名も無き兵士達の血の記憶〜アルサレア戦役〜






原案:ナイトメア
文:バーニィ




 サリア編 〜what is born of war〜


 

 グレン小隊所属、ハンマー使いのサリア・バートン。

 彼女の名前はアルサレア内ではまだあまり知られてはいないが、PF訓練所を出たてにもかかわらず、その異常なまでの戦果から有名な特務小隊“グレン小隊”に配属されると言う異例の栄転を果たし、同期のパイロット達からは憧れの眼差しで見られている人物である。

 だが、彼女に直接出会った人は決してその容姿や言葉遣いからそこまで優秀なパイロットであるとは思わないだろう。

 ある人はこう言う・・・


「サリア・バートン? あぁ・・あの子か、あの子は怖いよねぇ。PFに乗ってでっかいハンマー持って戦場駆け回るんだから」

「あぁ、サリアさん・・・・貴方はなんて美しいんだ。まるでボケの花の様だ」

「サリア・・・誰だいそれは?」

「う〜ん、一言で言うとドジな子って印象かな」


 という様に、彼女の評価は二転三転するのが常だ。色々な顔を持っている彼女だが、果たして今回の彼女はどんな顔を見せてくれるのだろうか・・・・









 

 アルサレア戦役、五日目。

 戦いの流れは少しずつではあるがアルサレアが優位になりつつあった。

 この時、サリアの所属するグレン小隊はアルサレア要塞周辺の防衛任務についていた。

 グレン小隊の隊長グレンリーダーがいまや少将の座に着いた為、そうそう最前線へは出られないのだ。

 グレンリーダーが将軍職に就いた事によりグレン小隊は特務小隊ではあるが、遊撃隊のようであったその性質が将軍自ら指揮を取る直属の親衛隊へと変わっていた。

 彼自身は後方で温々とアルサレアの仲間達に守られている自分が歯痒くて仕方がなかったが、将軍職のいまの自分に出来る事を精一杯行っているのであった。


 サリアもこのグレン小隊所属ではあったが、彼女以外のメンバー、キース・エルヴィン、アイリ・ミカムラの二人に比べれば実力は落ちる。

 それに、キース、アイリの両名だけで現状では十分すぎるほどグレン小隊の戦力は足りていた。

 ヴァリムの攻撃が始まってから前線では人員が不足しはじめていた。そこで、サリアはグレン小隊から一時的に外され他の部隊に応援として回される事となった。


「先輩と離れたくないですぅ〜」

「サリア、何言ってるの、別の部隊に手伝いに行くだけじゃない」


 彼女の憧れの先輩、アイリ・ミカムラに離れるのを嫌がってしがみついていた。

 サリアは昔、アイリにその命を助けられた事がある。それ以来アイリに憧れた彼女は、おそらく他にも動機はあったと思われるが自らPF訓練所に入りPFの操縦を覚えたのだ。

 そこまで憧れているアイリと一緒の隊に配属され、幸せの絶頂を味わったままここまで戦ってきたサリアは転属命令により、不幸という井戸の底に突き落とされた気分を味わっていた。

 しかし、サリアの良い所は直ぐに立ち直る所にある。

 アイリはしがみつきながら泣きそうな目でこちらを見るサリアをどうしたらいいのか途方に暮れていたが、彼女の頭に妙案が閃いた。


「そ、そうだ! サリア、この戦いが終わったら休暇とってみんなで旅行行こうよ。だからさ、ねっ?」

「ホントですかぁ〜?」


 ジーッとアイリの顔を見上げるサリア。サリアの目はかなり真剣だ。


「もちろんよ。ずっと戦いっぱなしだったんだもの、休暇ぐらいもらわないとね!」

「わかりました! 私、休暇のためにガンバッちゃいます!!」


 暗かったサリアの顔が一転、彼女の顔いっぱいに明るい笑顔が満ちていた。

 このように彼女は直ぐに立ち直るのである。これがサリアの良い所でもあり悪い所でもある。

 かくして彼女は配属先へと向かっていった。









 

 彼女の向かった場所。それは現在では事故でなくなってしまったがアルサレア第二研究所のあったコレム渓谷周辺の警備を担当する基地だ。

 ここは国境が近く地形が入り組んでいる渓谷で、ヴァリムの国境から現在戦闘が最も激しく行われているアルサレア要塞の付近の戦場まで直線最短距離ルートでもある。

 先に見つければ逃げ場の少ないここの地形では難なく敵を撃破できるが、索敵できなければ敵をみすみす逃し補給物資を前線に届けられてしまう。リスクは伴うがヴァリム軍はここ周辺のルートを補給路の一つとして使用していた。


「あれぇ?・・・・あっちかな?」


 基地に到着し手続きを済ませたまでは良かった。

 サリアは配属される予定の小隊の隊長ランブル・クリスティーンに挨拶しようと思い彼がいると聞いたPF格納庫へ向かおうと思ったのだが場所がわからずにいた。


「あ! あの人に聞いてみよっと」


 サリアはそわそわと落ち着きのない彼女とさほど歳も変わらない少年に話しかけた。


「あのぉ〜すみません」

「サ・・・」


 サリアの顔を見たその少年は一言発した後、口をパクパクとし言葉に詰まってしまった。

 彼の顔は驚きに満ちている。


「サ・・・サリア!」


 サリアの名前を呼びながら驚きの声を上げた。

 向こうはサリアの事を知っている様だが、サリアはどうにも思い出せなかった。


「う〜ん、誰だっけ?」

「僕だよ、僕・・・セイバー・シドニス」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・セイバー・ドジデス」

「な・・・なんだよそれ、思い出してくれたのは良いけどさ・・・よりによってそんなあだ名を思い出さなくても」


 セイバー・ドジデス・・・・ではなく、セイバー・シドニス。

 彼とサリアはPF訓練所で同期。PF暴走事件が起きるまでサリアとセイバーの二人は同じ部隊にいたが、その後サリアはグレン小隊にセイバーは・・・・どこかに行ったらしいがサリアは知らなかった。

 ちなみに、セイバー・ドジニスと言うのは彼のPF訓練学校時代のあだ名だ。

 たまたま一度だけ大きなドジをふんだ時から彼はその名で呼ばれる様になった。

 ドジの頻度で言えばセイバーは人並みだ。むしろその頻度はサリアの方が彼に比べ比較にならないほど高いと言える。しかし、彼はドジデスと呼ばれていた。


「そう言えば、ドジデスは今までどこ行ってたの?」

「だから・・・それ止めてくれよ」

「うん、わかった。セイバーはどこ行ってたの?」

「えっと・・・・・その、後方で訓練講習を・・・・」


 セイバーは答えにくそうにサリアに返事を返した。


「なんで?」

「それは・・・えっと、PFの操縦を習うために・・・」


 セイバーはどんどん小さくなっていく。しかし、サリアはまったく気がつく様子もなく話し続ける。


「え、なんでぇ! だって、セイバーは訓練所を卒業したじゃない!?」


 本気で驚いているサリア。

 セイバーはPF暴走事件の一件以来PFのコックピットに乗れなくなった。しかし、サリアもそれは同じである。
彼女とセイバーはグレンリーダーの戦う姿を見てPFの正しい使い方とやらを学んだらしくなんとか復帰できた。

 そこまでは二人とも一緒だった。

 サリアは持ち前の明るさと過去の苦い経験も難なく吸収してしまう柔軟な性格で逆境なんてなんのその、PFを乗り回しハンマーを振りかざしエースパイロットへの道をまっしぐら。

 ところがセイバーは、持ち前のうじうじした消極的な性格と過去を何時までも重く引きずってしまう性格が災いして再びPFに乗れなくなってしまったのだ。

 これにはサリアがグレン小隊に行ってしまった影響もある様である。

 惚れた女の子の前では良い格好をしたいのがセイバー君という男の子なのだ。

 頑張れ男の子、苦労はこれからだぞ!


「・・・PFのコックピットが・・・・・・・・怖いんだよ」

「ふ〜ん、じゃあ、セイバーはここで何してるの?」


 セイバーの周囲にはドンヨリとした空気が漂いジメジメしている。
 落ち込んでいる彼に気付いているのか気付いていないのか、サリアは明るく話し続けた。

 セイバーは完全に下をうつむき一枚の辞令書をサリアに差し出した。


「・・・なになに・・・セイバー・シドニス軍曹、敵補給路警戒PF部隊への転属を命じる・・・パイロットなんだ」

「うん」

「でも、乗れるの・・PF?」

「・・・・わからない」

「まっ! 何とかなるよ。私も応援するから、一緒に頑張ろうね!」


 そう言ってポンポンとセイバーの肩を叩くサリア。

 セイバーはサリアの一言に一筋の光明を見た様な気がした。


「貴様ら! そこで何をしている!!」


 楽しそうに・・・たぶん、楽しそうに話している二人の背後から怒鳴り声が聞こえてきた。

 二人が振り向くと長髪の男が立っていた。

 目つきはかなり鋭い。背は高く線は細いが身体はガッチリしている。顔には戦闘中の怪我だろうか火傷の痕がある。

 サリアが階級章を確認すると少尉だ。


「遊んでいる暇などないだろ!」

「すみませぇ〜ん」 「すみません」

「何処の部隊の所属だ!」

「えぇっと・・・・ランブル小隊に今日付で配属ですぅ」

「なに?」


 サリアの言動が気にくわなかったのか男の顔があからさまに不機嫌になる。
 サリアの語尾を間延びさせたしゃべり方は確かに人によっては不快に感じることもあるが、彼もそうなのだろうか?


「貴様らがそうなのか?」


 不快に感じたわけではない様だ。


「はい?」


 サリアが首を傾げ聞き返す。
 セイバーは男を怖がっているのか身体を固め怯えた子羊の様に押し黙りサリアの影に隠れている。


「俺がランブル小隊の隊長ランブル・クリスティーンだ・・・サリア・バートンとセイバー・シドニスだな?」

「はい、私サリアです」 「セ、セイバー・シドニスです。少尉殿」

「一人はグレン小隊からの応援と言うから、どんな奴かと思っていたが・・・こんな小娘を寄こすとはな」

「ぶぅぅ、小娘じゃないです。サリアですぅ」

「小娘で十分だ・・・で、そっちのがセイバーだな?」

「は、はい」


 セイバーは何故かランブルに怯えていた。確かにランブルは目つきが悪いし高圧的な喋り方をする、そのせいだろうか。

 ランブルは二人を交互に上から下まで観察する様に見ると言葉を発した。


「ちょうど良い、二人ともついてこい。これから偵察任務に出る」


 二人はランブルの後を大人しくついて行き格納庫へと無事に到着。

 PF格納庫につくと皆が忙しそうに働きまわっているのが目に入ってきた。

 ランブルが先ほど二人を見て怒るのも無理はないかも知れない。皆が皆、休む間もなくせわしなく動き回っている。

 人員が大幅に少ない事がその原因の様に見受けられる。


「小娘、お前の機体はたしか・・・あれだな」

「あ、私の機体ですぅ」

「先に乗って待っていろ」

「はぁ〜い」


 サリアは早速自分の機体に向かって髪をなびかせ何故か楽しそうに走っていく。

 サリアの機体は彼女専用のカスタムPF。カスタムPFはある程度の戦果がなければ与えられないがサリアは特務小隊に配属という事もあり特別に与えられているのだ。


「小僧、貴様はまだカスタムPFが無いからあそこのJファーにでも乗っておけ」

「あ・・・あの少尉」


 セイバーが歩いていこうとしたランブルを小声で引き留める。

 ランブルは振り返りセイバーの次の言葉を待ったがオドオドして彼はなかなか言い出せない。


「何だ、黙っていたらわからないぞ?」

「・・・・僕は・・・PFに」

「PFに?」

「の、乗れません」

「何かの冗談か?」

「・・・いえ、冗談ではなく・・・・本当です」

「パイロットとしてここに配属されたのだろ?」

「そうです・・・・でも、僕には無理なんです。戦闘なんて出来ません」

「使えるか使えないかは俺が決める。さっさと乗れ!」

「あ・・・」


 ランブルはそれだけ言うとセイバーを置いて自分のPFに向かった。


(・・・・僕・・・どうしたら良いんだ?)


 セイバーは辺りを見回しどうしたらいいものか考えてみた。しかし、そこに答えてくれる人がいるわけもなく答えが落ちているはずもなかった。

 セイバーの事など気にしているほど暇な人間は誰もいないのだ。


「・・・・乗るしかないよな」


 拳を強く握りしめ、意を決しPFへと走るセイバー。その背中はどこか寂しそうであった。







 

 一方、サリアは自分の機体のコックピットに乗り鼻歌を歌いながら出撃を待っていた。


『小娘、聞こえるか』

「はぁ〜い、聞こえてますよぉ。それと私はサリアですぅ」

『小僧は?』 「あぅ〜無視しないで下さぁ〜い」


 セイバーからの返事はなかった。意を決して走り出した彼であったが、タラップを駆け上りコックピットの目の前まで行くと足が竦んでしまったのだ。


『小僧は置いて行くぞ。小娘、付いてこい』

「えぇ、セイバーおいていっちゃうんですかぁ?」

『そうだ・・・こちら、ランブル。巡回任務に出る』

『こちら司令室。ルートCで巡回願います』

『了解だ・・・・おい、小娘。お前のPFにはまだここら辺の地形データが入っていない。迷子になりたくなかったら付いてこい』


 サリアはMAPを開いてみたが確かに何も入っていない。彼女がMAPの有無を確認しているとランブルは先に出ていこうとしていた。


「隊長〜まってぇ〜」

『早く来い』


 サリアのPFはカスタムPFである。カスタムPFはそのWCSやOSに到るまでパイロットの癖に合わせて作ってある。
 その為、組み上げたばかりであった彼女のPFは何も入っていない状態だったのだ。
 OSとWCSの基礎的な部分はサリアが持ってきた自分のPFのパーソナルデータを入れればそれで済むのだが、細かいMAPなどのデータは未入力のままだったのだ。


「置いてかないで下さぁ〜い」




 ここの地形は入り組んでおり起伏が激しいのでヘタをすればレーダーでも見逃してしまいかねない。

 そこで、レーダー以外に目視にも頼るのだが、これはなかなか効率が悪い。


「ランブルたいちょぉ〜、あれは敵ですかぁ?」

『ただの岩だ、よく見ろ』


 と、このように良く勘違いしてしまいがちである。

 他の人は一回か二回間違えれば勘違いは減るのだがサリアの勘違いはかるく十回を越えている。彼女は特に勘違いが多い様だ。

 しばらく、ルート通りに偵察しているとランブルが敵を発見した。

 サリアのカスタムPFの肩に自分のPFの手を乗せると接触回線で話しかける。


『小娘・・・敵だ』

「どこですかぁ?」

『向こうの谷間を進んでいる・・・姿が岩陰から少し見えた』

「凄いですねぇ〜わたしはぜんぜん見えませんでしたよ」


 ここから少し行ったところは切り立った崖になっておりその底をヴァリムの補給部隊がゆっくりと進んでいるのをランブルが見つけたのだ。


『・・・・・・上から移動していって奇襲をかける。崖の上はレーダーでは上手く索敵できないからな』

「はい、了解です!」


 ランブルの声は少し緊張している。これから奇襲をするのだからそれは当然だ。しかし、サリアは相変わらずの喋り方、緊張の“き”の字も感じさせない雰囲気だ


『間違っても通常回線は・・・・』

「通常回線がどうかしましたぁ?」


 サリアはランブルが話し終わる前に通常回線で彼に尋ねる。


『・・・・・・・・・・おい』

「はい?」

『通常回線は使うな、敵に聞かれたらどうするつもりだ?』

「あぁぁ! なぁるほどぉ〜そう言う事だったんですねぇ。それならそうと言って下さいよ」

『・・・・もう良い、俺の後を付いてこい。俺が攻撃したら攻撃開始だ。いいな?』

「はい、がんばります!」


 レーダーをOFFにし慎重にヴァリムのPFへと近寄っていく。

 このまま崖のふちまで行くと敵のレーダーに捉えられる可能性があるので、ランブルはPFに内蔵されている、小型のリモコンカメラを射出し崖の下が見える位置まで移動させる。

 カメラにはこちらの存在に気が付かずに歩いているPFの姿が映し出されるはずだった。しかし、カメラに移ったのは敵の弾。

 カメラが被弾し爆発した。

 ランブルがこちらの存在が何故ばれたのかと疑問に思いながら攻撃へと移行しようとする。

 レーダーのスイッチを入れようとし、レーダーに目を移すと何故かサリア機がレーダーに映っていた。

 ランブルが切ったのはアクティブレーダーだけでパッシブは切っていない。敵レーダー波の受信のみであるパッシブの状態でサリア機が写るということは彼女がレーダーを切っていないと言うことだ。

 つまり、敵にこちらの存在がばれたのはサリアのレーダーのせいと言う事だ。


『小娘!』


 ランブルは機体を敵機の上空に踊りださせながら言った。


『次も同じミスをしたら、問答無用で貴様を敵陣のど真ん中に放り込むからな!!』

「・・え? どういうことですかぁ??」


 ランブルの怒鳴り声に動じることもなく聞き返すサリア。彼女は自分が何をしたか自覚がないらしい。

 それは、仕方がないこととも言える。
 彼女のいたグレン小隊は敵に悟られないように移動したりなどのこそこそとしたPFの運用の仕方は殆どしない。
 そのため、彼女は自分でレーダーの切り替えなど訓練所で習っただけで、実際に行なったことなど一回もなかったのだ。

 ランブルはそんなことは知っていて当たり前だ、と言うのだろうがあらかじめ指示をだしておかなった彼にも非はある。


「待ってくださぁ〜い」


 サリアは遅れてランブルの後に続き飛び出していった。







 

 コックピットのランブルの目にはモニターに移る敵の姿が見えた。


(ロキ1、ヌエ2・・・それに、輸送トラック基本的な編成だな・・・まずは足を止める!)


 WCSサイト内に輸送トラックの運転席をロックするとランブルは何のためらいもなくサーマルプラズマライフルを発射した。

 彼に向かって下からガトリングやMLRSなどが飛んでくるが動きの制限されるPFの下降状態にありながらもランブルはこれを巧みに避けていく、たった一発の弾すらかすりもしない。


(ほぇぇ〜ランブル隊長って、けっこう凄いんだ)


 サリアはコックピットの中でランブルの動きを見ながら感心していた。

 サーマルプラズマライフルの弾が着弾すると、トラックを動かす運転手を失ったトラックは動きを止めた。


『隊長! 酷すぎですよ!!』


 トラックの運転席を攻撃したことへの抗議だろうかサリアの声がランブルの耳に聞こえてきた。

 ランブルはこれを無視して敵PFへの攻撃を続ける。

 谷底に着地すると近くにいたヌエの足にレールキャノンを撃ちこみ、膝を破壊し移動を不可能にする。


『隊長! 輸送トラックを破壊したんですからもう良いじゃないですか!』


 遅れてサリアが着地する。

 サリアが言うのは補給物資が前線へ渡るのを阻止するのが私たちの任務なのだから他のPFはもう放っておいても良いのでは? と言うことだ。

 護衛のPFは輸送物資の護衛があくまで任務だ。

 この時点ですでにランブル小隊の任務は達成されており、敵の任務失敗は明確だ。敵のPFは適当なところで撤退を開始するはずである。


「小娘、敵は叩けるうちに叩いておくものだ! 覚えておけ!!」


 ランブルは撤退を始めた敵にも容赦なく後ろから攻撃を仕掛ける。


(ヴァリムは誰一人として逃がしはしない・・・・・確実に仕留める)


 ロキが一体、後ろからランブルの攻撃を受けて動かなくなった。

 コックピットのある位置辺りに穴が開いている、パイロットは即死に違いない。

 サリアは平気で敵のコックピットを狙うランブルに寒気を覚えた。彼女がグレン小隊に居るとき、何よりも注意されたのは“敵のコックピットは狙うな”という事だからだ。

 ランブルはサリアのそういう感情など知りもせずもう一機のヌエにも、いや、ヌエに乗っていたパイロットに止めを刺した。


「小娘・・・少しは戦え」


 ランブルがまったく攻撃をしていなかったサリアに言った。


『隊長、どうして・・・・どうして、敵のパイロットを攻撃するんですか!!』



 

 サリアが先ほどまで感じていた寒気はなくなっていた、むしろ平然と敵のパイロットを殺すことの出来るランブルへの怒りがこみ上げてきていた。

 サリアの操縦桿を握る手が震えている。

 しかし、ランブルはサリアの言っていることがイマイチ理解できずにいた、彼にとって敵のPFを最も効率よく倒す方法が敵のコックピットを潰すことだったからだ。

 人が死ぬのはその結果に過ぎないのだ。


『敵を倒して何が悪い?』


 サリアにはランブルの声がひどく冷たく感じられた。


「酷いですよ。隊長なら、敵のコックピットを攻撃しないでも、パイロットを殺さないでも、PFを無力化できるじゃないですか!」

『俺はもっとも短時間で敵を倒せる方法を取っているにすぎない、たしかにコックピットを攻撃すれば敵のパイロットが死ぬ確率は高い』

「こんなの・・・人が人を故意に殺していたら・・・戦争じゃなくて殺し合いじゃないですか!」


 サリアは昔、軍隊というのは人殺しの組織という印象を持っていた、PF訓練学校に入るときも自分が軍隊に入るのが酷く不安だった。しかし、いざ入ってみればそんな事はなくむしろ人を助けるために戦っている組織という認識に変わった。

 グレン小隊に配属されその認識はより強くなった。グレン小隊の人々はアルサレアの平和を願い、アルサレアだけでなく真に世界中の人々の平和を願っていると感じたからだ。

 平然と人を殺すランブルの様な人物に初めて出会った彼女はカルチャーショックとともに自分の考えとは異質な存在に怒りと嫌悪感と・・・さまざまな感情が入り混じり感情が昂っていた。

 

『故意? 確かに死ぬことがわかっていて、攻撃するのだから故意とも言えるな』

 

「そんな、そんな簡単に人を殺せるなんて」

 

『戦争と殺し合い、何が違う? 最後に立っていたものが勝者であり生者であるように、倒れたものは敗者であり、死者である。戦争は国と国の国民を巻き込んだ殺し合いだろ』
「違いますよ。戦争と殺し合いはぜんぜん違います!」


『いまさら、こんな事を言われるとはな、お前のいたグレン小隊は甘い連中の集まりだったようだ』
「グレン小隊の皆さんは、誰も悲しい思いをしないですむ世界を望んでいるんです!」
『まぁいい』

 

「好きに吼えていろ。俺は俺のやり方で敵を倒すだけだ。お前はお前のやり方で敵を倒すが良い、戦果を挙げ、俺の邪魔をしなければ、俺はお前の戦い方に文句はつけん』
「だって」

 


「だって、それじゃぁ」

 

「何の解決にもならないじゃないですか!」
『解決? 誰が何を解決するのだ? 戦場の兵士はそんなことを考える必要はない。ただ敵を倒し生き残ることを考えていれば良い』

 

『それにな、敵を殺せばそれだけ敵の数が減るんだ。戦争の早期解決に少しは貢献できるかもな』
「間違ってます! そんなの絶対違いますよ。人と人が殺しあってどうして早期解決になんてなるんですか、死者が戦争を長引かせるだけです。そんなんじゃ」

 

「そんなことを繰り返していたら戦争は永遠に終わりませんよ!」
『戦争が終わって、それで?』
「それでって」

 

『戦争が終わってどうなる。二度と戦争が起きなくなるのか? 違う、戦争は人がいる限りなくなりはしない』
「でも」


「人を殺さないでも」


「人をなるべく殺さないようにすれば」



 

「きっと」
『“一度始まった戦争は逝きつくところまで逝かないと終わりはしない”、俺が知っているのはそれだけだ』
(ここの「逝きつくところまで逝かないと」は誤字ではなくわざとですのでそのままでお願いします)


『いいか、お前の考えがどうだか知らないがそれを俺に押し付けるな、お前が自分の考えが正しいと思うならば、貴様が死ぬときまでそれを貫いて見せろ。お前が正しいか俺が正しいかは時の流れが証明してくれる。俺の邪魔はするな』
「でも、ランブルさん」

 

『邪魔はするな』

 

『俺はそう言ったな?』






 

「はい」



 

 ランブルがサーマルプラズマライフルをサリア機の方に向ける。


「ちょっ! ランブルさん?!」


 撃たれると思い目をつぶるサリア。

 サーマルプラズマライフルが発射された。

 サリア機の横を高温のプラズマが通り過ぎ、彼女の後ろで膝を破壊され動けなくなっていたロキに直撃する。

 ロキは完全に沈黙した振りをして背中を向けたサリア機に攻撃しようとしていたのだ。


『今回はロキのパイロットを殺さないでおいてやる』


 ヘッドフレームを壊されたロキが完全に沈黙した。

 PFの装甲の一番薄い背後からロキの一撃を受けていたらサリアは死んでいたかもしれない。


『次からは敵に背中を向けないようにすることだな』

「ありがとうございます」

『基地に帰還するぞ』


 サリアは基地に戻りながら自分の考えが間違っていないんだ、と自分に言い聞かせていた。









 



 −設定−

○レーダーについての補足
 レーダーとは「電波を使用し目標の存在を探知しその距離を計測する装置」です。
 そのレーダーには大きく分けて二通り存在します、アクティブとパッシブの二つがあります。
 アクティブは「自ら電波を照射し目標に反射したレーダー波を感知し位置を捕捉するもの」
 パッシブは「外から来る電波を感知し位置を捕捉するもの」
 と、なっています。もっと簡単に言えばアクティブ=能動的、パッシブ=受動的となります。
 文中ではアクティブ、パッシブと使い分けていますが、パッシブはアクティブに最初から内蔵されておりレーダーを二基搭載しているわけではありませんのであしからず。
 つまり、文中の「レーダーOFF」や「レーダーを切る」というのは電波の照射を止めるということで、完全にレーダーの機能をOFFにするわけではありません。
 WCSによるロック機能を一時的にOFFにしていると捕らえていただくとわかりやすいかもしれません。
 以上、無駄な補足でありました。


○サリア・バートン
 いまさらの説明の必要もない有名人。
 文中のサリアは私の想像したサリアですので、人によっては「こんなのサリアじゃない」という方もいるかもしれませんが私にはこういうサリアのイメージが強いのです。


○セイバー・シドニス
 セイバー君。彼は今回PFのコックピットが怖いという設定になっています。彼がいつどうやって恐怖を克服したのかなど不明な点が多いので想像力でカバーというわけです。
 フォルセアのハッキングにより同士討ちをさせられて以来、PFに乗るのが怖くなった彼は、一度は立ち直りましたがその後再び怖くなり、現在に至る・・・・




−後書き 原案:ナイトメア−
 あの時あいつは何をしていた第2弾サリアをお届けしました。次回はリクエストで決めます?



−後書き 文:バーニィ−
 日々、継ぎ接ぎが増えている兎こと久しぶりに投稿のバーニィです。
 今回はサリア編をお届け。さて、一応は新兵であるサリア君これから長いこと戦いますからいろいろ経験していただきませんとね。
 次回のキャラは皆さんのリクエストしましょう(ぉぃ)
 リクエストがなかった場合は○イ○ー君でも(笑)
【実は、今回のサリアの配属はランブルとサリアの性格と戦闘スタイルを考慮した上でのゴルビー爺の配属命令という設定だったりします・・・・爺さん、憎いねぇ】 2004.1.5.usagi


 


 管理人より

 バーニィさんよりサリア編をご投稿頂きました!

 う〜ん、ランブルとサリアの対比が良い感じですね(笑)

 しかし……やりますねゴルビーも(爆)<何の事でしょう?
 


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