お読みになる前に
此処はアルサレアとヴァリムの国境沿いの峠。
この地で珍しい後景が起きている。
激しい爆発と閃光。
何年も昔から戦争を続けている両国の国境であるから今更珍しいとは言えない。戦っているのがグレン小隊と大部隊だという規模でも全然珍しくは無いのだ。
だったら何が珍しいのかと言うと・・・
「隊長!敵が又増えやがった!数は1個中隊、ロキとイリアがメインだ」
Jブラスターに乗ったキースが交戦中だったヴェタール改をバスターランチャーで吹き飛ばしながら叫んだ。
「分かった!アイリ、サリア!此処は俺とキースで抑える、二人は行け!」
「でも。たいちょう〜」
「ダメです!」
アシュラとカルラ8機と闘っているグレンリーダーはサリアとアイリに通信を入れた。
2人の機体の傷は深く、これ以上の戦闘は危険極まりない。
「隊長が生きて帰んなきゃダメです!帰ってフェンナに会うんでしょ!」
「俺達は問題無い!アイリこそ何か言いたい事があるんだろ!」
アイリは先の戦闘後にフェンナに話を突けると言ってのけたのだ。
失意の淵に居る彼女を立ち直らせられるのは同じ女性であるアイリぐらいと思っている。
「隊長、アンタの負けだぜ。アイリにサリアちゃん!道を作るから広げてくれ!このまま一気にアルサレアに向かうぞ!」
「そう来なくっちゃ、キース」
「了解しました、キースせんぱ〜い」
このままでは話が長くなりすぎて、撤退できずになってしまうと考えたキースは通信に割り込んだ。
彼はこれ以上の戦友を一人も失いたくないのだ。
「・・・すまない」
グレンリーダーが謝る。
「フェンナちゃんと何があったかは知らんが、俺に言うよりも彼女に言うべきだろ」
「そうだったな・・・突っ込むぞ!」
グレンリーダーが叫ぶと他の3人も答える。
「「「了解!!!」」」
今現在、グレン小隊は撤退している。
向かう所(ほぼ)敵なしのグレン小隊がである。だからと言って別に作戦が失敗したわけではない。
先ほどグレン小隊とギブソン中隊合同によるヴァリム領内のゲルノイド基地を攻撃する「鋼鉄の雨作戦」を成功させてきたばかりである。
では何故に撤退しているのかと言うとヴァリム領内から逃げるのだから当然である。
ただ、作戦立案したゴルビー参謀本部長の予想外だった事が起きた。
PFを分解して輸出入業者を経由しての入国には成功したが、出国の際に発覚してしまったのだ。
足の遅いJキャノン長距離砲撃仕様を逃がす為にグレン小隊は急遽機体を組み立てて別ルートで囮をしながら撤退していたのだ。
「目標の半数の沈黙を確認しました〜」
「このまま合流するぞ!」
サリアの報告にグレンリーダーは命令を放つ。
鋼鉄の雨作戦から修復・補給が出来ない現状では通常の6割ほどの戦闘力しか出せない。
長期戦は絶対に許されないのだ。
「隊長、緊急事態です!Aルートの部隊が壊滅しました」
アイリの報告にグレンリーダーは悔しそうに考えた。
参謀本部は戦力の低下したグレン小隊を救出する為に脱出ルートを確保すべく多数の特務隊を派遣したのだ。
その中で一番近かったAルートが壊滅したのである。
ルートが無くなった事もあるが、自分達を助けにきた部隊員達が倒れたという事を悔やんだ。
「・・・予定を変えてDルートに行くぞ」
DルートはBやCに比べて距離が遠い、しかも近くにヴァリム基地があるので敵との遭遇する量も多い。
その分、道が峠に挟まれているので一度に展開できる部隊数は少ないのだが、それでも危険な事には変りない。しかし、自分達が行けば彼等を助けられるかもしれない。
「「「了解!!!」」」
それでも3人は命令を受諾した。
自分よりも他人を優先させて大事にする隊長を気に入っていたから。
ズドォォォン!
ズブシュ!
ズダッダッダッダ!
「おい、ケン!何時撤退すんだ?!」
「さあな!グレン小隊にでも聞け!」
バスターランチャーで敵数匹を撃破しながら叫んだコウスケ・アクアウッドに両腕で持っていたロングレーザーソード(比較2倍の長さ)で敵を切り伏せたケン・サンジョウは叫び返す。
Dルートを確保すべく戦闘をしていたのは参謀本部所属第四高速特務中隊「閃光の爪隊」だった。
高い機動力からイザという時は確実に撤退できる事とグレン小隊並とはいかずとも高い戦闘を持つパイロットが多い理由でDルートを任されていた。
「アバウトですわね。もう少しハッキリとした事は言えないの?」
彼らと同じ小隊に属するシオン・フロドは呆れたように返すが、乗っているJグラップラーの機敏な動きは高速量産機「イリア」を翻弄しながら一匹一匹ずつ潰している。
「あいつ等が此処に来ないって分かれば帰っても良いらしいぞ」
ヴェタール2匹の頭部を横に薙ぐ様に切倒したケンは思い出した様に言う。
「逆に此処に来るんなら死守しろって事かよ・・・」
コウスケはキャノンでロキを撃破しながらヤレヤレとポーズを取っている。
彼等は任務第1主義の「命に代えても!」や「俺達に任せてください!」と言う様な信念は欠片ほどしか持ち合わせておらず、「強いから闘う」や「相手が気に食わんから倒す」などの軍人とは思えない様な理由などの個人理由をメインに闘っていた(それでもヴァリムとの戦争を終わらせると言う信念だけは共通で持っているが)
そんな中やりとりの中でタケルは必死に戦っていた。
「こいつで・・・トドメ!」
彼の愛機であるJファーカスタムの両腕に装備されているアサシンファング2刀流を巧みに使って正面でスマートガンを撃ちまくっているヌエに突撃。
ヌエのスマートガンとレーザーソードを装備している両腕を切り落とす。
「・・・やったか?」
タケルの確認どおり、ヌエは腕を切り落とされた事で機体制御をしているコンピューターに高い負荷がかかり沈黙した。
戦闘不能を確認したタケルは次なる標的にオードリーを決めて突撃する。
「クソババァ見たくて鬱陶しいんだよ!」
数ヶ月前にクレア・クラウゼンが死ぬキッカケになった神佐を何時か倒すと決め付けていたタケルはヤツ当たりに近い感情でメインパーツのツインバルカンを連射させる。
1発の威力は大した事のない武器だが装甲の薄いヘッドに着弾、破壊には至らないまでもカメラアイやデリケートな構造を持っているセンサー類を無力化する。
視力を失ったオードリーは一瞬だが動きをためらってしまった。
その一瞬は戦闘においては命取りになる。
「だぁぁりゃぁぁー――――!!」
アサシンファング特有の一瞬のタメの後にJファーカスタムは爆発的に加速。
その瞬間、タケルの脳裏に何か囁いてきた。
――コロセ!デストロイ!見敵必殺!キル!ダーイ!――
彼が知っている限り全ての「殺せ」と言う単語が出てきた。
そして目の前の敵を確実に殺せと言う強迫観念が生まれる。
「クソ!」
その観念を遮るように舌打ちしながら狙いをメインとレッグの付根に定めて駆ける。
アサシンファングが激突した瞬間、敵のコンピューターが機体の大破を認めて脱出ポットを射出させた。
「やったか・・・な!?」
敵パイロットが死んでいない事を確認できた時、視界に巨大なヤシャが見えた。
気付かないうちに接近されていたのだ。
とっさに判断して迎撃しようとするが、
「これじゃあ・・・当たっちまう」
迎撃できないわけではない。
ただ距離が近すぎる所為で攻撃の着弾点を調整出来ない。今攻撃すれば確実にコクピットに直撃するだろう。
また声が聞こえてきた。
――討て!殺れ!撃滅!殲滅!滅殺!――
今度は謎の声に体も反応して攻撃しようと動き出した。
生物・・・人、怪獣を問わず大抵の敵の滅す方法は昔の訓練で体に染み渡っている。
元々の目標は人外の怪物共ではあるが同じ人類を相手にした際の訓練もしてきた。
アサシンファングを構えて攻撃しようとしたが体に反して思考が拒否する。
――やったら後戻りできなくなるぞ!――
体は動こうとするが思考が拒否。この構図の影響でタケルの動きは止まってしまった。
すでにヤシャは必殺の距離まで迫っている、後はカタナを振り下ろすだけのようだ。
「・・・ちくしょう」
今の言葉が最後の言葉と思った瞬間、ヤシャが横から来た衝撃で吹き飛ばされた。
「タケル!大丈夫!?」
第4小隊隊長でタケルと同時期に入隊したエヌスがキャノンでヤシャから助けてくれたようだ。
「ああ・・・俺は大丈夫だ」
タケルは言いながら吹き飛ばされたヤシャを見た時、あってほしくない事が起きた。
ヤシャが立ち直してきたのだ。
高コストのエース機だけあって高性能であり、防御力も高いようだ。
タケルは動こうとしたが不意に考えた。
(次の攻撃にヤシャが耐えられるのか?)
立ち直して来たと言っても瀕死である。
アサシンファングの様な高威力の武器の一撃で機体が完全に崩壊する可能性がある、中のパイロットが無事と言う保障がなくなるのだ。
(どうすりゃ良いんだよ・・・教えてくれ?)
タケルが動けない事に異常を感じたエヌスは目の前のヤシャを最初に潰してからタケルを助けようと判断した。
「切り札を使う!ガンナー!」
エヌスの声と同時に後方から一機のPFが近寄ってきた。
だが、そのPFのサイズは5mと従来のPFの半分しかなく動きも少し単純に見える。
「武装リンク、開始」
エヌスのJファーの両肩のキャノンが強制排除される。
さらにガンナーと呼ばれた小型PFが変形した。
両足がパージされて両腕の先と接続、顔の部分がメインパーツに収納されて行き、人型から超砲身キャノン付きバックパックになってJファーの背中に合体。
「ツインキャノンモード起動します」
コンピュータに制御されていたJファーがエヌスに操縦権を移した。
操縦権を得たエヌスは背部に新しく接続されたキャノンの照準をヤシャに固定。
トリガーを引く。
「ツインキャノン、GO!」
エヌスの叫びと同時に2つの砲身から強化されたメガバスター、粒子砲が発射された。
元来のメガバスターは小型を念頭に設計された物だ。
つまり、大型化すれば簡単に威力が上がるのだ。(その分、消費が激しいが)
二つの閃光はヤシャを始め、その後方に居たヌエなどの複数のPFを消し去った。
こんな火力の兵器を作るのは第6研究所しかないだろう。
「これがJSPFの性能?」
エヌスは驚きながら口にした。
JSPFとは「ジョイント・スモール・パンツァー・フレーム」の略で従来のPFに合体する事で特化した性能を出す為の無人小型PFである。
第1研と7研・第2研の生き残りが基本フレームを作り、他の研究所が自分達の得意分野を付け足して完成させた兵器であった。
「って、そんな事よりタケル!どうしたの?」
「ああ・・・ちぃっと考え事知っちまっただけだ」
タケルの様子が変だった事を思い出したエヌスはタケルに聞いた。
聞かれたタケルではあったが、幻聴が聞こえるなどと他人に話して気にかけさせる訳にはいかないと理由には触れなかった。
「タケルが考え事なんて似合わないよ。何時も通りに無謀と無茶をやってくれなきゃ!」
「・・・お前。俺の事なんだと思ってやがる!」
エヌスの言葉にタケルは少し怒った。
当のエヌスはタケルが悩んでいる理由は分からないまでも、彼が自分でケリをつけたいのだと思い話をそれさせて終わらせようとしたようだ。
「まぁ、良いじゃないか」
「・・・納得できん」
まだ話が終わりそうに無いようだ。
だが実際は不真面目な会話をやっていながらも敵を撃破しているのだ。
現にタケルはヤシャの仇と言わんばかりに襲ってきたヴェタールを相手に両足とバーニアを破壊して戦闘不能に追い込んでいるし、エヌスも上空に居るカルラにツインキャノンで応戦している。
イキナリ通信が入ってきた。
「こちらグレン小隊。これより貴隊等と合流したし!」
グレン小隊から合流を伝える通信が入ったのだ。
「聞いたとおりだ!面倒だが、あの独断専行隊長の部隊を無事にアルサレアまで連れて帰るぞ、いいな!」
そしてケンからの激励だか悪口だか分からない命令が来た。
「「「「「「「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」」」」」
閃光の爪隊のPFは一気に周辺を制圧すべく攻撃を激しくした。
この戦いの結果は両部隊とも撤退に成功、閃光の爪隊にグレン小隊は共に戦死者はゼロだった。作戦の完全な成功である。
アルサレア要塞
アルサレア要塞。それはアルサレアが誇る難攻不落にして首都防衛線の中枢を担う大要塞である。と同時にアルサレア軍を統括する本部や全軍の作戦指示や立案を行なう参謀本部が置かれていた。
「以上が、今回の作戦についての詳細であります!」
その参謀本部の総大将にして「ロリコンジジィ」や「天才戦略家」などの不名誉と尊敬、両方の呼び名を持つゴルビーにケンはグレン小隊撤退支援作戦の報告を行なった。
「・・・書類の方も確認は済んだ、ご苦労だったな」
ケンの口頭報告と同時に書類を眺めたゴルビーは労いの言葉をかけて確認したと返した。
普通の隊員ならば此処で終わりである。
「んで、ヴァリムに揺さぶりかけたまでは良いけどよ。後はどうする気だ?」
先ほどまでとは違ってバリバリにタメ口になった。
ゴルビーは威厳はあるが黒い噂の所為で意外に人望は低そうである。が、階級が高い人を相手に、しかも本人を前にしてタメ口はしないと思うぞ。
「フッ、ワシが次の一手を考えていないと思ったのか?」
タメ口を言われたゴルビーであったが咎めようとせず、さらに心外と言った感じで、挙句は友人に話すよう話し出した。
この二人の仲は意外に深いものである。
ケンが高校の時である。昔の幼馴染がヴァリム国境付近で行方不明になり、その事で荒れた性格になった彼はケンカに明け暮れていた。
野生で育ったとしか言えない様な勘と高い戦闘センスを持っていた彼にチンピラや不良学生が勝てる訳も無く、無敵状態だった。
無論、友人のコウスケも止めようとしたが同じ友人のシオンも行方不明となっており、ケンを心配していたが専念する事ができなかった。
そんな有頂天になっているケンは遂に手痛い敗北を喰らった。
普段の様に町のチンピラ12人を撃退した彼の前に一人の老人が話し掛けてきた。
いや、話し掛けたよりもケンカを売ったという方が正しい。
威勢良くケンが殴りかかったが、逆に投げ飛ばされた。
さらに、「闘った後だから負けたと言いたいんじゃろ?だったら明後日に此処に来い」
と言われて立ち去った。
ケンも意外に熱い男であり、所定の場所であるアルサレア士官学校の道場に行った。
そこに立っていたのは先ほどの老人、つまりツェレンコフ・ゴルビーだった。
そこから先は言うまでも無くケンの大敗である。
畳に倒れているケンに向かってゴルビーは言った。
「力は使ってこそ意味はあるが、使う意味が正しくなければ力とは言わん。今の貴様に力は無い」
聞く人によっては意味の無い言葉だろうが、何故かケンの心には響いた。
その場でアルサレア軍に入隊すると言ってのけたぐらいなのだ。
そこから色々な事もあったが現在にいたる経緯であり、その間でお互いに無茶な要求を出し合ったりするなどがあった故にこうなったのだ。
「その様子じゃ、一気に状況を覆す策があるみたいだな」
ゴルビーのロリコン趣味と実力を疑っていないケンは気付いていた。
確かに変な趣味を持っているジジィだが腕は確かだ。
「作戦発動に多少の時間がかかってな。それまで休んでおけ」
「ヘイヘイ」
そう言ってケンは話が終わったと判断して部屋から出ていった。
廊下に出て直ぐ、ケンの報告に同伴していたタケルが呆れたように言う。
「何時もあんな感じで報告してるんですか?」
階級的に雲の上のような人物にタメ口であるのだから驚く。
タケル本人としては階級を重要視している訳ではないが、それでも常識は持っているつもりだ。
「当然だ」
「マジっすか」
タケルは観念したようだ。
本来ならば副官であるコウスケを連れてくるべきなどだろうが、将来的にタケルが指揮官になると考えているケンは代わりに連れてきたのだ。
ちなみに副官であるコウスケは、今現在デート中である(まて)
悲しい事、沈黙状態になった二人であったがケンが思い出した様に言った。
「そういや、お前戦闘中に狂ったんだってな」
ケンに狂ったと言われては絶望だ、彼の戦闘方法も特攻に近いので狂っているのだから。
「狂ったって・・・ちょっと考え事しただけですよ」
タケルに該当する事柄は一つだけ心当たりがある。
先の戦闘の際に瀕死のヤシャを相手にしたときだ。
「お前らしくないな・・・お前が物事を考える事自体が狂ってるし」
ケン・・・君はタケルをどう思ってるんだ、酷すぎると思うぞ。
この上官相手に何を言っても無駄だと思ったタケルは聞きたい事が一つだけあった事を思い出したので聞いた。
「・・・もう良いです。それより隊長に聞きたい事があるんですけど?」
「だめ」
見事に会話が成り立っていない!
しかしタケルは諦めない。
「そこを何とか!」
「告白なら勘弁」
性質の悪さはシエル級かもしれない(汗)
気を取り直してタケルは初陣の頃から胸に秘めていた事を(おい!)言った
「隊長は初めて敵を死なせっちまった時どんな感じでした?」
その言葉に少し考えた後、
「知らん。そもそも、俺は敵を倒す事はしても、殺しはしない主義なんでな」
念のために言っておきますがケンはウソを付いている訳ではない。
敵の戦闘力のみを奪うと言う某コーディネーターのキ○のような戦い方しかしていないのだ。
本来ならばグレンリーダーより多少下回る程度の実力なのだ、そのぐらいの実力が無ければグレンリーダーの替え玉(蒼い鎧編にて)など出来るわけも無い。
この戦い方の所為で少し腕の良いエース位の成果しか上げられないのだが、本人は気にしていないようだが。
「ですよね〜」
分かってはいたが、答えには全然ならない事を改めて実感しただけであった。
「今更何聞いてんだ、お前は?」
前から分かりきっていた事を不意に聞かれたケンとしては納得できないようだ。
タケルの様子が変だとエヌスから報告されていたケンは原因がそれだと思って逆に問いただした。
「そうっすね・・・この頃、戦闘中に声が聞こえるんですよ」
「どんなだ?」
タケルが少し考えてから話した内容にケンは1つの仮説は立っていたが、あくまで仮説であり、時期尚早であるので少し話を突き詰めようとする。
「殺せ・・・敵には情けをかけずに殺せって響いてくるんですよ」
言っているタケルの顔は恐怖におびえている。
誰だって謎の言葉が頭に響いてきたら怖い事この上ない。
そんな恐怖への答えをタケルは求めていた。
「タケル・・・よく聞け。お前が聞こえるのは・・・」
ケンは肝心の答えのタイミングで一区切り付け、
「昔、この地で死んで逝った他惑星からの移民達の怨念だ!」
彼は馬鹿にしているのか?
案の定、タケルは諦めた顔になり、
「もう良いッスよ。やっぱ、自分で解決しろって事でしょ」
「当然だ」
呆れたタケルにケンは締めくくった。
一気に話す事が無くなった二人だがケンが又思い出した様に言う。
「そういや整備班達が呼んでたぞ?足回りで何か言いたい事が有るようだったが」
ケンの言葉にタケルは思い当たる事が有る。
タケルの闘い方はジャンプやブースターを多用した動き回る物が多い。
着地の衝撃や跳躍時の反動などで足回りがズタボロになりやすいのだ。
だが成果もでかい。
敵には狂っているような動きに見えるのだが、敵が気付いた時には戦闘不能になっている。
一部では狂戦士とタケルの事を呼ぶ者も居る。
「怒られますか、やっぱ?」
「早く行けば少しはマシかもな」
タケルの助けを求める言葉にケンは慈悲も無く答えた。
一刻の猶予も無いと思ったタケルは走っていった。
「お前に盗み聞きの趣味が合ったとは驚きだな」
タケルが去ったのを見計らってケンは近くの自販機の影にいた人物に声をかける。
ケンの皮肉めいた言葉に悪びれたような様子も無いまま男性が出てきた。
「別に趣味じゃないさ。ただ、深刻そうな話だったんでね」
男性、グレンリーダーは簡単に説明した。
同じ参謀本部長から命令を受け取っているだけあって共同戦線も多い。
しかも学生時代の同級生だから認識が深い。
「別に関係は無いがな、そっちも何かゴタゴタしていた様だが?」
「俺の方は問題無い。ちゃんと言いたい事を言い合ったさ」
ケンの皮肉にグレンリーダーも皮肉で返す。
一瞬の無言の後にグレンリーダーは言った。
「さっきの様子だと彼は不味い事になっているようだな」
「ああ。此処まで先送りになっていたとは俺の失策だった」
グレンリーダーの指摘にケンは考えるように答える。
ケンの言う先送りとは「初めて敵を殺す」と言う事である。
現実としてはウソっぽいが、ケンと同じようにタケルも敵パイロットを殺してはいないのだ。
ケンは更に続ける。
「本来ならば初陣あたりで解決するのはずだったんだがな」
PFのパイロットだろうが戦車兵だろうが初陣の時に1つの壁に直面する。
自分以外の誰かを傷つけてしまった事に対する恐怖と後悔だ。
戦争と言う免罪符が無ければ許されない行為である、しかし戦争と言うだけで平気で許されてしまうものなのだ。
大抵のパイロットは、「開き直る」「現実から目をそむけて闘う」「仕方ないと割り切る」「何時か罪を償うと決めて闘い続ける」「軍から逃げる」など人それぞれの答えを必ず見つけるのだ。
ちなみにケンは「殺すのは嫌」と言う理由で不殺を決めていた。
「戦士としての覚悟を教えてもらってきたようだが、後一歩が踏み出せないらしい」
「こればかりは自分でしか解決できないしな」
グレンリーダーの言葉にケンは自分の無力さを痛感した。
このまま迷って行けば何時命を落とすか分からない。
今は自分たちがフォローできるが、独り立ちして指揮官という立場になったら危険である。
「だが、俺は悲観してはいないぞ」
唐突にグレンリーダーは言った。
その言葉にケンは驚きを隠せる筈も無い。
「人というのは弱いかもしれないが、弱さゆえの強さがある。彼ならば乗りこえられるはずだ」
もはやケンに言える事は何も無かった。
部下を信じられない隊長が何処に居るのか!と自分を怒ったぐらいだ。
「お前に講義されるとは夢にも思わなかった・・・」
ケンはタケルを信じる事に決めた。
タケルならば自力で乗り越えられると。そう、自分が不殺主義が正しいと信じるように。
これが某日のアルサレア要塞での出来事である。
タケルの悩みの解決は難しい物である。
そして、彼等は知らない事だがヴァリムでも似たような悩みを持っている男がいた。
いや、似てはいないかもしれない。
タケルが「不殺の狂戦士」なら、彼は「皆殺しの聖者」なのだ。
後書き
と言う訳で新作「終息の灯火」の一話です。
此処の所、ギャグ物しか書いていなかったのでシリアスに行きたいです。
結構、ハードな話になるかもしれないですが見限らないで下さい(願)
話的には「鋼鉄の雨作戦」の後あたりです。さらには世界観としては踊る風さんの状況(ケイオウの存在)など他の方のSSの世界間も入り混じってます(まて、それは著作権法違反だろ!)
次は更にハードな描写になるかもです(謝)
さて、突然ですが出演依頼です。(本当に突然)
双首蒼竜さん<ヴァイスとシリア。踊る風さん<ケイオウ。我龍さん<ジーク。
タングラムさん<レイジ。桃音さん<極光の不死鳥に登場したトキノ・モモネの両親
レビさん<レビ・プラウド
を使わせてください(祈願)
これから用事がある為に急いでやったので、誤字や説明不足の部分が多いですが(爆)、感想で思いっきり突っ込んでください
あと、変な兵器も一杯登場します(まて)
では!
設定資料集
JSPF
作者オリジナル兵器。
通常のよりも小型のPFを変形させてPFに合体させて戦闘力をアップさせる兵器です。
詳しい設定は資料集を作ります。
管理人より
神楽歌さんより新連載第1話をご投稿いただきました!!
今回は意外と重くなりそうですね……落ちるところは落ちているようですが(爆)
さて、タケルはどうなるのか……そしてカールは……