※この小説には、PS2ゲーム「機甲兵団J−PHOENIX」および「BT」および「コバルト小隊編」
および「機甲兵団J−PHOENIX2」にはありえない、
科学的な無茶はそんなに無いですが、オリジナルの設定が数多く用いられています。詳しくは、後述の用語(誤)集をお読みください
先にそっちを読んでもOKですが、できればこのまま読み進めて、用語(誤)集を読んだ上で、
もう一度読み返していただければ、筆者としては非常に嬉しいです
しかも、上記に加えてこの辺りから筆者の空想(妄想)の部分が多くなってきます
さらに、今回は完全に暴走ネタです。タイムテーブルは一応コバ小終結後ですが深く考えちゃ駄目です
もう一つ、心の底からサリアファン、という方には・・・・・少々あんまりな内容かもしれません
その点に関しては、ご理解をよろしくお願いします
以上を踏まえた上で、どうぞ、楽しめるものならお楽しみください
その時、アルサレア機甲兵団:グレン将軍直轄部隊第二特務小隊隊長、アイリ・ミカムラ中尉は非常に怪しいものを見かけた
本部施設にある、喫茶ブースの一角に、頭を寄せ合って話し合っている男共の姿である
普通ならそんなものは怪しくも何ともないし、悪巧みとなれば保安部の仕事である
だから一切気にしないのだが、そうはいかない相手だったのである
「キース。あんた何やってんのよ?」
「いぃっ!!?」
後ろから声を掛けられた途端、彼の背筋がバネでも仕掛けてあったかのように跳ね上がった
冷や汗を一つ垂らしながら恐る恐る、という感じで振り返るのは、やはり彼女の同僚である
アルサレア機甲兵団:グレン将軍直轄部隊第一特務小隊隊長、キース・エルヴィン中尉だ
腕も見た目も平均以上の彼だが、腕はともかくルックスに関しては性格のおかげで三枚目としか見られない
お祭り好きで悪戯好き、いい年こいてガキっぽい性格の彼がこんな密談をしている光景など、謀反の企てよりも不吉だ
「よ、よぉアイリ」
引きつった挨拶には目もくれない
据わった目つきで、もう一度彼女は問う
「何を相談してんの?」
「うっ」
丸テーブルを囲んでいた三人、キースと、後輩分であるセイバー・シドニスにウラン・ナイキも固まった
「あの、キース先輩、ここは素直に吐いた方が・・・・・」
「ば、馬鹿!」
「吐く?」
あっさり口を割ったセイバーを慌ててウランが遮ろうとするが、時既に遅く、
アイリの耳にははっきりと聞こえていた
「キース、今度はどんな悪巧みよ?セイバーを見習って素直に吐きなさい!」
「わ、わかったよ・・・・・でも、できれば秘密にしておいてくれよ」
「聞いてから決めるわ」
「ったく、少しはとぼけるって事を覚えてくれよ。セイバー」
「は、はい。申し訳ありません」
「いーのよ。こんな馬鹿の言うことなんか聞かなくても、それで、一体どんな話をしていたのよ?」
るるるるるるるる、るるるるるるるる
電話が鳴っている
この部屋の主に「電話だぞこんちくしょう」と必死に訴えている
が、
「・・・・・すぅ・・・・・すぅ」
寝ている
けたたましい着信音も、開け放たれたカーテンから燦々と降り注ぐ日光も何のその、
この部屋の主は私物のでかい枕に頭を預け、胸に毛布を抱きしめて、長い髪をベッドに散らせて、実にいぎたなく寝入っている
彼女、サリア・バートン少尉の休暇の朝は遅い
江戸っ子の如く朝寝朝湯を貪った末に覚醒し、ようやく彼女の休日は始まるのである
一度、セイバーが(かなりしどろもどろになりながら)映画鑑賞に誘ったことがあるのだが、
「ねむいからイヤ」(即答)
という、あんまりな理由で断ったこともあるくらいである
るるるるるるるる、るるるるるるるる
電話が鳴っている。「とっとと出やがれこんちくしょう」と力一杯訴えている
その熱意が伝わったのかどうかはわからないが、サリアの右手だけがのっそりと動き、受話器を手に取った
『サ
がちゃん
「・・・・・すぅ・・・・・すぅ」
どうやら、電話に出るつもりは毛頭無かったらしい
受話器を取ったと見せかけて、次の瞬間には受話器を戻していた
そして再び惰眠を貪ってる
るるるるるるるる、るるるるるるるる
電話、再起動
今度こそはと気合を込めて、再びけたたましく彼女を起こしにかかる
「・・・・・う〜」
とうとう根負けしたらしい
寝ぼけ眼のサリアがのっそりと上体を起こし、すっかり癖のついた髪を掻き上げながら受話器を手に取った
「はい・・・・・サリアですぅ」
『サリア・バートンだな?』
えらくドスの利いた声であった。と明記しておこう
その声音に含まれた迫力に気圧されたのか、彼女は返答をしない
否、できない・・・・・?
「・・・・・すぅ・・・・・すぅ」
『寝るなっ!!!』
「うい?」
『起きんかっ!!!』
「うい」
『いいか良く聞け。お前の上官であるアイリ・ミカムラは預かった。
無事に返して欲しければ一人で目抜き通り沿いの喫茶店“パナシェ”に来い!』
と、このように受話器の向こうにいる誰かさんは一方的に述べた
それに対する受話器のこちらにいるサリアの返答は、というと
「・・・・・すぅ・・・・・ぴぃ」
『起・き・ろ!!!!!』
「うい?」
『と、とにかくわかったな!』
「ん〜・・・・・(ごしごし)・・・・・馬鹿じゃないんですかぁ?」
『(絶句)』
「何処の誰だか知らないけど、アイリ先輩がそんな簡単に拉致られたりするわけないでしょぉ?
朝早くからつまらない悪戯電話はやめてくださぃ」
正論である
アイリ・ミカムラ中尉はミカムラ流空手3段の腕前である
加えて、実戦で鍛えられたそのセンスと合わせれば、大の男でも幼稚園児同然に張り倒すだろう
唯一、例外を上げるなら彼女の上司にしてアルサレアの重鎮:グレン将軍。彼にだけは絶対に勝てない筈だ
そんなこんなでサリアはあっさりと受話器を叩き付け、再び毛布にくるまりながらベッドに倒れ込む
が、
るるるるるるるる、るるるるるるるる
しつこい
安眠を妨害されることに機嫌悪く頬を膨らませながら、彼女は再び受話器を手に取った
そして開口一番に怒鳴りつけてやろうと思っていたのだが・・・・・
『た、助けてサリア〜』
凄まじい棒読み口調であった。と明記しておこう
だが、その声は間違いなくアイリのものである。サリアが聞き間違えるはずがない
脳に直接カフェインでも注入されたかのように意識が覚醒し、事態の重さを(彼女なりに)理解した
「あ、あいりせんぱいっ!?どういうことですか?ほんとに、悪い人達につかまっちゃったんですか!!?」
『おっと、そこまでだ』
再び聞こえるのは、低く、ドスの利いた声
サリアは口をつぐんで相手の出方を待った
『理解できたか?取りあえず、警察や保安部には連絡するな。
彼女を無事に帰して欲しければ「身代金ですねっ!!いくらですか!!!?」え?』
台詞を先に言われたためか、電話口の男は何故かとまどっている様子である
『で、では、身代金を、取りあえず・・・・・さ、三百「三百万ギャラですってぇぇぇっ!!!!!?」い、いや、まだ何も』
受話器を握り締めたまま憤然と立ち上がり、身に纏っただぼだぼパジャマも雄々しく、彼女は言い放った
ちなみに、「ギャラ」とは通貨単位
「アイリ先輩の身代金が三百万ギャラなんて安すぎます!!そんな額で釣り合いが取れてるとでも思ってるんですかぁっ!!?」
『・・・・・・はいっ?』
「アイリ先輩は、アルサレア機甲兵団のトップであるグレン将軍閣下直轄部隊の隊長なんですよっ!!
ミカムラ流空手三段の腕前でPF操機だってエース級なんですよっ!!その先輩の身代金が三百万ギャラだなんて・・・・・
安すぎます!!先輩を甘く見てるんですかそれともなめちゃってるんですかっ!!?」
『そ、そうなのか・・・・・じゃぁ、もう少し値上「三百万ギャラですねすぐ用意します!!」
がちゃ
一身上の都合により身代金の要求に屈し、彼女は受話器を叩き付けた
数秒の黙考の内に、状況を整理する
1,アイリ先輩を無事に救出する
2,その為には身代金を用意しなければならない
3,向こうは「自分一人で」と指定してきた。自分一人で行かなくてはならない
4,できればアイリ先輩を誘拐した馬鹿をとっちめてやりたい
「それなりの準備はしていかないと・・・・・
でも、アイリ先輩を拉致っちゃうような相手に、私なんかが太刀打ちできるとは思えないし・・・・・」
サリアとて、アイリ直々にミカムラ流空手を習っている
生身の格闘戦では、それなりの身のこなしを見せるが、如何せん小柄な体躯は格闘戦には向いていない
ふと、彼女は部屋の一角にある、作りつけのクロゼットに目を向けた
正確には、今は閉められている薄い扉の中にある“物”に目を向けた
一秒の迷いの末、彼女は決めた
躊躇ってはいられない
アイリ先輩を助け、悪者達をとっちめてやる。と
そして彼女はクロゼットを開け、ハンガーに掛けられた制服やパイロットスーツの向こう、クロゼットの奥に手を伸ばした
<同時刻:喫茶店“パナシェ”>
「さて、と。取りあえず第一段階完了だな」
「電話に出なかった時はどうなるかと思いましたよ」
「そうッスよ」
お気楽に笑うキースとは対照的に、セイバーは喉に張り付けたボイスチェンジャーを剥がしながら苦い表情だった
ウランもセイバーの横で頷いている
ちなみに、彼らの様子を言っておけば、「如何にも怪しげなサングラス&黒服姿」という出で立ちである
「ま、良いじゃないの。サリアちゃんを釣り上げるのには成功したんだし、後は俺達のシナリオ通りに進めれば万事OK。そうだろ?」
「それで済めば良いんですけどね・・・・・」
「でも、どうすんのよ」
仏頂面で問いかけたのは、誘拐されたはずのアイリである
彼女が着ている服は、本部施設内では着用を義務づけられている略式平服のままだ
机に肘をついて、足をぶらぶらさせている姿はとても誘拐されている風には見えない
フルーツタルトの切れ端を口に放り込み、行儀悪く口を動かしながら彼女は、
「身代金よ身代金。あの子が勝手に言い出してたけど、あの子どうするつもりなのかしら?」
その場にいた一同、キース、アイリ、セイバー、ウランは一様に考え込む
だが、
「三百万ギャラなんて大金、用意できるわけないだろ?それこそ、どっかから盗み出すか、銀行強盗でもしない限りは絶対無理だぜ?
サリアちゃんのことだから、きっと慌てて飛び出してきておたおたしてるところをこっちからアクションかければ良いさ」
「ホントに銀行強盗したらどうすんのよ・・・・・知らないわよ。どうなっても」
そろそろ、ばらしてしまおう
キース達三人がこそこそと話し合っていた内容とは、
「どっき○カメラ」をやろう
という内容だったのである
日頃の煩雑な業務に負われている隊長・・・・・グレンリーダーと、首相にして同僚:フェンナ・クラウゼンに、
一時の娯楽を提供するために、良く知っている人物を「○っきり」にはめてやろう。と目論んでいたのだ
当初の予定ではアイリもターゲットに入っていたのだが、それがアイリ本人にばれたために急遽予定変更
彼女も協力することにして、サリアをターゲットにすることに決めたのだ
アイリが絡めば、サリアが動かないはずがない。そう踏んだのである
アイリ自身は、かなり渋っていたのだが、隊長とフェンナの為、ということでサリアには悪いが一肌脱ぐことにしたのである
そして、そんなこんなでサリアの部屋に偽の急迫電話が掛かった次第なのだ
「ところで」
「ん?」
「一時の娯楽を提供ってのはいいんだけど、どうやって提供するのよ?ビデオにでも録ってるの?」
「あぁ、その辺はシュキちゃんに頼んであるから」
シュキ・オールティー伍長が、電子情報戦略戦のエースであることは既に周知の事実である
ちなみに、未だに彼女は訓練生の身分であり、クランの指導下にあるのだが、今日は都合良く休暇を確保できたようだ
「スタンバイできてるかな・・・・・?こちらキース。シュキちゃん聞こえるかい?」
『はーい、こちらオペレータールーム・・・じゃなかった。
えと、プライベートルームって言うべきかな?シュキだよ。通信状態良好』
携帯端末のディスプレイに、慣れ親しんだ赤毛の少女のバストアップが映し出された
カメラに映る彼女の背後の様子から察するに、今は彼女の私室にいるらしい
「サリアちゃんがそろそろ動くと思うんだ。スタンバイは?」
『本部施設の監視カメラの掌握は完了してるよ。今は市街地の観測機器に侵入してるとこ。
サリアちゃんは、まだ部屋から出てきてないみたい』
「りょーかい。何かあったら連絡してくれ」
『はーい』
最早、驚きの声もない
きっと彼女が本気になれば、本部施設の占拠くらいはあっさりできるに違いない
そんなことを考えながら、キースはセイバーの方を向き直った
「じゃ、セイバーも移動しておいてくれよ」
「あ、はい」
「くれぐれも、見つからないようにな」
「が、頑張ります」
頼りない微笑みを残して、セイバーは似合わないサングラスを掛け直すと歩き去っていった
「セイバーは、どこへ?」
「あいつは直接の監視役。シュキちゃんへのナビゲートってところだよ」
「・・・・・あんたって、やっぱり極悪だわ」
でっかい溜息をついていると、端末にシュキの姿が戻り、彼女は焦った口調でこう言った
『こちらシュキ!サリアちゃんの移動を確認!』
「うし、出てきた出てきた」
得意げな顔になるキースだが、シュキの漏らした呟きにそれも怪訝な表情になってしまう
『え?』
「あ?どうかしたのか?」
『えーと。何て言うか・・・・・とりあえず、映像送るね』
その言葉の直後に、恐らく廊下に設置されている監視カメラからの映像なのだろう
丁度サリアが部屋から出てきたところで、ドアを半開きに開けた彼女が、執拗に廊下の様子を伺っているところだった
「監視されてるとでも思ってんのかな?」
「実際、こうして監視してるじゃないのよ」
「あ、そっか」
サリアの恐々とした様子を見てつい意地悪な笑みを浮かべる三人だが、直後、その笑みが引きつった
細く開けたドアの隙間から滑り出てきた彼女の体に続いて、およそ不似合いな物が姿を現したからだ
「・・・・・」
「・・・・・ねぇ、キース。あの子は・・・・・どうしてハンマー持ってるの?」
「・・・・・わかんねぇ」
そう
彼女は(何故か)右手にハンマーを提げていたのである
彼女の乗機:ゾールシカが愛用しているハンマーをそのままスケールダウンしたような、
小柄なサリアからすれば不釣り合いに映る大きなハンマーをしっかりと装備していた
「確かに、火器を携行して市街地に出るには届けと許可がいるから・・・・許可がいらないっつっても、何でハンマーなんだ?」
「白兵戦を想定して・・・・・とか?」
「・・・・・いや、そりゃないだろ」
<Side:サリア>
右手に感じるずっしりとした、そしてしっくりと馴染む手応え
彼女的にハンマーは必須である
如何にかさばろうとも、如何に目立とうとも、彼女的にハンマーは必須なのである
略式平服にハンマーを携えたサリアの姿に、擦れ違った人々は例外なく怪訝な顔で振り返るが、彼女は全く気にしない
気にしているような暇は無い。というのが正解か
「まずは、アイリ先輩を無事に救出しないと・・・・・確実なのは、取引に応じて身代金を渡さなきゃ・・・・・」
だが、当然彼女の手元に三百万ギャラもの大金などあるはずがない
フェンナやグレンリーダーに事情を話して力を借りるという手もあるが、それでは悪者が指定してきた条件を破ってしまう
そうなると、アイリが無事でいられる保証がない
「どうしよぅどうしよぅ、でも、そうこうしている間にもアイリ先輩があんな目やこんな目に遭わされちゃってるかも・・・・・」
どんな目だ
ひとしきり悩んだ末に、彼女は決意した
「この際、背に腹はかえられませんっ!!」
平服の裾を翻し、ハンマーを片手に彼女は本部施設を飛び出してゆく
『あ、サリアちゃんが本部を出たわ。セイバー君、監視よろ!』
『了解・・・・・って、何でサリアはハンマー持ってるんですか!?』
『さ、さぁ』
<Side:キース>
「それで、サリアちゃんはこっちに向かってるのか?」
『いいえ、“パナシェ”とは逆方向です・・・・・一体何処へ行くつもりなんだろ・・・・・?』
セイバーからの報告に、思案顔になる3人だった
「とにかく、セイバーは監視を継続。状況に変化があったら連絡くれ」
『了解』
通信を切ってから、シティマップを広げてみる
本部施設からキース達の居る喫茶店“パナシェ”までは、大通りを歩いて20分程の距離である
決して遠いところではないし、わかりにくい所でもない
まして、サリアは“パナシェ”の常連客なのだ。場所を知らないはずがない
「本部施設からこっちの通りに向かってるって言ったっけ」
「明らかに反対方向よね」
「・・・・・あ」
「どうかしたか?ウラン」
「い、いや、まさか、何でも無いッス」
「何か気付いたのかよ?良いから言ってみなって」
ウランは、かなり汗ジトな表情で、震える指先を地図の一点に置いた
サリアの進路上にある、広大な建物を指さして、最悪の展開を予想してしまったのだ
“オルフェン・テラバンク”
アルサレア国内最大規模の銀行である
『こ、こちらセイバー!サリアが、テラバンク前で、えぇっ!!!?ちょ、嘘だろ!!?』
「セ、セイバー!?何があったんだ!?」
『サ、サリアが自動ドアを叩き割って・・・・・あぁっ、警備員を吹っ飛ばしてます!!』
<Side:サリア>
運の悪い奴だった
サリアは取りあえず、自動ドア越しに見えていた警備員を狙った
狙点は下半身
顔半分を覆うような野暮ったい支給品のサングラスの向こうで、彼女的に獲物を狙う鷹の目つきでハンマーを振りかぶる
(殺られる前に殺れ!)「やぁっ!!」
ぶん投げた
高周ホイールユニットを内蔵したハンマーは凄まじい勢いで回転しながら、強化ガラス製の自動ドアに接触
拳銃弾くらいなら余裕で弾き返すドアを木っ端微塵に打ち砕き、哀れな警備員を巻き込んで彼女の手元に戻ってきた
これがサリア・バートン必殺の、「ブーメラン・ハンマー」である
余りの事態に行員は全員固まってしまい、カタギの客はとりあえずソファの陰に引っ込んだ
そして、サリアが悠然と、砕けたガラスを踏みしめながらカウンターに向かってくる
でっかいハンマーを肩に担ぎ、不敵で素敵で無敵な笑顔をほやっと浮かべ、彼女はカウンターにいた女性行員にこう述べた
「三百万ギャラくださぁい」
即座に札束三つが差し出された。実に賢明な判断である
「ありがとうございますぅ」
ぺこりと頭を下げて、踵を返すサリアだが、出入り口にシャッターが下ろされた
どうやら、行員の誰かが非常用のスイッチを押したらしい
同時に、警察へも通報された筈だ
「先輩がピンチなんですから、邪魔しないでくださぁい!」
機嫌悪く頬を膨らませ、彼女はハンマーを振りかぶった
彼女の行く手を遮るシャッターをいとも容易く引き破り、彼女は一路、“パナシェ”に向かう
<Side:キース>
『あ、サリアが出てきました・・・・・手には・・・・・札束が3つ・・・・・』
「ま、まぢか!?あの娘、まぢで銀行強盗やらかしたのか!!?」
『・・・・・はい・・・・・』
呆然とする一同である
「だから言ったでしょう、どうなっても知らないわよ」
頭を抱えたアイリが呟く
ウランはしきりに「ヤバイッスよ、ヤバイッスよ!」と騒ぎ立てている
『あ、あぁっ!』
「今度はどうしたっ!?」
『ま、間違いありません。マクドガル中尉です!シオン・マクドガル中尉とイズミ軍曹がサリアと鉢合わせました!!』
「こ、こんな時に何やってんだよマクドガル中尉は!」
<Side:サリア>
「あれ、バートン少尉?何をしているんですか?」
「ぎくっ」
不意に声を掛けられて、サリアは足を止めた
振り返ると、そこには怪訝な表情でこちらを見ている二人、私服姿のシオン・マクドガル中尉とリンナ・イズミ軍曹が居た
「あ、あはは、お久しぶりです中尉さん。中尉さんこそ今日はお揃いでどうしたんですかぁ?」
「お揃い」の一言に、リンナの頬が見る間に紅潮した
略式平服姿の二人は、雑踏の中にあって実に目立っていた。“目立つ”という点ではサリアも負けてはいないのだけど
色気など微塵も感じさせない平服姿だが、実はリンナは今日この日のために並ならぬ努力を重ねてきたのである
未だ正午だというのに、既に何度風呂に入ったことか
ここ数日間、特訓に特訓を重ねた化粧はそこそこうまくいっている自信がある
執拗なまでに梳かした黒髪に、斜めに乗せたベレーの角度には絶対の自信がある
と、このように、一見ただの平服姿だが、実は一部の隙も無い。訓練マニュアルのモデルだって、これほど完璧には着こなしていない
が、しかし、
そんな彼女をエスコートする立場である筈のシオンは、実にラフな出で立ちであった
ほんの10分前まで、全力で倉庫に備蓄されている資材の点検と整理を行っていたのだから、無理も無い話ではあるかもしれない
普通ならば怒り狂うところであろうが、そこはリンナ・イズミとシオン・マクドガルである
本当ならば、シオンがこうして時間を取ることなどできなかったのだ
わざわざこの1時間30分くらいの為に、無理に点検整理を急いだのだから
そして、サリアの言葉に一たまりもなく赤面したリンナがようやく、怖ず怖ずと顔を上げてこう言った
「ずっと前に、一緒に食事を、と約束していたんですの」
「ランチじゃ、豪華な食事にはならないけどね・・・・・給料日前だし」
「・・・・・そ、そんな、別にそんな、隊長と一緒に食事を、というのが重要なのであって・・・・・」(ごにょごにょ)
耳の裏まで真っ赤になっているリンナである
まぁ、仲睦まじいのは結構なことだ
だが、今はそんな話を聞いている暇はサリアには無いのである
急いで、“パナシェ”に向かってアイリ先輩を助けねば!
「それで、バートン少尉は一体何を?」
怪訝な表情に戻ったシオンの眼差しが、サリアの肩に担がれているハンマーに注がれる
リンナも右に同じく、だ
「あ、あははは」
ぎこちなく、誤魔化すように笑いながら、サリア・バートンは向けられている嫌疑を晴らすべく、釈明を以下のように述べた
「い、今私の手元には現金が三百万ギャラほどありますがこれは決して犯罪の絡んだものじゃないんですよ!
それについさっきそのこの銀行が強盗に押し入られて三百万ギャラ盗まれたとか犯人がおっきなハンマーを持っていたとか言うのも、
私とはきっちりさっぱり関係のないことなんです私とは一切関係のない別人の犯行に間違いありません!!
決して私は銀行強盗なんてやっていないしお金を盗んでもいないんです!!!じゃっ!!」
力一杯、このように力説した
それに対するシオンの対応は迅速だった
踵を返して走り出そうとしたサリアの肩をがっちり掴み、
「・・・・・詳しく話を聞かせてもらいましょうか」
ぴきーん!
サリアの瞳が怪しく輝き、彼女はハンマーを握り締めた
(殺られる前に殺れ!)「いきなりハンマー・ショットっ!!!!」
どがっ!「うわぁぁぁっ!!」
シオン・マクドガル中尉は星になった
「た、隊長っ!!」
「ついでにえぃやぁぁっ!!!」
どかっ「きゃぁぁぁぁっ!!」
リンナ・イズミ軍曹は星になった
<Side:キース>
「・・・・・」
セイバーからの報告を受けて、一同は完全に凍り付いていた
取りあえず、本部に事実は適当に伏せて連絡し、シオンとリンナの両名への救助を手配する
通信機から聞こえる報告は更に悪化の一途を辿っていた
既にここに至るまでに、傷害、強盗、器物破損を犯しているというのに、
セイバーから悲鳴が聞こえるたびに、窃盗、恐喝、営業妨害、ノーヘル、盗み食いetc
何故か遠くの方から爆発音が聞こえてくるのは幻聴ではないだろう
「そ、それで、サリアちゃんの所在は?」
『現在、盗んだスクーターで右車線を逆走しながらそちらへ向かっています!到着まで、恐らくあと三分ほど!!』
「や、ヤバイッスよ!」
「キース、あたし帰って良い?」
「駄目だ。もしもの時にサリアちゃんを止められるのはお前だけなんだから」
「もしもの時って何よ?」
「・・・・・言わせないでくれ」
<Side:サリア>
そして、サリアは妙に閑散としてしまった(正:閑散とさせた)目抜き通りのど真ん中で借りた(正:盗んだ)スクーターを止めた
口元を汚すトマトソースを拭い去り(盗み食いの証拠)、背負っていたハンマーを下ろして握り直す
静かなことが、かえって彼女を慎重にさせた
愛する先輩の命が掛かっているのだ、ここで下手を打つわけには行かない
銀行に押し入ったときやシオンを吹っ飛ばしたときとは対照的に、息を殺してじりじりと“パナシェ”に近づいてゆく
(どうしよう、身代金はあるんだし、犯人を刺激しないように取引に応じるべきかしら・・・・・)
足を止めて、考え込むサリアである
(でも、先輩の無事を一刻も早く確保したい・・・・・となると、奇襲?)
待て
(いっそ、火を放って犯人達をあぶり出そうかしら・・・・・)
待て待て
(でも、あんまり壊しちゃうとここのモンブランがもう食べられなくなるし・・・・・)
その前にアイリが無事ですまないでしょうが
(よし、決めた!)
<喫茶店“パナシェ”内>
「き、来たッス!!」
「おし、ウラン。ちゃんと変装しておけよ。アイリは悪いけど、その椅子に座っててくれ」
「はいはい・・・・・ったく、知らないわよ」
キースはサングラスを掛け、ウランは目出し帽を被り、簡単な変装を終えた
そして、キースは買っておいた靴紐でアイリの手首を軽く縛って椅子に結ぶ
「・・・・・よっし、痛くはないよな?きつくは締めてないんだし」
「あのさ、ここまでやる必要があるのかどうかも疑問なんだけど」
「ま、いーじゃんいーじゃん」
笑いながらキースは、脇に吊っていたホルスターから拳銃を抜く
これはもちろん偽物で、ペイント弾を装填したエアガンである。ちなみにキースの私物
ウランも、懐に手を突っ込んで小振りなナイフを取り出した
これは近所の雑貨屋で買ったもので、念のため刃を潰したイミテーション
驚かせる事が目的なのだから、これで良いのだ
「さてと、サリアちゃんの様子はどうかな・・・・・?」
キースが席を立ち、窓に近づいて様子を伺う
だが、彼の目に映ったのは、閑散とした大通りにぽつんと置かれたスクーターだけだ
ハンマーを引っ提げた少女の姿は大通りには無い
その直後である
ど、ばきゃっ!!!!!
施錠してあった正面のドアがぶち破られた
僅かな時間目を離した隙に、ドアまで走り込んできていたらしい
サリアが渾身の力で振り下ろしたハンマーの一撃に、アンティーク調に仕上げられた喫茶店のドアが粉々に消し飛ぶ
反射的にキースが銃を抜く。当てるつもりで飛び込んでくる瞬間を狙う
だが、サリアの動きは迅速だった
扉をぶち抜き、振り抜いた勢いで床に亀裂を作ったハンマーを、床を擦らせるように振り回して、
(殺られる前に殺れ!)「いきなりブーメラン・ハンマーっ!!」
どかっ「ぐはぁぁっ!!!」
問答無用である。作戦もへったくれもあったものではない
胸を直撃するハンマーに、キースは壁に叩き付けられるまで吹っ飛ばされ、
そこに飛び込んできたサリアがステップキックで駄目を押す。足刀が鳩尾に突き刺さる、実に見事な横蹴りであった
それを見ていたアイリが思わず感心してしまうほどの
(自業自得とはいえ・・・・・哀れね、キース)
「う、動くな!動いたらお前の大事な先輩の顔に一生消えない傷が付くことになるぜ!!」
目出し帽を被ったウランが、狼狽えながらも必死で演技をする
身に迫る危険の為に、半ば以上本気になっているのは仕方がないことだろう
しかし悲しいかな。刃を潰したナイフを縛られているアイリに突きつけるが、もはやそこに迫力などありはしない
倒れたキースの傍らからハンマーを拾い上げて、サリアは“悪者”を見据えた
そこまでの一連の動作は、ひどくゆっくりとした、それでいて比重の重い液体が斜面を滑るような滑らかさである
いつも明るい笑顔の弾ける愛らしい顔立ちが、椅子に縛り付けられているアイリの姿を見た瞬間
「・・・・・覚悟してください」
「ひ、ひぃっ!!」
低く、押し殺した口調にただならぬ殺気を込めて、サリアはゆっくりと足を踏み出した
一歩、二歩、三歩。徐々に歩幅が大きくなり、ハンマーの先端が床から離れる
四歩、五歩、六歩。姿勢が徐々に前傾になる
七歩で疾走を始めたサリアに、本気でビビッたウランは、慌てて目出し帽を剥ぎ取って
「ごめん、サリア。ホントに悪かった!!!ほら俺だよ、ウラン・ナイキ!!」
それは、彼女の同期の、一緒に訓練に励んだ影の薄い同僚の顔である
が、
「そんな人はぁっ、知りませぇぇぇぇぇんっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」(断言)
どがっ!!「うわぁぁぁぁっ!!」
ウラン・ナイキ伍長は星になった
影が薄いというのはとても悲しく、そして損をすることである
「アイリ先輩無事ですか怪我は無いですか変なことはされてませんかあんなことやこんなことまでされていませんかっ!!!?」
「あ、あたしは大丈夫だから。サリア、ちょ、倒れる。倒れるっ!」
「あ、ご、ごめんなさぁい」
喜びのあまりハンマーを放り出して抱きついたまでは良かったのだが、
むしろタックルと呼ぶ方が相応しい勢いのその突進に、危うく椅子ごと後ろにひっくり返る寸前であった
「と、とにかく、これ、解けない?」
「お安いご用ですっ!」
後ろ手に手首をゆるく縛っている靴紐に、サリアは指を伸ばした
・・・・・三分後・・・・・
「・・・・・あれ?ここでこうして・・・・・(ぎゅっ)」
「ねぇ、サリア。さっきより締まった気がするんだけど?」
「あ、あわわ。もう少し待ってくださぁい」
・・・・・五分後・・・・・
「・・・・・えぃやぁっ!!!」
「さ、さりあ!?えぃやぁっ。って何やってんの!?」
「頑張ってますっ!」
「頑張らなくても解けるでしょこれくらい!」
・・・・・十分後・・・・・
「ほ、解けませぇん」(泣)
「・・・・・」(泣)
(彼女的な)悪漢二人を秒殺してのけた手際の良さは何処へやら
キースは、本当にゆるく、手が抜けない程度の拘束しかしていなかった筈なのだが
何故かは今は血行が止まるほど手首を締め付けられている
「あのね、サリア。一応聞くけど・・・・・わざとやってる?」
「(ぶんぶん)そ、そんなことないですよぅ!!こうなったら、最後の手段ですっ!!」
「最後の手段って・・・・・」
1,こんな生意気な紐は椅子をハンマー・ショットで叩き壊せばあっさり千切れますぅ
2,こんな生意気な紐は椅子をブーメラン・ハンマーで叩き壊せばあっさり千切れますぅ
3,こんな生意気な紐はハンマバスターで消し去っちゃいますぅ
「わーっわーっ!!!ちょ、ストップ!!待ってサリアやめてやめて!!!」
「大丈夫ですっ!きっと痛みは感じませんからっ!」
どうやら3番を彼女的に採用したらしい
アイリは必死に首を巡らせて、背中の方から不吉な感じで聞こえてくる機械音の元を何とか確認しようとするが無駄な努力であった
「そーゆー問題じゃないっ!あ、とにかく、ほら、アレ見てアレ!」
「?」
サリアが視線を上げると
そこには、壊れた扉から恐々と顔を出して、「どっ○りカメラ」と書かれたプラカードを掲げたセイバーの姿が、
何とも言えぬ沈黙が立ちこめる
それを見て、サリアは何度かぱちくりと瞬きをして
「よ、良かったですぅ〜」
へなへなとその場にへたり込んだ
安堵の為か、涙ぐんでさえいる
「つまり、アイリ先輩はホントに誘拐されちゃったんじゃ無かったんですね。酷いですよこんなことするなんて〜」
えぐえぐ、としゃくり上げ始めたサリアを見て、
騙されていたことを責めず、騙されていた事に安堵しているサリアの姿を見て、アイリとセイバーは凄まじい罪悪感に駆られた
子供じみた悪戯心が、ここまでサリアを苦しめていたなんて
行動にこそ難があったものの、サリアがあそこまでやったのはそれほどまでにアイリの身を案じていたからなのだろう
「あ・・・・・ごめん、ホントにごめんね。サリア・・・・・」
真剣に、心の底から反省するアイリであった
もう金輪際、これほどまでに自分を慕ってくれる少女を、決して傷つけるような事はすまいと堅く誓いながら、
ただ、口から出たのはありきたりな謝罪の言葉だったのだけれど
「いえ、良いんです。でも、もうこんなことはやめてくださいね」
「うん・・・・・ホントに、ごめんね」
自分が情けなくてこっちが泣きそうだった
どうして、彼女の気持ちをもっと真剣に考えることができなかったのか
この悔恨の思いも、決して忘れないようにしようとアイリは心に誓う
「・・・・・僕も謝らなきゃ。こんなのやっぱりやめさせれば良かったのに、面白がって、僕も、サリアを傷付けたんだ・・・・・
ごめん、サリア。どれだけ謝っても、許してもらえるとは思えないけど・・・・・反省してる。ホントにごめん」
「わ、ちょっと、セイまでそんな本気で謝らないの!私はもう怒ってないし。
騙されてたのはちょっとむかむかしてるけど・・・・・もう、こんな事は二度としないって約束したら、許してあげるから」
「うん・・・・・もう、二度としない。させない」
「よろしぃ、よく言えましたっ!」
未だに赤らんだ目元でほやっと笑うサリアに、セイバーもまた己の軽率さを悔やんでいた
こんなにも優しい彼女を、こんなにも純粋な彼女を、こんなにも好きな彼女を、騙していたなんて
悔恨の念に息が詰まるような思いだが、サリアは目尻の涙を指先で拭いながら、冗談めかした口調で言ってくれる
「セイの事だから、誰かに無理矢理誘われたんでしょ?だったら、その人だけはとっちめてやらないと!」
「あ・・・・・サリア、その人はもうとっちめてるよ・・・・・」
「へ?」
「ほら、あそこにのびてる。キース先輩」
それは、サリアが最初に張り飛ばした黒服である
未だに床に這い蹲って悶絶している
「え、えぇぇっ!!?アレ、キース先輩だったんですかぁっ!!?ごめんなさい大丈夫・・・・・じゃないですよね。
あ、とにかく救急車の手配とかしなくちゃ!!」
「そ、そうだね。じゃ、僕は連絡してくるから、サリアはアイリ先輩の方をお願い」
小一時間ほど後のことである
怪我人は救急車で運ばれ、“パナシェ”の弁償に関しては、サリアを騙していた一同で出し合うことにした
サリア本人は「壊したのは私なのに」と言っていたのだが、そういうわけにはいかない、と押し切った形である
ちなみに、今日この日の為だけに、キースは“パナシェ”を一日完全に借り切っていたというのだから、
何とも呆れる話だ
「ふぅ、一応片は付きましたね」
「うん、あ、お腹空いたな・・・・・」
「じゃ、これから三人でお出かけしませんか?折角みんな休暇が取れてるんだし」
「そうね、じゃ、今日は罪滅ぼしに一日付き合っちゃおうかな?」
「やたっ!セイも来てくれるでしょ?」
「う、うん・・・・・サリアさえ良ければ」
「ぢつは、ずっと行ってみたかったカフェがあるんですよ〜。早速しゅっぱーつ!!」
「わ、ちょっと、そんなに引っ張らないでよ」
「ちゃんとついていくから、サリア、ちょっと離してってば!」
アイリとセイバーの腕を、それぞれがっちり抱きしめて、弾む足取りでずるずる引きずってゆくサリアである
引きずられているアイリとセイバーは、困惑顔を一つ見合わせて、「ま、いっか」という結論に至った
太陽のようなサリアの笑顔には、流石に勝てる気がしない
「でも、サリア。いつかみたいなケーキバイキングじゃないでしょーね。あの時はウェストがきつくなって焦ったんだから」
「だいじょぶですよ。半分ビストロみたいな雰囲気の店ですから!」
「あ、そなんだ」
「ねぇねぇ、アイリ先輩。食事が終わったらショッピングに行きませんか?」
「え?勿論良いけど・・・・・何か目当てがあるの?」
「と〜ってもお洒落で、す〜っごく可愛い服を売ってるブティックが新しくできたんですよ〜。
雑誌で見たんですけど、絶対アイリ先輩に似合う服がありますよっ!!」
「え、えーと、さりあ?それって、“ひらひら”で“ふりふり”だったりする?」
「もち、です」
「あ、あの、サリア。それって僕も付き合わなきゃ・・・・・駄目?」
「駄目」
「そういうブティックに男がいるのは・・・・・かなり辛いんだけど」
「駄〜目。女の子は買い物の荷物なんか持たないの」
「って、荷物持ち!?」
「両手に花のこの状況で、荷物持ちなんて言ってたら罰が当たるわよ」
「・・・・・はぁ、わかったよ。こうなったら、何でも付き合うさ」
「あっはは、こんな楽しい休暇、久しぶりです〜。目一杯楽しまなきゃ」
「あは、そうね。折角のお休みだもんね。楽しまなきゃ損よね」
アイリは着せ替え人形にされる覚悟を決め、セイバーもとことんまでついて行くことを決意した
そして、サリア・バートン少尉の休日がようやく幕を上げる
後日談である
サリアが暴走の末に銀行強盗をした事実は、アルサレア兵団が抜き打ちで行った防犯訓練ということにされ、
彼女が強奪した現金は無事銀行に戻された
その他大勢の迷惑を被った方々への賠償も秘密裏に行われ、事件そのものは時間の流れよりも早く忘れ去られていった
無論、そこには参謀本部長:ツェレンコフ・ゴルビーや、グレンリーダー、フェンナの根回しと説得があったからであって、
キース達首謀者は必死に平謝りすることになってしまった
ただ、肝心の、グレンリーダーとフェンナへの娯楽の提供、という一点に関しては
「これは・・・・・どこからどう見ても、どっき○っていうか・・・・・衝撃の映像スペシャル、って感じだよな」
ぶっちゃけた話、犯罪の証拠映像である
シュキがオルフェンの観測系、監視系をジャックして記録したその映像は、実に克明にサリアの暴走っぷりを記録している
「これは・・・・・隊長達には見せない方が良いよね・・・・・娯楽って言うか、確実に新しい頭痛のタネだよ」
「だな」
そんなやりとりがあって、結局この映像は封印された次第である
そして、今日も彼らは微睡みの様な平和の中にある
平和が破れたときのため、微睡みから覚醒する瞬間の為、今は静かに英気を養っている
今日のアルサレアの平和を、いつの日か微睡みのような危ういものでは無くする日を目指して・・・・・
余談ながら、
「・・・・・ひ、ひどいっすよ・・・・・」
誰からも忘れ去られていた男がいたことを、ここに明記しておこう
幕
○用語(誤)集、順不同
・この用語集とゲーム本編は、ほとんど関係有りません
サリア・バートン、少尉
・人物
言わずとしれた、グレン小隊の鉄槌娘
本編ではオペレーターとして登場しただけだったが、BTより僚機パイロットへ
文中ではハンマーの妙技を駆使していますがそんな事実はありません
アイリ・ミカムラ、中尉
・人物
言わずとしれた、グレン小隊の突撃娘。またの名をロケット・アイリ
ミカムラ流空手三段の腕前を駆使したPF操機で、近接、零距離の間合いを得意とする
文中では隊長とフェンナの為を思ってキースの謀略に荷担するが・・・・・
キース・エルヴィン、中尉
・人物
言わずとしれた、グレン小隊のナンバー2
作戦中においては、突出しがちなグレンリーダーやアイリを的確にサポートする役割だが、
平素に置いてはお調子者でお祭り好き、些細な悪戯にもあの手この手を尽くしている
文中では隊長とフェンナの為を思って謀略を企てるが・・・・・
セイバー・シドニス、伍長
・人物
サリアと同期の、グレン小隊への補充パイロット
初の実弾訓練の際に、ハーメルン・ヴォイス・システムに操られたことが精神的傷害になり、一時はPF恐怖症に陥ってしまう
その後は、サリアに鍛えられ、支えられながら何とか一人前になることができた
真面目で一生懸命なのは良いことなのだが、どう考えても損している事の方が多い、薄幸の少年である
ウラン・ナイキ、伍長
・人物
サリア曰く、
「そんな人は知りませんっ!!!!!」(断言)
その程度の扱いである
ちなみにサリア、セイバーとは同期生
シュキ・オールティー、伍長
・人物
「コバルト小隊編」に初登場したオペレーター
とても軍属とは思えぬ言葉遣いと性格だが、電子情報戦略に於いてはエース級の腕前を持つ
フォルセア・エヴァのハーメルン・ヴォイス・システムを退けた唯一の人材だが、未だにクラン・ネルモア中尉の指導下にある
キースに頼まれて、監視と映像記録を担当していた
シオン・マクドガル、中尉
・オリジナルキャラ
コバルト小隊の隊長。なのだが、文中ではかなりあんまりな扱いを受けている
本文のタイムスケジュールは、「コバルト小隊編」終結後の為に、本土に帰還していた模様
その辺りの詳しい事情は深く考えないでください
サリアの暴走に巻き込まれて星になる
リンナ・イズミ、軍曹
・人物
コバルト小隊の隊員で、シオンの部下
この時の二人の関係がどのように発展していたのかは不明
サリアの暴走に巻き込まれて、シオンと二人で食事に臨む機会を奪われたあげく星になる
グレンリーダー
・人物
言わずとしれた、グレン小隊の隊長で、現在はアルサレアの将軍職に就いている
日々の激務に心の休養を忘れがちな彼のために、キースやアイリが一肌脱ごうと決めたのだが・・・・・
文中には登場していない
フェンナ・クラウゼン
・人物
言わずとしれた(多いな、これ)、グレン小隊の元オペレーターで、現在はアルサレアの首相
父を失い、姉を失い、一国のトップとしての責任を背負わされて、それでも挫けず頑張っている
グレンリーダーと同じく、日々の激務に心を休める暇も無い模様
文中には登場していない
ギャラ
・通貨単位
フィアッツァ大陸での通貨単位に勝手ながら認定
出典元は、OVA「LIPS小隊編」より
由来は・・・・・やはり「ギャランティー」なのだろう・・・・・ゼニー(銭)よりも生臭い気が・・・・・
喫茶店“パナシェ”
・オルフェンでも人気の喫茶店
“オルフェンシティのS区交差点にあるケーキ屋さん”とはここのこと
文中では、サリアが大暴れしたために店内は尋常ではない被害を被った模様
ちなみに、「パナシェ」とは仏語で「色とりどり」という意味
テラバンク
・銀行
アルサレア国内で最大規模の金融機関
サリアに襲撃されるが、それは抜き打ちの防犯訓練と言うことにされてしまった
ここで張り倒された警備員が一番可哀想である
ハンマー
・個人用兵器
サリアの片腕とも言うべき愛用の獲物
あまり深く考えてはいけません
念のため、彼女がハンマーを愛用するのはあくまでPFの兵装として、であり、
彼女が平素からハンマーを個人用護身具(?)として愛用しているというような事実は一切ありません
ブーメラン・ハンマー
・兵器
「J−2」に登場した、ハンマー装備の発展系
ハンマーを円軌道で投げつける、のだが慣れるまでは当てにくい
勿論、ゲームではPF用の兵装であって、断じて個人用装備ではない
サリアの必殺技の一つ
ハンマー・ショット
・CB
星になる程吹き飛ばされる、サリアの得意技
「J−2」で、初めて聞いた発動時の台詞が「大丈夫です。痛みは感じません!」だった・・・・・
サリアの必殺技の一つ
渾身の振り下ろし
・兵器(武装形態)
「J−2」に登場した、ハンマー装備の発展系
割と使いやすい・・・・・と思うのは私だけだろうか?
サリアの必殺技の一つ
ハンマバスター
・兵器
「J−2」で登場する兵器の中では、最高クラスの攻撃力を持つバスターランチャー系兵器
ハンマーがいきなり変形したときには何が起こったのかと思った・・・・・
どうやら、サリア愛用のハンマーは、ハンマバスター内蔵型らしい。危うくアイリは消し炭になるところだった
文中では、幸いなことに使用は未遂で終わる。サリアの必殺技の一つ
後書き
悩みました
えぇ、悩みましたとも
結局、中途半端に手堅く、良い話にまとめた感じですが、当初の予定ではセイバーもぶっ飛ばされていました
アイリも・・・・・微妙なところでした
戦争ばっかりの彼ら(特に男性陣)なので、たまにはこんな息抜きの一幕を
・・・・・え?息抜きになっていない?
それは言っちゃ駄目です
サリアのハンマーについても、言っちゃ駄目です
シオンとリンナがどうなったかとかも考えちゃいけません
タイムテーブルは、コバルト小隊編終結後のつもりだったのですが・・・・・彼らの関係はどうなっているのでしょうね?
少なくとも悪化はしていないし、どちらも無事のようですが・・・・・?
では、この辺で
管理人より
T.Kさんよりご投稿頂きました!
……サリア、暴走(核爆)
しかし流石にこれは……見せられませんね(苦笑)