名も無き兵士達の血の記憶〜アルサレア戦役〜






原案:ナイトメア
文:バーニィ



 ランブル編


 アルサレア戦役、三日目。

 時刻は午前3時、昨夜からのヴァリム軍の対空防衛施設への攻撃により大半の防衛施設が破壊されてしまっていた。

 戦況はいよいよPF同士の大規模な戦いへと移行しようとしている。


 スティールレイン連隊にも本格的な出撃命令が来た。この連隊は砲戦のプロフェッショナル達が集まる隊で、当時一小隊の小隊長としてランブル・クリスティーンはこの連隊の中に所属していた。

 この隊は主に味方部隊への支援砲撃を主としてはいるが単独でもその砲撃能力を生かした戦術により十二分に戦えるだけの実力を持っている。


 今まさにランブルは戦場の真ん中にいた。

 スティールレイン連隊の行動は中隊単位での行動が主でランブル小隊の役目は敵を一カ所に集中させる事である。その密集した敵へ向かって後方からの支援砲撃を行い一網打尽にする。

 それがスティールレイン連隊の基本戦術である。


「こちら、ランブル。敵部隊補足そちらにデータを送る支援砲撃準備を頼む」

『了解、位置を確認した。そちらの合図を待つ』


 ランブルの機体めがけて敵の攻撃が飛んでくる。まだ日の昇っていないこの状況では敵が何機いるかは正確に把握できない。ヌエが六機から十機ほどランブルに攻撃を集中してきている。

 ランブルの僚機はランブル機の後方に付いており後ろから援護をしている。ただ、後方と言っても通常のフォーメーションの倍近くの距離を取っている。これはランブルが近くにいると邪魔だという理由でそうさせている。

 この一風変わったフォーメーションはランブル小隊独特のものとなっていた。

 僚機にとってはランブルに攻撃が集中するのでありがたいフォーメーションだが、ランブル機が集中的に狙われるので心配で気苦労の絶えないフォーメーションでもあった。


「おい、お前達。先に後方に下がれ!」

『『了解』』

 僚機が命令を受け後方に下がる。後方からの援護が無くなりランブルへの攻撃がますます激しくなってくる。

 これを巧みに回避して行くランブル。レーダーを頼りに敵の位置を予測して避けているが、モニターでは暗闇の中から突然スマートガンやガトリングの弾が飛んでくるのである。

 これは簡単に避けられる物ではない。

 数発の弾を受けていながらも致命的な一撃はまったく受けていない事からもランブルの操縦技術の高さはうかがい知れる。


(頃合いだな・・・)

 ランブルはレーダーでの敵の位置を見てそう判断を下した。


「ランブルより、砲撃部隊へ。砲撃開始してくれ」

『了解、砲撃を開始する』


 ランブルが機体を全力でその場から遠ざけようとする。もちろん敵機は追ってくるがランブルが引くのと入れ替わりで飛んできた支援砲撃による弾の雨に阻まれ撃破されていく。

 闇に包まれていた砲撃ポイント一帯が明るくなる。


 そして、再び暗くなるとそこに動いているPF一機もいなかった。見事なまでの命中率である。


「こちらランブル・・・・敵残存兵力無し、敵は全滅した」

『ご苦労だったぞい、ランブル』


 通信の向こうから聞こえてきたのはランブルの上官に当たる中隊長のギブソン・ドゥナテロ中尉だ。


『引き上げると良いゾイ』

「了解・・・(相変わらずゾイゾイ五月蠅い奴だな)」

『隊長! 流石ですね』

「何がだ兵長?」

 ランブルの部下の一人だ。なにやら興奮している。


『何がって、一人でほとんどの敵を引きつけていたではないですか・・・凄いですよ』


 この部下は単純にランブルの操縦技術を見て感動しているのだけなのだが、ランブルにとっては、こう言う馴れ馴れしい輩は虫が好かん、と感じるだけである。

「褒めても何もでないぞ」

 それが冷たい態度をとらせる。

『別にそう言うつもりでは・・・』

「つべこべ言ってないで撤退だ。グズグズするな!」

 面倒なのは突き放すに限る、それがランブルの取る手段であった。ランブルにとっては人との何気ない会話すら煩わしくて仕方がないのだ。

『・・・・了解』

 部下の先ほどまでの興奮はすでにない。ランブルの素っ気ない態度に興ざめしたのだろう。

 ランブルは誰にでもこう言う冷たい態度を取るので部隊の中では何時も孤立している。なまじPFの操縦技術が高いのがランブルの性格を悪い方向に助長していた。















 

 後方の基地に下がり皆が思い思いに休息している。

 先ほどは見事に敵を退けたとは言えあれで敵が全滅したわけではない。次の敵の攻撃は直ぐにでも来るだろう。ほんの少しの休憩時間だが兵士達にとって何よりも重要な時間であった。

 そんな中、ランブルはPFのコックピットにいてOSの微調整を繰り返していた。彼は24時間いつでも強迫的に戦闘の事を考えておりそれが寝る時以外に彼の心の安まる時を与えないのだ。

 既に整備を受け機体は万全なのだが、他人の手が加わった物は疑わずにはいられないのがランブルである。さらに必要以上に神経質な性格が何度も細かいチェックをさせている。

 この性格のおかげで整備員達の間では評判が非常に悪い。だが、この性格のおかげでランブルは今までPFのトラブルに見舞われる事はなかった。


 ランブルにしてみれば・・・

(自分の命を預けているPFだ・・・・整備員達にいくら注文を付けても足りん。それに整備員達は機体を万全にしておくのが仕事なのだ。言われた事ぐらいはこなして貰わねば困る・・・・俺の仕事はヴァリムの連中を倒す事だ。その為には万全で挑まねばならん)

 と、言う事のなのだが・・・・整備員達にしてみれば口うるさい嫌なパイロットである。


「ランブル隊長〜」

 誰かが呼んでいる声がする。

(返事はする必要はないな出撃はまだだし・・・またくだらん話だろ)

 そう結論づけたランブルは部下の呼び声を無視して微調整を繰り返す。


「あの人は付き合い悪いからな・・・しかたないさ」

「ああ、でも・・・・・やっぱ、仕方ないか」

「そう言えばさ、ランブル隊長と噂のグレンリーダーどっちが強いのかな?」

「そりゃ、お前、グレンリーダーだろ」

「そうかな、ランブル隊長もけっこう強いと思うけどな?」

「ああ、たしかに強いけど、グレンリーダーは化け物じみているらしいからな・・・何せあのゼクルヴを一人で倒したとか、650mもあるヴァリムの新型空母を一人で撃墜したとか噂になっているからな・・・」

「ホントかな?」

「さあな・・・どうなんだろな、いずれにしろランブル隊長もグレンリーダーも俺たちに比べれば尋常ではなく強い事はたしかだな」

「言えてるな」


 ランブルに聞こえないと思ったのか無視しているとわかったのか、二人の話し声は徐々に遠ざかっていった。

(・・・馴れ合いは好かん)


 10分後、ギブソン中隊に再び出撃命令が来た。

 ランブルは既にコックピット内で出撃命令を待っているが、部下がまだPFに搭乗していない。

(・・・遅い、奴らは何をしているのだ。毎回遅れて来るではないか)

 別にランブルの部下が遅いわけではないのだがランブルの基準に照らし合わせれば、自分より遅ければ遅い、となる。

 PFの側で何時も待機しているランブルよりも早くしろと言われる部下は何時も遅刻するのも当然だ。

『隊長、お待たせしました』

『遅れて申し訳ありません』

「何をしている、遅いぞ!」

 これを出撃の度に言われるのだから彼の部下は苦労が絶えない。だが、はじめは嫌なものだが何度も言われてくると何とも思わなくなってくるから不思議である。

「直ぐに出撃だ。俺たちの部隊がまた囮役をこなす。作戦はいつも通りだ」

『『了解しました』』

 そんなわけで、ランブル小隊は他の隊よりも早く出撃準備が整うので、ランブルの性格と仕度が早い事もあり毎回囮役に抜擢されていた。

「出るぞ!」










 

 ランブル達が敵を補足した。

『隊長、敵です。機数十四機。ヌエとロキの混成部隊です』

「そんなものは見ればわかる! いつも通りのフォーメーションで行くぞ」

『了解』

 敵もこちらに気が付き攻撃を仕掛けてくる。PFが三機だけと見たヴァリム軍のPFは数を利用して包囲するために動き出す。

「動き出したぞ、お前達二人で左側を抑えろ。俺は右だ」

 ランブルの腕もさることながら彼の部下もランブルについて行くだけの実力を持っている。

 二人仲良くお互いを庇いながら上手く敵を押していく。

 基本的にPF間の戦闘において、接近戦はリスクが伴うので得意とする人間は少ない。得意になる前に死んでしまうのが大半だからだ。

 よって多くの場合は射撃線メインの戦いとなる事が多くこの戦いもそうだった。こうなると押されている方が徐々に後退しながら戦う形となる。


(・・・あいつ等も戦闘に関してはマシになってきたな)

 ランブルの言う通り彼等が抑えている敵は徐々に後退している。もちろんランブルも敵を追い込んでいっている。しかも、一人で向こうの二人以上の敵を相手にしている。

 ヴァリム軍の兵士達が一機だけになったリーダー機らしき機体を早々と倒して戦闘にけりを付けようとしたからである。

「そんな攻撃では俺にかすりもせんぞ!」

 追い込めば追い込むほどヴァリム軍の機体はお互いの機体が近くなり過ぎて同時撃ちを恐れ攻撃し難くなり弾の数が減ってくる。

 ここまで上手くいっていた作戦だが流れが急に変わった。敵のPFが一機、部下二人のPFの上を飛び越し輪から飛び出したのだ。

「馬鹿者! そいつを逃がすな!!」

 ランブルが怒鳴りつけると直ぐに二人が動いた・・・だが、二人同時に見事に敵の群れに背を向けてそっちを向いてしまったのだ。

 そんなチャンスを敵が見逃すわけもなく二人のPFのがら空きの背中に敵の弾が集中する。

 二人の機体は一瞬にして見るも無惨なスクラップと化す。生死は不明だ。

「・・・あの、馬鹿どもが!」

 ランブルは苛立ち奥歯を強く噛み締めると、機体をジャンプさせ敵集団の真上に移動させた。

 当然敵の攻撃は集中するが、真上の敵への攻撃のためPFの足は止まる。

「余計な手間を増やしやがって!」

 ランブルはそう言いながら敵の攻撃を紙一重で避けていくが敵の数は十四機である。全て避けきれるわけもなくたちまち耐久力が減っていく。

「後方部隊データを送る、目標ポイントへの弾道侵入角度八十五度で直ぐに砲撃開始、撃ち込め!!」

『了解した。直ぐに支援砲撃を始める』

 後方の部隊は戦闘の状況がわからないので囮役の送ってくる情報だけが頼りとなっている。ランブル小隊の厳しい状況などわからないのである。

 ランブル機のコックピット内に警告音が鳴り響く、機体の耐久力が少なくなって来たという警告音だ。

(あと少し・・・・あと少しだ)

 後方からの援護射撃の弾が到着するまでほんの数秒だが、ランブルにはこの数秒が数分にも感じられた。

(来た!)

 ランブルが機体を素早く離脱させる。紙一重の差で味方の砲撃の雨に巻き込まれずにすんだ。

 焼け野原の中、レーダーで動いている敵を探す。




 発見。




「そこか! 逃がさん!!」

 敵が背中を向けて逃げようとしている。

 ランブルが何の迷いもなくサーマルプラズマライフルを撃つとPFの背中に直撃した。

 PFは背面からの攻撃にもろい、おそらく中のパイロットは即死だろう。


(・・・・・・これで終わりだな。あいつ等は死んだか?)

『隊長、ランブル隊長。聞こえますか?』

(生きてたのか・・・運の良い奴らだ)

『隊長、どうなったんですか? 聞こえませんか?』

「聞こえている。いま回収部隊を呼ぶから少し待ってろ」

『了解であります』

 ランブルが回収部隊を呼び彼の部下二名は無事に救い出された。









 

 後方のキャンプに戻るとランブルは直ぐにギブソンに呼び出される。

「ランブル・クリティーン少尉、出頭しました」

「・・・ランブル・・報告は聞いたゾイ」

「戦闘の報告ですか?」

「そうだゾイ。何であんな無茶な戦い方するんだ?」

「私は自分の役割を果たしただけです・・・・戦いはあれが私の戦い方だからです」

「・・・あんな戦い方ではお前の部下の命が幾つあっても足りん」

「・・・・・・私の戦い方について来られないならそんな部下はいりません」

「ランブル・・・お前は一人で戦っているわけではないだろ」

「わかっています。ですから私は私の役割をこなしただけです」

「お前の言う、役割は何だ?」

「・・・・敵を引きつけて一カ所に集中させる事です」

「それは小隊の役割で、小隊長であるお前の役割は部下の命を守りつつ任務を遂行する事だ!」

「・・・部下の命は大事ですが任務はもっと大事です。PFのパイロットになった時点で我々の命は物同然です。その価値は階級が決めてくれる事でしょう」

「だが、命を粗末にする必要はない」

「別に粗末にはしていません。ただ、作戦行動において実力が不足していれば死が待っているだけです・・・死ぬか生きるかは本人次第です」

「無茶な命令を与えれば部下は言う通りにそれを行い・・・・死ぬだけだ」

「・・・・死ぬか生きるかは本人次第と言ったはずです。無理ならば無理と言うでしょう」

「言えると思うのか?」

「言えなければ死ぬだけです」

「じゃあ、お前は無茶とわかっていても命令を出すのだな?」

「・・あからさまに無理ならば命令など出しません」

「じゃあ、何であんな命令を出したんだ」

「二人に左翼の敵をまかせた事ですか?」

「そうだ」

「あの二人なら抑えられるだけの実力があると判断したからです」

「だが・・・撃破された。それに、少し間違えればお前の小隊は全滅だったかも知れない」

「・・・・結果は我々の勝利です。戦場において【もしも】を考えても仕方がないのではないですか? あとに残った結果が全てです」

「ゾイ・・・たしかにお前の言う通りだ、だが・・・・」

「だが・・・なんです?」

「・・・・なんでもないゾイ。お前には悪いが儂の中隊にはお前をおいておけない」

「そうですか・・・・転属ですか?」

「転属ゾイ、戦地外の辺境部隊に配属だ」

「・・・この状況でですか?」

「この状況だからだ・・・・・お前は危険すぎる」

「わかりました」

「これが書類だ」

 ランブルは書類を受け取りギブソンとの会話を終えるとその場を去り、直ぐに移動の準備をした。


 ギブソンは思う。

(おしい男ゾイ・・・・戦争が続けば続くほどランブルの様に考えてくる人間は増えていきそうだ・・・戦争は人の心まで巻き込むものか・・・)






 ランブルが北の辺境に配属されしばらく後コバルトリーダーと出会うのだがそれはまだ先の事である・・・・・










 


 −設定−

・ランブル・クリスティーン 年齢:24歳 性別:男

 スティールレイン連隊ギブソン中隊所属、ランブル小隊の隊長で階級は少尉。この当時からすでにアルサレアの狂犬と呼ばれていた。彼の詳しい素性は謎だがどうやら戦歴は長い様である。
 単独行動や無茶な作戦が多いため連帯行動を重視する支援砲撃隊であるスティールレイン連隊にはいられなくなり、辺境に転属となった。





 −後書き 原案:ナイトメア−

 次回は要望の多かったダンの過去とその後は謎の多いオスコットさんです。



 −後書き 文:バーニィ−

 ランブル編完成・・・・特に言う事もないのですが、人間一人で大きな事はできないと言う事ですね。それにしても今回は短いな・・・・
 皆様の感想、ご意見をお待ちしています。

 タングラムさん掲載ありがとうございます。


 


 管理人より

 バーニィさんより第3弾をご投稿頂きました!!

 いや〜、ランブル強いですね(苦笑)

 ゲームでもあのくらい強ければ・・・・(爆)
 


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