JUフェニックス立体化記念 短編小説

『兵器開発ミッション JUフェニックス―――空に舞う翼』




 

 これはJUフェニックス立体化に際して新たに書き起こされたデザインと設定を『兵器開発ミッション』の一日を題材にストーリー化したデモンストレーション短編小説です。『虚空からの使者』の設定とは少々違うので、その違いを比べてみるのも面白いのではないのでしょうか?
 それでは、立体化した機体をお手元に添えて、お楽しみください。









 

 前篇 翼を持つもの


 

 聖歴27年2月 アルサレア北部


 まだ寒さ厳しいザッハ空港。その地下、アルサレア第5研究所 特別実験区。

 厳重で堅牢な装甲、鋼鉄の竪穴。およそ生命の存在を感じさせないそこの空気は一片の暖かさもなく、無機質な電飾が時折煌くのみである。

 ひどく冷たく、凍り付いている闇の底、一筋の光が漏れていた。
 闇を穿つ光のように、そこには大量のスポットライトを浴びる存在があった。 一際対照的なコントラストがやけに神々しく、眩しかった。



 

「第3シークウェンス完了。機体は起動、アイドリングに入ってください。地下エレベータ上昇」
「起動確認。数値は正常。エネルギーシステム、重力融合炉、出力安定」
「初デートだな、ウエイン。シミュレーションとは違って本物の彼女は凄いぞ、まぁ腰を抜かせや」
「俺の腰が保つかどうか・・・そいつはあんたの仕事次第だな、フェルト」

 ディスプレイの先は空の上のようだ。雲ひとつない空は、穴蔵から見上げるには眩しい光景だった。そこでマイクを握る親友と軽口を叩き合う。
 俺、ウエイン=ウェードの鼓動は、今朝から上がりっ放しだった。因みに階級は少佐ね。
 そう、今日は彼女と初デートだ。待ち合わせ場所は、無骨で何もない、対核仕様の地下格納庫。目印になるようなものはないが、そもそも他に何もないので、愛しの彼女はすぐに見つかった。


 背の高いシルエットにすらりと伸びる長い脚。スマートな外見は決して細すぎず、だが、僅かに丸みを帯びた身体は女性特有のしなやかさを秘めたかのようだ。
 ――とはいえ肩に手を回そうにも彼女の身長は15m。丸みというのは正確には流線型、日本刀のように鋭く透き通った曲線美。背中の羽とバーニアは機体に不釣合いなほどに大きく、優雅というよりはむしろ力強いという方が近かった。
 そして極めつけは無骨な得物だった。馬鹿でかいライフルにシールド。そして、それを持つ腕もまた、面白い形をしていた。
 ――てか、これを女だと思う方が、むしろどうかしていたのかも知れない。見る奴が見れば、多少着飾っているようでも、破壊のために洗練された『漢』の機体にも見えなくはない。
 では言い換えてみよう。
 獰猛な目に、鋭く研ぎ澄まされた爪。力強い翼に、鞭のようにしなやかな肢体。ただ魅せるためではなく、戦うために洗練された肢体とは、何と美しく見えるものなのか。それは例えるなら鷲。その爪は荒ぶる破壊の力を秘め、王者の風格は―――あれ、鳳凰じゃなかったっけ?

 ――やはり女にしておこう。俺の目は間違っちゃいない・・・ハズ。

 ともあれこの機体は新生アルサレアの象徴として開発されたものらしい。これは試作された二機のうちの片割れ。こちら側では新開発の準規格装備のテストをやるという事なのだが、肝心のその開発が遅れに遅れている。双子のもう片割れは既にあのグレン中隊に嫁入りしているというのに。
行き遅れた不憫な娘だ。今日から俺が花嫁修業をつけてやろう。


 

「名前は決めてあるのか?これが最後のチャンスだぞ」

 画面の先、ヨヘン=フェルトマン大佐はペン先でこめかみを掻いていた。このおっさんの顔は本当に厳つい。頬に刻まれた一筋の傷跡があたかも彼を歴戦の勇士であるように告げるが、実際には夫婦喧嘩で包丁を投げられた時に付いたらしい。まぁ、どうでも良いが。
 え〜っと、ああそうだ、シミュレーションの時から名前に迷っていたので、今までずっと『カワイコちゃん』で通してきたのだ。俺はうれしそうに答えた。

「ああ、フェンナだ!!愛しのフェンナ=クラウゼン」
「・・・死ね。畏れ多くもそんな名前をコードネームに出来るかボケェ!!」
「・・・・・・・・・(あっ、やっぱり?)」

 少しはにかんで見せる。だっていいだろ?まだ俺だって30そこそこなんだから。

「試作機のもう1機はあのグレン中隊に回されたんだぞ?それでもあっちは無理矢理フェンナで通したらしいが。・・・・・・他に考えてなかったな・・・マジでそれにするつもりだったのか?」

 僅かな沈黙の後、半ば呆れた溜息と、俺のふてくされた声が同時に重なった。

「じゃぁ・・・クレア」
「単純な奴だな・・・・・・・・・いいだろう、最初からそのつもりだったからな」

 ――オイオイ、それでいいのか?


 ――Code name “Clair”――


 コンソールの戦闘システムに火が入った。マジでやりやがった・・・

 アルサレアの聖母、悲劇の天使クレア=クラウゼン。
 確かに縁起は悪そうだが、要は考えようだ。その名前は皆に愛されている。ジンクスを打ち破れば問題ない。


「AIオペレーター『クレア』・・・・・・起動しているな。大丈夫だ、喜べ。優しいママが初めてのお前をリードしてくれるぞ!!」

 ―――そういう話はヨソでしろ、この言葉を聴いてる全員が思ってるぞ。俺は、フェルトの周囲から放たれる冷たい視線を見て思った。


「隔壁開放、地上に出ます」
「最終ロック解除、いつでもどうぞ」

 曇り空の下、その姿が初めて外気に晒された。威風堂々とした、翼を持つもの。
 それは空色の身体を持ち、空を愛し、愛され、何よりも空を欲しているかのようであった。
 滑走路には雪が降り始めていた。翼を持つものは、そのエンジン音を更に上げた。こんな鬱陶しい雲を、今すぐに飛び越えたいと催促するかのように。


 

「それじゃぁウエイン、くれぐれもクレア様を傷物になんかするんじゃねぇぞ。ちゃんと空までエスコートしてやれ」

 周囲の視線に気付いたのか、気付けば『クレア様』に格上げされていた。

「真面目に仕事やれよ、フェルト」

 ―――長い尾を引いた溜息の後、フェルトの目は据わった。殺気すら感じるその眼に、先程までの緩慢な雰囲気は凍りついた。優秀な指揮官殿の本領発揮だ。

「フン・・・・・・・・・これより試作機X-26-S[JPU]のテストを行う。試作機のコードネームはクレア、呼称も同じくする。これより発進、上空で待機するこの空中母艦『ノーザンライツ』と共に西部ピューノジアン砂漠まで巡航後、先行している無人機部隊と戦闘。フライトスケジュールはブリーディングの通り。各シークェンスの指示は逐次通達する」

 Xは試作機。26は開発された年号、ATPF計画発足の年。Sはそのうちの空戦型。そしてJPUとは、この機体に込められた希望であり象徴。不死鳥の再来を意味する。―――新機軸の第三世代空戦型PF。圧倒的な機動性と火力の両立を極限まで追求し、来るべきヴァリムとの決戦に備えた『アルサレアの切り札』
 何としてでも、モノにしなくてはならない。データがなければ、次には繋がらない。これにはアルサレアの未来がかかっているかも知れないぞ。
操縦桿を握る手に一層の力を込める。

「海まで出たら、砂漠まで最高速度で・・・だったよな。こちらウエイン=ウォード、これよりザッハ空港を発進、空中母艦ノーザンライツに合流する」

 ブーストペダルを浅く踏み、スロットルレバーをゆっくり押し上げる。クォータードライブ、ハーフドライブ。機体は徐々に高度を上げていく。
レバーを固定、ペダルを少し戻してホバリング。
 構造上は飛行中に変形しても保つように設計されているが、俺はこの『今から行きますよ的な』瞬間がたまらなく好きなんだ。こればっかりはいくらクレア様だろうが、譲れないんでね。
 それでも音声認識は試しておく必要があった。空にさえ出てしまえば喋っている暇などないのだが、人間にはどうあっても越えられない壁がある。どれだけ頑張っても人間には手足合わせて4本しかない。だから五本目の手足となる『声』は、最後の手段として存在するのである。

「クレア、巡航形態に移行」
「Cruise-Mode」

 俺の声に応えたのは機械音声のように無機質な声。こんなのクレア様じゃねぇよ、ちきしょう。このくらいまっとうな人間の声にしたって減りゃしないってのに―――どうせならフェンナ様にアフレコを頼んだ方が士気が上がるんじゃないか?
 ともあれシールドとライフルが合体してメインフレームにホールド。手足が折れ曲がり、何となく鳥類を髣髴とさせるような巡航に適した形へと、手際よくその形状を変化させていった。
 確かに音声認識は便利なんだが、飛びながらやったら舌噛んで死ぬか、酸欠起こしそうだな。

「飛行形態への移行確認、発進する」

 グローウィング展開。ブースト全開。ハイパーバーニア点火。次第に勢いを増していく蒼い炎は空を灼き、吹雪を抉り、雲を裂いた。


 発進から僅か20秒、それは恐るべき加速で空の最高点まで駆け上がった。







 

 この日、我々が知るのとは違う、もうひとつの翼が惑星Jに舞い降りた。

 航空支配型PF JUフェニックス、その2号機。―――空域の絶対的支配を示唆する、もうひとりの覇者。

 ――翼は来たれり。

 ――新たな姿を得た不死鳥は甲高い鳴き声を上げ、再び大空を駆けた。

















 

 後編 空の支配者


 

 空中母艦ノーザンライツ―――超音速巡航が可能な、アルサレア北方防衛軍の第二旗艦。PF搭載能力は並だが、取り敢えず速度には自信があった―――のだが。

 

「こいつがPFとはねぇ・・・まったく凄い時代になったというものだよ」

 フェルトは艦橋の中心から、ディスプレイのライブを感心したように見上げた。初めてPFというものが開発されたのがほんの数年前に思えていたのに――と、顎鬚を弄りながら小さな哀愁に浸る。
 今そのPFは人型ではなく、あまつさえ超音速巡航中のノーザンライツのすぐ横を、並んで飛行しているからである。推進剤も何も使わず、その『羽の力』だけで。別に羽ばたいている訳ではないが、今装備している準規格装備グローウィングは電力さえあれば勝手に羽下の気流を不均衡にさせてマッハ1強で飛行出来るのだ。それだけでも十分凄いが、あまつさえスペック上の最大速度はこんな程度のものではないというのだから驚きだ。

 ――時代は、変わったものだ。


 

「艦長、ピューノジアンが索敵範囲に入りました。時間です」
「んあっ、そうだな・・・・・・ウエイン、クレアの最大速度評価試験だ。ピューノジアン砂漠まで速力マッハ3。・・・そこらの戦闘機だってこんなに出ないぞ。腰は抜かしても良いが、ションベンは漏らすなよ」
「出撃前に行ったから大丈夫だ。推力をミリタリーからMAX。ハイパーバーニア点火、HDDバーニアスタンバイ。フェルト、お先に失礼だな」

 俺の声から一拍置いて、蒼い炎が唸りを上げた。機体が押し退けた空気の塊が衝撃となって艦橋まで伝わってきた。

「ウゥウッ・・・・・・・・・ッ・・・こりゃぁ・・・・すげぇ」

 歯を食い縛ってGに耐える。脚が、腕が、がくがくと震え出した。恐怖もあるが、強烈なGに腕が耐え切れないのだ。
 それでもクレアは更に加速する。刀のような鋭さで空気を裂いて、自らの身体を前へ前へとねじ込むように空を疾る。コクピットからは一瞬機体の周囲がぼやけて見えた。あまりの加速に空気の密度が急激に変わっているのだ。
 ――オイオイ、マジかよ。バーニアで無理矢理空気の壁破ってるよ。やっぱアンタ『漢』だよ。戦闘機の方がまだ優雅に空飛ぶぞ。


「クレア、HDDバーニア点火、最大加速・・・・・・疾い」

 艦橋のオペレーター思わず口にした、その翼の片鱗。こんなものは見た事がないというように、口が半開きで呆けた表情をしていた。それはそうだ、こんなのに襲われていれば、並みの艦隊なら一瞬でやられる。

「信じられんな、もう見えなくなりやがった・・・」


 クレアは一瞬で空の先に吸い込まれた。雲が切れた下は、海が広がっていた。





 

 俺とクレアは海を越えて、ピューノジアン砂漠にピクニックに来ていた。初デートにしてはアウトドアってのは粋な計らい―――弁当、ナシ。お茶、ナシ。和むような雰囲気、ナシ。てか、よく考えれば女っ気もなかった。さっきクレア様が『漢』だと解ってしまったからだ。デートだとはしゃいでいた自分がいつになく寒かった。
 空は青く晴れ渡っていたが、そこは寒い砂漠だった。いやいや俺の事は放っといてくれ。
 ここはアルサレアの北西部、フィアッツア大陸の最果て。あまりに苛酷な環境故に住むべき者どころか、棲むべきものすら殆どいない、空白地帯。
 二重の意味で寒い場所は、少なくとも兵器の実験としてはうってつけの場所だった。


 巡航形態を解いたクレアは、その速度を落としてダラダラと宙に浮いていた。
 この機体は一体何者だ?
 ウィングから出る『謎的推力(説明されても俺の頭では理解出来ん)』だけでスーパークルーズ(超音速巡航)モード?ブースターを使わなくてもだと?
 使ったら使ったでマッハ3。いや、あの調子ではまだまだ出たな。

 ―――しかし、結構身体にくるな、チキショウ。
 ―――あっ、今アンタ、何でこんなに不甲斐なさそうな俺がこんな最強PFのパイロットなんだって思ったな?ふふん、PFと戦闘機に両方乗れるパイロットなんか、実はあんまりいないんだぜ。特にPF全盛になってからはな。だから、『普通のエースパイロット』じゃ、少なくとも変形したコイツは扱えないんだ。一朝一夕ではな。だから『面白そうだ』なんて飛びついた。それに、第五研に来たのだって、実は偶然ではない。ここはとにかく情報が集まる場所だからな。この機体構成だって、実はヴァリムの新型のアセンブリだっていう噂もある。っと、喋り過ぎちまったな。
 俺は誰とも知れない誰かに叫んでいた。


 

「いよぉ、お疲れさんだなぁ。だが、休んでいる暇はないぞ。これより戦闘テストを行う。これからが本番だ。新武装の実験をしっかしておかないとな」
「・・・了解」

 あからさまに嫌そうな顔をしてみせる。が、画面の先の親友の顔は眉ひとつ動かず、冷静に言い放った。今日のこいつの顔は、妙にむかつくな。

「始まっているぞ」
「!!」


 先行していた巡洋艦から、無人戦闘機が1・2・3・・・・・・・5機。もともとこいつらは大した武装はしていないが、無人機だけに最大速度はマッハ4以上出るらしい。まるでミサイルだ。
 もの凄い速度ですれ違う。攻撃してこない?

「Damage」

 短い音声。ディスプレイにははっきりと『被弾』の文字があった。

「装甲強度の実験はナシか・・・。おもしれぇ・・・クレア、俺達朝から嘗められっぱなしだぞ!!」

 正確には『俺だけ』だが――


 取り敢えず手持ち武器から片付けよう。『ディバイドビームランチャー』――最大ロック数7。馬鹿長い銃身と、左右に3門ずつ、計6門の砲孔を持つ。規格装備の『ディバイドビームライフル』はこれを半分くらいの大きさにしたやつだ。
 何で大きい方が準規格装備なんだ?取り敢えず構える。3機ロック、結構遠い。考える前にトリガー。たった3つの目標に対して7本もの光条が殺到する。
 発射と同時に着弾、命中。空中で炎と黒煙が爆せた。――残り2機!!
 クレアが自発的にレーダーで索的。自動ロック、こいつは便利だ。
 すかさずマルチブースターで反転。ブーストペダルを踏み込んで先回り。

 ――次は違うのでいこう。
 シールドだった。もちろん、ただのシールドではない事は知っていた。何せ名前が『ビームカタールシールドブースター』とかいう、訳の解らん名前だからな。これが正式名称なのだから、やるせない。もう少し何とかならなかったのだろうか。
 まぁ、いいや。どうせシールドで通じるし。
 ビームカタール展開。シールドのエッジ面全体から眩いばかりのエネルギーが伸びる。

「でぇいっ!!!」

 シールドを振るう。だが、無人機の旋回速度はその命中を許さない。そりゃそうだ。戦闘機を近接で狙ってどうする?ここは超人オリンピックじゃないんだぜ!!まぁ、可能性はゼロではなかったが。

「Damage」
「ちっ、後回し。こいつは?」

 『AGビームベイオネット・エクステンション』――そう表示されていた。

「銃剣・・・か」

 アーマードガントレット――それは武器内蔵型アームフレームの武器部分の総称である。従来内蔵武器の代名詞であった頭部・胸部に装備されているものとは違い、腕部武器と同じ感覚で使用出来るため非常に使い易く、また外部装着のためフレーム強度を直接に低下させる事がないというのが特徴である。当然、特に胸部兵器に比べて威力が劣るのではあるが、この『ビームベイオネット・エクステンション』は、そのような常識の範疇にとらわれないものであった。

「シューティングモード」

 トリガーと同時にエネルギーの塊が高速連射された。一発一発も、結構でかい。
 爆炎が空に広がる。1機撃破。
 残ったのは1機。さて、そろそろ新開発のアレを使おうか。

「飛行形態」

 おもむろに叫ぶ。

「Cruise-Mode」

 ビームベイオネットは、折り畳み式の超収束ガンバレルを装着した。かなりの長さだ。そこらのバスターランチャー並みじゃないか。よく腕が保つな。
 飛行変形したクレアは、爆発的な加速で敵を追った。敵は全速で逃げない。むしろこっちに向かってこようとする。うれしい事にそういうプログラムがされているのだ。

「よぉぉし、ケツをとった。メガブラスターモード・・・ファイア」

 両腕の先端から、閃光が迸った。細く、激しく、破壊の力を圧縮したそれはまるでビームのワイヤーのようにすら見えた。
 それが直撃なのか掠ったのか判らないような格好で、とにかく命中するやいなや、戦闘機が真っ二つに斬り裂かれた。
 ――えっ、爆発しないの?オイオイ、マジで斬れやがったよ。確かにこれは敵機体の中枢部分――まぁ、コクピットとかを一撃で破壊するものだって話は聞いていたが、ゴエモンじゃないんだからさぁ。


 


「全機撃破!!・・・んっ」
「Mission update」
「ウォーミングアップには丁度良かっただろう?今度は無人機動兵器との戦闘だ。全て接近戦でやってみろ」

 敵PFの情報がディスプレイに表示された。数は5機。そのうち4機はラグーンブーストUを装備した強化型Jフェニックス。武装はロングソード。まぁ、前任を超えるという、粋な計らいだな。
 もう1機はGFゼクルヴ、しかも装甲だけが自慢の最初のタイプだ。どこでこんな骨董品を持ってきたのやら。
 ――旧式め、新たな時代の洗礼を受けろぉぉぉぉっ!!
 ブースト全開。空中にいる一機に押し迫る。如何にGが強かろうとも、それは気合で押し退ける。
 いくら強化型Jフェニックスであろうと、さっきの無人戦闘機に比べて速度は数段劣る。一瞬で間合いを詰めてビームカタールで一刀両断。振り被る隙すら与えない。
 制空戦闘型が航空支配型に対抗出来るものかよ!!

「次っ!!」

 シールドを投げ捨てる。着地の瞬間にブースターが働き、何事もなかったかのように着地。すげぇな。
 ―――と、感心しつつライフルをバスターブレードモード。銃身全体が光に包まれる。シールドを捨てた左腕はブレードモード。二刀流で二機のJフェニックスに迫る。

「遅いんだよっ!!」

 先に振られたロングソードをマルチブースターで直角に回避。離れたところをHDDバーニアで一気に詰め、無防備状態の一機にベイオネットブレードを浴びせる。
 メインフレームを一文字斬り。反転して、もう一機にシューティングモード。手足を撃ち抜いてから、光り輝く銃身で唐竹割り。これで残り二機。

「クレア、シールド召還」

 そう言った瞬間に、シールドがブースターを吹かせて戻ってきた。なるほど、だから変形がスムーズに出来るんだな。
 ―――と、感心した瞬間に最後のJフェニックスが目の前にいた。

「!!」

 ロングソードの斬撃をギリギリで回避。その瞬間、後ろから飛んできたシールドがJフェニックスを直撃した。さすがはクレア様だな。
 そして怯んだ敵を、至近距離からのベイオネット・メガブラスターでバラバラにした。しかし、なんて便利なんだろうな、ビームベイオネットは。一粒で三度美味しいとはこの事だ。


 そして最後の1機!!
 寂しそうに歩く全高30mの巨人。昔はPFの3倍だったが、今は2倍に格下げされている。しかも性能は何分の一だろう?――もちろん瞬間転移なんてシステムは取り外してある。だって壊すの勿体無いし。

「さて、どう殺してくれようか」

 使っていない近接武装は残りひとつ。だが、殺し方は幾つかあった。が、考える暇はなかった。

「Missile Alert!!」

 ミサイル接近警報だった。えっ、撃ってきた?しょうがねぇ、アレでいくか。

「Cruise-Mode」

 クレアは飛行変形。迫り来るミサイルを一気に引き離す。
 そして反転。合体させたシールドとライフルを『カタールモード』にセット。巨大な高出力ビームカタールが機体前面に現れる。次々に放たれるミサイルはシューティングモードで迎撃。そのまま大G加速で突撃。

「ブレイクッ!!」

 叫びと共に一閃。直撃を受けたゼクルヴはメインフレーム部分を完全に失った。崩れ落ちようとするゼクルヴ。だが、まだ終わらせないぜ。
 素早く変形を解除。反転して高出力ビームカタールを、そのまま縦に振り下ろす。

「でぇぇぇぇぇぃいぃっ!!」

 その光の奔流は全てを飲み込み、圧倒的な熱量は全てを消滅させた。
 光になれぇ―――ってか?


 

「全機撃破」
「Mission Accomplished」

 おっ、どうやらこれで終わりのようだな。いやぁ、しんどい。内臓がキリキリ悲鳴を上げやがるぜ。

「ご苦労さん。どうだ、彼女の性能は?」
「確かにシミュレーションとは桁が違うな。スピードには腰を抜かすよ、フェルト。簡単にイかされちまう。もっと鍛えないとな」

 息も絶え絶えで話す。

「はははははっ、言うじゃないか。そりゃそうだ、クレア様がお前なんかにいいようにされる女なんかじゃないって事だよ」
「意識がだよ。そのうちヨヘン=フェルトマン、セクハラ軍法会議で証人として立ってやる。死刑だな」
「おいおい、お手柔らかに頼むぜ。その前に酒場で司法取引するからさっさと戻って来い」
「了解だよ」


 クレアは再び飛行変形、空中母艦ノーザンライツへと向かう。

 ――しかし、遂にこんな化物まで戦線に投入される事になるのか。
 俺は一抹の不安を覚えた。こんなものが闊歩する戦場は、一体どんなものになるんだろうな――と。









 

 ATPF計画の最終段階―――JUフェニックス。従来の常識を全て超越した不死鳥。
 その翼は何よりも速く、鋭く、そして気高い。

 この機体は、やがて戦争の常識を、またも変える事になるだろう。
 だが、PFがこの世に生を受けた聖歴19年から、僅か8年。この圧倒的な性能は、どこから来たのであろうか。何故、こんなものが必要になったのだろうか。
 そして、それを考える事なく、戦争はより高度に、破壊の権化と化していく一途を辿る。

 これからPFは、どこへと向かうのか。
 果てしない開発競争の末、我々人類は、どのような未来を手に入れるのだろうか。
 それは平和か、滅亡か、それともまた別のものなのか。

 ――それは誰にも解らない。









 



 あとがき:

 これはJUフェニックス2号機『クレア』の、兵器開発ミッションでのお話です。因みにグレンリーダーの乗っていた1号機改は、開発チームによって密かに『フェンナ』という名前がつけられています。
 見たところかなり装備が違うので、ここで1号機とのアセンブリの違いを纏めておきましょう。

1号機『フェンナ』
 ・JUフェニックスフレーム
 ・ディバイドビームライフル
 ・ビームカタールシールドブースター
 ・AGビームベイオネット
 ・アタックウィング
 ・ハイパーバーニア
 ・液体金属噴出装置
2号機『クレア』
 ・JUフェニックスフレーム
 ・ディバイドビームランチャー
 ・ビームカタールシールドブースター
 ・AGビームベイオネット・EX
 ・グローウィング
 ・ハイパーバーニア
 ・HDDバーニア


・なぜJUフェニックスが第五研に?
 外に開かれているが故に『第五研には注意せよ』というのが通説ではあったが、新機軸のジェネーレーター『重力融合炉』とハイパーバーニア、HDDバーニアなどの推進装備を開発研究するためには第五研が最も適していた事、また空戦用PFの開発はヴァリムの方が進んでいた事などがあり、ヴァリムからの情報をフィードバック出来る事が期待されていたからである。




 

・人物紹介

ウエイン=ウィード 階級 少佐
 明るい30代。戦闘機とPFの両方を乗りこなす、数少ないパイロット。
 戦闘能力、指揮能力はそれなりに高いが、お調子者で、イマイチ冴えない三枚目。
 伊藤健太郎(グレンリーダー役)の声でお楽しみください。

ヨヘン=フェルトマン 階級 大佐
 アルサレア北方守備軍のナンバー3。超音速航空母艦ノーザンライツ艦長。ウエインの親友。超優秀、エリート。だが、セクハラ発言が多い(直接女性にセクハラをするという事はないが)。
 因みに、ウエインよりも一回り年上、40代。
 若本規夫の声でお楽しみください(笑)



 


 管理人より

 レビさんより短編をご投稿頂きました!

 こうしてみると、結構1号機と変わってますね……

 それにしても、そういう名称を本気で付ける彼等も(苦笑)
 


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