ショートストーリー
〜障害を阻む一閃〜
アルサレア戦役
終戦直後
掃討戦の末期
アルサレアとヴァリムの国境に差し掛かった所に、ガラクタとなり果てたPFの残骸の中にたった1機のPFが混じっていた。
今はもう、アルサレアの掃討戦も終わりなのか、哨戒中のPFもほとんど姿を見なくなった頃だ。
そして、PFの残骸に身を隠す彼の名は紫夢羅・麒麟児(しむら・きりんじ)、ヴァリム軍大将にしてアルサレア戦役中アルサレア要塞の北門をこじ開けさせたデュークリッター(槍騎士団)を指揮していた「漢」だ。
もっとも、アルサレア要塞に侵入したはいいが、即座にエメラルドグリーンのカラーリングが成されたJフェニックスたった1機に押し返されてしまった部隊の隊長でもある。
もっとも麒麟児に、腕がないのでもなく、指揮官としての才能がないわけでもない。
もし彼が持ち合わせていなかったものがあるとするならば、それは母国と呼べる国だった。
そう、麒麟児はヴァリムに国を奪われた一人であり、彼の側近以外の者達は戦う信念に乏しい、ただの戦争狂だった。
腕こそ立つが一度くずれれば脆い彼らを率いてアルサレア要塞までたどり着いたのは大したものだろう。
だが、やはりくずれれば脆かった。
押し返された途端、戦争狂の部下は蜘蛛の子を散らす用に離散した。
その様子を見た麒麟児は側近中の側近である雷電・震右エ門(らいでん・しんえもん)准将に側近達を全て預け、彼は一人殿(しんがり)として残ったのだ。
そして、名だたるアルサレアの将官やら佐官と命がけで戦い、生きて戦場のゴミ捨て場までたどり着いたのである。
「ようやくヴァリム領か、・・・・・・
しかし、最後までヴァリムは儂にとって敵となるようだな・・・
いい加減出てこい神佐!!」
「あら、気づいていたの?
さすが、一国丸ごと売り払った男ね、剛胆ね
さて、命乞いでもする?
それとも、私と交渉でもするかしら?」
ヴァリム軍フォルセア・エヴァ神佐は不適な笑みを浮かべながら、まるで歌うようにそう言う。
「今の儂には売る国もなければ、価値を見いださせる人もいない
のこるはこの命のみ・・・
そして、貴様は儂を助ける気がない以上・・・、もはやこれしかあるまい!!」
麒麟児は残骸と成り下がったPFのバッテリーを引っこ抜いては、愛機:紫金号(しこんごう)にチャージしていたので補給を受けることなく、どうにかここまで戻って来れたが・・・・
PFの残骸に隠れねばならぬ程、紫金号は傷つき今にも力尽きようとしていた。
だが、それを全て承知で麒麟児は右手に持つ槍を振るう。

「満身創痍、と言ったところかしら?
情けないわね、ヴァリムの大将ともあろう男も所詮この程度なのかしら?
自慢のその槍術も、所詮槍そのものに頼ったお遊戯!!!!」
大振りを繰り返していた麒麟児の槍をひょいひょい交していた神佐だったが、麒麟児が急に一回転した所をカタールで貫こうとしたその時・・・
いきなり、槍の石突き(槍の一番下の部分)が伸びて来て麒麟児の回転とあい舞って遠心力を持った一撃をオードリーの後頭部にモロに直撃した。
「確かに、武器の性能に頼っているかもしれんな
だが、いかに性能が良くても使いこなせねば意味がない」
そう言い放つ麒麟児は、前のめりにずっこけたオードリーに追撃しようと踏み出そうとするが動けなかった。
戦闘が出来る状態でない紫金号の足は電気系統のエラーが出ていた。
「あまり、舐めるんじゃないわよ!!
とっとと、神殺槍を置いて死になさい
この死に損ないがーーーーーー!!!」
神佐はHMの力で強化されているのをいいことに、無茶苦茶に斬りかかってきた。
「神殺槍、また古い呼び名を知っているな・・
さすが、出来損ないな事はある」
!!
「随分、不快なことを喋る口ね
どこから仕入れた情報か知らないけれど、やはりあなたは死ぬ運命にあるわ
そして、死体は神殺槍を振るえないだろうから私がもらってあげるわ
ふふ、真価を発揮させられないあなたの代りに私が役立ててあげるわ
神殺槍:ロンギヌスの力をね」
「戯けめ!!
だから貴様は出来損ないなのだ!!
この槍は、ロンギヌスではないぞ
そして、ロンギヌスの名を軽々しく口にする貴様程度の頭では
触れることすらかなわんだろうさ」
麒麟児は動けない足でなお戦う為に腰を落とし、右手に持つ槍を構える。
「負け惜しみを!!
それが神殺槍:ロンギヌスでないというのなら、神殺槍:ロンギヌスは今どこにあるというの!!」
あれなくしてはアルサレアから脱出することは無理だったろう。
そう確信した神佐は、麒麟児が動けないのをいいことに慎重を期して槍の間合いの外からレーザーアローを連射してきた。
「小物が・・・」
このままではすぐさま蜂の巣と判断した麒麟児はHMを発動すると同時、フルブーストでオードリーとの間合いを一瞬で詰める。
その瞬間にも、致命傷となるような一撃が神佐から繰り出されるが、麒麟児は左手のパイルバンガーを楯に猛突進してついにゼロ距離まで間合いを詰める。

「つくづく哀れな女だな、自分の常識を他人に押しつけるなど言語道断!!
冥土の見上げに刻むがいい、これがお前の捜していたものだ」
麒麟児はそう言うと左腕のパイルバンガーを付きだした。
「まさか、パイルの代りにロンギヌスを仕込んでいたというの!!」
「阻むもの、万難を排する力
それこそがこの槍の真価
神殺槍の名はもう古い、この槍の名は武帝(たけみかど)
万難を排す軍神の槍の力とくと刻むがよい!!
武帝、対要塞破壊形態
さあ、とくと味わえ亜光速の斥力フィールド砲を!!」

パイルバンガーの先端から光が溢れるが、それはビームの類ではない。
麒麟児の言うことが正しいのならば、それは斥力によってはじき返されたそこにあった光だ。
そう、予想したフォルセア神佐は笑みを浮かべる。
斥力フィールド砲・・・、予想外にも程があるわね。
不適な笑顔を見せながら次の瞬間消し飛んだ。

光も熱量も、分子間の結合すらも引っぺがす最大出力の斥力フィールドの直撃により、オードリーの上半身は光の粒子に変換しそうなほどに崩壊し、宙に舞いながら爆発した。
「おわったか・・・
呆気ないものだな・・・
とはいえ・・・切り札を使えばどうなるか知っていたはずだというのに我ながら無責任な話だ」
斥力そのものを発生させているのは、神殺槍もとい武帝であり、パイルバンガー正確にはリニアアクセルバンガーは武帝を亜光速で撃ち出しているに過ぎない。
要するに、槍を発射してしまったのだ。
そして、当然戻ってくるようなことがない以上、自分で回収せねばならなかった。
だが、動けないPFではそれも叶わない。
だから、麒麟児は敢えてアルサレアに向って武帝を撃ち出した。
ありったけのエネルギーと詰んだ武帝は、そう簡単に誰かの手には渡らないと知っていたからだ。
ヴァリム方面に撃ち出さなかったのは、自らの祖国を奪った者達に万が一奪われるようなことがあった時、占領された祖国をその力で蹂躙されない為であった。
そして、視界も定かにならぬ眼で麒麟児はつぶやく。
「・・・・武帝だけでも、馬鹿丸に届いて欲しいものだな・・・」
そこまで言って麒麟児は意識を失った。
別に、限界に達していたのはPFだけではない。
丸1日以上、不眠不休で名だたる歴戦の猛者と命がけの戦いをしてきたのだ。
体力など気合いで補っていただけに過ぎず、空腹と脱水を意志で押さえつけ続けた麒麟児ではあったが、ここに来て完全燃焼すると誰にも看取られることなく、静かにその生涯に幕を閉じたのである。
後書き
まずは、3周年おめでとう御座います!!
ホントはイラストだけでの4コママンガ風に仕上げて終わろうと思ったのだが、オチがない!!
その上、やはり説明がないとわかりにくいというので、即興で書いてみました。
ちなみに、3枚目のイラストは馬鹿丸の熾灼凰鳳旋のボツになったラフイラストだったのを、急遽カラーリングしたものです。
なので、このストーリーもメチャメチャ即興だったりします。
まあ、何で死んだか定かではなかった麒麟児の死がこんな形だったということが書けて良かったかな。
しかし、描いてみて思ったがHMの光って難しい。
あんまり光らせると、PFが見えなくなるし(滝汗)
まあ、あんまり記念ものっぱくありませんが、
イヤなことは光になるぐらいにぶっ飛ばして前に進もう
と、いうのが今回の投稿の趣旨だと思ってくださいな。
では、今後も開業に向けて急がしい身ではありますが、頑張って投稿していきたいと思います。
みなさま、お付き合いの程をよろしくお願いします。
PS,もし、今回のイラストが欲しい方がいましたら、WRFの感想スレッドにでも何枚目が欲しいとか書き込んでください。
オリジナルはもう少しデカイ奴があるので、それを配信します。
管理人より
踊る風さんよりご投稿頂きました!
やはりフォルセアはこういう時に便利……(笑)
それにしても、そういう使い方がありましたか。使い方次第ではかなり強力ですね。