モルモット小隊番外編

第??話 「Dead or Alive 〜“all is vanity” but I don't think so〜」


第十幕







 

 戦闘停止を知らせる発光信号。
 長く続く戦争状態の中、国際間で死傷者の数を減らすために定められた物だ――これは世界中で犯罪を罰する法律がある背景には、犯罪が比較的多く日常的に発生する物だという前提がある様に、戦争が日常の一部だと国際的に認めている事になる。惑星Jにおいて、戦争とはごくごく当たり前のことなのだろうか?――。
 この信号が出された後の戦闘行動は厳しく罰せられる。しかしそれは所詮、上辺の問題だけで実際は戦闘行動をやめない人間が存在する。それどころか「戦闘行動を停止しなければいけない」と言う常識につけこみ攻撃をするものさえも存在する。
 そういった人間の一人が、PFのコックピットで不気味な笑みを浮かべていた。

「見つけた見つけた、見つけたぞぉ。あれだ、あれに決めた」

 薄暗いコックピット内に、キョウインの不気味な声と、嫌らしい舌なめずりの音が響く。

「ひぇっへ……楽しませてくれよぉ。女だと良いな……それだとPF戦のあとのお楽しみもあるしな……コックピットから引きずりだ、おっと、逃げちまう逃げちまう」

 彼はモニターから消えそうになった獲物、ピンクのストライプ入りJアームドをこそこそと追いかけ始めた。
 レーダーなどは一切使わずPFに歩行をさせ、時には低空でジャンプしながら影から影へと移動する。
 彼の搭乗する人間と言うよりも、爬虫類人間を連想させるようなPFのシルエットにその動きは似合っていた。





 

「いひゃぁ〜もぉ〜ヒョントにはふはったよ」(訳:いやぁ〜もぉ〜ホントに助かったよ)

 陰湿な偏執狂に目をつけられている事をも知らずに、ウヅキはコックピットの中でお菓子を頬張りすっかりくつろいでいた。

「ウヅキさぁん、まだ基地にも着いてないんですからお菓子は後にしましょうよ」

 と、口では言っているものの彼女はどこから取り出したのか編み物をしている。

「まふ、まぅ、いいひょなひ、ふひゃひぎゃひゃこんひょくふぇりゅきゃりょ」(訳:まぁまぁ、良いじゃない、二人が運んでくれるから)
「そうは言いますけど、まだ安全になったわけじゃないですし……安全に、安全に……安全……に、なったわけ、じゃ、ない……ぁぁ、なんだか恐くなってきちゃいました」

 そう言ってウミは編み物の手を止め震えだした。
 現在、行動不能になったしまったウミとウヅキの乗り込んでいるシーラビットは、両脇を同じROUGE小隊であるエルシールとガレフの機体に支えられながら、基地へと向かって移動中であった。

「ひゃいひょぶ、ひょいひょぶ」(訳:だいじょぶ、だいじょぶ)
「でもぉ〜」
『お二人とも気を抜くには早いですよ』

 接触回線で溜息混じりにエルシールが声を掛けてくる。
 接触回線なので音声だけだが、画像通信だったら、飽きれた目をした彼女の顔が映っていたことだろう。
 ウヅキの据わる前の席でウミは「恐いよぉ、恐いよぉ」と小声でささやきながら身体を震わせ、エルの声も耳に入らないほど自身の妄想に怯えていた。
 一方ウヅキは、

「んぐっ……そんな事ないよ。ウヅキ、ちゃ〜んと、喉に詰まらない様に気をつけてお菓子食べてるもん」

 お菓子を飲み込むと、ふざけて的外れな答えを返した。

『だったら良いですけど、お菓子を喉に詰まらせたら大変ですからね。気をつけて下さい』

 エルは驚く事にその的外れな答えをまともにとらえ、返事を返す。
 ウヅキは話題のすり替えが成功した事にほくせ笑む。普通の人はこんなあからさまな方法は通用しないだろうがエルには効果的面、彼女は人を疑う事をあまり知らないのだ。

『エル、話がそらされてるわ』

 ガレフが接触回線を使いボソッと言った。

『……何の話ですか?』

 エルは話がそらされたとまったくわからないようだ。恐るべき天然。

『……っんぅ、エル。気にしないで、独り言ですから……それよりもウヅキ』

 ガレフはあまり気にしないことにしてシーラビットの二人に声を掛ける。

「ん? お菓子欲しいの」
『いりません。いま敵に襲われたらどうしようもないのですから、ウミを現実に引き戻しておいて下さいね。こんなアルサレアから遠くはなれた地で死にたくないありませんでしょう?』
「ガレちゃんは、条約って物を知らないかなぁ〜。今の私たちはいちおう国際条約で守られているんだよ。グレンリーダー風に言うなら『問題ナッシング』だよ」
『それ、違います。「問題ない」です』
「そうだっけ?」
『わたくしの話をそらさないで……いい、条約は便利なバリアーじゃないのよ』
「パリ〜ンって割れる?」
『割れません……またそらす……』
『セッちゃん、大丈夫ですよ。ウヅキさんは何だかんだ言って一番しっかりしてますし、GOKIBURI並の生命力がありますから』

 エルはどこかしらずれた言葉で、いちおう的を得た事を言う。
 ウヅキはすっとぼけてはいるが、致命的なまでに気を抜く事はない。仮にも特務小隊のメンバーなのだから。
 ただ、的を得てはいるが、二人にはエルの言葉の中で引っ掛る単語があったようだ。

『……セッちゃん?』
「……GOKIBURI?」
『はい、ガレフ・セキネだから、セキネのセを取って「セッちゃん」。あと、前から思ってたんですよ。ウヅキさんとGOKIBURIどっちがタフかなぁ〜って……』

 「エルだから仕方がないか」二人は同時に心の中でそう思うと、自然とちょっと複雑な笑みがこぼれてきた。

『まったく、エ』

 ガレフが言葉を言いかけた時。突如として爆発がおこり、四人の悲鳴があたりにこだました。







 

 その頃、コハクはつい先程まで激しい戦場がおこなわれた場所にまだいた。殿を務めるべくこの場所に残り、味方の完全な撤退が行われたかどうか、敵の動きはどうか入念にエリア全体を観察していた。

(降下部隊の……戦闘機っぽいのに変形するPFに乗っていた人は撤退済。ノートンさんも撤退を知らせる通信があったし……IFFにも機体の反応はないのでおそらく撤退済。となれば残るは、他の降下部隊のメンバーだけど……こちらから独自の判断で撤退をするように通信はしたけど返信はなかった。損傷していた機体もあったから、回収したいところだけど……救難信号もだしていない。こちらの通信は聞こえているはずですから、単独でPFが動けないのならば救難信号を出すはず、でも出ていない。つまり、自力で帰還した?)

 コハクは頭の中で自分の知っている範囲の情報で今後の行動を考える。行動不能の友軍がいるならば救助を行わなければならない。
 この場所はアルサレアが支援しているホーシュラウレンファン王国とヴァリムの両勢力か拮抗しているエリアだ。
 救助せずに味方をおいていけばその味方がどんな酷い目に遭うかは容易に想像がつく。

(ヴァリム軍は戦闘をしていた機体は全機撤退。伏兵はいたとしても信号弾が上がったこの状況下では攻撃はしてはこない、でも気は抜けない……そう言えば……何か忘れている気がするけど……なんでしたっけ?)

 彼女は一瞬、何かいや“誰か”をすっかり忘れているような気がしたが、

(これ以上、ここに留まるの私自身が危険ですね……なにより、味方機と離れすぎてはフォローができなくなってしまう……撤退すべきですね)

 撤退することに決め。その“誰か”の事はすぐに頭から追い出し、基地へとレッドバードを向けた。







 

「っう……一体、何があったの?」

 ガレフは気が付くと状況の確認を始めた。目の前のモニター画面には地面。倒れてしまったようだ。
 レーダーをアクティブに切り替える。敵影はなく味方機が二機、シーラビットとエルのアーリッシュが映った。
 敵影が見えないことに内心ほっとしながら、機体を起こそうとする。
 PFはその殆どが自動制御されており、倒れた場合も少しレバーを操作するだけで自動的に起き上がってくれるようにできていた。

(……起き上がらない?)

 機体に自己診断プログラムを走らせると一秒と経たずにすぐに結果が返ってきた。
 左レッグモーター、動作不良。

(左足が動かない事はなさそうだけど、不味いな……他のみんなは?)

 うつ伏せになっていた機体を仰向けにして立たせようと試みた。PFは両足をバランス良く使って立つ事を諦め、自動的に右足を中心に立とうとする。
 ゆっくりとではあるがPFはオートで立ち上がろうとしているので、ガレフは余計な操作をせずに操縦桿を動かさないようにし、モニターやレーダーに注意を向ける。
 ちらっと、黒い影がモニターの隅に映った

(……何?)

 レーダーに目を移したが何の反応もそこには見られない。
 気のせいだろうか? そう思いもう一度、モニターを注視するガレフ。

(また見えた……)

 再び黒い影。
 その影の大きさはPFよりも数メートル低い、一体何であろうか。

(……嫌な予感がする)

 レーダーによると数十メートル後方に倒れているはずの他のメンバーの状況を確認するためにPFが立ち上がった事を確認し、ゆっくりと慎重に百八十度旋回させる。
 モニターに映っているのは地面に倒れた二機のPF。
 一機は左膝と頭部の損傷が目立つシーラビット。両箇所の損傷は先程の衝撃によった物ではなく、戦闘でやられた物だ。
 もう一機は、エルシールの乗るアーリッシュ。無傷であったはずのその機体の両足は、無残にも折れた骨格だけを残し外装は粉々に砕け散っていた。
 とてもPFを立たせる事はできなさそうだ。ガレフの乗ったJファーカスタムSEだけでは二機のPFを抱えて帰還する事はできない。立つ事もままならないアーリッシュの方を破棄するしかないだろう。

(……アーリッシュのレッグに対する爆発の衝撃で、わたくしの機体とシーラビットは吹き飛ばされたのね……地雷? でも、PFのレッグフレームを再起不能にするぐらい強力な対PF地雷なんて聞いた事ない)

 地雷による損傷とガレフは考えた。
 敵からの攻撃ならば、レーダーに敵影が映ったはずだし、何よりも敵のロックオンを知らせる警報が鳴ったはずだから。
 地雷といちおう結論付けたものの疑問も残った。
 PFはGFを除き、最高の装甲を備えた兵器だ。たしかに、真下からの攻撃には従来の装甲を発揮できないが、それでも対戦車地雷程度では蚊に刺されたほどにも感じない強度を持っている。高度百メートル上空から、ブーストによる落下速度の緩和なしで着地してもその衝撃に耐えられるよう設計されているのだ。
 多量の火薬を用いればアーリッシュにダメージを与えたような威力を持つ対PF地雷を作れるかもしれないが、そんな高威力の対PF地雷をこの場所に仕掛けるのはどう考えても割に合わない。
 なぜならPFは殆どブーストによる移動がメインで空を飛び、地面を歩くことなどあまりない。
 確かにこの場所はPFが頻繁に移動するルート上ではあるが、歩行ルートではなく飛行ルートだ。飛行ルート上に地雷を仕掛けるなど意味がない事は誰でもわかるだろう。
 今回の四人のようなPFを歩かせねばならない状態と言うのは、そうそうある物ではない。そのそうそうない状況に備えて、対PF地雷を仕掛けるだろうか。
 仕掛けない。それが普通だ。
 それに、このあたりはまだホーシュタウレンファン王国の勢力圏内だ。地雷の設置場所の最新データはROUGE小隊の全PFにインプットされている。
 友軍の仕掛けた地雷に引っかかったと言う事はまず考えられなかった。

「エル、ウヅキ、ウミ。生きてる?」

 ガレフは中の人間が生きているかどうか声を掛ける。PFの安全性は信用しているが、損傷具合を見ていると不安でたまらなかった。
 特にウミとウヅキ、PFにはさらに外傷が加わった様子はないが、二人とも身体をシートに固定していなかったりしていたら、大変な事になっていることだろう。爆発前に呑気な会話をしていただけに心配だった。

『生きてますわ……と言っても私のPFは不味いようですけど』
『こちらウヅキィ〜、ウミちゃんともども元気ですよぉ。早く起こしてー』
「後でね。ウヅキ」
『ガレフさん、私の機体どうですか。両足損傷とは出ているんですけど、どれ位の損傷なんです? 中からでは具合がわからなくて』

 PFは自らの損傷箇所をパイロットに知らせてくれるが、その損傷の詳しい程度までは知らせてくれない。
 場合よっては損傷の知らせが出ていないにもかかわらず実は爆発の一歩手前という被害を受けている事だってあるのだ。当然、逆に損傷と出ていても案外たいした事のない場合もある。
 むやみやたらとモニターの表示を信じると酷い代償を払わされる事となる。

「残念だけど、わたくしの見た限りではPFは破棄するしかないと思います」
『そうですか、じゃあ私は……ウミさんとウヅキさんのPFにお邪魔させてもらうことにしましょう』
「そうですね。でも、まだ動かないで欲しいの……たぶん、地雷だと思うの」
『地雷? こんな所でですか?』
「っん、あんまりそうだとは思いたくないけど……だってミサイルやキャノン、PFのロックオンが必要な攻撃だったら記録が残るでしょ、でも私の機体には残ってないのよ」
『ちょっと待ってくださいね……いま私の方でも』

 そう言ってエルは通信機の向こうで外部から受信された電波などの記録を調べる。
 PFによる攻撃はWCSに依存するのが普通で、WCSによってロックされたならばPFにその記録が残る。
 何故WCSに依存するかと言えば、精確な射撃をするため、と言えよう。
 一部の兵器はWCSに頼らずとも射撃を行う事はできるが、それらはサブマシンガンやライフルなどの代物で、PFのレッグフレームを一撃で使用不能にするほどの威力を持つ物は数少ない。
 それだけの威力を持つ兵器はグレネードやキャノン、ミサイルなど。
 それらの物ならば威力は十分だが、基本的にWCSに頼らねば攻撃を行なえない仕組みになっている。だからしてこの場合、PFには敵機になどにロックされた記録がないとなると、電子装置に頼らず射撃が行われたと考えるのが妥当だ――ノートンが光学レンズとレーザーによる照準を主とした狙撃用スコープで射撃戦を行っていたようにすれば記録を残さずにできないこともないが、一撃のみレーダーに映らないような距離から撃つ事は通常手段では不可能に近い――。

『……何も、ないですね』
「そうでしょう。それに敵からの攻撃だったら私たちはとっくに死んでいるはずよ――」

 敵PFからの攻撃であったならば、たったの一撃で終わる事など普通はない。PFを完全に撃破するつもりならば一発のみではなく二発三発と矢継早に攻撃してくるのが当たり前だ。そうでなければ倒せる機会を逃がしてしまう。
 わざわざ奇襲をしたのに一度だけ攻撃し、相手が体勢を整えるのを待つ。そんな行動をとる兵士などどこの戦場を捜してもいない。
 そう、兵士の中には。

「――だから、今はとりあえず地雷と仮定して行動するしか……」
『でも、困りましたね……そう仮定するならば、私たち、身動きが取れないじゃありませんか』

 地雷はその性質上たったの一個だけ仕掛けられていると言う事はない。その一帯に仕掛けられる。地雷と仮定する事は自動的に自分たちが今、地雷原の真中かその入り口にいる事をも仮定する事になるのだ。

「PFには地雷の有無を調べるようなセンサーはないものね」
『……そうだ、良い考』
「ちょっと待って!」

 エルの言葉をガレフが遮る。
 ちらりとレーダーに敵影が映ったのだ。



 

 コックピットの縁に腰掛け空を見上げていると、機械仕掛けの赤い鳥が一羽飛んで行った。

「おお、ぉ、ぉ、ぉぉ、ぉ……おいてかれちゃったよ。酷いなミカゲさん」

 男はニヤニヤしながらそう呟く。

「まぁ、しょうがないか……俺、存在感ないしな」

 カレイド・ヘッドハント。彼の機体は左手足を失っていたはずだ。しかし、彼がいま乗っているPFには足がしっかりとある。ただ、左足は塗装が施されてはいなかった。
 左手があるはずの部分からは数百本のコードのような物が延びている。奇妙な事に動物の血管のように脈打ってはいるが、その質感は紛れもない金属の物である。
 視線を空からそのコードへと移し、辿っていく、コードはスティングペグィンの残骸に群がっていた。まるで、死体を前にしたハイエナが柔らかい食べやすい箇所を探すように、気に入った箇所を見つけると機体に吸い付き溶かし吸収する。
 そうやってカレイドの乗る兵器はPFを食べ、自らの体を再生させていた。
 溶解された金属が地面にときおり滴り落ち、煙を上げる。
 その煙は重くどんよりとしておりその場から殆ど動かない。いま残骸を食べられているスティングペグィンの操縦者であったフィーナは、その重い煙に包まれながら、赤く染まった半身で苦しそうにのたうちまわっていた。周囲の煙が有害と言うわけではなさそうだ。
 彼女は煙や空気のせいで苦しそうにしているのではなく、うなされていた。
 悪夢にうなされていた。ただそのうなされ方が尋常ではないと言うだけのことであった。

「彼女もかわいそうに……運がなかった。そうとしか言いようがない……まこと世の中は運しだいだからな……良い目に遭うのも悪い目に遭うのも、運としか言いようがない」

 フィーナを見下ろしながら冷ややかな目をするカレイド。彼女が苦しんでいるのを楽しんでいるかのようだ。
 彼女の見ている悪夢を楽しんでいるようだ。







 

 獲物の動きを観察していたキョウインが、その黒く蜥蜴と人間の混血のような機体を岩陰から出し、獲物たちに自分の姿をひけらかした。
 そう、ROUGE小隊の三機を吹き飛ばした爆発は地雷ではない。
 キョウインの攻撃によるものであった。

(……思ったよりも手ごたえのねぇ獲物だな……外れかな……まぁいいか、ひひ、それらなそれで楽しみ方はある)

 キョウインの目の前にあるモニターには倒れている二機のPF、Jアームドとイリア系を中心としたカスタムPF、それと危うげに立っている肩を損傷しているJファーカスタムが映っている。
 倒れている二機はレッグフレームが損傷しているので戦力外――地上におけるPFは基本的に二本の足で立てなければ、射撃などの攻撃の動作を行なえないように作られている。二本足で立てないほどの損傷を受けていても少しいじれば倒れたままでも射撃可能だが、それは規格外の行動なのでまともな射撃は行えない。それどころか、PFをさらに壊す危険性のほうが大きい。ただ近接兵器に限ってはいじらずとも攻撃可能だ。人間とは違い、PFはもともと手の力だけで武器を振っているからだ。しかし、腕に掛かる負荷は増すのでアームフレームの内部パーツの過度の疲労や負荷は免れない。PFのオートバランサーでストレスを分散できないからだ――。
 キョウインが注意しなければならないのはJファーカスタムだけだ。
 敵機がこちらを向いた。
 ぎこちのないその旋回動作からレッグフレームの調子が悪い事がうかがえた。

(……やはり爆発の衝撃だけじゃ、PFの足は完全にいかれねぇか……もうちょい威力をあげても良いな、それとも次ん時はあの弾頭を試すか……)

 ロックオン警報の電子音が鳴り、モニターの中のサブマシンガンが火を噴いた。
 キョウインは自身の機体、クロマティック・シャドウT6をジャンプさせる。
 敵機はターゲットを見失うことなく、キョウインの軌跡を追うように弾丸を放ち続けた。
 Jファーカスタムの真上を通り越し背後に着地すると、機体を旋回させながら今度は低空で敵に向かって飛ぶ。
 敵機の側面がモニターに見えた。レッグフレームが損傷しているために敵の旋回速度は通常の半分以下の速度しかないようだ。

「おらおら、トロトロやってっと、勢い余って殺しちまうぞ!」

 キョウインは外部スピーカーのスイッチを入れ、叫びながらクロマティック・シャドウT6のバイオゼリーを滴らせた爪を振り上げ、Jファーカスタムが手にしたサブマシンガンをその前腕ごと、こそぎ落とす。
 アルサレアのPFは怯むことなく、フォースソードで反撃を試みた。しかし、損傷した機体の足はその動きに付いていけず、金属的な悲鳴を上げ命令通りに動く事を拒否した。
 フォースソードの太刀筋はキョウインの機体をまったくかすりもしない方向に描かれた。

 空振りをしてしまいキョウインに背中を向けてよろける間抜けな敵のその背中に飛び掛り、接触回線を入れると、

「ひひゃひひゃ、ばぁかじゃねぇかっ!」

 罵声を浴びせ、地面に押し倒す。
 計二十トンを越える二機のPFが地面にぶつかる激しい衝撃で土柱が立ち、轟音が鳴り響く、と同時に、

『きゃぁああぁあぁぁぁーー』

 アルサレアのパイロットの、女の悲鳴が接触回線を通してキョウインの耳に届く。
 彼の背中に寒気にもいた刺激が走る。
 自然とキョウインは顔をほころばせ、気味の悪い引きつった笑みを、ねっとりとその表情に浮かべた。








 

第十一幕へ続く

 



〜あとがき〜
 あいかわらずの遅筆であります(苦笑)
2005/06/20 usagi.

 


 管理人より

 バーニィさんよりモルモット小隊番外編第十幕をご投稿頂きました!!

 ……カレイド、不憫な(涙) けど、修復中ならかえって良かった……のか?(汗)

 一方ROUGEはピンチの状況……なかなかやりますね、キョウイン。


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