<機甲兵団J−PHOENIX>

コバルト小隊 〜Satellite named genesis.〜






 

 第弐話 不毛なる戦い


 

 衛星G、惑星Jの周囲にある幾つかの衛星の内一つである。その大きさは他の衛星とほぼ同じだが他に比べてやや重力が強いのが特徴だ。
 コバルト小隊を乗せたブリュンヒルデは前回のグットマンの襲撃以降は何の障害もなく無事に衛星Gへと到着していた。しいて障害と言えばシュキの何回かの操作ミスと誤報ぐらいであろうか・・・その問題の人物シュキは艦長室に呼び出されていた。





 

〜ブリュンヒルデ艦内重力区 艦長室〜


「さて、シュキ君……まあ、色々と問題はあるが、先ずはあわてない事だな」
「はあ……あわてない事ですか」
「シュキ君は少し落ち着きがないからな。それにオペレーターが慌てていてはパイロット達も不安になるだろう」
「はい……そうですね。以後、気を付けます」

 果たしてシュキは解っているのだろうか、しかし、シュキの位置付けはコバルトリーダーの部下である。ヘイド艦長にはあまり強い事は言えない、いや、言っても問題はないが部下の問題はその直属の上官が片付けるべきだ、と言うのがヘイド艦長の考えだ。
 シュキを見ているとコバルト小隊がなぜGエリアで活躍できたのか艦長は不思議でならなかった。こんなにドジばかりで頼りなく見えるシュキが一体どうして、グレン小隊の次に最高の特務小隊と言われたコバルト小隊に配属されているのだろうか。
 それとも逆にこの性格が重要なのだろうか……とも思った。

「これからは頑張ってくれよ」
「はい!」
(元気だけは良いんだがな……この子は)




 

 シュキが肩を落とし、暗い影を背負いながら艦長室から出て、トボトボと廊下を歩いていると、ちょうど向こうからジータが歩いて来た。

「シュキ、どうしたんだ? 暗い顔して?」

 シュキの様子が気になったジータが声をかける。

「ん、何でもないよ。ちょっと怒られただけ……いつもの事だよ」

 テンションの落ちた声でシュキが答える。

「……いつもの事か……」
「私……コバルト小隊以外ではやって行けないのかな?」
「……そうだな……シュキは変わり者だから。でも、俺が小隊を持ったら、お前に来てもらうけどな」
「むっ、あんたには小隊長なんか無理よ」
「言ってくれるじゃないか、それじゃあ、二人そろってずっと隊長の下にいるしかないか……」
「……」
「シュキ、俺はもっと自信を持っていいと思うよ。シュキは俺たちの小隊には欠かせ存在なんだから……俺はそう思うけどな」
「……ジータ……」

 今にも消えそうな声で答えるシュキ。
 ジータはそんなシュキの肩を優しく叩くと、

「ヘイド艦長もいつかシュキの良さに気付くさ」

 そう言うと廊下にシュキを残しその横を通り過ぎて行った。













 

〜ブリュンヒルデ艦内重力区 食堂〜


「大尉、お隣に座ってもよろしいですか?」

 ノートンが一人でゆっくりと食事をしていると後ろから声をかけてくる人物がいた。

「ムラキさん、そんな改まった言い方は止めて下さいよ」

 声の主はムラキ・オニキスであった。経験も実力もある頼りになる男である。ノートンはGエリアで何度もムラキに助けられており、今回ムラキが一緒に宇宙に配属されてノートンは少し安心していた。

「大尉の方が階級は上ですからね。一応、形式は守らないと……でも、大尉がそう言うなら普段通りにさせてもらう事にするよ。ノートン」

 笑顔を作り、そう言うとムラキはノートンの隣の椅子に腰掛ける。ムラキの大きな体にその椅子はやや窮屈そうに見えた。

「ムラキさん」
「何だ?」
「今回のヴァリム軍の動きは変だと思いませんか?」
「何処がだ?」
「今回、ヴァリム軍が投入した兵力は一個大隊……」
「ああ、そうらしいな」

一個大隊は三個中隊からなり、一個中隊は三個小隊から成っている。一個小隊はPF三機で通常構成されている、よって単純にPFの数は二十七機、予備や指揮官機を入れると四十機前後となる。

「この衛星上の主要施設は工場が五つ、ミラムーンの防衛施設が三つ、なのにヴァリム軍は工場を一つ占拠しただけで後は一向に侵攻してこない。これって変ですよ」
「確かにな、ヴァリム軍とこの衛星に配備されている戦力差は数の上ではほとんどない。しかし、実際のパイロットや機体の性能差を考えれば……ミラムーンには悪いがヴァリムの足元に及ばない」
「ええ、そうなんですよ。ミラムーンが援軍要請だしてから僕たちが到着する間に、ヴァリムがその気になれば衛星全域を占拠出来たはずなんです……」
「しかし、そうはしなかった」

 ムラキはしばし考える。

「なにか理由があるとしか思えないんですよ……」
「ヴァリムにとって必要なのは最初に占拠した工場だけ……か」
「仮に、そうだったとしても衛星全域を制圧した方が良いと思いませんか?」
「ああ、確かにな、だがそれではヴァリム軍も無傷ではすまない。無駄な戦力の消費を避けたかったからじゃないのか?」
「……そうですね」
「納得いかないか」
「何か、引っかかるんですよ。嫌な感じがするんです」
「Gエリアの時だってそうだっただろ? 今回も大丈夫さ、俺たちに出来るのは任務を確実にこなして生き残るだけだ。余計な事は考えるな」
「そうですね……お先に失礼しますね」

 ノートンはそう言い残すと席を立ち食器を戻すと食堂の扉から出て行った。
 ムラキはそのノートンの背中に彼の感じている不安の影を見てとった。
















 

〜衛星G第三採掘所 フォルセア執務室〜


 ここはヴァリム軍が占拠した衛星G上の採掘所の一つ、その採掘所内のフォルセアの執務室、フォルセアの雰囲気なのか非常に冷たい印象を受ける部屋の中はいたってシンプルに構成されている。
 椅子と机、その机の上に置かれている内線電話とパーソナルコンピューターそれだけだ。
 この部屋には大きな窓があり、外の景色を一望できるようになっている……と言っても見えるのは黒い宇宙空間と衛星の地表面に転がっている石だけである。
 この殺風景な景色がフォルセアは嫌いであった。

「それで……」

 フォルセアは椅子に座りながら机の前に立っている男に静かに話しかけた。

「コバルト小隊は予定通り到着しました」

 男の名はルロイ・レオミル。フォルセアの直属の部下だ。

「グットマンは?」
「生きています」
「ヘルファイヤーが直撃したのよね?」
「はい」
「それでも生きているの?」
「はい」
「脱出装置に細工しておくように言ったわよね」
「はい」
「細工した?」
「はい」
「それで生きているの……呆れたものね」
「はい、全治一週間だそうです」
「やれやれ……」

 フォルセアはため息を吐きながら頭を抱えてしまう。まさか、ヘルファイヤーが直撃しても生きているとは……流石のフォルセアも想像できなかった。
 並の人間ならば確実に死んでいるはずなのに、グットマンはもの凄い幸運の持ち主である。さもなければ惑星Jの害虫、人類の天敵GOKIBURI並の生命力の持ち主である。

「直接的な手に切り替えては?」
「別に良いわよ。そこまでしないでも……いつでも出来る事だし。その時は頼むわよ」
「はい」

 ルロイはただ淡々と答えるだけだった。

「レイドとマリオネットは?」
「マリオネットは最終調整に後二週間ほど、レイドはいつでも使えます。」
「プロトタイプのマリオネットは何機残っているの?」
「七機です」
「三時間後にレイドとプロトマリオネットで出撃。目標はアルサレアの母艦ブリュンヒルデ。良いわね」
「了解しました。そのように伝えておきます」

 一礼するとルロイは部屋を後にした。
 フォルセアは立ち去る男の背中に冷たい視線を投げかける。その視線は部下をみるものではなく敵を見るものであった。

「何処まで使えるかしらね……あの男たち」













 

〜ブリュンヒルデ艦内重力区 ブリーフィングルーム〜


 同時刻、ブリュンヒルデ艦内のブリーフィングルーム、その薄暗い部屋の中で数人が話し合っていた。
 この艦の艦長ヘイド・ボーレン、コバルトリーダーことノートン・ロウ、ムラキ小隊の隊長ムラキ・オニキス。
 それと、衛星Gにおけるミラムーン軍の最高責任者、カシウ・モッテスナ将軍と他取り巻き数名が向かい合って椅子に座っている。

「……と言うわけで、ヴァリム軍は最初に占拠した第三採掘所を中心に周囲に三つの軍事基地を建設、その後の侵攻は無い。同盟国であるアルサレアから貴官らが来てくれた事は非常に嬉しく思う……まあ、たかが二個小隊だけだが。一気に攻撃を仕掛けヴァリム軍を殲滅したいと思っているのだが……どう思うかね?」

 カシウ・モッテスナ将軍の長い話がようやく終わった。
 延々と一時間近くは喋っていたであろうか、その言葉の隅々からアルサレアの増援が少ないことへの不満が感じ取れた。

「一気に攻撃を仕掛けると言いましても、どの様に攻撃を仕掛けるのですか?」

 ノートンが質問を投げかける。

「うむ、採掘所の周囲の軍事基地に一斉に攻撃を仕掛けようと思っている」

 呆れた答えだ。ヴァリム軍に正面から物量戦を仕掛けるとは、この将軍はヴァリム軍との戦力差をどう考えているのか、ノートンは疑問を持たずにはいられない。
 ミラムーン軍の主力PFはJファーとヌエ、それにゼムンゼンと呼ばれるカスタムPF程度のものだ。Jフェニックスやロキなども多少はあるだろうがたかが知れている。
 しかも、現在ではJファーやヌエも新型機などのデータをフィートバックしてバージョンアップを重ねて多少の性能向上を果たしているが、ミラムーン軍に配備されているものは旧バージョンのものばかりである。
 戦力差はPFだけではない。兵士の錬度の差も非常に大きい、実戦経験の少ないミラムーン軍の兵士とヴァリム軍の兵士とではその能力に雲泥の差がある。

「お言葉ですが、それではむざむざやられるだけだと思うのですが……」
「なんだと、我がミラムーン軍の兵力がヴァリム軍に引けをとると言うのか!」

 どうやら、逆鱗に触れてしまったようだ……アルサレアに対して劣等感を出だしているミラムーン軍人は多い、どうやらそれを刺激してしまったらしい。

「いえ、けっしてそう言うわけではありません。ただ、もう少しヴァリム軍の兵力を調べてから……」
「余計な口は出さないで貰おう! 指揮権は我々にある事を忘れないで貰いたい。今日はここまでだ!」

 そう言うが早いかカシウ将軍は激怒しブリーフィングルームを出て行った。そそくさと頭を下げながらお付の兵士たちも続いて出て行く。

「……何で、怒るんだ?」

 ノートンの口から言葉が漏れる。意見を聞いてきたのはそっちなのに、とノートンは思う。だが、なんとなくは怒った理由もわからなくも無かった。

「気にするなよ。あんなもんさ」

 ムラキが慰めてくれる。

「先が思いやられるな」

 と、ヘイド艦長。

「すいません」
「気にする事は無いさ、ノートン君。しかし、厄介なものだな」
「……」「……」「……」

 各々が口を閉ざしブリーフィングルームに重苦しい空気が充満していた。












 

〜ブリュンヒルデ艦内重力区 居住区〜


 ここはシュキが使っている寝室。当然、個人で使っているわけではなくムラキ小隊のミオ・ポーティミングと同室である。部屋の中でミオが段ボール箱をガサゴソと探っている。
 彼女は何をしているのだろうか……。
 そこへシュキが仕事の合間を見て仮眠を取るために部屋へと戻ってきた。扉の自動ドアが開くと、ミオがしゃがみ込んで何かしている。ミオはシュキが部屋に入ってきたことにまったく気付いていない様子だ。

「何してるの、ミオさん」

 後ろから声を掛けられしゃがみ込んだままの姿勢で体を一瞬緊張させるミオ。ゆっくりと後ろを振り返りシュキの姿を見てとったミオは……。

「シュッシュシュシュシュシュシュ、シュキさん! な、何ですか!?」

 顔を真っ赤にしてビックリして転んでしまう。先ほどまで何かしていた段ボール箱を引っ繰り返してしまい、中身がド派手にばら撒かれてしまった。
 頭から煙がでていたら汽車その物の勢いだ。
 シュキの足元に一枚の紙切れが流れてくる。

「何これ?」

 シュキが手を伸ばしそれを拾おうとする。

「ああああ、駄目〜!」

 ミオが慌ててそれを奪おうとするがシュキが拾い上げる方がわずかに早かった。
 シュキが手にしたそれは……。

「グレン……リーダー?」

 それはグレンリーダーのプロマイドだった、しかもサイン入り。
 このサインは本物か……?

「……」

 ミオは恥かしさからか下をうつむいて黙ってしまった。

「これは……一体? もしかしてミオさんは噂のグレンリーダーファンクラブ会員とか?」
「……」

 ミオの答えは無い。
 気まずい空気が流れる。

「あ……でも、わかるよ。グレンリーダーカッコイイもんね!」

 すぐに明るい笑顔でフォローをするシュキ。

「わかってくれますか、シュキさん! 実はですね……」

 グレンリーダーはカッコイイと言う言葉を聞いた途端に元気になり急に熱く語りだすミオ。
 追っかけ魂に火を点けてしまった様だ。

(よっぽど好きなのね……噂の彼女達にも負けてないかも)

 そう思うと同時にシュキは自分の発した言葉を後悔していたが、時すでに遅し、シュキは延々と興味も無い話を聞かされるハメになった。

















 

〜衛星G第三採掘所 仮設PF格納庫〜


 ここはヴァリム軍が占拠した採掘所に仮に作られたPFの格納庫。
 量産型のヤシャとヌエとロキが多数並んでいる。
 その中で格納庫の隅に他のPFとは違う黒いカラーリングの新型機が一機。ヴァリム軍の新型機ドゥルガーだ。
 といってもまだ実戦配備されている機体はたったの二機だけである。
 双子の悪魔の名で知られているキサラギ兄弟の姉、ユイ・キサラギが設計した機体なのだが開発は途中でストップ。フォルセアがそのまま引き継ぐ形になっているが、いまだ試作型の域を出ていない機体だ。
 ドゥルガーのコックピット内、一人の男が座っている。元々は複座型なので後ろの席は空席にいた。前方のモニターに女性の顔が映っている、フォルセアだ。

「レイド、調子はどう?」
「問題ありません」
「そう、今回の任務は解っているわよね?」
「アルサレアの新造母艦ブリュンヒルデの戦力分析及びプロトタイプマリオネットの戦闘データの収集」
「そうよ。エルンは問題ない?」
『肯定、問題ありません』

 コックピット内に無機質な機械が作り出した女性の声が響く。ドゥルガーに搭載されている人工知能エルンがスピーカーから発した声だ。普通のPFにも音声ガイド付きのOSは積まれているが、決まりきった言葉を発するだけだ。
 このエルンは自己学習型で独自の思考体系も持っており、人間にかなり近いものである。噂では人間の脳を移植しているなどとも言われているが真相は定かではない。

「後は、よろしく。良い報告を待っているわ」
「了解」
『肯定、了解しました』

 レイドとエルンの返事を聞くとモニターからフォルセアの顔が消える。フォルセアの顔はモニターから消える間際に細く微笑んでいた。

「エルン、作戦開始時間まで後どれくらいだ」
『3分24秒前です』
「マリオネットのコントロールは任せるが問題ないか?」
『肯定、何の支障もありません』
「時間になったら教えてくれ」
『了解しました』

 レイドは目を閉じ静かに作戦時間を待った。













 

〜ブリュンヒルデ艦内重力区 ブリッジ〜


 ブリーフィングルームの一件から数時間後、ノートン達は偵察も兼ねて哨戒任務についていた。
 衛星Gの地表は静寂が支配していた。

「……ところで、誰かシュキ君を知らないかね?」

 へイド艦長が誰に聞くとも無く口を開いた。
 シュキは休憩時間も終わってもうここに戻って来ているはずなのだが……いない。
 別にシュキがいなくとも代わりの人間はいるのだが、シュキの席だけが空と言うのはどうもいけない。
 ヘイド艦長はまた何かしでかすのだろうかと不安でいっぱいなのだ。
 クルー達は顔を見合わせ、首を傾げる。どうも誰も知らないようだ。

 その頃シュキは……まだ、ミオに捕まっていたが、ブリッジのクルー達が知るよしも無い。

「周囲に敵影は?」
「影も形もありません」

 へイド艦長の問いかけに直ぐに答えが返ってくる。
 この空域は平穏そのものの様に思えた。













 

〜ドゥルガーコックピット内〜


『前方に目標捕捉』

 エルンの単調な声がレイドの耳に届く。

「敵艦のレーダーレンジ外だな?」
『肯定、今のところ圏外ですが、マリオネットをコントロール開始すると発見されてしまうでしょう』
「大きいからな」
『仕掛けますか?』
「良いだろう。攻撃開始」
『了解、プロトマリオネットゼグルヴタイプ起動。瞬間転移による奇襲攻撃を開始します』













 

〜ブリュンヒルデ艦内〜


(まだ、終わんないのかな?)

 シュキはいい加減に疲れていた。未だにミオの話の勢いは衰えず話し続けている。まるで機関銃のように……。
 グレンリーダーの生い立ちから何から何まで話を聞かされ、しばらくはグレンリーダーの「グ」の字も聞きたく無い気分になってくる。

(……そう言えば、今何時だろ?)

 シュキがそう思ったのとほぼ同時に艦内に警報が響き渡る。
 が、ミオはまだ熱く語っている。

「あの、ミオさん? 警報が……なっているんですけど……」
「……」「……」

 沈黙。

「ホントだ。行かなきゃ」
(ああ、これでやっと解放される。バンザーイ!)

 シュキが心の中で両手を上げて喜んでいると、ブリュンヒルデが大きく揺れた。


 

 ほんの数十秒前のブリュンヒルデのブリッジでは……。

「敵、瞬間転移反応! ゼクルヴタイプです!」
「総員戦闘配置! PFを出撃させろ!」

 こちらのレーダー範囲外からの瞬間転移による奇襲。確かに可能だがそれが可能な機体は限られている。その限られた機体の一つがゼクルヴだ。
 ゼクルヴはPFの三倍もの大きさを誇り、その恐るべきものはPFを凌駕する火力にある。よもやこの衛星にまでゼクルヴを持ち込んでいるとは思いもしなかったのはヘイド艦長の誤算であった。

 ゼクルヴがブリュンヒルデを囲う様に姿を現し、大量のミサイルを撃ち込んでくる。
 ゼクルヴのその数五機。

「敵、ミサイル接近!」
「緊急回避、迎撃急げ」

 へイド艦長の指示で直ぐにミサイルを回避する為に回避運動に入るブリュンヒルデ。しかし、五機のゼクルヴから打ち出されたミサイルを回避しきれるわけも無く損傷は避けられなかった。
 ブリュンヒルデの船体が大きく揺れる。

「くそ、被害は?」
「主砲沈黙、右舷カタパルト損傷」
「PFはまだ出ないのか?」
「今出ます」
「弾幕を強化しろ」

 ブリッジにあわただしく指示が飛びかうが、シュキの席はいまだ空席であった。












 

〜戦場〜


 マコト、ジータ、ゴリアン、ミオの順で、PFが左舷カタパルトから出撃する。
 右舷カタパルトから出ようとしていたノートンとムラキは出遅れていた。

『ジータ、隊長は?』
「出遅れている。そっちの一機は任せるぞ!」
『マコトとロボに任せといてよ』
「曹長と少尉はあっちをお願いします」
『了解、まかせてくれ。』
『了解、ジータさん』

 それぞれが機体を進めゼクルヴの迎撃に向う。
 迎撃と言う言葉よりも、この場合は防衛の方が適当かもしれない。
 激しくミサイルを撃ち込んでくるゼクルヴの前に、ジータたちはブリュンヒルデを守る為に防戦に徹するしかなかった。
 ジータはミサイルをヴィトリアルウェーブで迎撃し、マコトはプロポシブルキラーで推進力を奪い無効化する。
 ゴリアンとミオの機体は手に得意の接近戦用の武器を持っている。
 ゴリアンはXハンマー、ミオはレーザーソードだ。ただ機体がJファーなのでそれぞれ肩のガトリングでミサイルを撃ち落していくが、四人の残弾数があっという間に下がっていく、ミサイルの数が凄まじいのだ。

(このままではまずいぞ。何とかブリュンヒルデを逃がさないと)

 一瞬、ミサイルの迎撃以外に気を取られた隙に、迎撃し損ねたミサイルがジータのグラディエーターの目の前に迫る。

(直撃、しまった!)

 だが、ミサイルはグラディエーターに直撃する事はなかった。

「?」
『ジータ、次は自分でやれよ』
「隊長!」

 遅れて出てきたノートンがミサイルをシルバーブリットのスマートガンで見事に狙撃したのだ。

『マコト、行けるか? 突破口を開いてくれ』
『了解、マコトにお任せあれ!』

 ジータの耳にもマコトの元気な返事が聞こえてきた。マコトはこの様な緊迫した状態でも普段と変わらずに明るく元気に答える。


 

『敵機PF全機出撃を確認。残りのゼクルヴを投入しますか?』

 ブリュンヒルデから離れた空域で、レイドの乗ったエルン搭載型ドゥルガーは静かに戦況を見守っていた。

「いや、まだいい」
『了解、増援を見送ります』

 エルンの発言をレイドは否定した。
 敵は防戦一方で反撃も出来ない様なのでまだ増援の必要はないと判断したからだ。

「……腕前を見せてもらうぞ」


 

 自分とムラキが戦力に加わったが事態がそう簡単に好転しないと判断したノートンは、マコトにブリュンヒルデの退路を切り開かせるべく命令を下した。

「ノートンよりブリュンヒルデへ、マコトが退路を開く。後退の準備をしてくれ」
『ブリュンヒルデ、了解』

 オペレーターの声が返ってくる。しかし、その声はシュキのものではない。

(シュキはどうした?)

 マコトは愛機の左手に搭載されたドリルを回転させ始める。

『ドリル始動! 必殺、ドリルパニッシャァァァァァァァァァァッ!!』

 マコトが大声で叫びながら自分のプロポシブルキラーで無力化したミサイルの横を通り過ぎながらゼクルヴに向って特攻する。
 その叫び声がヘッドフォン越しにノートンにも聞こえてきた、あまりの声の大きさに耳鳴りがするほどであった。
 以前にノートンがマコトに何故叫ぶのか聞いたところ。
 マコト曰く。

「ロボット乗りに、熱い魂の叫びは欠かせないからね」

 だそうだ。
 マコトの特攻を見たゼクルヴはミサイルを撃って迎撃しようとするが、マコトは最小限の動きで上手く避け一気に距離を詰めゼクルヴの細い胴体に左手のドリルを深々と食い込ませる。
 ゼクルヴは手を振り上げてマコトを叩き落そうとするが手を振り上げたとこでその動きを停止した。
 マコトはドリルを逆回転させ左手を引き抜きながら右手のカイザーナックルでゼクルヴの胸に追撃。ロボをゼクルヴの爆発に巻き込まれないように素早く離脱させた。
 今にも千切れそうになり動きを止めていたゼクルヴの上半身は下半身をその場に残し遠くに流れて行き、真っ暗な宇宙空間を赤く染め上げ爆発した。

 ゼクルヴ撃破数―1

「ブリュンヒルデ、撤退を開始してくれ」
『こちらブリュンヒルデ、了解。撤退を開始します』

 マコトのゼクルヴ撃破を見てブリュンヒルデの撤退開始を確認したレイドは、敵の動きに隙を見つけて一気に攻勢へ転ずる。

「ジータ」
『任せてください』

 ノートンの呼び声で何をしようとしているのか把握したジータはノートンの動きを待った。
 ノートンがWCSのリミッターを解除しゼクルヴ二体を同時にロックオン。ゼクルヴは相変わらずミサイルを撃ってくるがそれらもまとめて一緒にロックオンする。

「一気に決める」

 ノートンがトリガーを引くと、シルバーブリットの全身の武器からゼクルヴの撃ってくるミサイルの量を上回る数の弾丸やミサイルが一斉発射された。
 ゼクルヴのミサイルとシルバーブリットの弾が正面からぶつかり合い激しい爆炎をあげる。
 ゼクルヴのミサイルは見事に全弾撃墜、シルバーブリットの弾はミサイルを打ち落としてもなお余っており、それらはゼクルヴに直撃した。

 その隙にジータはグラディエーターをゼクルヴの後方に回り込ませていた。
 直撃を受けて動きの止まったゼクルヴの後方に回り込むのはジータにとって造作も無い事である。ましてや、ゼクルヴの正面ではミサイル同士のぶつかり合いで視界が悪くなっているのだからいとも容易く回り込むことに成功した。

 二体のゼクルヴが並んでいるのを見て、左のゼクルヴに目標を決めると先ずは足に一撃。
 思いもしなかった攻撃を喰らわされたゼクルヴは体勢を崩し倒れそうになる。
 ジータは休むことなく機体をゼクルヴの頭の高さまで上昇させると斬馬刀を上段に構え、一閃。
 みごと頭部を一刀両断にする。
 頭部を破壊されモノアイに光を失ったゼクルヴはその機能を停止した。

 ゼクルヴ撃破数―2

 自分の隣のゼクルヴの異変に気が付いたもう一体のゼクルヴは何が起こったのか確認しようと横を向こうとしたその時。
 ノートンがいつの間にか距離を詰めてゼクルヴの眼前まで迫っていた。

「どこを見ている」

 シルバーブリットの左手に装備されたカイザーシールドでゼクルヴの頭部を殴りつけるとゼクルヴは大きく仰け反った。
 ノートンはその隙だらけになったゼクルヴの体に向けてシルバ−ブリットの全身の武器を一斉発射し無数の弾丸を撃ち込む。
 ゼクルヴは外壁に多大なダメージを受け無残にも内部機関を剥き出しにしてその動きを止めた。

 ゼクルヴ撃破数―3



 

 レーダーの中で一機のゼクルヴが消えたと思ったら、一瞬にしてさらに二機の反応が消えた。

(凄い……これが、コバルト小隊の実力なの?……さっきまで形勢は不利だったのに一瞬にして三機も撃破するなんて……)

 ミオはミサイルの迎撃に当たりながら思った。また、同時に同じ戦場で戦っていることを誇らしくも思えた。

『こちらムラキ、ゴリアン曹長。こちらも仕掛けるぞ』
『了解しやした』
(!……なんで私じゃないの?)

 ミオは自分の操縦技術に自信を持っていた。

(ノートン大尉やムラキ中尉には劣るかもしれないけど、ゴリアン曹長にだって、ジータ少尉にだって、マコトちゃんにだって遅れはとらない……)

 ミオは手柄を焦っていたのかもしれない。
 だがそれは、誰にもわからないことだ。

 ゴリアンとミオが二機のゼクルヴが撃ってくるミサイルを撃ち落していく中、ムラキは一瞬動きを止め一体のゼクルヴに的を絞るとPFの右手に手にしたサーマルプラズマライフルで頭部に狙いを定める。

『もらった!』

 狙い澄ました一撃をゼクルヴに向かって放つと、ミサイルとガトリングの飛び交うなか決して速くはないサーマルプラズマライフルの弾が真直ぐに目標に向かって進んで行き、ゼクルヴの頭部にヒットする。
 頭部に直撃を受けたゼクルヴの動きが止まり、ミサイルの雨のような攻撃に隙間が出来た。
 すかさずゴリアンが右手に装備されているXハンマーを両手で持ち右脇に構えながら一気に突撃した。
 数発のミサイルがゴリアンの機体に向かって来るがものともせず真直ぐに最短距離を進んで行き、Xハンマーの有効距離まで近づくとXハンマーを全力でゼクルヴの足に叩き込む。
 ゼクルヴの足は見事に吹き飛んだ。
 そのまま、Xハンマーを振った勢いで機体を一回転させながら機体をやや上昇させ、続け様にゼクルヴのボディに重い鉄槌を叩き込んだ。
 動きを止めたゼクルヴが体をくの字に曲げたまま遠くへと流れていった。

 ゼクルヴ撃破数―4

 残り一機のゼクルヴが撃ってくるミサイルを打ち落としムラキやゴリアンの活躍を目にしながら、ミオは思っていた。

(私だってやれるのに・・・)

 ふいに、ゼクルヴのミサイルの数が減る。
 先ほどゼクルヴを吹き飛ばしたゴリアンの方に注意がそれたのせいである。
 ミオはこの隙を見逃さなかった。

(やるなら今しかない!)

 ミオは機体にフルブーストを掛けると一気に左右にゼクルヴのミサイルを避けながら距離を縮めて行く。

『少尉、無茶をするな』

 ミオの耳にムラキの通信が聞こえてきたが彼女は止めるのも聞かずにさらに距離を詰める。
 レーザーソードの届く距離まで近づくとゼクルヴが蹴りの予備動作で、足を振り上げた。
 ゼクルヴの蹴りは一撃必殺である。
 その威力は凄まじく殆どのPFは一撃で行動不能に陥る。しかし、その予備動作は大きくそれなりの経験を積んだパイロットにはそうそう当たるものではない。
 ミオもそれほどの新米ではない。機体をゼクルヴの正面から背面に弧を描くように移動させると、軸足の踵辺りにレーザーソードを一閃。
 機体を上昇させその背中に下から振り上げるように一撃。
 さらに、ゼクルヴの頭上まで上がると一気に急降下しゼクルヴの首筋にレーザーソードを突き立てた。

 ゼクルヴ撃破数―5

(やった。私だって、皆に遅れは取らないわ)

 少々深くレーザーソードを刺しすぎたため抜けないと判断し、ミオはレーザーソードを手放した。

(何? こ・・・・)

 その瞬間、ミオのコックピットは赤い光で満たされその思考はその体と共に蒸発して消え去っていた……。




 

 少々前の事。

『ゼクルヴ4機大破、増援を提案します』
「まだだ」

 エルンの提案にそっけなく答えるレイド、先ほどからレイドは安全なところからノートン達の戦いを傍観していた。

「敵のデータは?」
『各敵機体のデータ収集は後1機で終了です。』
「戦闘の用意をしておけ、もう一機のゼクルヴがやられたら行動開始だ」
『了解、戦闘準備開始』
「バスターガンの準備もしておけ」
『了解、バスターガン内臓ジュネレーター起動。チャージ開始』

 バスターガンとはドゥルガーに装備されている新型のレーザーライフルである。
 その最大の特徴はレーザーマシンガンとバスターランチャーの性能を合わせ持っているところにある。ただ、試作品故にチャージに時間が少々かかるのが欠点である。

『ゼクルヴ5機目が大破しました。バスターガンのチャージが完了しました』
「敵母艦の上空に増援を送れ」

 レイドはエルンに指示を出しながらレーダーで敵の配置を確認する。
 レーダーの中で一機だけ突出したミオ機を見つけると同時に機体のカメラを動かしWCSでロックする。

「これくらいは避けてくれよ……つまらない相手はごめんだ」

 レイドがトリガーを引くとバスターガンから大出力の赤いレーザーが黒い宇宙を赤い色で染めながら闇を引き裂くように撃ち出された。




 

「ジータ、マコトはブリュンヒルデの護衛に回ってくれ」
『了解』
『ラジャ〜』

 ジータとマコトに指示を出し、次にムラキ達の位置を確認する。
 ムラキの方もゼクルヴの撃破に成功したようだ。
 少々、ミオが突出しているのが気になるが……。
 ノートンのコックピット内にけたたましい警告音が鳴り響くと、彼の機体のすぐ横をレーザーが通り過ぎて行く。

「くそ! まだ敵がいたのか」

 ノートンは素早く機体を後退させたが、視界の隅で味方機のマーカーが一つ消えるのが見えた。

(味方がやられた? ミオ機か?……突出していたせいで……くそっ!)

 歯を強く噛み締め、狙撃した敵機の位置を確認しようとするが、レーダーには何も映っていない。

『隊長……ミオ少尉が……』

 ブリュンヒルデからシュキの声で通信が入る。

(シュキ? 今までどこに行っていた? 戦闘中だぞ)

 ノートンは心に浮かんだ言葉を言う代わりに怒鳴り返していた。

「わかっている! 敵はどこだ? こっちでは確認できない」
『こっちもわかんない……あっこれより狙撃地点に向けミサイルによる援護射撃を行なうから、PF各機射線軸上より退避して』
「了解」

 ノートンが返事をするとモニターの隅に予定される射線と発射されるミサイルの種類が表示される。
 射線を確認すると狙撃ポイントに左から回り込むように機体を移動させ始める
 レーダーで確認するとムラキもすでに動き出していた。ゴリアンは艦の護衛に回ったようだ。
 狙撃地点に向けて機体を少し、移動するとブリュンヒルデから再び通信が入って来た。

『これよりミサイルによる援護射撃を開始します』

 シュキの声が聞こえると同時に20発のミサイルが発射された。このミサイル群の後を左右からムラキとノートンの機体が追従する。

(……多すぎだな)

 大量のミサイルを見てノートンはそう思った。
 なぜなら、ブリュンヒルデに搭載されているミサイルはPFに搭載するMLRSに比べれば威力は格段に上回っているが、大型で速度がやや落ちる。PF相手には牽制や威嚇程度にしか使えない代物だからだ。
 艦長はもしかしたら先ほどの大出力のレーザーによる狙撃から敵艦を予測したのかもしれないが、ノートンの考えでは狙撃したのはPFに違いないと判断している。

 確かに先ほどのレーザーから判断すると、バスターランチャーよりも出力の高いと思われるレーザーであったし、PFに搭載されるレーザーでバスターランチャーを上回る威力のものは現在では開発されたなどは耳にしていない。しかし、敵艦であったら大きいのでレーダーレンジ外でも視認できる。視認できないと言うことはその他の兵器つまり戦艦以外に宇宙において運用されている兵器、すなわちPFしかないと判断できるわけである。

 ノートンとムラキがミサイルに追従を始めてすぐ。

『敵の増援接近、ゼクルヴ一機! 続けてもう一機出現、瞬間転移で艦のま―――』

 敵の増援を告げた直後シュキの声が途中で途絶える。
 ノートンは何事が起こったのかとレーダーに目をやると、ブリュンヒルデの周りにジータ達の反応とゼクルヴが一機、これは先ほど通信が入った機体だ。さらにブリュンヒルデと重なるようにもう一機のゼクルヴの反応があった。

(ブリュンヒルデの真上に直接瞬間転移したのか! 直ぐに引き返して……いや、駄目か)

 遠距離からの正確な狙撃をしてくる敵に背中を向けるのは危険である。
 ノートンはさらにブースト速度を増しジータ達なら大丈夫だと自分に言い聞かせた。











 

〜ブリュンヒルデ周辺空域〜


 ブリュンヒルデから援護の為にミサイルが撃ち出される時、ジータ、マコト、ゴリアンはブリュンヒルデを守る形で展開していた。まずは一機のゼクルヴが瞬間転移してジータの目の前に現れる。
 ジータは最初と同様にゼクルヴのミサイルを残り少ないヴィトリアルウェーブで迎撃して行く、マコトとゴリアンはこれを見て攻撃する機会を覗う。
 ところが事態はそうやすやすとは行かなかった。
 もう一機のゼクルヴがブリュンヒルデの直上に瞬間転移して来たのだ。
 ゼクルヴの巨体がブリュンヒルデの上に降り立ち、ブリュンヒルデが激しく揺れる。
 ゼクルヴはPFの三倍近くの大きさのある機体である。惑星Jに比べれば重力の低い衛星Gだが、ゼクルヴの重量から生まれる破壊力は健在だ。

「メインジェレーターに異常発生、出力低下!」
「何とか保たせろ!」
「第二居住区で火災発生」
「隔壁、消火作業急げ!」
「え〜ん、どうしたら良いの〜」
「誰かその女を黙らせろ!」

 などとブリュンヒルデ内で慌しく指示が飛び交う中、ゼクルヴが止めとばかりに右腕を振り上げブリッジに振り落とそうとする。

 その動きが完了する前に素早く動く機体が二機、ゴリアンとマコトの機体だ。
 二人の機体が反転しゼクルヴの動きを阻止しようと加速する。しかし、ゴリアンがブリュンヒルデとゼクルヴを視界に入れた時、突如としてその視界を遮るものが目の前に現れた。
 ジータが相手をしていたゼクルヴが瞬間転移して来たのだ。

「何ぃぃぃ!」

 すでに加速を開始していた機体はすぐには止まらない。ゴリアンは慌てて全力で逆噴射を開始し減速をした。だが、制動力の殆ど停止に回してしまったためにゼクルヴの目の前で機体の動きが硬直してしまう。

 ……戦場では一瞬にして命が消えるものである。また、命を奪うにはほんのちょっとの時間があれば事足りる……

 ゴリアンの目はモニター越しにゼクルヴが足をゆっくり振り上げゴリアンの機体向けて蹴りを放つのが見えた。
 それが彼の最後に見たものであった。
 ゴリアンの耳は重い金属と金属が、大型のトラック同士が正面衝突した時のような激しい音を聞いた。
 それが彼の最後に聞いた音であった。


 

 マコトが機体を反転させ全速力で腕を振り上げブリッジを狙っているゼクルヴに近づくと、彼女の急速接近に気が付いたゼクルヴは首だけをマコトの方に向ける。
 急に現れた敵に対して迎撃をしようとしたのかもしれないが。

「必殺! ライトニングキィィィィィィィィィィィック!」

 ゼクルヴの顔面に加速の勢いをそのまま活かした渾身の蹴りが深くめり込んだ。
 勢い余ってゼクルヴは遠くに吹っ飛ばされたが、蹴りを行なったマコトの機体の右足も膝から先が……折れていた。

「ああああっ! ロボの右足がぁぁぁ! 何んで? どうしてぇぇぇ?」

 PFは素手で殴り合えるぐらい良く出来ている二足歩行ロボットである。だが、殴ることに関しては対衝撃設計など色々と考えられているが蹴りに関してはほとんど考慮されていない。技術者陣からみればPFの足は歩くために付いている。蹴ることなどはまったくと言って良いほど考慮されていないのだ。PFは高所から着地も行なうので使い方さえ間違わなければ蹴りは可能だが、間違った蹴り方をすればたちまち折れるのだ。
 レーダーでゼクルヴとの距離と周囲の状況を確認するとマコトはトリガーを引いた。

「よくもやったな〜。ヘルファイヤーはっしゃぁぁぁぁぁ!!」

 それを通信機越しに聞いた一瞬顔が青ざめたがヘイド館長はすぐに。

『後退しろ!』

 と、全チャンネルに向かって叫んでいた。
 それを通信機越しに聞いたジータはわずかな望みを期待しつつ、手早くゴリアンの機体を回収するとその場から離れた。
 ヘルファイヤーはマコトが蹴り飛ばしたゼクルヴに着弾すると激しい爆風を巻き起こし、ゴリアンと衝突して動くことが出来なくなったゼクルヴを巻き込んだ。

 ゼクルヴ撃破数―7










 

〜狙撃ポイント周辺空域〜


 時は少々さかのぼる。
 ブリュンヒルデからの敵増援を知らせる通信が突然途絶えて気にはなったが、前方の狙撃手に集中することにしたノートンは、狙撃ポイントと思われ場所にPFがいれば見えるくらいの距離まで距離を詰めた。
 肝心のPFの姿は見えない。だが、レーダーにははっきりとした反応が示されている。

(どういうことだ?)

 ブリュンヒルデから撃ち出された二十発のミサイルも目標を搭載されたセンサーで確認し、見えないながらも敵機をロックオンする。
 ノートンが不思議に思っているとロックオンに反応するかのようにレーダーに反応のある空間から急に丸い球状の物体が三つ現れる。
 その球状の物体はミサイルの方に飛んで行くとレーザーを発射し、次々とミサイルを撃ち落して行った。どうやら丸い物体は何らかの兵器のようだ。
 ドゥルガーに積まれている自律兵器オフェットである。
 二十発のミサイルのうち十七発が撃ち落されたがオフェットも爆発に巻き込まれて壊れたようだ。

(まだ、動かない……ミサイルを回避しないつもりか?)

 オフェットが撃ちもらしたミサイルが見えない敵に向かって行く。だが、見えないのは人間の目にだけでミサイルやPFのセンサーにははっきりと見えているはずだ。
 ノートンがもう少し進めばWCSの射程内に入る。敵がある程度のパイロットならそろそろ回避運動をするはずだ。
 もし、回避運動をしなかったらそれまである。ミサイルに当たるか、ノートンの攻撃に当るか、それとも反対から回り込んでいるムラキの弾に当たるかのうち一つだ。
 ノートンは敵の動きを待った。

 ムラキは二十発のミサイルが初めて見る兵器に撃ち落されるのを横目で見ながら、その謎の兵器をWCSでロック、スピードを落とさずに狙いを清まして一つ、二つ、三つ、と撃ち落す。
 ちょうど三つ目を撃ち落した時、コックピット内に敵にロックされたことを知らせる警告音が鳴り響いた。

「なんだと」

 レーダーに反応があった敵機からであろうか、もしそうならこちらよりも少々、射程が長いことになる。
 ムラキは敵の攻撃に備え身構えた。
 モニターを良く見ると、先ほどまでレーダーでしか確認できなかった敵機がいつの間にか姿を現している。
 その黒いカラーリングの姿はどこかヴァリム製のPFヴェタールにシルエットが似ていた。だが、PFのデータベースからの情報はUNKNOWNとしか表示されないことから新型であることがうかがい知れる。

 残りのミサイル三機が捕らえた目標に当たろうとする直前。
 その黒い敵機が左手を前に出すとその左手の前腕部に取り付けられ装置から赤く半透明でゼリーのようなものが現れ盾のような形を形成する。
 案の定、その盾のようなものはそのまま盾の役割を果たしミサイルの威力を無効化した。
 と、同時に背中からムラキに向けて一機のミサイルが撃ち出される。
 そのミサイルはモーターキャノンのような弾道を通りムラキに向かってくるが、その弾速は遅くムラキにとって余裕で迎撃出来るはずであった。

 ムラキはミサイルの接近を確認するとWCSでロックしトリガーに指をかけその引き金を引こうとした。
 ところが次の瞬間、ミサイルの弾頭部分から大量の爆薬が撃ち出され、ムラキの機体の周囲に一斉に降り注ぐ。
 ムラキの機体を中心にその周囲を爆煙が包み込んだ。もはや回避するどころではなかった。
 爆風が止むとこれ以上の行動が不可能と判断したムラキのPFが、脱出装置を作動させ空に脱出ポッドが打ち出された。


 

(ムラキさんが撃墜された?)

 モニターの端が明るくなり次にムラキの機体信号が途絶えた。それを確認しながらもノートンはムラキが撃墜された事実を疑わずにはいられなかった。だが、彼には疑っている時間すらもなかった。ミサイルの攻撃をゼリーシールドで防御した敵機がすぐに反撃してきたからだ。
 ミオ機を撃墜した赤い閃光がノートンの機体に襲いかかる。
 その攻撃を素早く左に避ける。だが、バスター系の攻撃はこれだけでは終わらない、なぎ払いが出来るからである。
 そのことはノートンも百も承知。ノートンを追って軌道を変えてきたレーザーに対して機体を上昇させこれを避ける。
 しかし、敵の攻撃はこれだけでは止まなかった今度は先程ミサイルを防御したゼリーシールドをノートンのシルバーブリットの方に向けると撃ち出してきた。

(あのシールドは武器にもなるのか)

 予期せぬ攻撃にも動じることなく直線的なシールドを右に避けるとさらに敵機との距離を詰めた。

(よし、照準内に入った)

 ノートンが敵機をWCS内に捉えトリガーを引こうとした時、機体の左後ろに衝撃が走り、シルバーブリットの左腕が切断され前方に飛んでいくのが見えた

(くそっ! まだ敵がいるのか?)

 機体を立て直しながらレーダーに目をやるがそれらしい影は全くない。代わりにモニターの端の方を黒い敵機の方に向かっていく赤い光を放つものが見えた。
 それは、先ほど避けたはずのゼリーシールドであった。

(遠隔操作ができるのか・・)

 そう思いながらもノートンはゼリーシールドに照準を合わせ、機体を完全に立て直したと同時に胸部に内蔵されているAAFミサイルの発射、見事に命中させた。よく見ると爆発の明かりで照らされて光る一本のワイヤーが見えた。

(有線式の武器か・・・)

 敵の兵器について悠長に考えている暇は今のノートンにはなかった。今度は敵機が先ほどブリュンヒルデから発射されたミサイルの殆どを撃墜したのと同じ球状の兵器を射出して来たからだ。
 その数に二個。
 さらに敵機もノートンの頭上を取ろうと動き出した。

(一体、幾つの武器を搭載しているんだ!)

 と、心の中で思いつつ、マシンガンで二個の球状兵器を撃墜し、上方へ向かった敵機に照準を合わせようと向きを変える。
 向こうは既に此方を向きバスターガンを発射するところであった。
 敵機の銃口がこちらを向いているのを見て、ノートンのパイロットとしての勘が素早く次の行動を指示する。

(……左手のカイザーシールドで防ぎつつ距離を詰める……)

 だが、左手の反応が無いことに気付きあわてて回避行動を開始する。
 コックピット内からPFの外部の正確な状況を確実に知る方法はほとんど無い。画面の警告表示を信じて想像するしかないのだ。
 ノートンは先ほど左腕が切断されるのを見てはいたが、とっさの行動であったためいつもの癖でシールド防御を行おうとしてしまったのであった。

 一つの判断ミスが戦場では死を招く。

 ノートンが並のパイロットであったらこの判断ミスで彼の命は終わっていたであろうが、そこは一流のパイロット。
 紙一重でレーザーの回避に成功したが左足に直撃。

(腕の次は足か……こうなったら幾らでもくれてやる!!)

 反撃に転じようかと思ったが、ノートンが攻撃するよりも早く敵機の追撃が迫っていたので回避行動を続けなければならなかった。
 敵機はバスターガンをレーザーマシンガンモードに切り替えて、凄まじい勢いで接近しながら追撃を仕掛けて来る。

(なんだ、あの武器は……バスターランチャーとは違うのか、それにジュネレーターが何で持つんだ?)

 レーザーマシンガンは高い威力と連射力と兼ね備えた武器であるがエネルギーの消費が異常に激しい。
 レーザーマシンガンの新型だとしても、そう簡単にエネルギー消費の問題は解決できないはずだ……だが実際目の前で、実弾兵器と同様の間隔で攻撃されている。
 ノートンはこのことに驚きながらも巧みに回避して行くが、左に右に回避をしていたため直線的に距離を詰めてくる敵機に接近を許してしまう。
 目の前まで迫った黒い機体がいつの間にか左手に手にした鎌を振り上げる。

(どっから出した?)

 鎌が振り下ろされる。
 ノートンは回避をせずに振り下ろされる鎌に向かって足を差し出す。

「いい加減にしろよ! この、びっくり箱がぁ!!」

 叫びながらまだ動く右足を犠牲にして振り下ろされた鎌を強引に止めるノートン。
 さらにスマートガンを敵のヘッドフレームに突きつける。

「これで、沈めぇぇ!」

 トリガーを引く。
 スマートガンから発射された弾丸がヘッドフレームに当たるはずであったが、頭部には命中せずに右肩に命中、敵機が接近してきたスピードよりも速いスピードで急速に後退したからだ。ところが厄介なバスターガンを手から落として行った。

 勝機と見たノートンはシルバーブリットのWCSを通常モードからバーストモードに切り替える。
 これはWCSカーソルを通常の手動とそれに追従する半自動のカーソルを二つ同時に使用する特別製のプログラムである。半自動のオート射撃と従来通りの射撃を同時に行えるわけだ。兵器さえ積んでいればPF一機で二機分三機分の攻撃が行なえる。
 もともとAFというPFとは違う亜流の人型二足歩行兵器に使われていたプログラムの流用らしい。
 欠点としてはWCSへの負荷が大きい事だが、その効果は絶大である。
 ノートンは素早く移動を開始し反撃を開始した。
 スマートガンで巧みに敵機の逃げ道を潰しつつAAFミサイルを確実に命中させて行く。

 だが……

 ノートンのPFの動きが一瞬にして止まる。
 負荷を掛けすぎたためにWCSだけでなく、OS本体までシステムダウンしてしまったのである。モニターの画面すら映らなくなってしまっている。

(……これで終わりか)



 

 ノートンのシルバーブリットがブーストサァイフを強引に止めた。スマートガンの銃口がモニターいっぱいに広がった時。
 黒いPFドゥルガーのパイロット、レイドは背筋に冷たいものを感じ一瞬時が止まったかのように思った。

(なんて奴だ・・・)
『緊急回避を行います』

 レイドが硬直し動けないでいる瞬間。AIであるエルンは緊急回避を告げながらも行動を起こしていた。
 彼の頭から思考が飛び、次に気が付いた時には敵機から攻撃を受けていた。事態をすぐに理解したレイドは。

「撤退しろ!」
『了解、撤退を開始します』

 ちょうどノートンの機体が停止するのと同時であった。
 戦域から離脱しながらレイドはエルンに言う。

「おい、エルン」
『何でしょうか?』
「今度から、緊急回避はもう少し穏やかにしてくれ・・・もう少しで気絶するところだったぞ」
『了解・・・・善処します』

 ドゥルガーの離れた戦域の近くでヘルファイヤーの激しい閃光が周囲を白一色に染めあげていた。



 

 真っ暗になったコックピットでノートンはその時を待っていた。
 だが、モニターが消え深海のように静かになった後、機体が一度振動しただけで何事も起こらない。

(見逃してくれたのか?)

 不意に無線にブリュンヒルデからの通信が入ってくる。

『リ……生……の……返…・し……ー』
(……シュキの声? 無線の入りが悪いのか)

 無線からシュキらしき声が聞こえてくるが入りが悪い様だ。チャンネルを変えてみたがなかなか聞き取れるようにならない。

「こちら、ノートン・ロウ、ブリュンヒルデ聞こえるか」
『……』

 こちらから呼び掛けてみたいが反応が返ってこない。
 さらに悪戦苦闘すること数分……。
 機体の再起動も試みたが機体は再び動き出すこともなく、無線も未だに不明瞭な言葉しか聞き取れないままであった。
 不意にノートンの機体表面になにか金属の物体がぶつかる様な乾いた音がした。

「何だ……」

 ほんの数秒の間をおいて聞き覚えのある声が聞こえてきた。

『隊長、ジータです御無事ですか?』

 普通の無線の声よりもやや濁った様な感じでジータの声が聞こえてきた。
 どうやら、接触回線で直接話し掛けてきたらしい。
 接触回線はコックピットないで生じた空気の振動を直接接触している相手に伝える回線で、盗聴されることもなくPF同士の通信手段として何かと役にたつ物なのである。

「ジータ、俺は大丈夫だが、ムラキさんは無事か?」
『ムラキさんは無事ですよ。脱出ポッドが作動しましたから……ただ……』
「誰かやられたのか?」
『ゴリアンさんが……』
「……そうか」

 二人の間にしばし重苦しい雰囲気が漂う。

「ジータ、悪いんだが機体をブリュンヒルデまで運んでくれないか? それとそこら辺に敵の使っていた武器がないか? 大きさはバスターランチャーぐらいだ」
『ちょっと待って下さいね……ありました』
「それも一緒に頼む」
『了解。直ぐに運びます。揺れるから気を付けて下さい』
「頼む……無線まで壊れたらしくってな……接触回線が生きていて良かったよ」
『それは多分……マコトがヘルファイヤーを撃ったからだと思いますよ』
「ヘルファイヤーを?」
『はい』
「まいったな……やっぱ取り上げておくべきだったかな?」

 ノートンの苦笑いをすると。

『……今回はそのおかげで助かりましたけどね』

 ジータも少し笑った。










 

〜ブリュンヒルデ艦内 重力区 ブリッジ〜


 敵機が去り、戦闘が終了してもブリッジは未だに落ち着きを取り戻してはいなかった。

「被害報告は?」
「主砲大破、機銃リモートコントロール装置故障、右舷カタパルト大破、エンジンの出力も低下しています」
「通常航行に支障はないんだな?」
「問題ありません」

 艦長は艦の被害を聞いて少々考えた後。

「PFの被害は?」

 シュキに聞いてきた。

「え〜とですね。ミオ機、ゴリアン機、ムラキ機、が大破。ノートン機が中破。マコト機が小破ですね」
「今すぐに使える機体はジータ機だけか……」
「そうですね」
「……基地に帰投する!」










 

〜ブリュンヒルデ艦内 重力区外 PF格納庫〜


 ジータの殆ど無傷のグラディエーターが動かなくなったノートンのシルバーブリットを抱えて慎重にカタパルトデッキに着艦。
 そのまま慎重に格納庫内へと運んで行き端に機体を置くとコックピットが開き中からノートンが出てきた。

『すまないが後を頼む』
『任せて下さい! おい、みんな早くしろよ!』

 ノートンの声に整備員は威勢良く答え、その呼びかけで幾人かの整備員が駆けつけ手早く作業を開始した。
 ノートンが機体から離れて沈んだ気持ちでシルバーブリットを見つめているとジータが向こうから流れながら近寄ってきた。
 不意に肩を叩かれ放心状態で立っていたノートンは少し驚いた。

「ジータ」

 ノートンがヘルメットの中で声を出したが無線を通してないのでその声はジータには伝わらない。ジータからはノートンがただ口を動かしている様に見えた。
 それに気が付いたジータのヘルメットと自分のヘルメットをくっつけて話し出した。PFの接触回線と同じで空気の振動を伝えて話す為である。

「ジータ、マコトとムラキさんはどうした?」
『ムラキさんは待機室で落ち込んでいますよ。マコトは……あっちで自分の機体に泣きついています』

 ジータが指さした方を見ると、マコトは片足が折れ床に寝かされているマコトの機体、通称ロボの横でぷかぷかと浮き、一人で何か言いながら激しい身振り手振りとともにロボに話し掛けている姿が見てとれた。

「マコトは相変わらずだな」
『まったくですね』

 二人の口から笑い声が少し漏れる。
 しばしの沈黙の後……。

「向こうに行きませんか?」
「そうだな」

 二人は床を蹴ってパイロットの待機室のある通路へと流れる様に向かって行った。



 

 シュキは部屋へ戻って来ていた。部屋の中は出撃前にミオがばらまいた私物でごった返している……だがそれらの持ち主はもういない
 シュキは床に散らばったグレンリーダーファンクラブの会報などを黙々とまとめて片づけはじめる。

「ミオさん……もう帰ってこないんだ……」

 床に落ちている良い感じに日焼けしたグレンリーダーの写真の中の笑顔がシュキの目に止まった。

「グレンリーダー……アルサレアの英雄か……英雄になれば人の命がいっぱい救えるのかな? でもそれには人をいっぱい殺さなきゃいけないんだよね?……嫌だね……戦争って、私達って戦争してるんだね……」

 Gエリアにおいて常勝無敗で今まで来たコバルト小隊。
 研修の時からその小隊に配属され味方が勝つ場面ばかりを、敵が敗北する場面ばかりを見てきたシュキは改めて戦争の悲惨さを痛感していた。


 

 数時間後、ブリュンヒルでは何とかミラムーンの基地まで到着し母艦とPFの修理を受ける事が出来た。
 ただ、ヘイド艦長並びに、ノートンはミラムーンのカシウ・モッテスナに数時間にわたる苦情を聞かされた。
 さらに、ブリュンヒルデの修理に必要な部品が少なくアルサレア本国から取り寄せる事になり、コバルト小隊は二週間近く何も出来ない状況になってしまっていた。
 それらの修理に必要なパーツは一週間後の増員と共に送られてくる事となった。

 衛星Gについて早々の初戦で早くも大打撃を受けてしまったコバルト小隊とブリュンヒルデのクルー達の心に暗雲が立ちこめていた。









 

〜惑星J サーリットン戦線後方基地〜


「姉貴」

 双子の悪魔と呼ばれる姉妹の妹、マイ・キサラギが姉のユイ・キサラギに声を掛ける。

「何、マイ?」
「新しい指令書が届いた」

 マイはユイに数枚の紙を無造作に手渡した。それをユイが受け取る。

「マイは読んだの?」
「いや、面倒臭いから読んでないよ。何て書いてあるんだ?」
「潜入任務ね。場所は……」
「場所は?」
「……宇宙よ」








 

第3話へ続く

 



〜後書き〜

 思えばこの話を書き上げたのは何時であったか……カレンダーを見ると一年以上前である。
 これを投稿できる場所を提供してくださったタングラムさんに感謝いたします。 2004/06/026 usagi.


 


 管理人より

 バーニィさんより第2話をご投稿頂きました!

 やはりレイド(というよりエルン)は流石ですね(笑)

 双子も宇宙へ出るようですし、戦力が激減した彼らはどう出るのか……
 


[感想掲示板へ] [目次へ] [投稿部屋へ] [バーニィさんの部屋へ]