名も無き兵士達の血の記憶〜アルサレア戦役〜






原案:ナイトメア
文:バーニィ



 マコト編 〜引き裂かれた日常〜



 一機の輸送機が戦場へと向かっていた・・・

 その輸送機の翼には輸送機に乗っているランスロッド小隊のエンブレムであるスピアが描かれている。

 アルサレアの正義がヴァリムの悪を貫く・・・PF専用の新兵器実験部隊によく似合うエンブレムだ。


 後にアルサレア戦役と呼ばれ、この戦争が始まって以来もっとも過酷な戦闘へ参加するためにランスロッド小隊は移動中であった。

 現在の時刻は早朝、昨日の夜からその大規模な戦闘は始まり今でも続いている。




 戦闘に際しては戦場の付近に住んでいる一般市民も避難を余儀なくされる。

 戦場では一般市民は逃げまどうだけの弱々しい存在でしかなかった。

 今回は昨夜突如として戦闘が始まったため市民の避難は大幅に遅れしまっていた。

 少し離れたビルが建ち並ぶ都市部。

 避難の必要性はあまり無いのだが戦場はどの様な形で姿を変えて広がるかわからないので、戦場から離れたここでも避難が行われている最中であった。

 アルサレア国民は望まなくても戦場と言うものを熟知し、生き残るすべを学んでいる。

 マコト・フライトもそんな避難民の一人としてその中にいた。



「ねえ、ママ・・パパは大丈夫かな?」

 助手席に座っているマコトは車を運転している母親に話し掛ける。

「パパなら心配ないわ。あの人は強い人ですからね」

 母と娘は車を使って避難をしているのだが道路は渋滞していていっこうに進まない。
 それに苛立ったドライバー達のクラクションが周囲に鳴り響いていた。

「そうだね。パパは大丈夫だよね。だって、PFのパイロットだもん!」

 アルサレア国内でのPFパイロットの存在は国民達にとって誇りであり、子供達にとっては憧れの的となっていた。

 アルサレア軍のプロパガンダが隅々まで行き届いている証拠である。











 戦地へと赴く輸送機の中、休憩室に顔色の良くない一人の男が椅子に座っていた。

 その男は何かするわけでなくただぼうっとして座っているだけであった。

「どうした、カーディー・・・顔色が良くないぞ」

 カーディーことカーディナル・ウェイトン少尉は自分の名前を呼ばれたがすぐに反応できなかった。

「おい、カーディー」

「あ・・・大尉」

 カーディーは目の前にランスロッド小隊の隊長、つまり彼の上官であるマサキ・フライト大尉が立っていたので吃驚した。

「あ、大尉・・・じゃないだろ、どうした?」

「いえ、何か緊張してしまいまして・・・」

「緊張?」

「はい・・・大規模な戦闘なんて初めてなものですから・・」

 カーディーは士官学校を出てすぐに兵器の実験部隊であるランスロッド小隊に配属された。

 その小隊の特質上、彼にはヴァリム軍との戦いの経験は殆ど無いのだ。

「仕方のない奴だな・・・いつものお気楽なおまえはどうした?」

「大尉・・・お気楽は酷いですよ」

 何気ない会話であったがそれだけでもカーディーの緊張は少しほぐれていた。

「大尉は戦闘が怖くないのですか?」

「怖いさ、でもそれは誰でも同じだ。敵だって怖がっているぞ」

「でも・・・やっぱり怖いですよ・・・」

「怖くないやつなんか誰もいない。それに、みんな生き残るためや何かを守るために戦っているんだ。お前はどうなんだ?」

「・・・わかりません。大尉はどうなんです?」

「俺か? 俺はな・・・」

 マサキは胸ポケットから一枚の写真を取り出す。


 その動きを目で追ったカーディーは心の中で後悔した


「マコトがいる限り絶対に死なない」

 マサキはポケットから一人娘であるマコトの写真を取り出しそう言った。

 何故、カーディーが後悔したかと言うと・・・

「マコトはな・・・・」


 マサキの娘自慢が始まってしまった。これを後悔していたのだ。

 マサキは一人娘のマコトを溺愛しており、喋りだしたら止まらないのである。


「な、可愛いだろ」

 マサキが写真を指さしながらそう言う。

 カーディーには頷く事しかできなかった。

「そうですね。可愛いですね」

「娘に手を出すなよ」

「・・・そんな気はありませんよ」

 カーディーはマサキの話にうんざりしていたが、何時の間にか不安な思いは心からなくなっていた。




 突然の爆発音と共に輸送機が大きく揺れた。

「何だ・・・」

「カーディー、敵襲かもしれん。お前はPFに乗って待機していろ」

「了解しました」

 カーディーはPFの所へ走って行き、マサキは何が起こったのか把握するために輸送機のコックピットへと向かった。

 輸送機は大きく揺れながら高度を下げていった。

 マサキがコックピットに着くとパイロットが機体を立て直している所であった。

「何があったんだ!」

「敵の襲撃です!」

「何故気が付かなかった!」

「わかりません、今はもう敵影がレーダーに映っていません」

「油断するな、次は止めを刺しに来るぞ。早く機体を立て直せ!」

「了解」

 パイロットがそれに答え行動に移した。

 マサキは無線機を取るとPFに登場しているはずのカーディーに連絡を入れた。

「カーディー、聞こえるか?」

『はい、聞こえます』

「おまえはPFで敵を迎撃しろ」

『こんな、上空で迎撃ですか?』

「そうだ、それしかない。もう一度攻撃を受けたら輸送機は落ちてしまう・・・頼んだぞ」

『了解、ハッチを開けて下さい』

「頼む」

 マサキはカーディーに任せる事に不安はあったが今はそれしかないと自分に言い聞かせた。










 迎撃命令を受けたカーディーも良い気分ではなかった。

 実戦経験の少ない自分が輸送機の運命を握っているのだから当然である。

(俺に・・・出来るのか? いや、やらなくちゃいけないんだ)

 輸送機の後部ハッチが開いた。

「カーディナル・ウェイトン出ます」

 カーディー自分の機体である試作兵器を搭載したJファーカスタムを輸送機から飛び降りさせると、すぐにブースト移動で輸送機の後を追い輸送機の上にPFを着地させる。
 ここまでは順調に上手くいった。

(よし、良いぞ、けっこうやれるじゃない)

『カーディー』

「何ですか隊長」

『敵はおそらく再度攻撃を仕掛けてくる。どこから来るか分からないから注意しろ』

「了解」

 どこから来るか分からない・・・カーディーはその言葉を聞き不安になる。


 PFのカメラを必要以上に動かしたのでPFの首は右左と慌ただしく動いた。

 そのPFの姿は道に迷っている人間のようにも見える。


(どこから来るか分からないって・・・・どこから来るんだよ?)

『カーディー、レーダーから目を離すなよ』

「りょ、了解」

(そうか・・レーダーを見てれば良いんだ)

 カーディーが無駄な動きを止めレーダーのみに集中していると敵影がちらりと見えた。

「隊長、来ました。迎撃します」

『ちょっと待て!』

 輸送機から離れて敵を迎え撃とうとしたカーディーをマサキが止めた。

『迂闊に輸送機から離れるな! 敵がまだいるかもしれん、その場から迎撃しろ』

「わかりました」

 敵の襲撃部隊はシンザンタイプ、その数は三機、装備は十文字大手裏剣とアサシンファングだ。

 三機のシンザンが一斉に背中の大手裏剣を投げてきた。

(離れるなって言うのはこういう事か・・・)

 カーディーは冷静にその手裏剣を肩に装備されているガトリングで撃ち落としていく。

 一機のシンザンが瞬間転移してカーディーのすぐ脇に現れアサシンファングで攻撃してきた。

 初めて瞬間転移を目の当たりにしたカーディーはあわてて機体を上昇させてそれを回避する。

 さらにもう一体のシンザンが瞬間転移で上昇したJファーカスタムの脇に現れさらにアサシンファングで攻撃してくるが何とか回避できた。

 しかし、回避は成功したものの輸送機からは離れてしまった。


『カーディー、輸送機から離れるな!』

「そんな事言ったって・・・」

 カーディーは十文字手裏剣を左手の試作型カイザーシールドで防御する。

 次々と連続で投擲される手裏剣の対処に追われ輸送機に戻れず、その場に釘付けにされている。

 輸送機が離れて行ってしまう。

 瞬間転移ですぐ後ろにシンザンが現れる。

「調子に乗るな!」

 機体の上半身を右に旋回させながら右手に装備された大出力型のレーザーソードを振るい真後ろに現れたシンザンを斬りつけた。

 そのシンザンはこれが致命傷となり地上に向かって真っ逆さまに落ちていく。

『早く輸送機に戻れ!』

「今、戻りますよ!」

 カーディーレーダーに目を移すとギョッとした。

 レーダーに新たな敵影が二つ映っていたからだ。

 しかも、輸送機の真上。

 どうやら瞬間転移をしてきたようだがそんな事を呑気に分析している暇はない。

 カーディーはあわてて輸送機に向かおうとしたが一機のシンザンが道をふさぐ。

「そこを退け!」

 レーザーソードを振りかぶったと同時にJファーカスタムの背中にもう一機のシンザンのアサシンファングが命中し、カーディーの機体は真下に叩き落とされた。

 輸送機に新たに現れた二機のシンザンが攻撃をする。一機は大手裏剣でエンジンを、もう一機はアサシンファングを輸送機のコックピットに突き立てた。

 カーディー機体を立て直して輸送機を見ると、輸送機は煙を上げて真っ逆さまに落ちていくところだった。

「そんな・・・隊長ぉー!」

 まだ生きているかもしれない、そんな希望を頼りに落ちて行く輸送機の後を追いかけるカーディー。

 四機のシンザンも残ったJファーカスタムという獲物を追いかけた。











 マコトの乗る車は未だに渋滞に巻き込まれ進めずにいた。

「これじゃ、何時までたっても進めないね」

「そうね・・・困ったわ」

 先ほどから車の外の風景はまったく変わらないでいる。


『・・・マコト・・・』

(・・・パパ?)

 父親の自分を呼ぶ声が聞こえたような気がしたマコトは車の窓を開けて身を乗り出すと空を見上げた。

 そこにあるのはただの青い晴々とした空だけだった。

「どうしたのマコト?」

「ん、なんでもないよ」

 マコトは席に座り直すとそう答えた。

 今度は別の音が聞こえてきた。何かが空から落ちてくる音だ。

「なんかしらね」

 今度は母親も窓を開けて上を見上げる。マコトも顔を出し上を見る。

 周りの車に乗った人々も同じように上を見上げていた。

 そして、空を見上げたもの全員がそれに見とれた・・・空から黒い煙を上げながら落ちてくるアルサレアのエンブレムが入った輸送機に・・・

「・・・パパ」

 空を見上げていた多くの人々にはアルサレアのエンブレムしか見えなかったが、マコトにはもう一つのエンブレムがはっきりと見えた。

 父親が隊長を務めるランスロッド小隊のエンブレムだ。


 さらに輸送機が空中分解を始めた。

 翼が渋滞している道路の横にある高層ビルの上方に激突し輸送機本体は下に落ちた。

 その衝撃で崩れたビルの破片やガラスの雨が下に降り注ぐ。

 パニックに陥って車から飛び出す人、人が乗ったままの車、それらに容赦なく偶然生み出された凶器が降り注ぎ、人々の悲鳴と落ちてくる瓦礫の衝撃が大地を震わせた。


 マコトの乗っていた車は離れていたので幸い何の被害もなかったがマコトは車のドアから出ると、輸送機の墜落した場所に向かって混乱して逃げまどう人々をかき分けて走っていた。

(・パパが・・・・・パパが・パパが・・・・・・・・・パパが・・・・・パパが・・・・・パパが・)

「マコト、戻りなさい!」

 母親の声はマコトの耳には届かなかった。







 輸送機が激突したビルの近くまで来るとそこは恐ろしいぐらいに静かなのがわかった。

「パパァーーー!」

 マコトは自分でもわけがわからずに叫ぶとその場に立ちつくした。

 不意に強い風が吹きマコトは目を開けていられなくなった。

 輸送機を追いかけて降りてきたカーディーのPFの着地の際の逆噴射の風のせいだ。

 カーディーは誰も動いている人がいないと思って着地したのでPFの足のすぐ近くに立ってPFを見上げている少女を見て冷や汗をかいた。

 少しでも間違えば自分がPFで踏んでいたかも知れないからだ。

 マコトも吃驚はしたがそれ以上に突然起こった事態によるショックが大きく呆けた顔をして降りてきたPFを見上げていた。

(PFだ・・・輸送機から脱出したの? パパが乗ってるの?)

 マコトは父親が助けに来てくれたのではないかと期待したが、その期待はすぐに裏切られた。

『そこの君、危ないから早く逃げるんだ!』

(パパじゃない・・・パパの声じゃない・・・)

 マコトは輸送機のぶつかったビルを見上げた。

 煙が出ている。上からは時折、何かのかけらが落ちてきている。

 視線をそのまま下にやると輸送機本体の残骸が目に入った。

 その輸送機は辛うじて原形はとどめている。

 流石はPF同様に乗組員の安全を考慮した輸送機である。輸送機自体の丈夫さではPFに劣らない。



 カーディーは生き残りがいないかと思い周囲を見回したが、マコト以外に生きている人間は見当たらなかった。生きていた人々は足早にこの場から逃げ去ったからだ。

(何てこった・・・・よりによって避難中の市民のど真ん中に輸送機が落ちるとは・・・まるで地獄絵図だな・・・)

 カーディーが周囲を見回していると、カーディーのPFを追いかけてきた四機のシンザンがレーダーに映った。

(もう来たのか・・・ここで戦えば被害が広がる・・・どうすれば良いんだ・・)


 Jファーカスタムの足元にマコトはまだ立っていた。

『早く逃げるんだ!』

 マコトにJファーカスタムのパイロットが外部スピーカーで話し掛けたのが聞こえた。

(・・・逃げなきゃ・・でも・・)

 マコトは輸送機本体の残骸がある方へと向かって走り出した。

 マコトが走り出した時である。

 後ろから声が聞こえる。マコトの母親の声だ。

「マコトー、何処に行ったのー?」

(ママだ・・・ボクを追いかけてきたんだ・・・)

 マコトが後ろを振り返えるとJファーカスタムの足の向こうに母の姿が小さく見えた。

 母の元へと方向転換して走り出そうとするとマコトとJファーカスタムの間に瞬間転移してきたシンザンが現れる。

 そのシンザンは現れると同時にブーストで加速しアサシンファングでカーディーの機体に向かってタックルをする。

 Jファーカスタムは試作型カイザーシールドで防御するがアサシンファングの勢いの前にはシールドは役に立たずに機体は吹き飛ばされた・・・・マコトの母のいる方へと・・・

 なまじ目の良いマコトはコマ送りのようにハッキリと見えた・・・倒れるJファーカスタムの影に母が飲み込まれていく姿を・・・


「・・・・マ・・・マ・・?」


 茫然自失、マコトの頭の中は真っ白になった。


「うわあぁぁぁー」


 マコトは輸送機の残骸の方へと再び走り出した。


(パパ・・・パパ・・ママが、ママが・・・・助けてよ・・パパ!!)


 マコトが後部ハッチから輸送機の中を覗くと一機のPFが見えた。

 父が乗っていた試作型Jカイザーだ。

(あのPF・・・前に一度、パパに乗せてもらったPFだ・・)

 マコトは何かに引き寄せられるように試作型Jカイザーに近寄っていった。 

 近くまで来て分かったのだが外見は何故かほとんど無傷な様に見えた。

 しかも、ハッチまで開いている。

 そのままコックピットの中まで這い上がるとシートに腰掛けた。

(こいつ・・・動くのかな?)










 マコトが輸送機の中でPFを見つけた頃、カーディーは四対一の不利な条件で戦かっていた。

 しかも少し離れたところでは人々が混乱状態で逃げ回っていた。

(少しでも、こいつらを離さないと・・・それに、このままじゃやられる)

 カーディーは大手裏剣をシールドで防御しながらどうするか考えていた。

 四機のシンザンは動きの鈍いJファーカスタムに向かってすぐに止めを刺さずにいたぶるように攻撃を仕掛けていた。

(何を考えているんだ、こいつらは・・・こんな所で戦ったら民間人に被害が出るのに・・・)

 PFの目の前を挑発するように一機のシンザンが通り過ぎようとする。

(俺も市民の事を考えている余裕はないか・・・)

 カーディーは行動に出た。

 通り過ぎようとしたシンザンをシールドで殴りつけると近くのビルにそのシンザンを叩きつける。

 動きの止まったシンザンに大出力レーザーソードをコックピットに突き刺すカーディー。

 彼に相手のパイロットを気遣っている余裕などはなかった。


(悪いな)


 レーザーソードを突き立てた事によって動きの止まったJファーカスタムに二枚の大手裏剣とアサシンファングが迫る。

 アサシンファングを構えながら近づいて来た敵をレーザーソードからPFの手を離し殴る。

 そのシンザンをカイザーシールドの先端でこちらに向かってくる大手裏剣の軌道上に押し出す。

 シンザンの背中に仲間の大手裏剣が深々と突き刺さり爆発した。


 爆発する前に機体をバックさせ爆発の範囲外に出ると、味方を攻撃してしまった事に動揺して動きの硬直した上空のシンザンに向かって機体を突撃させ殴りつける。

 さらに手近なビルにめり込ませ何度も殴る。

 カーディーは目の前の機体に気を取られてもう一機のシンザンを忘れていた。PFの横にアサシンファングによる衝撃が走る。

 カーディーの機体はそのまま地面に激突してしまう。

(くそ・・・早く機体を立て直さないと・・)

 Jファーカスタム上半身を起こし終わると、先ほどカーディーを吹き飛ばしたシンザンが降りてきて右足でJファーカスタムのメインフレームを踏みつけ地面に押し倒す。

(・・・・何てこった・・)

 PFのモニターにはアサシンファングを振り上げコックピットに突き立てようとするシンザンが見えた。

「くっ・・・」

 カ−ディーは目を閉じた。





 マコトが試作型Jカイザーを起動させ輸送機から出てくるとちょうどカーディーのPFが地面に倒れている時であった。

 そんな戦っているPFを見てマコトは全チャンネルに向かって叫んでいた。

「戦うのを止めろぉー!」

 シンザンは動きを止めマコトの試作型Jカイザーを見る。

 カーディーはその隙にシンザンの足を払いPFを素早く起きあがらせるとシンザンに殴りかかった。

「止めろって言ってるだろ!」

 マコトはPFの右手に装備されている試作型のレーザーライフルを発射する。

 そのレーザーはJファーカスタムのすぐ脇を通り過ぎシンザンに直撃する。

 シンザンの動きは停止した。

「当たっちゃった・・・」





 カ−ディーは何故味方が突然現れたのか、わからなかったがとりあえず安心した。

 彼は機体を振り返らせて味方のPFをモニター画面の視界に入れる。

(隊長? 生きてたんだ・・・いや、でも)

 そこに立っていた機体はランスロッド小隊と極一部の部隊にしか存在しない試作型Jカイザー。

 しかも、その肩にはランスロッド小隊のマーク入りである。

 隊長が乗っているとしか考えられなかったが先ほどの通信は隊長の声とは似てもにつかないものである事を思い出した。

(ランスロッドの他の誰かなのか?)

 そう思ったが思い当たる人物はいない。

「誰だか知らないけど助かったよ、ありがとう」

 通信を入れ一歩近づこうとした時、カーディーが予想もしない答えが返ってきた。

『動くな!』

「おい、何を言ってるんだ。俺は味方だぞ」

『うるさい! そこを動くな!!』

 カーディーは相手が何を言っているのかわけがわからなかったが、相手の声が震えている事と声がまだ幼い事だけはわかった。



 マコトは冷たいコックピットの中で震えていた。

 自分でもどうしたら良いのか分からないのだ。

 しかし、目の前に立っているのは先ほど母親の上に落ちたPFだとわかると本能的にトリガーに指が掛かっていた。

「お前が、ママを・・・お前が、お前が!」

 マコトの中では、相手は偶然倒れてしまっただけの事故ではないか? ママが死んだのは目の前のやつのせいだ! 二つの考えが表に出たり入ったりを繰り返していた。


『止めないか、今は味方同士で争っている場合じゃないだぞ』

「黙れ!」

『周りを見てみろ、怪我人だっていっぱいいるんだぞ。向こうでは戦闘だってやってるんだ。落ち着けよ!』

「黙れ、黙れ、黙れ、黙れぇー!!」

 レーザーライフルのトリガーが引かれた。



 カーディーの機体にレーザーライフルが向かって飛んでくる。

 慌てて試作型カイザーシールドで辛うじて防御することが出来たがシールドは砕け散った。

(本当に撃ってくるとはな・・・仕方がない・・・)

 カーディーはブーストペダルを勢いよく踏みつける。

 急接近するカーディーに向かってレーザーライフルが放たれる。

 一射目、回避。

 二射目、回避。

 三射目、メインフレームに直撃。メインフレームの中でも一番装甲の厚い部分に当たったので助かった。

 そのまま体当たりでJカイザーを押し倒すと接触回線で話し掛ける。

「馬鹿な事してるんじゃない! 味方を殺して何になるんだ!!」

『・・う・・・・うっ・・・』

「どうした、怪我したのか?」

『・・・うぅ』

「今そっちに行く」


 ハッチを開けると目の前にJカイザーがいる。

 試作型Jカイザーが地面に倒れその上にカーディーのJファーカスタムが乗っている。

 なのでコックピットから出る時にシートベルト注意して外さないと落ちてしまう。

「いてっ・・・足首を捻ったか・・格好悪いな・・・」

 落ちた時に着地を失敗すれば怪我をする。カーディーは見事に足首を捻挫した。

 足を引きずりながらコックピットハッチに近づく。

「おい、開けろよ・・・大丈夫か?」

 ハッチが開いた。カーディーが中を覗き込むとどこかで見た事のある一人の少女がいた。

 だが、少なくとも見た事があると言っても軍隊の仲間ではない。

(何で、こんな子が・・・)

 少女はすすり泣きながら震えていた。

「怪我はないか?」

 カーディーの言葉に反応して少女が顔を上げる。


 見覚えのある顔だった。

 輸送機の中で隊長から見せてもらった写真の子だ。


「・・・・マコト・・ちゃん?」


 マコトは顔を見た事も無い人とはいえ自分の名前を知っている人間に出会えた事により、安堵感から今までせき止められていた涙が一気にあふれ出してきた。

 マコトの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちる。


「うぅ・・うわぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーぁぁぁん」


 カーディーに飛びつき思いっきり泣いた。

 今のマコトには泣く事しかできなかった。

 泣く事で全てを忘れようとした。

 忘れられない記憶を忘れようとした。



 カーディーはそんなマコトを見ながら・・・自分のミスの代償の大きさをなんとなく感じていた。












−次回予告−


 アルサレア戦役。それはアルサレア、ヴァリムともに多大なる犠牲を出した苦しい戦いであった。
 そんな戦いの中、どんな状況でも諦めずに戦う男がいた!

 その男の名は ダン・ロシュナット!
 
 次回「ダン編」


 ・・・・力を得てどうする気だ?・・・・

 ・・・・そんなの決まってるだろ、アルサレアをぶちのめす!!・・・・

 



−設定−


・マコト・フライト 年齢:12歳 性別:女
 避難するために移動をしている途中でたまたま戦闘に巻き込まれる。その最中、父親は死亡。輸送機の残骸の中から父のPFを発見、それに搭乗しその場にいる敵を撃破。父親の敵討ちを心に誓う。コバ小のマコトです(爆)


・マサキ・フライト 年齢:42歳 性別:男
 マコト・フライトの父親。新型兵器実験部隊ランスロッド小隊の隊長で階級は大尉。アルサレア戦役に参加するため、輸送機で移動中に敵PFから襲撃を輸送機が墜落。その際に戦死してしまう。


・カーディナル・ウェイトン 年齢:18歳 性別:男
 ランスロッド小隊の隊員。PF操縦技術の高さを評価されランスロッド小隊に配属された。階級は少尉。士官学校から出てすぐにランスロッド小隊に配属されたので実戦経験は他の兵士に比べると少ないがPFの操縦に関する素質はかなりのものがある。
 容姿は黒髪で長髪、目は黒、身長179cm、体重65kg。性格は大雑把で適当だが、PFや戦闘のことに関しては異常なまでに神経質で必要以上に心配する。


・新型兵器実験部隊ランスロッド小隊
 PF専用の試作新兵器のテストを行う実験部隊。カイザーシールド、ハンドMLRS、レーザーライフル等の試作品を持っている。
 アルサレアの作戦司令官ダグオン・ゲーニッツの下に所属している。

 


−後書き 原案:ナイトメア−
 今回はあまり内容に関わってないのでノーコメントです。


−後書き 文:バーニィ−
 はい、書きました。また暗めのお話です。予定ではアルサレア戦役に関わった兵士達の短編の話を書くつもりです。その数はいくつになるか分かりませんが、書けるだけ書く予定であります。
 何故かマコトが歳のわりに子供っぽい気もしますが・・・まあ、気にしないで下さい。ゲーム中のマコトから子供っぽい印象を私が受けたせいです(汗)

 ナイトメアさん、ネタの提供ありがとうございます。
 


 管理人より

 バーニィさん(&ナイトメアさん)より新投稿作品を頂きました!

 どうやらコバルトのキャラ視点のアルサレア戦役を短編として書いていくようですね。

 では、頑張って下さい!
 


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