お読みの前に

この作品はタカラから発売されております、Jフェニックスコバルト小隊編を基に作られたものですが、いくつかの部分にIFやオリジナルがある程度含まれております。

勝手ですが作者の実力不足と思ってください。







 

機甲兵団Jフェニックス裏史実INコバルト

機甲兵団Jフェニックスコバルト小隊 前夜祭







 

 アルサレア帝国:ランバート邸


 ジータは両手で持った刀を正眼に構えなおした。目の前に居る死合の相手は腕力、敏捷性、技術の全てにおいて自分が劣っていることが解っていたからだ。

(右、いやっ!正面!くそっ!どこから来る?)

 それだけでは無い。彼は士官学校では確かに好成績を修めてはいたが実戦は次の派遣先が初陣だった。

(相変わらず隙が無い…)

「どうした!来ないのか!ならばこちらから行くぞ!」

 彼の養父であるキルマ・ランバートは叫ぶと刀を鞘に収め一気に駆け出した。

(ハッ、早い!くそ!どうすれ…)

 その時、彼の頭に数年前に袂を分かれた兄の言葉が出てきた。そして声に出しながら彼も駆け出した。


―自分の信じた道はただ突き進むのみ!―


「もう迷わない!正面から!」

 そして激突、

ガキィン!…クルクルクル

 ジータの渾身の一撃よりもキルマの一撃が上だったようだ。







 

「腕を上げたな!」

「父上こそ。こんな時間まで稽古をありがとうございます!」

 キルマは嬉しそうに養子であるジータに声をかけた。

 事の発端はジータが夕食の後にキルマに剣術の稽古を頼んだことである。

 しかし、キルマは養子の戦い方、気迫に疑問をもっていた。

 ジータの答えにキルマは少し神妙な顔つきになって聞きかえす。

「Gエリアに派遣されるそうだな…」

 ジータはこの時初めて養父の珍しく暗い顔を観た。

「Gエリアの司令はお前の…」

「見くびらないで下さい!確かに私とあいつは血がつながっています!ですが、兄弟だからこそ、過ちは片方が止めるべきです!」

 キルマのつぶやきにジータは言い返していた。この時、キルマは驚いた。

(どうやら、ワシの思い違いか、ククッ。拾った時はどうなるのやらと思ったが強く育ったな…)

「分かった、そこまで言うのならワシからは何もいう事は無い。ただこれだけは忘れるな」

 そしていつもの威厳のある顔に戻り言った。

いいか!目に見えること全てが真実ではない!人は皆それぞれの信念で動いている、物事をさまざまな所からよく見、自分の為すべきことを為せ!」

 その叫びにジータは圧倒されつつも不意に刀を持ち立ち上がった。

「心得ました!では、もう一度手合わせ願います!」

 キルマも刀を持ち立った。

「いいだろう!」

 その日、ランバート邸の照明はずっと点いていた。


















 

 アルサレア帝国イズミ邸武道場


 「はっ!たぁ!せぃ!ちょぁ〜!」

 イズミ邸(敷地面積推定800坪)の一角にある武道場(敷地面積125坪)に一人、リンナは薙刀を振るっていた。

「てぃ!はぁー!とおぅ!ほぁーーー!」

 念のため言っておくが掛け声である。断じて寝言で奇声を放っているわけでは無い

「ふぅぉぉぉぉーーーーーー」

 リンナは薙刀の演舞を終えると道場の壁の隅に向かって歩き出した。

 そして高級な木材の壁の中でなぜか不自然にも人型に隆起している場所の前で立ち止まる

「お母様!そこで一体何をしていらっしゃるんですの!」

 イキナリ壁に向かって怒鳴った。

 おそらくは壁と同じ木目の描かれている布を使っているのであろう。

 人でいう顔の部分の目のところに穴が開いている。

 言うも間でも無くのぞきとしかいえないのだが…

 しかし、その隆起物は答えずにじっとしていた。

「何か用があるのではないのですか!とうにばれているのですから出てきてください!」

 リンナはそう言うと人の体で言う首の部分に薙刀の刃をあてた。

 仮に居たとしても親に刃物を向けるのは不味くないか?

「もしかして…ばれてたの?」

「とうにばれていましたわ…」

 しかし、リンナの母ことリンママ(略しています)は全然反省した素振りを見せない。

 むしろ、怒りかかっているリンナを面白がっている素振りすら見受けられる。

「だって〜、リンナちゃん明日に初陣で戦場に行くのでしょう?この前お見合いした…なんだっけ?あの名家の…まぁ、いいわ。あの人とどうなったのか知りたくて」

「あんな軟弱者!あんな人を伴侶としてはわが家に相応しくありませんわ!」

「で〜も〜、私なんてリンナちゃんと同じ歳でライバル達と激戦の末に結婚したのよ〜。リンナちゃんもはやく〜」

 ついにリンナはキレた。

「お母様!いいかげんにしてくださいまし!明日の出陣はアルサレアの命運が掛かってるのですわ!私は今しばらくは結婚する気はありません!伴侶を見つけるのが目的ではありませんのよ!」

「そ〜お〜?でもイイ人を見つけたら速攻で言ってね。サーチ&デストロイよ!」

 そう言ってリンママは道場から出て行ったのだった。

 一人残ったリンナは考えた。

(お母様もきっと明日の出陣について心配してくださっているのですわ…心配要りませんわ!必ず生き残って…)

 その瞬間、母が言った−イイ人―という単語が出てきてしまい顔を赤らめてしまった。

(こっ、こんなことで悩むなんて―――!この戦いはこの国の興廃が掛かっているのに!でも…いい人がいたら…)

 ちなみにこのあとずっとリンナはまだ見ぬ伴侶とアルサレアの命運について交互に考えながら朝まで悩んでいた。


 グレンリーダー…こんなのをコバルト小隊に入れていいのか?


















 

 アルサレア帝国首都リスボーン宅


「行くのかい?何で!せっかく退役したのに!」

 クリスは夫であるオスコットに泣き叫ぶかのように言った。

「まぁいいじゃねぇか。今回のバイト料さぁ、破格なんだぜ?」

 オスコットは短くなったタバコを灰皿に押し付けると新たなタバコを取り出した。

「それに、ミレイには良い学校に行って欲しいしさぁ。良いんじゃない?」

 そう言って口から紫煙を吐き出した。見事なワッカが浮いていく。

 オスコットのあまりにお気楽な態度にケイトは沈み込みながら言った。

「私は今のままで…勇敢な夫よりも今のお気楽な貴方の方が良いのよ!」

 妻の悲痛な叫びにさすがに罪悪感が出てきたのか、オスコットもテンションが下がった声で言った。

 今回の出兵は昔の後輩からの頼みでもある。

―雛鳥たちが飛び立つのを手伝って欲しい―

 である。

 それに…

「すまねぇ…でもな、今回は頼む!確かにサラリーマン稼業も悪くないと思う。けどよ…今回は別だ。あんな戦争はごめんなんだ!だから、防ぐ為にも行かせてくれ!」

 プロポーズの時以来めったに見られなかった夫の真剣な表情にクリスは覚悟を決めたのかどこからともなく火打石を取り出した。そして、それを打つと静かな声で言った。

「分かったわ。もう行かないでは言わない…だから帰ってきてね。ミレイにも、うまく言っておくから」

 妻の決意を聞いたオスコットは荷物をとると玄関に出て行きながら静かに、そして力強く言った。

「まぁ、しっかり稼いでくるさ〜」

 オスコットはそのまま走り去っていった。

 こうしてパートタイマー傭兵・オスコット・リスボーンは出撃したのだった。
















 

 アルサレア軍第二演習場


「ムラキ教官!第1小隊、全候補生集合しました!」

「同じく第2小隊、前候補生集合しました」

「そうか、これより最終演習を行なう!全機、搭乗後に起動!各員の配置につけ」

 ムラキは自分の受け持ちのパイロット候補生に叫ぶと自分の愛機に乗った。

(やれやれ、戦争が終わったと思ったらこれか!やつらは何考えてやがる!)

 心の中でヴァリムに文句を言っていると候補生たちから通信が入ってきた。

「教官!第1小隊、配置完了!」

「第2小隊、配置完了!指示を!」

 ムラキは自分の予想を上回る練度を得ていた候補生に驚愕しつつ開始の号令を出そうとした

「よし!戦…」

 候補生の一声が号令を遮った。

「教官!」

 ムラキは正直驚いた。両隊の候補生が一斉に通信をONにしたからである。この時ムラキは一部の生徒に気付いた。

 不安な顔をしている。

(こいつら、まさか!)

 ムラキの勘は的中だった。



「教官!死なないで下さいよ」

「おれら、まだ雛鳥と同じなんですよ」

「飛び方しか教わってないんです!降り方も教えてもらう必要があるんです」

「出陣の祝い会を用意しているんですよ!帰還祝いもさせてください」

「俺も連れてってください!」



 怒号のような発言にムラキは面食らった。彼は"自分の指導が厳しすぎるのでは"や"生徒のためになっているのか"など悩んでいた。

 しかし、この様子である。

 彼の杞憂であったと言うべきであろう。

 呆気にとられていたムラキであるが顔を引き締めると叫んだ。

「お前らの言いたいことはよく分かった。俺も恥ずかしながら感激している…だが!演習中に勝手な通信はするなといっただろう!演習を開始しろ!」

 いかに嬉しかろうと自分の講義である。ムラキはあえて心を鬼にして怒鳴った。

 しかし、

(お前ら…帰還祝い楽しみにしてるぞ!)
















 

 アルサレア要塞作戦会議室


「クリスティーン曹長!これは一体どういうことだ!」

 アルサレア軍第1特務大隊指揮官はランブルから受け取った書類を目にした瞬間に頭に血が上ってしまった。

 しかし、ランブルはだからどうしたと言わんばかりに答えていた。

「敵は全滅させた。特に問題は無いだろう?」

 事実、書類にも敵の全滅とかかれていた。

 しかし指揮官が怒り出したことは別の欄である。

「問題だと…ふざけるな!友軍の被害が80パーセント!その内の65パーセントは貴官が原因なんだぞ!

書類にはヤシャが2体、ヌエ2体、イリア1機、ロキ2機、ヴェタール1機、さらに新型のキシンが4体撃破と書かれていた。

 ランブルの小隊はというと新兵が3人とランブルの組み合わせである。

 文句無しの結果だ。

 だが、3人の新兵の搭乗していたJファー3機はおろか、援軍に駆けつけた1個小隊も壊滅的被害と判断する程の被害が出たのだ。





 

「ふん!俺は前に出るなと言った。だが、あいつらは無視して追撃に走りやがった。後は勝手に俺の射線に入っただけだ」

 いつもならば軽く注意ですます指揮官であったが、ランブルの態度が気に入らなかったのか遂にキレた。

「分かった…貴様に新しい任務だ!至急Gエリアに行け!部隊は自分で集めろ!以上だ!さっさと行け」









 

 ランブルは正直、仲間など不要と思っていた。

 ―隊長!逃げてください!―

 前大戦時、彼の部隊は破竹の勢いで敵を殲滅していた。

 そしてそれは味方からとても頼られ、敵から恐れられる英雄だった。

 しかし、その一方で彼を妬む者も現われた。

 その一人である高級将校は彼らを捨て駒として激戦地に派遣した。







 

 敵地で孤立し、苦戦の末に退路を見つけはした。

 しかし、それでも敵の数は友軍の数倍も残っている。

―隊長は生き延びてください!−

―先に逝ってます、俺らの仇はとってください!−

 彼の部下はそう言って玉砕、中隊のうちランブルを含む1個小隊が彼らの犠牲のもとで帰還に成功した。

 だが、結局は先の准将の謀略で彼らの隊は解散させられてしまった。


―もう、誰も失う気は無い!―


 彼が味方が前に出た時に撃つ理由。

 それは自分が撃てば誰も自分の前には立たなくなり、そうすれば真っ先に敵の標的になるのは自分であり、結果的に部下の生存率が上がると考えているからだ。

 現に前面に出た部下を撃ちはするが、コクピットや足回りは狙わないようにしている。

 自分勝手かもしれないが「死なれるより恨まれる方がマシ」という考えであった。








 

 ランブルは一人で行こうと考えていたので部屋を出るとそのまま格納庫に向かった。

 しかし、格納庫には前大戦時の彼の部下が待っていた。

「隊長!行くんならおれらもいきまっせ」

「隊長の部下やれんのは俺らぐらいっすよ」

 不意にランブルは目頭が熱くなった気がした。そして、いつもの仏頂面で命令を下した。

「ランブルスナイパー小隊、出撃!」
















 

 アルサレア帝国第2演習場


 今現在、第2演習場ではスティールレイン隊が砲撃演習を行なっていた。

「目標地点、D-24、G-38!うてぇぇぇぇぇい!!!!」

 瞬間、スティールレイン中隊の砲戦型PFから無数の砲弾、ロケット弾、レーザー光が発射されていた。

「弾着かくに――――んゾォォォォイイイ!よぉぉぉーーーし!成功ゾー―――イイイ!次は…」

 少なくともギブソンに過去の哀愁などは見当たらないようである。

「たーーーーすけてぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 ただギブソンにより射撃の的役を命じられたセイバーの絶叫が木霊していた。


 …合掌




















 

 アルサレア帝国首都


 アルサレア首都オルフェンの中央大通りは膨大な数の人で賑わっている。

 その中に二人の青年がいた。

 一人は長身のブロンドの青年。愛嬌のある笑顔を出しながら隣の男と話し込んでいる。

 彼は言うまでも無くキースだ。

 もう一人は長髪で女性のように整った顔立ち、そして全身を隠すようなファッションの男性。

 彼らは何をしていたかと言うと単純である。

 ナンパだ。

「なぁ、キース君。さっきから貴公は何をしているんだ」

「お前…人の話を聞いてなかったろ。ナンパだ、ナンパ!」

 あろうことか隣の男はキースがナンパをしていた事にに気付かなかったようだ。

 呆れたようにキースは言い返す。

「なぁ、お前も誰かに声かけろよ。あの子なんかイイんじゃない?」

 男は生涯で愛すべきと決めた人がいたため、この手のことには興味はあまり無いのだが、親友の頼みを断ることも無く付き合っていた。

「分かった、あの子にする」

 そう言いながら綺麗な緑の髪に薔薇(?)の花を乗せている少女のところに向って行った。

 その少女を見たキースは瞬時に叫んでいた。

「ばっ、馬鹿!その子は!」

「お嬢さん、一緒に昼食でもいかがですか?」

 キースの叫びも虚しく彼は緑髪の少女に声をかけていた。

 声をかけられた少女も急な事と見知った顔に驚きの声を出すが、隣の男性を見てすぐに平静を取り戻した。

「えっ、えっーーーー!あの、その…?ってキース先輩じゃないですかぁ〜」

「やっ、やぁサリアちゃん。買い物?」

 キースは額に脂汗を流しつつ極めて冷静そうに話し掛けた。

「キース君、知り合いなのか?」

「悪い!先に帰っててくれ!」

 そう言うとキースはサリアをつれてそのまま彼のところから一気に走り去っていった。



 

 路地裏

「キースせんぱ〜い、いったいどうしたんですかぁ?こんな所に連れ込むと投稿できなく無くなっちゃいますよぉ?って言うか〜、先輩って明日出撃だから要塞で待機のはず〜?」

 そうである。

 キースは待機命令が出ているにもかかわらず勝手に抜け出して友人とナンパに走っていたのである。

 …よくクビにならんな?

 事態を重くみたキースは強引に話を変えることにした。

「ところでサリアちゃん?その手にもってるのは何?」

「あっ!これですかぁ〜」

 サリアの右手に持っていたもの。それは胴着であった。

「アイリせんぱいの実家の道場に通っているんですよ」

「あそこかよ!!」



 キースが驚くのも無理はない。

 一度そこで稽古に参加したのだが数日間、筋肉痛に悩まされるほど内容がハードだったのだ。(実際はアイリが練習メニューをいじった)

「でも、せんぱ〜い。みんないい人でしたよ。それに練習もそんなにきつくは無かったですし…ただ、何人かの方々がたくさん包帯を巻いていたんですけどぉ〜」

「ばっ、馬鹿な!あのマッチョどもに一体なにがあったんだよ…」

 キースの驚愕は次の話で明かされるだろう…

 もっとも本人は永久に解らないであろうが…














 

 アルサレア軍防衛本部元帥室前



 

「あ〜ら、アイリちゃん!待機命令が出てるのにそんな所で何してるのかなぁ〜」

「そっちこそフェンナ。もうすぐ今年の予算会議じゃなかったっけ〜〜」



「「ふふふふふふふふふふ……」」



 この時、たまたま通りかかった女性の新兵は二人の引きつった笑いを見て恐怖におののいて逃げ出した。

 そして後に彼女はこう語る

―――二人の鬼が笑っていました―――――――

 以後、彼女は二人の笑いがトラウマになり苦しむこととなる…本編に関係はないのだが…



 

 話を戻すが、フェンナとアイリ、この二人は確かに親友である。

 しかしその傍らでグレンリーダー争奪戦も展開しているのはアルサレア軍の兵士全てが知るところであった。(4名ほどの例外はいるが)



 

「ところでアイリちゃん、その手に持ってるのはなにかなぁ〜」


 ぎくっ!

「やっ!やだなぁ〜ただのお菓子よ!お!か!し!」

「そうなの…じゃあ〜調理室にあったこれは、な〜に〜」

 フェンナの右手に隠されていた物。

 それは第1研究所製「サチコ印の惚れ薬」であった

「ちっ、ばれたか!惜しかったのに〜くやし〜」

「アイリちゃん、卑怯ですよ!そんな事すると神佐見たくなっちゃいますよ」

確かにフォルセア化したら恐いな…



 フェンナが怒りながら一気に詰め寄ってきた。

 しかし、これがフェンナの最大のミスであった。

 胸のポケットに有る物をアイリは見逃さない。

「いやぁ〜ごめんごめん…って、フェンナこそ!そのポケットに入れてあるのは何よ!」

「そ、それは…栄養剤よ、ただの栄養剤に決まってるじゃない」

 アイリは不適に笑うとポケットから何かを取り出す。

「そぉ…じゃあ聞くけど、こんなのが貴方の部屋にあったんだけど。これは何かなぁ〜」

 アイリの右手に有った物、それはキサラギ研究所製「惚れ薬」と書かれたラベルであった。



 

 両者の目に殺気が走る。

「あんたも違反してるでしょ!」

「おたがいさまです!」



「「ふふふふふふふふふふ……………」」



 先ほど通りかかった新兵にトラウマを植え付けた引きつった笑いをしながら二人は互いに牽制し合っていた。

 が、ついにアイリが口を開いた

「まぁ、今回はお互い様ということね…それより例のミッションはどうなった?」

「ダメです…こちらも全滅してしまったわ」

 ミッション…それはアイリの実家の道場の精鋭とフェンナの護衛隊によるLIPS小隊暗殺作戦だった

「みんな、「金の破壊神だぁーーー」や「藍の悪魔がぁー―」ってうなされてたわ…」

「そうですか…こちらも似たような状況です…」

 二人の顔は青ざめていたしかし

「でも、今度こそあいつらに邪魔はさせないわ!」

「あの人は絶対に渡さない!」



 この瞬間ではあるが二人の親友度は一気に極限まで上がった。しかし…



 

((そしてこの子より先にあの人と………))



―――――ニヤリ――――――



「あぁーー!、フェンナ、また隊長のことで勝手な想像してたなぁ〜」

「そういうアイリちゃんこそ!取らぬ狸の皮算用という言葉知ってますか?」

 …少なくともこの二人がこの場所で1時間以上は言い争ってるなと通りかかる人は全員で思っていた。


















 

 ザーリトン戦区ガトランド



「ちび!調子こいてんじゃねぇーぞ!」

「ガキはお家でままのミルクでも飲んで寝てな」

「ガキがPFに乗り腐りやがって!」

 30代の兵士はこれから自分たちの小隊長となる少女に口々に罵倒の言葉を浴びせていた。

 しかし、部下(予定)に罵倒されていた少女、マコトも言い返していた。

「おじちゃんたち!ヴァリムの悪党共の前に血祭りにしよっか?」

「なんだと!このガキ!」



 

 ことの発端は彼ら30代兵士`Sが自分たちの新しい上官が女姓だと聴いて喜んでいた。

 しかし、実際に来たのは新兵にしか見えない少女。

 彼らは自分たちが馬鹿にされていると思い彼女に向かって愚痴をこぼした。

 結果、強気のマコトと親父`Sのけんかが始まったというわけである。



 

「オレたちはなぁー!ガキはガキらしく家に帰れってんだよ!死にたいのか?」

「うるさいなぁー!僕は忙しいんだ!文句だったら後にして」

 おそらくではあるが30代の兵士Aは自分の娘と同じぐらいの歳からマコトのことを本気で心配しているようだった。

 事実、最初のうちはケンカしていた30代`Sだが話しているうちに子供、それも10代前半の者を前線に出すという事実に愕然として彼女を死なせたくないという考えが出てきていた。

 しかし、そのような事実が彼らに苛立ちを生ませ結果として接し方がケンカ腰になってしまっていた。





 

「いいか!子供はまだ家に居て親と一緒に居なきゃならんのだ!親を悲しませたくないだろ!」

「いいかげんにしときなさい!大の大人がみっともない。」

 30代`Sとマコトの口論に強引に割り込んできた者、それはチェンナだった。

「まったく…、この子の実力はあたしが保障するよ!なんたってこの前までチーム組んでたんだから。文句ある!」

 チェンナの迫力に恐怖を感じたのか30代`Sは口々に言っていた。

「いえ!無いであります」

「姐さんの言うことなら問題はないっす!」

「姐さん!了解であります!」





 

 なぜ彼らがこんなにもチェンナに敬意を表しているか。ことは1年前のアルサレア戦役にさかのぼる。

 彼女の所属する小隊を含む特務中隊が戦線で猛威を振っている「緑の魔牛」と称されるPFを殲滅するために出撃した時だった。

 この時、チェンナ機は整備不良のため出撃を見合わせていた。

 それは彼女にとっては幸運であり不運だった。

 出撃した特務中隊はクラン少尉以外の全てが撃破されてしまったのだ。

 命からがら撤退したクラン少尉だったが災難はまだ続いていた。

 敵の2個小隊が追撃に当たり、また彼女のPFは右腕は脱落し左手もすでに稼動不能の状態だった、さらにブースターも片方は完全に焼け落ちていて動いているのが不思議な状態である。



 だが、彼女は助かった。

 チェンナが単機で救援に駆けつけたのだ。

 チェンナ機は整備不良のため出撃を見合わせていたのだが味方のピンチと聞き性能が80%以下の状態で駆けつけた。

 戦いは戦闘ではなく狩りの様な物だった。

 彼女の機体は唯一使用可能の武器である大鎌で次々に敵を撃破し、たった1機で1個中隊を壊滅させるという偉業の戦果を立てた。





 それ以来、味方兵士から「一緒に戦えば戦死しない女神」、「砂漠の天使」などと呼ばれ信頼と尊敬されるようになった。


「だ〜か〜ら〜!姐さんはやめい!!」

 そう言うと、チェンナは去っていった。残されたマコトと30代`Sは

「すまん、言い過ぎた」

「悪い、娘とかぶっちまって…」

「実力疑って悪かったな」

「僕の方こそ...少し調子に乗りすぎた。おじちゃんたち、これからもよろしく!」

さすがチェンナ効果と言うのか、すでに4人は仲直りをしていた。






 

 そしてその様子をチェンナと地区司令官が見守っていた。

「うまく言ったようですね、司令」

「うむ、これなら何の問題もあるまい。」

 4人を小隊として推薦したのはチェンナであった。

「マコトは腕も指揮も次代をになう才能を持っています。ですが、いささか自己中心的な面もあります。ですから、荒療治かもしれませんが小隊長の任が最善でしょう」

「うむ。」

 

ジリジリジリッー―――――!



 不意にスクランブルのベルが鳴った。

「司令!第2強襲小隊でます!」

 チェンナは司令の出撃命令を聞かずに駆け出していた。そして愛機のPFに乗ると格納庫を出て接敵地点に駆け出していった。





 

「大空を舞う翼持つ者達よ!我に力を!」

 チェンナ機のPFが鎌を振った後に3体のPFの残骸が出来ていた。

「マヌ―ル族が受けた恐怖!貴様らにも味合わせてあげる!」



 今日もチェンナは戦う…滅ぼされた同族の仇のために…
















 

 ヴァリム領ガルスキー生物化学第1研究所



「HAHAHAHAHAHAHAHA!!!!!!」

「HA!HA!HA!HA!」

「GOO――――――DOOOMA――――――N」



培養液カプセルを開けた途端に中のグッドマン達は叫びを上げていた。

「なんだって上の連中はこんな物作るんだよ…」

 研究所クローン部門主任ベイオ・バイオはグッドマンの群れを見た瞬間思った。

(こいつら…能力はともかく精神的な攻撃力は高すぎる…)

 しかし、研究員たちの誤算があった。



「HAHAHAHAHAHAHAHA!!!!!!」

「HA!HA!HA!HA!」

「GOO――――――DOOOMA――――――N」



 箱詰めにして送ろうにも五月蝿すぎる。

 研究員の中にはあまりの精神的苦痛に倒れる者も出始めていた

「頼む…こいつら、どうにか…して…くれ…」

 ついに、所員の半数が失神する始末に発展してしまった。

 結局、輸送が困難と言うこともありグッドマンがGエリアに送られるのは極小数であった。

 しかし、もしも大量輸送が可能だったならばヴァリムが勝ったかも知れないと一部の専門家は言う…











 

 ヴァリム軍防衛省ビル



「サーディン少尉。本日付で貴君を機動大隊東方軍所属とする」

「了解!我が王家復興のための活躍の場の提供、誠に感謝する」

 上司である大隊長の転属命令にサーディンは偉そうな返答をしていた。

 彼の上司である隊長はもちろん、部隊内でもサーディンは嫌われており、この転属命令は部隊の願いがかなった様な物だった。



(こいつ…自分が左遷されたことに気付かないのか?)



 完全に気付いていないだろう…

 上司はそんな考えを顔に出さず小声、だが聞こえるように言った。

「そういえば、Gエリアはだれも統治してないんだったな…」

 彼が瞬きをしている内にサーディンは部屋を出て駆け出していた。

(馬鹿だ…こいつ正真正銘の馬鹿だ)

 上司は去っていった部下を全然名残惜しくないような目で見送った。







 

 ヴァリム首都中央広場


(ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、ふっ…待ちに待ったこの時が来た!)

 サーディンは歩きながら考えていた。

(このような下賎な輩どもの下に使えるのも、もうすぐおわりだ)

 サーディンは想像していた。

 自分が玉座に座り大衆を見下している図。

 そしてアルサレア、ヴァリム、ミラムーンを掌握している図を。



聞け皆の者!私はサーディン王家初代国王サーディン!我と共に栄光を掴みたい者は申し上げよ!!!」



 しかし誰も反応しなかった。

 そりゃ、昼間からこんなことを言っている奴に誰が近づこうものか?

 周りは無視に決め込んでいた。

「ママ、あの人へ―ン」

「しっ、見ちゃいけません」

 否、一部から馬鹿にされていた。
















 

 ヴァリム領ガルスキー生物化学第2研究所



「うひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」

「うひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」

 ここではグッドマンタイプの指揮官となるクローンを作っていた。

「うひゃひゃひゃひゃひゃ!!!うひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」

「うひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」

 この笑いは研究所所長モア・イ・ヅーラと指揮官機初号機プライスの笑い声だった。

 ちなみに二人共モアイ面である。

「「うひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」」

 これ以上は作者の精神崩壊の恐れが出た為書くことは出来なかった…
















 

 ザーリトン戦区



「なぁ、姉貴」

「なに?」

 マイは目の前のJフェニックスを鎌で斬り倒しながらユイに話しかけていた。

「フェニックスってさぁ。エースクラスの専用機なんだよな?」

「フェニックスだけでなく第2世代機の大半はそうよ」

 ユイは答えながらJメガバスターに接近しヤミフブキを発射していた。

 しかし、Jメガバスターのパイロットは瞬間転移でかわし、メガバスターを発射しようとした。

 だが、メガバスターが発射される前にユイが前もって投げていた十文字大手裏剣に斬り落された。

「だよな…じゃあさ?こいつら何でこんなに弱ちぃんだ?」

「私たちよりも全ての面で劣っているからよ」



 ユイとマイ、二人が戦っているのはアルサレアでも名高い特務小隊で編成された中隊だった。

 しかし、その精鋭も双子の前ではその辺の雑魚A程度の物だった。

 戦闘開始5分で部隊は壊滅した。




 

「アルサレアにもうちっとましなのはいね―のかよ」

「ごく少数なら該当するわよ…」

 この時、ユイの顔がカラーリングで言うのならば1程度だが赤くなった。

 そして妹であるマイは見逃さなかった。

「姉貴…いま、グレンリーダーのこと考えてただろ。」

「違うわ」

 ユイは心の動揺を顔に全く出さず答えた。

 そして話題を変えるべきと判断した。

「去年戦ったでしょ、貴方と互角に戦った子」

「!!、そうか、あのバカな奴か!でもそれがどう関係あるんだ?」

「来るわよ、Gエリアに」

「!!!!」

 マイが驚くのも無理はない。アルサレア戦役中に交戦した特務隊。

 その中に一対一とはいえ自分と互角に戦ったのだ。目の前にいる雑魚よりも期待できる。

「おーし、この雑魚どもをさっさと片付けてGエリアに行こうぜ」

 マイの歓喜の叫びを聞いてユイは思った。

(何とかそらしたわ…それにしても、この情報を渡したフォルセアは何を考えているの…?)











 

 ゴスティール山脈・ふもとの森


(ナンダ、コノ胸騒ギハ?)

 森で動物を狩っていたモーリは急な胸騒ぎを感じた。

 彼、モーリはヴァリム軍所属の元中尉だった。

 元々は山に住む半獣人と呼ばれる種族で人目を避けて暮らしていたが、ヴァリムに一時期とはいえ身を寄せていた。

「マサカ…ココニ来タコトガバレタノカ?」

 彼はある日、逃亡するかのように軍を抜けたのだった。

「俺ハ…モウ…闘イタクナイ」

 彼が全戦役で戦っていた理由とは息子の病気の治療のためだ。





 ある日、彼の息子が急に苦しみだした。

 モーリは自分の知りうる全ての治療を施したが効果は上がらなかった。

 そんな中で彼らの前に一人の女性が現われる。

「その子を助けたいのね。だったら私のもとに来なさい。悪いようにしないわ」

 その場のモーリは思った。

(絶対にウソだ!)

 しかし、背に腹は変えられない。

 隣にいた妻は必死になってモ―リを止めようとしたが、彼は息子を助けることで頭が一杯だったため了承した。






 

 彼は胸騒ぎを確かめるべく住み家に向かっている。

 彼は走りながら昔の戦いを思い出した。

(ヤツラノモトデ働ク気ハ無イ)

 彼は軍に配属されると研究所に向かわされ検査をさせられた。

 そして、終わり次第すぐに激戦区に回されたのだ

 彼は息子の治療のために嫌いである戦いを必死に行なった。

 元来、彼だけでなく半獣人はその外見・運動神経とは裏腹にとても穏やかで争いを好まない性格なのである。

(マサカ、ヤツガ来テイルノカ?)





 そう予感しつつ、住処につくとそこは紅く燃え上がっていた。

 モーリは家族を助けようとして火の中に飛び込もうとした時、両脇をマッチョな男二人に押さえつけられた。

「キサマ…離セ!ハナセェェェェー―!」

 しかし、両脇の男は何も答えず押さえつける。

「ひさしぶりねぇ〜モーリ中尉」

「キサマハ…フォルセア神佐…」

 モーリの前に現われたのはヴァリム軍内で「結婚したくない女性」の半永久的1位のエヴァ・フォルセアだった

「そういえば、昔もこんな出会い方だったわねぇ〜。まぁいいわ、最初に言っておくけど貴方の家族は保護してあるわ。安心しなさい。」

「礼ヲ言ウ。デ、本題ハナンダ?」

「簡単よ。貴方の軍への復帰」

「断ル!!」

 彼は戦いたくないからこの山の中に来たのだ。

 彼はもう誰も傷つけたくないと思っている。



「クソババア」



 この時モーリは軍時代に彼を差別無く見てくれた友人が神佐に対しての感想を口にしていた。

フォルセアの額に青筋が立つ。

「いってくれるわね(怒)。やりなさい!ザク・デイモン!」

 その声に反応した両脇のマッチョ男ははさみこむようにモーリの頭に頭突きをかます。

 並みの人間よりも数倍頑丈なモーリであったが、この2撃にはきつい物があった。

「ふふふ、その2体は少し特殊でねぇ〜ジム型よりも脳が小さくて知能が低い分、頭部の骨を増やしているのよ。もう一度聞くけど、復帰しない?」

「…コト…ワ…ル」

 モーリはフェルセアの誘いに屈せず睨んでいた。フォルセア急に高笑いをするとモーリの首に首輪を着けた。

「ナンダ、コレハ」

「何ねぇ〜簡単よ。貴方に言う事を聞かせるために作った特注品ですもの」

 そう言うとフォルセアは右手に持ったスイッチを押したのだった。

「!!!"!"!」

「一言で言うならば洗脳装置ね。と言う訳で貴方にはGエリアで暴れてもらうわ。恨むんなら私以外を恨んでね」

 しかし、モーリにはフェルセアの自分勝手な声は聞こえていなかった。

 彼は薄れ行く自我を必死に保とうとしていた。

 しかし、その抵抗も空しく終わってしまった。



(俺ハ…タダ……ヘイ…ワニク……ラシタカッタダケ…ナノ…二…)



 モーリは薄れ行く意識の中でそう思っていた。
















 

 ヴァリム首都ロンシュタット邸



「若!御止めください!若にもしものことがあっては御館さまに面目が立ちません!」

「うるせぇ!俺は一人でも行く!行ってアルサレアの奴等をぶっ倒してきてやる!」

 邸宅の廊下でダンと執事頭が言い争っていた。

 アルサレア戦役の終了後、ことあるごとにダンはアルサレア領に出撃しようとしていた。

 そして、これを止めようと執事やメイドとの口論が2週間に3回の割合で起きる。

「とにかく止めて下さい!また、命令違反を行なうつもりですか!」

「かまわねぇ!行ってヴァリム魂を見せ付けてきてやる」




 処罰

 これは2週間前にダンがザーリトン戦区で偵察任務に就いていた時のことである。

 彼は偵察中に勝手にアルサレア陣地に攻撃かけたのだ。

 敵のアルサレア側はJファーD型が2機、Jキャノンが2機であるのに対してダンは新型のオニ。戦闘はダンの圧倒的優位だった。

 しかし、彼の優位はアルサレア側の援軍によってあっさり覆された。

 小隊の救援要請を受けて急行してきた1機のJフェニックスに手も足もでないまま行動不能一歩手前まで追い込まれてしまった。

 この時、フェニックスが

「無駄に命を散らす必要は無い。去れ!」

 と言って彼を見逃さなかったら間違いなく彼は死んでいただろう。



 その後、味方に回収され基地に帰還すると早速と言わんばかりに査問会が開かれた。

 この結果、オニの没収と1週間の謹慎程度の判決だった。(無論、実家が後ろで賄賂を贈っていたのは言うまでも無い)





 

「もう、謹慎は解けたんだ!オニが無くてもヤシャカスタムで出るから問題はねぇ!」

「今、アルサレアを攻める事にいかほどの意味があるのですか!まだ時期尚早です」

「だまれ、だまれ!貴様に戦いは分かるのか!」

 ダンと執事の口論はまだ続いていた。

 しかし、執事にとって願っても無い援軍が来てくれたのだった。



「ダン!あんた一人で突っ込んで蜂の巣になる気!」

「げ、ルキア」

「ルキアさま」

 ダンを押さえつけられる数少ない人物の一人、影の薄さトップと世話好き女房の異名をとるルキアである

 執事はどうにかダンの出撃を止められると思い安堵しようとしたが、ルキアの次の発言に目を皿にした。

「全く…そんなにアルサレアと戦いたいんならベリウムのとこに行ったら?そこならアルサレアに攻めたがってる奴がゴロゴロしてるわよ?」

「ルッ、ルキアさ…」

「てめぇは黙ってろ!おい、ルキア!その話、もっとよく聞かせろ!」

 執事がルキアに何かを言おうとしたがダンの一喝で口を塞ぎ込んでしまった。

「そうねぇ〜、まぁ、いいわ。ベリウムが今度、上の考えに反してGエリア攻めを行なう気らしいわよ」

「なに、Gエリア?!不可侵地域じゃねぇか!」

「不可侵地域だからよ。それにあそこは地理的にも物資的にもアルサレア攻めの前線基地にもってこいだからアルサレアも必死に防衛しようとする。理解できた?」

「理屈はいい、そうと分かれば転属願い出して来てやる」

 そう言ってダンは駆け足で本部ビルに行ってしまった。

 言っとくが其処まで走っていくのはどうかと思うぞ





 

 残ったのはルキアと執事長だけだった。

 そして、さきほど黙らされた執事長はルキアに質問をしていた。

「何故に若にあのような事をお教えになったのですか?あの方は間違いなく独断専行に走りますよ?」

「いいんですよ。少しは自分の無謀さがわかれば特攻発作も治まりますし」

 そう!ダンもタケルに劣らずバカだった。それも熱血単純の生粋である。

「しかし、万が一にでも若が戦死してしまっては…」

「大丈夫ですよ。私も行きますし。」

「そうですか…若をよろしくお願いします。」

 そう言って執事長はルキアの前から立ち去って行った。

 一人になってルキアは独り言のように言う。



「ほんと…私の将来のためにも戦死なんてさせる気は無いわ」



この声を聞く者は本人以外にはいなかった。


















 

 ヴァリム首都郊外墓地



――グリュウ・アインソード――

 そう刻まれた墓の前に一人の巨漢が立っていた。

 巨漢の男の名はバール。「猛牛」と称されるパイロットだ。

「久しいな。貴様の好きな酒を持ってきたわい」

 バールは右手に持っていた一升瓶のふたを開けると墓の上から中の酒を流し始めた。

「貴様が死んで…1年が過ぎた。時とは早い物だな」

 そう言ってバールは数日前に読んだ本のセリフを思い出した。


――死んだ奴に勝とうとしても一生勝てない――


 バールは思い出していた。

 気付いた時には目頭に水がくっ付いていた。

「貴様が死んだ後、わしは酒ごときに溺れてしまった…だがな、わしはあの方に会った。あの方はわしに目標と大事なモンを思い出させてくれた」

 バールは目に付いていた水を拭くとおもむろに立ち上がった。

「わしはこれからあの方と共にGエリアに行く。間違いなく戦争になるだろう。だが、その先には平和があるとわしは思う…すまんな、貴様の理想とかけ離れているだろう…だがワシはワシの信念で戦いを終わらせる。だから、ヴァリムを見守っていてくれ…」

 そう言ってバールは墓から立ち去っていった。




 

 墓地から出てきたバールを待っていたのはベリウムだった。

「用事は済んだか、バール?」

「ええ、友への報告は終わってきました」

 バールがそう言うとベリウムは墓地の近くのベンチに座った。

「分かっているな…この戦いの意味」

「分かっております。この戦いはガルスキーからのヴァリムの真なる独立を賭けた戦いですな」

「ああ」





 

 アルサレア戦役中に起きたアルサレア新首相のフェンナ・クラウゼンの議会ジャック。

 これによりヴァリムを裏でガルスキー財団が操っていた事が周知の事実となった。その影響は末端の兵士にまで及び「頑強な国風」が瓦解した。

 しかし、ベリウムはその影響でガルスキー財団の干渉が薄れると信じていた。



 だが、現実は違った。

 表向きは大規模な粛清はあったが、その対象となったのは穏健派達であった。





 

「この戦いは侵略と思われると見てもいいだろう…だが、この戦いで私らが勝てば国の主導権を取り戻せるはずだ」

「わしはベリウムさまにどこまでもついて行くつもりです」

「すまんな、バール…貴様の心の隙に付け込む様な物になってしまって」

「とんでもない!わしのような輩に声をかけてくださって感謝の極みであります」

「ふっ、貴様は自分を卑下しすぎだ。己の戦う意味すら解せぬ輩ならすぐに見限っている」

「そうですか…そろそろ時間ですな。行きましょうか」

「そうだな、我らが戦場へ」

そう言って二人は立ち上がり歩き出した。

そしてベリウムはアルサレアの方角を向いた。



(アルサレアよ…この戦い、貴様らには何の非はない。だが、我が祖国のために散ってくれ)

 二人の愛国者は戦場へと向かっていった。
















 

 アルサレア首都内大型居酒屋


「では、バカ二人の帰還と、ついでのタケル・ミラーソード大尉の昇進とコバルト隊隊長就任の祝い会のはじまり〜」

 副隊長の乾杯の声の元でその場にいたタケルと彼の部隊の同僚たちは一斉にコップの飲み物を飲み始めた。

 しかし、タケル本人の顔は少し戸惑っていた。

「どうした、タケル」

「隊長…俺なんかに隊長職が勤まるのかと思っていたんですよ。聞いた話だと部隊に来る人、全員癖があると…」

「問題はない。前大戦であいつらのまとめをやっていたんだ」

 そう言ってタケルの上官、ケン少佐は4人組の女性達を指さした。

 彼女達とはタケルと同時期に隊に入ってきた少女たちだ、しかもタケルを巡った争奪戦を今も展開している。

 だがグレンリーダー並に恋愛に疎い彼には答えを出せる展開はまだ期待出来そうに無い。




 

 それに気付いたのか4人はタケルに話し掛けてきた。

「タケル〜〜」

「タケル君、あんた〜ひっく、隊長の〜自覚ア〜る〜」

「私もタケルさんと一緒と行く〜」

「…ひっく…ひっく…」

 4人は顔が赤くなりアルコール臭かった。




 

「!!?何で酔ってんだ、お前等?!」

「酒を飲んだからに決まってるだろう?」

「さっきの変な味はこれが原因か…隊長、俺ら未成年ですよ?」

「文句は俺に言うな、」

 そう言ってタケルは呆れてしまった。

(ほんとにこの部隊は分からない事が多い…)

「お前の事だ、隊長職はいわば監督と思っているんだろう?」

「監督はともかく、責任ある立場だとは思ってるんですが」

「確かにな…だがな、覚えておけ。隊長らしく無理に肩ひじ張るな。お前なら素で行っても受け入れられるだろう」

「素って…」



 タケルは話に納得できたような出来なかったような気になった。

 ケンは呆れたような顔をしながらだったが、いつもの仏頂面で言った。

「今のまま、自然体で行ってもお前なら受け入れてもらえる…何せバカだからな

 ケンの小声の部分は聞こえなかったようだ。

「なんつー楽観的な…」

「ふっ、この部隊で…しかも俺の小隊でなじめたんだ。ここの面子の癖の強さは知ってるんだろう」

「否定できないのが悲しいです…」

 この時、ケンの喋り方はいつもと変らなかった。

 しかし、なぜかタケルは何かを感じ始めていた。



(この感じ…そうか、隊長の考えが分かった。相手がなんだろうと自分は自分のままで当たれってことか。…こんな簡単な事とは…)



「…………ふっ、ははははは!!!」

タケルは腹からこみ上げてくる笑いを抑える事が出来なかった。

「どうやら吹っ切れたようだな…問題はないだろう…だったら混ざってくるぞ」

 そう言ってケンは他の部隊員の元に行ってしまった。

 タケルは思っていた。

 今までこの部隊で戦ってきた思い出を。

(俺の目標…また増えたな…)

 そう言うとタケルはコップの中をこっそり他のグラスの中にいれジュースを入れると他の部隊員の下に向かっていった。



(俺は俺、タケル・ミラーソード以外の誰でもない。自分の歌(道)は自分で決めるんだ)



 タケル達はその日、心の底から宴会を楽しんだ。

 余談だが次の日に彼を見送りに来た人はわずか3名だった。

 他は全員、二日酔いだったと言う。
















 

 これが後にGエリア騒乱と呼ばれる戦いで勇名を轟かせる者たちの前物語である。
 これから彼らに何が待ち構えているのだろう?
 そして何を得るのだろう?
 それはまだ分からない。
 ただ言える事は一つだけある。彼らは自分の理想や信念のために戦っている、だからこの戦いの中でその理想は正しいのかどうかを考える事が出来ることだ。
 彼らの戦いは次の舞台に移ろうとしていた。









 



あとがき

 ども、神楽歌です。
 裏史実INコバルトが完成しました。
 本当はもっと早く完成するはずだったのですが、いろいろ私情がはさみこんで今ごろの完成となってしまいました(己、学校!)。
 このような駄文を最後まで読んでくださって感謝の極みです。

 この小説を書く上で私は「人気の低いバール、ベリウムを美化すると言うしょうもないコンセプトを付けてしまいました。
 その結果、真面目に書いた話とグッドマンのような手抜き同然の話に分かれてしまう有様でした。
 挙句、タケル(コバルトリーダー)の話を作ったものの何を言いたかったのか分からない文章になってしまいました(超大汗)。

 前置きは長くなりましたが本当にありがとうございました。




 ここらで登場して来たオリキャラの簡単な解説をします。


キルマ・ランバート:ジータの養父。詳しい事は分からないが剣の達人らしい。
噂ではアルサレア戦役で戦死しているらしいが、詳しい事は分からないので生きてる事にしました。


ジータの兄弟:コバ小のラストでベリウムの「弟に…」が誰か解らなかったのでジータと仮定しました。


リンナママ:リンナの母親。このキャラはリンナを最初に書いた後にT.Kさんの小説に出てきて、正直言って惚れたため勝手に使ったキャラです。
T.Kさん!誠に勝手なことをしてスイマセンでした。


クリスミレイ:オスコットの家族です。実際、名前が解らなかったので勝手に付けました。


キースと一緒にナンパしていた人:この人は…気付いた人は気付くでしょう。名前はあえて伏せておきます。


ザク=デイモン:このキャラは富士見書房より出ているLIPSの小説に出て来たジム=デイモンの発展型として登場させました。ジムだから次はザクと言う安易な発想です。


モア・イ・ヅーラ:ブライスの顔がモアイにしか見えないため製作者もきっとモアイ面という予想で考えたキャラです。ただ単にうるさいだけでした。


閃光の爪隊の女4人:一応は名前持ちのキャラです。本当はもっと登場させるはずでしたが、LIPS小隊並に変な性格とグレンリーダーラブならぬタケルラブを持っているのであれだけの登場でした。(第2のLIPS化しそうでしたので)

 もしかしたら別の裏史実に出るかもしれません(出ないことを祈る)




 

 他にも数名ほどいますが彼らは一言で言えばその辺の背景と同意語ですので勝手ながら省略します。


 最後にですが、私の構想力が低く一部史実と違う点が出てきているかもしれません。
 その点に関しましてはいろいろと聞かせていただきたいと思っています。
 このような物語を読んでくださってありがとうございました。

 


 管理人より

 神楽歌さんより新作&続編をご投稿頂きました!!

 こうしてみるとコバルトには凄まじい連中が多いかも(核爆)

 しかし、バールはこういうキャラの方があっているのかな、やっぱり(爆)<何故か感情移入しやすい
 


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