原案:ナイトメア
文:バーニィ
ムラキ編 〜勝者の中の敗者〜
オーガル・ディラム、全長650mのヴァリムが誇る巨大空中空母だ。この空中空母がアルサレア領内に侵入したのはアルサレア戦役が始まってから6日目のことである。
アルサレア軍は何度か部隊を送り込んでいたがそのたびに尽く全滅させられてしまっていた。
その為、小規模部隊によるオーガル・ディラムの撃破は不可能と判断したアルサレアの軍は大規模な戦闘が可能な平原に陣を引きオーガル・ディラムを迎え撃つ事にした。
今、その決戦の地へ続々とPFが集結しつつあった。
ムラキ・オニキス中尉。彼もこの地へと集まったPFパイロットの一人である。
ムラキはこの平原に着いてまず集まっているPFの数を見て驚いていた。今までどんな大規模な作戦でもこれだけの数のPFが集まった事はない。その集められたPFの数は・・・・
300機!
ムラキは自分の小隊の部下であるグラント・フェース少尉と二人で話ながら仮設基地の中を歩き回っていた。
「中尉、しかし、凄い数のPFですね」
「あぁ、これほどの数が集まったのは今まで一度もないだろうな」
「そうですよね・・・・これだけのPFならどんな敵が来ても怖くないですよ」
「・・・・そうでもないだろ、それだけの敵だからこれだけのPFが集められたんだ。それだけオーガル・ディラムが強敵という事だ」
オーガル・ディラムこの名前だけはアルサレアのパイロット達は聞かされていたがそれがどんな兵器なのかと言う事はヴァリムの新兵器と言う事以外はまったく聞かされていなかった。
兵士達に余計な不安を抱かせないための配慮なのだろうがこれだけのPFが集まっている事で嫌が負う無しに敵の強大さはこの場に集まった全員が薄々感じていた。
「ムラキさん・・・オーガルなんとかは一機だけなんですよね?」
「そう聞いているな、PFが何機か護衛に付いている様だ」
「一機だけの敵に・・こんな数のPFなんて大袈裟じゃないですかね?」
「なんとも言えんな、この目で敵を見ない事には分からないさ。余計な心配は無用だぞ」
「はい・・・でも、やっぱり不安になりますよ」
「心配するな、俺たちがPFを開発してからヴァリムに大きな後れをとった事なんか一度もないんだぞ。自分の国の力を信じろ、それがお前の力になる」
「そうですね、そうですよね」
グラントは不安そうな顔をしていたが少しはムラキの言葉で不安が取り除かれた様だ。それでも、どこか暗い顔をしているがそればかりは自分で何とかしてもらうしかない。
ムラキとグラントがしばらく歩いていると50人ほどの若い者達が整列して立っているのが見えた。
彼らの目の前ではお偉いさんが偉そうに演説している。
彼らは若者と言ってもまだ子供と言っても良いぐらいの年齢のものまでおり、顔は緊張でみんなこわばっている。戦闘も経験した事の無いであろう若者達だ、当然である。
「ムラキさん、あの連中って・・・」
「PF訓練所の訓練中のパイロット見習い達だな・・・・・今回はあいつらもパイロットして登用するらしい」
「あいつらをですか? 無駄死にさせる様なもんじゃないですか!」
グラントが大袈裟なオーバーリアクション混じりでムラキに抗議し始めた。ムラキに言ってもどうしようもない事は分かってはいたが、訓練も終えていない彼らを戦場に出す事に苛立ちを覚えたグラントは誰でも良いから言いたかったである。
ムラキもそんなグラントに付き合ってやる。
「・・・・俺だって賛成は出来ないが、アルサレアの人手不足はどうしようもないからな」
「でも、いくらなんでも酷すぎですよ」
「わかっているさ、だがこれがアルサレアの現実だ。酷いと思うならお前は部下になる未熟なパイロットを守ってやれ」
ムラキのその言葉を聞いてグラントは目を点して動きを止める。
「・・・え? どういう事ですか?」
「お前の部下としてあの中から二人送られてくるはずだ。俺も部下として誰かのお守りをさせられるみたいだがな・・・」
「あっちゃぁ・・・信じられないな、上の連中は何を考えてるんだか」
「戦争に勝つ事さ・・・俺たち駒を使ってな」
「・・・・」
言葉を失った二人は再び歩き出した。
彼らが歩き出して直ぐ声を掛けてくる人物がいた。
ランスロッド小隊に所属しているカーディナル・ウェイトン少尉である。その直ぐ脇にはムラキの見慣れないまだ年端もいかない女の子が一緒にいた。二人並んでいる姿は少し場違いな光景に見える。
「ムラキさん、お久しぶりです。ムラキさんもこっちに回されたんですね」
「カーディーがいるって事はランスロッドもこっちに回ったのか、マサキさんはどうした?」
「あ・・その、それは・・・・・・」
何だか言いにくそうなカーディー、ムラキはそれでだいたいの察しがついた。
「パパは・・・死んじゃいました」
カーディーの横にいた女の子がそう言った。
「・・・パパ? まさか、君はマサキさんの娘さんか?」
「・・・マコト・フライトです」
「すまない・・・」
「別に良いですよ・・・パパはもう帰って来ないんだし、ボクはボクに出来ることをするだけです」
「できること?」
「そう、できること。ボクもPFのパイロットなんだよ。おじさんも一緒に頑張ろうね!」
マコトはニコッと笑顔を作るとムラキに握手を求めて手を差し出した。
ムラキはその手をしっかり握りかえした。
(細くて小さな手だ。こんな子まで戦わないといけない時代か・・・俺たちは子供達にこんな思いをさせたくないから戦ってきたはずなんだがな・・・・)
「おじさん。手が痛いよ」
「あぁ、すまん」
ムラキは慌てて手を離してマコトに謝った。ついつい力が入ってしまった様だ。
マコトは手を自分で撫でている。
「カーディナル少尉」
「なんでしょうか?」
「この子をしっかり守ってやるんだぞ。お互いに生き残ってたら酒でも奢ってやる」
「はい! この命に代えましても!」
ムラキはそれだけ言うと背中を向けて立ち去った。
「カーディー・・・」
マコトがムラキの去った方を向いたままカーディーに話しかけた。
「なんだい、マコト?」
「・・・・もう、冗談でも命に代えましてもなんて言わないで・・・・・・命に変わるものなんて無いんだよ」
数時間後、オーガル・ディラムを迎え撃つ作戦が実行に移された。
作戦と言っても特別なことをするわけではない。300機のPFで正面から迎え撃ち集中砲火で弱点と思われるレドームを破壊するというものだ。
始めて戦う兵器なので有効的かつ効果的な対処法が良くわからないのだ。その為の力押しの作戦である。
ただ分かっているのは生半可な戦力では逆に返り討ちにされるだけと言う事実だけである。
「二人とも、用意は良いか?」
ムラキが新しく部下についたばかりの訓練所も卒業していない15歳にもならない二人のパイロットに話しかけた。
『こっちは大丈夫です』
『こっちも万全です』
声が少し震えている。
はじめての戦闘で緊張しているのだろう。それも当然である、いきなりヴァリムの新兵器を相手にしなければならないのだ、緊張しない方が可笑しい。だが、緊張していない人間もいる様である。今回は周波数を複数の部隊で共有しいるので他の部隊の通信も聞こえてくる。
『ふぁ〜あ・・・・まだ来ないのかな?』
そんな声がどこからともなく聞こえてくる。
『マコト、欠伸なんかするなよ・・・』
マコトとカーディーの様だ。
(・・・二人とも通信ぐらいは切っておけよ。まぁ、これぐらいの方が良いかも知れんがな)
オーガル・ディラムが姿を見せた。その姿は空母ではなく人型。アルサレアの兵士達の間で変形するとかしないとか噂になっていたが、実際に変形するとはとんでもない兵器だ。
まだ距離はあるもののその大きさは一目瞭然。圧倒的な大きさである。
(・・・これほどまでデカイとはな)
流石のムラキも息を呑んだ。
『あんなの相手にするとなると嫌になるね』
『デカ過ぎだ』
『うっひゃぁ〜でっかいなぁ〜』
『化け物だな』
『やり甲斐がありそうだな』
『あんなものを作り出すなんて・・・・』
『アルサレアの勝利のために・・・・勝たねば』
等々、みんな口々に驚きと意気込みを口にしている。黙っているとその大きさに飲まれてしまう様な気がするからだ。
『PF各機へ迎撃用意!!』
今回の作戦の指揮を執るツェレンコフ・ゴルビーの声が聞こえてきた。
パイロット達が沈黙して次の命令を待った。
ズウゥーーーン
ズウゥゥーーーーーン
静寂の中、オーガル・ガルディラムの足音が大地を揺らしながら響き渡る。
『バスター搭載機攻撃開始!!』
バスターランチャー系の兵器が火を噴いた。赤、緑、黄色のレーザーがアルサレアの地にのりこんできた巨大兵器にに襲いかかる。
300機のPFのうち70機あまりがバスターランチャー系の兵器を積んでいる。
70本ほどのレーザーがオーガル・ディラムに向かって飛んでいく。あれだけ大きな的だ、外したくても外れる事はない。全てレーザーが尽く命中した。
だが、オーガル・ディラムはそうこう表面の塗装を焦がされただけでまったく効いていない様である。
(バスターランチャーが直撃してもダメージは軽微か・・・・まさに化け物だな)
ムラキは、いや、そこにいるパイロット達は悠然歩き続けるオ−ガル・ディラムに恐怖を覚えた。
PFのパイロットならバスターランチャーの威力ぐらいは分かっている。直撃すれば並のPFならば一撃で沈む威力を持っているのがバスターランチャーである。それが直撃してもまったく効いている様に見えないのだ。
これは脅威である。
『ダメージが全くないわけではない! 怯むな、第二射放てぇ――――――!!』
通常のミサイル兵器などの距離はまだ遠いので、再びバスターランチャーが放たれた。
『レドームに攻撃を集中しろ!!』
二回目のバスターランチャーの攻撃は射手達が動揺しているせいか集弾性が悪くただでさえ効果が薄いのにますます効き目がない様に見えた。
アルサレアの部隊が動揺している間にオーガル・ディラムからの反撃が来た。
肩に搭載されている大型のレーザー砲だ。基地などに配備されている大出力のもので、威力はバスターランチャーを上回る。
オーガル・ディラムの肩から放たれた二本のレーザー光が密集していたバスター搭載機の集団を貫いた。
たちまちのうちの30機ほどのPFとパイロットが消え去った。
「こんな事があって良いのか?」
『回避ぃーーーー』 『間に合いません!』
『逃げろぉ』
『こんなの勝てるわけがない』
『わあぁぁぁ』
『隊長、たいちょぉぉぉ!』
『そんな馬鹿な・・・』
『ちくしょぉぉ!!」
『あ・・・悪魔だ』
『間に合いません!』
『あの火力・・圧倒的だ』
通信機から聞こえてくる声はオーガル・ディラムの火力に驚く声ばかり。アルサレア勢は既に敵のペースに飲まれていた。
(たった一撃で・・・・なんて奴だ)
ムラキもレーダーで味方機がごっそり消えたのを確認できた。
『各機散開、以後各小隊毎にレドームへ攻撃を開始しろ、ここで勝負を決めるのだ!!』
ゴルビーの言えることはそれだけだ。あとはパイロット達次第というわけである。
ムラキの隊も動き出す。
レーザー砲が再び放たれた。
動きの遅れた隊が一つ直撃を喰らい消滅した。
それぞれのPFからミサイル、キャノン、弾丸、レーザーありとあらゆる。弾がオーガル・ディラムに降り注ぐ、オーガル・ディラムもレーザー砲とミサイル、機銃で応戦する。
周囲はたちまち煙で包まれ視界が悪くなってしまう。
そんな中、オーガル・ディラムに取り付いてレドームを破壊しようとする部隊が何部隊かいた。ムラキの部隊もその一つだ。
たが、煙を引き裂きオーガル・ディラムの腕が横に振られると5機ほどのPFが紙くずの様に遠くに吹き飛ばされた。
(・・・ひよっ子引き連れての接近戦は無理か・・)
ムラキは味方機が吹き飛ばされたのを見て、新米の事を考え遠距離戦で応戦することに方針を変えた。
『引くぞ、遠距離からレドームを狙う』
すぐに部下に指示を出す。
部下の引くのを確認し自分も離れようとした時である。
『隊長! あぶな・・・』
部下の一人が叫んだがムラキは最後までその言葉を聞き取れなかった。オーガル・ディラムに払われたPFがムラキの機体に衝突したのだ。
最後にムラキが覚えているのはその衝撃だけだった。
あ い
つ は ?
ど
ん
し だ
ら た
戦 ・・・
う 況は
「・・・・・ここはどこだ?」
ムラキがだるい体を起こす。
周囲を見回すと幾つもベッドが並んでいる。
「俺は気絶して・・・運ばれたのか?」
周りが野戦病院と分かると今度は戦いがどうなった気になった。
誰かに聞こうと思ったが、みんなベッドに寝ている人間は声がかけづらかったのでどうしたものかと考えていると、隣のベッドに寝ていた男が声を掛けてきた。顔に包帯を巻いているので歳は分からない。
「戦闘の結果が気になるのかい?」
「あぁ・・どうなったんだ?」
「俺たちの勝ちだ」
「そうか・・・被害は?」
「八割方の部隊が全滅だ・・・・勝った方の被害の方が大きいんだからどうしようもねえよな」
「そうだな・・・訓練所から引っ張ってきた連中はどうした?」
「あぁ?・・・・ああ、あの連中か、一人残らず・・・・・・・・死んだよ」
「・・・・そうか」
「無理もないさ・・ろくに実戦経験もないんだから」
「あぁ・・・俺たちは勝ったと言えるのだろうか?」
「勝ったさ・・・・形の上ではな・・・・・それがせめてもの救いだな」
「そうだな」
このすぐ後、怪我が完治するとムラキは士官学校の教師に志願しその職に就くことになる。
−キャラ設定−
・ムラキ・オニキス 年齢:33歳 性別:男
階級は中尉。真面目で実直な中年男性。これと言った目立つ点もないが欠点もない。ただ、PFのパイロットとしての腕は長いこと乗っているだけあってかなりのものである。
・グラント・フェース 年齢:21歳 性別:男
階級は少尉。最近アルサレアの兵士の中に若すぎる人間が増えたことに不満を持っている青年。ムラキとは議会ジャックの時から一緒の隊にいる。
−後書き 原案:ナイトメア−
今月中に語られざる〜の3話送りたがったが無理だったか。では恒例の次回予告は後のコバルトリーダーになるあの人です。
−後書き 文:バーニィ−
ムラキ編完成。随分と期間が空いてしまいました(汗)
私もまだまだですね・・・・しかぁ〜〜〜し。
皆さんの感想をお待ちしています! どんなものでも、ど〜んと、来い!!(爆)
管理人より
バーニィさんよりムラキ編をご投稿頂きました!!
オーガルディラム・・・・まともにやったら問題ありすぎですからね(汗)
オーガルディラムの長所・・・・やはり厚い装甲でしょうね。流石に厚すぎです(汗)
火力は大きさに付随するものさ〜(笑)
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