ヴァリム内乱編
〜〜〜動乱のヴァリム〜〜〜

第2章 燻る火種



 第2話 オーランド要塞陥落






 何となく赤壁と交渉を終えたアフリード達

「さて、混乱に乗じて一気に行くぞ」

「「「おう!!」」」

「では、策を授ける
 一つでも手順をミスると取り返せないからうまくやってくれ」

 アフリードは概要を話すとユニまで抱き込んで策を披露する。






 そして、策は全館放送から放たれた。

「総指令アフリードだ
 今この要塞は赤壁の轟鬼率いるテロリストの蒔いた神経毒により危機的状況にある
 全兵員はすべての業務を放棄し、地下シェルターに緊急避難せよ
 なお、避難はヴァリム人を優先とする
 この命令に背くモノは緊急事態に付き発砲を許可するものである
 もちろん、ヴァリム人以外に死ねと言うつもりはない
 無益な発砲や、射殺を行うものには必要以上の結果が伴うと覚悟せよ
 オレは植民地人達と友好的に生きることをよしとしている
 わかったら、即時行動せよ
 すべての生存者がシェルターに入ったことを確認した後、ヴァリム軍が化学斑を引き連れ無毒化してくれる手はずになってる
 後顧の憂いはない、今はただ迅速に動け!!」

 アフリードの言葉にパニックを起こしていたもの達が、我先に地下シェルターに圧倒殺到し出す。

 その足音は怒号のように鳴り響き、いさかい、罵りあう音すらかき消していく。






 シェルター前
 司令室から地下シェルターまでは、万が一の時のために直通エレベーターがもうけられていて、アフリードが放送しているうちにラフィンとビルフォードが先に降りて殺到するヴァリム人達がシェルターに駆け込む様子を観察しつつ、効率よくシェルター内部に誘導していった。

 その際、ヴァリム人達は植民地兵をいつも通りないがしろにしたり、いざこざから発砲するもの達、ヴァリム人に抵抗できないもの達がラフィン達に詰め寄り無力を嘆くもの達など、阿鼻叫喚の地獄絵図を展開していた。






 ひととおりシェルターに避難か完了した頃
 人食い白うさぎのメンバーが、シェルターの最後尾に集合した。

「さて、やるか・・ユニよろしく頼むぞ」

「何がよろしくだ、人を利用しやがって!!」

「まあまあ、出来るだけ被害を出さないための策なんだし、案外多く味方を集められるかもしれないんだからね、ね」

 エステルが拝み倒すと、ユニは渋々といった感じで前に出る。

「オイ、ヴァリムのでかい方シェルターを開けな
 ラフィン、でかいのから目そらすなよ」

「ああ、承知している」




 


 一度閉じられたシェルターが開放された。

「くそヴァリム諸君、逃げ場のないその場で死ぬ覚悟は出来たか?
 アタシはユニ、赤壁の轟鬼のユニ
 この要塞はあたし達が占領した、ヴァリムに死を!!
 ヴァリムに反感を持つモノは今すぐ出な、解放してやる
 私たちの身内になりたい奴らは、シェルターから出て待ってな
 さあ、急ぎな!!」


 アフリードとシェルター内部にマシンガンを向けるユニの叫びに困惑しながらも、ヴァリム植民地の兵士達は我先にとシェルターから逃げ出した。

 もちろん、命惜しむヴァリム軍兵士もシェルターから逃げだそうと必死に逃げまどう植民地兵を後方から拳銃で射殺しながら雪崩れ込んできた。

 まさに阿鼻叫喚と言うところだ。

 と、収拾がつかなくなる前にラフィンがヴァリム兵、植民地兵が入り交じる中にバズーカ砲をぶち込む。

 一瞬ひるんだもの達にビルフォードは容赦なく火炎放射器でシェルターの入り口にいるもの達を、区別なく焼き払う。

 死と怨嗟の叫びが蔓延する中、アフリードはシェルターの入り口を無理矢理閉めた。






 シェルター入り口

 焦げた化学繊維の異臭と、肉の焼けこげるにおいが立ち上る最悪の戦場跡には30数名のモノしか残っていなかった。

 100数十名が無事に逃げ出す中、残ったモノは思いの外少なかったのか、多かったのかよくわからない。

 ただ、そこに残るものの顔に安堵はなく、絶望だけが色濃くその場を支配していた。

 と、そとから新しい叫び声と轟音がこだまする。

 それは、赤壁に入ることを拒否しこの要塞から逃げようとしたもの達の断末魔だった。

 彼らは、脱出支援を調えてPFで待機していたエステルとシャロンの誘いに乗って、人員輸送用の輸送機に乗り込んでいた。

 だが、彼らはこの要塞が落とされたことを流布する可能性があったというだけの理由で、輸送機ごと撃破されたのだ。

 無抵抗のものにまで容赦ない破壊と殺戮、そして略奪・・・

 まさに、小さな戦争がそこにあった。

 そして、為す術無いもの達にとってそれはタダの絶望的な現実であった。






 パニックになり思考停止したもの達は食堂に集められていた。
 そこでは首謀者であるアフリードがいきさつを話し、重みのない約束が勝手に交わされていた。

 ユニは食堂の端っこで干し肉をかじりながら一部始終を見いていた。

 人としては最低だが、情け容赦ない行動力と、無理矢理シナリオ道理に事を運ぶ手腕には評価をしていた。
 

 ホント、くそヴァリムそのモノだね・・・

 いけ好かないヴァリムらしさが気に入らないユニだったが、味方としてならどうだ?という自問自答が胸の中に渦巻いていた。






 アフリードとラフィン、ユニは食堂をビルフォード達に任せると司令室に戻っていた。

「さて、オーランド要塞は落として見せたが返答はいかがかな?」

 アフリードは赤壁の轟鬼こと、むさっ苦しい髭面のミンツに問いかける。

 ユニからあらましを聞いていたミンツはヴァリム人を容赦なく抹殺するアフリードを頼もしく思う反面、ヴァリム兵らしいやり過ぎる戦術に恐怖を感じていた。

 だから提案する。

「これから俺たちはそこに向かう、そこで立ち会え
 身内にするにふさわしい強さがあるのなら引き入れよう、無様な敗北をするのなら引導を渡してやる
 返答はそれからだ」


 ・・・煮え切らないな、先の気っぷのいい女を出させたほうがいいか?

 と、表情を読まれたのかナンバー2のレニーが口を挟んできた。


「生き残りもちゃんと言うこと聞くかわからない要塞にまで足を運んであげるんだから、うだうだ言うんじゃないよ
 私たちがあんた達を拒絶しても、華臣が拾うって言ってるんだ
 行儀よく待ってな、ヴァリムの司令」


 そう、勢いよく言い切ると通信は一方的に切れた。


「ふ〜、やれやれ後手後手に回ってる感じだな・・」

「かなり軽率に事を運びすぎたと後悔しているのか?」

まさか、段々楽しくなってきたよ」

「そうか、一安心だな」


 ラフィンはアフリードが根拠のない自信を持っているうちは大丈夫だということを知っている。

 だから、それ以上追求することなくその場を後にする。


「で、アンタ本心はどうしたいのさ?」

「特に考えてないさ、なるようになる
 最悪お前達と戦ってのたれ死にでも本望だ」



 ユニは真顔に戻って言う。


「ニアデス(死にたがり)かよ、破滅的だな・・
 まあ好きにしな、ヒゲが決めるまでは仲間でいてやるから」


 そういうと、未だ寝こけているリーリエを担いでユニは出て行ってしまう。

 たった一人残ったアフリードは天井のシミを数えながら、さっき焼き殺した同僚の顔を思い出す。

 儚いものだ、所詮命など一時の幻・・

 惜しんでどうする、オレは閃光のように生きてやる!!








 

 アフリードが要塞を占拠して2日目
 ヴァリム軍の他の基地経由で超大型の輸送機が4機オーランド要塞に接近していた。

「もうヴァリム軍にばれたのか?」

 アフリードの焦りとはべつに管制官を兼任していたシャロンがそれを制した。

「いや、ヴァリム内陸にGFの試作機を輸送しているみたいだ
 輸送機もゾックス=アインハルト製でヴァリム軍の護衛もない
 ここには燃料の補給だけみたいよ」

 試作機にしては、輸送機4機はおかしいな・・
 積み荷はGFと専用兵器か?

「作戦会議といこう
 実働可能なGFと武装なら頂こう
 赤壁は明日明後日にはここに来る
 ヴァリム軍が気づくにしても、誤魔化せるのはもう数日だろう
 折角なら時間稼ぎにあたふたするより、戦力増強に勤しもう」

 シャロンはらしくなってきたと微笑み強くうなずく。






 輸送機到着

 アフリードは燃料補給をしながらうまく輸送機の中を見せてもらうことに成功した。

「ずいぶん物々しい機体だな、もう実働できるのか?」

「ええ、一応試作機ですがゾックス=アインハルトの最新GFバリエーション
 ギガス計画の12機です
 これはすごいですよ、最新の重力エンジンを搭載していて撃ち分けの出来るレーザーベイオネットと、要塞砲を小型化したカイトハモニカシールドを主力兵器に、小型化できなかった試作兵器を使いこなせる安定性があります
 瞬間転移も、自機のみならず周囲空間諸共空間転移することで、隣接した僚機を一緒に瞬間転移することが出来るようになりました
 これにより戦術の幅が広がり、攻めてよし、守ってよしの万能機になりました
 苦手があるとすれば、高速接近戦を得意とするPFぐらいでしょうね
 まあ、着脱式ソードダンサーや近距離クラスターミサイルを搭載しているので相当回避にたけたパイロットでもない限り死角はありませんよ」

 得意げに説明するゾックス=アインハルトの社員に、アフリードはニヤリとほくそ笑むと試しに訪ねる。

「それはいいな、ちょっと試乗してみたいものだ
 どうだろう?」

 わかる、わかりますよ〜という顔でうんうんうなずく社員はしかし。


「お気持ちはわかりますが、実働はご勘弁を
 この機体を依頼してきたのは、あのムガベ氏ですから・・
 埃の一つでも受け渡し前についていたら・・・」


 おわかりでしょう?とその顔は物語っていた。


「なるほど、恐皇の依頼だったのか・・
 道理で極端な火力が目立つ機体だ
 あの方はまた大地粛正を成すつもりか?」

「司令官様、あまり滅多なこと言われるべきでは・・」


 ゾックスの社員は戦々恐々の表情で辺りをうかがう。

 壁に耳あり障子に目ありといった感じだった。

 と、思い出したかのように口を開く。


「そうです、実機での試乗は出来ませんがシュミレーターでしたら最新アップデータがありますのでいかがですか?」

 と、アフリードが困った顔をする。

「気持ちはうれしいのだが、あいにくこの要塞にはGFが配備されていないのでGF用のシュミレーターが無いんだ」

 本当はシュミレーターはあるのだが、壊れたまま放置してあるなんて口が裂けても言えなかった。

「そうですか、ではこの輸送機のものをお使いください
 調整用の1機のみですがギガスシリーズ専用にチューニングしたものがありますので」

「それはいたせりつくせりだな、なにやら怖いぞ?」

 アフリードは、交換条件を言ってみろという感じであごで合図する。

「使ってみての感想をください
 人食い白うさぎの名は、まだ私たちの中では健在ですから
 後、いい機体だと思いましたらヴァリム軍上層部にお口添えをお願いします
 今後はPFでのチマチマしたド突き合いから、GFの大火力での絨毯殲滅戦が主流になるとね
 後、これは欲ですが深夜飛行は危険なので今夜うまい晩飯を出していただけるとうれしいです」

「欲のないことだ
 最後の晩餐を思わせる食事を用意しよう
 その代わり、最新のおもちゃは貸し切りにさせてもらうぞ」

「壊さない程度にお願いします」

 ゾックスの社員はそう言うと仕事に戻っていった。






 

 ゾックス=アインハルトの社員が要塞で、文字通り最後の晩餐をとっている頃


「とてつもない火力だな、5機も並べば地平線まで一直線に焼け野原だ」

「威力がありすぎてむしろ使いにくいとか、考えなかったのか?」

 ラフィンとビルフォードがシュミレーターから出てきての感想だった。

「でも、ヴァリムを象徴する機体だと思うわ
 すべてを蹂躙する兵器・・」

「でも、それが今度は自分たちに向けられる
 皮肉な話・・・
 まるで、無意識に押さえている自壊しない力を解放して自滅するかのようね」


 一体ここまでの破壊力を得て何を得たいのか?

 シャロンの言うようにヴァリムは自滅したいのか?

 それとも自滅するまで気づかないつもりだろうか?



 ・・・自滅といえば、アフリードもかなりやばい。

 ラフィンは、ゾックス=アインハルトの人間を皆殺しに向かったアフリードに狂気めいたものを感じてならない。

 まるで、この機体のように殺戮におぼれ自壊していることを忘れているようだとも思う。

 アフリードは自分たちのことを考えて行動している。

 ここは間違いない。

 だが、フリード自身はどうだ?

 戦いたいだけじゃない。

 戦って死にたい。

 死に場所を選んでいるのとは違う。

 身を焦がすほどの後悔の復讐をしたいだけではないのか?

 アルサレア戦役で僚機だった妻を失い。
 輜重隊だった娘を失い。
 人食い白うさぎも壊滅・・

 戦争にすべて奪われ、行き場のない怒りと、戦争に復讐する機会まで奪われた。

 

 この状況がアフリードの狂気をはぐくみ、赤壁と出会うことで炸裂した感じだ。

 だからこそ、情け容赦なく身内だったものを焼き払い、戦争に参加していないただのゾックス=アインハルトの社員を今皆殺しにしようとしている。

 そろそろオレが止めねばならないのかもしれない。

 必要なら手足を不自由にするぐらいは覚悟しなければならんか・・・

 いやな役だ、と思いつつもそれが自分の役目だとラフィンは胸の拳銃の手入れをしようとしたときだった。





 要塞の中に小さな地響きが起きた。


「なんだこの地響き、まさかこんなところで地震?」


 シュミレーターに夢中になっているビルフォード達は気づかなかったが、エステル達がうおうさするなか、いつものことに慣れっこになっていたユニがリーリエを起こしながら言う。


「ちょっと早いけど、ミンツがきたよ
 この地響きは、赤壁の轟鬼が起こす地響きさ
 ヴァリム軍を震撼させる血まみれの壁の到着だよ」

「そうなの〜、ヒゲヒゲがきたの〜」<

 ユニとリーリエは右手を空に突き立て高らかに宣言する。






 オーランド要塞の外には馬鹿でかい固まりが見下ろしていた。

「よくぞまあ、こんな馬鹿でかいものが動いてくるな・・」

 赤壁の近くで見上げるアフリードの視界には、長大な赤壁しか見えない。

 予備知識で縦幅50m横幅250m厚み10mというデータは入っていたが、目の前にしてみるとやはり迫力が違った。

 そして思わずにはいられない。

 これを眼にしたヴァリム軍は不憫だな、と・・

 こんな馬鹿でかい壁が秒速100mで迫ってきたら、確かに為す術がない。

 万が一、この壁が破壊できるとしても突っ込んできた破片はどうにも出来ない。

 この赤壁は、地面を転がる隕石と何ら変わらん。

 ギガスシリーズの火力も、はたはた無茶だと思ったが目で見て無力感を噛みしめさせるこっちの方がたちが悪いと心底思っているときだった。

 と、そこに数機のPFがどこからともなく飛んできた。

 シンザンにキジョか、機体はカスタマイズされているようだがさすがにどの機体も第2世代のPF・・

 いや、1機だけ全く記憶にない新型が混じってるな。

 線の細い機体だが、あれが赤壁の轟鬼か?

 と、思っていたが出てきたのは燃え上がるような深紅の髪を後ろで縛った女性だった。

 リーダーのミンツがヒゲズラだということだけは理解していたアフリードは訪ねる。


「ご足労に感謝する
 私は元・要塞指令、アフリードだ
 キミは誰かと訪ねていいだろうか?」


 ポニテの女性は一つ強くうなずくと、胸を張り言い放つ。


「遠慮するな、私たちは仲間なのだから・・
 我が名は華臣、狂桜華臣(くるいざくらかおん)だ
 よろしく頼むぞ!!」


 華臣はPFから飛び降りると、自己紹介しながらアフリードの正面に降り立つとがっちりと握手しその手でをぶんぶん振り回す。


「ああ、よろしく頼む・・」


 例のナンバー3か、しかし何とも豪快かつ明朗快活な女だな・・

 男女ともに人気の出そうなタイプだな・・・

 そう思いながらも、知性派の自分には会わないタイプだと内心降参するアフリードだった。






 そこにラフィンたちがやって来た。

「さて、リーダーのミンツ殿と話をしたいが、出てこないところを見ると俺らはまだ仲間と認められないのかな?」

 アフリードはさて困ったというポーズをして見せた。

 華臣はそれを意に介さず笑う。

「なに、ユニの報告を聞いて気になることがあったので、要塞内部を少し見聞させてもらいたいと私から申し出たまでだ
 あ奴らはがさつだからな、邪魔者にはおとなしく待ってもらうことにしただけだ
 ここに来るまでに、例外ではあるがヴァリム人である君たちも赤壁に編入することの許可はもう出させた
 こう私が言い切るのだ、信頼してくれていい
 さて、私は要塞内部を散策してくるが、それまで暇であろう
 私が・・、いやそこの久遠が君らと世間話などしたいそうだ
 つきあってもらえるだろう?」

 ふう、一息安堵を漏らすとアフリードはうなずいた。

「ようやく人心地ついたよ、ここの副司令のラフィンを案内につけよう
 我々はひとまず食堂で待とう、いいかな?」

 華臣は大きくうなずくと言う。

「ありがとう、では早速行こうか」

 華臣はラフィンの手を握ると、そのままラフィンを引っ張って要塞内部に分け入っていった。

 それに驚かず、4人の女性がその後を追う。






 あっけにとられるアフリードたちと一人残った久遠

「とりあえず、自己紹介かしら?
 私は久遠、狂桜久遠(くるいざくらくおん)

 初めに断っておくと狂桜華臣とは姉妹でも、従兄弟でもないわ
 何か質問は?」


 気っぷのいい姉さん女房が華臣だとしたら、久遠は小生意気な子猫のようだった。


「いや、君たちの間柄が他人ならそれ以上質問はないよ」


 いやはや困った顔をするアフリードに、久遠は「そう」と素っ気なくいうと目についた輸送機から、ヴァリムの物流、戦力分布や地形、付近の主立った指揮官についてまくし立てるように問いかけ始めた。

 興味ないことについては素っ気ないが、興味あることについてはものすごい熱心さだな。

 ここにいるすべてのもの達が質問攻めに愕然とするのだった。








 

 オーランド要塞が赤壁の轟鬼に落ちている頃
 弧光の元には珍客もとい、招かれざる客が現れていた。


「呼んでもないのに、わざわざ足を運ばれるなんて暇なの?
 それとも嫌みのつもりかしら?」

 不機嫌を一切隠さず弧光は神佐フォルセア・エヴァに当たるか当たらないかの距離に鞭を振るって挑発する。

「嫌われたものね
 それともホモの貴方には女性が眼にはいるのはそんなに苛立たしいのかしら?」

「わかってるじゃないの」


 バチン!!

 寸止めをやめた弧光は容赦なく胸に一撃たたき込んだ。


「・・やってくれるじゃない」



 乳房から血しぶきを上げるフォルセアは、キッと弧光を睨み付ける。


「アナタごときに射すくめられるほど、私は落ちぶれてないわよ
 この出来損ない」


 まただ、何か私の知らない意味深なことを言っている気がする。

 何だ、この違和感は?

 そう思うものの、痛みが思考を鈍らせる。

 胸の谷間からの出血もあるが、胸骨が骨折ないし粉砕されているかのような痛みが、呼吸困難にも似た苦しさをフォルセアに与える。

 アナタといい、あいつといい、ロクな男がいないわねこの国には・・


「ずっとここにこもって昼行灯するアナタに仕事よ
 オーランド要塞経由の物流がおかしいそうよ
 調べなさい、やらなくてもいいけどアナタのためにならないかもね」


 苦痛に顔をゆがめないように一生懸命表情をつくるフォルセアの顔は、あまりに凄惨な笑みだった。


「用件はそれだけ?
 その程度の話し通信だけで十分なのに、くだらない自己主張は意外と高くついたものね」


 弧光は、もう一度鞭を振るう。

 が、鞭はなかばからちぎれる。

 フォルセアの発砲した弾丸が鞭を引きちぎり、そのまま弧光の顔面を襲った。

 カン!!

 甲高い音がするも、弧光は全く動じない。

 くだらない反抗だ。

 弧光に睨まれたフォルセアは、振り向くと一目散に逃げながら思う。

 あの二人は危険すぎる。

 劇薬同士を混ぜて出来るのは、猛毒ではなく、ちょっとの衝撃でも爆発するニトログリセリンのようなものだと・・
 

 
閣下はそれを知ってなぜ、共闘させようというのだろう?

 どちらか一方だけでも十分に紫夢羅(しむら)など落とせるだろうに?

 閣下は二人を試そうとしているのか?

 それとも、紫夢羅が本当にヴァリムを崩壊させる器と思っているのか?

 フォルセアは、魔王こと弧光に会いに来る前に、恐皇ムガベに呼び出されて彼と会談していた。

 この二人はいろんな意味でヴァリムの超戦力であるが、戦力それ以上に言動、思想に極端な偏りがあることからヴァリムの恥なので秘密にしておきたい秘密兵器であった。

 その二人を敢えて今回の大事に関わらせようとしているのは、フォルセア神佐のボスであるギルゲス・ド・ガルスキーであった。

 フォルセアも戦争の恩恵を受ける一人として、国という枠組みではなく、内乱というお膳立てによる内戦すらも自分の糧という意識はあった。

 だが、果たして制御できないかもしれない内戦は本当に自分の糧となるのか?

 それとも、これは何かの序曲なのだろうか?

 痛みをこらえながらフォルセアは生き残るために、思考を走らせるのだった。





 フォルセアが行った後の弧光

「イオン、オーランド要塞について調べなさい
 レオン、アンタはババアにオーランド要塞についての情報をよこした奴を調べなさい
 そっちの方は程々でいいわ」

「「はい」」

 もう調べ始めてますと二人は生返事を帰す。

「じゃ、私はダンの調整に戻るからある程度形にしておきなさい」


 ・・・・集中しているようね、返事も返さないとは。

 無視されている感じがないのと、愛しいダンの成長が著しいのが手伝って弧光は二人の様子を無視してシュミレーター室に向かって駆け出す。

 弧光はフォルセアが嫌いだが、普段は言い合いをする程度だ。

 だが、今日は間が悪かった。

 一つはRF(レヴォリューション・フレーム)が今朝完成されたと報告があり、数日中に搬入される運びであることからRFをフォルセアに見せたくなかった事と、理想に肉薄するダンを早く完成させたかったからだ。



 シュミレーターから出てきたダン

「シャ!!」

 ダンは汗だくになりながらも、ガッツポーズを見せる。

「たいしたものだな、はまればここまで私に勝てる乗り手はアルサレアにもそうはいないぞ」

 ガイウスはダンに撃破されたのに悔しがるそぶり一つ見せることもなく、ダンの勝利を称えた。

「まだ、10回に1〜2回勝てる程度だろ?
 褒められる話じゃねぇよ
 これはあくまでシュミレーターだし、命がけのPF戦闘や、状況によってはまだまだ手も足も出ねぇよ」

 ダンは謙虚にそう言いながらも、確かな手応えを確認し、確実にものにするように反芻するように体を動かし始めた。

「確かに激しく相性がある上に、危うい戦い方ではあるが、短期決戦ならば今の君はエースと呼ばれる強さを発揮しているよダン
 たいしたものだ、ここまで短期間に才能に気づき、それをものに出来るものはそういない
 そう言う意味では、弧光の慧眼はたいしたものだね
 魔王だけに、邪眼かな?」

 イヴァンはうれしそうに冗談交じりに言う。

「いや、正直セシリアのアドバイスがなかったらこの戦い方を受け入れられなかったと思う
 何でも言わせてもらうぜ、ありがとうセシリア」

 ダンは土下座する勢いでセシリアに頭を下げる。

「今までの型にはめてダメなら、型を崩すしかない・・
 本来、自分で気づくべきことですのよ
 まあ、礼を言われるのは悪い気がしないですし・・
 謙虚な貴方には好感を覚えますからよしとしましょう」

 セシリアはよしよしとうなずくと、イヴァンに照準をロックする。

「だからといって、イヴァン
 あなたは少し褒めすぎですわ
 確かにマグレではなくガイウスに勝利することがあるのは、正直驚愕に値しますが・・
 ですが、私や貴方にはほぼ全敗・・
 惜しいということもなく、フルッボッコ状態・・
 はまれば凄まじいとはいえ、はまらなければやられたい放題では正直危なっかしくて戦闘に出せませんわ」

 セシリアはダンの上達を認めつつも、その偏った強さは危険すぎる諸刃の剣だと警告する。

 と、そこに弧光が降りてくる。

「まあ、セシリアの心配はイオンとレオンががんばってくれたおかげで結構改善するわ
 私たちは気を使うことになるけどね」

 弧光は意味深なことを言いつつ、フォルセアと話している間のシュミレーターの戦歴を確認し始める。

「悪くないわね、そろそろチーム戦をやりましょう
 チーム分けはヴァリムVSアルサレアでどうかしら?」

 弧光の強さはトリッキーにもかかわらず万能型であり、相手と距離を全く選ばず確かな安定感があるが、それを押しても2対3のハンディ戦は無謀である。

 並のパイロットなら弧光一人でも、ダン一人でも圧倒的勝利を収めるだろう。

 だが、対するガイウス、イヴァン、セシリアは癖がかなり強いが、それぞれの適正レンジで戦えればエースクラスに匹敵するのである。

 個々で適正レンジを維持するのは大変だが、チーム戦となれば互いにそれを補いやすいのでアルサレア側が圧倒的有利であるのは明白だった。

「こんな戦い、ナンセンスですわ」

 そう思うからこそ、セシリアは一括する。

「いいのよ、それで
 勝てる戦いをこなすことに意味がある訳じゃないの
 勝てない相手にどうすれば勝てるかを、学ばせるためのチーム戦なのだから
 貴方たちも、今のうちにコンビネーションを磨いておいて損はないんじゃなくて?
 近々、実践配備することになるからね」


 いよいよか・・

 3人は傭兵としての実戦に覚悟を新たにするのだった。










第3話に続く


 



 後書き
 さて、第2章の序盤が形をようやく見えてきました。
 次回は、赤壁と弧光率いる魔王軍との戦闘に入る予定です。

 大火力GF部隊VSエースチ−ムの戦いはどうなるでしょう?
 まあ、予想を裏切れると楽しいですね〜<私が(爆)


 そして、とうとうエースの仲間入りしそうになってるダンが、一体どういう完成系に向かっているのかを披露できればいいなと思っています。

 結構、予想外の成長だと思いますのでお楽しみに〜〜〜

 では、感想待ってま〜〜〜す!!

 


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