ヴァリム内乱編
〜〜〜動乱のヴァリム〜〜〜



 第4話 サーカム家、失墜す






「閣下、ダン・ロンシュタット、ルキア・サーカム両名実家に一度戻られるようですよ」
「そう、ありがと」

 ふ〜っと、ヤスリで削った爪の粉を吹き飛ばしながら閣下と呼ばれた男は薄く笑う。

「さて、戦力増強と行きますか
 イオン、レオン付いていらっしゃい
 まずは、きな臭いサーカム家に行こうかしらねぇ」

 男は机に置いておいた鉄仮面を付けると、ちょいちょいと同じ顔をした銀髪のイオン、金髪のレオンに付いてくるように促す。
 二人は、一つ頷くとカツカツと靴音を鳴らせて歩み出す。
 そして、ほんの10数歩を歩んだところで閣下の横に並び、20歩に届く頃には閣下を置き去りにして二人は全く眼中に入らない閣下を置き去りにして行ってしまった。

 ・・・・一体どんな調整をしたのかしらドクター如月は?

 置いてけぼりを喰らった閣下は、昨日キサラギ研究所から調整を受けて戻ってきた二人が以前と変わらないことに頭を痛めずにいられなかった。






 サーカム家

「ねえ、これは一体何の冗談?」

 クラウディアに連れられたルキアは実家に帰って来ただけのつもりだが、なぜか拘束着を着せられていた。

「あら、今さらそのセリフ?
 スタンガンを当てられた時に聞きたかったわね」

 ・・・・やばい、やばい・・・
 ルキアは冷静を装いながらも背筋が凍る程の恐怖を感じてしまう。
 クラウディアはこの状況に何の疑問も持っていない。
 むしろ、この期に及んでそのセリフとばかりだ。

「ね、ねえ
 せめてこの後どうなるのかだけでも教えてくれない?
 この状況じゃ、逃げることも出来ないわけだし」

 ルキアは拘束着のせいで、ペンギンよろしくの歩幅で歩けるだけで抵抗の一つも出来ない状況で、トドメとばかりにスタンガン内蔵の首輪を付けられていた。
 抵抗や逃走した際、リモコンで瞬時に鎮圧されるという状況だ。

「そうねぇ〜、自殺しようとしない?

 ・・・・・自殺したくなるような状況に置かれてるんだあたしは・・・、は、ははは

「私は早々死ねないわよ、あなただってサーカム家がどんな状況か知ってるでしょ
 だから、話して欲しいわ
 身の振り方も考えたいし、ね」

 クラウディアは苦笑して瞳を伏せる。

「あなたが思っている以上にサーカム家は来るところまで来てるのよ
 あなたのお兄さん達は麻薬漬けで、あなた自身は兄弟を麻薬漬けにした張本人に売られちゃってるの
 よくて麻薬漬けのセックス奴隷、悪ければ・・」

「もう・・・、いいわ
 気分が悪くなってきたわ、全く何をやってるのよ兄さん達は・・・」

 自分が置かれた境遇よりも、目も当てられない兄達にルキアは涙した。

「強いわね、あなた
 でも今の世の中、幸せになれない生き方よ、あなたの生き方は」

「そうね、でも守りたいものも守れない人生なんて生きているとは言えないわ
 あなただって、家族や恋人がいればわかると思うのだけど」

「私の好きな人は、とってもしたたかよ
 私が守るまでもないわ
 私と同じになれとは言わないけど、自分が幸せになる過程に家族を巻き込めないようでは終わってるわ」

 ・・・そうなのかも知れないわね。

「でも、これが私の生き方なの
 悲惨でも、残酷でも、私の人生なの・・・
 立ち向かってみせるわ、行きましょう」

 クラウディアは一つ頷くと、歩みを進める。
 残酷な人生を受け入れて立ち向かおうだんて、物好きね。
 所詮、傲慢な貴族軍人の娘か・・・
 クラウディアは相容れないルキアを哀れと思う。






 サーカム家大広間

「ねえ、なにこの匂い」

 まるで戦場を思い起こさせるようなむせ返る硝煙と血の臭い、そして強烈な腐臭にルキアは吐きそうになる。

 クラウディアは、大広間に入る前にルキアに気づかれないように武装の点検をした。
 以前は生臭い血の臭いと腐臭そして濃厚な麻薬の煙に満たされていた廊下からは、硝煙の匂いが立ちこめていたからだ。

 何かあったのかも知れない、それもかなり大事めいた何かが・・・
 ただ疑問が残る。
 完全に没落し尽くしたサーカム家に今さらちょっかい出すことに何の意味もない。

 では、今何が起きているのか?
 それが想像できずにクラウディアは困惑していた。
 だが、それをひた隠しにしてクラウディアは大広間に続く扉を開ける。






 開け放たれた大広間
 モウモウとした黒煙が室内から一気に溢れ出してきた。
 煙に目をやられまいとクラウディアは思いっきりルキアを楯にして様子を伺う。

 二人の目に移ったのは、戦場だった。
 一人の少年が手にした鞭でサリーちゃんと呼ばれていた1トンを超える農耕馬なみの猛獣の額をかち割り、返す動作で猛獣に乗っていたサーカム家三男のクラルリッヒ・サーカムの腹を打ち付け風船でも割るかのように膨れた腹をぶちまけさせた瞬間だった。

「きゃぁぁぁ〜〜〜〜〜!!!!」

 ルキアが絶叫すると同時、間髪入れずにクラウディアはルキアを後ろから引き倒して背を低くする。
 次男のノザード・サーカムが火のついたダイナマイトを少年に向けて豆まきよろしく投げつけたからだ。

 それに反応した少年は、鞭で払いのけるのはムリと瞬時に判断し、巨大な肉塊となったサリーちゃんを事もあろうか持ち上げると、ジャイアントスイングしダイナマイトを払いのけながらノザード・サーカムに向かい投げつけた。

「うぉぉぉ〜〜!!」

 ノザード・サーカムはガタガタ震えた脚で必死に回避しようとしたが、麻薬漬けの身体が言うことを聞くわけもなくあっさりサリーちゃんの下敷きになった挙げ句、跳ね返されたダイナマイトに吹き飛ばされ影も形もなく木っ端微塵になった。






 少年

「あら、可愛い声がすると思えば早い帰宅じゃない
 ふふ、お久しぶりね」

 仮面に顔を隠した少年?
 いや、口調はオカマで、声質はだみ声でどう考えてもおっさん臭い・・・

 ダイナマイトの爆風で、黒煙が晴れてよく見ればチビで、デブで、その上仮面を被ったおっさん?が悠然とこちらを伺っていた。
 間違ってもこの手の見目麗しくない知り合いに心当たりのないクラウディアはルキアに知り合いと促す?

 対するルキアは、クラウディアの素振りに気づかずチビデブを凝視する。
 怨嗟の叫びをかみ殺し、殺意を剥き出しにしながら。

「ふふ、いいわぁ〜
 すごく、すごく素敵よ
 ふ、ふふ、ふふふ、いっちゃいそう〜〜〜」

 チビデブは身体をクネクネ震わせてもだえていた。
 あまりにおぞましいものを見たクラウディアは、遠慮なく嘔吐したが胃になにも入っていなかったので酸っぱい息を吐いた。



 と、コントしてる3人に罵声がひびく

「ファーーーーーーーーーーーク!!!!!!!!!」

 叫びと同時、6本のナイフがチビデブ目掛けて飛来する。

 そんなことお構いなしにチビデブは、クネクネしながら器用にも両手で飛んできたナイフを片っ端からつかみ取った。

 !!!!!!

 ただ者ではない!!
 いや、すでに尋常成らざる変態だ!!
 もはや、何に対する指摘なのかすらよくわからないぞ!!と言った具合だった。

 と、投擲を失敗した長男ラルトバルト・サーカムは怒りを露わにし、足下に転がる死体を蹴り飛ばす。

「あ、あのアホ楯にしたわね」

 ラルトバルトが蹴り飛ばした死体には、ヴァリス・ルクスの頭部が付いていた。
 跳ね返されたダイナマイトの爆風避けにラルトバルトが使ったのだろう、腹部から下がものの見事吹き飛んでいた。



 まさに死屍累々と言った参上を見かねたクラウディアが仲裁に入る。
 本来なら関わりたくないが、ヴァリス・ルクスを利用して破産させてやろうと思っていたクラウディアとしては、面白くないのだ。
 そして、何よりも目の前の変態をどうにかしたかった。

 平たく言えば、見るに堪えないから手段を選ばずぶっ殺したかった。
 クラウディアには、流石にそれだけの戦闘能力はないが異常事態を感じていたクラウディアは既にPFで待機していたセーラに応援要請をしていた。

 必要ならセーラは、クラウディアだけを残して建物を蜂の巣にするぐらいの腕前がある。
 下手に護衛につくよりも遙かに頼りになる配置だった。
 だから、クラウディアは堂々という。

「あなたたち、いい加減になさい
 一体何があったのかわからないけれど、仮にも将官の家を戦場にするなんて何事です!!」

 ラルトバルトはクラウディアの叫びに、始めてその存在に気づくと腰のベルトに差してあったナイフをベルトを引き抜く動作で投げつける。

 クラウディアはルキアを楯にすると、悶え狂っていたチビデブが鞭を拾い一閃してその全てをたたき落とす。
 なに、護られた???

 全くもってあの変態は理解できない?
 クラウディアの困惑が頂点に届いたときチビデブが高笑いと共に言い張る。

「あ〜はははぁ〜〜〜〜ん
 そうね〜、途中からじゃ私が一方的に悪者って事に成っちゃうわよね〜
 フフ、そのままでもいいのだけど話がややこしくなってしまうものね
 イオン、レオン」。








 

 チビデブが小指を立てながら口元を隠しながら命じた次の瞬間
 ラルトバルトが膝を屈して倒れる。

「アンタバッカでしょ、隙がおおすぎんだよ」

 ラルトバルトの背後には、気絶しない程度に電圧を抑えられたスタンガンを押し当てた金髪の少女が楽しそうに見下ろしていた。

 対して、ルキアの目の前には銀髪の少女が短刀を振り降ろし頭を垂れる。
 ビリビリ・・・
 短刀はルキアの拘束具のみを斬り絶ちルキアを解放する。

「どうぞ、お楽に」

 銀髪の少女は薄く笑うと、スタンガン内蔵の首輪をリモコン操作で外して見せた。
 クラウディアは今だその手に握られたリモコンを確認しながら微笑む少女を見る。

 少女は楽しそうに応える。

「お二人が入ってきてからずっと解除コードを解析していたんですよ
 ふふ、流石ガルスキー財団が作った電子錠は楽しめますね」

 電子錠が解除されたことはともかく、二人の少女の気配を微塵も感じなかったクラウディアは戦慄すると同時、この二人を従えるものの正体に気づき深く頭を下げる。

「これは気づきませんで・・」

お待ちなさいな、あたしの楽しみを取らないでよ」

 表情こそ見えないが、チビデブは愉快そうな声色を発しながらルキアの足下まで歩いてくる。

 近くに立つと、よりそのタッパのなさが顕著になる。
 頭のてっぺんですらルキアの胸の高さしかない。
 少年と見間違える程チビだ、120cmあるかないかと言うところだ。



「お久しぶりね、ルキア教官
 憶えてまして、侮蔑と嫌悪で見下ろしていた存在を?」

 

 ・・・・ルキアは疑問と恐怖を顔に浮かべならが記憶を紐解いていくと、ふと教官という言葉に思い起こすものがあった。

「あなた、グレ・・・
 〜〜〜
 いえ、たしかぷちデーモ・・・
 〜〜〜
 憶えているけど、名前が出てこないわ
 ごめんなさい、でもなぜこんな事を!!」

 チビデブは身をよじって悦には入る。

「あぁあぁぁ〜素晴らしいわ
 流石、責任感の強いルキア教官ねぁ〜
 そう、そう、グレムリン、ぷちデーモンで間違いないわ
 この頃は、口の悪い人達からアークデーモンなんて呼ばれてるけどね
 ふふ、自己紹介でもしておこうかしら
 私はヴァリム軍、弧光・泥門(ここう・でいもん)少将よ」

 ごくっ・・・
 少将・・・、むかしPFのパイロット候補生の教官をしていた頃は三等兵だったのに・・・

「あら、かしこまらなくて良いわよ
 私はね、ダン教官とルキア教官に出会うまで一度たりとも人間扱いされることの無かった小さな悪魔・・・
 それからも、ずっと人間扱いされることはなかったけど・・
 お陰で強くもなったし、偉くもなったわ
 全ての起源はあなたたち二人、だからとても感謝しているの」

 弧光は昔を懐かしむように淡々と語っていくが、ルキアには思い当たる節がなかった。

 なにせ、チビだし、言動が気持ち悪いし、生理的に耐えきれない顔をしていた。
 どんな顔かと言えば、直視すると途端に嘔吐できるくらい歪で潰れた気持ち悪顔をしていた。

 故に、ルキアは極力関わらないように接していたが、ダンに見た目で差別したせいで戦死させるつもりかよと罵られ顔を背けながらも他の訓練生同様分け隔て無く指導した。

 元々、ダンもルキアもPFパイロットであり教官ではなかったが、戦場で活躍し過ぎたのかその戦闘技術を生存率向上のためにPFパイロット訓練生に教えよと、後方に左遷されていた。
 ようは、頭角を現した若手への単なる嫌がらせであった。

 そんなことを思い出しながら、そういえばダンはいじめられていた弧光を捕まえてパシリにしたり、暗がりで待ち伏せさせて上官を驚かせたりとやんちゃしていた記憶を思い出す。
 その二人をルキアが諫めたり、一緒に頭を下げに行った記憶があったが、それがそれ程弧光にとって大切な思い出になるのかとルキアは疑問だった。





 と、二人が互いの世界に入っている頃

「閣下〜〜〜、このロン毛どうします〜〜
 なんか、閣下と同じでモゾモゾもだえながらファック、ファックうるさいんだけど〜」
「うるさいのはあんたよ・・
 人が折角つらい過去を思い出してハアハア言ってるのを邪魔しおって!!」

 ・・・

「閣下、始めて・・、もとい最後に人間扱いされたことにむせび泣く回想中だったのでは?」

「そんなもん、一瞬で終わったわよ
 2時間ドラマの冒頭1秒ぐらいしか、思い出す内容がないんですからね!!
 ああ、ムカツク人生だわ
 そんなバカさっさと殺しなさいよ」

「は〜い!!」

 馬乗りになっていたレオンが、ラルトバルトの首に右手を添えた時だった。


「待って、待ちなさいよ!!」

 ルキアが叫ぶ、このままむざむざ最後の家族を殺されてなるものかと叫ぶ。

「閣下〜」

 レオンの呆れ声に、弧光もうんざりしてルキアを諫める。

「良いことルキアちゃん
 アポも取らず着たのは確かに無礼だったかも知れないわね
 でも、いきなりナイフが飛んできて、猛獣けしかけられて、挙げ句の果てにダイナマイト
 少将と知らぬとはいえ、ここまで派手に抹殺しようとして一体どんないい訳があるわけ?
 例えどんないい訳を積み重ねても、軍事裁判に掛ければ銃殺以外あり得ないわ
 これが武功を立て続けてるヴァリム軍の筆頭頭なら恩赦もあるかも知れないけど、麻薬漬けの狂犬、軍のお荷物以外の何ものでもないあなたの兄に一体どんな存在意義があって?
 生かしておく理由がないわ、例えあなたの兄弟だとしてもね」


 正論だ、ぐぅの音も出ないほど・・・
 では、どうしたら現状を変えられる?

 ルキアが青い顔をしながら思案を始めると、弧光は仕方がないと提案する。

「では、こうしましょう
 ラルトバルト准将と私の一騎打ち、私に殺される前に手傷の一つでもつけられればこれを不問としましょう
 どうかしら、分は悪いけれど破格の条件だと思わないかしら?」

 破格、だけど万が一でもないと・・・なぶり殺しにされる。
 先ほどのもの凄い戦闘を見てルキアには兄が、間違っても叶うとは思えないかった。



 だが、そんな心配どこ吹く風のバカが叫ぶ

「オレが万が一殺っちまっても不問って事だよな〜、おぉぉぉぉ〜い
 ファ〜〜ック!!
 良いぜ、今すぐやろうぜ少将閣下ーーー!!!!」

 ラルトバルトは立ち上がると、馬乗りになっていたレオンを跳ね上げ弧光に向かって走り出す。

「あらあら、愚かね〜
 無知、ここに極まりかしら?
 でも、極まった割に美しくないわ
 勝てないとわかっていて立ち向かうのと・・・
 勝てないことすらもわからず向かってくるのは・・・

 ぜ・ん・ぜ・ん・・・・ちがうじゃボケーーー!!」


 向かってくるラルトバルトは、ポケットから無針注射器を取りだし自分になにか注射する。
 それを確認しつつも弧光は、その短い歩幅からは理解できないほどの早さで突撃する。

「潰れろ、ドチビ!!」

 ラルトバルトは両手を組んで、ハンマーでも振り下ろすかのように弧光の頭上に振り下ろす。

「チビで、何が悪いのよ!!」

 ラルトバルトの振り下ろした両拳は、寸前でスライディングした弧光の頭上を通過した。

 弧光は、ラルトバルトの股下を通過する瞬間思いっきり股間に向けて頭突きを決める。

「・・・このドチビが〜〜〜」

 ・・・筋肉増強かと思ったけど、麻薬か何かで痛覚を麻痺させたみたいね。
 悶絶するかと思えば、攻撃が当たらないことに驚くラルトバルトに弧光は呆れると同時に思う。

「美しくないわね
 私も外見に自信がある方じゃないけど、魂までは穢れてない自信がある
 でも、あなたは違うじゃない
 まったく、あなたもルキアちゃんを見習えば私の部下にして上げたのに
 腐ってんじゃ無いわよ!!」


「あのアマと比べんじゃねえよ、影が薄くなるだろうが!!
 偉そうに語ってんじゃねぇ〜ぞ!!」

 御講説する弧光の脳天に今度は長い足を活かした鋭い踵落としが振り下ろされる。
 対する弧光は、振り下ろされた足首をガシッと掴む。

「攻撃が単調すぎよ、だからこうなるの・・・よ!!」

 

 ぐしゃ!!

 掴まれた足を振り払おうとしたラルトバルトは、イヤな音と同時に自由になると自分の右足に目をやる。

「おおおぉぉぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 右足の足首から先がなかった。

 流石に痛みを感じなくなったラルトバルトでも、身体が握りつぶされれば尋常ではいられない。
 ラルトバルトは叫び声を上げながら、立ち上がれない右足をジタバタして立ち上がって逃げようとし始める。

「バカでも、立ち向かっているうちが華ね
 もう、見るに堪えないわ」

 弧光はジタバタするラルトバルトの両手首を握りつぶし、足を踏みつぶし、耳、鼻をもぎ、顎を砕きながら頭皮ごと髪の毛を引きちぎった。

 途中、ルキアが絶叫するが弧光は容赦なくラルトバルトをグシャグシャに分解する。

 もはや、目が見えているだけの肉の塊を前に弧光は鉄仮面をすらして笑う。

「どうかしら、私と同じ顔になった気分は?」


 !!!!!!!!

 叫び声を上げたくても、顎は砕かれ、舌を抜かれ、声帯も傷つけられ血が噴き出す音しかしない。
 だが、あまりのおぞけにラルトバルトは最後に残っていた目を飛び出し、声なき絶叫を挙げると憤死した。

「何よ、失礼ね
 私と同じ顔になったぐらいで・・・
 さっき言ったじゃない、外見に自信がないって・・・」


 弧光はそういいながら鉄仮面をしっかりとつけ直す。








 

 それを確認した後、ルキアに向かって振りかえる。

「さあ、ルキア・・
 あらあら、長旅で疲れちゃってたのかしら・・?
 イオン、眠り姫をシャトルに丁重にお連れして
 それからレオン、アンタは館の後始末にかかりなさい
 私はめぼしいものがないか物色してるから、それが終わるまでにね」

「了解致しましたわ」
「は〜い、ってドゥームで吹き飛ばしちゃえばいいじゃん」

 めんどくさ〜いって顔のレオンに、弧光は子供をあやすように言い聞かせる。

「バカね〜、世間体を考えなさいな
 私達が軍事裁判無視して極刑くれてやるのは良いとしても、それじゃルキアちゃんの地位や名誉まで失われかねないわ
 私達はあくまでルキアちゃんを私達の部隊の勧誘に来ただけ、玄関で話してたらルキアちゃんの帰郷祝いをしようとしていた爆弾魔が思わず屋敷ごと吹き飛ばしちゃった
 そういうシナリオで良いわよね、ガルスキーの使いさん?」

 なにも無かったかのように、逃げるにも、身を隠すにも最適な場所からひょっこり出てきたクラウディアは満面の笑みを浮かべ頷く。
 そのシナリオなら、契約者が死んでいようと、契約が完了したかどうかの確認を取りようがない。
 つまり、ヴァリスとのPF2000機購入手続きは完了したことになる。

 本当はもっと骨までしゃぶりたいところだったが、そこは裏を取った後でこの件で弧光に取り入る顔合わせが出来たと思えばそう高いものではないとクラウディアは思っていた。

「ガルスキー財団の販売員、クラウディア・バリシュードラと申しますわ閣下
 PFのご入り用がありましたら、いつでもお声がけ下さい
 2〜3000機まででよろしければ、即座に納品して御覧に入れますわ」

「あらそう、でも私の大隊は実験機と、GFしか扱ってないの・・・・
 誰も乗りこなせない、暴れ馬みたいなものにしか興味ないわ」

 弧光は、クラウディアの名刺を一瞥すると受け取りもせずにその場を去る。

 ・・・神佐が呼び寄せた例の将官は、彼って事ね。
 セーラの話を思い出しながらクラウディアは忙しくなると、ウキウキしながらサーカム家を後にするのだった。





 3時間後

「閣下、真っ黒クロスケになっちゃってますよ〜〜〜」

 レオンは弧光を指さすとキャッキャと大笑いする。

「アンタね〜、もう少し敬えないのかしらこれでもアンタの上司なのよ
 それも将官なのよ、ねイオン?」

 つつ〜っと流し目されたイオンは、汚物でも見下ろすかのような視線を返しながら一言。

「しゃべるな、埃が舞う」

 ・・・・・ま、期待してたつもりはないから良いんだけどね。

「これ、キレイに掃除して補完しておきなさい
 もし私が死んだら、ルキアちゃんに渡して上げなさい
 いいわね?」

 弧光は、何年も誰も入った形跡のないルキアの部屋に入り、降り積もった埃と格闘しながら、薄汚れたぬいぐるみや着せ替え人形、家族の写った写真立て、それにアルバムや日記を回収してきていた。
 生きたまま皮膚を剥ぎ取る非情な男の行動ではないわよね〜と、弧光は思い苦笑する。
 だが、それでも弧光は思うのである。



 人から人と見られなくなってから、本当の人外の化け物になってしまった今だからこそ思う事があると・・・

 それは、人は外見や性能ではないのだと・・・
 人とは、その魂なのだと・・・


 魂には、肉体を凌駕する強さを与える力がある。
 少なくとも、数多の迫害を乗り越え人外に身をやつしてなおここにある魂は、生まれ持って唯一変わらなかった自分の誇りであると弧光は考える。

 だからこそ、弧光は立ち向かい上を目指そうとするものや、生き残ろうともがく人間を愛する。
 それはその魂が自分と同じものだから、人かどうかもわからぬ自分がまだ人であると感じさせてくれるものからだ。

 

 逆に、困難から逃げ、命乞いしかしないものなどは、自分の人である証を否定されているかのように感じるが故に、弧光はその存在を憂慮できないのである。
 故に、容赦なくその命や存在を奪うことを躊躇わない。
 我ながら極端だと思いながらも、これが私の生きる道と薄く笑う。






 サーカム家を出て高速シャトルに乗った3人

「イオン、ルキアちゃんは起きていて?」
「いえ、疲労とショックが重なっていますので3日は起きないかと」
「そう、まあ悲劇の上塗りをすることもないわね
 レオン、景気よくやりなさい」
「は〜い、ポチッとな」

 気軽に押したレオンの起爆スイッチは、大広間を吹き飛ばし、その内一つの柱がサーカム家の武器庫もとい火薬庫の方に景気よく倒れ、次の瞬間大爆発を起こした。
 それこそ、屋敷そのものを吹き飛ばしかねないほどの大爆発を起こした。

「一体どのぐらい爆薬をため込んでたのかしら?」

 思いの外強烈な衝撃に、弧光はレオンに問いただす。

「プラスチック爆弾だけでも1トンぐらい、その他作りかけの爆弾がかなりあったよ
 少なく見積もっても2トン、おおけりゃ5トンぐらいあったかもね〜〜〜」
「全部吹き飛ばしたのレオン?」
「もちの、ロ〜〜ン

 レオンはパチパチと手を叩いて喜ぶが、弧光とイオンは頭痛を感じたのか眉間に手をやる。

「まあ、やってしまったことは仕方がないわね
 バカみたいに爆薬ため込んでたみたいだし、特にどうと言うこともないでしょう」

 ふぅ〜、とため息一つ付いた弧光は気分を入れ替え言う。

「じゃ、次はロンシュタット家に行きましょうかね」
「は〜い」
「了解です」



 弧光、それは一度接触させた電極を離す際に流れる放電の光(アーク放電)の意・・・
 この意から小さい体躯にも関わらず、弧光・泥門はアーク・デーモンと皮肉めいて呼ばれている。
 が、今日その逆鱗に触れたと言うだけの理由でサーカム邸は爆破された挙げ句、唯一生き残ったルキアは拉致されたという、不名誉な風潮がヴァリム軍高官の耳にすることになった。
 それは弧光がアークデーモン(大悪魔)から、魔王と呼ばれる切っ掛けの序曲でもあった。








第5話に続く




 



 後書き
 ようやく上がった・・・。
 途中、PF、GFのイラストを描き始めるも恥ずかしながらデザインと設定の差異が発覚し、途中で投げた(滝汗)


 気分を変えようと、新キャラの二人
 如月・威隠(キサラギ・イオン)、如月・鈴音(キサラギ・レオン)のイラストを描くも、久しぶりの全身イラストだったせいか・・・・、無性にバランスが悪くただ今停滞中・・・
 始めに服と、顔を別個に描き始めたせいで何度修正してもうまく行かない(号泣)

 まあ、9回書き直して7〜8割うまくいったのでこっちは近いうちに書き上げるつもりだ。
 こうご期待せよ、なんてね(笑)


 さて、みっともないいい訳は\(・_\)そのはなしは(/_・)/こっちに置いといて

 ようやく出せたデーモン○暮閣下<マテ!!
 もとい、泥門弧光閣下!!
 容姿が悪魔で、性格がねじ曲がっていて、その他今後出てくるあらゆる面で変態であるというどうしようもない変態キャラ・・・
 崩しすぎて単なるネタだったのだが、その思考と信念を武信と激突させて見たいと思いヒーローに昇進!!
 多分、10階級特進で死んで生き返るを2〜3回繰り返すぐらい無茶なキャラです。
 この後、その無茶ぶりが顕著になり楽しいドタバタと、壊れてしまった人間の非常さがシリアスな人間模様を展開します。

 ちなみに、今回ヴァリムストーリーなのでダンとルキアもいつものヤラレ役を脱却する予定です。
 まあ、その前にしごかれて強くなっていただきますが・・・(苦笑)


 次回は、ダン編か、紫夢羅編か、どっちにしようか現在決めかねていたり・・・

 では、また感想お待ちしております〜〜〜!!


 


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