エピローグ「始まりの終わり」
「長かったな…」
「今思うと夢を観ていた気がするぜ…」
惑星Jの帝政国家アルサレアの首都「オルフェンシティ」にあるアルサレア軍統合本部の元帥室で、部屋の主である元帥ことグレンリーダーと、その手下Aのキースは3ヶ月前にあった出来事を思い出しながら言った。
回想スタート
日本列島関東圏・横浜にある基地「横浜基地」(そのまんまだな、おい!)の地下格納庫に大型輸送機が鎮座している。
その下の方で数人の人が話し込んでいた。
「じゃあ…用意は良いのね?」
「はい〜。人員は全員オッケ〜です〜」
夕子の確認にルリエルは元気に答えた。
この日は彼らにとって最も待っていた日なのだ。
惑星Jへの帰還日である。
「PFの積み込みは完了しましたわ」
PFの積み込み完了を知らせたのはゴールドだった。
彼女は大阪城攻防戦の直後に鳥取砂丘で発見されたのだ。
本人曰く
「歩いている内に気付いたら居ましたわ」
である。
かなり疑わしかったが(完全にウソにしか聞こえない)、真実を聞いても冗談ばかり(と言っても、本当に真実を語ったのだが)言うので、とりあえず無事を確認できたから結果オーライとなっていた。
「ご苦労様です〜。余った所には士翼号と蒼風を積み込んでくれたんですよね?」
帰還の際にして実験用に蒼風と士翼号(量産型)を数機ほど貰っていたのだ。
「ええ。蒼風と士翼号の併せて5機全て積み込み終わりましたわ」
「5機…ですか?」
ゴールドの報告にルリエルは疑念を感じた。
この世界に来て破壊・破棄したPFはケイオウのヘルフェニックスとゴールドカスタム、それにケンのJフェニックスとタケルのJファーカスタムである。
グレンリーダーのアームド改も破棄されたが、代わりにフェニックス・ラーが有った筈だ。
「その理由だが…」
ルリエルの横からグレンリーダーが話し掛けてきた。
その顔は疲労感が漂っており、例えて言うなら朝6時30分出発で21時帰宅の学生のようだった。
だが、その目には激しい怒りに近いものがある。
「あのPFは…今朝早くに勝手に出ていった。
アイ・シャール!リターン!
と整備スペースにデカデカと赤ペンキで書き残してな」
もはや前代未聞のPFである。
本当にPFか?と質問されたら10人中2人しかPFと答えないかもしれない。
「そうですか…それよりグレンリーダー?かなり疲れているみたいですね?」
そう言いつつもルリエルは何となくラーが原因ではないかと考えていた。
「その朴念仁が疲れているのは飲み会の所為だな…」
「3日間で昼・夜問わずに飲んでましたからね」
ルリエルの予想を破ったのはケンとタケルだった。
実はグレンリーダーは大阪城攻防戦から3日間の間に、軍上層部や政治家たちの勝利パーティーに出席していたのだ。
「アルサレアに帰ってからもアレをやるのかと思うと気が滅入るな…」
グレンリーダーは帰還後に首相「フェンナ・クラウゼン」の提案によってアルサレア軍元帥に就任する事が決まっている。
そういう事の練習もあり、また地球の政治家たちと交流を持つ事で対ヴァリム戦での援軍や支援物資の手配等で大いに役立つためと進んで参加していたのだ。
「恨むんなら…自分を恨め」
「世の中、等価の原理が働いてますからね」
ケンとタケルはあっさりトドメをさした。
その様子を見守っていたルリエルの前に、今度は疲れたキースが映った。
「キースさん?どうしたんですか〜?」
「ふっ。名誉の負傷さ」
心配そうな表情を見せるルリエルにキースはキザったらしく答えた。
しかし、その体には傷一つついていない。
一体、何処を怪我したんだろう?と考えたルリエルに答えが聞こえた。
「さっきからナンパしているみたいだが、全てはずれだそうだ」
疲労困憊中のキースを助けるように歩いていたケイオウである。
彼は律儀にもキースのナンパに付き合っていたのだ。
ケイオウ特尉もゴールドのように意外なところで合流した。
大阪城攻防戦の最中に幻獣の大群が意外な方面から接近した際に謎のPFを駆って一人で殲滅したのだ。
激しい閃光が発せられたとして地域として調査隊が同地に到着した時に彼は保護された。
本人が言うには
「面倒だったんで自爆で片付けた」
である。誰も疑いはしなかった。
実際はゴールドがジャンヌ・ア・ダルクで殲滅をしたのだが、エスバットの裏工作とゴールドの交渉力で事実は闇に封印された。
「うっ、うっ…カワイイ娘は皆で彼氏がいるってさ〜」
何故だろう?
グレンリーダーの場合は同情できたのに彼には全然同情できない。
案の定と言うか、天罰が下るようだ。
「キ〜ス〜。アンタ…帰還準備で忙しい中で何やってんのよ…」
地獄の底に住まう鬼のような声でアイリはキースに近付いた。
顔は笑ってはいるが目は笑っていない、むしろ殺気が走っている。
「ま、待て、アイリ。話せば…フゴッ」
キースが言い訳している中で不意に後ろから押された。
「キース先輩…ご免なさ〜い」
犯人はサリアだ
押されたキースはバランスを崩した。
「キース君。悪いのですが少し静かにしてくださいね」
今度はバランスを崩したキースの後頭部をシオンが掴む。
その力は強く、キースは顔を下にして地面に押さえつけられる状態になってしまった。
「一体…何、って、おい!やめてくれ!」
キースの目の前にアイリが迫っている。
既に笑いは消えて悪鬼のような表情だった。
そして…
「天チュ―――――ウ!!!!!!」
「ウガチィ!」
押さえつけられたキースの顔面にアイリのキックが決まった。
蹴り上げられる瞬間にシオンが放したので見事に空中を舞った。
遂にCBを越える連携技がサリア・シオン・アイリの間に生まれた瞬間である。
(俺…死ぬのかな?)
キースは考えながら地面に落ちた。
死にはしないが転属した方がいいんじゃないか?
「…そろそろ時間よ」
アイリ達の漫才を面白そうに見ていた夕子がようやく口にした。
「あ、スイマセンでした〜」
そう言うとサリアは倒れているキースを輸送機のゴミ箱に入れに行った。
「世話になったな。これからもがんばってくれ」
「そちらもね」
アルサレア勢の代表としてグレンリーダーが挨拶した所、夕子からも返事が来た。
お互いに短い付き合いであったが、やはり多少は友情のような物が出来ているらしい。
「マコ君も早くこっちに来れたら良いですね〜」
「まっかせなさい!幻獣何て僕がギッタンギッタンにして蹴散らすからね。傭兵殺し楽しみにしてるよ」
夕子の後方に控えていたマコトにサリアが別れを惜しげながらも(そうは見えないが)話している。
「九州奪還に向かった速水達にも伝えてくれ。勝利を!とな」
「心得ましたよ。貴官も無事に生き残ってくださいね」
速水達5121小隊達は早朝に九州奪還軍・先遣隊1万と共に九州東部に上陸したのだ。
ケイオウは後方で主力部隊の編成をしている善行に言伝を頼んでいた。
「こっちでもがんばれよ?」
「部隊に貴方の席は残しておきますからね」
タケルにコウスケとシオンが別れの挨拶をしている。
タケルも地球に残るつもりなのである。
元々は地球出身だから少し変かもしれないが、様々な思い出のある惑星Jも彼にとっては第二の故郷なのだ。
「またなタケル…」
「隊長もお元気で」
二人の会話はそれだけであった。
だが、お互いに言葉よりも態度で示す性格である以上は当たり前かもしれない。
「お元気でぇぇー―――――!」
「がんばれよォぉーーーーー!」
「さようならーーーーーー!」
そう言ってアルサレア勢は輸送機に乗り込んでいった。
そして…
「転送…開始!ポチっとな!」
夕子がスイッチを押すと輸送機の周りに粒子が漂い…
消えた…
消える直前の輸送機の中でグレンリーダーは思った。
(人としての戦いに参加させてもらって感謝する)
(ここからはグレンリーダーの回想ではなく、その後の有った事を描かせていただきます)
「行ったわね」
夕子が呟くと後ろに控えているタケル達が相槌を打つ様に言った。
「そうっすね」
「だな」
タケルの耳に聞こえない筈の声が聞こえた気がしたがバカなので気にしなかった。
さらに夕子が続ける。
「しっかし、まぁ…退屈しない連中だったわ」
その言葉にムッときたのかタケルは少し反論した。
「退屈って…研究で忙しいんじゃないですか?」
「こちらも退屈しなかったんだがな…」
ここまで来るとバカのタケルでも気付く。
タケルが後ろを振り返ると…
「何でアンタがここに居るんですか!!」
「どこだ?!」
ケンが居た。
タケルの声にケンが自分以外の侵入者を捜そうと後ろを振り向いた。
「アンタですよ、アンタ!隊長が何で此処に居るんですか?」
「何で居るんだ?」
ケンも質問で返した。
ハッキリ言って全然会話が進んでいない。
「あら?ミラーソード、あんた気付かなかったの?さっきから居たわよ?」
「…」
気付かなかった。
「輸送機に乗った後、朴念仁とコウスケに頼んでジジィに誤魔化すように言ってきた」
ジジィとは参謀本部長ゴルビーである。
彼らにとって直属の上官である人物をジジィ扱いするケンは、ゴルビーと一体どんな関係なのか?
だが、それは本編とは関係無いので無視される事になったのだ。
「な…」
唐突な事で開いた口が塞がらないタケルにケンは「安心しろ」と言わんばかりに言った。
「安心しろ…元帥の権力を信じるんだ」
そういう問題じゃないって。
ケンの残った理由に興味を持ったのか、夕子はとりあえず聞いてみようとした。
「で?何で残ったの?」
「そうッスよ。何で残ったんですか?」
その内容は衝撃的だった。
「朝に放送していた連続ドラマ小説・「遥かなる故郷・地球という名の星」のDVDが出るらしいから購入したくて残った」
ドガヴィィィーーーーーーン
タケルは謎の音を出してズッコケそうになった。
誰だって、そんな理由で残るとは思わない。
だが夕子は珍しく真面目な顔になった。
「そう…でホントの目的はタケルに付いて行くつもりでしょう?」
「まぁな。俺としても探し物が其処にいるかも知れんしな。こいつに死なれちゃ寝覚めが悪いんだ」
其処まで聞いたタケルはある事に気付いた。
――タケルに付いて行く――
その言葉の深い意味を理解しているのなら、ケンはタケルの秘密を知っている事になるのだ。
案の定、夕子が口にした。
「あ、ミラーソード。言い忘れたけどアンタが「この世界」出身じゃない事を彼に教えたから」
又もや衝撃の事実!
タケルも「この世界」出身ではなかったのだ。
別の世界の地球から、事故でこの世界の地球に来てしまったのだ。
それをケンが知っているという事を知ったタケルだが、別に気にも留めていないようだ。
「そうですか…でも隊長の探しモノって?」
「見つかったら教える…」
タケルはこれ以上は聞くつもりは無かった。
彼には分かったのだ。
(隊長も俺と同じなんだっけな)
「分かりましたよ…じゃあ、さっさとアッチの地球で用事を済ませてJに戻りますか!」
「だな…」
ケンとタケルはお互いに自分たちが信用に足る人物と判断すると無言で誓い合った。
((必ずJに戻る))
「でさぁ〜用意は済んでんだけど早くしてくんない?」
昔の漫画風の漢同士の友情シーンに興味が無い夕子は面倒くさそうに言った。
「酷いッスね」
「あの人に逆らうのはやめておけ…」
水をさされた二人は、渋々といった感じに鳳翼に乗り込むと転送機の転送台に向かった。
不意に夕子は思い出したように言った。
「さっき言い忘れたんだけどさ〜あんた達が見てた朝のドラマってアタシが脚本書いたのよね」
タケルの反応は小さいがケンは違った。
「いや…今頃言われても、どう対応したら良いか分からないんですけど」
「マジか」
彼はあの連ドラ小説が気に入っているのだ。
「でさぁ〜あの脚本なんだけどね…ミラーソード達の元居た世界の結末の1つなのよ、知ってた?」
知るわけ無いって!
って言うか、どうやって未来の出来事を調べたんだ?
と言うものの、彼女なら不可能に思えないのが恐い現実である。
「そうッスか…でも1つって事は他の可能性もあるんですよね?」
タケルも見ていた時から薄々と感じていた。
昔、自分が乗る為に訓練に励んできた目標の機体が主役のタケルの愛機であったからである。
それだけじゃない。主役の部隊の人員の性格が殆ど酷似しているのだ。
「そうね…ま、未来なんて変える気になれば簡単に変えれるもんよ」
その言葉に夕子特有のふざけた雰囲気は無く、タケルに大事な事を教える教師のような雰囲気であった。
「話はここまでっと。さて…二人共準備は良い?」
その返事は決まっている。
「いつでもいいッスよ」
「いまさら問題なんて無いがな」
その言葉に迷いは無かった。
スイッチを押しながら夕子は叫んだ。
「さぁ、地獄と悲しみの集う世界を塗り替えてきなさい」
そして…
消えた
2機の鳳凰は新たな戦場に飛び立っていった。
この後の彼らはどのような戦いを繰り広げたのかは知らない。
ただ1つ分かっていることがある。
バカが勝ち取った世界が生まれた事だ。
その世界が幸福になるか不幸になるかは分からない。
何故なら未来は過去と違って簡単に変える事が出来るから…
3ヵ月後…つまり冒頭の1時間ぐらい後
「元帥閣下、2名ほど面会が入っておりますが」
「後にしてくれ…いま少し手が離せないんだ」
キースが部屋から出ていった後、グレンリーダーは参謀本部から出された資料に目を通していた。
今から3日前にGエリアにヴァリム軍が侵攻を開始したのである。
アルサレアは防衛軍を派遣すると共に専属でヴァリム軍司令官「ベリウム」を確保する為の特務小隊を編成する事を決めたのだ。
その特務小隊「コバルト小隊」を決める権限は元帥に一任されているのだ。
彼としては士官学校出の優秀なルーキー二人にベテランパイロット一人と信頼できる隊長を一人と考えている
優秀なルーキーを入れるのは、ケンが昔言った「新しい世代」を育成する為でもある。
その二人は既に決まっており、ベテランパイロットも既に本人に了承を得ている。
だが、肝心の隊長が決まらないのだ。
(…あいつが適任なのだがな)
この時グレンリーダーは二人の人物を思い出した。
アマテラス攻防戦で大役を果たしてくれた人物だ(裏史実参照)
だが一人は宇宙でシードラボのレガルド小隊で隊長をやっている。
もう一人は…
「元帥閣下、突破されました。面会者が強引にそちらに向かいました」
「…」
グレンリーダーはその面会者に期待を持った。
彼が知っている限り、そんなバカな事をするのは二人しか思いつかない。
ガチャッ!ギィ〜
「入るぞ…」
「失礼します」
ドアが開くと同時に入室の挨拶が聞こえた。
そして入ってきたのは3ヶ月前に分かれた戦友達だった。
「帰ってきたようだな」
グレンリーダーは久しぶりに再会した友人達にようやく言えた。
二人の人物はケンとタケルである。
「アルサレアへの帰還、ご苦労だった」
その言葉に二人は珍しく敬礼で返した。
「ケン・サンジョウ少佐帰還した」
「タケル・ミラーソード中尉帰還しました」
そしてグレンリーダーは決意した。
(コバルトリーダーは彼だ)
劇終
後書き
ようやく完結しました〜(バタッ)
ここ前で書いておいて大量の謎残しまくりですが、どうしましょう?
続きを考えているのですが、完全オリジナル作品か別の作品になってしまうため書けないです(謝&悲)
気付いたでしょうがタケルはこの後、コバルトリーダーとして任命されます。
今回クロスオーバー物を書いていて分かった事ですが、
何を使うかゆっくり考えて書くべき
です。
さて、次からは短編集である裏史実を書いていこうと思ってます。
最後までフザケタ世界を見ていてくださって、ありがとうございました
そしてキャラクター提供してくださった踊る風さん・k.e.gさんありがとうございました。
管理人より
神楽歌さんよりエピローグをご投稿頂きました!!
遂に完結! そしてタケル&ケンもやるべき事をやったようで(笑)
しかしラーは絶対まともに使えない兵器ですね(爆)