機甲兵団J−PHOENIX  プロジェクトBT

フィナーレ








 

最終ターン:フィナーレ


アルサレア


 ケイオウはヴァリムEに増援を要請すると、アルサレアAに移動した。

 神佐が他の場所に現れた、そう報告があったためにアルサレアは奪取した基地に兵力を残し、今回投入された大部分の新兵をアルサレア要塞に帰還させることにしたのだった。

 アルサレアAでケイオウを待っていたのは、すこやかな笑顔のクレアと怒りすらも伺えるフェンナだった。

「ケイオウ特尉、お話があるのを覚えていますね」

 こめかみに怒りマークが付いた笑顔でフェンナが言った。

「どうしたの、フェンナ?」

 様子が変なのを察したクレアが言った。

「姉さんは黙っててください、ケイオウ特尉ちょっと来てください」

 ケイオウの手を引ってフェンナが移動しようとしたが、クレアがケイオウの和服の袖を引っ張った。

「私には話せない話ですか?」

「はぁ〜〜、しょーもない話ですよ。フェンナ様、大丈夫ですからクレア様も含めて話しましょう」

 そう言うとケイオウはラウンジに入っていった。

 そこには待っていましたとばかりにゴールドがいた。

 もちろん、人払いは既に出来ていた。

「さて、めんどくさいから、ちゃっちゃとすませますか」

 そう言うとケイオウがフェンナを見た。

 ホントにここでその話をするつもりなの?フェンナの顔にはそう書いてあったが、ケイオウはもちろんという顔で話し始めた。

「まず、ゴールドが俺の内縁の妻といった話だが、内縁ってなんだ?内縁ってのは両方の親族に認められることを差してるんだぞ、俺にもこいつにも肉親なんていないぞ」

「でも、法律上夫婦と認められていない人のことだったそう言うじゃないですか。そんなの屁理屈です。ケイオウ特尉は姉さんのことどう思ってるんですか?それをはっきり彼女に言わないのは卑怯です!!」

 フェンナは大爆発だったが、両隣のクレアとゴールドはくすくす笑っていた。

「イヤ、実は既に二人とも俺の気持ちは知ってるんだ」

「ええ!!」

 フェンナは交互に二人を見た。

「私が告白したら、惚れた女がいるからすまん、そう言ってあっさり切り捨てられました。まあ、諦めてはいませんけどね」

 ゴールドは笑顔で言ってのけた。

「私もケイオウがゴールドと、どういうことがあったかは大体聞いています。それにケイオウはゴールドのことを、姉やお母さんのような女性だって言っていました。だから私は、ケイオウと私の心を信用します」

 フェンナは呆然となりつつ、ゴールドを見た。

「あんなこと言われてますけど、良いんですか?」

「ええ、私もケイオウのことをやんちゃな弟とか、息子とか、恋人とか、夫のように思っていますから、お互い様です」

 ゴールドはぬけぬけと言ってのけた。

 フェンナは思った。

 自分もこんな風に堂々と思っていることを言えたら良いなとか、意中の人からケイオウのように真っ赤になりながらでも良いから好きと言って欲しいと思った。

「ま、そう言うことだ。さて、話もカタが付いたことだし俺は帰還の準備に行くとしますか」

 そう言って立ち上がろうとするケイオウをゴールドが止めた。

「せっかく時間が取れるのですから、お邪魔虫が出て行きますわ。よろしいですね」

 ゴールドはクレアとケイオウに微笑みかけた。

「有り難う、ゴールド」

 ゴールドはフェンナの手を取って、部屋から出て行こうとしてクレアの髪の毛に手を入れた。

「私をお友達と認めてくれたお礼ですわ。それと、あなたも退出しましょうね」

 そう言うとクレアの髪に付いていた、超小型盗聴器をゴールドが握りつぶした。

 盗聴しているのはもちろんソフィアだった。

 クレアがソフィアの病室にお見舞いに来た時、彼女に付けられたものだった。

 そして、期せずして二人きっりになった二人は、愛を語り合った。

 なんてことにはならず、雰囲気に耐えきれなくなったケイオウが一方的に早口でしゃべりまくり、クレアがそれに相づちを打ち続けた。

 どうにもケイオウはシリアス専門で、ラブコメには似合わなかった。

 しかし、それはそれである。

 二人は十分に楽しい時間を過ごしたのであった。


 そんなことになっているとは知らず、心配したソフィアは病室から抜け出して二人の元に駆けつけようとしたが、ソナタに見事に阻まれたのであった。


「良かったんですか、二人っきりにして?」

「好き合っている二人の恋路をジャマにする人は、馬に蹴られちゃいなさいってね。良いんですよ、私は側にいられるだけで満足ですから、もっともケイオウの左に立つことは許しませんけど」

「・・・・・・、右なら良いの?」

「ええ」

 変わった人、でもいい人かも。

 それがフェンナのゴールドに対する印象だった。




 その頃ルーキー達は集まって雑談していた。

「どうだったよ特尉は、無茶ばかりされて生きた心地がしなかったろ」

 そう言ったのは、ジェークだった。

 弱い自分に気づいたジェークは、立ち直れてはいなかった。

 それでも、みんなに阻害されたくない一心で気丈にふるまっていた。

「ホントにな、何時だって機体が動かなくなってもうダメだって心底思う時まで、助けてくれないんだから生きた心地がしなかったよ。でも、心のどこかでは俺は死なないって確信があったよ」

「特尉のジンクスですか?」

 ハクトが言った。

「いや、それもあるけど。なんかそんな気になっちゃうんだよ、一緒に居れば分かるよ」

 それを聞いたジェークはすかさず言った。

「じゃあ、今度は俺が特尉のパートナーになる。興味あるからな」

 それを聞いたタケルが吹き出した。

「な、なんだよ」

「やめとけ、特尉のそばがもっとも死に近い場所だ。例え戦場以外でも容赦なく叩きのめされたからな。良い勉強になったけど、胸をえぐられるようだったよ」

「一体何があったんだ?」

 マガミの問いにタケルは真剣な顔で答えた。

「俺は英雄に憧れていた、だから特尉のそばにいてラッキーだと思っていた。でも、現実の英雄は思っているほどいいもんじゃなかった。とても俺に勤まるとは思えなかったよ、悲しみに身を引き裂かれ、葛藤と戦って、それでも俺たちの道しるべにならなきゃいけない。チヤホヤされるのなんて、ぜんぜん割に合わないことだった。お前らも現実の英雄が映画の中の英雄と同じだと思わない方が良いぜ」

 3人は押し黙った。

 特にジェークの顔には悲壮感が漂っていた。

「現実はかくも過酷なり、か。だが、それが分かっただけでも良い経験だったな。うらやましい限りだ。俺など奇襲中に呼び戻されて、結局昇進すら出来なかったからな」

「確かに、その点タケルは凄いですね」

 ハクトがそう言った

「でも、楽じゃなかったぞ。本当に何度死を覚悟したか分かったもんじゃない」

「でも、強くなった気がするだろ?」

 マガミの問いにタケルはうなずいた。

「確かにな、・・・どうしたジェーク」

「う、う、う、うぅぅぅ」

 ジェークは泣くのを必死に堪えていた。

 みんな勇敢に戦っていた。

 それなのに自分は部隊を率いていたにもかかわらず、2度も惨敗した。

 2度目などは、勇敢とは対極なほど無様さだった。

 どうして自分だけこんなに違うのか、そう考えたら泣けてきたのだった。

「ほっといてくれ!!」

 ジェークは走り去ろうとしたが、マガミに蹴り倒された。

「臆病で何が悪い!!戦いの中で無謀なことをして命を散らすことの方が愚かしい、そうだろ間違ってるかよ、なあおい!!」

 マガミだけが知っていた。

 ジェークが無様に撤退していたことを。

 Jフェニックスの知り合いのパイロットが教えてくれたのだった。

 マガミに胸ぐらを掴まれ立ち上がらされたジュークはうなだれていた。

 マガミの言っていることは正しかったが、それでも勇敢に戦ってきたマガミに言われるのはシャクだった。

 そのせいか、ジェークはマガミをにらみ返した。

 ハクトはオロオロしかできなかった。

 だが、タケルは笑った。

 以前に似たようなことがあったからだ。

「なにが、なにが、おかしいんだよーーーーーーーー!!!!!」

 ジェークはあらん限りの声で叫んだ。


「俺もお前みたいになったんだよ、特尉と一緒の時な。え〜と、あの時は確かこう言われたっけかな。

 お前が歩む道は、お前を高める道だ。
 だけどそれに迷ったならば力を抜いて良いんだ、迷い悩み疑うくらいなら
 真っ直ぐ突き進め、自信を持て!!
 それでも答えがでないときは、感情のままに動けばいい
 それがそのとき出来る最前の選択だ。
 今できることを知るのは、己を知ることとしれ。
 今己に出来ることを精一杯せよ、それをしないうちにあきらめるな!!
 ・・・・・・、お前の人生だ、好きにするがいいさ

 こんな感じだったかな」


 タケルはケイオウのモノマネをした。

 所々、微妙に違ったり足りなかったりは御愛嬌だった。

「「熱いセリフだな」」

 マガミとハクトは呆然としていった。

「今の俺に何が出来る、部下の信頼を失い、操縦桿もまともに握れない俺に!!」

 ジェークは既にPFを動かすことが出来なくなっていた。

 それが、ジェークの心を折った原因だった。

「みんな怖いんだよ、死ぬのは怖いんだよ。
 それに、殺すのだって辛いんだよ。
 特尉もヒルツ先輩も、俺も他のみんなだってそうなんだよ。
 自分だけが怖いなんて思うなよ、特別強い人はいるけど、心はそんなに変わらないんだよ。
 俺は特尉と一緒にいてそれに気づいた。
 どうしたら一番良いのか俺には分からなかった。
 だから、だから俺は、特尉が歩く道をついて行こうと思った。
 それが、あの時俺が出した選択だ。
 何もかも自分で決めて、自分で背負わなくても良いんだ、俺たちがいる、特尉だっている、辛いなら誰かに頼ったていい。
 その代わり、どうなろうと頼ったのは自分だってことを忘れちゃダメだ。
 そうしないと、弱いままで立ち上がれなくなっちまう!!」

 タケルは笑顔を作ろうとして、苦笑いした。

 ジェークはうらやましかった。

 見知ったタケルが急に大きく見えたからだ。

「うわわわーーーーー!!」

 ジェークはマガミに蹴りを入れると、ハクトとタケルに殴りかかった。

 怒りや嫉妬からではなかった。

 ただ気に入らなかった、馬鹿みたいに悩んでいた自分が、相談できないことを人のせいにしていた弱い自分が、ただ気に入らなかった。

 だからスッキリしたかった。

 自分が殴りかかれば、みんなが自分を殴る理由ができる。

 とりあえず、大げんかした後謝ればいい。

 そう思ったジェークは、胸に溜まっていたものをコブシに乗せて誰彼かまわず殴りかかった。

 マガミは、馬鹿な奴、そう思いながらつき合うことにした。

 ハクトは良くわかっていなかったが、理不尽さに切れたのか荒い言葉使いになり容赦なく反撃した。

 タケルに至っては、うまくいったらしいそう確信して喜んで殴られ殴り返した。


 その後、ジェークは見事復活したが、こっぴどくクランにお説教された。

 正座だった上に、たまにシュキが足を触ってくれたお陰で、お説教は途中からシュキも加え4時間もかかった。
















 

ヴァリム


 神佐がヴァリムに帰還したため、シャドーは何事もなかったようにヴァリム軍に復帰した。

 結局神佐の狙いは、シャドーが考えていたとおり部下の選別だった。

 しかし、神佐がいなくなったことによりその危機は去ったが、アルサレア、ミラムーンが兵力を減らしたことにより進軍する意味も失われようとしていた。

 シャドーは敢えて進軍することを止めた。

 じきにまた、ごたごたに巻き込まれる予感があったからだ。

 それまで、ゆっくりしていよう。

 シャドーはそう思うことにした。




 ニコラスは執務室で震えていた。

「な、なぜだーーーーー!!」

 ニコラスには降格命令が来ていた。

 それも伍長にだった。

 理由は大尉としての責務を果たしていないだった。

 無能者にはふさわしい階級を、そう命令書には書いてあった。




 ショウは大いにとまどっていた。

 なににか?

 それはカノンの作るものが旨く感じるようになったことだった。

 そして、普通の料理も以前と変わらず同じ味がし、旨く感じたのだった。

 まあ、カノンの作った驚異の野菜スープが苦もなく飲めるのは良いことだったが、本当にそれで良かったのか判断しかねるものがあった。

「お兄さん、美味しい?」

 向かい側のテーブルから可愛らしい顔で問いかけるカノンを見てショウは複雑だった。

 全てがうまくいっているようで、実は取り返しが付かないところまでいってしまっているのではないかと。

「ああ、不思議なぐらいに美味しいよ」

「わー、良かった。明日はもっと美味しいの作るからね」

 カノンは厨房に消えていった。

 Bエリアは、停戦状態になっていて仕事の無くなったカノンは、ショウ専用のコックになっていた。

 専用の理由は、敢えて問うまい。

 とにかく、含むところがあるもののショウとカノンは幸せだった。















 

ミラムーン


 ミラムーンAでは、ディックとジークその他の基地のもの達が集まっていた。

 ディックから今後のミラムーンの身の振り方と、Bエリアからの撤退(最低限の兵力を残した上で)の指示があった。

 ジークは会議中ため息をつきまくっていた。

 自分がゴールドと離れなければこんなことにならなかったかも、そんなことをずっと考えていた。

 他のものも、似たり寄ったりだった。

「て、てめえら、それでも軍人か!!
 うだうだ、自分のことばっかり考えてんじゃねえ!!
 てめえらがそうやって、いかに自分が、苦しんだとか、悩んだとか、傷ついたとか、考えて後悔して楽しんだってなんにもなんねえぞ!!」

「誰が楽しむだって、楽しいはず無いだろ!!」

「楽しいから飽きもせずに、何度でも何時までも後悔してんだろうが!!違うというのなら、行動で示せよ!!そら、どうしたボンクラ共!!」

 ジークを含めた誰もが頭に来たが、言い返せなかった。

 そしてジークは決断した。

「俺たちは軍人だ、だから戦争を早く終わらせるんだ。その後で特尉を殺る。そうすればゴールド特佐は返ってくる。簡単なことじゃないか、さあ一旦ミラムーン返って戦争の準備だ、急ぐぞ!!」

 方向性が完全失われていた。

 余りにもとんでもない発言だったが、とりあえずゴールド奪還の一つの案として認められたのか、そこにいたものがわらわらと出て行った。

 残ったのはディックだけだった。

「目的のためになら手段を選ばず、また手段のためならば目的を・・・・。ふう、まあ死んだ目してるあいつら見るよりは退屈しないか。これで、良かったんですよね」

 ディックは胸ポケットから1枚の写真を出して言った。

 その写真にはゴールドが写っていた。

 カインが生前撮ったあの写真だった。

 ここにもカインの生きた証を、それとは知らずに大事に持ち歩くものがいたのだった。











プロジェクトBT特典SS 完!!


 


後書き

 冒頭でも書いたが、良くもまあこんな無茶な企画&SSをやったものだと今でもビックリする。
 なお、ここで戦死しなかったキャラは今後のSSにもちょこちょこ顔を見せるので、覚えて頂けると嬉しい限りです!!

 あと、感想など頂けると大変嬉しいです!!

 


 管理人より

 踊る風さんより、以前企画されてメールで配信されたプロジェクトBTのSSをご投稿頂きました!

 最近の投稿作品にも結構出ているので、是非よく読んでおくべきです!

 特に「極光の不死鳥」にも結構関わってくるので……(フェンナ&ゴールドとか)

 

 しかしアレは…………クスハドリンク?(爆)

 


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