〜 第5話の続き 〜


 シータは特に隠れることなく堂々とヤタガラス内を歩いていた。
 たまに「何処の所属か?」と聞かれる事もあるが偽造した階級章を見せて「参謀本部長直轄の特務部隊です」と答えると、「ああ、なるほど」と勝手に向こうが納得してしまい、とても楽だったらしい。

「せっかく色々言い訳考えてたんだけど〜…でも楽だからいっか」

 …参謀長さん(ゴルビー)とか護衛してる中隊長さん(ケン)って凄く信頼されてて、人望あるんだなぁ…と、ある意味正解…そしてある意味で凄まじく方向性が違う誤解をしているシータ(苦笑)


 その勘違い娘は、とりあえず当初の目的先だった格納庫を目指していた。

「…まったく、カイってば! ボクの出番は空港に着いてからなのに『急遽予定変更、開始の合図を待て』ってだけで何の説明も無しに行動予定繰り上げるんだからなぁ〜」

 売店で購入した猫のぬいぐるみを軽く抱きしめながら、頬を膨らませてぼやくシータである。

 

「……もうちょっと見学や買い食いしたかったのにぃ」

 …手首を見れば、お菓子を詰めたビニール袋を下げていた。頬を膨らませているのは怒っているからではなく、飴かガムでも口に入れているのだろう……?

 

 ………何しに来たんだよお前は?(汗)

 

 完全に目的を履き違えている(?)シータであるが…一応最後の一線は忘れていなかったのか、いきなりキョロキョロと周囲を窺いながら物影に隠れる。

「…ん……っとぉ……?」

 さらに周りを念入りに窺って人の目が無い事を確認すると、今まで着ていたアレサレアの軍服を脱ぎ捨てる。

「……んしょ……」

 そして、どこかから持ち出してきたと思われる整備服に着替えつつ、念の為一緒に隠していた予備の爆弾等の装備を、服の中やウエストポーチにしまった。

「……さて……?」

 ちょっと真面目な顔になるとシータはパンと自分の顔を叩き、気合を入れる。

「よぉし、がんばるぞ、お〜っ」

 自分に言い聞かせるように小さく叫ぶと、再び格納庫目指して歩き始めるシータだった。

 …ぬいぐるみとお菓子を詰めた袋を持って無ければ、それなりに決まっていたのだが(苦笑)


 

 ………そして………


 

「うわぁ…大きいです〜……」

 まだ多少距離があるとはいえ、間近で見るヤタガラスに思わず感嘆しているミナである。

「…でも、あの艦ってさっきから全然攻撃して来ませんねぇ……ちょっと前は違う方向からバスターみたいな攻撃が『これでもか〜っ! えいえいっ!』…ってくらいあったのに〜……?」

 さすがにここまで接近したのに、艦砲射撃がまったく無い事を不思議に思うミナ。

 その時、ヤタガラスが船体を傾け始めた。
 …これは航空機が急旋回を行うときによく見られる兆候である。

「…右に曲がるみたいですね……でわこっちは進路を左に〜……」


 ……ミナはロキくんを左方向に向けるため、操縦桿を左に向けた瞬間……


「…に゛ゃっ!?」


 悪寒を感じたミナは、咄嗟に右方向に操縦桿を倒す。

 

 ドドドドドッッ!!!

 

 …その直後、そのまま移動していれば直撃したのではないかと思えるほどの銃撃が襲いかかった。


「なゃんと!?」


 頭で思うよりも先に機体を制御しながら、真横にある小さい木や岩が次々と吹き飛ばされるのに驚いたミナがレーダーを見ると、ヤタガラスから2機のPFがこちらの方向に向かっていた。


 

 ……その攻撃をした当人……


 

「…外れた…いや、外された!?」

 空中を移動しながら大型ガトリング砲を構えていたJブラスター…そのパイロット、コウスケ=アクアウッドは驚いていた。

 

『…タカノの報告…映像を見る限り、あのロキに射撃武器はまず通用しない』
「……だな?」
『そこでだ…コウスケ、WCSのサポート無しで長距離狙撃しろ。相手が超能力者かヘルファイアで自爆してもピンピンしてる超非常識男でもなければ、それで倒せるはずだ』
「ケン、簡単に言うけどな…そんな芸当……」
『…無理ではないだろう?』
「……まぁな」

 

 ヤタガラスから出る前に話していた事を思い出しながら、コウスケは操縦桿を握りなおす。

「…こりゃ、本当に超能力者か何かかな?」

 基本的に銃撃と言うのは、長距離になればなるほど銃声が着弾より遅れて聞こえるので、銃声がしてからかわすのは不可能である。
 つまり、今の攻撃は「数秒後に前方から銃撃が来る」と、あらかじめ察知していないと避けようがない攻撃であったのだが……?

「…もしくは『偶然の天才』かも知れませんね」

 万が一、コウスケの初撃が外れた場合…そして接近戦にもつれ込まれた時の為に同行していた、シオン=フロドが合いの手を入れる。

「……なるほどな……さーて、果たしてどっちかな…?」

 今度はWCSをセットしてロキに狙いを付けるコウスケ。

「…このような時…漫画や小説だと、『両方を兼ね備えている』パターンが多いのですけど……?」
「…いくら何でもそりゃ出来すぎだろ?」

 コウスケはすこし苦笑しながら、機体を狙撃モードから通常戦闘モードへと移行し……

「…ま、いくら運の良い奴でも…これで終わりだろ……」

 ……苦笑を浮かべたままで、肩部武装のガトリングとキャノンをWCSで……さらに大型ガトリングをマニュアルで操作し、ロキに狙いを付ける。


「……次が控えてるからな…初っ端から全開でやるぞ!!」


 そして、ロキくん目がけて雷の如く激しい轟音と共に、嵐のような銃弾が発射された。

 ……さながら戦いの始まりを告げる合図のように。







 

機甲兵団J−PHOENIX 外伝の外伝(番外総集編)

語れられない刻の記録『ある一人の少女の物語 対決編(第6話)』







 

「どっか逝け、お前らぁ〜!!」

 

 モモネの機体肩部に装着されたロングバレル式大型ガトリング砲が火を噴き、手に装着した爪が風切音を発生させる。

『…ゥォNo〜!!?』
『……セリグゲカッ!?』(訳:台詞これだけかよ〜!?)

 モモネは今までに無い大声を上げて、グッドマンのアシュラを穴だらけにし、ヴェタールをなぎ倒す。

「ミナちゃんどこ〜…!?」

 かと思えば、外部スピーカーのスイッチを切って、小さく叫ぶモモネである……?

 煙幕の中、必死にミナを探すモモネだが…すでにミナは煙幕から出てはるか遠くにいたりする(汗)

 

 …さて、この戦場までどんなに早く移動しても数時間はかかるはずだったモモネが、何故間に合ったのかを説明するために、話を少し戻します……(ワンパターンですいません)




 

 ……現在(6話冒頭)より最低数分後………<誤字ではない(汗)




 

 モモネは雨の中、PFが格納されている倉庫に走っていた。

「到着〜〜っ!」

 雨具を脱ぎ捨てると、PF格納庫の扉を開けて中に入る。
 格納庫内にはエイジとトワネのPFである「鬼哭」と「レイ・プリムローズ」…そしてモモネのPF「レヴァンテイン」が収容されていた。

 しかしモモネは自分の機体を一瞬見ただけで、そのまま通り過ぎ…倉庫の一番奥に収容されていた機体の前に立つ。
 …見た目はアルサレア製PF「Jグラップラー」に酷似しているが微妙に形状が異なり、深い青をベースに、所々を銀で彩色されている機体である。

「……アルサレアでの初実戦か〜…でも、ミナちゃんの為!!」

 モモネは自分に言い聞かせるように叫ぶと、この機体…「オブリヴィオン・ハデス」に乗り込んで機体チェックを始める。


 …この機体は、少し前にトキノ一家がモモネ専用機として共同開発した機体である。

 鬼哭とレイ・プリムローズ……エイジとトワネが各々の知識と技術を結集して造ったとされる、両機体の長所と能力を継承するべく作成したためか、当時としては異常な高スペック機体と化してしまい、エイジやトワネですら扱い慣れるのに手間取るほどであった。
 まして当時のモモネでは、まともに動かす事すら出来ずに転倒する始末で、結局この機体は機体コードや名称が決まる事無くこの倉庫に封印されて、そのまますっかり忘れられていたらしい。

 …その後、この倉庫を整理していた時に、マントで機体を隠すかのような状態で発見されたのだが…マントを取ってみると、まるで拗ねているかのように体育座りなっていたのは、皮肉としか言い様がなかった(苦笑)


 ……そういった経緯もあり「オブリヴィオン・ハデス」(訳:忘却されし者)などと大仰な名前を付けられてしまった機体ではあるが、前述通り製作からかなりの年月が経ったにも関わらず、現在においても圧倒的な機体スペックを誇る機体であるらしかった。

 …それ故に「この機体ではおまえの実力が上がらない」とエイジに言われていたので、普段は自作のPF「レヴァンテイン」を使用していたのだが、今回はこれで出るつもりのようだ。

 

「…機体状態オールグリーン……システム異常なし……!」

 最終確認を終えたモモネは機体を格納庫から出し、ブースト全開で移動を開始する。

「…スラスタードライブ…全開…!!」

 程なくして脚部に増設していたスラスターも起動させる。


 ………そして、次の瞬間、オブリヴィオン・ハデスは爆発音に近い音を上げて加速する。


「…グッ……っ〜〜ぅぅっ!!」

 加速時のGで息が詰まるモモネだが、最初に乗った時はこの時点で目の前が真っ暗…半失神状態になったので、随分ましになっている……と思う。


 ……スラスターはごく短時間で止まったが、その爆発的な加速を連続使用する事で一気に移動したモモネは、5分と経たない内に目的地である空港までの道程を半分まで消化した。


「…はぁ…はぁ…よし、大分慣れた!! これであとは…ふぅ…超音速飛行機さえ用意出来ていればぁ……!」


 …次の瞬間、レーダーに大きな…大型輸送艦クラスの反応が表示された。


 

 ………長くなるので中略………(まて!?)


 

 レーダーに映った反応は、レイジが保有する戦闘輸送艦(実質戦艦だが)、「フロックス」だった。
 …聞けばトワネに頼まれたとの事なので、モモネは艦内に機体を収容させるが…艦内を見てカルチャーショックを受けるモモネをなだめながら説明した内容をかいつまんで話すと、モモネが出た後、トワネがシルバに連絡…そしてシルバからの依頼という形でレイジに話が及んだらしい。

 そして、フロックスに関する説明を「これはミラムーン内部でも知る者はほとんどいない」と、暗に『軍の最重要機密だ。一介の兵士である君には話せない』とも解釈できる(誘導)説明を行い、フロックスを移動(に見せかけた空間跳躍)させた。




 

 そして、モモネ参戦(5話最後)10分前………<同じく誤字ではない(汗)




 

「……おぃ、起きろ?」
「……うぅ……?」

 モモネが目を覚ます。
 ここはフロックスの中である。

「モモネさん、大丈夫?」

 モモネ同様、ミナが心配でレイジに同行をしていた「カズハ=アクト(キサラギ)」も心配した様子でモモネを見ている。
 モモネとミナ、カズハはモモネ達がエルムに訪れた時に初めて知り合ったのだが、その時にすっかり仲良くなって、メールの交換もしていたらしい(苦笑)

 

「…あ、あれ? 私いつの間に寝てたの…?」

 いつ寝たか全く覚えていないモモネは周りを不思議そうに見ながら聞いた。

「この艦は少々特殊な移動法で音速を超えるから、その時のショックで…ではないか?」

 曖昧に説明するレイジ。
 実際は跳躍に成功したのは良いが、転送先の時間軸が微妙にずれていたため、強制的に寝かせたのだが(苦笑)

「あ、それよりあれから何分経ったの? ミナちゃんのいるところはまだ!?」

 モモネはレイジに詰め寄るが、そのレイジは無言でフロックス前方を指す。

「……間もなく到着だ。準備を始めてくれ」

 その先にはまるでノコギリのような切り立った山脈群と……さらにその遠くには海らしき青い景色が広がっていた。

 

 モモネ参戦7分前……


 

「…準備完了!」
「私も終わったよ」

 ……モモネとカズハの機体最終チェックが終ったようだ。


 するといきなり何もない空間にモニターが表示され、そこにレイジが出てくる。

「……時間がないので、手短に作戦内容を再確認する」
「「はい」」

 レイジの言葉に頷くモモネとカズハ。

「まず俺…俺達は、建前上ミラムーンと契約している傭兵になっているが、実質的には無登録の傭兵としてこの戦いに介入するという事を、念頭に置いてくれ」
「…ど、どうして!?」
「……ミラムーンとアルサレアの関係を悪くするつもりか?」
「…あ」

 モモネはエイジが言っていたことを思い出す。
 この戦いに参加すると言う事は、アルサレアの最重要機密に触れるという事であり、さらにレイジ達は正式な手続きなしでの国境越えを行っているのである。
 そんな状況で公然とミラムーンを名乗って戦闘に介入すれば、国際問題になりかねない。

 少なくともモモネはしかるべき処置が決まるまでアルサレアに勾留されるだろうし、レイジ達は兵器の出所や経歴を厳しく追求されるだろう。

「…状況が理解できたようだから、説明に戻る」

 レイジが軽く手を振ると、それに合わせるように新たなモニターがレイジの後ろに出現し、地図が映し出される。

「ミナが操縦しているロキカスタムがどの辺りにいるかは不明だが、今製作元に問い合わせて機体の特徴…」

 その時、また別の小さいモニターが開いて、【メールが届きました】と表示される。

「…開いてくれ」
【了解】<喋っているわけではない


 ……【ファイル解凍中】と表示され……しばし時間経過……


【解凍終了しました!】

 ……そんな表示と共にオーケストラ風ファンファーレが鳴り響く(汗)


 

「……いい加減にしろ」
【久々の登場ですのでちょっとサービスです】

 …小声で文句を言うレイジに、同じくレイジにしか見えないように小さいモニターでそんな表示がされた。


【ただいま表示します】


 ……程なくして地図と同じくらいの大きさで、ロキくんの外観と主だった武装を記した設計図らしき物と、完成後撮影したと思われる写真が表示される。


「……へぇ〜これが……」

 カズハは興味深そうにロキくんを眺める。
 モモネは空中にモニター浮かぶという状況に慣れていないためか、目を丸くしている。
 ……それ以前にやたらと人間くさいAIに驚いてもいるのだろうが(汗)

「…便利だとは思うけど、なんか変な感じ……」
「気にするな」

 今度はロキくんをデフォルメ(マスコットキャラ)化した絵を地図に表示させると、フロックスとモモネ・カズハの機体も同様に表示させる。

「……状況を整理すると、ミナは前衛で戦っている可能性が高い…そこでモモネとカズハでミナに接触、即座にミナを連れてフロックスに帰還し離脱……」

 などという説明を地図の表示とアニメ風の絵を交えて説明するレイジ。
 正確にはレイジの説明に合わせて、フロックスのAIである「アマテラス」が勝手にやっていると思われるが(汗)


「……おい」
【…ですから、早く音声回路を接続してくださいね】
「………」


 ……それからさらに簡単な打ち合わせを行った後、レイジは海岸線が見えた所でフロックスを停止させ、モモネの「オブリヴィオン・ハデス」とカズハの「クレマチス」を発進させる。
 ちなみにカズハの機体「クレチマス」は明るめの紫をベースにした、LMGと斬馬刀に近い形状の大型剣を持った近・中距離戦用機体である。
 パイロット技量は言うに及ばず、機体性能もミナのロキくん、モモネのオブリヴィオン・ハデスと比較しても遜色のない高性能機であるので、決して足手まといにはならないだろう。


 ……本来ならば、レイジも出たい所ではあったが、カズハをはじめとしてアクト家一同から『緊急事態の時以外はPF・GFに乗らない』と念書まで書かされていたので、今回はフロックスからのサポートに徹するようだった。

 

『…これ以後の通信はコミュニケ…さっきの通信機能を使うが、もしミナを発見したらそれを使ってこちらに連絡してくれ。…こちらも周囲に張っている妨害波を最大にして接近を開始する』
「「了解」」


 ……電波妨害を張っていたのはヴァリムでもアルサレアでもなかったらしい(滝汗)

 

 そして、モモネは一気に戦場まで移動し……5話の最後のシーンとなるわけである。



 

 ……ここで舞台を元に戻します。<長すぎ(汗)



 

「この煙幕邪魔〜…レーダーは不調だし、WCSも全然働かない〜!!」

 あれから時間が経った事もあり、ミドガルズポイズンの効果は弱くなっているはずなのだが、連続同時爆発だったためか、いまだにレーダーや各システムに悪影響を与えているようだ。

 

 …ピピピピピ…

「…ん?」

 その時モモネが身に着けていた腕輪みたい物から音が出たと思えば、ちょうど手首の上に小さいモニターが写る。

「…やっと追いついた…モモネさん…今どこ?」

 …ミドガルズポイズンの影響…それともレイジが張っている電波妨害の影響なのか、映像は乱れているが、そこに映ったのはカズハだった。

「えーと…今この辺にいる…と思う」

 モモネは別のディスプレイに地図を表示させると、指で場所を示す。
 すると、画面の地図上に青い光点が表示される。

「…ん〜…あ、わかった…モモネさんの機体って蒼いし、マント付けてるから見分けやすいね」
「カズハちゃんいまどこ?」
「…ここ」

 地図に新しい…紫の光点が出現する。
 モモネから見て少し南東の方角だった。

「今空中から索敵ついでに攻撃中」

 モモネがカズハのいると思われる方向の空を見ると、確かにLMG特有の赤い光が地上に向けて降り注いでいた。

「…そこからミナちゃん見える?」
「……黄色いロキ…ロキ………?」

 モニター越しにキョロキョロしていたカズハ………

「……ダメ、見えない。…モモネさんの機体と違って、目立たない色だし……サフラン、分かる? …………ダメみたい」

 カズハの機体に搭載されているサポート用高機能AI「サフラン」でも「検索不可能」という回答らしい。
 ………確かにロキのカラーリングでは、砂浜が保護色になっているし、煙幕と磁気を帯びた金属片、あちこちに付着していた蛍光色のおかげで、判別がかなり難しくなっていた。

 ……そもそも、この一帯にロキくんがいないので、検索のしようがないのかもしれないが。


「……えぇぃ、ならば!!」

 モモネは再びロングバレルガトリング砲で狙いを付けるため、マニュアル射撃用の照準器を出す。

「SARMS、妨害電波モードから攻撃補助モードへ!」

 モモネが叫ぶと、機体のモニターに大量の光点が出現する。
 その光点をよく見ると、動いている物と動いていない物があった。

「…動いている発信機だけに狙いを絞って……!」

 モモネが操作すると、メインモニターに『動いている発信機』とおぼしき反応が表示される。

「……一番近いのは……そこっ!!」

 その反応を頼りに、モモネは煙幕で視界が不良な状態の戦場を駆ける。

 そして、程なく目の前にヴェタールの姿が……

「外れっ!!」

 モモネは迷わずロングバレルガトリングでヴェタールをマニュアル射撃し、止めとばかりに細剣と爪を交差させるように振るい、ヴェタールを切り裂いた。

「…次っ!!」

 そして再び手近な反応の方へ移動を開始する。

「ミナちゃん何処行ったの〜!?」

 再び同じ事を叫ぶモモネであった。

















 

 ……時間を少し遡り、ミナとコウスケ達が戦い始めた直前のヤタガラス内部……


(…ん〜やっぱ、PFは全部出てるか〜)

 そんな事を考えながら、シータはそっと格納庫に入る。
 …シータが言っていたとおり、現在は全PFが出撃している状態なので、結構広く感じた。

 …甲板に出ればPFはいるが、今は戦闘中なので迂闊には近付けなかった。


「…ちぇ〜……じゃ、弾薬庫…は、まずいか………どこにしよ…?」

 甲板側出入り口で整備士達が何かを運び出しているので、そこから離れるように移動しながら適当な場所を探す。

「ん〜……?」

 その時「使用済み・火気厳禁」と書かれた張り紙と共に、念入りに固定されているドラム缶や燃料タンクがシータの目に入る。

「……あれならちょうどいっか。…中身無くてもあれだけ集まれば結構なものになるだろうし♪」

 脇にぬいぐるみを抱えつつ、足早に移動するシータだが、その時艦が大きく傾く。

「とととっ…!?」

 さすがのシータもバランスを崩して、手をバタバタ振りながら体勢を整える。

 …そこに運良く(悪く)ガバメントが通りかかり、シータの手を握って支えた。


「……大丈夫か?」

「……あ、ありがとう」
「急旋回するから自信の無ぇ奴は作業帯で身体固定しておけと言ってただろうが!」
「ご、ごめんなさい…」

 ちょっと驚いた顔をしながら数歩下がり、手を隠すように腕を組んで謝礼を言うシータだが、内心かなりドキドキしていた。

「大佐〜搬出作業終わりました〜!!」
「おうっ、すぐ行く! …お前も手が開いてるなら……」

 シータの方を向くガバメント…シータもガバメントの階級を知って顔を強ばらせる。

「「……ん?」」

 そして、2人は互いの顔を改めて見て首を傾げる。

(…こんな嬢ちゃんいたか?)
(……訓練中に見た要注意(兼暗殺対象)人物リストで見たような…?)

 その時、ガバメントはシータの服の裾から手甲が見え隠れしているのに気が付く。

「……嬢ちゃん、何者だ?」
「………ごめんなさい……っと!」

 ガバメントの声色が変わったのを察したシータは、再びガバメントに謝り頭を下げた瞬間…腕だけで持っていたぬいぐるみを思い切り投げる

「……!?」

 ……ガバメントがほんの一瞬…目を瞬きする程の時間、ぬいぐるみに注意を奪われていた間に、シータは姿を掻き消していた。


(上手くいった〜♪)

 そのシータは、ぬいぐるみを投げると同時に縮地で横に飛び、四つん這いになったかと思えば、そのまま慣性を無視した鋭角移動でガバメントに接近を試みていたのだ。

 そして、その状態のまま腕を回転軸にして足を振り回して、足払いをかける。(バッタみたいな移動で手を地面に付けた直後、腕を軸に回転してます)

「ツッ!?」

 気配を感じて身を半歩退いていたのが幸いしたか、払われつつも倒れないガバメント……それを見たシータは、腹筋と背筋をうまく使って(ブレイクダンスでも踊るかのように)体を丸め、手と背筋の力で一気に逆立ちするように背面蹴り!

「ぐっ!?」

 シータの追撃を腕で受け払いつつ、さらに一歩退いたガバメントは手の力だけで自分の胸くらいまで跳躍しているシータの頭を殴りつけようと拳を振り下ろす。

(にゃっ!)

 しかし、背中を向けているシータは頭部への攻撃を、まるで後ろに目が付いているような後ろ白刃取り(サッカーのスローイン体勢みたいな感じ)でガバメントの拳を掴んだ。

(…こういう時にインターフェイスって便利だよね〜♪)

 …どうやらインターフェイスでガバメントの動きを『見て』いたらしい……。

 …そして軽業師のように腕の上で逆立ちをしているような状態になったかと思うと、クルリと半回転してガバメントの腕と手を掴み、手首を変な方向に捻じ曲げようとする………。


「っざけるなっ!!」


 拳を強く握られて一瞬苦悶の顔を浮かべるガバメントだが、手首が極められる直前にシータを腕から引き剥がすように振り回しながら、思い切り投げる。

「っと!」

 シータも慣れているのか特に慌てることなく体勢を整えて着地した。

 

 そして、着地した時に合わせるかのように、シータが最初投げたぬいぐるみが鈍い音を立てて床に落ちた。

 

 ……たった4〜5秒あまりの時間でこれだけの攻防を繰り広げたのである。


 

「……ちっ…やってくれるなぁ、お嬢ちゃん?」

 手首のダメージを確認するように腕を動かしながら、彼女を睨み付けるガバメント。
 そのガバメントの表情を見たシータは、一瞬きょとんした顔を浮かべる。


「…ん〜…おじさんの親戚か何かにアルフォンスって人いる?」
「…………いいや?」
「そっか…なら安心♪」

 どうやらガバメントの言動から、師匠の事を思い出したらしいシータはにっこり微笑むが、すぐに表情が消える。

「………」

 そして、再びガバメントに襲い掛かる。

「…っ!」

 今度はシータの並外れた素早い動きを見切って、カウンターのように攻撃を避けながら拳で攻撃するが…シータもその攻撃を受け流すように避けた。

 攻撃を受け流したシータはガバメントの左に回りこみ、回し蹴りをするが、ガバメントは自ら前に寄って蹴りの威力を逆に殺す(足を振り切らない状態で受け止める)と、肘攻撃をシータに当てる。

 シータも体勢を瞬時に整え膝を落とし、両腕を交差させてその攻撃を防ぐが、体重差はどうしようもなく仰け反るかのように吹き飛ばされた……かと思えば、その反動を利用してバック転蹴りをガバメントの顎めがけて繰り出してくる。

「ッ!!」

 …が、ガバメントはその体格に似合わぬ機敏な動きと訓練によって培われた野性的勘で反応し、仰け反るようにその攻撃をかわす。

「…縮地」

 しかし、シータも常人離れした脚力とバランス感覚を使って着地直後の慣性を打ち消すと、顔と床がくっ付いているのではないかと思えるほどの低い姿勢で接近し、アッパーを仕掛ける…


(また下からか!)

(…やっぱり下からの攻撃やりにくそ〜…『体格で勝る相手には寝て攻撃しろ』…御師様もたまにはいいこと言うな〜♪)


 ……『寝て攻撃』の解釈を間違えている気もするが、双方はそんな事を考えていた。


「…舐めんな!!」

 ガバメントはシータのアッパーを防ぎ、手首を握り返すと、その状態のままローキックを繰り出す。
 しかし、シータもガバメントの足をジャンプで器用に避け…蹴ってきた足を踏み付けようとするが……ジャンプする事を読んでいたガバメントは片手でジャイアントスイングをするかのようにシータを振り回した。

(骨の1、2本は覚悟して貰うぞ!!)

 そう思いつつガバメントは使用済みドラム缶が固定されている方へ投げつけようとするが………

(…八供)
「……ッガッ!?」

 …まるでスタンガンのような強い衝撃を腕に受けたガバメントは、手を離してしまう。
 その攻撃を仕掛けたシータはあさっての方向に飛ばされたが……例によって猫のようにクルクルと回転しながら着地した。

「……うにゃ〜……」

 ……しかし、さすがに今のスイング(+着地での回転)で目を回したのか、足元が若干ふらついていた(苦笑)


「………」

 …一方、シータの切り札の一つ『八供(はっく)』を受けたガバメントだが、チラリと衝撃を受けた腕を見ると、その部分が青黒く変色していた…どうやら、内部出血しているらしい……?


(……あの小さい体でとんでもないスピード……低い姿勢からの重い一撃………その上この妙な攻撃か……やりにくいことこの上ないな……!)
(…にゃはは、初めて御師様以外のヒトに使っちゃったよ……でもこのヒト、整備士なのに相当闘い慣れしてる…御師様相手のつもりでやらないとダメ…かな?)


 ……双方相手の強さを感じ取り警戒し始めたか、互いの腹の内を探り合うような睨み合いが始まる……が、この状況に気がついて、わらわらと人が集まってきた。

(……ここまでかな? …ちょうど良いタイミングだし♪)

 半分ラッキー、半分がっかりと言いたげなシータは、再び姿が掻き消えるかのように移動する。

「チッ……!」

 警戒していたガバメントはサッと構えるが、シータはさっき投げたぬいぐるみを拾うのが目的だったらしく、ダッシュついでにぬいぐるみを拾うと、そのまま格納庫出口まで走る。


「って、待ちやがれっ!?」

 シータを追いかけようとするガバメントだが……

「……んじゃ、またね♪」

 そのシータはガバメントを挑発するかのように手を振ってお辞儀すると、何故か大事そうに拾ったはずのぬいぐるみを、使用済みドラム缶に向けて思い切り投げた。
 …そして、例によって投げた直後に縮地でダッシュし、掻き消えるかのようにヤタガラス艦内へ逃げるシータ。


「チッ……」

 彼女が廊下に消えるまで警戒していたガバメントは、ふとシータが投げたぬいぐるみを見る……?

 

 ……そのぬいぐるみからかすかに煙らしき物が………


「……!?」

 一瞬ぬいぐるみを蹴り飛ばそうとでもしたのか、そっちに向かおうとするガバメントだが、ぬいぐるみの状態から半ば直感で『間に合わない』と判断し、咄嗟に横に飛ぶ。


「全員物影に隠れろ〜っ!!」


 飛びながら後ろにいた整備士達に命令し、自らも転がるように物影に隠れた。
 整備士達も慌てながらもガバメントの指示通りに動く。


 そして、その直後、ぬいぐるみは激しい炎を出しつつ爆発し……ドラム缶やタンクに残っていた燃料に引火、その爆発以上の激しい炎と熱風を吐き出す。


「……ここから出る時消えたように移動して見せたのは、ぬいぐるみから注意を逸らす為…って事か……くそ、やりやがったな!」


 物影から激しく燃え上がる炎を悔しそうに見ながら呟くガバメント達は、消火と延焼を防ぐ作業に追われる事となり、今行なっていた作業も中断せざるを得ない状況となった。











 

 …………シータとガバメントが戦う少し前………

 

 ケンに状況報告を行なえる距離まで移動したタカノは、すでにヤタガラスの目前まで接近していた。

「うう…タケル君にこんな姿見せたくないけど、一刻も早く戻らないといけないし〜…」

 よほどペイントまみれになったスカイ・ファルコンをタケルに見せたくないのか、何回も同じ事を呟くタカノだった。
 これが某小隊なら、任務そっちのけで機体のワックスがけを始めてしまうところなのだろうが…(汗)

 そんなタカノの心情を無視するかのように時間は進み…ヤタガラスに到着する。


「タカノ=サカイ、ただいま戻りました……」
『ご苦労』

 出迎えたケンのJフェニックスSが軽く手で挨拶する。

『お疲れ様です。…何だか大変だったそうで…?』
『お疲れさん』

 エヌスとタケルも付近の警戒や、整備士達がやっている作業を手伝いながらも挨拶する。

『…早く整備を受けろ。…悪いが、すぐにでも再出撃する事になるだろう』


「………あれ?」

 スカイ・ファルコンの見た目になんのつっこみもないのに、いささか拍子抜けしたタカノは間抜けな声を出す。
 …一応、エヌスが遠回しに質問していたが、それは完全無視していたタカノ。


 隣にいたタケルの反応が物凄く気になっていたからだ


『…どうした、聞こえなかったか?』
「い、いえ、すぐに整備に入ります」

 ケンに促されると、軽く敬礼して格納庫へ向かうタカノである……。


(……そっか、タケル君、私が傷付くと思って気を遣ってくれてるんだ! うん、きっとそうっ☆)


 ……何やら妙な勘違いをしているタカノに代わって説明するが…ケンは元から物事に動じない性格だからともかく(マテ)、タケルとエヌスは突拍子のない行動に慣れているから、スカイ・ファルコンがペイントまみれになっても驚くほどの事ではなかったから…というだけである。


 何せ、巫女服やウェイトレス服を喜んで着る男友達がいるのだから


 さらには、隙あらば後ろから攻撃してきそうな同僚、機会あれば変な実験やモニターを強要してくる知り合いがいるのも原因の一つかもしれない





 

 ………少々話がそれてしまったのでそろそろ話を戻す……なお、詳細は神楽歌さんSS「Jメガバスター開発物語」等を参照……(深謝)



 

 自分勝手な解釈をしながら格納庫へ向かうタカノだが、その直後格納庫内で爆発が起こった。

 ……先程の、シータが投げた爆弾による廃棄燃料の誘爆である。


「ぅわっちゃっ!?」

 実際に熱いわけではないが、熱風と黒煙に煽られたタカノは短い悲鳴を上げ、煙を避ける様に低姿勢で中に入ると、倉庫の隅でドラム缶の山が激しく燃えていた。


「うわっ、これは一体!?」
『どうした!?』

『隊長!?』
『何だよこりゃ!?』

 ケンやタケル、エヌスも集まってくる。

『…エヌスを除く第3小隊とタケルは周囲を警戒、敵にして見れば絶好の機会になる!』
『『りょ、了解!』』

 指示通り、タケルはエヌスを除いた第3小隊…「ヤークトライガー」と呼称される砲撃戦仕様のJファー改修機を率いてヤタガラスから出撃した。

『隊長、僕はどうしたら?』
『…シンザンの動きが気になる』
『…わかりました』

 それだけで自分の役目を察したエヌスは再び甲板で警戒態勢になる。


『…これで防衛戦力はほぼ出尽くしたか……』

(…さて、相手はこれが狙いのはず……どこから来る?)


 ケンはタケルからの索敵報告を聞きながらふとそう思った。









 

 そして、ヤタガラス格納庫で爆発があった少し前……

 

 高度10000を軽く突破した高速輸送機はヤタガラス直上を目指して飛行していた。

「…間もなく、ヤタガラス直上に到達します…ルキア隊長、準備は!?」
『いつでもどうぞ!』
「了解!」

 輸送機の後部ハッチが開かれる……。


 

「う〜……」

 後部ハッチからちょっと不安げに顔を出すのは、ルキアが操るイリアカスタムである。

『…さすが輸送機の限界高度…地面が見えねぇな……』

 イリアの後ろからダンが操るヤシャカスタムが顔を出す。
 …確かに、下を見ても雲ばかりで、地面はまったく見えなかった。

「ちょ! ちょっとダン!?」
『……何だよ、怖いのか?』
「ち、違うわよ! ただでさえ装備過多なんだから時間まで動くなって言いたいの!」

 イリアとヤシャの脚部や腰部に、なにやらごついブースターが増設されていた。両肩にも人用と思われるパラシュートが増装されている。
 その2機の後ろに控えていたシンザン…双子の機体にも同様の装備が施されていることから、高高度落下用の装備らしいが?

『こういうゴツゴツしたの、嫌いなんだけどな』
「あのね、高度15000から2000まで、制動無しの落下なのよ? いくらシンザンに瞬転機能があるって言っても、万一の事があったら困るのは貴方たちなんだけど?」
『ちっ、わかってるって』

 舌を鳴らすマイだが、表情はそれほど不機嫌ではない。むしろ、フッと失笑に近い笑みを漏らす。

『…しっかし、輸送機からの高高度爆撃…まさか移動中の戦艦相手に使う事になるとはな〜…姉貴、これって空港に着いた時を狙って使う予定だったんだろ?』
『そのようね。…普通に考えれば効果が薄い戦法ではあるけれど、ヤタガラスが資料通りの性能ならば、撃破も可能…』

 ユイはルキア達と合流直後に見た資料を思い出す。

 そこには、『ヤタガラスは長距離用兵装を搭載しておらず、中距離からの迎撃用装備のみ搭載している』…と書かれていた。
 資料の出所はアルサレアに潜伏している間諜からの報告という事なので信憑性はあるし、移動中に届いた出撃直前の写真にも長距離用兵装を搭載しているような気配はない。
 そして、ヤタガラスがオーガル・ディラム改修機である以上、変形機能を無くしていない限り、長距離武装を内蔵できない事も容易に想像できる。

(それとも変形機能をオミットしている…いいえ、それはない)

 ユイは確信に近い気持ちでそう思っていた。

 …何故確信出切るのかだが……それは弱点である変形箇所がオーガルのそれと同じである事で推察出来るからだ。

 …変形を行なえるかのように偽装している…と、考えられなくもないが、それなら全体の外観に違和感があっても良いはずだ。
 なによりそんな事をする意味がない。…そんな小細工を施すくらいなら、その部分に装甲を追加してより堅牢としなければ本末転倒である。

(あと考えられるとするならば……)
『こちら14番、予定ポイント到着!』
(……!)

 ユイが新たな仮説を考えていると、クシーからの緊急通信が入ったので思考を中断し、意識を集中させる。

『……目標は予定より早く移動しているが、十分に補正可能!』
『…ゼロ、了解…速度合わせます! ……ルキア隊長、時間です!』

 クシー…そして輸送機パイロットの声と同時に、固定されていたコンテナがパージされるので、足で支えるルキアとダン。
 そのコンテナは弾薬や燃料を満載した、言ってみれば即席の爆弾である。
 …しかし、よく見れば鎖で数珠繋ぎされているらしく、輸送機が振動で揺れるたびにジャラジャラと音がしていた。


『……さーって、いっちょハデにやってやるか!』

 ダンは気合を入れなおすとルキアの横に移動する。

「…行くわよ!」
『おう!』

「…第一陣、射出!!」
『…っしゃ!』

 ルキアとダンは数珠繋ぎ状態のままでコンテナを落とすと、自らもダイブを敢行する。
 2人を見送ったユイとマイは、残ったコンテナをカタパルトに固定する。

「…第二陣、射出」
『先に行くぜ、姉貴!』

 引き続き、マイが二人に習うようにコンテナを落としてダイブする。

「…第三陣、射出」

 最後にユイがコンテナと共に輸送機からダイブした。


 ブーストを使わず、自由落下を続けるユイのシンザンは、コンテナを繋ぐ鎖を掴んだ。

「………」

 そのまま高度10000前後まで落下すると、その高度で待機していたカルラが見えてくる。

『……後は各自で判断し、目印に向かって進め』

 クシーはそれだけ言うと、レーザーピストルを地上目がけて発射する。

「……これが、目印?」

 ユイはレーザーの軌跡に合わせて進路を微調整し、厚い雲に突入する。

「………っ……」

 雲の中に入って視界が真っ暗になるが、雲を突き抜けると…大地と海が見えてくる。
 眼下ではすでにあちこちで戦火が上がっており、どれがヤタガラスかはっきり分からない状態であったが………

「なるほど…目印というのは、あれね…」


 ……白い砂浜が広がっている中で、黒い黒煙が激しく上がっているのを見て微笑したユイは、ブーストを全開にして『目印』に向かって急降下を始めた……。









 

 ………そして再び舞台が変わり、ヤタガラス後方から左側面………


「……さて……」

 幼さと大人っぽさが同居した様な中間的容姿の男が、グレネードランチャーとレーザーライフル、ウイングを装備した射撃仕様のJフェニックスを超低空で飛行させていた。

「……おまえ達は敵部隊の側面に回れ! 第3小隊の砲撃に巻き込まれるなよ!?」
『了解!!』
『イクス小隊長、御武運を!』 

 ……閃光の爪第2小隊隊長「イクス=グレック」は部下に指示を送ると、同じ様に超低空飛行で隣にいた……レーザーピストルとウイングシールド、ウイングを装備している近接仕様のJフェニックスの肩に手を置いた。

「…黎、準備は良いか?」
『おうっ、いつでもOKっ!』

 モニターに映ったのは…右頬に刀傷が無ければ、どこぞのアイドルのように笑顔が似合う、好印象を与えそうな容姿の青年だった。

 …その青年…「(レイ)=アルドワーズ」は、ウイングシールドとレーザーピストルを正面に向けて、いつでも突進可能な構えを取る。

「…相手はあの剣狼だ。…今まで相手にしてきた連中とは格が違うぞ?」
『さっきも言っただろ、望む所だってな! …くぅ〜刀傷が疼くぜ〜〜っ!』
「……たしかその刀傷は刺青じゃなかったか?」
『いいんだよ、これは気分の問題!』
「………前々から聞こうと思ってたんだが、その刺青は何か意味があるのか?」
『…ん〜…ま、ちょっとした願掛けと、ガキ扱いされないためかな……』
「……そうか…」

 フッと遠い目をして答える黎に、『似合わないぞ?』と言いたげな顔をするイクス(汗)

(…しかしその気持ち、分からない事もないけどな)

 ……傍から見れば、双方とても恵まれた容姿だと思うのだが、それ故に軍人としては色々苦労があったのだろうか?


「………見えた…!」

 …等と話していると、2人の視界内に黒と金のカラーリングを施したオニカスタムが見えてくる。

「よっしゃぁっ!!」

 黎がブーストを全開にして前に出る。

「…やれやれ……」

 黎のそんな様子を見て嘆息するイクスだが……次の瞬間キッと表情を引き締める。

「負けるかっ!」

 イクスもブースト全開で黎の後に続いたのだった。


 

 ……一方……

 

 ジークは他の部隊にやや先行する形でヤタガラスに向かって移動中である。

『中尉! こちらアシュラ隊、上陸完了!』
『同じくキシン隊、同じく上陸完了!』
『ヴェタール隊、輸送機より離脱! キシン隊に合流しました!』

 …後方の友軍から次々と報告が入り………

「キシン隊はヤタガラス前方に回りこむように海岸線沿いに移動!」
『了解しました!』

「アシュラ隊はヴェタール隊と共にヤタガラス防衛部隊の迎撃!」
『『……了解!!』』

 …ジークは各部隊に指示を送った。

「輸送機はヤタガラスの側面を抑えろ! ……その気になればいつでも特攻できるようにな!」
『ハッ! 本気で突っ込むつもりでやってやります!』
「…解っていると思うが…」
『…承知してます。…自分もこんな所で死ぬつもりなど、毛頭ありません!!』
「……ならば、思い切りやれ!!」
『イエッサーッ!!』

(……これで、多少の牽制になるはず…)

 ……どうやら、輸送機を囮とする事で少しでもPFへの攻撃を軽減させる作戦を採るようだ。


 

 ……そして、2機のJフェニックスが接近してくるので、エクスカリバーを持ち直して進路を変えるジーク。


「………いくぞ、黒狼……!」


 ……双頭の竜と孤高の狼…この両者の戦いの火蓋が切って下ろされる……







 

 …第7話につづく…



 



 あとがき

 …ああ、話が全然進まない……(汗)
 皆さんお気づきでしょうか? …第4話最後からここまで、まだほんの数分しか経っていないという事に?(滝汗)
 うーん、こんなにも狭い戦場なのにこの進行の遅さはどういうことなのでしょう?(爆)<自業自得

 では、感想お待ちしております(汗)


 

キャラ紹介

エイジ=トキノ(桃音さん)
 モモネの父親。
 何でも並以上にこなせる万能人間でミラムーンでも重用されている人物。
 娘のモモネにはとことん甘く、家族との生活を優先する為に昇進を蹴った事もある。
 しかし今回モモネと激しく口論してしまい、落ち込んでいる?(汗)

トワネ=トキノ(桃音さん)
 モモネの母親。
 エイジ同様、さまざまな分野で非凡な才能を見せる才女。
 その上常に夫であるエイジを立て、けっして自ら目立とうとしない大和撫子的良妻。
 今回は親バカで冷静な判断力が鈍っているエイジに代わって、各方面に連絡を入れている。

カズハ=アクト(タングラムさん)
 旧姓は「カズハ=キサラギ」、レイジの仲間で元強化兵と言う過去を持つが、レイジに助けられて以後、彼を兄のように慕うようになる。
 現在はアクト家の養女となって改姓しており、言葉遣いも若干変わっている。

シルバ=ボガード(タングラムさん)
 現在のところ名前のみ登場
 名前だけならすでに1話で既出していたが、割愛していた(ぉぃ)
 レイジの依頼のお得意様であり、色々便宜を図っている。
 ミラムーンの「蝙蝠的印象」を払拭すべく奔走しており、現大統領と共に内政・外交共に欠かす事の出来ない重鎮である。

イクス=グレッグ(神楽歌さん)
 閃光の爪中隊第2小隊隊長。黎と2人で「マッドヒドラ(狂った双竜)」という異名を持つエースパイロット。
 旧閃光の爪中隊(タケルやマユ、エヌスなどが入る前)の時からケンの下にいるので、非常にまともな性格なのだが、個性が強い閃光の爪中隊に中にあっては比較的地味である(マテ)
 容姿は幼さが少し残る青年で、射撃戦仕様のJフェニックスを操る。

黎=アルドワーズ(神楽歌さん)
 閃光の爪中隊第2小隊隊員。イクスと2人で「マッドヒドラ(狂った双竜)」という異名を持つエースパイロット。
 イクスと同様に古くから閃光の爪中隊にいる事もあり、かなり真面目な性格。しかし、出番は少ない(強くマテ!)
 顔に刀傷(みたいな刺青)があり、近距離戦仕様のJフェニックスを操る。


 

機体解説
 モモネ専用機体:オブリヴィオン・ハデス(忘却されし者)

 機体イメージはJグラップラーにレディレイピア、猫の爪、HPパック、レールキャノンを装備したような感じ。
 ※性能に関しては完全オリジナル機体のため、再現不可能(汗)

 カラーリング
 頭部(0,0,7)(25,25,25)(20,20,20)
 胸部(0,0,7)(20,20,20)(25,25,25)
 腕部(20,20,20)(25,25,25)(0,0,7)
 脚部(25,25,25)(20,20,20)(0,0,7)

 武器についてはデフォルト設定


 名前の由来は作られて長い間放置されていた事からきており、完成したときに名前を貰えなかった哀しいヤツでもある。ゆえに忘却…忘れられし者、の意味の名を冠される。
 この機体はモモネと両親が数少ない共同制作した機体であり、それだけに性能も馬鹿高かったので完成後すぐにはまだモモネは使いこなせなかった。

 それからしばらくし、モモネが自分の力だけでカスタムPF「レヴァンテイン」を完成させるが、その後ずっとレヴァンテインで戦い続けていたため共同制作した機体は倉庫の奥深くで眠り続けることになる。
 アルサレア戦役後、暇になったトワネが倉庫を整理した時に発見されるものの、エイジに「自分の使いこなせない機体などに乗るな」と封印されていた所為もあり、モモネもここぞという時以外は乗らない様にしている。


武器解説
右手武器:スピニングチェイサー・A(アドバンス)
 元々は永久音が使っていた普通のサイズより若干細い西洋剣、
軽くて硬い、斬る攻撃も出来る様になった。

左手武器:絶・狩人の皇牙
 元々は鋭慈が使っていた突き系のクロー、多少改良を加え
爪の出し方にヴァリエーションを設けた。
 1本出しと3本出し…の2通りがあり、状況によって使い分ける。

右肩兵器:S・A・R・M・S(サームズ)
 正式名称は『スプリンクル・オート・ロック・マイン・センサー』、サームズは頭文字を取った略語である。
 発信機のようなものを敵機にばら撒きくっつける、攻撃・策敵用補助兵器。
 そのほかに短時間なら妨害電波を出し、自機を認識できなくさせる機能も持つ。

左肩兵器:ロングバレルガトリング砲
 ガトリングの弾を肥大化、ロングバレルとライフリングにすることによって遠距離にも対応したガトリング砲、マガジンは肩と肩の間、背中にセットされている。
 使い切った後は自動的に外れて機体重量を軽くする、弾数は400発。

頭部内蔵兵器:バルカンの弾を発射時に一瞬光るようにしたもの。
胸部内蔵兵器:未搭載。防御力と軽量化に特化されているため。

その他特殊兵装
試作専用装備:ガード13(ガードサーティーン【マント】)
 耐衝撃に非常に優れた効果を発揮するマント。13回強い攻撃を喰らうと壊れる
 ※格納庫に格納されている際に隠すために使われていたりもする(爆)

脚部増設装備:スラスタードライブ
 腰下と膝下に増設されている推進補助装置。極めて短時間だが爆発的な推進力を得られる。


特殊技:???
 サームズを応用した、必殺と呼べる技があるのだが……とりあえず秘密(苦笑)


 なお、この設定は桃音さんより頂いた物を編集・抜粋しています。



 


 管理人より

 ヨニカさんより第6話をご投稿頂きました!

 ああ、見事に行き違い……(汗)

 そして動き出したヴァリムの主力はどう出るのか……
 


[感想掲示板へ] [目次へ] [投稿部屋へ] [ヨニカ=グリフィスさんの部屋へ]