

「今度は何だッ!!」

『さっきかわしたアンカーです。完璧に捕まってます』

「くそッ!! アンカーは切り離せないか?」

『駄目です! 角度が悪くて………うわッ!!!』

 その時機体に衝撃が走る。

「今度は何ですか!?」

 モニターに移ったプロヴィデンスはレーザーソードで機体を真っ二つにしようとしていた。

「舐めた真似を………!! 『K』フルパワーでライフルを撃て!!」

『そ、そんな事したらこっちもただじゃ済まないですよ!!』

「そんなに脆くはない! やれッ!!!」

『…………えぇーーいい!!!!!』

 『K』は言われた通りにフル出力でバスターライフルを放つ。
 放たれた閃光はお互いの装甲を焼きながら爆発し、凄まじい衝撃を生んだ。




 

 光が収束していく。
 そして其処にストームブリンガーの姿はない。

「ニガシタカ………マァイイ。コレデ障害ハ排除サレタノダカラナ……」

 プロヴィデンスはゆっくりとその体を反転させる。

「アルサレア要塞……スコシハタノシマシマセテクレルカ……」

 不適に微笑むとプロヴィデンスは惑星Jへと向かった。




 

 演習場から数キロ程離れた場所に漂う影が一つ。
 装甲が深く傷ついたストームブリンガーであった。

『マスタ………マ…タ…………』

「――中佐…ザッ………ちゅ…さ…ザザッ……おうと………」

 ゼロはグッタリとしたまま反応を示さない。
 『K』とリーネは目覚めぬゼロに向かって必死に声を掛けていた。
 そして……ただ時が過ぎていく………






 

 ―to be continue………

 



 あとがき

 どうも〜クレストです。
 まずははじめにお詫びを。
 執筆速度がかなり落ち、中途半端に長くなりそうなので予定を変えて今回は前・後編で進める事となりました。

 今回の妄想戦記は今まで謎に包まれていた(単に設定を起こしていなかっただけですが)シャドウに焦点を当てて書いています。
 シャドウの任務は文中にも書いた通り正規軍が介入する事が出来ない極秘任務が主な任務です。
 あとは月影のような要人の暗殺です。

 ゼロ・ツヴァイはシャドウの中でも古参の方になり、実際には副長官として扱われる程の人物です。
 クールな感じもするが熱く使命に燃えるタイプだったりもします。
 『K』はゼロとは逆のお気楽で調子乗りなAIです。
 ふざけた感じがしますが高度な人格モジュールを持っていたりと意外な程に高性能なのです。


 プロヴィデンスの脅威から逃れたものの深く傷ついたゼロとストームブリンガー
 そして惑星Jへと向かうプロヴィデンスの真の目的は?
 次回!!
 機甲兵団J−PHOENIX・妄想戦記
 Jプロヴィデンス〜銀の悪魔〜  後編





 

 設定

 ゼロ・ツヴァイ
 アルサレア兵団第零特殊諜報部隊『シャドウ』に属する28歳のパイロット。
 『シャドウ』に属するパイロットの中でも屈指の操縦センスと知略を持ち、実力No,1の座に居る。
 スナイピングを得意とし射程距離よりも遠くからターゲットを撃つ事が出来る。
 その悪魔のような技から『銀の悪魔』の異名を持つ。

 幼い頃に事故に遭い、両腕・両脚を失っている。
 しかし特殊な義体を得た事と彼自身の類い希な努力により常人以上の身体能力を得た。

 


 管理人より

 クレストさんより妄想戦記第3弾前編をご投稿頂きました!

 成る程、アルサレア製のGFですか。

 しかしどうしてこう狂気の産物は暴走を……(爆)
 


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